特許第6039709号(P6039709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039709ハイブリッド車のハイブリッドモジュール用の冷却デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039709
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車のハイブリッドモジュール用の冷却デバイス
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/22 20071001AFI20161128BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20161128BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60K6/22ZHV
   B60K6/405
   B60K11/06
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-13186(P2015-13186)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-140179(P2015-140179A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】10 2014 101 035.3
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ヒンリッヒ
【審査官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−507338(JP,A)
【文献】 特開2013−126864(JP,A)
【文献】 米国特許第06148855(US,A)
【文献】 特開平10−080005(JP,A)
【文献】 特表2011−522192(JP,A)
【文献】 特開平07−035158(JP,A)
【文献】 特開2008−185194(JP,A)
【文献】 特開平05−280644(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0032093(US,A1)
【文献】 特開2013−216205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/00 − 6/547
B60K 11/00 − 15/10
B60K 17/00 − 17/36
B60L 1/00 − 15/42
F16D 48/00 − 48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車のハイブリッドモジュール(1)用の冷却デバイス(2)であって、前記ハイブリッドモジュール(1)が、前記ハイブリッド車の内燃機関と電気駆動ユニットを分離するための分離クラッチを作動させるための、内燃機関と電気駆動ユニットとの間に配置されたアクチュエータと、制御電子機器(7)とを有し、前記アクチュエータと前記制御電子機器(7)とが、1個の熱保護フード(9)の内部に配置され、少なくとも前記制御電子機器(7)が、前記熱保護フード(9)に接続され、前記熱保護フード(9)が、熱伝導性材料から形成され、前記ハイブリッドモジュール(1)のハウジング部分(5)に接続され、前記ハウジング部分(5)がヒートシンクを成し、前記熱保護フード(9)の熱が前記ハウジング部分(5)に入って放散される冷却デバイス(2)。
【請求項2】
前記アクチュエータが、前記熱保護フード(9)に接続される請求項1に記載の冷却デバイス。
【請求項3】
前記ハウジング部分(5)が、前記アクチュエータのハウジング部分である請求項1または2に記載の冷却デバイス。
【請求項4】
前記ハウジング部分(5)と前記熱保護フード(9)とが、前記アクチュエータおよび前記制御電子機器(7)のための閉じた空間(10)を形成する請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項5】
前記熱保護フード(9)が、アルミニウムまたは銅から構成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項6】
前記熱保護フード(9)がヒートパイプを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項7】
前記熱保護フード(9)が、前記熱保護フード(9)の外側を取り囲む手段から前記熱保護フード(9)内への伝熱を小さくする外面を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項8】
前記熱保護フード(9)が、リブを有さないように設計された外面を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項9】
前記熱保護フード(9)が、断熱材料から形成される層(15)を有し、前記層(15)が、前記外面を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項10】
前記熱保護フード(9)が円周状のフランジ(13)を有し、前記フランジ(13)の領域内で、前記熱保護フード(9)が前記ハウジング部分(5)に当接する請求項1〜9のいずれか一項に記載の冷却デバイス。
【請求項11】
前記フランジ(13)の領域内で、前記熱保護フード(9)が、ねじ(14)によって前記ハウジング部分(5)に接続される請求項10に記載の冷却デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車のハイブリッドモジュール用の冷却デバイスであって、ハイブリッドモジュールが、ハイブリッド車の内燃機関と電気駆動ユニットを分離するための分離クラッチを作動させるための、内燃機関と電気駆動ユニットとの間に配置されたアクチュエータと、制御電子機器とを有する冷却デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなハイブリッド車において構成されるハイブリッドモジュールは、実用から周知である。そのようなハイブリッドモジュールでは、ハイブリッドモジュールから熱を放散させることができるようにヒートシンクを備える冷却デバイスが使用される。
【0003】
分離クラッチが外部アクチュエータによって作動されるハイブリッドモジュールが使用される。アクチュエータができる限り良好に動作するように、電気構成要素、特に制御電子機器を冷却しなければならない。ほとんどの用途において、アクチュエータは、高温環境内、特に内燃機関からの熱や排気システムからの熱などを受ける領域内に位置される。このため、冷却効果をより達成し難くなる。不十分な冷却は、分離機能を不能にし、アクチュエータ内の熱感受性構成要素および制御電子機器を破壊することさえある。
【0004】
(特許文献1)に、自動車トランスミッションの区域用の、複合材から構成されたカバーが開示されている。このカバーは、一部片の内部ヒートシンクを有し、そこに制御電子機器が固定される。熱安定性材料から製造されるカバーは、自動車トランスミッションの上記の区域を閉じて保護し、この区域は、例えば弁、ソレノイド、モータ、およびセンサなど電気および電子構成要素を含む。プレートまたはヒートシンクは、上記のカバーがトランスミッション流体の流れに両側でさらされる点では、カバーの内面から離して位置される。制御電子機器は、カバーの外面に配置され、例えばピンやボルトなど熱伝達性の機械的固定要素によってカバー内部のプレートに固定される。特に、制御電子機器のハウジングは、リブを有するヒートシンクを設けられる。上記のデバイスは、内燃機関または排気システムの領域内など、自動車の高温構成要素の領域内での動作には適していない。
【0005】
(特許文献2)、(特許文献3)、および(特許文献4)から、制御電子機器を有し、自動車と共に使用されるアセンブリ用の冷却デバイスであって、より低温の外気にさらされる冷却リブを有する冷却デバイスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0182034A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0031215A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0078489A1号明細書
【特許文献4】米国特許第6,148,855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温構成要素、例えばハイブリッド車の内燃機関または排気システムの領域内でのハイブリッドモジュールの使用を可能にする、ハイブリッド車のハイブリッドモジュール用の冷却デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の特徴に従って設計される、ハイブリッド車のハイブリッドモジュール用の冷却デバイスによって実現される。
【0009】
したがって、本発明によれば、アクチュエータと制御電子機器が熱保護フード内部に配置され、少なくとも制御電子機器が熱保護フードに接続されることが企図される。好ましくは、アクチュエータも熱保護フードに接続される。熱保護フードは、熱伝導性材料から形成され、ハイブリッドモジュールのハウジング部分に接続され、ハウジング部分はヒートシンクを成す。熱保護フードは、外部からの熱からアクチュエータおよび制御電子機器を保護し、そのような熱は、例えば、すぐ近くに位置された内燃機関や排気システムなどの高温構成要素により生じる熱である。熱保護フードが、熱伝導性の高い材料から形成されることにより、熱保護フード内に伝達された熱は、高温外部構成要素によるものであれ、アクチュエータおよび/または制御電子機器の加熱によるものであれ、ヒートシンクを成すハイブリッドモジュールのハウジング部分へ、短い経路で伝達することができる。
【0010】
このハウジング部分は、好ましくは、アクチュエータのハウジング部分である。したがって、ヒートシンクは、アクチュエータの特定の構造要素を直に構成する。
【0011】
基本的には、ハイブリッドモジュールの電気構成要素に対する損傷が防止されるように、ハイブリッドモジュールの領域内で生じた熱をハイブリッドモジュールのハウジング部分へ十分に除去するのに熱保護フードが適していることが保証される限り、熱保護フードの上記の設計は任意選択的なものである。熱的な観点から、ハウジング部分と熱保護フードとが、アクチュエータおよび制御電子機器のための閉じた空間を形成すると特に有利であると考えられる。この閉じた空間の提供は、例えば内燃機関や排気システムなど高温構成要素の領域内の暖かい空気がアクチュエータおよび制御電子機器に直接は伝わらないようにする。熱保護フード内部での特に良好な伝熱を保証するために、熱保護フードがアルミニウムまたは銅から形成されることが企図される。全体として、熱保護フードがヒートパイプによって形成される、またはヒートパイプを有することも可能である。
【0012】
熱保護フードの過剰な加熱が実質的に防止されると特に有利である。高温構成要素の領域内で熱保護フードがより低温であればあるほど、ヒートシンクを成すハイブリッドモジュールのハウジング部分に熱保護フードを通して除去しなければならない熱の量は小さくなる。
【0013】
この観点で、熱保護フードが、熱保護フードの外側を取り囲む手段から熱保護フード内への伝熱を小さくする外面を有すると特に有利であると考えられる。
【0014】
特に、熱保護フードが、リブを有さないように設計された外面を有することが企図される。リブが構成される場合、熱保護フードの外面が比較的大きくなり、その結果、熱保護フード内への比較的大きな入熱が生じる。本発明の発展形態によれば、熱保護フードの外面がリブを有さないように設計されることにより、他の点では同一の熱的条件下で、熱保護フード内への入熱が比較的小さくなる。
【0015】
熱保護フードは、例えば、凹凸のない外面を有するように設計される。この設計は、熱保護フードの外面の面積をできるだけ小さく保つことに寄与する。
【0016】
熱保護フードが、断熱材料から形成される層を有し、この層が外面を形成すると特に有利であると考えられる。この絶縁層により、熱保護フードは、ハイブリッド車の高温構成要素の領域内に配置されるが、温度上昇の程度は比較的小さいものにすぎないことが保証される。
【0017】
熱保護フードから、ヒートシンクを成すハイブリッド手段のハウジング部分への特に良好な伝熱を保証するために、一発展形態によれば、熱保護フードが円周状のフランジを有し、フランジの領域内で、熱保護フードがハウジング部分に当接することが企図される。フランジとハウジング部分との間の大きな移行領域は、熱保護フードとハウジング部分との間での十分に大きな伝熱、したがって熱保護フード、特に高温構成要素に面する熱保護フードの領域内での好適な温度低下を実現可能にする。
【0018】
熱保護フードは、様々な様式でハウジングに接続することができる。好ましくは、熱保護フードは、フランジの領域内でハウジング部分にねじ留めされる。
【0019】
本発明のさらなる特徴は、従属請求項、添付図面、および図面に示される好ましい例示的実施形態の説明から明らかになるが、それらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハイブリッドモジュール用の冷却デバイスの領域での、ハイブリッド車のハイブリッドモジュールを通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、ハイブリッド車で使用するためのハイブリッドモジュール1を、本発明に重要なハイブリッドモジュール1の領域に関して示す。この領域には、冷却デバイス2が割り当てられている。また、ここで、図示される領域内にはハイブリッドモジュールの一部のみが示されている。ハイブリッドモジュール1は、ハイブリッド車の内燃機関と電気駆動ユニットとの間に配置されたアクチュエータを有する。このアクチュエータは、内燃機関と電気駆動ユニットとを分離するための分離クラッチを作動させる働きをする。アクチュエータ自体ではなく、アクチュエータを受け取るためのハイブリッドモジュール1のハウジング3のみが図示されている。このハウジング3は、ハイブリッドモジュール1のハウジング部分5の凹部4に取り付けられ、このハウジング部分5は、熱伝導性の高い材料から構成される。このハウジング部分5は、何らかの手段(特には図示せず)によって、例えば冷却回路によって冷却され、したがってヒートシンクを構成する。
【0022】
ハウジング3を有する構造ユニットは、さらなるハウジング6を形成し、ハウジング6は、ハイブリッドモジュール1の一部を同様に形成する制御電子機器7を受け取る。制御電子機器7に関しては、その電気接続のみが図示されている。2つのハウジング3および6内に取り付けられたシャフト8が、制御電子機器7と相互作用し、ここで、制御電子機器7によってシャフト8の回転位置を感知することができる。
【0023】
したがって、ハウジング3は、アクチュエータを受け取る働きをし、ハウジング3と共に構造ユニットを形成するハウジング6は、制御電子機器7を受け取る働きをする。2つの電気構成要素(アクチュエータと制御電子機器)は、動作中に熱を発生する。
【0024】
アクチュエータと制御電子機器、したがって2つのハウジング3および6は、熱保護フード9内部に配置される。
【0025】
ここで、少なくとも制御電子機器7が、伝熱できるように熱保護フード9に接続される。例示的実施形態によれば、アクチュエータも、伝熱できるように熱保護フード9に接続される。熱保護フード9は、アルミニウムまたは銅から構成され、したがって熱伝導性が特に高い。ハイブリッドモジュール1のハウジング部分5と、熱保護フード9とが、ハウジング3およびハウジング6に関する、したがってアクチュエータおよび制御電子機器7のための閉じた空間10を形成する。ハウジング3の領域内で、空間10は、環状空間として表されている。
【0026】
特に、熱保護フード9は、深絞り加工されたアルミニウムシートによって形成され、したがって、熱保護フード9は、ベース11、側周壁12、および側周壁12に隣接する円周状のフランジ13を有する。フランジ13の領域内で、ねじ14は、フランジ13の穴を通過し、熱保護フード9とハウジング部分5とをねじ接続する働きをする。
【0027】
熱保護フード9、したがってアクチュエータおよび制御電子機器7は、ハウジング部分5の外に配置され、さらに、高温構成要素、例えばハイブリッド車の内燃機関または排気システムのすぐ近くに配置される。したがって、ハイブリッドモジュールのこの領域は、熱の作用をより強く受ける。
【0028】
熱保護フード9は、それが取り囲む構成要素を熱から保護する働きをする。外部から熱保護フード9内への入熱を減少させるために、熱保護フード9は、滑らかな形態の外面を有するように設計され、したがってリブまたは他の凹凸構成を有さない。これは、外部熱源に面する熱保護フード9の表面を最小限にする。さらに、熱保護フード9は、外側に、したがって外面の領域内に、断熱材料から形成された層15を設けられる。したがって、この層は、熱保護フード9の外側領域全体を覆う。
【0029】
したがって、アクチュエータの熱感受性構成要素と、アクチュエータの領域内の(比較的)低温のハウジング部分5とを熱的に接続することが提案される。熱保護フード9によって形成されるこの接続は、第1に、アクチュエータおよび制御電子機器7を高温環境から遮蔽し、第2に、(矢印16で示されるように)上記の熱感受性構成要素からハウジング部分5内に熱を放散しやすくする。このために、接続は、アルミニウムや銅など熱伝導性の高い材料から製造され、さらに任意選択で、上述したように層15によって高温環境から断熱される。
【0030】
本発明による設計は、高温構成要素のすぐ近くに位置されたハイブリッドモジュールの電気構成要素が高温になりすぎ、したがって損壊されるのを防止する。
【符号の説明】
【0031】
1 ハイブリッドモジュール
2 冷却デバイス
3 ハウジング
4 凹部
5 ハウジング部分
6 ハウジング
7 制御電子機器
8 シャフト
9 熱保護フード
10 閉じた空間
11 ベース
12 側周壁
13 フランジ
14 ねじ
15 層
16 矢印
図1