特許第6039781号(P6039781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039781低いヨウ化エチル含量を有する反応媒体から酢酸を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039781
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】低いヨウ化エチル含量を有する反応媒体から酢酸を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/12 20060101AFI20161128BHJP
   C07C 51/44 20060101ALI20161128BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20161128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   C07C51/12
   C07C51/44
   C07C53/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】26
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-221831(P2015-221831)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-117706(P2016-117706A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】62/079,979
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/874,203
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100098590
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 隆
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ−ファ・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・オー・スケーツ
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−165664(JP,A)
【文献】 特開平10−231267(JP,A)
【文献】 特開2001−181229(JP,A)
【文献】 特開2001−181230(JP,A)
【文献】 特表2001−508405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00−53/50
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸生成物の製造方法であって、反応器内において、メタノールを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成する工程、ここで、該カルボニル化は該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行われる;および該反応媒体から該酢酸生成物を分離する工程を含み、該酢酸生成物が250wppm以下の量のプロピオン酸を含み、メタノールが該反応器中に導入され、メタノール供給源が1〜150wppmの量のエタノールを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該工程が、プロピオン酸を該酢酸生成物から除去し、及び/又は該酢酸生成物中のプロピオン酸濃度を減少させることを含まない方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、該工程が、該反応媒体からアルカンを除去するためのアルカン除去システムを含まない方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、該反応媒体中のヨウ化エチル濃度が1〜750wppmである方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、該反応媒体中のヨウ化エチルと該酢酸生成物中のプロピオン酸が3:1〜1:2の重量比で存在する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、該反応媒体が0.1〜14重量%の量の水を含む方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、該反応器を150〜250℃の温度及び25〜40気圧の全圧に維持する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、該反応媒体が1500wppm以下の量のアセトアルデヒドを更に含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、アセトアルデヒドとヨウ化エチルが2:1〜20:1の重量比で該反応媒体中に存在する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を、
(A)該反応器内の水素分圧;(B)該反応媒体の酢酸メチル濃度;及び/又は(C)該反応媒体のヨウ化メチル濃度:の少なくとも1つを調節し;そして
該反応媒体から該酢酸生成物を分離する;
ことによって維持する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、該反応器内の該水素分圧を0.3〜2気圧に維持する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、該反応媒体の酢酸メチル濃度を0.5〜30重量%に維持する方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、該反応媒体の酢酸メチル濃度を1〜25重量%に維持する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を、該反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去することによって維持する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
ヨウ化エチル濃度が、
(a)該反応媒体の少なくとも一部を分離して、酢酸及び液体再循環物質を含む蒸気オーバーヘッド流を与え;
(b)該蒸気オーバーヘッド流を蒸留して、精製酢酸生成物、並びにヨウ化メチル、水、酢酸、酢酸メチル、及びアセトアルデヒドを含む第1のオーバーヘッド流を生成させ;
(c)該第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部を蒸留して、第2のオーバーヘッド流及び液相残渣を形成し、ここで、該第2のオーバーヘッド流は該第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部に対してアセトアルデヒドが富化されており;そして
(d)該第2のオーバーヘッド流の一部を水で抽出して、アセトアルデヒドを含む水性アセトアルデヒド流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る;
ことを含む方法を用いてアセトアルデヒドを除去することによって維持される方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、該ラフィネートからのヨウ化メチルを該反応器に直接か又は間接的に戻す方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、該第1のオーバーヘッド流を凝縮及び二相分離して軽質液相及び重質液相を形成することを更に含み、ここで工程(c)において蒸留される該第1のオーバーヘッド流の該少なくとも一部が重質液相を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、ヨウ化エチルを含有するエマルジョンを含む相が該軽質液相と該重質液相の間に形成されるのを阻止するのに十分な条件下で該第1のオーバーヘッド流を相分離する方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、該重質液相がヨウ化エチルを含む方法。
【請求項20】
酢酸生成物の製造方法であって、
酢酸、メタノール、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物有機塩を含む反応媒体を与え;
該反応媒体中のメタノールを一酸化炭素でカルボニル化し、
該反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去し;
該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持し;そして
該反応媒体から該酢酸生成物を分離する;
ことを含み、メタノールが該反応器中に導入され、メタノール供給源が1〜150wppmの量のエタノールを含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、該反応媒体中のヨウ化エチル濃度が1〜750wppmである方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、該反応媒体から誘導される流れにヨウ化メチルが富化されている方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、
アセトアルデヒドを除去することが、
(a)該反応媒体の少なくとも一部を分離して、酢酸及び液体再循環物質を含む蒸気オーバーヘッド流を与え;
(b)該蒸気オーバーヘッド流を蒸留して、精製酢酸生成物、並びにヨウ化メチル、水、酢酸、酢酸メチル、及びアセトアルデヒドを含む第1のオーバーヘッド流を生成させ;
(c)該第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部を蒸留して、第2のオーバーヘッド流及び液相残渣を形成し、ここで該第2のオーバーヘッド流は該第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部に対してアセトアルデヒドが富化されており;そして
(d)該第2のオーバーヘッド流を水で抽出して、アセトアルデヒドを含む水性アセトアルデヒド流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る;
ことを更に含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、該ラフィネートからのヨウ化メチルを該反応器に直接か又は間接的に戻す方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、該酢酸生成物が250wppm以下の量のプロピオン酸を含む方法。
【請求項26】
酢酸生成物の製造方法であって、反応器内において、メタノールを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成する工程、ここで、該カルボニル化は、(A)該反応器内の水素分圧;(B)該反応媒体の酢酸メチル濃度;及び/又は(C)該反応媒体のヨウ化メチル濃度;の少なくとも1つを調節することによって行われる;および、該反応媒体から該酢酸生成物を分離して、該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持する工程;および、該反応媒体から該酢酸生成物を分離する工程を含み、メタノールが該反応器中に導入され、メタノール供給源が1〜150wppmの量のエタノールを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2014年11月14日出願の米国仮出願62/079,979(その全ての内容及び開示事項は参照として本明細書中に包含する)からの優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、酢酸の製造方法、特に低いヨウ化エチル含量を有する反応媒体から酢酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]現在用いられている酢酸の合成方法の中で商業的に最も有用なものの1つは、米国特許3,769,329(参照として本明細書中に包含する)において教示されている一酸化炭素によるメタノールの接触カルボニル化である。カルボニル化触媒は、液体反応媒体中に溶解しているか又は他の形態で分散しているか、或いは不活性の固体上に担持されているロジウムのような金属触媒を、ヨウ化メチルによって例示されるハロゲン含有触媒促進剤と共に含む。ロジウムは多くの形態で反応系中に導入することができる。更に、ハロゲン化物促進剤の性質は一般に重要ではないので、数多くの好適な促進剤(その殆どは有機ヨウ化物である)を用いることができる。最も通常的且つ有用には、反応は、一酸化炭素ガスを、触媒がその中に溶解している液体反応媒体を通して連続的にバブリングすることによって行う。
【0004】
[0004]メタノールのカルボニル化反応中において副生成物が形成される。これらの副生成物としては、アルカン及びアルカン様の材料を挙げることができる。米国特許5,371,286においては、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造中に、再循環物質からのアルカン及びアルカン様の材料並びにカルボニル含有不純物の分離を修正することによって、幾つかの残渣の品質を向上させる方法が教示されている。米国特許5,371,286における改良点は、従来技術のストリッパーカラムを還流状態で運転し、水を加えることによってそれから残渣を分割することを含む。米国特許5,371,286における方法はまた、価値がある可能性がある再循環可能な反応物質の廃棄物の体積も減少させる。米国特許5,371,286においては、揮発性成分を還流カラム内で還流し、揮発性部分を更なる処理のために取り出し、水を加えることによって残渣を2つの層に分離し、水相を反応器に再循環することによって揮発性成分を分離することなどの幾つかの工程が特許請求されている。かかるプロセスは、ここではアルカン除去システムと呼ぶ。
【0005】
[0005]メタノールのカルボニル化中において形成される更なる副生成物はアセトアルデヒドである。アセトアルデヒドを減少させることが当該技術において記載されている。例えば、米国特許5,756,836においては、メタノール及び/又は酢酸メチルの水溶液を反応器内において一酸化炭素と連続的に反応させる工程を含む、高純度の酢酸を製造する方法が教示されている。プロセスにおいて得られる粗酢酸中の不飽和化合物の濃度を5wppm以下に制限するために処理が行われ、得られる粗酢酸をオゾン化している。‘836特許においてはまた、反応器内の反応流体中のアセトアルデヒドの濃度を1500wppm以下に維持しながら、メタノール及び/又は酢酸メチルの水溶液を反応器内において一酸化炭素と連続的に反応させる工程を含むことを特徴とする、高純度の酢酸を製造する方法も教示されている。アセトアルデヒド濃度は、10重量%以下の含水率、及び1500wppm以下のアセトアルデヒド濃度において反応を行って粗酢酸生成物混合物を生成させ;粗酢酸生成物混合物を蒸留カラムに送って、高沸点フラクション及び低沸点フラクションを生成させ;低沸点フラクションを処理してその中のアセトアルデヒドの含量を減少させ;そして処理した低沸点フラクションを反応系に戻す;ことによって制御する。
【0006】
[0006]また米国特許5,625,095においても、アセトアルデヒド濃度を減少させなければならないことが示唆されている。‘095特許においては、ロジウム触媒、ヨウ化物塩、及びヨウ化メチルの存在下でメタノールを一酸化炭素と反応させることによって製造される高純度の酢酸が開示されており、ここでは反応液体中のアセトアルデヒド濃度を400wppm以下に維持している。これは、カルボニル不純物を含む液体を水と接触させてカルボニル不純物を分離及び除去することによって達成することができる。その後、液体を反応器に戻すことができる。
【0007】
[0007]米国特許6,573,403においては、反応物質のメタノール、ジメチルエーテル、酢酸メチル、又はこれらの任意の混合物を、(1)ロジウムカルボニル化触媒、(2)アルキルヨウ化物又はアルキル臭化物、及び(3)水素化触媒を含む反応器中に充填し、そして反応物質を一酸化炭素及び水素と接触させて酢酸を生成させることを含む酢酸の製造方法が教示されている。‘403特許においては更に、ルテニウム化合物をカルボニル化反応溶液条件に加えることによって、価値のあるプロパン酸を形成するための前駆体であるエタノール、酢酸エチル、及びヨウ化エチルの形成を増加させながら、望ましくないカルボニル不純物の形成が有効に減少することが教示されている。
【0008】
[0008]アセトアルデヒドなどの過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)を除去するための更なる方法が、米国特許7,855,306及び7,683,212において開示されている。‘306特許においては、カルボニル化プロセスによる酢酸の形成中に、中間体流から過マンガン酸塩還元性化合物又はそれらの前駆体を減少及び/又は除去する方法が教示されている。特に、軽質留分カラムからの低沸点塔頂蒸気流を単式蒸留にかけてオーバーヘッド流を得て、これを抽出にかけてPRCをプロセスから選択的に除去及び/又は減少させる方法が開示されている。ここで記載されているアルカン除去システムはアルカンを除去することができたが、アセトアルデヒドを除去することによってアルカンの形成が減少したので、これらはもはや7,855,306に記載されている過マンガン酸塩除去システムを導入する必要はなかった。‘212特許においては、ロジウム触媒、ヨウ化物塩、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水の存在下においてメタノールを一酸化炭素と連続的に反応させ;それによって反応混合物のアセトアルデヒド含量を500wppm以下に維持しながら酢酸を11モル/L・時以上の生産速度で生成させることによって酢酸を製造し、ここで反応を、1.05MPa以上の反応器の気相中の一酸化炭素分圧、及び/又は2重量%以上の反応混合物の酢酸メチル含量において行って、それによってアセトアルデヒドの生産速度を酢酸のものの1/1500以下に維持する方法が教示されている。‘212特許においては、この方法によって、反応系中における低い含水量及び低い水素分圧においても、酢酸の反応速度を減少させることなく副生成物の生成を減少させることができることが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許3,769,329
【特許文献2】米国特許5,371,286
【特許文献3】米国特許5,756,836
【特許文献4】米国特許5,625,095
【特許文献5】米国特許6,573,403
【特許文献6】米国特許7,855,306
【特許文献7】米国特許7,683,212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0009]上記に記載の公報は、アルカン、アルカン様の材料、及びアセトアルデヒドのようなカルボニル不純物をカルボニル化反応系から抑止又は除去することに焦点が当てられているが、特にアルカン除去プロセスの不存在下においてはこれらの不純物から形成される可能性があるヨウ化エチルの形成を除去又は制御することに関する技術は少ししか存在しない。したがって、少ない量のヨウ化エチルを含む反応媒体を生成させるための改良された方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0010]一態様においては、本発明は、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、反応器内において、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成する工程を含み、カルボニル化を、750wppm以下の反応媒体中のヨウ化エチル濃度を維持しながら行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm未満の量のプロピオン酸を含む、酢酸生成物の製造方法に関する。ヨウ化エチル濃度は1〜750wppmの範囲であってよい。酢酸生成物を生成させる工程は、反応媒体からアルカンを除去するためのアルカン除去システムを含まない。酢酸生成物を生成させる工程は、酢酸生成物からプロピオン酸を除去し、及び/又は酢酸生成物中のプロピオン酸濃度を減少させることを含まない。反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸は、3:1〜1:2の重量比で存在していてよい。反応媒体は、0.1〜14重量%の量の水を更に含んでいてよい。反応器は、150〜250℃の温度及び25〜40気圧の全圧に維持することができる。反応媒体は、150wppm以下の量のアセトアルデヒドを更に含んでいてよい。アセトアルデヒドとヨウ化エチルは、2:1〜20:1の重量比で反応媒体中に存在していてよい。メタノールを反応器中に導入することができ、メタノール供給源は1〜150wppmの量のエタノールを含む。一酸化炭素は、水素を含む一酸化炭素供給源から供給することができる。反応媒体中のヨウ化エチル濃度は、(A)反応器内の水素分圧、(B)反応媒体の酢酸メチル濃度、及び/又は(C)反応媒体中のヨウ化メチル濃度の少なくとも1つを調節することによって維持することができる。反応器内の水素分圧は、0.3〜2気圧に維持することができる。反応媒体の酢酸メチル濃度は、0.5〜30重量%又は1〜25重量%に維持することができる。反応媒体中のヨウ化エチル濃度は、(a)反応媒体の少なくとも一部を分離して、酢酸を含む蒸気オーバーヘッド流及び液体再循環流を与え;(b)蒸気オーバーヘッド流を蒸留して、精製した酢酸生成物、並びにヨウ化メチル、水、酢酸、酢酸メチル、及びアセトアルデヒドを含む第1のオーバーヘッド流を生成させ;(c)第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部を蒸留して第2のオーバーヘッド流及び液相残渣を形成し、ここで第2のオーバーヘッド流は第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部に対してアセトアルデヒドが富化されており;そして(d)第2のオーバーヘッド流の一部を水で抽出して、アセトアルデヒドを含む水性アセトアルデヒド流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る;ことを含むアセトアルデヒドの除去によって維持することができる。ラフィネートからのヨウ化メチルは、反応器に直接か又は間接的に戻すことができる。本方法には、第1のオーバーヘッド流を凝縮及び二相分離して軽質液相及び重質相を形成することを更に含ませることができ、ここで第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部は重質液相を含む。本方法には、第1のオーバーヘッド流を凝縮及び二相分離して軽質液相及び重質相を形成することを更に含ませることができ、ここで第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部は重質液相を含む。第1のオーバーヘッド流は、ヨウ化エチルを含むエマルジョンを含む相が軽質液相と重質液相の間に形成されるのを阻止するのに十分な条件下で相分離することができる。重質液相はヨウ化エチルを含んでいてよい。
【0012】
[0011]第2の態様においては、本発明は、酢酸、メタノール、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物有機塩を含む反応媒体を与え;反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去して酢酸生成物を形成し;反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持し;そして、反応媒体から酢酸生成物を分離する;ことを含む酢酸の製造方法に関する。幾つかの形態においては、ヨウ化エチル濃度は1〜750wppmの範囲であってよい。また、ヨウ化エチル濃度は、(A)反応器内の水素分圧、(B)反応媒体の酢酸メチル濃度、及び/又は(C)反応媒体中のヨウ化メチル濃度の少なくとも1つを調節することによって維持することができる。アセトアルデヒドを除去することには、(a)反応媒体の少なくとも一部を分離して、酢酸を含む蒸気オーバーヘッド流及び液体再循環流を与え;(b)蒸気オーバーヘッド流を蒸留して、精製した酢酸生成物、並びにヨウ化メチル、水、酢酸、酢酸メチル、及びアセトアルデヒドを含む第1のオーバーヘッド流を生成させ:(c)第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部を蒸留して第2のオーバーヘッド流及び液相残渣を形成し、ここで第2のオーバーヘッド流は第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部に対してアセトアルデヒドが富化されており;そして(d)第2のオーバーヘッド流を水で抽出して、アセトアルデヒドを含む水性アセトアルデヒド流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る;ことを含ませることができる。ラフィネートからのヨウ化メチルは、反応器に直接か又は間接的に戻すことができる。この方法には、第1のオーバーヘッド流を凝縮及び二相分離して軽質液相及び重質相を形成することを更に含ませることができ、ここで軽質液相の少なくとも一部は反応器に戻すことができる。酢酸が生成物であってよく、これは250wppm以下の量のプロピオン酸を含んでいてよい。
【0013】
[0012]第3の態様においては、本発明は、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、ここでカルボニル化は、水素分圧、酢酸メチル濃度、及びヨウ化メチル濃度の少なくとも1つを調節して、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持することによって行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含む酢酸生成物の製造方法に関する。
【0014】
[0013]本発明は、添付の非限定的な図面を考慮するとより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[0014]図1は、アセトアルデヒドから誘導される酢酸反応副生成物及び不純物の概要を示す。
図2】[0015]図2は、本発明による酢酸製造プロセスの概要を示す。
図3】[0016]図3は、反応混合物中のヨウ化エチル濃度とアセトアルデヒド濃度とのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0017]始めに、任意のかかる実際の態様の開発においては、1つの実施態様と他のものとで変化するシステム関連及びビジネス関連の制限との適合性のように、開発者の具体的な目標を達成するために、数多くの実施−具体的な決定を行わなければならないことを留意すべきである。更に、当業者に明らかなように、ここで開示する方法にはまた、挙げられているか又は具体的に言及されているもの以外の構成要素を含ませることもできる。
【0017】
[0018]概説及びこの詳細な説明において、それぞれの数値は、一旦は(既に明らかにそのように修飾されていない限りにおいて)用語「約」によって修飾されているように読み、次に文脈において他に示されていない限りにおいて、そのように修飾されていないように再び読むべきである。また、概説及びこの詳細な説明において、有用、好適などとしてリスト又は記載されている濃度範囲は、端点を含むその範囲内のありとあらゆる濃度が示されているとみなすべきであると意図されることを理解すべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、約1と約10の間の連続体に沿ったありとあらゆる可能な数を示すものとして読むべきである。而して、この範囲内の具体的なデータ点が明確に特定されているか又は僅かな具体的なデータ点のみに関する場合、或いはこの範囲内のデータ点が明確に特定されていないか又は僅かな具体的なデータ点のみに関していない場合であっても、本発明者らはこの範囲内のありとあらゆるデータ点が特定されていたとみなすべきであると認識且つ理解し、且つ本発明者らはこの範囲内の全範囲及び全ての点の知識を有していたことを理解すべきである。
【0018】
[0019]特許請求の範囲を含む明細書全体にわたって、以下の用語は他に示さない限りにおいて示されている意味を有する。
[0020]明細書及び特許請求の範囲において用いる「付近」は「における」を包含する。「及び/又は」という用語は、包含的な「及び」の場合、及び排他的な「又は」の場合の両方を指し、本明細書において簡潔さのために用いられる。例えば、酢酸及び/又は酢酸メチルを含む混合物は、酢酸単独、酢酸メチル単独、又は酢酸と酢酸メチルの両方を含んでいてよい。
【0019】
[0021]全てのパーセントは、他に示していない限りにおいて、存在する特定の流れ又は組成物の全重量を基準とする重量パーセント(重量%)として表される。他に示していない限りにおいて、室温は25℃であり、大気圧は101.325kPaである。
【0020】
[0022]本発明における目的のためには、
酢酸は「AcOH」と略称することがあり;
アセトアルデヒドは「AcH」と略称することがあり;
酢酸メチルは「MeAc」と略称することがあり;
メタノールは「MeOH」と略称することがあり;
ヨウ化メチルは「MeI」と略称することがあり;
ヨウ化水素は「HI」と略称することがあり;
一酸化炭素は「CO]と略称することがあり;及び
ジメチルエーテルは「DME」と略称することがある。
【0021】
[0023]HIは、分子状ヨウ化水素、或いは極性媒体、通常は少なくとも若干の水を含む媒体中で少なくとも部分的にイオン化されている場合には解離ヨウ化水素酸のいずれかを指す。他に特定されていない限りにおいて、この2つは互換的に言及される。他に特定されていない限りにおいて、HI濃度は、酸−塩基滴定によって電位差滴定終点を用いて求められる。特に、HI濃度は、標準的な酢酸リチウム溶液を用いて電位差滴定終点まで滴定することによって求められる。本発明における目的のためには、HIの濃度は、腐食金属又は他の非Hカチオンの測定に関係すると推定されるヨウ化物の濃度を、試料中に存在する全イオン性ヨウ化物から減じることによっては求めないことを理解すべきである。
【0022】
[0024]HI濃度はヨウ化物イオン濃度を指すものではないことを理解すべきである。HI濃度は、具体的には電位差滴定によって求められるHI濃度を指す。
[0025]この減算法は、全ての非Hカチオン(例えば、Fe、Ni、Cr、Moのカチオン)が専らヨウ化物アニオンのみと会合すると仮定していることのために、比較的低いHI濃度(例えば約5重量%未満)を求めるためには信頼性に欠ける不正確な方法である。実際には、このプロセスにおいては、金属カチオンの相当部分がアセテートアニオンと会合する可能性がある。更に、これらの金属カチオンの多くは多原子価状態を有し、これによってこれらの金属と会合する可能性があるヨウ化物アニオンの量に関する推定に更により多い非信頼性が加えられる。最終的には、この方法は、特にHI濃度を直接表す単純な滴定を行う能力を考慮すると、実際のHI濃度の信頼性に欠ける測定値を生じさせる。
【0023】
[0026]本発明における目的のためには、蒸留カラムの「オーバーヘッド流」又は「留出物」は、蒸留カラムの頂部又はその付近(例えば頂部の隣接位置)において排出される少なくとも1つのより低沸点の凝縮性フラクション、及び/又はその流れ又は組成物の凝縮形態を指す。明らかに、これも本発明における目的のためには、全てのフラクションは最終的には凝縮させることができ、凝縮性のフラクションは、当業者に容易に理解されるようにプロセス中に存在する条件下において凝縮させることができる。非凝縮性フラクションの例としては、窒素、水素などを挙げることができる。更に、オーバーヘッド流は蒸留カラムの最も上部の出口の直下において回収することができ、例えばここで最も低い沸点のフラクションは、当業者に容易に理解されるように非凝縮性の流れであるか或いは僅少な流れを表す。
【0024】
[0027]蒸留カラムの「塔底流」又は「残渣」とは、蒸留カラムの底部又はその付近において排出される(本発明においてはカラムの底部液溜まりから流出するとも言う)1以上の最も高い沸点のフラクションを指す。残渣は蒸留カラムの最も底部の出口の直上から回収することができ、例えばここでカラムによって産出される最も底部のフラクションは、当業者に容易に理解されるように、塩、使用できないタール、固体廃棄物、又は僅少な流れである。
【0025】
[0028]本発明における目的のためには、蒸留カラムは蒸留区域及び底部液溜まり区域を含む。蒸留区域は、底部液溜まり区域の上方、即ち底部液溜まり区域とカラムの頂部との間の全てを含む。本発明における目的のためには、底部液溜まり区域とは、より高沸点の成分の液体貯留槽がその中に存在し、塔底流又は残渣流がカラムから排出される際にそれから流出する蒸留カラムの下部部分(例えば蒸留カラムの底部)を指す。底部液溜まり区域には、リボイラー、制御装置などを含ませることができる。
【0026】
[0029]蒸留カラムの内部部品に関する「通路」、「流路」、「流動導管」などの用語は、それを通して配置されており、及び/又は、液体及び/又は蒸気が内部部品の一方の側から内部部品の他方の側へ移動するための流路を与える、孔、管、溝、スリット、ドレンなどを指すように互換的に用いられる。蒸留カラムの液体分配器のような構造体を通して配置される流路の例としては、構造体を通して液体を一方の側から他の側へ流動させることを可能にするドレン孔、ドレン管、ドレンスリットなどが挙げられる。
【0027】
[0030]平均滞留時間は、蒸留区域内の所定の相に関する全液体保持体積の総計を、蒸留区域を通過するその相の平均流量で割った値として定義される。所定の相に関する保持体積には、回収器、分配器などをはじめとするカラムの種々の内部部品内に含まれる液体の体積、並びにトレー上、降下管内、及び/又は規則若しくは不規則充填床セクション内に含まれる液体を含めることができる。
【0028】
ヨウ化エチル濃度:
[0031]本発明は、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下でカルボニル化して反応媒体を形成することを含む酢酸の製造方法に関する。カルボニル化反応それ自体に加えて、幾つかの更なる反応が反応媒体中で起こる。理論には縛られないが、図1は、カルボニル化プロセス中に水素化及びアルドール縮合反応によって形成される可能性がある種々の副生成物及び不純物を示す。反応媒体中にアセトアルデヒドが存在すると、それはエタノールに水素化される可能性があり、これは次に酢酸と反応して酢酸エチルを形成する。酢酸エチルは次にヨウ化物と反応してヨウ化エチルを形成する。ヨウ化エチルは次に金属触媒及び一酸化炭素と反応して、プロピオン酸を形成する可能性がある。酢酸生成物中のプロピオン酸濃度は、式1にしたがって計算することができる。
【0029】
【化1】
【0030】
[0032]而して、反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去して、これを次に反応媒体に再循環するとヨウ化エチルの減少を間接的にもたらすことができるが、これはヨウ化エチル含量を制御する上で関与する多くのファクターの1つに過ぎない。而して、アセトアルデヒドの除去及びこの結果を達成するための方法は、ヨウ化エチルの制御又は減少に直接相関させることはできない。式1において示されるように、酢酸エチル、酢酸メチル、及びヨウ化メチルの濃度は、プロピオン酸濃度に対して影響を与える。更に、メタノール供給源中のエタノール含量、水素分圧、及び一酸化炭素供給源中の水素含量は、それぞれヨウ化エチル含量、及びその結果として酢酸生成物中のプロピオン酸含量に影響を与える。
【0031】
[0033]上記を考慮して、ここで、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いてカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行うことによって、酢酸を製造することができることが見出された。次に酢酸を反応媒体から分離し、酢酸生成物は250wppm以下のプロピオン酸を含む。驚くべきことに且つ予期しなかったことに、反応媒体中のヨウ化エチルの量を制御することによって、酢酸生成物中のプロピオン酸の量を250wppm以下に維持することができることが見出された。
【0032】
[0034]幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチルの濃度は、750wppm以下、又は例えば650wppm以下、又は550wppm以下、450wppm以下、或いは350wppm以下になるように維持/制御する。幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチルの濃度は、1wppm以上、例えば5wppm以上、10wppm以上、20wppm以上、又は25wppm以上で、650wppm以下、例えば550wppm以下、450wppm以下、又は350wppm以下に維持/制御する。
【0033】
[0035]幾つかの態様においては、酢酸生成物中のプロピオン酸濃度は、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持することによって、酢酸生成物からプロピオン酸を除去及び/又は減少させることなく、250wppmより低く維持される。好ましくは、酢酸生成物中のプロピオン酸濃度は、250wppm以下、例えば225wppm以下、200wppm以下、又は150wppm以下の量で維持することができる。「酢酸生成物からプロピオン酸を除去及び/又は減少させることなく」とは、分離、抽出、吸着、或いは反応器及び/又はフラッシュ容器の外側の反応によってプロピオン酸を除去しないことを意味する。従来のプロセスにおいては、このプロピオン酸除去は、その中でプロピオン酸から酢酸生成物を蒸留し、カルボニル基を含む他の重質有機化合物及びアルキルヨウ化物を分離する重質留分カラムを伴っていた。従来は、これらの重質留分カラムによって酢酸生成物からプロピオン酸を除去及び/又は減少させることができた。有利なことに、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を制御することによって、本発明は、酢酸生成物からプロピオン酸を別に除去及び/又は減少させる必要性を排除する。
【0034】
[0036]而して、一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は750wppm以下の反応媒体中のヨウ化エチル濃度を維持しながら行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含み、プロピオン酸は、蒸留、抽出、又は吸着によって酢酸生成物から除去及び/又は減少されない、酢酸生成物の製造方法が提供される。
【0035】
[0037]本明細書に記載する方法にはアセトアルデヒドの除去を含ませることができるので、別のアルカン除去システムは用いない。したがって、反応媒体中の750wppm以下のヨウ化エチル濃度は、アルカン除去、又はアルカン除去システムの使用によっては維持又は制御されない。
【0036】
[0038]幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸との重量比は、3:1〜1:2、又は例えば5:2〜1:2、又は2:1〜1:2、或いは3:2〜1:2の範囲であってよい。一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含み、反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸との重量比は3:1〜1:2の範囲であってよい、酢酸生成物の製造方法が提供される。
【0037】
[0039]幾つかの態様においては、反応媒体中のアセトアルデヒドとヨウ化エチルとの重量比は、20:1〜2:1、又は例えば15:1〜2:1、或いは9:1〜2:1の範囲であってよい。一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は750wppm以下の反応媒体中のヨウ化エチル濃度を維持しながら行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含み、反応媒体中のアセトアルデヒドとヨウ化エチルとの重量比は20:1〜2:1の範囲であってよい、酢酸生成物の製造方法が提供される。幾つかの態様においては、アセトアルデヒドは、1500wppm以下、例えば1200wppm以下、900wppm以下、500wppm以下、又は400wppm以下の量で反応媒体中に存在していてよい。アセトアルデヒドに加えて、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合生成物のような他の過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)も存在する可能性がある。
【0038】
[0040]PRC除去と組み合わせて、反応媒体中のヨウ化エチル濃度は、
(A)反応器内の水素分圧;:
(B)反応媒体中の酢酸メチル濃度;及び/又は
(C)反応媒体中のヨウ化メチル濃度;
の少なくとも1つを調節することによって維持することができる。
【0039】
[0041]一態様においては、反応媒体中のヨウ化エチル濃度は、0.3〜2気圧の比較的高い水素分圧を維持することによって維持することができる。水素分圧は反応器内で直接は測定されないが、これは、反応器に導入する水素、反応器排出流の組成、及び不純物/副生成物の生成によって制御することができる。高い水素分圧は、反応媒体中におけるロジウム触媒の安定性のために有利である。反応媒体中におけるロジウム触媒の安定性は、水素分圧が0.3気圧未満である場合には制御するのが困難である。反応媒体中のヨウ化エチル濃度を減少させるために、水素分圧を低下させることができる。一態様においては、0.3〜2気圧の範囲内で反応媒体中のヨウ化エチル濃度を低下させることができる。例えば、水素分圧が1.7気圧であり、ヨウ化エチル濃度が800ppmである場合には、水素分圧を、それが少なくとも0.3気圧である限りで低下させることができる。他の態様においては、ヨウ化エチル濃度は、反応媒体の酢酸メチル濃度を0.5〜30重量%に維持することによって維持する。一態様においては、反応媒体中のヨウ化エチル濃度は、反応媒体のヨウ化メチル濃度を1〜25重量%に維持することによって維持することができる。反応媒体中のヨウ化エチル濃度を減少させるために、反応媒体中の酢酸メチル濃度を減少させることができる。例えば、酢酸メチル濃度が4重量%であり、ヨウ化エチル濃度が800ppmである場合には、酢酸メチル濃度を、それが少なくとも0.5重量%又は1重量%である限りで減少させることができる。他の態様においては、ヨウ化エチル濃度は、反応媒体のヨウ化メチル濃度を1〜25重量%に維持することによって維持する。反応媒体中のヨウ化エチル濃度を減少させるために、反応媒体中のヨウ化メチル濃度を減少させることができる。例えば、ヨウ化メチル濃度が4重量%であり、ヨウ化エチル濃度が800ppmである場合には、ヨウ化メチル濃度を、それが1重量%以上である限りで減少させることができる。而して一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は、(A)反応器内の水素分圧;(B)反応媒体の酢酸メチル濃度;及び/又は(C)反応媒体のヨウ化メチル濃度;の少なくとも1つを調節することによって、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含む、酢酸生成物の製造方法が提供される。
【0040】
カルボニル化反応工程:
[0042]図2において、代表的な反応及び酢酸回収システム100を示す。示されているように、メタノール含有供給流101及び一酸化炭素含有供給流102を液相カルボニル化反応器105に送って、そこでカルボニル化反応を行う。
【0041】
[0043]メタノール含有供給流101には、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを含ませることができる。メタノール含有供給流101は、一部を新しい供給流から誘導することができ、或いはシステムから再循環することができる。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも一部は、反応媒体中において、酢酸とのエステル化によって酢酸メチルに転化して、したがって酢酸メチルとして存在する可能性がある。
【0042】
[0044]カルボニル化のための通常の反応温度は150〜250℃であってよく、180〜225℃の温度範囲が好ましい範囲である。反応器内の一酸化炭素分圧は広範囲に変化させることができるが、通常は2〜30気圧、例えば3〜10気圧である。反応器内の水素分圧は、通常は0.3〜2気圧、例えば0.3〜1.9気圧である。幾つかの態様においては、反応器内の水素分圧は、0.3気圧以上、例えば0.4気圧以上、0.45気圧以上、0.5気圧以上、0.6気圧以上、又は0.7気圧以上であってよい。1気圧は約101.33kPa及び14.70psiに等しいと理解される。副生成物の分圧及び含まれている液体の蒸気圧のために、全反応器圧力は15〜40気圧の範囲であってよい。酢酸の生産速度は、5〜50モル/L・時、例えば10〜40モル/L・時、好ましくは15〜35モル/L・時にすることができる。
【0043】
[0045]カルボニル化反応器105は、好ましくは機械撹拌容器、抽出又はポンプアラウンド混合を伴う容器、或いは撹拌装置を有するか又は有しないバブルカラムタイプの容器のいずれかであり、これらの中で反応液又はスラリー内容物を好ましくは自動的に所定のレベルに維持し、これを好ましくは通常運転中において実質的に一定に維持する。反応媒体中における好適な濃度を維持するために必要な場合には、カルボニル化反応器105中に、新しいメタノール、一酸化炭素、及び十分な水を連続的に導入する。
【0044】
[0046]金属触媒には第VIII族金属を含ませることができる。好適な第VIII族触媒としては、ロジウム及び/又はイリジウム触媒が挙げられる。ロジウム触媒を用いる場合には、ロジウム触媒は、当該技術において周知なように、ロジウムが触媒溶液中に[Rh(CO)アニオンを含む平衡混合物として存在するような任意の好適な形態で加えることができる。本明細書に記載するプロセスの反応混合物中に場合によって保持されるヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、第4級アンモニウム、ホスホニウム塩、或いはこれらの混合物の形態であってよい。幾つかの態様においては、触媒共促進剤は、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。触媒共促進剤は、ヨウ化物塩を生成させる非ヨウ化物塩として加えることができる。触媒共促進剤は、反応システム中に直接導入することができる。或いは、反応システムの運転条件下においては、広範囲の非ヨウ化物塩前駆体が反応媒体中のヨウ化メチル又はヨウ化水素酸と反応して対応する触媒共促進剤を生成させるので、ヨウ化物塩をin-situで生成させることができる。ロジウム触媒反応及びヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細に関しては、米国特許5,001,259;5,026,908;5,144,068;及び7,005,541(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。イリジウム触媒を用いるメタノールのカルボニル化は周知であり、米国特許5,942,460;5,932,764;5,883,295;5,877,348;5,877,347;及び5,696,284;(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)において概説されている。
【0045】
[0047]触媒系のハロゲン含有触媒促進剤は、有機ハロゲン化物を含むハロゲン化合物から構成される。而して、アルキル、アリール、及び置換アルキル又はアリールハロゲン化物を用いることができる。好ましくは、ハロゲン含有触媒促進剤はアルキルハロゲン化物の形態で存在する。更により好ましくは、ハロゲン含有触媒促進剤は、アルキル基がカルボニル化する供給アルコールのアルキル基に対応しているアルキルハロゲン化物の形態で存在する。而して、メタノールの酢酸へのカルボニル化において、ハロゲン化物促進剤としては、ハロゲン化メチル、より好ましくはヨウ化メチルを挙げることができる。
【0046】
[0048]反応媒体の成分は、酢酸の十分な生産を確保するために規定限界内に維持する。反応媒体は、特定の濃度の金属触媒、例えばロジウムとして100〜3000wppm、例えば400〜2000wppm、又は400〜1500wppmの量のロジウム触媒を含む。反応媒体中の水の濃度は、14重量%以下、例えば0.1重量%〜14重量%、0.2重量%〜10重量%、又は0.25重量%〜5重量%に維持する。好ましくは、反応は低水条件下で行い、反応媒体は4.1重量%以下、例えば3.5重量%未満、3重量%未満、又は2重量%未満の量の水を含む。範囲に関しては、反応媒体は、0.1〜3.5重量%、例えば0.1〜3重量%、又は0.5〜2.8重量%の量の水を含む。反応媒体中のヨウ化メチルの濃度は、1〜25重量%、例えば5〜20重量%、4〜13.9重量%になるように維持する。反応媒体中のヨウ化物塩、例えばヨウ化リチウムの濃度は、1〜25重量%、例えば2〜20重量%、3〜20重量%になるように維持する。反応媒体中の酢酸メチルの濃度は、0.5〜30重量%、例えば0.3〜20重量%、0.6〜4.1重量%になるように維持する。反応媒体中の酢酸の濃度は、概して30重量%以上、例えば40重量%以上、又は50重量%以上である。上記の量は反応媒体の全重量を基準とするものである。
【0047】
[0049]幾つかの態様においては、酢酸を製造する方法は、反応器中にリチウム化合物を導入して、酢酸リチウムの濃度を反応媒体中において0.3〜0.7重量%の量に維持することを更に含む。幾つかの態様においては、特定量のリチウム化合物を反応器中に導入して、ヨウ化水素の濃度を反応媒体中において0.1〜1.3重量%の量に維持する。他の方法では、ヨウ化水素含量を計算によって間接的に求めている。例えば、米国公開2013/0310603においては、ヨウ化物塩の形態から誘導されるヨウ化物イオン濃度(共触媒及び金属ヨウ化物から誘導されるヨウ化物を含む)を、ヨウ化物イオン(I)の全濃度から減じることによって、ヨウ化物イオン濃度を計算することができることが示されている。かかる間接的な計算方法は通常は不正確であり、主として基礎をなすイオン測定方法の不正確さのために実際のヨウ化水素濃度の劣った指示をもたらす。更に、この間接的計算法は、金属カチオンが測定され、これがヨウ化物アニオンのみと完全に会合すると誤って仮定され、一方、実際には、金属カチオンはアセテート及び触媒アニオンのような他のアニオンと会合する可能性があるので、他のヨウ化物形態を計上することができない。これに対して、本明細書において記載するヨウ化水素濃度の直接測定は、有利なことに系中の実際のヨウ化水素濃度を反映しており、0.01%のような低い値の正確性を与えることができる。
【0048】
[0050]幾つかの態様においては、カルボニル化反応器内に存在する反応媒体の全重量を基準として、ロジウム触媒の濃度は反応媒体中において200〜3000wppmの量に維持し、水の濃度は反応媒体中において0.1〜4.1重量%の量に維持し、酢酸メチルの濃度は反応媒体中において0.6〜4.1重量%に維持する。
【0049】
[0051]幾つかの態様においては、反応器中に導入するリチウム化合物は、酢酸リチウム、カルボン酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、他の有機リチウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの態様においては、リチウム化合物は反応媒体中に可溶である。一態様においては、リチウム化合物の供給源として酢酸リチウム二水和物を用いることができる。
【0050】
[0052]酢酸リチウムは、次の平衡反応(I):
【0051】
【化2】
【0052】
にしたがってヨウ化水素と反応して、ヨウ化リチウム及び酢酸を形成する。
[0053]酢酸リチウムは、反応媒体中に存在する酢酸メチルのような他のアセテートに対してヨウ化水素濃度の改良された制御を与えると考えられる。理論には縛られないが、酢酸リチウムは酢酸の共役塩基であり、したがって酸−塩基反応によってヨウ化水素に対して反応性である。この特性は、酢酸メチルとヨウ化水素の対応する平衡によって生成するものを上回って反応生成物を有利に生成する反応(I)の平衡をもたらすと考えられる。この改良された平衡は、反応媒体中の4.1重量%未満の水の濃度によって推進される。更に、酢酸メチルと比べて比較的低い酢酸リチウムの揮発性によって、酢酸リチウムを、揮発損失及び蒸気粗生成物中への少量の同伴を除いて反応媒体中に保持することが可能になる。これに対して、酢酸メチルの比較的高い揮発性により、材料が精製系列中に留出して、酢酸メチルを制御するのがより困難になる。酢酸リチウムは、ヨウ化水素の安定して低い濃度において、プロセス中に保持及び制御するのが遙かにより容易である。したがって、反応媒体中のヨウ化水素濃度を制御するのに必要な酢酸メチルの量と比べて比較的少量の酢酸リチウムを用いることができる。更に、酢酸リチウムはロジウム[I]錯体へのヨウ化メチルの酸化的付加を促進するのに酢酸メチルよりも少なくとも3倍有効であることが見出された。
【0053】
[0054]幾つかの態様においては、反応媒体中の酢酸リチウムの濃度は、0.3重量%以上、0.35重量%以上、0.4重量%以上、0.45重量%以上、又は0.5重量%以上に維持し、及び/又は幾つかの態様においては、反応媒体中の酢酸リチウムの濃度は、0.7重量%以下、0.65重量%以下、0.6重量%以下、又は0.55重量%以下に維持する。
【0054】
[0055]反応媒体中の過剰の酢酸リチウムは、反応媒体中の他の化合物に悪影響を与えて生産性を減少させる可能性があることが見出された。これとは逆に、約0.3重量%より低い反応媒体中の酢酸リチウム濃度は、1.3重量%より低い反応媒体中の所望のヨウ化水素濃度を維持することができないことが見出された。
【0055】
[0056]幾つかの態様においては、リチウム化合物は反応媒体中に連続的又は断続的に導入することができる。幾つかの態様においては、リチウム化合物は反応器の始動中に導入する。幾つかの態様においては、リチウム化合物は同伴損失を補償するために断続的に導入する。
【0056】
[0057]幾つかの態様においては、反応媒体中に、所望のカルボン酸とアルコール、望ましくはカルボニル化において用いるアルコールとのエステル、並びにヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンの他に更なるヨウ化物イオンを保持することによって、低い水濃度においても所望の反応速度が得られる。所望のエステルは酢酸メチルである。更なるヨウ化物イオンは望ましくはヨウ化物塩であり、ヨウ化リチウム(LiI)が好ましい。米国特許5,001,259に記載されているように、低い水濃度下においては、酢酸メチル及びヨウ化リチウムは、比較的高い濃度のこれらの成分のそれぞれが存在している場合にのみ速度促進剤として機能し、これらの成分の両方が同時に存在している場合に促進がより高いことが分かっている。
【0057】
[0058]メタノールの酢酸生成物へのカルボニル化反応は、メタノール供給流を、カルボニル化生成物を形成するのに好適な温度及び圧力の条件において、ロジウム触媒、ヨウ化メチル促進剤、酢酸メチル、及び更なる可溶性ヨウ化物塩を含む酢酸溶媒反応媒体を通してバブリングさせている気体状一酸化炭素と接触させることによって行うことができる。一般に、重要なのはヨウ化物と会合するカチオンではなく、触媒系中のヨウ化物イオンの濃度であり、ヨウ化物の所定のモル濃度においては、カチオンの性質はヨウ化物濃度の効果ほどは重要ではないと認識される。塩がヨウ化物の所望のレベルを与えるのに十分に反応媒体中に可溶であるならば、任意の金属ヨウ化物塩、又は任意の有機カチオンの任意のヨウ化物塩、或いはアミン若しくはホスフィン化合物をベースとするもののような他のカチオン(場合によっては第4級カチオン)を反応媒体中に保持することができる。ヨウ化物が金属塩である場合には、好ましくはこれは、"Handbook of Chemistry and Physics", CRC Press刊, Cleveland, Ohio, 2002-03(83版)に示されているような周期律表第IA族及び第IIA族の金属からなる群の元素のヨウ化物塩である。特に、アルカリ金属ヨウ化物が有用であり、ヨウ化リチウムが特に好適である。低水カルボニル化プロセスにおいては、ヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンに加えて更なるヨウ化物イオンを、概して、全ヨウ化物イオン濃度が1〜25重量%であり、酢酸メチルが概して0.5〜30重量%の量で存在し、ヨウ化メチルが概して1〜25重量%の量で存在するような量で触媒溶液中に存在させる。ロジウム触媒は、概して200〜3000wppmの量で存在する。
【0058】
[0059]通常のカルボニル化プロセスにおいては、一酸化炭素をカルボニル化反応器中の望ましくは撹拌装置(内容物を撹拌するために用いることができる)の下方に連続的に導入する。気体供給流は、好ましくは、この撹拌手段によって反応液体を通して十分に分散される。望ましくは気体パージ流106を反応器105から排出して、気体状副生成物の蓄積を阻止し、所定の全反応器圧力において設定一酸化炭素分圧を維持する。一態様においては、気体パージ流106は、少量、例えば1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、又は0.5重量%以下のヨウ化水素を含む。これらの量を超えるヨウ化水素は、スクラバーに対する負荷を増加させてヨウ化水素がパージされるのを妨げる可能性がある。反応器の温度は制御することができ、一酸化炭素供給流は、所望の全反応器圧力を維持するのに十分な速度で導入する。液体反応媒体を含む流れ106が反応器105から排出される。
【0059】
[0060]酢酸製造システムは、好ましくは、酢酸を回収し、金属触媒、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び他のシステム成分をプロセス内で再循環するのに用いる分離システム108を含む。1以上の再循環流を、反応器中に導入する前に混合することができる。分離システムはまた、好ましくは、カルボニル化反応器内及びシステム全体にわたる水及び酢酸の含量を制御し、過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)の除去を促進する。PRCとしては、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合生成物を挙げることができる。一態様においては、好適な過マンガンカリウム試験はJIS−K1351(2007)である。
【0060】
フラッシュ容器:
[0061]反応媒体を、カルボニル化反応器105から、その中の一定のレベルを維持するのに十分な速度で引き抜き、流れ113を通してフラッシュ容器110に供給する。フラッシュ分離は、80℃〜200℃の温度において、1〜10気圧の絶対圧下で行うことができる。フラッシュ容器110内において、反応媒体をフラッシュ分離工程で分離して、酢酸を含む蒸気生成物流112、及び触媒含有溶液を含む液体再循環流111として揮発性のより低い触媒相を得る。
【0061】
[0062]酢酸に加えて、蒸気生成物流112はまた、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、PRCも含む。反応器105から排出されてフラッシュ容器110に導入される溶解ガスは、一酸化炭素の一部を含み、またメタン、水素、及び二酸化炭素のような気体副生成物も含む可能性がある。かかる溶解ガスは、蒸気生成物流112の一部としてフラッシュ容器110から排出される。一態様においては、気体パージ流106中の一酸化炭素をフラッシュ容器110の基部に供給して、ロジウムの安定性を向上させる。液体再循環流111中の触媒含有溶液は、主として酢酸で、更にロジウム及びヨウ化物塩を、より小量の酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び水と一緒に含む可能性がある。液体再循環流111中の触媒含有溶液は、上記で議論したように反応器に再循環する。
【0062】
[0063]一態様においては、蒸気生成物流112は、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、アセトアルデヒド、及びヨウ化水素を含む。一態様においては、蒸気生成物流112は、蒸気生成物流の全重量を基準として45〜75重量%の量の酢酸、20〜50重量%の量のヨウ化メチル、9重量%以下の量の酢酸メチル、及び15重量%以下の量の水を含む。他の態様においては、蒸気生成物流112は、蒸気生成物流の全重量を基準として45〜75重量%の量の酢酸、24乃至36重量%未満の量のヨウ化メチル、9重量%以下の量の酢酸メチル、及び15重量%以下の量の水を含む。より好ましくは、蒸気生成物流112は、55〜75重量%の量の酢酸、24〜35重量%の量のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の量の酢酸メチル、及び0.5〜14重量%の量の水を含む。更に好ましい態様においては、蒸気生成物流112は、60〜70重量%の量の酢酸、25〜35重量%の量のヨウ化メチル、0.5〜6.5重量%の量の酢酸メチル、及び1〜8重量%の量の水を含む。蒸気生成物流中のアセトアルデヒド濃度は、蒸気生成物流の全重量を基準として0.005〜1重量%、例えば0.01〜0.8重量%、又は0.01〜0.7重量%の量であってよい。幾つかの態様においては、アセトアルデヒドは0.01重量%以下の量で存在していてよい。蒸気生成物流112は、蒸気生成物流の全重量を基準として1重量%以下、例えば0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の量のヨウ化水素を含んでいてよい。蒸気生成物流112は、好ましくはプロピオン酸を実質的に含まず、即ち蒸気生成物流の全重量を基準として0.0001重量%以下のプロピオン酸を含む。
【0063】
[0064]液体再循環流111は、酢酸、金属触媒、腐食金属、並びに他の種々の化合物を含む。一態様においては、液体再循環流は、60〜90重量%の量の酢酸;0.01〜0.5重量%の量の金属触媒;10〜2500wppmの合計量の腐食金属(例えば、ニッケル、鉄、及びクロム);5〜20重量%の量のヨウ化リチウム;0.5〜5重量%の量のヨウ化メチル;0.1〜5重量%の量の酢酸メチル;0.1〜8重量%の量の水;1重量%以下の量のアセトアルデヒド(例えば0.0001〜1重量%のアセトアルデヒド);及び0.5重量%以下の量のヨウ化水素(例えば0.0001〜0.5重量%のヨウ化水素);を含む。
【0064】
ヨウ化エチル濃度及び制御:
[0065]本明細書に記載するように、酢酸生成物、好ましくは250wppm未満、例えば225wppm未満、又は200wppm未満のプロピオン酸濃度を有する酢酸生成物が望ましい。ここで、酢酸生成物のプロピオン酸濃度は、少なくとも反応媒体中のヨウ化エチルの濃度を制御することによって制御することができることが見出された。更に、ヨウ化エチルの形成は、反応媒体中のアセトアルデヒド、酢酸エチル、酢酸メチル、及びヨウ化メチルの濃度などの数多くの変数によって影響を受けることが見出された。更に、メタノール供給源中のエタノール含量、一酸化炭素供給源中の水素分圧及び水素含量は、それぞれヨウ化エチル含量、及びその結果として酢酸生成物中のプロピオン酸含量に影響を与える。ヨウ化エチル含量に影響を与える可能性がある更なる要素としては、反応媒体中の触媒濃度及び水濃度が挙げられる。驚くべきことに、本明細書において議論するようにこれらの変数を制御及び/又は操作することによって、所望のヨウ化エチル濃度、及びその結果として所望の酢酸生成物が与えられる。
【0065】
[0066]好ましくは、反応条件は、反応媒体中のヨウ化エチルの濃度を750wppm以下、例えば650wppm以下、550wppm以下、450wppm以下、又は350wppm以下に維持するように調節する。範囲に関しては、反応媒体は、1〜750wppm、例えば1〜700wppm、1〜600wppm、5〜650wppm、10〜550wppm、20〜450wppm、又は25〜350wppmのヨウ化エチルを含んでいてよい。反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸との重量比は、3:1〜1:2、例えば5:2〜1:2、2:1〜1:2、又は3:2〜1:2の範囲であってよい。
【0066】
[0067]一態様においては、反応媒体は、本明細書において議論する水濃度、酢酸メチル濃度、ヨウ化メチル濃度、金属触媒濃度、及びヨウ化リチウム濃度を有する。これらの濃度の1以上を調節して、所望のヨウ化エチル濃度、プロピオン酸濃度、及び/又はアセトアルデヒド濃度を達成することができる。反応媒体中のヨウ化エチル濃度と丁度1つの変数の調節との間には一対一の関係はない可能性があるが、一般に、ヨウ化エチルは、アセトアルデヒドの除去速度を制御し、及び水素分圧を制御することによって制御される。同様に、反応温度及び一酸化炭素中の水素濃度を調節して、ヨウ化エチル濃度を750wppm未満に維持することができる。
【0067】
[0068]例えば、アセトアルデヒド含量はヨウ化エチル及びプロピオン酸濃度を決定するファクターであるので、反応媒体中のアセトアルデヒド濃度は、好ましくは、1500wppm以下、例えば1200wppm以下、900wppm以下、500wppm以下、又は400wppm以下の量に維持する。これらの結果を達成するために好適なアセトアルデヒド除去システムを、本明細書、例えば図2に開示する。反応媒体中のアセトアルデヒド濃度は、反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去することによって制御することができる。これは、反応器に再循環することを意図しており、蒸気オーバーヘッド流から誘導される流れを含むが、酢酸生成物流は除外される。反応媒体中のアセトアルデヒドとヨウ化エチルとの重量比は、20:1〜2:1、例えば15:1〜2:1、又は9:1〜2:1の範囲であってよい。
【0068】
[0069]図1に示すように、エタノールの形成又は存在もヨウ化エチルの濃度に影響を与える。エタノールの少なくとも一部はメタノール供給源中に存在する可能性があり、メタノール供給源は1〜150wppm、例えば1〜100wppm、1〜50wppm、又は1〜25wppmの量のエタノールを含む可能性がある。メタノール供給源中のエタノール濃度は変化する可能性がある。場合によっては、カルボニル化反応器に供給する前にメタノールを精製する。これにより、メタノール供給源中のエタノール濃度を1wppm未満にすることができ、例えばエタノールを含まなくすることができる。
【0069】
酢酸の回収:
[0070]酢酸の蒸留及び回収は、本発明の目的のためには特に制限されない。蒸気生成物流から酢酸を回収する従来の方法とは異なり、本発明は、蒸気生成物流、及び/又は酢酸が富化された蒸気生成物流の一部から凝縮される液体流の両方から酢酸を回収することができる。
【0070】
[0071]図2に示されるように、蒸気生成物流112は、軽質留分カラムとも呼ぶ第1のカラム120に送る。蒸留によって、低沸点の塔頂蒸気流122、好ましくは側流124によって取り出される精製された酢酸生成物、及び高沸点の残渣流121が生成する。一態様においては、低沸点の塔頂蒸気流122は、40〜80重量%の量の水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及びアセトアルデヒドなどのカルボニル不純物を含む。側流124は、85〜98重量%の量の酢酸、1〜5重量%の量の水、0.1〜5重量%の量のヨウ化メチル、及び0.1〜5重量%の量の酢酸メチルを含む可能性がある。側流124によって取り出される酢酸は、好ましくは、乾燥カラムとも呼ぶ第2のカラム125などにおける更なる精製にかけて、側流124を、主として水を含むオーバーヘッド流126、及び主として酢酸、例えば酢酸生成物を含む塔底流127に分離する。カラム125において、プロピオン酸は250wppm未満の量で酢酸生成物と共に濃縮され、酢酸生成物からは除去されない。幾つかの態様においては、酢酸生成物は、カラム125から側流(図示せず)として回収することができる。有利なことに、これによって、酢酸からプロピオン酸を除去するための更なる分離工程の必要性が回避される。例えば、重質留分の除去は必要ない。
【0071】
[0072]オーバーヘッド流126は、50〜90重量%、例えば50〜75重量%の量の水を含む可能性がある。また、酢酸メチル及びヨウ化メチルも側流から取り出されて、オーバーヘッド流中に濃縮される。乾燥カラム塔底流127は、好ましくは酢酸を含む。好ましい態様においては、乾燥カラム塔底流127は、90重量%より多く、例えば95重量%より多く、又は98重量%より多い量の酢酸を含み、250wppm未満のプロピオン酸を含む。乾燥カラム塔底流127は、商業的利用のために貯蔵又は輸送する前に、例えばイオン交換樹脂に通すことによって更に処理することができる。
【0072】
[0073]第1のカラム120から分離される低沸点の塔頂蒸気流122は、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水のような反応成分を含み、これらの反応成分はプロセス内に保持することが好ましい。低沸点の塔頂蒸気流122は、熱交換器内で凝縮して流れ133を形成する。流れ133の少なくとも一部を、ここで議論するPRC除去ユニット131に送ることができる。場合によっては、流れ133の一部を、反応器105に再循環し、及び/又は第1のカラム120に還流する。同様に、第2のカラム125からのオーバーヘッド流126は、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水のような反応成分を含み、これらの反応成分はプロセス内に保持することが好ましい。オーバーヘッド流126は、熱交換器内で凝縮して流れ136を形成し、これは反応器105に再循環し、及び/又は第2のカラム125に還流する。オフガス成分は、ライン135を通して、凝縮された低沸点の塔頂蒸気流126から排出することができる。流れ133中の凝縮された低沸点の塔頂蒸気流と同様に、流れ136中の凝縮されたオーバーヘッド流も分離して水相及び有機相を形成することができ、これらの相は、反応媒体中における濃度を維持するために必要な場合には再循環又は還流することができる。幾つかの態様においては、凝縮器に加えて、凝縮されたオーバーヘッド流136を回収するための塔頂デカンターを配することができる。凝縮された低沸点の塔頂蒸気流136の塔頂デカンター中における平均滞留時間は、1分間以上、例えば3分間以上、5分間以上、又は10分間以上であってよく、及び/又は、平均滞留時間は60分間以下、例えば45分間以下、30分間以下、又は25分間以下である。除去されず、その後に精製プロセスに残留する可能性がある750wppmを超える多い量の反応媒体中のヨウ化エチルは、相の間に第3の相又はエマルジョンを形成することによって、デカンター内における相分離の問題を引き起こす可能性がある。ヨウ化エチルはプロセス中において直接除去する手段を有しないので、反応媒体中にヨウ化エチルが蓄積することを阻止することが重要である。反応媒体中の多い量のヨウ化エチルは、デカンター内で濃縮されて望ましくないエマルジョンを形成し始める可能性がある。このエマルジョンは劣った分離を引き起こし、これは滞留時間を増加させることによって容易に克服することはできない。幾つかの態様においては、第3の相又はエマルジョンもアルカンを含む可能性がある。しかしながら、アルカンは、反応媒体中のアセトアルデヒドを制御することによって制御される。
【0073】
[0074]而して一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行い;反応器内において形成された反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体再循環流及び蒸気生成物流を形成し;第1のカラム内において蒸気生成物流を蒸留して、側流及び低沸点の塔頂蒸気流を得て;低沸点の塔頂蒸気流を凝縮し、そして凝縮された流れを、デカンター内において、重質液相と軽質液相との間のエマルジョンを阻止するのに十分な条件下で二相分離して重質液相及び軽質液相を形成し;そして側流から酢酸生成物を回収する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含む、酢酸生成物の製造方法が提供される。
【0074】
[0075]排出流、特にライン106、132、135、及び122から残渣液体を回収するために、これらのラインを、冷却したメタノール及び/又は酢酸を用いて運転されるスクラバーに供給して、酢酸メチル及びヨウ化メチルを除去することができる。好適なスクラバーは、米国特許8,318,977(その全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0075】
[0076]本発明の蒸留カラムは、通常の蒸留カラム、例えば棚段塔、充填塔などであってよい。棚段塔としては、多孔板カラム、バブルキャップカラム、キッテルトレーカラム、ユニフラックストレー、又はリップルトレーカラムを挙げることができる。棚段塔に関しては、理論段数は特に限定されず、分離する成分の種類によって左右し、80段以下、例えば2〜80段、5〜60段、5〜50段、又はより好ましくは7〜35段を含ませることができる。蒸留カラムには、異なる蒸留装置の組合せを含ませることができる。例えば、バブルキャップカラムと多孔板カラムの組合せ、並びに多孔板カラムと充填カラムの組合せを用いることができる。
【0076】
[0077]蒸留システムにおける蒸留温度及び圧力は、好適には、対象のカルボン酸の種類、及び蒸留カラムの種類、或いは供給流の組成にしたがってより低沸点の不純物及びより高沸点の不純物から選択される除去目標のような条件に応じて選択することができる。例えば、酢酸の精製を蒸留カラムによって行う場合には、蒸留カラムの内部圧力(通常はカラム頂部の圧力)は、ゲージ圧で0.01〜1MPa、例えば0.02〜0.7MPa、より好ましくは0.05〜0.5MPaであってよい。更に、蒸留カラムに関する蒸留温度、即ちカラム頂部の温度におけるカラムの内部温度は、カラムの内部圧力を調節することによって制御することができ、例えば20〜200℃、例えば50〜180℃、より好ましくは約100〜160℃であってよい。
【0077】
[0078]それぞれ蒸留システムに連絡しているカラム、バルブ、凝縮器、受容器、ポンプ、リボイラー、及び内部部品、並びに種々のラインなどの蒸留システムに関係するそれぞれの部材又はユニットの材料は、ガラス、金属、セラミック、又はこれらの組み合わせのような好適な材料で構成することができ、具体的なものに特に限定されない。本発明によれば、上記の蒸留システム及び種々のラインの材料は、鉄合金、例えばステンレススチール、ニッケル又はニッケル合金、ジルコニウム又はそのジルコニウム合金、チタン又はそのチタン合金、或いはアルミニウム合金のような遷移金属又は遷移金属ベースの合金である。好適な鉄ベースの合金としては、主成分として鉄を含むもの、例えばステンレススチール(これは、クロム、ニッケル、モリブデンなども含む)が挙げられる。好適なニッケルベースの合金としては、主成分としてニッケル、及びクロム、鉄、コバルト、モリブデン、タングステン、マンガンなどの1以上を含むもの、例えばHASTELLOY(登録商標)及びINCONEL(登録商標)が挙げられる。耐腐食性の金属は、蒸留システム及び種々のラインのための材料として特に好適である可能性がある。
【0078】
PRC除去システム(PRS):
[0079]第1のカラムからの凝縮されたオーバーヘッド流(軽質液相及び/又は重質液相の一部のいずれか)は、凝縮して相分離すると、分離してアセトアルデヒド又はPRC除去システムに送って、アセトアルデヒド除去プロセス中にヨウ化メチル及び酢酸メチルを回収することができる。理論には縛られないが、ヨウ化エチルは重質液相中に濃縮される傾向がある。而して、重質液相をPRC除去システムで処理する場合には、ヨウ化エチルは反応器に再循環して戻すことができる。軽質液相及び/又は重質液相のそれぞれは、1重量%以下の量のPRCを含み、このプロセスにはアセトアルデヒドのようなカルボニル不純物を除去することを含ませることができる。
【0079】
[0080]而して一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行い;ヨウ化メチルが富化されており、ヨウ化エチル及び少なくとも1種類のPRCを含む反応媒体の一部から流れを分離して、流れから少なくとも1種類のPRCを除去し;そして反応媒体から酢酸生成物を回収する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含む、酢酸生成物の製造方法が提供される。
【0080】
[0081]当該技術において公知なように、PRCは酢酸生成物の品質を悪化させ、米国特許6,143,930;6,339,171;7,223,883;7,223,886;7,855,306;7,884,237;8,889,904;及び米国公開2006/0011462;(これらはその全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されているような好適な不純物除去カラム及び吸収剤で除去することができる。アセトアルデヒドのようなカルボニル不純物は、ヨウ化物触媒促進剤と反応してアルキルヨウ化物、例えばヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル等を形成する可能性がある。また、多くの不純物はアセトアルデヒドに由来するので、液体軽質相及び/又は重質液相の少なくとも1つからカルボニル不純物を除去することが望ましい。本明細書に記載するように、PRC除去システムを用いる場合には、アルカン除去システムは用いない。
【0081】
[0082]アセトアルデヒド又はPRC除去システムに供給される軽質液相及び/又は重質液相の部分は、軽質液相133及び/又は重質液相134のいずれかの質量流量の1%〜99%、例えば1〜50%、2〜45%、5〜40%、5〜30%、又は5〜20%で変化させることができる。また幾つかの態様においては、軽質液相及び重質液相の両方の一部をアセトアルデヒド又はPRC除去システムに供給することができる。アセトアルデヒド又はPRC除去システムに供給されない軽質液相の部分は、本明細書に記載するように第1のカラムに還流するか又は反応器に再循環することができる。アセトアルデヒド又はPRC除去システムに供給されない重質液相の部分は、反応器に再循環することができる。重質液相の一部を第1のカラムに還流することができるが、ヨウ化メチルが富化されている重質液相を反応器に戻すことがより望ましい。
【0082】
[0083]一態様においては、軽質液相及び/又は重質液相の一部を蒸留カラムに供給して、そのオーバーヘッド流を濃縮してアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを有するようにする。構成に応じて、2つの別々の蒸留カラムを存在させることができ、第2のカラムのオーバーヘッド流をアセトアルデヒド及びヨウ化メチルで富化させることができる。in-situで形成される可能性があるジメチルエーテルも、オーバーヘッド流中に存在する可能性がある。オーバーヘッド流は1以上の抽出段階にかけて、ヨウ化メチルが富化されたラフィネート及び抽出剤を除去することができる。ラフィネートの一部は、蒸留カラム、第1のカラム、塔頂デカンター、及び/又は反応器に戻すことができる。例えば、重質液相をPRC除去システム内で処理する場合には、ラフィネートの一部を蒸留カラム又は反応器のいずれかに戻すことが望ましい可能性がある。また、例えば軽質液相をPRC除去システム内で処理する場合には、ラフィネートの一部を、第1のカラム、塔頂デカンター、又は反応器のいずれかに戻すことが望ましい可能性がある。幾つかの態様においては、抽出剤は更に蒸留して水を除去することができ、これは1以上の抽出段階に戻す。軽質液相よりも多くの酢酸メチル及びヨウ化メチルを含むカラム塔底流も、反応器に再循環、及び/又は第1のカラムに還流することができる。
【0083】
[0084]PRSには単一の抽出段階を含ませることができ、或いは例えば米国特許7,223,886に記載されているように複数の抽出段階を含ませることができ、場合によっては多段対向流抽出を含む。種々の態様によれば、例えば(i)PRS蒸留カラム及び/又は(ii)PRS抽出段階のいずれか又は両方から誘導される1以上の流れを、システム、例えば酢酸製造システムに関する分離システムの(i)軽質留分除去カラム及び/又は(ii)乾燥カラムのいずれか又は両方に戻すことができる。例えば、PRSカラムからの塔底流の第1の部分、例えばアリコート部分を、更なる処理のために軽質留分カラム120に送ることができ、或いはPRSカラムからの塔底流の第2の部分、例えばアリコート部分を、更なる処理のために乾燥カラム125、好ましくは乾燥カラム125の上部部分に送ることができる。他の例として、特にヨウ化メチルを含むPRS抽出ユニットからのラフィネートを、システム、例えば軽質留分カラム又は乾燥カラムに戻すことができ、或いはラフィネートをデカンター140に直接加えることができ、及び/又は反応器105に戻すことができる。
【0084】
[0085]本明細書及び特許請求の範囲の目的のためには、軽質留分除去カラム及び乾燥カラムのオーバーヘッド流及び塔頂デカンターは、軽質留分除去カラム及び乾燥カラムの一部とみなされる。
【0085】
[0086]上記に示したように、低沸点の塔頂蒸気流133のいずれの相も、続いて処理してPRCを除去することができる。
[0087]本明細書の目的のためには、「アリコート部分」という用語は、(i)それがそれから誘導される親流と同じ組成を有する親流の一部;及び(ii)それがそれから誘導される親流と同じ組成を有する親流の一部、及びそれと混合した1以上の更なる流れを含む流れ;の両方を指すことを理解すべきである。而して、PRS蒸留塔底流のアリコート部分を含む戻り流を軽質留分カラムに送ることには、PRS蒸留塔底流の一部を軽質留分カラムに直接送ること、並びに(i)PRS蒸留塔底流の一部、及び(ii)軽質留分カラム中に導入する前にそれと混合する1以上の更なる流れを含む誘導流を送ることが包含される。「アリコート部分」は、例えば蒸留工程又は相分離工程において形成される流れ(これらは、それらがそれから誘導される親流と組成的に同じではなく、かかる流れからも誘導されない)を包含しない。
【0086】
[0088]本開示の利益を享受する当業者であれば、所望の結果を達成するようにPRS蒸留カラムを設計及び運転することができる。したがって、このプロセスの実施は、特定の蒸留カラムの具体的な特徴、又は全段数、供給点、還流比、供給温度、還流温度、カラム温度プロファイルなどのようなその運転特性に必ずしも限定されない。
【0087】
[0089]幾つかの場合においては、軽質留分蒸留カラムの低沸点塔頂蒸気流から、より好ましくは軽質留分蒸留カラム120からの低沸点塔頂蒸気流の凝縮軽質相133から、PRC、主としてアセトアルデヒドのようなアルデヒドを除去することが有利である可能性がある。
【0088】
[0090]PRS131からの流れの1以上を、直接か又は間接的にシステムに戻す、例えば再循環させることができる。PRSは、好ましくはPRCを減少及び/又は除去するために少なくとも1つの蒸留カラム及び少なくとも1つの抽出カラムを含む。米国特許公開2011/0288333(参照として本明細書中に包含する)においては、本方法と共に用いることができる種々のPRSの態様が記載されている。
【0089】
[0091]一態様においては、図2に示されるように、PRS131は、カラム145、アキュムレーター150、及び抽出器155を含む。低沸点塔頂蒸気流133の少なくとも一部をデカンター140に送って、重質相流141、及び軽質相142を形成する。場合によっては、流れ142の一部を、流れ142’によってカラム120に戻す。更には、重質相141の一部を反応器105に戻すことができる。場合によっては、スリップ流(図示せず)、例えば重質相141の5〜40体積%又は5〜20体積%をPRS131に送る。オフガス成分は、ライン132を通してデカンター140から排出することができる。他の態様(図示せず)においては、重質相141のより大きな部分、例えば重質相の40〜100体積%、60〜100体積%、又は80〜100体積%をPRSに送ることができる。これらの態様においては、軽質相142はカラム120に還流することができ、或いは場合によっては、軽質相142のスリップ流、例えば5〜40体積%、又は5〜20体積%をPRSに送ることができる。
【0090】
[0092]軽質相142の少なくとも一部は、カラム145に送って、蒸気オーバーヘッド流146、並びに水、酢酸メチル、メタノール、及びこれらの混合物を含む塔底プロセス流147を形成する。蒸気オーバーヘッド流146は、凝縮器に通してアキュムレーター150内で回収する。凝縮された蒸気オーバーヘッド流の一部は、ライン151を通してカラム145に戻すことができる。凝縮された蒸気オーバーヘッド流の他の部分は、ライン152を通して抽出器155に送って、少なくとも1種類のPRC、例えばアセトアルデヒドを含む廃棄流156、及びヨウ化メチルを含むプロセス流157を形成する。水性流を、ライン158を通して抽出器155に、対向流を得る位置において供給することができる。
【0091】
[0093]DMEを、水性抽出相中におけるヨウ化メチルの溶解度を減少させるのに十分な量でPRS中に存在させることができる。水性抽出相中のヨウ化メチルの量を減少させることによって、廃棄流156中へのヨウ化メチルの損失が減少する。幾つかの態様においては、これによって、米国特許7,223,886及び8,076,507(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されているような多回抽出を可能にすることができる。DMEの量はヨウ化メチル濃度に応じて変動させることができ、幾つかの態様においては、DMEの量は、3〜9重量%、例えば4〜8重量%の範囲にすることができる。DMEは、PRS中に存在させるか、又はPRSに水を加えることによって(一般にはカラム145に水を加えることによって)PRS中で形成するか、或いは(一般に抽出器155の上流でDMEを加えることによって)PRSに加えることができる。
【0092】
[0094]而して一態様においては、反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行い;反応器内で形成された反応媒体を、フラッシュ容器内において分離して液体再循環流及び蒸気生成物流を形成し;第1のカラム内において蒸気生成物流を蒸留して、側流及び低沸点の塔頂蒸気流を得て;低沸点の塔頂蒸気流を凝縮し、凝縮された流れを二相分離して重質液相及び軽質液相を形成し;重質液相の一部を分離してアセトアルデヒド又は他のPRCを除去し;そして側流から酢酸生成物を回収する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含む、酢酸生成物の製造方法が提供される。
【0093】
第2のカラム:
[0095]側流123によって取り出された酢酸は、好ましくは、例えば乾燥カラムとも呼ぶ第2のカラム125などの中で更なる精製にかけ、側流123を分離して、主として水を含む水性オーバーヘッド流126、及び主として酢酸を含む生成物流127を形成する。側流からの水は、水性オーバーヘッド流中に濃縮され、水性オーバーヘッド流は、側流中の水の90%以上、例えば95%以上、97%以上、99%以上を含む。水性オーバーヘッド流126は、50〜75重量%の量の水を含んでいてよい。幾つかの態様においては、水性オーバーヘッド流は、75重量%以下、例えば70重量%以下、65重量%以下の量の水を含んでいてよい。また、酢酸メチル及びヨウ化メチルも側流から取り出されて、オーバーヘッド流中に濃縮される。生成物流127は、好ましくは酢酸を含むか又はこれから実質的に構成され、第2のカラム125の底部、又は底部付近の側流で排出することができる。底部付近の側流として排出する場合には、側流は液体又は蒸気流であってよい。好ましい態様においては、生成物流127は、90重量%より多く、例えば95重量%より多く、又は98重量%より多い量の酢酸を含む。生成物流127は、商業的使用のために貯蔵又は輸送する前に、例えばイオン交換樹脂に通すことによって更に処理することができる。
【0094】
保護床:
[0096]ハロゲン化物及び/又は腐食金属で汚染されているカルボン酸流、例えば酢酸流は、広範囲の運転条件下でイオン交換樹脂組成物と接触させることができる。好ましくは、イオン交換樹脂組成物は保護床内で与える。汚染されているカルボン酸流を精製するために保護床を用いることは、当該技術において、例えば米国特許4,615,806;5,653,853;5,731,252;及び6,225,498(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)において十分に文書で記載されている。一般に、汚染されている液体カルボン酸流を、好ましくは保護床内に配置されているイオン交換樹脂組成物と接触させる。ハロゲン化物汚染物質、例えばヨウ化物汚染物質は金属と反応して金属ヨウ化物を形成する。幾つかの態様においては、ヨウ化物と会合することができる炭化水素基、例えばメチル基によってカルボン酸がエステル化される可能性がある。例えば、ヨウ化メチルで汚染されている酢酸の場合には、ヨウ化物除去の副生成物として酢酸メチルが生成する。このエステル化生成物の形成は、通常は処理されたカルボン酸流に対して有害な影響を与えない。
【0095】
[0097]一態様においては、イオン交換樹脂は金属交換されたイオン交換樹脂であり、銀、水銀、パラジウム、及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含ませることができる。一態様においては、金属交換された樹脂の強酸交換部位の少なくとも1%は銀によって占有される。他の態様においては、金属交換された樹脂の強酸交換部位の少なくとも1%は水銀によって占有される。この方法には、精製された酢酸生成物をカチオン交換樹脂で処理して、銀、水銀、パラジウム、又はロジウムを回収することを更に含ませることができる。
【0096】
[0098]接触工程中の圧力は、樹脂の物理的強度のみによって制限される。一態様においては、接触は、0.1MPa〜1MPa、例えば0.1MPa〜0.8MPa、又は0.1MPa〜0.5MPaの範囲の圧力において行う。しかしながら、便宜上の理由で圧力及び温度の両方を、好ましくは汚染されているカルボン酸流が液体として処理されるように定めることができる。而して、例えば経済学的考察に基づいて一般に好ましい大気圧において運転する場合には、温度は、17℃(酢酸の凝固点)乃至118℃(酢酸の沸点)の範囲にすることができる。他のカルボン酸化合物を含む生成物流に関して同様の範囲を定めることは当業者の理解しうる範囲内である。接触工程の温度は、好ましくは樹脂の分解を最小にするように比較的低く維持する。一態様においては、接触は、25℃〜120℃、例えば25℃〜100℃、又は50℃〜100℃の範囲の温度において行う。幾つかのカチオン巨大網状樹脂は、通常は、150℃の温度において(酸触媒芳香族脱スルホン化のメカニズムによって)分解し始める。5個以下の炭素原子、例えば3個以下の炭素原子を有するカルボン酸は、これらの温度において液体状態を維持する。而して、接触中の温度は、用いる樹脂の分解温度より低く維持しなければならない。幾つかの態様においては、運転温度は、液相運転及びハロゲン化物除去に関して所望の反応速度論と合致する樹脂の温度限界より低く維持する。
【0097】
[0099]酢酸精製系列内の保護床の構成は広く変化させることができる。例えば、保護床は乾燥カラムの後に配することができる。更には又は或いは、保護床は、重質留分除去カラム又は仕上げカラムの後に配することができる。好ましくは、保護床は、酢酸生成物流の温度が低く、例えば120℃未満、又は100℃未満である位置に配する。上記で議論した有利性に加えて、より低い温度における運転によって、より高い温度における運転と比べて腐食がより少なくなる。より低い温度における運転によって、腐食金属汚染物質(これは上記で議論したように全体的な樹脂の寿命を減少させる可能性がある)の形成がより少なくなる。また、より低い運転温度によって腐食がより少なくなるので、有利なことに高価な耐腐食性金属で容器を形成する必要がなく、より低いグレードの金属、例えば標準的なステンレススチールを用いることができる。
【0098】
[0100]一態様においては、保護床を通る流量は、0.1床体積/時(BV/時)〜50BV/時、例えば1BV/時〜20BV/時、又は6BV/時〜10BV/時の範囲である。有機媒体の床体積は、樹脂床によって占められる体積に等しい媒体の体積である。1BV/時の流量は、樹脂床によって占められる体積に等しい量の有機液体が1時間の間で樹脂床を通過することを意味する。
【0099】
[0101]全ヨウ化物濃度が高い精製された酢酸生成物によって樹脂が使い尽くされることを回避するために、一態様においては、精製された酢酸生成物の全ヨウ化物濃度が5wppm未満、例えば好ましくは1wppm未満である場合に、塔底流127中の精製された酢酸生成物を保護床と接触させる。全ヨウ化物濃度には、有機のC〜C14アルキルヨウ化物、及びヨウ化水素のような無機供給源の両方からのヨウ化物が含まれる。しかしながら、本発明の目的のためには、ヨウ化エチルは一般に保護床によっては除去されない。その代わりに、ヨウ化メチル、及びより高級のアルキルヨウ化物であるC〜C14アルキルヨウ化物が除去される。保護床処理の結果として、精製された酢酸組成物が得られる。精製された酢酸組成物は、一態様においては、100wppb未満、例えば90wppb未満、50wppb未満、又は25wppb未満のヨウ化物を含む。一態様においては、精製された酢酸組成物は、1000wppb未満、例えば750wppb未満、500wppb未満、又は250wppb未満の腐食金属を含む。本発明の目的のためには、腐食金属としては、ニッケル、鉄、クロム、モリブデン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属が挙げられる。範囲に関しては、精製された酢酸組成物は、0〜100wppb、例えば1〜50wppbのヨウ化物;及び/又は0〜1000wppb、例えば1〜500wppbの腐食金属;を含むようにすることができる。他の態様においては、保護床によって、粗酢酸生成物からヨウ化物の少なくとも25重量%、例えば少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%を除去する。一態様においては、保護床によって、粗酢酸生成物から腐食金属の少なくとも25重量%、例えば少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%を除去する。
【0100】
[0102]図面及び上記に示した明細書から明らかなように、種々の態様が意図される。
E1.反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持しながら行い;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含み、酢酸生成物は250wppm以下の量のプロピオン酸を含む、酢酸生成物の製造方法。
【0101】
E2.工程が、プロピオン酸を酢酸生成物から除去し、及び/又は酢酸生成物中のプロピオン酸濃度を減少させることを含まない、態様E1の方法。
E3.工程が、反応媒体からアルカンを除去するためのアルカン除去システムを含まない、態様E1又はE2の方法。
【0102】
E4.反応媒体中のヨウ化エチル濃度が1〜750wppmである、態様E1〜E3のいずれかの方法。
E5.反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸が3:1〜1:2の重量比で存在する、態様E1〜E4のいずれかの方法。
【0103】
E6.反応媒体が0.1〜14重量%の量の水を含む、態様E1〜E5のいずれかの方法。
E7.反応器を150〜250℃の温度及び25〜40気圧の全圧に維持する、態様E1〜E6のいずれかの方法。
【0104】
E8.反応媒体が1500wppm以下の量のアセトアルデヒドを更に含む、態様E1〜E7のいずれかの方法。
E9.アセトアルデヒドとヨウ化エチルが2:1〜20:1の重量比で反応媒体中に存在する、態様E1〜E8のいずれかの方法。
【0105】
E10.メタノールを反応器中に導入し、メタノール供給源が1〜150wppmの量のエタノールを含む、態様E1〜E9のいずれかの方法。
E11.反応媒体中のヨウ化エチル濃度を、
(A)反応器内の水素分圧;(B)反応媒体の酢酸メチル濃度;及び/又は(C)反応媒体のヨウ化メチル濃度;の少なくとも1つを調節し;そして
反応媒体から酢酸生成物を分離する;
ことによって維持する、態様E1〜E10のいずれかの方法。
【0106】
E12.反応器内の水素分圧を0.3〜2気圧に維持する、態様E11の方法。
E13.反応媒体の酢酸メチル濃度を0.5〜30重量%に維持する、態様E11の方法。
【0107】
E14.反応媒体の酢酸メチル濃度を1〜25重量%に維持する、態様E11の方法。
E15.反応媒体中のヨウ化エチル濃度を、反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去することによって維持する、態様E1〜E10のいずれかの方法。
【0108】
E16.ヨウ化エチル濃度を、
(a)反応媒体の少なくとも一部を分離して、酢酸及び液体再循環物質を含む蒸気オーバーヘッド流を与え;
(b)蒸気オーバーヘッド流を蒸留して、精製酢酸生成物、並びにヨウ化メチル、水、酢酸、酢酸メチル、及びアセトアルデヒドを含む第1のオーバーヘッド流を生成させ;
(c)第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部を蒸留して、第2のオーバーヘッド流及び液相残渣を形成し、ここで第2のオーバーヘッド流は第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部に対してアセトアルデヒドが富化されており;そして
(d)第2のオーバーヘッド流の一部を水で抽出して、アセトアルデヒドを含む水性アセトアルデヒド流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る;
ことを含む方法を用いてアセトアルデヒドを除去することによって維持する、態様E15の方法。
【0109】
E17.ラフィネートからのヨウ化メチルを反応器に直接か又は間接的に戻す、態様E16の方法。
E18.第1のオーバーヘッド流を凝縮及び二相分離して軽質液相及び重質液相を形成することを更に含み、ここで工程(c)において蒸留される第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部は重質液相を含む、態様E17の方法。
【0110】
E19.ヨウ化エチルを含むエマルジョンを含む相が軽質液相と重質液相の間に形成されるのを阻止するのに十分な条件下で第1のオーバーヘッド流を相分離する、態様E18の方法。
【0111】
E20.重質液相がヨウ化エチルを含む、態様E18の方法。
E21.酢酸、メタノール、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物有機塩を含む反応媒体を与え;
反応媒体から誘導される流れからアセトアルデヒドを除去し;
反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持し;そして
反応媒体から酢酸生成物を分離する;
ことを含む酢酸生成物の製造方法。
【0112】
E22.反応媒体中のヨウ化エチル濃度が1〜750wppmである、態様E21の方法。
E23.反応媒体から誘導される流れはヨウ化メチルが富化されている、態様E21の方法。
【0113】
E24.アセトアルデヒドを除去することが、
(a)反応媒体の少なくとも一部を分離して、酢酸及び液体再循環物質を含む蒸気オーバーヘッド流を与え;
(b)蒸気オーバーヘッド流を蒸留して、精製酢酸生成物、並びにヨウ化メチル、水、酢酸、酢酸メチル、及びアセトアルデヒドを含む第1のオーバーヘッド流を生成させ;
(c)第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部を蒸留して、第2のオーバーヘッド流及び液相残渣を形成し、ここで第2のオーバーヘッド流は第1のオーバーヘッド流の少なくとも一部に対してアセトアルデヒドが富化されており;そして
(d)第2のオーバーヘッド流を水で抽出して、アセトアルデヒドを含む水性アセトアルデヒド流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る;
ことを更に含む、態様E21の方法。
【0114】
E25.ラフィネートからのヨウ化メチルを反応器に直接か又は間接的に戻す、態様E21の方法。
E26.酢酸生成物が250wppm以下の量のプロピオン酸を含む、態様E21の方法。
【0115】
E27.反応器内において、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを、水、金属触媒、ヨウ化メチル、及びハロゲン化物塩の存在下で一酸化炭素を用いて連続的にカルボニル化して反応媒体を形成し、カルボニル化は、(A)反応器内の水素分圧;(B)反応媒体の酢酸メチル濃度;及び/又は(C)反応媒体のヨウ化メチル濃度;の少なくとも1つを調節することによって行い;そして、反応媒体から酢酸生成物を分離して、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持し;そして反応媒体から酢酸生成物を分離する;工程を含む、酢酸生成物の製造方法。
【0116】
[0103]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(これらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると。更に、下記及び/又は添付の特許請求の範囲において示されている本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができることを理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
【実施例】
【0117】
[0104]本発明は以下の非限定的な実施例を考慮してより良好に理解される。
実施例1:試料A〜C:
[0105]一酸化炭素及びメタノール、ロジウム触媒、ヨウ化メチル、ヨウ化リチウム、及び酢酸メチルを含むロジウム触媒混合物をマイクロユニットに供給した。メタノールは5〜15wppmのエタノールを含んでいた。温度を一定に維持し、反応圧力も同様にし、一方、他の条件及び成分は変化させた。アセトアルデヒド及びヨウ化エチルの濃度を測定し、下表1に報告する。
【0118】
実施例2:試料D〜F:
[0106]一酸化炭素、メタノール、並びにロジウム触媒、ヨウ化メチル、ヨウ化リチウム、及び酢酸メチルを含むロジウム触媒混合物をパイロットプラントに供給した。温度を実質的に一定に維持し(全実施例の間で2℃以内)、一方、他の条件及び成分は変化させた。アセトアルデヒド及びヨウ化エチルの濃度を測定し、下表1に報告する。実施例Fは比較実施例であり、一方試料A〜Eは本発明である。
【0119】
【表1】
【0120】
[0107]表1に示されるように且つ図3においてプロットされているように、試料A〜Fは、アセトアルデヒド濃度とヨウ化エチル濃度との間の関係が、非常に安定性がなく、予測できないことを示す。マイクロユニット内で行った試料A〜Cを比較すると、増加するヨウ化エチルと、増加するアセトアルデヒド、増加する水素分圧及び一酸化炭素中の水素との間の傾向が明らかである。この傾向はまた、パイロットプラント内で行った試料D〜Fを比較することによっても分かる。
【0121】
実施例3:
[0108]試料A〜Fのそれぞれの反応混合物を反応器から取り出し、図2において記載するようなフラッシュ容器、軽質留分カラム、及び乾燥カラムに通した。プロピオン酸、或いは酢酸よりも高い沸点を有する成分の重質留分除去は行わなかった。酢酸生成物中のプロピオン酸濃度を測定した。結果を、反応混合物中のアセトアルデヒド濃度とヨウ化エチル濃度を比較して下表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
[0109]表2において示されるように、ヨウ化エチル含量が750wppm未満であり、アセトアルデヒド濃度が1500wppm未満である場合には、酢酸生成物中のプロピオン酸濃度は250wppm未満である。
図1
図2
図3