(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039790
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】オーブンドア
(51)【国際特許分類】
C03C 3/085 20060101AFI20161128BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20161128BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20161128BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20161128BHJP
F24C 15/04 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
F24C15/04 A
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-500965(P2015-500965)
(86)(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公表番号】特表2015-516356(P2015-516356A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】FR2013050577
(87)【国際公開番号】WO2013140081
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】1252479
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】カミラ プレバコバ
(72)【発明者】
【氏名】エドワール ブリュネ
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ ダルゴー
【審査官】
宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0253471(US,A1)
【文献】
特開2011−093792(JP,A)
【文献】
米国特許第4360567(US,A)
【文献】
国際公開第2012/076289(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0145241(US,A1)
【文献】
特開2002−047030(JP,A)
【文献】
米国特許第4438210(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第102004011009(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0278214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00−14/00
F24C15/04
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーブンのコンパートメントに最も近いガラスシートである内部ガラスシート(3)と、外部ガラスシート(2)とを含む家庭用オーブンドア(1)であって、これらのガラスシート(2、3)は堅く連結され、かつ少なくとも1つの空隙により分離され、前記内部ガラスシート(3)は、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分:
SiO2 55〜70%
Al2O3 12〜25%
B2O3 0〜0.5%
Li2O 0〜2%
Na2O+K2O 0〜5%
MgO 0〜10%
CaO 0〜15%
SrO 0〜15%
BaO 1〜15%
ZnO 0〜5%
RO 5〜25%
ここで、RO=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
TiO2 0〜3%
ZrO2 0〜4%
で含む化学組成を有する、家庭用オーブンドア(1)。
【請求項2】
該内部ガラスシート(3)と該外部ガラスシート(2)との間に位置し、かつこれらのシートの各々から、少なくとも1つの空隙により分離された、少なくとも1つの中間ガラスシート(5、6)を含む、請求項1に記載のオーブンドア(1)。
【請求項3】
該ガラスシート(2、3、5、6)の厚さが2〜5mmの範囲内である、請求項1または2に記載のオーブンドア(1)。
【請求項4】
少なくとも該内部ガラスシート(3)が熱強化されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項5】
該外部ガラスシート(2)、および任意選択的に、そのもしくは各々の中間ガラスシート(5、6)が、ソーダ石灰シリカガラスでできている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項6】
少なくとも1つのガラスシート(2、3、5、6)が低放射率層で被覆されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項7】
該少なくとも1つのガラスシートが中間ガラスシート(5、6)である、請求項6に記載のオーブンドア(1)。
【請求項8】
該内部ガラスシート(3)を形成するガラスが、少なくとも580℃でかつ750℃以下の低アニール温度を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項9】
該内部ガラスシート(3)の化学組成が0.5%以下のLi2O含量を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項10】
請求項9に記載のオーブンドア(1)であって、該内部ガラスシート(3)が、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分:
MgO 5〜10%
CaO 0〜5%
SrO+BaO+ZnO 0〜15%
を含む化学組成を有する、オーブンドア(1)。
【請求項11】
請求項9に記載のオーブンドア(1)であって、該内部ガラスシート(3)が、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分:
MgO 0〜7%
CaO 5〜15%
SrO+BaO+ZnO 0〜10%
を含む化学組成を有する、オーブンドア(1)。
【請求項12】
該内部ガラスシート(3)の化学組成が、0.5%〜1.8%の間のLi2O含量を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項13】
請求項12に記載のオーブンドア(1)であって、該内部ガラスシート(3)が、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分:
MgO 5〜10%
CaO 0〜7%
SrO+BaO+ZnO 0〜6%
を含む化学組成を有する、オーブンドア(1)。
【請求項14】
請求項9または12に記載のオーブンドア(1)であって、該内部ガラスシート(3)が、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分:
MgO 1〜6%
CaO 0〜5
SrO+BaO+ZnO 5〜20%
を含む化学組成を有する、オーブンドア(1)。
【請求項15】
該内部ガラスシートの化学組成が、少なくとも3%のSrO+BaO+ZnO含量を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)。
【請求項16】
該内部ガラスシート(3)が、該コンパートメントに最も近いガラスシートである、コンパートメントと請求項1〜15のいずれか1項に記載のオーブンドア(1)とを含む、家庭用電気熱分解オーブン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に「熱分解オーブン」と呼ばれる家庭用電気熱分解オーブンを、特に閉じるための、家庭用オーブンドアの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解オーブンは、食物を調理することが企図される電気調理オーブンであり、ここでは、食物残渣を分解することができる高温上昇によりクリーニングが行われる。現在のオーブンにより典型的に使用されている熱分解サイクルは、オーブンのコンパートメント中で少なくとも500℃の温度を想定する。
【0003】
熱分解オーブンのドアは、一般に金属フレームにより堅く連結され、空隙により分離された、少なくとも2つのガラスシートを含む。この構成は、使用者に対して最も近い外部ガラスシートの温度を制限することを可能にし、従って、この使用者は、ドアに接触しても火傷をすることは無い。
【0004】
熱分解サイクルで使用される高温の観点から、オーブンのコンパートメントに最も近いガラスシートである内部ガラスシートは、特に、これが大きな表面積を有する場合、大きな熱機械的応力に耐えなければならない。一般に、内部ガラスシートはホウ珪酸ガラスでできており、これは、33×10
-7/℃のオーダーの小さい膨張係数を有する。
【0005】
しかし、この解決策に欠点が無いわけではない:ホウ珪酸ガラスは、高温で変形を受けやすく、これが空隙の厚さを減少させ、従ってドアの断熱を悪化させる。さらに、これらの比較的低いガラス転移温度と組合せた非常に小さい熱膨張係数は、熱アニール中に、ガラスの芯と表面との応力の大きな差を得ることをより困難にする。従ってオーブンドアに使用されるホウ珪酸ガラスは、破壊時に断片化せず、従って、オーブンの使用者にとって潜在的な安全性問題を提起している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、より良好に高温に耐えることができる内部ガラスシートをオーブンドアに提供することである。別の目的は、特に酸(DIN12116基準の意味で)と塩基(ISO695基準に従って)に対して、高い加水分解耐性(ISO719基準の意味で)と化学耐性とを有する、熱分解オーブンドアの内部ガラスシートを形成することが企図されたガラスシートを提案することである。本発明の別の目的は、フロート法により経済的に製造することができ、かつ溶融状態で溶融炉の耐火物質を腐食させる能力の低いガラスを提供することである。
【0007】
従って本発明は、オーブンのコンパートメントに最も近いガラスシートであることが企図される内部ガラスシートと、外部ガラスシートとを含む家庭用オーブンドアであって、これらのガラスシートは堅く連結され、かつ少なくとも1つの空隙により分離され、前記内部ガラスシートは、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分:
SiO
2 55〜70%
Al
2O
3 12〜25%
B
2O
3 0〜0.5%、特に0
Li
2O 0〜2%
Na
2O+K
2O 0〜5%、特に0〜1%
MgO 0〜10%
CaO 0〜15%
SrO 0〜15%
BaO 0〜15%
ZnO 0〜5%
RO 5〜25%
ここで、RO=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
TiO
2 0〜3%
ZrO
2 0〜4%
で含む化学組成を有する、家庭用オーブンドアを提供することである。
【0008】
同様に本発明は、内部ガラスシートが前記コンパートメントに最も近いガラスシートである、コンパートメントと本発明のオーブンドアとを含む家庭用電気熱分解オーブンを提供する。
本明細書を通して、内容量と量は重量である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、本発明のオーブンドアの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
すなわち本発明のオーブンドアは、内部ガラスシートと外部ガラスシートとを含み、これらの2つのシートは、ドアの2つの主要な平面の外面を形成し、従って、ドアがオーブンに取り付けられた時、内部ガラスシートがオーブンのコンパートメントに最も近くなり、外部シートが使用者に最も近くなる。
【0011】
本発明のオーブンドアは、好ましくは内部ガラスシートと外部ガラスシートとの間に位置し、かつこれらのシートの各々から、少なくとも1つの空隙により分離された、少なくとも1つの中間ガラスシートを含む。1つの好適なドアは、3つ又は4つのガラスシートを含み、従って1つまたは2つのガラスシートを含む。
【0012】
中間シートの存在は、追加の空隙を生成させ、これがドアの外部シートの温度をさらに制限する。これらの空隙は、ガラスシート間に冷却空気の流れが循環し、これらの冷却に寄与することを意味する。ドアの下端から上端への空気流を確立するファン装置をドアと組合せることにより、空気の流れを強制することができる。オーブンドアは好ましくは、1つまたは2つの中間シートを含み、空気流は、中間シートと外部シートの間のみ、及び任意選択的に中間シートの間を、循環することができる。
【0013】
ガラスのシートは、種々の機械的装置により、堅く連結することができる。例えば外部ガラスシートは、内部表面(オーブンのコンパートメントに向いている)に固定され、内部ガラスシートそして任意選択的に中間ガラスシートを収容する長方形の金属フレームと組合せてもよい。内部ガラスシート又は中間ガラスシート(1つ又は複数)は、例えばフレーム内に作成された溝に挿入してもよい。この場合、外部ガラスシートは好ましくは、ドアの他のシートの表面積より大きい表面積を有する。内部ガラスシートはまた、その周縁がガラスシートの主要な表面に平行な平面の形に沿い、この平らな表面が、外部ガラスシートに固定された面と反対側のフレームの面に支持されるように、その周縁をバーナーで変形させることができる。ガラスシート間で生じるスペースの増加の効果は、空気流を増やすことである。
【0014】
上記空気流を確実にするために、金属フレームは、好ましくはドアの上端と下端に複数の縦のスロットを有する。
【0015】
内部ガラスシートと外部ガラスシートは、例えば上記金属フレームを用いて互いに平行に固定される。中間ガラスシートは、内部ガラスシート及び外部ガラスシートと、平行であっても平行でなくてもよい。
【0016】
外部ガラスシートは、好ましくは、その外面(使用者に面している面)の一部が、特にスクリーン印刷で適用されたエナメルの形態の装飾で被覆され、例えばガラスシートを固定するための種々の要素を隠し、オーブンコンパートメントの内部のみが見えるように企図される。内部ガラスシートもまた、特に外端の周りで、外部シートに向くように、例えばスクリーン印刷により適用されたエナメル化装飾で被覆してもよい。内部ガラスシートが熱強化される場合、エナメルは、強化工程中に硬化させることができる。
【0017】
ガラスシート(及び、特に内部ガラスシート)の厚さは、好ましくは2〜5mm、特に2.5〜4.5mmの範囲である。3又は4mmの厚さは、コスト、重量、およびドアの断熱の観点から、特に有利である。各空隙の厚さは、典型的には2〜6mm、特に3〜5mmの範囲である。ドアの全厚さは、一般に6〜50mm、特に15〜40mmの範囲である。
【0018】
一般にガラスシートは、長方形の表面を示し、角はおそらく任意選択的に丸められる。
【0019】
有利には、少なくとも内部ガラスシートは熱強化される。他のガラスシートもまた強化されてもよい。熱強化は、ガラスのガラス転移温度を超えて加熱し、次に空気ブラストを用いて急速に冷却することを含み、この冷却が、表面の大きな圧縮応力を発生させ、これが、ガラスの熱機械的強度の強化に寄与する。本発明のオーブンドア用に提唱されるガラスは、ホウ珪酸ガラスと比較して、その熱膨張係数、そのガラス転移温度(又は、その、より低いアニール温度)、及びそのヤング率(これらは、より高い)のために、強化に極めて適している。従って、偶然破損した時、本発明のガラスは、鋭くはない複数の断片に破壊され、これは「断片化」として知られている方法である。
【0020】
外部ガラスシート、および適宜、そのもしくは各中間ガラスシートは、好ましくはソーダ石灰シリカガラスでできている。これらのガラスシートは、内部ガラスシートが受ける熱機械的応力よりはるかに小さな熱機械的応力を受け、これは、より安価で一般的なガラスを使用できることを意味する。
【0021】
少なくとも1つのガラスシート、特に中間ガラスシートは、低放射率層、特に透明導電性酸化物(TCO)、例えば、特にフッ素又はアンチモンをドープされた酸化スズの層で、有利に被覆される。このような層の存在は、ガラスシート間の熱交換を低減させ、従って、ドアの断熱性を強化することに寄与する。
【0022】
ガラスの内部シートを形成するガラスは、好ましくは少なくとも580℃、特に600℃、及び750℃以下、特に720℃、又は700℃、及び650℃もしくは640℃の、より低いアニール温度を有する。低すぎる低焼きなまし温度は、熱分解サイクル中にガラスシートの変形を引き起こすことがある。逆に、あまりにも高い低アニール温度は、非常に高い加熱温度を必要とするため、ガラスの熱強化をより困難にするであろう。より低いアニール温度(又はひずみ温度)は、ISO7884−7:1987基準に従って測定される。
【0023】
内部ガラスシートを形成するガラスは、好ましくは30(特に40)〜80×10
-7/℃、特に60×10
-7/℃以下、又はさらには50×10
-7/℃以下の範囲の線熱膨張係数を有する。
【0024】
小さすぎる膨張係数は、熱強化の高い適合性には有害であり、一方、高い膨張係数は、熱ショックに対する過度に小さい抵抗を発生することがある。膨張係数は、ISO7991:1987基準に従って測定される。
【0025】
ISO9050:2003基準の意味において内部ガラスシートの光透過率は、使用者によるオーブンコンパートメントのより良好な視認性を確保するために、好ましくは少なくとも85%、さらには88%である。内部ガラスシートの黄色度指数は、ASTM E313基準の意味内で、好ましくは4以下、特に1、さらに0.5である。
【0026】
内部ガラスシートを形成するガラスは、好ましくは1480℃以下、特に1425℃又は1400℃の、10
3.5ポアズの粘度に対応する温度(「T3.5」と呼ばれる)を有する。ガラスの液相線温度は、有利には、1410℃以下、特に1390℃、及びさらには1380℃である。温度T3.5は、好ましくは1420℃以下であり、液相線温度は温度T3.5未満であり、かつ1390℃以下である。これらの条件は、ガラスが、フロートガラス法(これは、溶融スズ浴にガラスを投入することを含む)による製造に極めて適していることを、確実にする。
【0027】
シリカ(SiO
2)は、ガラスの主要な構成要素である。ガラスの失透を防ぐために、かつ化学的耐性と加水分解耐性とを強化するために、最少量が必要である。しかし、高レベルは、ガラスの粘度を上昇させ、製造をより困難でよりエネルギー集約的なものにする。シリカ含量は、有利には少なくとも56%、特に57%もしくは58%、又はさらには59%もしくは60%、又は61%もしくは62%である。ある態様において、シリカ含量は、少なくとも63%もしくは64%、特に65%もしくは66%でもよい。69%以下のシリカ含量、特に68%が好ましい。好適な範囲は、例えば60〜70%、又は60〜68%である。
【0028】
アルミナ(Al
2O
3)は、ガラスの加水分解耐性と熱機械的応力とを上昇させるが、その粘度が犠牲になる。アルミナ含量は、好ましくは少なくとも13%、特に14%もしくは15%、又はさらには16%もしくは17%であり、さらには18%、19%、もしくは20%である。24%以下、すなわち23%、又はさらには22%もしくは21%が有利である。好適な範囲は、例えば12〜16%、18〜25%、特に18〜20%、又は20〜24%である。
【0029】
シリカとアルミナ(SiO
2+Al
2O
3)の量の合計は、好ましくは70〜90%の範囲、特に75%〜85%の範囲である。高すぎるレベルは、好ましくない方法で粘度の上昇につながることがある。
【0030】
酸化ホウ素(B
2O
3)は高価であり、特にガラスの溶融中に発生させる排出物のせいで環境に有害なため、この含量は有利にはゼロである。さらに、その原因とされる生殖毒性のために、ヨーロッパの規制は、ホウ素の担体を扱う時に、防御処置の設置を必要としている。
【0031】
酸化リチウム(Li
2O)は、非常に少量でも、ガラスの融剤として有利であることがわかっている。その高いコストのために、その量は、1.9%以下、特に1.8%、又はさらには1.7%、さらに1.6%であることが有利である。Li
2O含量を制限することはまた、最終的ガラスの酸化鉄含量を制限しながら、いくつかの有利な原料(例えば、リチア輝石(spodumene))の使用を可能にする。ある態様において、Li
2O含量は、0.5%以下で、さらにはゼロでもよい。他の態様において、Li
2O含量は、少なくとも0.5%、特に0.6%もしくは0.7%、又はさらには0.8%もしくは0.9%、及びさらには1%もしくは1.2%、又は1.3%もしくは1.4%である。この場合、好適な範囲は0.5〜1.8%、又は1〜1.7%である。
【0032】
他のアルカリ金属酸化物である酸化ナトリウム(Na
2O)と酸化カリウム(K
2O)は、溶融ガラスによる耐火物質の腐食とガラスの膨張係数を増加させ、一方、加水分解性と化学耐性を低下させるため、好ましくない傾向がある。従ってNa
2O+K
2O含量は、好ましくは3%、2%、1%、0.8%、特に0.6%、さらに0.5%もしくは0.4%以下である。ある態様において、この量はゼロでもよい。
【0033】
二価酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO)(まとめて「RO」と呼ぶ)は、経済的に有利な条件でガラスを溶融することを可能にする粘度を得るために、決定的に重要である。これらはまた、ガラス(アルカリ金属酸化物の代替物として使用される時)のより低い焼きなまし温度を上昇させ、従って高温での変形に対する抵抗性を上昇させる。RO含量は、好ましくは少なくとも6%、特に7%もしくは8%、又はさらには9%もしくは10%である。失透のリスクを制限するために、この量は、好ましくは23%以下、特に21%もしくは20%、又はさらには19%もしくは18%、及びさらには17%もしくは16%である。ある場合には、特にBaO含量が1%以下である時、RO含量は、15%以下、特に14%もしくは13%、又はさらには12%もしくは11%、及びさらには10%もしくは9%でもよい。
【0034】
2価酸化物の中で、SrO+BaO+ZnOの量は、少なくとも3%、特に4%もしくは5%、及び/又は20%以下、特に18%もしくは15%であることが好ましい。ある態様において、特に、Li
2O含量が0〜0.5%である時、又はゼロである時、SrO+BaO+ZnO含量は、0%〜15%、又は0%〜10%、又は0%〜6%であり、特に0%〜5%、又は0%〜4%である。別の態様において、SrO+BaO+ZnOの量は、5%〜20%、特に8%〜18%である。
【0035】
酸化マグネシウム(MgO)は、高温でのガラスの融剤として有利である。しかし、高レベルは、ガラスの失透のリスクを増大させることがある。MgO含量は、好ましくは少なくとも1%、又はさらに2%もしくは3%、又はさらにはある態様について5%である。有利には、8%以下、特に7%、及びさらには6%である。ある態様において、MgO含量は5%〜10%、特に5%〜8%である。他の態様において、MgO含量は1%〜6%、特に1%〜5%である。
【0036】
石灰(CaO)もまた融剤である;しかし、この酸化物により誘導されるいくつかの耐火物質の腐食の観点から、その量は、好ましくは9%以下、特に8%もしくは7%、又はさらには6%もしくは5%、及びさらには4%と3%、又は2%もしくは1%である。ある態様において、この量はゼロでもよい。好適な範囲は、特に0〜5%又は0〜1%である。別の態様において、CaO含量は、5%〜15%、特に10%〜15%でもよい。
【0037】
酸化ストロンチウム(SrO)の量は、少なくとも1%、特に2%、及びさらには3%もしくは4%であり、又はさらには5%もしくは6%でもよい。この量は、9%以下、又はさらには8%もしくは7%、特に6%もしくは5%でもよい。ある態様において、特に、ガラスが少なくとも1%のBaO及び/又はZnOを含む時、SrO含量は、4%以下、特に3%もしくは2%、及びさらには1%もしくはゼロでもよい。
【0038】
酸化バリウム(BaO)の量は、少なくとも1%、特に2%、及びさらには3%もしくは4%、及びさらには5%及び6%でもよい。ある場合には、BaO含量は、少なくとも7%、特に8%もしくは9%、又はさらには10%もしくは11%、又は12%もしくは13%でもよい。この量は、9%以下、又はさらには8%もしくは7%、特に6%もしくは5%でもよい。ある態様において、特に、ガラスが少なくとも1%のSrO及び/又はZnOを含む時、BaO含量は、4%以下、特に3%もしくは2%、及びさらには1%もしくはゼロでもよい。
【0039】
酸化亜鉛(ZnO)の量は、少なくとも1%、特に1.5%、又はさらには2%でもよい。ある態様において、特に、ガラスが少なくとも1%のSrO及び/又はBaOを含む時、ZnO含量は、4%以下、特に3%もしくは2%、及びさらには1%もしくははゼロでもよい。
【0040】
酸化チタン(TiO
2)の量は、好ましくは2%以下、特に1%もしくは0.4%、特に0.3%、及びさらには0.2%もしくは0.1%、又はさらには0.05%である。この理由は、この酸化物が、ガラスの黄色度指数を強化するためである。
【0041】
酸化ジルコニウム(ZrO
2)は、ガラスの化学耐性と熱機械的応力の上昇に寄与することができる。このために、その量は、有利には少なくとも0.5%、特に1%、又は1.5%もしくは2%、又はさらには3%でもよい。ある態様において、その量は、好ましくは3%以下、特に2%である。これは、ある場合にはゼロでもよい。その理由は、高レベルの酸化ジルコニウムが、液相線温度を上昇させながら、ガラスの溶融をより困難にするためである。
【0042】
上記の種々の好適な範囲は、すべての可能な組合せに従って、これらの組合せのすべてを本明細書に記載できなくても、互いに組合せすることができることは自明である。いくつかの特に好適な酸化物の組合せを以下に示す:
− 組合せ1:
Li
2O 0〜0.5%、特に0
MgO 5〜10%、特に5〜8%
CaO 0〜5%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 0〜15%、特に0〜10%
− 組合せ2:
Li
2O 0〜0.5%、特に0
MgO 1〜6%、特に1〜5%
CaO 0〜5%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 5〜20%、特に8〜18%
− 組合せ3:
Li
2O 0〜0.5%、特に0
MgO 0〜7%、特に3〜6%
CaO 5〜15%、特に10〜15%
SrO+BaO+ZnO 0〜10%、特に0〜2%
− 組合せ4:
Li
2O 0.5〜1.8%、特に1〜1.7%
MgO 5〜10%、特に5〜8%
CaO 0〜7%、特に0〜5%又は0〜1%
SrO+BaO+ZnO 0〜6%、特に0〜4%
− 組合せ5:
Li
2O 0.5〜1.8%、特に1〜1.7%
MgO 1〜6%、特に1〜3%
CaO 0〜5%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 5〜20%、特に8〜18%
【0043】
さらに詳しくは、第1の好適な態様において、内部ガラスシートは、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分を含む化学組成を有する:
SiO
2 60〜70%、特に60〜68%
Al
2O
3 18〜25%、特に20〜24%
B
2O
3 0
Li
2O 0〜0.5%、特に0
Na
2O+K
2O 0〜1%
MgO 5〜10%、特に5〜8%
CaO 0〜5%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 0〜15%、特に0〜10%、又はさらには0〜6%、及びさらには0〜4%
TiO
2 0〜0.5%、特に0〜0.5%
ZrO
2 0〜4%、特に0。
【0044】
第2の好適な態様において、内部ガラスシートは、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分を含む化学組成を有する:
SiO
2 60〜70%、特に60〜68%
Al
2O
3 18〜25%、特に20〜24%
B
2O
3 0
Li
2O 0〜0.5%、特に0
Na
2O+K
2O 0〜1%
MgO 1〜6%、特に1〜5%
CaO 0〜5%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 5〜20%、特に8〜18%
TiO
2 0〜0.5%、特に0〜0.05%
ZrO
2 0〜4%、特に0。
【0045】
第3の好適な態様において、内部ガラスシートは、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分を含む化学組成を有する:
SiO
2 60〜70%、特に60〜68%
Al
2O
3 12〜16%、特に14〜16%
B
2O
3 0
Li
2O 0〜0.5%、特に0
Na
2O+K
2O 0〜1%、特に0〜0.5%
MgO 0〜7%、特に3〜6%
CaO 5〜15%、特に10〜15%
SrO+BaO+ZnO 0〜10%、特に0〜2%
TiO
2 0〜0.5%、特に0〜0.05%
ZrO
2 0〜4%、特に0。
【0046】
第4の好適な態様において、内部ガラスシートは、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分を含む化学組成を有する:
SiO
2 60〜70%、特に60〜68%
Al
2O
3 16〜24%、特に17〜23%
B
2O
3 0
Li
2O 0.5〜1.8%、特に1〜1.7%
Na
2O+K
2O 0〜0.5%
MgO 5〜10%、特に5〜8%
CaO 0〜7%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 0〜6%、特に0〜4%
TiO
2 0〜0.5%、特に0〜0.05%
ZrO
2 0〜4%、特に0。
【0047】
第5の好適な態様において、内部ガラスシートは、以下に規定される限界内の重量で、以下の成分を含む化学組成を有する:
SiO
2 60〜70%、特に60〜68%
Al
2O
3 16〜24%、特に17〜23%
B
2O
3 0
Li
2O 0.5〜1.8%、特に1〜1.7%
Na
2O+K
2O 0〜5%、特に0〜0.5%
MgO 1〜6%、特に1〜3%
CaO 0〜5%、特に0〜1%
SrO+BaO+ZnO 5〜20%、特に8〜18%
TiO
2 0〜3%、特に0〜1%
ZrO
2 0〜4%、特に0。
【0048】
好ましくは、一般に、これらの好適な態様のそれぞれについて、SiO
2、Al
2O
3、Li
2O、Na
2O、K
2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、TiO
2、ZrO
2の総量は、少なくとも90%、特に91%、及びさらには92%、又はさらには94%もしくは95%、又は96%もしくは97%である。
【0049】
ガラスの組成は、他の成分を含んでよい。
これらは、硫酸塩、ハロゲン(特に塩素)、硫化物(特に硫化亜鉛)、ヒ素の、アンチモンの、鉄の、スズの、セリウムの、バナジウムの酸化物、又はこれらの混合物の任意の1つから選択される、一般に1%又は2%以下の量の精錬剤でもよい。精錬剤は、溶融ガラスからガス状包有物を除去する目的を果たす。これらの物質の中で特に好適なものは、酸化スズであり、その質量含量は、有利には、0.1%、特に0.2%〜0.6%、特に0.5%の範囲内である。
【0050】
これらはまた、着色剤でもよいが、これらの存在は、一般的には好ましくない。このような物質の量は、一般に、1%以下、特に0.5%、及びさらには0.3%である。これらは、酸化鉄(Fe
2O
3,FeO)から選択される物質でもよく、これは、多くの天然の原料(砂又はリチア輝石);遷移金属(銅、コバルト、クロム、ニッケル、マンガン、バナジウムなど)の酸化物、又は希土類(セリウム、ネオジミウム、エルビウムなど)の酸化物、金属(Ag、Cu、Auなど)、硫化物、セレン、又はこれらの混合物の任意の1つ中に存在するため、その存在は一般に避けられない。
【0051】
内部ガラスシートは、好ましくは、フロート法により得られる。これはまた、オーブンドアの他のガラスシートの場合にも好ましい。しかし、他の方法、例えばローラー間の回転、又は延伸法も企図される。
【0052】
図1は、本発明のオーブンドアの模式断面図である。
【0053】
オーブンドア1は、外部ガラスシート2と内部ガラスシート3とを含み、これらは、金属フレーム4により、堅く平行に連結される。
【0054】
中間ガラスシート5と6は、外部ガラスシート2と内部ガラスシート3の間に配置され、側端でフレーム4により固定される。従って、ガラスシート間で、これらは空隙を生成し、これがドア1の部分での断熱を強化する。
【0055】
金属フレーム4は、外部ガラスシート2の内側の面に固定され、ドア1の上端と下端との間で、規則的な間隔で縦のスロットを有する。これらのスロットは、ドアの下端から上端への空気流(縦の矢印で図示してある)の循環を可能にするように構成されており、ガラスシートの表面が冷却されることを可能にし、従ってドア1の断熱性が強化されることを可能にする。
図1に示される特定の場合では、中間シート6と外部シート2との間と、中間シート6と中間シート5との間でのみ、空気流が循環することができる。
【0056】
外部ガラスシート2は、その外面(使用者に向いている)上に、金属フレーム4を隠すように、シートの端の周りにスクリーン印刷により適用されたエナメル装飾7を含む。外部ガラスシート2はまた、ハンドル(示していない)を有する。
【0057】
内部ガラスシート3は、熱強化され、具体的な上記化学組成を有し、このシートに強化された熱機械的応力を与える。他のガラスシート2、5、及び6は、熱強化されたソーダ石灰シリカガラスでできている。少なくとも1つの中間ガラスシート5又は6は、その面の少なくとも1つの上が、フッ素ドープされた酸化スズの薄層の形態の低放射率コーティングで被覆される。
【実施例】
【0058】
本発明は、以下の非限定例を読むことにより、より有効に理解されるであろう。
【0059】
以下の表1と2は、本発明のオーブンドアの内部ガラスシートを形成するために使用できるガラス組成を示す。
【0060】
組成(重量パーセントで表される)と同様に、表1と2は以下の特性を示す:
− 線熱膨張係数、「α」として特定され、10
-7/Kで表される;
− 液相線温度、「T
L」として特定され、℃で表される;
− ガラスが10
3.5ポアズの粘度を有する温度、「T3.5」として特定され、℃で表される;
− ガラス転移温度、「T
g」として特定され、℃で表される。
【表1】
【表2】