【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低損失オプティカル新機能部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
KONOPSKY V N,Operation of scanning plasmon near-field microscope with gold and silver tips in tapping mode: demonstration of subtip resolution,Optics Communications,2000年11月 1日,Vol.185,p.83-93
【文献】
KIHM H W , et.al.,Control of surface plasmon generation efficiency by slit-width tuning,Applied Physics Letters,2008年 2月 8日,Vol.92,p.051115-1 - 050005-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の実施形態を説明する前に、本発明に至った経緯および本発明の原理を説明する。
【0023】
プラズモンの密度分布を評価するためには、プラズモン密度に影響を与えられて変化する物性値およびサブミクロンの空間分解能を持つ物性測定方法が必要である。そこで、本発明者達は、プラズモン密度に影響を与えられて変化する物性値としては、ラマン散乱光強度、発光強度が有効であることを見出した。また、本発明者達は、サブミクロンの空間分解能を持つ物性測定方法としては、ナノメートルサイズの金属プローブによる増強効果を用いることが有効であることを見出した。これを以下に
図1を参照して説明する。
【0024】
まず、プラズモン密度に影響を与えられる物性値を得るために、金属ナノ構造体に有機あるいは無機のラマン散乱体、あるいは発光体を均一に塗布した。そして、この金属ナノ構造体に光を照射し、金属ナノ構造体内のプラズモン密度を反映したラマン散乱あるいは発光を生じさせた。ラマン散乱光あるいは発光光はプラズモンの状態を評価するモニター光である。このモニター光を、先端に金属ナノ粒子が設けられ金属ナノ構造体に近接して配置されたプローブで走査することにより、プラズモン密度を反映した画像を取得した。
【0025】
上記画像を解析した結果、プローブ増強効果が出現しており、このプローブ増強効果には二つあることが分かった。一つはプラズモン密度が高くなっている部分の近傍ではラマン散乱体のラマン散乱光強度、あるいは発光体の発光光強度が増強されていた。この増強度は数倍〜10
6倍程度であった。また、プローブ先端に設けられたナノメートルサイズの金あるいは銀球(以下、金属ナノ粒子とも云う)の近傍でも、ラマン散乱体のラマン散乱光強度、あるいは発光体の発光光強度は増強されることが本発明者達によって見出された。これも増強度は数倍〜10
6倍程度であった。また、金属ナノ構造体と金属ナノ粒子に挟まれたことによる増強効果も起こっていることがわかった。
【0026】
また、先端に金属球がなくとも、観測手段をレイリー散乱光とするとプラズモン評価におけるS/Nや空間分解能が高くなることが判明した。
【0027】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるプラズモン評価方法を
図2乃至
図5を参照して説明する。
【0029】
まず
図2に示すように、Inが一部析出したInリッチのInGaN基板2に、例えば直径が100nmの銀または金からなる金属ナノ粒子12が先端に設けられたプローブ10を近づけ、InGaN基板2に波長が532nmの励起光30を照射したプローブと基板との間は原子間力の働く距離に設定する。すると、InGaN基板2から、波長が600nm程度のフォトルミネセンス40を観測した。ここで金属ナノ粒子12のサイズが小さければ空間分解能は向上するが、増強空間が小さくなるため、S/N比は小さくなる。
【0030】
また、逆に金属ナノ粒子12のサイズが大きければS/N比は大きくなるが、空間分解能は悪化する。双方を鑑み、金属ナノ粒子12の直径は50nm〜200nmが利用しやすい範囲であった。ただし、空間分解能が必要なければ、金属ナノ粒子12のサイズを大きくすればよく、上記範囲に限定する必要はない。
【0031】
励起光30の照射を、InGaN基板2上を走査して、フォトルミネセンス40の強度を観測し、解析を行った。この観測によるフォトルミネセンス強度の分布を
図3に示す。
【0032】
その解析の結果、InGaN基板2中でInが析出した部分に金属ナノ粒子12が接近した時にフォトルミネセンス強度が増強されていることが判明した。この領域を原子間力顕微鏡(AFM)で調べた。AFMでの走査結果を
図4に示す。
図4からわかるように、特に隆起等は観測されない場所であった。これは励起光30によって、InGaN基板2において析出したInのナノドット中にプラズモンが励起され、そのプラズモンの増強効果と、金属ナノ粒子12を有するプローブ増強効果と、プラズモンのギャップモードが反映した結果であると考えられる。
【0033】
本実施形態のプラズモン評価方法を実施するプラズモン評価装置を
図5に示す。このプラズモン評価装置は、金属ナノ粒子12が先端に設けられたプローブ10と、励起光30を発生する励起光発生装置60と、励起光発生装置60から発生された励起光を、試料20(本実施形態ではInGaN基板2)に集光させ、試料20から発生されるフォトルミネセンス40を分光する光学系50と、この光学系50を介して得られるフォトルミネセンス40を受光し、電気信号に変換する受光装置70と、この受光装置70の出力である電気信号を画像化する画像化装置80とを備えている。
【0034】
光学系50は、励起光発生装置60から発生された励起光30を所望の波長の光のみを通過させるバンドパスフィルタ52と、このバンドパスフィルタ52を通過した光を反射し、フォトルミネセンス40を通過させるビームスプリッタ54と、ビームスプリッタ54によって反射された励起光30を試料20に集光する対物レンズ56と、対物レンズ56およびビームスプリッタ54を介して得られる試料20からのフォトルミネセンス40を、所望の周波数成分のみを通過させ、他の周波数成分を減衰させるノッチフィルタ58と、を備えている。なお、本実施形態においては、対物レンズ56によって集光される励起光の径は1μm程度であり、ノッチフィルタ58を通過したフォトルミネセンス40は600nmを含むある範囲の波長を有している。
【0035】
受光装置70は、ノッチフィルタ58を通過したフォトルミネセンスのみを受光し、電気信号に変換する。この受光装置70として、フォトダイオード、光電子増倍管等が用いられる。この受光装置70の出力である電気信号は、画像化装置80によって画像化され、例えば
図3に示す画像が得られる。
図3に示す画像は、フォトルミネセンス強度の分布を表しており、このフォトルミネセンス強度の分布は、析出したInのナノドット中におけるプラズモン密度分布に反映したものとなる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属ナノ構造体内において特定の波長で励起したプラズモンの密度分布を評価することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるプラズモン評価方法を、
図6を参照して説明する。
【0038】
本実施形態のプラズモン評価方法に用いられる試料200としては、
図6に示すように、例えば、横方向の長さが1000nmで縦方向の長さが400nmのSi基板202上に膜厚が40nmのAu膜204が形成され、このAu膜204上に膜厚が100nmのAlq3(Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum)膜(光発生膜)206が形成された構造を有している。なお、これらのAu膜204およびAlq3膜206の形成は蒸着によって行う。
【0039】
この試料200上に、プラズモン定在波励起用の波長が810nmでパワー密度が500mW/cm
2の励起光32と、Alq3励起用の波長が532nmでパワー密度20mW/cm
2の励起光34を照射した。励起光32は、図示しない励起光発生装置から発生され、励起光34は図示しない他の励起光発生装置から発生される。これらの励起光は図示しない光学系(例えば、
図5に示す光学系50)を介して、試料200に照射される。
【0040】
そして、上記励起光32、34を試料200上に照射するとともに、直径が100nmの例えば銀からなる金属ナノ粒子12が先端に設けられたプローブ10を用いて試料200の表面を走査した。プローブと基板との間は原子間力の働く距離に設定する。そして、この走査により得られる、試料200から発生された波長が500nm〜600nmのスペクトルを、図示しない光学系(例えば、
図5に示す光学系50)を介して、図示しない受光装置(例えば、
図5に示す受光装置)により取得した。
【0041】
本実施形態において、Alq3膜206の励起光として用いた光の波長は532nmであった。別途、ガラス基板上に蒸着したAlq3膜の膜厚を変化させたサンプルを作成し、これらのサンプルに波長が532nmの光を照射し、Alq3膜からの発光強度を測定した。その測定結果を
図7に示す。
図7からわかるように、Alq3の膜厚が厚くなるにしたがって、測定された発光強度も増強した。このため、本実施形態において、受光装置によって測定されたフォトルミネセンスは、Alq3からの発光と判断できた。観測された580nmのフォトルミネセンス強度において、図示しない画像化装置(例えば、
図5に示す画像化装置80)によって得られた画像を解析した結果、プラズモンの定在波が観測された。また、574nmのラマン散乱光強度でも同じ定在波形状が観測できた。これは、プラズモンの定在波を反映していると考えると理解できる。
【0042】
Alq3膜206の膜厚は40nm〜200nmの範囲でも効果を確認することができた。また、Au膜204の代わりに、Al、Ag、Cuのいずれかからなる金属膜を用いても同様の効果を確認できた。
【0043】
また、Si基板202の代わりに石英ガラス基板を用い、プラズモン励起光34を下から照射した場合でも同様の結果を得た。
【0044】
更にAlq3の代わりに、PMMA(polymethylmethacylate)乳酸エチル溶液をスピンコートし、ラマン散乱光の増強像を画像化しても同様の結果を得た。発光体の場合、プラズモン励起光の波長は発光体が励起されない波長の方が望ましいが、透明なラマン散乱体の場合、そのプラズモン励起波長の制限が無くなる。
【0045】
また、金属ナノ粒子12の直径が50nm〜200nmであっても同じ効果を得ることができた。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属ナノ構造体内において特定の波長で励起したプラズモンの密度分布を評価することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態によるプラズモン評価方法を、
図8を参照して説明する。
【0048】
本実施形態のプラズモン評価方法に用いられる試料200Aとしては、
図8に示すように、例えば、横方向の長さが1000nmで縦方向の長さが400nmのSi基板202上に膜厚が40nmのAu膜204が形成された構造を有している。一方、プローブ10としては、プローブ10の先端に設けられた例えば直径が80nmのAuからなる金属ナノ粒子12の表面がPMMAの薄膜14で覆われた構成を有している。このPMMAの薄膜14は、プローブ10の先端に設けられたAuからなる金属粒子12を乳酸エチル中に溶かしたPMMA溶液中に一度つけた後、乾燥することによって形成される。PMMAの薄膜14の膜厚はS/N比や空間分解能の見地から40nm〜200nm程度が望ましかった。
【0049】
この試料200上に、プラズモン定在波励起用の波長が810nmでパワー密度が500mW/cm
2の励起光32と、波長が532nmでパワー密度20mW/cm
2の励起光34を照射した。励起光32は、図示しない励起光発生装置から発生され、励起光34は図示しない他の励起光発生装置から発生される。これらの励起光は図示しない光学系(例えば、
図5に示す光学系50)を介して、試料200に照射される。
【0050】
そして、上記励起光32、34を試料200上に照射するとともに、直径が100nmの例えば銀からなる金属ナノ粒子12が先端に設けられたプローブ10を試料200の表面を走査した。プローブと基板との間は原子間力の働く距離に設定する。この走査により得られる、試料200から発生された波長が500nm〜600nmのスペクトルを、図示しない光学系(例えば、
図5に示す光学系50)を介して、図示しない受光装置(例えば、
図5に示す受光装置)により取得した。
【0051】
本実施形態において、約3000cm
−1のメチル基の伸縮振動のモードで画像を取得したところ、プラズモン定在波の像が取得できた。
【0052】
Si基板202の代わりにガラス基板を使用し、ガラス基板側からプラズモンを励起する光を照射しても同様の像を得ることができた。
【0053】
また、金属ナノ粒子12の直径が50nm〜200nmであっても同じ効果を得ることができた。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属ナノ構造体内において特定の波長で励起したプラズモンの密度分布を評価することができる。
【0055】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態によるプラズモン導波路システムを、
図9を参照して説明する。
【0056】
従来の技術では、例えば、数100nm幅の複数のプラズモン導波路が接近して配置されている場合、プラズモン導波路からのプラズモン導波信号を選択して伝播光に変換させることは難しかった。しかし、本実施形態のプラズモン導波路システムはこのようなプラズモン導波路を選択し、光取り出しを可能にしたものである。
【0057】
本実施形態のプラズモン導波路システムは、並列に配置された複数のプラズモン導波路102
1〜102
5と、接地される電極104と、励起光32が照射されると発光する電気的絶縁材料(例えば、Alq3)からなる光励起発光絶縁層106と、複数のプラズモン導波路102
1〜102
5に対応して設けられた複数のn型Si層108
1〜108
5と、励起光32を透過する電気的絶縁材料(例えば、SiO
2)からなる絶縁層110と、n型Si層108
1〜108
5に対応して設けられた複数の透明な電極材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxide))からなる電極112
1〜112
5と、伝播光導波路120と、を備えている。
【0058】
プラズモン導波路102
1〜102
5のそれぞれの一端は、光励起発光絶縁層106の第1の面に接するように設けられている。そして、光励起発光絶縁層106の上記第1の面の、プラズモン導波路102
1〜102
5の一端が接する領域以外の領域に電極104が設けられている。各プラズモン導波路102
i(i=1,・・・,5)に対応するn型Si層108
iの一端が光励起発光絶縁層106を挟んで、プラズモン導波路102
iの上記一端と対向し、かつ光励起発光絶縁層106の上記第1の面と反対側の第2の面に接するように設けられている。各n型Si層108
i(i=1,・・・,5)の他端は絶縁層110の第1の面に接するように設けられている。各電極112
i(i=1,・・・,5)は、対応するn型Si層108
iの他端と絶縁層110を挟んで対向し、かつ絶縁層110の上記第1の面と反対側の第2の面に接するように設けられている。したがって、電極112
i(i=1,・・・,5)と、アースされた電極104との間に電圧を印加すれば、この電圧から電極112
iに対応するn型Si層108
iに光励起発光絶縁層106および絶縁層110に印加される分圧を引いた電圧が印加されることになる。なお、本実施形態においては、プラズモン導波路102
1〜102
5のそれぞれの一端は、光励起発光絶縁層106は接していたが、近接して配置されていてもよい。プローブと基板との間は原子間力の働く距離に設定する。
【0059】
伝播光導波路120は、複数の電極112
1〜112
5に近接して設けられている。なお、伝播光導波路120と、透明電極112
1〜112
5との距離は信号光の収集効率を考えれば100μm以下が望ましい。
【0060】
プラズモン導波路102
1〜102
5の材料として、直径約10nmのAgナノ粒子をSnシード法によってSiO
2中に析出させたものを用いた。リソグラフィーはRIEで行った。体積的にプラズモンポラリトンを導波させる導波路ではこのような金属ナノ粒子が分散した構造が適している。この構造の代わりに、Au、Ag、Cu、およびAlのいずれかからなる金属ナノ細線を用いてもよい。この場合、金属ナノ細線の表面でのみプラズモンポラリトンが導波するため効率は、上記構造に比べて劣ることになる。
【0061】
このように構成された本実施形態のプラズモン導波路システムにおいては、電極112
i(i=1,・・・,5)と、アースされた電極104との間の電圧を変化させることによってn型Si層108
i中のプラズモン導波路102
iの末端側を絶縁相にしたり、金属相にしたりすることが可能とる。これはMOSトランジスタのチャネル生成におけるON−OFFと同じ原理である。
【0062】
そして、光励起発光絶縁層106を励起するための光32を照射し、印加する電圧を調整することにより、n型Si層108
i中の光励起発光絶縁層106の側に金属相を生成すると、プローブ増強効果と同じ効果が得られ、プラズモン導波信号がある時と無い時でルミネセンス強度の変化に差がみられた。
【0063】
したがって、例えば、
図8に示すように、電極112
3に印加する電位を負にし、他の電極112
1、112
2、112
4、112
5に印加する電位を正にして、光励起発光絶縁層106を励起するための光32を照射すると、n型Si層108
3のみに、光励起発光絶縁層106の側に金属相が生成され、このn型Si層108
3の近傍の光励起発光絶縁層106にプローブ増強効果と同じ効果が現れる。しかし、他のn型Si層108
1、108
2、108
4、108
5の光励起発光絶縁層106の側は、絶縁相となっているので、この他のn型Si層108
1、108
2、108
4、108
5の光励起発光絶縁層106には、プローブ増強効果と同じ効果は現れない。すなわち、この場合、プラズモン導波路102
1、102
2、102
3、102
4、102
5にそれぞれ第1アドレス、第2アドレス、第3アドレス、第4アドレス、第5アドレスを割り当てると、第3アドレスのプラズモン導波路102
3を伝播してきたプラズモン導波信号のみが選択されて、伝播光導波路120に伝播され、伝播光に変換されて伝播光導波路120を伝播する。
【0064】
本実施形態のプラズモン導波路システムは、複数のサブミクロンメートルからナノメートルのオーダーのプラズモン導波路から、一つのプラズモン導波路を選択し、この選択したプラズモン導波路からプラズモン導波信号を取得し、伝播光に変換することができる。
【0065】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態によるプラズモン導波路システムを、
図10および
図11を参照して説明する。
【0066】
第4実施形態のプラズモン導波路システムにおいては、電極104、光励起発光絶縁層106、n型Si層108
1〜108
5、絶縁層110、および電極112
1〜112
5は、プラズモン導波路102
1〜102
5の一端側に、すなわち、プラズモン導波信号の伝播する方向に設けられていた。
【0067】
これに対して
図10に示すように、本実施形態のプラズモン導波路システムにおいては、電極104、光励起発光絶縁層106、n型Si層108、絶縁層110、および電極112は、プラズモン導波路102上に設けた、すなわちプラズモン導波信号が伝播する方向と略直交する方向に設けた構成となっている。なお、
図10において、矢印130はプラズモン導波信号の伝播方向を示す。
【0068】
本実施形態においては、プラズモン導波路102の外壁上に、光励起発光絶縁層106が設けられ、この光励起発光絶縁層106の側部を取り囲むように、アースされる電極104が設けられている。光励起発光絶縁層106上にn型Si層108が設けられ、このn型Si層108上に透明電極110が設けられた構成となっている。なお、本実施形態においては、プラズモン導波路102の外壁に光励起発光絶縁層106は接していたが、近接して配置されていてもよい。プローブと基板との間は原子間力の働く距離に設定する。
【0069】
本実施形態において、電極110に印加する電圧を調整してn型Si層108の光励起発光絶縁層106側を金属相にし、励起光32を光励起発光絶縁層106に照射すると、
図11に示すように、プラズモン導波路102を伝播するプラズモン導波信号に同期した光励起発光絶縁層106からの発光が観測された。電圧差を変え、n型Si層108における金属相の位置を光励起発光絶縁層106から遠ざけた時は、ルミネセンス強度は小さくなり、観測感度以下まで減少した。
【0070】
図10に示すプラズモン導波路システムを、並列に配置された複数のプラズモン導波路を有するシステムに適用することができる。この場合も、第4実施形態と同様に、複数のプラズモン導波路から、一つのプラズモン導波路を選択し、この選択したプラズモン導波路からプラズモン導波信号を取得し、伝播光に変換することができる。
【0071】
なお、光励起発光絶縁層106のフォトルミネセンス励起として、プラズモン導波路を伝播するプラズモン導波信号を用いることもできるが、その場合、プラズモン導波信号が減衰する。このため、プラズモン導波信号では、励起できない物質を、光励起発光絶縁層106に用いることが好ましい。
【0072】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1として、第1乃至第5実施形態に用いられる、Alq3の膜厚の最適値を求める実験を行った。
【0073】
まず、ガラス基板上にAuとAlq3をこの順序で塗布し、Alq3の膜厚を40nm、100nm、200nmと変えるとともにAuの膜厚を0nm、20nm、43nmと変えたときの、発光強度の膜厚依存性を調べる実験を行った。この実験は、532nmの光で励起し、580nmのフォトルミネセンス強度を測定した。この測定結果を
図12に示す。
【0074】
Auの膜厚が43nm、Alq3が100nm程度の場合、Auがない場合の20倍〜50倍の発光強度の増加が得られた。
【0075】
(実施例2)
本発明の実施例2として、
図13に示すように、600本/mm(ピッチ1.67μm)の回折格子および1800本/mmの回折格子(ピッチ0.56μm)上にAuを40nm、Alq3を100nm蒸着した試料を作成し、これらの試料について、顕微発光観測と、
図5に示したプラズモン評価装置を用いて、ルミネセンス強度の観測を行った。600本/mmおよび1800本/mmの回折格子の顕微発光観測の結果を
図14(a)、(b)に示し、ルミネセンス強度の観測を
図14(c)、(d),(e)、(f)に示す。
【0076】
図14(c)、(d)は、600本/mmおよび1800本/mmの回折格子をプローブ(チップ)なしで、顕微鏡の対物レンズを通して観測した結果を示すマッピング像であり、
図14(e)、(f)は、600本/mmおよび1800本/mmの回折格子を試料と顕微鏡の対物レンズとの相対位置を変化させずにチップのみをスキャンした場合の観測結果を示すマッピング像である。
【0077】
図14(e)に示すように顕微発光では600本/mmの回折格子では表面増強発光効果が見られた。しかしながら、顕微発光の分解能は光の回折限界である約1μmであるため、1800本/mmの回折格子の増強発光効果は観察できなかった(
図14(f))。
【0078】
この状態でルミネセンス強度の画像の観測を行ったところ、空間分解能が金属ナノ粒子12の先端径である約150nmに向上し、S/N比も向上した構造が観測された。これはFDTDシミュレーションで計算した回折格子上のプラズモン分布と一致した。
【0079】
顕微発光による観察は表面増強効果(プラズモン密度による増強効果)を観測していることになる。600本/mmの回折格子では、高い空間分解能が必要ではないため、顕微装置でも観測できている。チップをスキャンして観測したマッピング像と比べても構造に違いはほとんどなく、S/Nが向上しているのみである。従って、チップが存在することによる影響は見られなかった。また、1800本/mmの回折格子では、顕微発光による観測では空間分解能が足りず構造が観測できないが、チップを用いることにより、空間分解能とS/Nが向上し、構造が観測できるようになった。また、チップを用いることによりAFMのトポグラフィー像が同時に観測できるため、凹凸の構造とプラズモン密度が容易に対応づけられる。
【0080】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3として、プローブ(チップ)によって増強されたラマン散乱(以下、プローブ増強ラマン散乱(チップ増強ラマン散乱)ともいう)について説明する。
【0081】
まず、Si基板上に成長させた、直径が200nmで高さが40nmのGe量子ドットに532nmの励起光を入射し、Siのプローブ増強ラマン散乱光のスペクトルのマッピング測定を行った。観測したラマンモード(波数)はGeではなくSi基板の520cm
−1のラマンモードを用いて観測を行った。
図15(a)に、Ge量子ドットのAFM像を示す、
図15(b)にチップ増強ラマン散乱像を示す。
図15(a)、15(b)からわかるように、増強したラマン強度のうち、Ge量子ドット上Siのラマン散乱の増強度が減少したイメージングが取得できた。
【0082】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態を説明する。上記第1乃至第5実施形態においては、プラズモンの評価に、試料に励起光を照射したときに出射される発光またはラマン散乱光を用いていた。本実施形態によるプラズモンの評価方法は、レイリー散乱光を用いたものである。
【0083】
まず、プラズモンの評価に、レイリー散乱光を用いる理由について説明する。
【0084】
近接場分布が非開口型の近接場光学顕微鏡で観察できることをHwanらが報告している(Zee Hwan Kim and Stephen R. Leone, OPTICS EXPRESS 16, 1733 (2008))。また、偏光変換するナノ構造近接場効果(例えば、特開2007−272016号公報、特開2007−272017号公報、特開2007−272018号公報、および特開2007−272019号公報参照)を評価するためには、入射光の偏光と偏光変換された出射光の偏光に依存する近接場ポテンシャルのみを抽出すると解析しやすい。
【0085】
出射光には、レイリー散乱光、透過光、ラマン散乱光、ブリリアン散乱光、発光等々混ざっているが、ここで重要なことは、レイリー散乱光の情報である。レイリー散乱光は光の波長よりも小さいサイズの構造からの光の散乱である。見方を変えれば、ラマン散乱光はフォノンやボンドの振動エネルギー分だけ波長がシフトするが、レイリー散乱光はシフト量がないと考えることができる(
図16参照)。これは、波数ベクトルは保存せずエネルギーのみが保存した状態である。レイリー散乱光にはエネルギーのシフトが無いため、散乱強度は大きく、レイリー散乱光の測定時におけるS/N比は高くなる。S/N比が高くなれば、プラズモンの評価に用いるプローブの先端のサイズが小さくても評価することができるということになる。そして、金属ナノ構造体の表面の近接場ポテンシャルは表面プラズモンのポテンシャルであるので、プラズモン状態を評価する際に、プローブ増強ラマン散乱を用いる代わりにプローブ増強レイリー散乱を用いることが可能となる。
【0086】
偏光変換するナノ構造近接場効果の評価、すなわち金属ナノ構造体における偏光変換に関するプラズモン状態を評価する場合に、第2乃至第5実施形態で説明した、プローブ増強ラマン散乱を用いることもできるが、プローブ増強レイリー散乱を用いたほうが、S/N比を高くすることができるという長所がある。このため、レイリー散乱光を測定することが、金属ナノ構造体における偏光変換に関するプラズモン状態を評価する上で重要となる。
【0087】
しかし、レイリー散乱光の測定を妨げるものとして、透過光や反射光がある。反射光や透過光は偏光を保存するため、入射光を直線偏光とし、入射光の直線偏光と直交する偏光方向を有する検光子を受光器の前に配置することにより、反射光や透過光を受光器が受光しないようにすることができる。
【0088】
また、レイリー散乱光は同心球状に放射されるのに対し、透過光や反射光は入射光の方向性に強く依存しているため、光学系を工夫し、透過光あるいは反射光が進まない方向に受光器を設けることが重要である。また、発光や、ラマン散乱光、ブリリアン散乱光を、受光器が受光しないためには、波長的に分離することが効果的であり、干渉フィルタや分光器等でレイリー散乱光の波長のみを透過させるような構成とする。ただし、増強効果としては、プローブの振動方向が有効となるため、振動方向に検光子の偏光方向を合わせる必要がある。
【0089】
したがって、本実施形態の評価方法としては、
図17に示すように、図示しない光源から出射された励起光340は金属ナノ構造体300に入射し、この励起光(入射光)340の偏光方向を、プローブ310の振動を偏光子320の入射面321に射影した方向に対して垂直にし、検光子330の偏光方向はプローブ310の振動を観測面332に射影した方向に対して平行とする。入射光340は、偏光子320を介して金属ナノ構造体300の裏面に入射し、金属ナノ構造体330を透過した透過光350は所定の方向に伝播する。レイリー散乱光360は、同心球状に放射し、検光子330を介して受光器(図示せず)に送られる。また、
図18に示すように、プローブ310は圧電変換器(PZT)395によって所定の周波数(タッピング周波数)で振動するように駆動される。なお、
図18においては、金属ナノ構造体300からのレイリー散乱光360は、対物レンズ370を介して受光器380に送られ、電気信号に変換される。受光器380からの出力(電気信号)は、タッピング周波数と同期したロックインアンプ390で増幅して、その増幅された電気信号をプローブ310の位置と対応させて画像の取り込み(イメージング)を行う。イメージング中は、移動させるのはプローブ310または観測試料300のみであり、光学系は動かさない。プローブ310が金属ナノ構造体300に近づいた時には、プローブ310の先端のプラズモン増強効果により、プローブ近傍のレイリー散乱光360の強度が増強し、空間分解能が向上することとなる。なお、
図18においては、
図17に示した偏光子320および検光子330を図示していない。
図17に示す本実施形態においては、励起光を金属ナノ構造体300の裏面側がら照射するので、金属ナノ構造体300の厚みは、5nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜300nmであることが更に好ましい。
【0090】
レイリー散乱光は強度が強いため、プローブ310のサイズが小さくてもS/Nが十分取れ、AFM(原子力間顕微鏡)用の標準カンチレバータイプのプローブでも使用することができる。空間分解能はプローブの先端のサイズで決まり、プローブ増強ラマン散乱やプローブ増強発光では、S/N比の観点からプローブの先端に金属球が設けられ、この金属球のサイズは100nm前後となるから、空間分解能は100nm前後となる。しかし、プローブ増強レイリー散乱では、プローブの先端には金属球を設ける必要がなく、またAFM用のプローブが使用できるので、プローブの先端を30nm〜40nm程度とすることにより、30nm〜40nm程度の空間分解能が確保できる。例えば、
図17に示すように、偏光子320によって偏光された入射光340は金属ナノ構造体300の表面に対して斜めから入射することになるので、偏光子320の偏光方向も金属ナノ構造体300の表面に対して傾斜したものとなる。また、検光子330によって偏光されるレイリー散乱光360を受光する受光器の受光面が、金属ナノ構造体300の表面に対して斜めに配置されているので、検光子330の偏光方向も金属ナノ構造体300の表面に対して傾斜したものとなる。
【0091】
次に、本実施形態の比較例として、
図19に示す光学系(プラズモン評価装置)を用いて、ナノサイズ(例えば高さが100nm)の金ロッドからなる金属ナノ構造体302のレイリー散乱像およびAFM像を測定した。なお、
図19に示す光学系には、図示されていないが、
図18に示す、プローブ310、圧電変換器395、およびロックインアンプ390が設けられている。この光学系においては、光源420から出射された励起光(入射光)は偏光子320によって偏光された入射光340となり、その後、ハーフミラー385、対物レンズ370を介して金属ナノ構造体302に入射し、金属ナノ構造体302からのレイリー散乱光360は、対物レンズ370、ハーフミラー385、および図示しない検光子330を通って受光器380によって受光される。AFM像およびレイリー散乱像の測定結果を
図20(a)、20(b)にそれぞれ示す。レイリー散乱像はAFM像とほぼ同じ形状、サイズを反映しており、空間分解能が高いことが分かる。
【0092】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態によるプラズモン評価方法について
図21を参照して説明する。本実施形態の評価方法は、第6実施形態において、偏光変換試料(金属ナノ構造体)として、例えば高さが60nmのワイヤーグリッド400を用いたものであり、
図21に示す光学系(プラズモン評価装置)が用いられる。偏光子320に入射する励起光340は、光源420から出射される。偏光子320と検光子330の偏光方向をクロスニコル配置(偏光方向が直交する配置)にすると、光は透過しない。しかし、偏光子320と検光子330との間に、偏光板(例えば、ワイヤーグリッド400)を斜めに配置すると光が透過する。これは、偏光子320と検光子330との間に配置した偏光板(例えば、ワイヤーグリッド400)が偏光変換の機能を果たしていることになる。ただし、偏光板(例えば、ワイヤーグリッド400)の偏光方向が偏光子320あるいは検光子330と同じ偏光方向となる配置では、その機能は無くなる。
【0093】
そこで、
図21に示すような配置で、偏光板として、偏光機能を持つワイヤーグリッド400を用い、評価を行った。ワイヤーグリッド400の偏光方向が偏光子320の偏光方向と成す角度(ワイヤーグリッド角度ともいう)を、0°、45°、90°として測定を行った。ワイヤーグリッド角度が0°であることはワイヤーグリッド400の偏光方向が偏光子320の偏光方向と同じであることを意味し、ワイヤーグリッド角度が90°であることはワイヤーグリッド400の偏光方向が検光子330の偏光方向と同じであることを意味する。その結果、
図22(a)、22(c)に示すように、ワイヤーグリッド角度0°と、ワイヤーグリッド角度90°では信号が得られず、
図22(b)に示すように、ワイヤーグリッド角度45°の配置において斜めの筋を有する画像が得られた。この筋の画像は、表面プラズモンが発生し、その分布を表している。
【0094】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態のプラズモン評価方法について
図23を参照して説明する。
【0095】
本実施形態のプラズモン評価方法は、
図23に示す光学系(プラズモン評価装置)を用いることにより行われる。
図23に示す光学系には、
図19に示す光学系において、ハーフミラー360を偏光ビームスプリッタ430に変えるとともに、受光器380の前段に検光子330を設けた構成となっている。なお、
図23に示す光学系には、図示されていないが、
図18に示す、プローブ310、圧電変換器395、およびロックインアンプ390が設けられている。光源420から出射された励起光は、偏光子320によって偏光された入射光340となり、偏光ビームスプリッタ430に送られる。この偏光ビームスプリッタ430は、偏光子320によって偏光された入射光340を反射して対物レンズ370を通して、ナノサイズの金ロッドからなる金属ナノ構造体(金ナノロッドともいう)302に入射する。そして、一部の光は反射され、金ナノロッド302で生じたレイリー散乱光は対物レンズ370を通って偏光ビームスプリッタ430に送られる。偏光ビームスプリッタ430によって偏光変換されたレイリー散乱光360のみが偏光ビームスプリッタ430を透過して検光子330を通って受光器380に送られて、受光される。一方偏光変換されないレイリー散乱光360aは、偏光ビームスプリッタ430によって反射され、偏光子320に送られる。
【0096】
図23に示す本光学系を用いて、第7実施形態で説明したワイヤーグリッド400を測定した結果、第7実施形態と同じ結果を得ることができた。
【0097】
(実施例1)
次に、第8実施形態によるプラズモン評価方法の実施例1として、標準試料としてSi基板上に作製した金ナノロッドを観測した。金ナノロッドのサイズは高さ100nm、幅100nm、長さ400nmである。ナノロッドの長軸を入射光方向に対して45°に配置した。励起光の波長を532nmとして、レイリー散乱光のイメージングを取得した。
【0098】
レイリー散乱光はタッピング周波数の高調波成分を含んでいて、その二倍波の周波数を、ロックインアンプに同期させて検出した。プローブは金をコートしたものを使用した。その検出結果を、
図24(b)に示す。励起光の偏光方向を金ナノロッドの長軸と平行にした場合には、金ナノロッド内に周期的な線状の筋みが現われたが、金ナノロッドの長軸と垂直な方向に偏光にしたときは、線状の筋は現われなかった。この結果は、プローブのコート材質が銀であってもプラチナであっても変わらなかった。これは金ナノロッドの表面に表面プラズモンが発生した分布を表している。また、どちらの画像にもシリコン基板部に1μm間隔の模様が現われたが、これは、金ナノロッドの配置の周期性を反映した効果であると考えられる。また、同時に取得したAFM像を
図24(a)に示す。
【0099】
次に、励起光の波長が405nmとした場合の、レイリー散乱光による検出結果を
図25(b)に示し、同時に取得したAFM像を
図25(a)に示す。励起光の波長が405nmとした場合も、励起光の偏光方向を金ナノロッドの長軸と平行にした場合には、金ナノロッド内に周期的な線状の筋みが現われたが、金ナノロッドの長軸と垂直な方向に偏光にしたときは、線状の筋は現われなかった。
【0100】
(実施例2)
次に、第8実施形態の実施例2として、
図26に示す、光記録媒体(光ディスク)の読み出し用ピックアップ光学系を作製した。このピックアップ光学系は、
図23に示す光学系において、偏光子320と偏光ビームスプリッタ430との間に空間フィルタとなるアパーチャ450を設け、偏光ビームスプリッタ430と検光子33との間に空間フィルタとなるアパーチャ470を設け、偏光ビームスプリッタ430と対物レンズ370との間に1/4波長板460を設け、光源420として半導体レーザーを用い、受光器380としてフォトダイオードを用いた構成となっている。本実施例においても、光ディスク500は、プローブ310によって所定のタッピング周波数でタッピングされる。
【0101】
再生光は、偏光子320によって偏光された後、同心円形状のアパーチャ450によってドーナツ状のパターンに成形される。この成形された再生光は、偏光ビームスプリッタ430によって反射されて、1/4波長板460、対物レンズ370を通って、光ディスク500に入射する。すると、再生光は光ディスク500によって反射されるとともに、レイリー散乱光が光ディスク500から出射される。この反射された再生光と、レイリー散乱光は、対物レンズ370によって集光され、1/4波長板460を通って偏光ビームスプリッタ430に送られ、偏光ビームスプリッタ430によって偏光変換される。この偏光変換された再生光あるいは記録光は、ドーナツ形状のアパーチャ470によって遮断されるが、レイリー散乱光360のみがアパーチャ470を通過する。アパーチャ470を通過したレイリー散乱光360は、検光子330によって偏光され、受光器であるフォトダイオード380に入射する。そして、受光器380の出力は、図示しないロックインアンプによって、タッピング周波数に同期して増幅され、検出される。
【0102】
再生光の波長は650nm、記録膜の材料はGeSbTe(膜厚30nm)を用いた。
【0103】
記録光のパワーは約4mW、再生光のパワーは0.5mWとした。光記録媒体(光ディスク)500の膜構成は、GeSbTe(膜厚30nm)/金(膜厚50nm)/ポリカーボネート基板(厚み1.2mm)とした。タッピング周波数は小型のAFMカンチレバーを用いて200kHzのものを使用した。
【0104】
この光学系によって、光ディスク500に記録、再生した結果を
図27に示す。
図27には、受光器380であるフォトダイオードの検出信号の強度と、光ディスク500の対応する記録マーク510を示している。なお、記録マーク510はアモルファス状態であり、記録マーク以外の領域は結晶状態となっている。記録マーク510の長さが50nmまで、読み取りの判別ができた。