特許第6039802号(P6039802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039802高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置およびそのろ過方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039802
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置およびそのろ過方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/21 20060101AFI20161128BHJP
   B01D 33/58 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 33/80 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 39/20 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   B01D33/26
   B01D33/34
   !B01D39/20 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-518801(P2015-518801)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公表番号】特表2015-525666(P2015-525666A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】CN2013074684
(87)【国際公開番号】WO2014000500
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】201210221911.8
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】313009936
【氏名又は名称】▲陽▼光▲凱▼迪新能源集▲団▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】▲陳義龍▼
(72)【発明者】
【氏名】金家▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼岩▲豊▼
(72)【発明者】
【氏名】姜▲満▼意
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭63−503045(JP,A)
【文献】 特開2002−361008(JP,A)
【文献】 特開昭63−126987(JP,A)
【文献】 特開昭52−030975(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201101917(CN,Y)
【文献】 特公昭36−005940(JP,B1)
【文献】 特表平08−511984(JP,A)
【文献】 米国特許第04698156(US,A)
【文献】 特開平04−358528(JP,A)
【文献】 特開平01−270914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/21−80
B01D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置であって、フィルタ円筒体(1)と、前記フィルタ円筒体(1)内に載置されるフィルタ管(2a)および前記フィルタ管(2a)上に載置されるフィルタ芯と、前記フィルタ円筒体(1)上に載置される材料入口(3)と、前記フィルタ円筒体(1)の底部分に載置される固形残留物出口(4)と、前記フィルタ円筒体(1)の中・下側部分に載置されるろ液出口(5)とを含み、
前記フィルタ芯は、前記フィルタ管(2a)と連結される複数の円盤状のフィルタであるフィルタディスク(2b)を含み、該フィルタディスク(2b)は前記フィルタ円筒体(1)の長手軸と直交しており、
前記フィルタ管(2a)の上端は可変周波数モータ(7)の回転軸と連結され、前記フィルタ円筒体(1)の上部および前記可変周波数モータの伝動軸は密封されており、
前記フィルタ管(2a)の下側部分は連結管継手(2c)を介して前記ろ液出口(5)の管と連結され、前記連結管継手(2c)およびろ液出口の管は互いに直角に固定され、前記連結管継手(2c)の上側開口および前記フィルタ管(2a)の下側部分の回転連結部は密封され、前記連結管継手(2c)の下側部分は封止され、
各フィルタディスク(2b)は前記フィルタ管(2a)と個々に連通し、前記フィルタディスク(2b)およびフィルタ管(2a)は溝連結を形成し、
前記フィルタディスク(2b)は、ろ液を受ける溝付き板(2g)に固定され、
前記フィルタディスク(2b)および溝付き板(2g)は密封空隙(2d)を形成し、該密封空隙(2d)の内側にある管開口(2e)は前記フィルタ管(2a)の内部空隙と連通し、
前記溝付き板(2g)は前記フィルタ管(2a)と連結され、
前記フィルタ管(2a)内に各溝付き板(2g)から回収されたろ液は蓄積される
ことを特徴とする分離ろ過装置。
【請求項2】
前記フィルタディスク(2b)と前記溝付き板(2g)の両方が環状取付フレーム(2h)の環状溝に固定され、フィルタ管(2a)の下部に固定支持リング(2i)が配置され、該固定支持リング(2i)が環状取付フレーム(2h)の底部を支持し、環状取付フレーム(2h)の上端部がクランプ(2f)によって固定される
請求項1の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項3】
前記フィルタディスク(2b)は焼結多孔性金属材料であって、細孔径分布が15〜160μm、厚みが1〜3mm、作動温度範囲が-200℃〜800℃である
請求項1または2の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項4】
前記フィルタ円筒体(1)の底側部分は円錐形構造をなし、前記フィルタ円筒体(1)の外壁には断熱ジャケット層(1a)が設けられ、前記フィルタ円筒体(1)の中・上側部分に蒸気入口(6)は載置されて前記断熱ジャケット層(1a)と連通する、請求項1または2の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項5】
前記フィルタ円筒体(1)の真直円筒体および上部ヘッドはフランジ(1b)により連結される、請求項1または2の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項6】
前記材料入口(3)の高さは前記ろ液出口(5)の高さよりもH1=200〜700mm高く、前記ろ液出口(5)と底部の間の距離はH2=400〜700mmである、請求項1または2の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項7】
前記フィルタ円筒体の下側部分には、残存材料出口(10)が設けられ、
前記残存材料出口(10)は固形残留物出口(4)よりもH3=200〜300mm高く、
前記ろ液出口(5)と前記固体残留物出口(4)の間に凝縮液出口(8)は載置され、
前記フィルタ円筒体(1)の上側部分に通気開口(9)は載置される
請求項1または2の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項8】
前記フィルタ円筒体(1)の真直円筒体および上部ヘッドはフランジ(1b)により連結される、請求項3の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置を使用する高効率ダイナミック式スラリー分離方法であって、
1) フィルタの予熱後に、フィルタによるろ過作用を開始し、材料を材料入口からフィルタ本体のスラリー空隙に加えて前記フィルタディスクに到達させ、該フィルタディスクの回転速度を10〜100r/minに維持し、前記フィルタディスク上の材料から固形フィルタ残留物を分離させ、ろ液を前記フィルタディスクから該フィルタディスクの流路を介して、ろ液出口の管へ流入させ、且つ、フィルタの外へ排出させる工程と、
2) ろ過を所定時間継続して行い、前記フィルタディスク上に堆積するフィルタ残留物のろ過ケーキが一定の厚みになり、フィルタ管の内外圧力差が2.0MPaに達したら、前記フィルタディスクを駆動するモータの回転速度を100〜300r/minに増加させて、前記フィルタディスクからフィルタ残留物薄層のろ過ケーキを除去し、フィルタディスクからのフィルタ残留物のろ過ケーキの除去が完了し、前記フィルタ管の内外圧力差が50kPa未満になったら、前記フィルタディスクを駆動するモータの回転速度を10〜100r/minの範囲内に制御し、通常のろ過作用を維持し、これを繰り返し行う工程と、
3) ろ過作用が終了し、或いはフィルタ底部のフィルタ残留物を排出させる必要がある時に、ろ過を停止し、フィルタ残留物を除去して、次のろ過工程の準備を行う工程と、
4) 前記フィルタディスクを洗浄する必要があるときに、逆流システムを始動させ、材料がフィルタ本体のスラリー空隙に流入するのを停止させ、ろ液出口を逆流媒体入口として作用させ、逆流媒体はろ液上清またはディーゼル油であり、逆流媒体を使用して前記フィルタディスクに逆流作用を実行し、前記フィルタディスクを10〜100r/minの低速で回転させ、逆流作用の完了後にろ過作用を継続する工程と
を含む方法。
【請求項10】
前記フィルタ円筒体のスラリー空隙は、温度が200〜400℃、作動圧力が3.0〜5.0MPa(G)である、請求項9の高効率ダイナミック式スラリー分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置およびそのろ過方法に関し、固液2相(または気液固3相)スラリーの分離の技術分野に属するものであり、特に、相対的に粘度が高いスラリーをろ過するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属触媒は、化学反応速度を変えることができる一種の貴金属材料であるが、それ自体は反応に関与することも、最終生成物に含まれることもない。略全ての貴金属を触媒として使用することができるが、プラチナ、パラジウム、ロジウム、銀、ルテニウム等が一般的に使用される。d電子の軌道は完全に塞がれず、その表面は容易に反応物質を吸着し、その強度は中程度であることから、中間“活性化合物”を形成するのに有利である。加えて、貴金属は触媒活性度が相対的に高く、また高い温度耐性、酸化耐性、および耐腐食性において優れた性能を有するので、貴金属は最重要触媒材料となっている。しかし、貴金属の資源および生産コストは、この種の触媒の適用を常に制限する重要な要因である。
【0003】
特許文献1は、フィッシャートロプシュ合成された重質ワックスの磁気式ろ過方法を開示する。当該方法では、触媒および担体の両方が磁気特性を備える必要がある。従って、本方法は、利用範囲が狭く、また、重大な触媒破損を伴い、ろ過作用が確実に行われない。
【0004】
特許文献2は、フィッシャートロプシュ合成生成物である重質留分をスラリー床反応器から抽出する方法を開示する。ろ過精度は触媒粉末の粒径の130〜300%であり、25〜35μmに過ぎない。かかる方法は、重質留分の粗ろ過の作用を果たすだけである一方、使用済み触媒は反応器内に残されたままであることから、触媒の正しい分離は行われ得ず、ろ過精度も低く、重質留分は依然比較的多くの触媒を含むことから、生成物の品質は殆ど要件を満たしていない。
【0005】
特許文献3では、固形触媒粒子、液状生成物および反応ガスの高効率な連続分離が達成されるにも拘わらず、触媒は相対的に多量の液体を運び去り、また、新鮮な触媒の一部が不可避的に持ち去られ、相対的に多量の生成物が失われる。
【0006】
特許文献4は、外側フィルタ法を採用して、スラリー床反応器中のワックスを触媒から分離する。この方法は国内外で広く試行されており、ワックス外側フィルタはろ過能力の急速な飽和状態化、逆流、頻繁な再生サイクルが生じる。また、ワックスろ過後の触媒の戻り経路は閉塞されることが多いので、反応器の正常な操作に影響を及ぼしてしまう。また、微細フィルタの閉塞が生じることも多い。
【0007】
特許文献5は、内側フィルタ法を採用しており、触媒からの生成物の分離を実現すると同時に、閉塞問題を解消するものであるが、使用済み触媒を反応器から除去する点について考慮されておらず、また、液固分離部のために反応器の高さが増大することから、反応器、特に大規模反応器のコストの増加が相対的に大きくなってしまう。
【0008】
特許文献6でも内側フィルタ法を採用している。触媒からの生成物の分離、並びに閉塞問題は解消されているが、実際の作用中での不適切な操作により、フィルタ布が簡単に破損してしまい、また、反応器から使用済み触媒を除去するという問題については考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許公開第101623574号公報
【特許文献2】中国特許公開第101391196号公報
【特許文献3】中国特許公開第101314120号公報
【特許文献4】中国特許公開第101417219号公報
【特許文献5】中国特許公開第1589957号公報
【特許文献6】中国特許公開第101396647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の一つは、高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置、およびそのろ過方法を提供することにある。高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置は、固液二相(または気液固三相)スラリーの分離を、相対的に高温および高圧条件下で行うのに有利であり、とりわけ、スラリーから使用済みの貴金属触媒を回収するという問題を解決するので、使用済み触媒の再生および回収の可能性をもたらし、実際に貴金属触媒の製造費用を低減させるので、貴金属触媒の幅広い適用が促進される。さらに、任意の固液二相(または気液固三相)スラリー分離を効果的に解決するとともに、製品の品質を保証する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の技術構想は次のとおりである。本発明は、高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置であって、フィルタ円筒体と、フィルタ円筒体内に載置されるフィルタ管およびフィルタ管上に載置されるフィルタ芯と、フィルタ円筒体上に載置される材料入口と、フィルタ円筒体の底部に載置される固体残留物出口と、フィルタ円筒体の中・下側部分に載置されるろ液出口とを含む。フィルタ芯はフィルタ管と連結される複数の円盤状のフィルタであるフィルタディスクを含み、フィルタディスクはフィルタ円筒体の長手軸と直交する。フィルタ管の上端は、可変周波数モータの回転軸と連結される。フィルタ円筒体の上側部分および可変周波数モータの伝動軸は密封される。フィルタ管の下側部分は、連結管継手を介してろ液出口管と連結される。連結管継手およびろ液出口管は、互いに直角に連結される。連結管継手の上側開口およびフィルタ管下側部分の回転連結部分は、密封される。連結管継手の下側部分は封止される。各フィルタディスクは前記フィルタ管と個々に連通し、前記フィルタディスクおよびフィルタ管は溝連結を形成し、前記フィルタディスクは、ろ液を受ける溝付き板に固定され、前記フィルタディスクおよび溝付き板は密封空隙を形成し、該密封空隙の内側にある管開口は前記フィルタ管の内部空隙と連通し、前記溝付き板は前記フィルタ管と連結され、前記フィルタ管内に各溝付き板から回収されたろ液は蓄積される。
【0012】
前記フィルタディスクと前記溝付き板の両方が環状取付フレームの環状溝に固定され、フィルタ管の下部に固定支持リングが配置され、該固定支持リングが環状取付フレームの底部を支持し、環状取付フレームの上端部がクランプによって固定される。
【0013】
前記フィルタディスクは焼結多孔性金属材料であり、細孔径分布が15〜160μm、厚みが1〜3mm、作動温度範囲が-200℃〜800℃である。
【0014】
前記フィルタ円筒体の底部は円錐形構造をなす。フィルタ円筒体の外壁には断熱ジャケット層が設けられる。フィルタ円筒体の中・上側部分に蒸気入口は載置されており、断熱ジャケット層と連通する。
【0015】
前記フィルタ円筒体の真直円筒体および上部ヘッドは、フランジにより連結される。
【0016】
前記材料入口の高さは、ろ液出口の高さよりもH1=200〜700mm高い。ろ液出口と底部の間の距離は、H2=400〜700mmである。
【0017】
前記フィルタ円筒体の下側部分には残存材料出口が設けられる。残存材料出口は固体残留物出口よりもH3=200〜300mm高い。ろ液出口と固体残留物出口の間に凝縮液出口が載置される。フィルタ円筒体の上側部分に通気開口は載置される。
【0018】
前記フィルタ円筒体の真直円筒体および上部ヘッドはフランジにより連結される。
【0019】
本発明は、高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置を使用する高効率ダイナミック式スラリー分離方法であって、本方法は以下の工程を含む。
【0020】
1) フィルタの予熱後に、フィルタによるろ過作用を開始し、材料を材料入口からフィルタ本体のスラリー空隙に導入してフィルタディスクに到達させ、フィルタディスクの回転速度を10〜100r/minに維持し、フィルタディスク上の材料から固形フィルタ残留物を分離させ、ろ液をフィルタディスクからフィルタディスクの流路を介して、ろ液出口管へ流入させて、フィルタの外へ排出させる工程。
【0021】
2) ろ過を所定時間継続して行い、フィルタディスク上に堆積するフィルタ残留物のろ過ケーキが一定の厚みになり、フィルタ管の内外圧力差が2.0MPaに達したら、フィルタディスクを駆動するモータの回転速度を100〜300r/minに増加させて、フィルタディスクからフィルタ残留物薄層のろ過ケーキを除去し、フィルタディスクからのフィルタ残留物のろ過ケーキ除去が完了し、且つ、フィルタ管の内外圧力差が50kPa未満になったら、フィルタディスクを駆動するモータの回転速度を10〜100r/minの範囲内に制御し、通常のろ過作用を維持し、これを繰り返し行う工程。
【0022】
3) ろ過操作が終了し、或いはフィルタ底部のフィルタ残留物を排出させる必要がある時に、ろ過を停止し、フィルタ残留物を除去して、次のろ過工程の準備をする工程。
【0023】
4) フィルタディスクを洗浄する必要があるときに、逆流システムを始動させ、材料がフィルタ本体のスラリー空隙に流入するのを停止させ、ろ液出口を逆流媒体入口として作用させ、逆流媒体はろ液上清またはディーゼル油であり、逆流媒体を使用して、フィルタディスクに逆流作用を実行し、フィルタディスクを10〜100r/minで低速回転させ、且つ、逆流完了後にろ過作用を継続する工程。
【0024】
前記フィルタ円筒体のスラリー空隙は、温度が200〜400℃、圧力が3.0〜5.0MPa(G)である。
【発明の効果】
【0025】
本発明はとりわけ、フィルタ残留物(使用済み貴金属触媒)の回収に適用される。本発明によれば、生成物の品質や生産量を改善するとともに、フィルタ残留物(使用済み貴金属触媒)の回収および生成物の品質保証のために実現可能な方法を探ることにより、使用済み貴金属触媒の工業利用を促進するとともに、高温での材料ろ過を実現する。従来の低温ろ過方法と比べて、後続の生成物の加工における高温供給手段を採用するならば、本発明方法はろ過効果を改善するだけでなく、装置冷却のためのエネルギ消費および後続の生成物の加工において加熱工程の改善に必要なエネルギ消費を減少させるので、全体的なエネルギ消費が大幅に減少する。また、高圧ろ過が実現されるので、後続の高圧加工工程において、昇圧に必要なエネルギ消費を効果的に減少させる。逆流システムの逆流媒体には、ろ液上清を利用するので、ろ過材料の二次汚染を回避するとともに、従来のフィルタにおける高圧蒸気逆流からの排水が生成されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明装置の構造図。
図2】本発明のフィルタディスクを示す構造図。
図3】フィルタディスク上におけるろ過材料の流れパターンを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面と併せて、本発明をより詳細に例証する実施形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明装置の構造図である。
【0029】
本発明は、高効率ダイナミック式スラリー分離ろ過装置であって、フィルタ円筒体1と、フィルタ円筒体1内に載置されるフィルタ管2aおよびフィルタ管2a上に載置されるフィルタ芯と、フィルタ円筒体1上に載置される材料入口3と、フィルタ円筒体1の底部に載置される固形残留物出口4と、フィルタ円筒体の中・下側部に載置されるろ液出口5を含む。フィルタ芯は、フィルタ管2aと連結される複数のフィルタディスク2bを含み、フィルタディスク2bはフィルタ円筒体1の長手軸と直交する。フィルタ管2aの上端は可変周波数モータ7の回転軸と連結される。フィルタ円筒体1の上部および可変周波数モータ7の伝動軸は、高圧硬質密封される。フィルタ管2aの下側部分は、連結管継手2cを介してろ液出口5の管と連結される。連結管継手2cおよびろ液出口管は、互いに直交して固定される。連結管継手2cの上側開口およびフィルタ管2aの下側部分の回転連結部は、高圧硬質密封される。連結管継手2cの下側部分は封止される。
【0030】
図2は、本発明のフィルタディスクの構造を示す。各フィルタディスク2bはフィルタ管2aと個々に連通する。フィルタディスク2bおよびフィルタ管2aは溝連結を形成する。フィルタディスク2bは、ろ液を受ける溝付き板2gに固定される。フィルタディスク2bおよび溝付き板2gは密封空隙2dを形成し、また、密封空隙2dの内側にある管開口2eはフィルタ管2aの内部空隙と連通する。溝付き板2gはクランプ2fを介してフィルタ管2aと連結される。フィルタ管2aは、各溝付き板2gから回収されたろ液を蓄積する。フィルタディスク2bは焼結多孔性金属材料であり、細孔径分布が15〜160μm、厚みが1〜3mm、作動温度範囲が-200℃〜800℃である。フィルタディスク2bの上面は、ナノスケールの表面剤で被覆される。フィルタディスク2bの焼結多孔性金属材料は様々な孔隙率、孔径、および細孔径分布を有するとともに、孔経路の配置は交錯している。本発明のフィルタディスク2bは広範囲の温度適用範囲と、高温耐性と、高耐熱衝撃性を有する。加えて、フィルタディスク2bは耐腐食性を有するので、複数の腐食性酸性媒体またはアルカリ性媒体に適用されるとともに、高い強度と良好な靭性を有するので、高圧環境にも適用可能である。また、材料は安定した孔形状を有することから、安定したフィルタ性能および良好な再生性能が保証される。フィルタの性能は再生後に90%も回復する。フィルタディスク2bの上面はナノスケールの表面剤で被覆され(被覆層の厚みは10〜1000μm)、フィルタを使用して材料をろ過するときに、フィルタディスクにフィルタ残留物が付着することがない。
【0031】
前記フィルタ円筒体1の底部分は円錐形構造をなす。フィルタ円筒体1の外壁には断熱ジャケット層1aが設けられる。フィルタ円筒体1の中・上側部分に蒸気入口6が載置されて、断熱ジャケット層1aと連通する。ジャケットの断熱媒体は水蒸気、高温水、または伝熱油であってよい。フィルタは断熱ジャケット構成を採用して、比較的高粘度の液体スラリーが相対的に高温でろ過されるとともに、凝縮された時にフィルタに付着しないようにすることにより、ろ過作用を円滑に進める。
【0032】
フィルタ円筒体1の底部分は円錐形構造を採用している。底部の固形残留物出口4の孔径は、フィルタ底部分にあるフィルタ残留物を洗浄するのに都合が良いように、相対的に大きく設計される。フィルタ円筒体1の外壁には断熱ジャケット層1aが設けられる。
【0033】
前記材料入口3の高さはろ液出口5の高さよりも上にあり、H1=200〜700mm高くされる。ろ液出口5および底部の間の距離はH2=400〜700mmである。材料入口3の高さは、一般的なフィルタの材料入口の高さよりも高くなるように構成されることにより、固形物含有量が相対的に高い粘性液は、フィルタ本体に滑らかに流入するとともに、フィルタ底部で閉塞が生じることがない。
【0034】
前記フィルタ円筒体1の真直円筒体および上部ヘッドは、フランジ1bにより連結される。
【0035】
前記円筒体の下側部分には残存材料出口10が設けられる。残存材料出口10は、固形残留物出口4の高さよりもH3=200〜300mm高くされる。フィルタの異常が発生した時に、或いは、ろ過が完了した時に、この出口から不完全にろ過された材料は排出されるので、製造の安全性が保証される。ろ液出口5と固形残留物出口4の間に凝縮液出口8は載置される。フィルタ円筒体1の上側部分に通気開口9は載置される。
【0036】
フィルタ円筒体のスラリー空隙は、温度が200〜400℃、圧力が3.0〜5.0MPa(G)である。
【0037】
本発明は、高効率ダイナミック式スラリー分離方法であって、フィルタ円筒体に断熱媒体(蒸気、高温水、または伝熱油)を導入し、フィルタを予熱するとともに、ろ過作用が終了するまで、断熱媒体の導入を維持する工程を含む。
【0038】
本方法は以下の工程を更に含む。
【0039】
1) フィルタ予熱後に、フィルタによるろ過作用を開始し、材料を材料入口からフィルタ円筒体1のスラリー空隙に流入させるとともに、フィルタディスクまで到達させ、フィルタディスクの回転速度を10〜100r/minの範囲に制御し、図3に示すように、材料をフィルタディスク上で回転流動させ、フィルタディスクから固形残留物を分離させ、且つ、ろ液をフィルタディスクから、フィルタディスクの流路を介してろ液出口管へ流入させて、フィルタの外へ排出させる工程。
【0040】
2) ろ過を所定期間継続し、フィルタディスク上にフィルタ残留物のろ過ケーキを厚さが0.5〜5mmになるまで堆積させて、フィルタ管の内外圧力差が2.0MPaに達したら、フィルタディスクの回転を駆動するモータの回転速度を100〜300r/minまで増大させて、フィルタディスクからフィルタ残留物薄層のろ過ケーキを取り除き、フィルタディスクからのフィルタ残留物のろ過ケーキの除去が完了(フィルタ管の内外圧力差が50KPa未満)したら、フィルタディスクの回転を駆動するモータの回転速度を10〜100r/minとして、正常なろ過作用を維持し、且つ、これを繰り返し行う工程。
【0041】
3) ろ過作用が完了し、或いはフィルタ底部にあるフィルタ残留物を排出する必要があるときに、ろ過を停止し、フィルタ残留物を除去して、次のろ過工程の準備を行う工程。
【0042】
4) フィルタディスクの洗浄が必要になった時には、逆流システムを始動させ、材料のフィルタ本体のスラリー空隙への流入を停止させ、ろ液出口を逆流媒体入口として作用させ、逆流媒体を使用してフィルタディスクの逆流作用を実行し、フィルタディスクを10〜100r/minの低速で回転させ、且つ、逆流作用後にろ過作用を継続する工程。
【0043】
逆流媒体をろ液上清にすると、材料の二次汚染がなく、また排水を生成することがない。
【0044】
上記工程は、上述のとおりに繰り返され、ろ過が完了するまで、或いは、フィルタ底部にあるフィルタ残留物の排出が要求されるまで停止させられない。フィルタ残留物は、次のろ過準備のために適宜除去される。
【0045】
本発明実施形態では、可変周波数モータを用いて直接ダイナミック式ろ過を実現する。直接ダイナミック式ろ過方法(薄層ろ過ケーキろ過または限定ろ過ケーキろ過とも呼ばれる)の原理は、ダイナミック式ろ過では、(図1および図3に示すように)材料をろ過媒体表面と並行に流れさせることにより、固形粒子がろ過媒体表面上に堆積しないようにして、相対的に高いろ過速度を維持する点において、従来のろ過ケーキろ過と異なる。ダイナミック式ろ過は、ろ過ケーキがある状態でのろ過と、ろ過ケーキがない状態でのろ過を交互に行うろ過方法である。ダイナミック式ろ過の最も基本的な目的は、ろ過工程の間にろ過ケーキの形成が妨げられ、或いはろ過ケーキの薄層のみが形成されることにより、ろ過ケーキの厚化により引き起こされるろ過抵抗の増大やろ過速度の低下を回避することである。直接ダイナミック式ろ過方法によれば、特殊なフィルタを長期間使用して、多量の粒子の除去や浄化に利用にできる。
【0046】
本発明のフィルタ円筒体1は完全密封構造を採用している。フィルタディスク2bおよびフィルタ管2aが回転する間に、ろ液出口5の管は固定されており動かない。フィルタ管およびろ液出口管の連結部分には硬質密封を採用しており、高圧密封リング(O型リング)を使用して密封されるので、回転密封問題を効果的に解消するとともに、漏出ゼロを達成する。フィルタ円筒体1の真直円筒体および上部ヘッドは、分解が容易なフランジ1bにより連結されるので、ろ過構成部品の修理および交換に都合がよい。
【0047】
本発明のスラリー空隙は、温度が200〜400℃、圧力が3.0〜5.0MPa(G)である。ろ過精度は1〜25μmに制御される。本発明装置は、間欠式ろ過作用に利用される。ろ過が必要な材料は、特殊なフィルタによってろ過され、フィルタ残留物はフィルタの円錐形底部の出口に堆積させられる。フィルタ残留物が一定の厚みに達したら、ろ過作用は停止させられる。次に、フィルタの円錐形底部の出口に載置される弁が開放されて、フィルタ残留物(固形貴金属触媒)を排出することにより再利用する可能性がもたらされる。ろ過後の生成ろ液は、一部の小粒子の固形不純物(粒形が5μm未満)を含み、即ち、使用済み貴金属触媒は、必要に応じて、次の微細ろ過処理工程を実行するために、ろ過精度がより高い別のろ過処理に導入されてよい。
【符号の説明】
【0048】
1 フィルタ円筒体
1a 断熱ジャケット層
1b フランジ
2a フィルタ管
2b フィルタディスク
2c 連結管継手
2d 密封空隙
2e 管開口
2g 溝付き板
3 材料入口
4 固形残留物出口
5 ろ液出口
6 蒸気入口
7 可変周波数モータ
8 凝縮液出口
9 通気開口
10 残存材料出口
図1
図2
図3