(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039816
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】複合繊維の製造方法及び製造装置、それにより製造される複合繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/04 20060101AFI20161128BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20161128BHJP
D01D 5/30 20060101ALI20161128BHJP
D01D 4/06 20060101ALI20161128BHJP
B29C 47/04 20060101ALI20161128BHJP
B29C 47/12 20060101ALI20161128BHJP
C08J 5/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
D01F8/04 Z
D01D5/08 Z
D01D5/30 Z
D01D4/06
B29C47/04
B29C47/12
!C08J5/00CER
!C08J5/00CEZ
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-534379(P2015-534379)
(86)(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公表番号】特表2015-535895(P2015-535895A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】KR2013008225
(87)【国際公開番号】WO2014065507
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0117320
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513269240
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ハム,ウァン−ギュウ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ソンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ビョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,インウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドグン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ギソブ
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−104813(JP,A)
【文献】
特開昭55−112307(JP,A)
【文献】
特公昭48−042258(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/04
B29C 47/04
B29C 47/12
D01D 4/06
D01D 5/08
D01D 5/30
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性が異なる異種の第1の樹脂と第2の樹脂を各々の溶融押出機を介して紡糸ノズル部に供給するステップと、
前記各々の溶融押出機から供給された各溶融樹脂を前記紡糸ノズル部から長手方向に、前記第1の樹脂のみの連続区間(b)と、前記第2の樹脂のみの連続区間(b)とが、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との間に傾斜角(θ)を有する境界が形成された交差区間(a)を挟んで連続的に形成されるように、交互に吐出するステップと、
を備え、
前記吐出ステップが、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との境界では、長手方向に前記傾斜角(θ)が生じるように両者の吐出割合を連続的に変化させることを含むことを特徴とする複合繊維の製造方法。
【請求項2】
前記特性が異なる異種の第1の樹脂および第2の樹脂は、異なる機能性有機、無機、金属物質のうちから選ばれるいずれか一種以上を含む同種成分の樹脂又は異種成分の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の前記複合繊維の製造方法。
【請求項3】
前記機能性有機、無機、金属物質は、色相顔料、UV感応蛍光顔料、IR感応吸収顔料、X線吸収金属物質、抗菌物質、難燃物質及び消臭物質のうちから選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項2に記載の前記複合繊維の製造方法。
【請求項4】
特性が異なる異種の第1の樹脂と第2の樹脂を供給するための複数のホッパーと、
前記各ホッパーから供給された樹脂を溶融させて押し出すための複数の溶融押出機と、
前記複数の溶融押出機から供給された溶融樹脂を吐き出して繊維を形成する紡糸ノズル部と、
を備え、
前記紡糸ノズル部は、
前記各溶融押出機から供給される溶融樹脂が各々流入する複数の流入通路と溶融樹脂を吐き出すためのノズル通路を有する紡糸ノズル胴体と、
前記各々の流入通路をノズル通路に連結するための複数の連結通路を有し、前記各々の連結通路がノズル通路に交互に連続して連結されるように動作する操作体と、
を備え、
前記操作体が、正、逆方向に反復的に回転可能であり、それにより前記特性が異なる異種の第1の樹脂と第2の樹脂を繊維の長手方向に、前記第1の樹脂のみの連続区間(b)と、前記第2の樹脂のみの連続区間(b)とが、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との間に傾斜角(θ)を有する境界が形成された交差区間(a)を挟んで連続的に形成されるように、吐出可能に構成されることを特徴とする複合繊維の製造装置。
【請求項5】
前記操作体は、前記紡糸ノズル胴体内において回転軸を中心として正、逆方向に回転可能なように配設され、前記回転軸を中心とする外縁円周面を形成し、前記各連結通路の流入口と排出口の外縁円周面に配設されてなり、
前記各流入通路の排出口とノズル通路の流入口は、操作体の外縁円周面に対向して配設され、
前記操作体に形成される各連結通路の流入口と排出口は、操作体の正逆回転につれて各流入通路の排出口とノズル通路の流入口を交互に連続して連結させるように配設されることを特徴とする請求項4に記載の前記複合繊維の製造装置。
【請求項6】
表面特性が異なる第1の樹脂と第2の樹脂とが長手方向に交互に連続的に形成されるとともに、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との間に傾斜した境界を有する複合繊維を用いた偽造防止用保安糸。
【請求項7】
前記特性が異なる前記第1の樹脂と第2の樹脂が、色相顔料、UV感応蛍光顔料、IR感応吸収顔料、X線吸収金属物質、抗菌物質、難燃物質及び消臭物質のうちから選ばれる一つ以上の物質を含む同一成分の樹脂または異なる成分の樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の偽造防止用保安糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維の製造方法及び製造装置、それにより製造される複合繊維に係り、さらに詳しくは、繊維の長手方向に異なる特性を有する樹脂が連続して交差されて存在するようにする複合繊維の製造方法及び製造装置、それにより製造される複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の複合繊維の製造装置は、
図1に示すように、少なくとも2種の固体相の樹脂原料を各々供給するための複数のホッパー1と、前記各ホッパー1から供給された固体相樹脂原料を溶融させて押し出すための溶融押出機2と、前記各溶融押出機2から供給された溶融樹脂を単位時間当たりに所定量に計量して紡糸ノズル部3に送る計量ポンプ7と、各計量ポンプ7から供給された溶融樹脂を流路管と分配板を介して流入させて繊維Wを紡糸する紡糸ノズル部3と、前記紡糸ノズル部3から紡糸された繊維Wを冷却する冷却部4と、前記冷却部4において冷却された繊維Wを延伸及び熱処理するローラー5と、前記ローラー5により延伸及び熱処理された繊維Wを巻き取る巻取機6と、を備える。
【0003】
このような構成の複合繊維の製造装置により製造される複合繊維の種類は、繊維Wの断面形状に応じて、例えば、芯鞘型(sheath−core)、分割型(side−by−side)、海島型(sea−islands)などに分けられる。このような種々の複合繊維は、紡糸ノズル部3に配備される分配板と流路管の構造を異ならせて設定することにより製造することができる。
【0004】
図2は、例えば、海島型複合繊維を製造するための紡糸ノズル部を示す要部断面図であり、同図に示すように、海島型複合繊維製造用紡糸ノズル部3は、複数の層からなる分配板11、12と、前記分配板11、12のうち最下側の分配板12の下部に配設されるノズル板13と、を備える。各分配板11、12には上下に延びる複数の流路管14、15が配備され、ノズル板13には前記流路管14、15と連結される紡糸ノズル16が配備され、且つ、各々の分配板11、12とノズル板13との間には空間17、18が設けられている。
【0005】
このような構成によれば、溶融押出機2から紡糸ノズル部3内に各々供給された2種の樹脂、例えば、A樹脂(島成分、islands)とB樹脂(海成分、sea)は、各分配板11、12の流路管14、15及び空間17、18に流れた後、ノズル板13の空間18において合流され、次いで、ノズル板13の紡糸ノズル16において紡糸される。
【0006】
このため、紡糸ノズル16において紡糸される繊維Wは、
図3に示すように、複数のA樹脂(島成分)を1つのB樹脂(海成分)が取り囲む断面形状となる。
【0007】
このような断面形状は、分配板11、12及び流路管14、15の構成により形成されるものであるため、分配板11、12及び流路管14、15の配置数と構造を多様化させることにより種々の複合繊維を製造することができ、且つ、固有の断面形状の複合繊維を製造して透湿防水及び吸汗速乾、極細糸などの機能性衣類の製造に汎用されており、さらには、紙幣や証書などの偽造を防ぐための偽造防止用保安糸としても用いられている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来の複合繊維の製造方法及び製造装置は、固有の繊維の断面形状を繊維の長手方向に変化なしに一定に維持するものであるため、繊維の長手方向に複合成分の変化を与えられないため繊維の長手方向にさらなる追加的な様々な複合成分の効果(染色差、物性(強度、伸び度、弾性率、びす(boil-off shrinkage)など)、融点差など)を発現することができず、特に、最近、有価証券などの偽造防止用に用いられる複合紡糸を用いた保安糸の場合、繊維の長手方向に他の成分の偽造防止成分が並んで存在することにより、外部の刺激による保安要素の発現が干渉を引き起こす問題(色相の変化及び蛍光性能の低下など)に対する改善が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためのものであり、その目的は、異なる特性を有する樹脂、例えば、異なる機能性有機、無機、金属物質のうちから選ばれるいずれか一種以上の物質を含有する同種成分の樹脂又は異種成分の樹脂を溶融状態で紡糸ノズル部の操作により途切れさせずに連続して交差させて吐き出すことにより、繊維の長手方向に異なる特性を有する繊維が連続して交差されるように構成することができ、これにより、繊維の長手方向に様々な表面効果及びパターンを有する複合繊維を製造することができ、紡糸ノズル部の操作により長手方向の交差長さを任意に操作して固有の長手方向の表面効果及びパターンを有する複合繊維を製造して高機能性繊維及び保安糸として用いることのできる複合繊維の製造方法及び製造装置、それにより製造される複合繊維を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、特性が異なる異種の樹脂を各々の押出機を介して紡糸ノズル部に供給するステップと、前記各々の溶融押出機から供給された各溶融樹脂を前記紡糸ノズル部から連続して交差させて吐き出すことにより、特性が異なる異種の樹脂が繊維の長手方向に連続して交差して形成されるようにするステップと、を含む複合繊維の製造方法に特徴がある。
【0011】
このとき、前記特性が異なる異種の樹脂は、異なる機能性有機、無機、金属物質のうちから選ばれるいずれか一種以上を含む同種成分の樹脂又は異種成分の樹脂であり、前記機能性有機、無機、金属物質は、色相顔料、UV感応蛍光顔料、IR感応吸収顔料、X線吸収金属物質、抗菌物質、難燃物質及び消臭物質のうちから選ばれるいずれか一種以上である複合繊維の製造方法に特徴がある。
【0012】
また、本発明は、特性が異なる異種の樹脂を供給するための複数のホッパーと、前記各ホッパーから供給された樹脂を溶融させて押し出すための複数の溶融押出機と、前記複数の溶融押出機から供給された溶融樹脂を吐き出して繊維を形成する紡糸ノズル部と、を備え、前記紡糸ノズル部は、前記各溶融押出機から供給される溶融樹脂が各々流入する複数の流入通路と溶融樹脂を吐き出すためのノズル通路を有する紡糸ノズル胴体と、前記各々の流入通路をノズル通路に連結するための複数の連結通路を有し、前記各々の連結通路がノズル通路に交互に連続して連結されるように動作する操作体と、を備える複合繊維の製造装置に特徴がある。
【0013】
また、本発明の前記操作体は、前記紡糸ノズル胴体内において回転軸を中心として正、逆方向に回転可能なように配設され、前記回転軸を中心とする外縁円周面を形成し、前記各連結通路の流入口と排出口の外縁円周面に配設されてなり、前記各流入通路の排出口とノズル通路の流入口は、操作体の外縁円周面に対向して配設され、前記操作体に形成される各連結通路の流入口と排出口は、操作体の正、逆回転につれて各流入通路の排出口とノズル通路の流入口を交互に連続して連結させるように配設される複合繊維の製造装置に特徴がある。
【0014】
さらに、本発明は、上記の製造方法により製造される複合繊維に特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
上記の特徴的な構成を有する本発明の複合繊維の製造方法及び複合繊維の製造装置によれば、異なる機能性有機、無機、金属物質のうちから選ばれるいずれか一種以上の物質を含有する同種成分の樹脂又は異種成分の樹脂のように特性が異なる異種の樹脂を紡糸ノズル部の操作により途切れさせずに連続して交差させて吐き出すことにより、繊維の長手方向に異なる特性を有する繊維が連続して交差されるように構成することができる。
【0016】
また、紡糸ノズル部の操作速度と操作時間を様々に設定することにより、繊維の長手方向にさらに様々な表面効果及びパターンを有する複合繊維を製作することができ、繊維の長手方向に表面効果及びパターンを有するものであるため、繊維の断面に様々な形状を構成することに比べて、様々な表面効果及びパターンを構成可能な制限幅を大幅に広げるという効果がある。
【0017】
さらに、本発明は、繊維の長手方向にさらに様々な表面効果及びパターンを有する複合繊維を製造することができるので、紡糸ノズル部の操作速度と操作時間を操作して繊維の長手方向に固有の表面効果及びパターンを有する複合繊維を製造することにより、繊維の機能性をさらに高めるとともに、紙幣や証書などの偽造を一層行い難くして保安糸として非常に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、従来の技術による複合繊維の製造装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、従来の複合繊維の製造装置における紡糸ノズル部を示す要部断面図である。
【
図3】
図3は、従来の複合繊維の製造装置により製造される複合繊維の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置を示す概略図である。
【
図5】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図6】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図7】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図8】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図9】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図10】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図11】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図12】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図13】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図14】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置における紡糸ノズル部の作動状態図である。
【
図15】本発明による複合繊維の製造方法及び製造装置により製造される複合繊維を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明による複合繊維の製造方法と製造装置の好適な実施形態を説明する。
【0020】
図4は、本発明の複合繊維の製造方法及び製造装置を説明するための概略図であり、従来と同じ構成に対しては同じ符号を付し、その具体的な構成及び作用についての説明は省略する。
【0021】
同図に示すように、本発明の複合繊維の製造装置は、特性が異なる異種の樹脂を供給するための複数のホッパー1と、前記各ホッパー1から供給された樹脂を溶融させて押し出すための複数の溶融押出機2と、前記複数の溶融押出機2から供給された溶融樹脂を単位時間当たりに所定量に計量して紡糸ノズル部3に送る計量ポンプ7と、各計量ポンプ7から供給された溶融樹脂を吐き出して繊維Wを形成する紡糸ノズル部100と、を備える。
【0022】
また、本発明の複合繊維の製造方法は、特性が異なる異種の樹脂を各々の溶融押出機2を介して紡糸ノズル部100に供給するステップと、前記各々の溶融押出機2から供給された各溶融樹脂を前記紡糸ノズル部100から連続して交差させて吐き出すことにより、特性が異なる異種の樹脂が繊維の長手方向に連続して交差して形成されるようにするステップと、を含む。
【0023】
このとき、前記特性が異なる異種の樹脂としては、例えば、異なる機能性有機、無機、金属物質のうちから選ばれるいずれか一種以上の物質を含む同種成分の樹脂又は異種成分の樹脂が使用可能であり、前記機能性有機、無機、金属物質は、色相顔料、UV感応蛍光顔料、IR感応吸収顔料、X線吸収金属物質、抗菌物質、難燃物質、消臭物質のうちから選ばれるいずれか一種以上の物質であってもよい。
【0024】
一方、前記紡糸ノズル部100は、
図5に示すように、前記各溶融押出機2から供給される溶融樹脂が各々流入する複数の流入通路111、112と溶融樹脂を吐き出すためのノズル通路113を有する紡糸ノズル胴体110と、前記各々の流入通路111、112をノズル通路113に連結するための複数の連結通路121、122を有し、前記各々の連結通路121、122がノズル通路113に交互に連続して連結されるように動作する操作体120と、を備える。
【0025】
前記操作体120は、前記紡糸ノズル胴体110の内部に配設されるものであり、このために、紡糸ノズル胴体110の内部には、操作体120に対応する形状の空間部114を形成する。
【0026】
また、操作体120は、前記紡糸ノズル胴体110の空間部114内において回転軸130を中心として正、逆方向に回転可能なように配設される。このために、操作体120は、前記回転軸130を中心とする外縁円周面123を形成し、紡糸ノズル胴体110の空間部114は円形に形成する。
【0027】
操作体120の各連結通路121、122は、その流入口121a、122aと排出口121b、122bが外縁円周面123に配設されるように形成し、前記紡糸ノズル胴体110の各流入通路111、112は、その排出口111a、112aが空間部114を介して操作体120の外縁円周面123に対向して配設されるように形成し、紡糸ノズル胴体110のノズル通路113は、その流入口113aが空間部114を介して操作体120の外縁円周面123に対向して配設されるように形成する。
【0028】
このような構成の作用について説明すれば、下記の通りである。まず、
図4に示すように、特性が異なる異種の樹脂、例えば、A樹脂とB樹脂を、各ホッパー1を介して各々の溶融押出機2に供給すると、A樹脂とB樹脂は各々の溶融押出機2において溶融されて紡糸ノズル部100に供給される。
【0029】
溶融されたA樹脂とB樹脂が紡糸ノズル部100の紡糸ノズル胴体110に形成される各々の流入通路111、112に流入すると、
図5及び
図6に示すように、操作体120のA樹脂側の連結通路121の流入口121aと排出口121bがA樹脂側の流入通路111の排出口111aとノズル通路113の流入口113aに一致して連結される場合、ノズル通路113を介してA樹脂のみが吐き出される。
【0030】
次いで、操作体120が矢印方向(正方向)に所定の角度だけ回転して、
図7及び
図8に示すように、操作体120の両側の連結通路121、122の流入口121a、122aと排出口121b、122bがA樹脂側及びB樹脂側の流入通路111、112の排出口111a、112aとノズル通路113の流入口113aに各々1/2ずつ連結されると、ノズル通路113を介してA樹脂とB樹脂が1/2ずつ吐き出される。
【0031】
次いで、操作体120が矢印方向(正方向)に所定の角度だけさらに回転して、
図9及び
図10に示すように、操作体120のB樹脂側の連結通路122の流入口121aと排出口121bがB樹脂側の流入通路112の排出口112aとノズル通路113の流入口113aに一致して連結されると、ノズル通路113を介してB樹脂のみが吐き出される。
【0032】
次いで、操作体120が矢印方向(逆方向)に所定の角度だけ回転して、
図11及び
図12に示すように、操作体120の両側の連結通路121、122の流入口121a、122aと排出口121b、122bがA樹脂側及びB樹脂側の流入通路111、112の排出口111a、112aとノズル通路113の流入口113aに各々1/2ずつ連結されると、ノズル通路113を介してA樹脂とB樹脂が1/2ずつ吐き出される。
【0033】
次いで、操作体120が矢印方向(逆方向)に所定の角度だけさらに回転して、
図13及び
図14に示すように、操作体120のA樹脂側の連結通路121の流入口121aと排出口121bがA樹脂側の流入通路111の排出口111aとノズル通路113の流入口113aに一致して連結されると、ノズル通路113を介してA樹脂のみが吐き出される。
【0034】
このように、操作体120を正、逆方向に繰り返し回転させることにより、
図15に示すように、特性が異なる異種のA樹脂とB樹脂が繊維Wの長手方向に連続して交差して形成された複合繊維を製造することができる。
【0035】
このようにして製造される複合繊維は、繊維Wの長手方向にA樹脂とB樹脂の交差区間aとA樹脂又はB樹脂の連続区間bが繰り返し形成されるものであり、前記交差区間aは操作体120の回転速度(操作速度)を調節することによりその傾斜角θが決定され、前記連続区間bは回転方向を切り替えるときに遅延時間を調節することによりその長さが決定される。
【0036】
このため、操作体120の回転速度と遅延時間、連結通路121、122の長さと直径を調節することにより、繊維Wの長手方向に様々な表面効果及びパターンを繰り返し形成することができ、且つ、操作体120の回転速度と遅延時間を規則的に又は任意に変更して調節することにより、さらに様々な表面効果及びパターンを形成することができる。
【0037】
また、このようにして製造される本発明の複合繊維は、繊維Wの長手方向に、同じ素材であっても分子量が異なる樹脂(PET IV 0.65:(VS) IV 0.75、PP MI 20:MI 40など)や、類似系列の物性が異なる樹脂(PET:PBT、PET:PTT、ナイロン6:ナイロン66など)が連続して存在する場合、延伸や紡糸条件により分子の配向度の違いが連続して発生して様々な表面効果及びパターンの複合繊維を製造することができ、染色する場合には配向度又は結晶化度の違いにより染色性に違いが出ることにより、ツートーンの染色効果を得ることができる。
【0038】
さらに、繊維Wの長手方向に、同じ素材であっても染色性などの機能が改質された樹脂が連続して存在する場合、後加工染色に際して染色性に違いが出ることにより、ツートーンの染色効果を得ることができる。
【0039】
さらにまた、繊維Wの長手方向に、同じ素材であっても顔料入り樹脂が連続して存在する場合、他の色相が長手方向に存在することにより、新規なツートンカラー効果を得ることができる。
【0040】
さらにまた、繊維Wの長手方向に、同じ素材であっても融点差のある樹脂が連続して存在する場合、製織後の熱処理に際して融点差により溶着されて織物がフィルム効果を得ることができる。
【0041】
これらに加えて、繊維Wの長手方向に、同じ素材であっても単一成分及び複合成分(芯鞘型、分割型、海島型など)の樹脂が連続して存在する場合、上述した染色性及び顔料の使用、融点差などによる効果の増大とともに、減量加工による部分減量及び除去により繊維の機能性の向上を期待することができる。
【0042】
一方、本発明は、異なる機能性顔料や物質(通常の色相顔料、UV感応蛍光顔料、IR感応吸収顔料、X線吸収金属物質など)などを含有する同種成分の樹脂又は異種成分の樹脂を用いる場合、繊維Wの長手方向に異なる光特性を有する保安糸機能の複合繊維を製造することができる。
【0043】
このため、既存の紡糸後に2次的に特殊の染色や仮撚加工(twist、拠糸)を行う不便さなしに一括して境界面が揃っている繊維の長手方向の異種光特性を有する保安糸が製造可能であるため工程が簡単であり、品質に優れている他、量産可能であるため製造コストの節減効果がある。
【0044】
また、紡糸ノズル部100の操作により繊維の長手方向の交差長さを手軽に且つ任意に調節することができて繊維Wの長手方向に固有のパターンを有する保安糸の機能を行うことができる。
【0045】
さらに、マスターバッチ法(M/B)を用いて機能性顔料及び物質を繊維の内部に投入することにより、洗濯堅ろう度などの様々な環境における耐久性に優れており、さらに、機能性物質を樹脂内に投入することなく、異なる染色法を用いる異種の高分子樹脂を用いるか、あるいは、同じ樹脂であっても染色速度が異なる改質された同一の樹脂を長手方向に交差して複合繊維を製造した後に染色を行うと、各高分子の染色法及び染色差により繊維Wの長手方向に色相が異なるか、あるいは、色差のある複合繊維も製造可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、特性が異なる異種の樹脂を各々の溶融押出機を介して紡糸ノズル部に供給し、各々の溶融押出機から供給された各溶融樹脂を前記紡糸ノズル部から連続して交差させて吐き出すことにより、特性が異なる異種の樹脂が繊維の長手方向に連続して交差して形成された複合繊維を製造する。また、前記紡糸ノズル部は、各溶融押出機から供給される溶融樹脂が各々流入する複数の流入通路と溶融樹脂を吐き出すためのノズル通路を有する紡糸ノズル胴体と、各々の流入通路をノズル通路に連結するための複数の連結通路を有し、各々の連結通路がノズル通路に交互に連続して連結されるように動作する操作体と、を備える。
【0047】
上述した実施形態は本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明の権利範囲は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想と特許請求の範囲内においてこの分野の当業者により種々の変更、変形又は置換を行うことが可能であり、このような実施形態は本発明の範囲に属するものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
1…ホッパー
2…溶融押出機
100…紡糸ノズル部
110…紡糸ノズル胴体
111,112…流入通路
113…ノズル通路
120…操作体
121,122…連結通路
123…外縁面
130…回転軸
W…繊維