(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039823
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ロラゼパムの徐放性製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5513 20060101AFI20161128BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20161128BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20161128BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61P25/22
A61K9/14
A61K47/38
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-551869(P2015-551869)
(86)(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公表番号】特表2016-504390(P2016-504390A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014010854
(87)【国際公開番号】WO2014110245
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】61/750,797
(32)【優先日】2013年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/762,833
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515185751
【氏名又は名称】エッジモント ファーマシューティカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】サルテル ダグラス エイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァション マイケル
【審査官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/137067(WO,A1)
【文献】
特表昭61−501511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 25/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ロラゼパム徐放性ビーズと(ii)ロラゼパム遅延徐放性ビーズとを含む医薬組成物であって、前記組成物に含有されるロラゼパムの全量が0.5〜10mgであり、前記組成物が、1日1回投与された場合、(1)b.i.d.で与えられかつ同じ全1日量のロラゼパムを有する即放性錠剤によって実現されたCmaxの±35%以内であるロラゼパム血漿定常状態Cmax、および/または(2)b.i.d.で与えられかつ同じ全1日量のロラゼパムを有する即放性錠剤によって実現されたCminの±35%以内であるロラゼパム血漿定常状態Cminを提供する、医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が、患者に1日1回投与される場合、少なくとも24時間にわたり治療効果を維持する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物中のロラゼパムの100%が、前記徐放性ビーズと前記遅延徐放性ビーズとの組合せに含有される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記徐放性ビーズが、ロラゼパムの20〜70%を2時間で放出するような2媒体in vitro溶解試験での溶解プロファイルを有し;前記2媒体in vitro溶解試験は、0.1N HClを含む媒体中で2時間にわたり100rpmにて37℃±0.5℃で実施され、次いでリン酸緩衝液を含みpHが7.4である媒体中で実施される、請求項1から3までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記溶解プロファイルが、1〜5時間以内でロラゼパムの50%の放出をさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記溶解プロファイルが、ロラゼパムの90%が10時間よりも前には放出されないことをさらに含む、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ロラゼパム遅延徐放性ビーズが、ロラゼパムの90%の放出が10時間より後に生ずるような2媒体in vitro溶解試験での溶解プロファイルを有し;前記2媒体in vitro溶解試験は、0.1N HClを含む媒体中で2時間にわたり100rpmにて37℃±0.5℃で実施され、次いでリン酸緩衝液を含みpHが7.4である媒体中で実施される、請求項1から6までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記遅延徐放性ビーズが、pH依存性の遅延コーティングを含有し、前記遅延徐放性ビーズは、ロラゼパムの20〜80%が4時間で放出されるような2媒体in vitro溶解試験での溶解プロファイルを有し;前記2媒体in vitro溶解試験は、0.1N HClを含む媒体中で2時間にわたり100rpmにて37℃±0.5℃で実施され、次いでリン酸緩衝液を含みpHが7.4である媒体中で実施される、請求項1から7までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記徐放性ビーズが、ポリマー母材中に分散されたロラゼパムを含み、前記遅延徐放性ビーズが、ポリマー母材中にロラゼパムが分散されている核と、前記核を取り囲む腸溶コーティングとを含む、請求項1から8までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
徐放性ビーズ中および遅延徐放性ビーズ中の前記ポリマー母材がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記腸溶コーティングが、pH7以上で薬物を放出するように設計されている、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、1日1回投薬された場合、ロラゼパム各1mgごとに12ng/ml以下のロラゼパム血漿定常状態Cmax、および/またはロラゼパム各1mgごとに少なくとも5ng/mlのロラゼパム血漿定常状態Cminを提供する、請求項1から11までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、1日1回投与された場合、(1)b.i.d.で与えられかつ同じ全1日量のロラゼパムを有する即放性錠剤によって実現されたCmaxの±20%以内であるロラゼパム血漿定常状態Cmax、および/または(2)b.i.d.で与えられかつ同じ全1日量のロラゼパムを有する即放性錠剤によって実現されたCminの±20%以内であるロラゼパム血漿定常状態Cminを提供する、請求項1から12までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、単回用量薬物動態試験で決定される、少なくとも24時間にわたり、ロラゼパムの連続放出を示す、請求項1から13までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、4時間以上でTmaxを含みかつ20時間を超えてロラゼパムの連続放出を含む単回用量薬物動態プロファイルを有し;前記組成物は、患者に1日1回投与された場合、少なくとも24時間にわたり治療効果を維持する、請求項1から14までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記薬物動態プロファイルが、少なくとも24時間にわたりロラゼパムの連続放出を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記薬物動態プロファイルが、少なくとも28時間にわたりロラゼパムの連続放出を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記薬物動態プロファイルが、0〜120時間でのAUCの40〜60%を0〜24時間でもたらされる、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
ロラゼパムで処置可能な患者の状態を処置するための、請求項1から18までのいずれかに記載の医薬組成物であって、定常状態の条件下で24時間の治療効果がもたらされるように十分な用量で1日1回投与される医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年1月9日に出願された先行する米国仮特許出願第61/750,797号および2013年2月8日に出願された先行する米国仮特許出願第61/762,833号に基づいて、米国特許法第119条(e)(35U.S.C.§119(e))の下、優先権の利益を主張するものであり;各仮出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、ロラゼパムの徐放性製剤と、1日1回用量のロラゼパムで患者を処置する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ロラゼパムは、活性医薬成分±7−クロロ−5−(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−オンの一般名であり、この成分は下記の構造:
【化1】
を有する。その他のベンゾジアゼピンと同様に、ロラゼパムは、CNS活性を有し:全般性不安障害、または大うつ病に関連した不安症など、不安関連障害の有用な処置薬であることが証明されている。ロラゼパムは水にほとんど溶解しない。この化合物は、米国特許第3,296,249号に開示された。
【0003】
ロラゼパムは、経口即放性錠剤の形態で、ATIVAN(登録商標)という商標名で市販されている(当初はWyethにより、現在はValeant Intlにより)。錠剤は、ロラゼパムを0.5mg、1mg、または2mg含有し、通常は1日に2または3回投与されて(それぞれ、b.i.d(1日2回)およびt.i.d(1日3回))、全用量2〜6mg/日を実現するが、1〜10mg/日の用量を使用することもできる。ATIVAN(登録商標)に関する米国添付文書によれば:「不安症の場合、ほとんどの患者には、初期用量2〜3mg/日をb.i.d.またはt.i.d.で与えることが必要である。」ピーク血漿中濃度(Cmax)は、典型的には、経口投与後約2時間(Tmax)で生ずる。ロラゼパムは、添付文書によれば、ヒト血漿中の半減期が約12時間である。
【0004】
ロラゼパムの即放性錠剤は、1日多数回の用量のものが数十年にわたって利用されてきたが、これまで1日1回の剤形が商業的に導入されてこなかった。そのような剤形はしばしば望ましい。便宜上の利益に加え、24時間の治療効果を発揮できる徐放性タイプは、即放性錠剤よりも低いピーク血漿中濃度レベルを有するが副作用を低減することができる。この理由のため、Abramsらは、ロラゼパム2mgを含有する徐放性錠剤について調査し、ロラゼパム即放性錠剤2mg用量(2×1mg錠剤)と比較した。S. M. L. Abrams et al., "Pharmacodynamic and Pharmacokinetic Comparison of Two Formulations of Lorazepam and Placebo," Human Psychopharmacology, Vol. 3, 133-138 (1988)。徐放性錠剤は、予想通りに、即放性錠剤(それぞれ、2時間(Tmax)および22ng/ml(Cmax))よりも長いTmax(中央値8時間)およびより低いCmax(12ng/ml)を有する。しかし相対的な生物学的利用能は徐放性錠剤で低減し、30時間後のAUCは、即放性錠剤で実現されたAUCの約85%でしかなかった。Abramsらは、「両方の製剤の[血清]中濃度が10〜30時間の間で類似していた」ことも記述した。このように、ロラゼパム血清中濃度の上昇の若干の遅延およびより低いCmaxをもたらすにも関わらず、徐放性錠剤は、明らかに、即放性錠剤で実現される場合を超えてロラゼパムの治療持続時間を延ばすようには働かなかった。
【0005】
血漿中のロラゼパムの長い半減期は、1日1回の製剤を開発するのに、このロラゼパムを古典的に無視される候補にする。また、1日2回の用量で24時間の治療を行う薬物生成物は、1日3回以上の用量とは対照的に、患者のコンプライアンス上の利益の大部分が実現されたと一般にみなされる。1日1回の用量の製剤が望まれた場合には、血漿中のロラゼパムの長い半減期により、即放性ロラゼパム錠剤を使用して完全な1日用量を提供することができる。しかし完全な1日用量を単一の即放性剤形で投与すると、従来のb.i.d.投与(即ち、1日2回の投薬)で得られる場合を超えてCmaxおよびピーク−トラフ変動(CmaxとCminの間の濃度差)が増大する可能性があり、したがって薬物関連の有害事象、即ち副作用のリスクも同様に増大する可能性がある。徐放性製剤の使用は、血漿中薬物濃度およびCmaxの値の増加率を低減させることができるが、特に投薬サイクルの終わり付近での治療量以下の血漿中濃度レベルおよび/または現行のb.i.d.即放性錠剤投与計画よりも低い全薬物曝露というリスクを冒す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効果的で十分耐容性のある1日1回の投薬計画を行う可能性のある、徐放性プロファイルを提供するロラゼパム製剤が、有利と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非常に長いロラゼパム放出を行う、徐放性ロラゼパム組成物に関する。本発明の第1の態様は、(i)ロラゼパム徐放性ビーズと(ii)ロラゼパム遅延徐放性ビーズとを含む医薬組成物であって、前記組成物に含有されるロラゼパムの全量が0.5〜10mgである医薬組成物に関する。遅延徐放性ビーズは、以下により詳細に説明されるように、徐放の開始を遅延させるコーティングを有する徐放性ビーズである。好ましい実施形態では、24時間の治療効果を有する組成物を1日1回投与する。典型的には、好ましい組成物は、2つのタイプのビーズを含有するカプセルであるが、そのようなものに限定するものではない。
【0008】
本発明の別の態様は、単回用量薬物動態試験で十分な量および持続時間でロラゼパム長期放出ビーズを含む、徐放性ロラゼパム医薬組成物であって、前記組成物が、4時間以上のTmaxと、20時間を超える、好ましくは少なくとも24時間にわたる、より好ましくは少なくとも28時間にわたる、さらにより好ましくは少なくとも30時間にわたるロラゼパムの継続吸収とを含む薬物動態プロファイルを有し;前記組成物が、ロラゼパムを0.5〜10mg含有する経口剤形である、医薬組成物に関する。患者に1日1回投与する場合の組成物は、少なくとも24時間にわたり治療効果を維持する。長期吸収を実現する長期放出剤形を提供することにより、ロラゼパムは、血漿中に蓄積することができかつ好ましい定常状態の薬物動態プロファイルを提供することができる。
本発明のその他の態様は、ロラゼパムで処置可能な患者の状態を処置する方法であって、その必要がある患者に上述の医薬組成物を、定常状態の状況にある間に24時間の治療効果をもたらすのに十分な用量で1日1回投与するステップを含む方法に関する。組成物は、(i)ロラゼパム徐放性ビーズと(ii)ロラゼパム遅延徐放性ビーズとを含んでいてもよく、前記組成物に含有されるロラゼパムの全量は0.5〜10mgである。典型的なロラゼパムで処置可能な状態には、全般性不安障害、および大うつ病に関連した不安症などの、不安障害が含まれるが、これらに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】2媒体溶解試験における、例1で作製されたロラゼパム徐放性ビーズの溶解を表す図である。
【
図2】2媒体溶解試験における、例2で作製されたロラゼパム遅延徐放性ビーズの溶解を表す図である。
【
図3】第2の媒体のpHが7.4ではなく6.8である異なる2媒体溶解試験を使用した、例2のロラゼパム遅延徐放性ビーズの溶解を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、非常に長い放出または吸収特性を有するロラゼパムの徐放性製剤が、効果的な1日1回の投薬計画を含んだ有利な定常状態の薬物動態プロファイルを提供できるという発見に関する。意外なことに、投薬サイクルの後半で非常に少量のロラゼパムを提供し続けることによって、血液中のロラゼパムの蓄積を十分に支えることができかつ有益な定常状態の薬物動態プロファイルをもたらすことができる。このように、より低いCmax、より低いピーク−トラフ変動、しかし適正な薬物曝露および制限された治療量以下の血液レベルのリスクという目標を、達成することができる。
【0011】
ロラゼパムの長い放出/吸収を実現する一態様は、2つのタイプの徐放性ロラゼパムビーズを含むロラゼパム製剤に関する。第1のタイプは摂取後すぐに放出を開始し、長時間にわたって放出し続ける。第2のタイプは、ビーズからの放出の始まりを遅延させることになるコーティングにより、遅延する。コーティングが十分に除去されかつ/または透過性であると、遅延徐放性ビーズは長時間にわたって薬物を放出し始める。各タイプのビーズの徐放率を制御し、コーティングを介して遅延を制御し、かつそれらをカプセルなどの単位剤形に組み合わせることにより、24時間の治療効果を有する1日1回の用量投薬ルーチンを提供することが可能である。好ましい実施形態では、2種類のビーズを含有する単位剤形は、少なくとも1日2回与えられまたはb.i.d.の、同じ全用量の従来の即放性錠剤に比べ、類似のもしくは改善された効力および/または低減した副作用を有することができる。明確にするために、1日1回、1日2回、またはb.i.d.などの投薬計画は、連続用量間が均等な時間間隔であることを指すものとする。例えば、b.i.d.投与計画は、用量が12時間ごとに投与されることを意味すると考えられ;1日1回の投薬計画は、24時間ごとに1回投薬することを意味すると考えられる。
【0012】
ロラゼパム徐放性ビーズは、任意の種類の医薬ビーズ、ペレット、またはその他の医薬微粒子であって、ロラゼパムを含有しロラゼパムを長期間にわたって放出するものとすることができる。この徐放または持続放出特性は、適切なin vitro溶解試験で測定した場合に30分以内にロラゼパムの90%を放出することを一般に必要とする即放性プロファイルとは対照的である。本発明の目的では、徐放性ロラゼパムビーズは、溶解媒体として0.1N HClを使用したUSP I型装置(Basket)では、2時間未満でロラゼパムの90%を放出しない。
徐放性ロラゼパムビーズは、2時間以内に好ましくはロラゼパムの20〜80%を放出し、典型的には20〜70%、より典型的には25〜60%、しばしば30〜50%を放出する。さらに、これらの好ましいビーズの放出プロファイルは、しばしば、4時間後(即ち、溶解試験の4時間の時点を超える)、より典型的には6時間後、いくつかの実施形態では8時間後に90%を実現することを含む。事実、いくつかの稀な実施形態では、溶解試験において90%の放出を実際には実現することができず;例えば溶解試験での最大放出は、例えばわずか85%になる可能性がある。そのような結果は、本発明の実施形態により、90%の放出が生じていないと考えられることまたは8時間前に実現されていないと考えられることを、意味すると考えられる。要するに、90%の放出が最終的に実現されたか否かに関わらず、指定された時点以前で90%は放出されない。いくつかの好ましい徐放性ロラゼパムビーズは非常に長持ちするので、10時間よりも前に、より好ましくは12時間よりも前に、いくつかの実施形態では13時間またはさらに14時間よりも前に、ロラゼパムの90%を放出しない。しかしほとんどの実施形態では、90%の放出は最終的には実現され、通常は、20時間よりも前に、一般には18時間までに、しばしば16時間までまたは16時間付近で生ずる。いくつかの実施形態では、90%の放出は、15時間よりも前にまたはさらに14時間よりも前に、例えば12または13時間までに生ずる。放出曲線は、放出の終わり近くで比較的平らになる可能性があるので、放出された薬物のパーセント量の小さい変化が生ずるのに何時間かを要する可能性がある。したがって、90%の放出を実現するための広い時間窓は、それにも関わらず比較的類似した放出曲線を含む可能性がある。90%の放出を実現するための典型的な時間枠は、8〜22時間、例えば8〜20時間または8〜18時間、より典型的には10〜18時間、時々12〜16時間を含む。しばしば溶解プロファイルは、6〜16時間、典型的には6〜14時間、より典型的には6〜12時間、時々7〜12時間の範囲内で、80%の放出の実現を含むことになる。いくつかの実施形態では、ロラゼパムの50%が1〜5時間以内に放出され、70%が4〜10時間以内に放出される。上記放出量−時間の関係のそれぞれは、個々に適用することができるが、本発明の好ましい徐放性ロラゼパムビーズは、上記関係の2つ以上の任意の組合せを満足させ;例えば放出曲線は、(i)2時間で20〜70%の関係、(ii)4〜10時間以内で70%の関係、および(iii)10〜19時間以内で90%の関係を満足させる。徐放性ロラゼパムビーズの定義とは異なって、徐放性ロラゼパムビーズに関する上述の好ましい放出関係のそれぞれは、USP I型装置(Basket)を使用する2媒体in vitro溶解試験を使用して決定/測定される。
【0013】
「2媒体溶解試験」では、最初の2時間は、0.1N HClを含む媒体を使用して実施される。2時間で、媒体を、リン酸緩衝液を含みかつpHが7.4である媒体に交換する。当技術分野で理解されるように、第1の媒体が胃の状態に近いのに対し、第2の媒体は腸の状態に近い。例えば模擬腸液(SIF:simulated intestinal fluid)を配合する際に、当技術分野で公知のように、酵素などのその他の成分を媒体中に存在させることができる。2媒体溶解試験は37℃で実行され、500mlまたは900mlの容器を使用することができる。撹拌速度は典型的には100rpmであるが、この速度は、溶解試験によって特定の実施形態に関する有用な情報が得られるように、必要に応じて75または50rpmなどに調節することができる。明確にするために、異なるサイズの容器などの選択肢が提供される場合、任意の選択肢の下でプロファイル放出データを満足させるビーズは放出基準を満足させるとみなされ;例えば、900mlの容器において2時間で31%の放出を示すが500mlの容器でわずか27%の放出を示すビーズは、選択肢の1つにおける範囲を満足させるので、2時間で30〜50%の放出の範囲を満足させるとみなされる。放出されたロラゼパムのパーセンテージは、当技術分野で従来のような名目または標識量(例えば、2mg)に対するものであり、実際にアッセイされた量(例えば、1.96mg)に対するものではない。十分に制御されたプロセスでは、実際にアッセイされた量は、一般に標識量の±5%以内である。ある時点での放出パーセンテージは、当技術分野におけるこれらの用語の従来の用法により、その時点までの累積放出を指す。ビーズから放出された(即ち、溶解媒体中に溶解した)ロラゼパムの量は、普通に行われている技法を使用した通常の方法によって決定することができる。
【0014】
遅延徐放性ロラゼパムビーズは、放出の開始時に遅延を引き起こす外側コーティング層を有する、上述の好ましいin vitro溶解放出プロファイルを有するような徐放性ロラゼパムビーズを含む。一般に遅延コーティングは、有意な放出が開始する前の、少なくとも3時間、しばしば4〜8時間以内のin vivoで放出遅延を実現するように設計される。遅延コーティングは、一般に当技術分野で公知であり、通常は、pH、溶解度、または組合せに基づく。腸溶コーティングとしても公知であるpH依存性コーティングは、pHに基づいて溶解度を変化させる。胃に見られるような低いpHでは、コーティングは不溶であり、体液がビーズに到達してビーズから薬物が放出されるのを防止する。腸で見られるようなより高いpHでは、コーティングが可溶になり除去され、かつ/または透過性になり、それによって体液がビーズに到達してビーズから薬物が放出されるようになる。遅延は、コーティングが可溶になるpHによって、かつコーティングの厚さ/量によって制御される。溶解度に基づくコーティングは、下にあるビーズを露呈させそれによって薬物放出が開始されるように、ゆっくり溶解しまたは侵食される低水溶性コーティングを使用する。コーティングの溶解度および厚さ/量は、遅延の時間(例えば、コーティングがなくなるまでどの程度長いか)を制御する。両方の種類のコーティングを、混成状態では一緒に使用することができる。
【0015】
様々な構成の遅延コーティングは、in vivoで同じ効果を発揮することができるが、それらは設計原理により、条件に応じてin vitro溶解試験で異なる結果をもたらす可能性がある。例えば、上述の2媒体in vitro溶解試験を使用して、pH依存性遅延コーティングは、pH7.4の媒体への切替え直後に薬物放出を開始させることになる。pH依存性ではない溶解度をベースにした遅延コーティングは、媒体切替えによる影響を受けることはない。
【0016】
上述の2媒体in vitro溶解試験を使用して、pH依存性遅延コーティングは、第1の媒体において(例えば、最初に2時間で)ロラゼパムの放出が本質的にないこと、即ち3%未満、典型的には1%未満、一般に検出限界未満またはその付近であることを示すべきである。実際には、時々、最初の2時間の間にわずかに高い量のロラゼパムが放出され;一般に10%以下であり、通常は5%以下である。遅延徐放性ビーズは、第2の媒体中で開始するかなりの放出を有する。好ましい実施形態は、4時間でロラゼパムの20〜80%、しばしば25〜50%の放出を実現し、さらに6時間後、より典型的には8時間後、いくつかの実施形態では10時間後に90%の放出を実現してもよい。いくつかの実施形態では、ロラゼパムの50%が4〜8時間以内に放出され、70%が7〜12時間以内に放出される。実際には、徐放性ビーズに関して説明する好ましい放出関係は、0.1N HCl中での最初の2時間の間における放出の遅延を示す時間に、2時間を追加した遅延徐放性ビーズからの放出についても説明できる。例えば、10時間よりも前に90%の放出が実現されない遅延放出ロラゼパムビーズの実施形態は、12時間よりも前、例えば溶解試験で2時間後に90%を放出しない遅延徐放性ビーズに転用される。
【0017】
溶解度をベースにしたpH非依存性の遅延コーティングでは、2媒体in vitro溶解試験を使用した放出プロファイルが、一般に、2時間よりも早くないときに、典型的には4時間よりも早くないときに、しばしば6時間以降での、10%放出の実現を含む。いくつかの実施形態では、これらの遅延徐放性ロラゼパムビーズは、8時間でロラゼパムの20〜80%の放出、しばしば25〜50%の放出を実現する。ロラゼパムの90%の放出の実現は、しばしば10時間後、より典型的には12時間後、しかし24時間よりも前に生ずる。明確にするために、pH依存性ポリマーおよびpH非依存性ポリマーの両方を有する遅延コーティングは、pH依存性遅延コーティングとみなされる。
【0018】
2種類のビーズを含有する医薬組成物は、典型的には経口投与用の単位剤形である。ビーズはカプセルに充填されることが多いが、賦形剤と混合して錠剤に圧縮することもできる。望むなら、錠剤を2層錠剤として、一方の層に徐放性ロラゼパムビーズが含まれ他方の層に遅延徐放性ロラゼパムビーズが含まれているものとすることができるが、そのようにする必要はない。ビーズを含有するサッシェを含むその他の組成物も可能である。甘味料または矯味剤などの賦形剤をさらに含んでいてもよいサッシェ組成物は、パッケージから直接嚥下することができ、または食物に振りかけもしくは水やジュースなどの飲料中に堆積させ、次いですぐにそれぞれ食物または飲料と共に消費することができる。通常、組成物は、2つのビーズ集団:徐放性ロラゼパムビーズと遅延徐放性ロラゼパムビーズのみを含有する。しかし、追加のロラゼパムビーズのタイプまたは集団を含有することが可能である。例えば即放性ロラゼパムビーズをさらに含めてもよい。即放性ロラゼパムの存在は一般に好ましくなく、存在する場合には、好ましくは組成物中のロラゼパムの全量の20%以下、より好ましくは10%以下を占める。典型的には、即放性ロラゼパムの量は本質的にゼロであり、治療効果または定常状態の血漿中濃度の調節をもたらすものではないゼロおよび些細な量を意味し、一般に3%未満、2%未満、および1%未満である。一般に、追加のロラゼパムビーズが存在する場合、ロラゼパムの全量の少なくとも80%、時々少なくとも90%、いくつかの実施形態では少なくとも95%が、徐放性ロラゼパムビーズと遅延徐放性ロラゼパムビーズとの組合せに含有される。上述のように、徐放性ロラゼパムビーズと遅延徐放性ロラゼパムビーズとの組合せは、典型的には本発明の組成物中のロラゼパム含量の100%をもたらす。全ての実施形態において、徐放性ロラゼパムビーズと遅延徐放性ロラゼパムビーズとの比は、特に限定するものではなく、ロラゼパムの量に対してそれぞれ一般に1:0.5〜1:4である。しばしば、比は1:1±30%であり、より典型的には±25%、時々±10%である。典型的には、必ずしも必要ではないが、ロラゼパムは組成物中で唯一活性である。
【0019】
医薬組成物は、ロラゼパムを0.5〜10mg含有する。ロラゼパムおよびその合成は周知であり、薬物は一般に市販されている。ロラゼパムは、非晶質または結晶質とすることができる。これは塩を形成するのに使用することができるジアゼピン環窒素を有するが、典型的にはロラゼパムは、非塩または遊離塩基として使用される。ロラゼパムは、通常、ラセミ混合物として存在するが、個々の異性体または非ラセミ混合物を使用することもできる。本発明の目的のため、「ロラゼパム」は、他に指示しない限り、医薬として許容される塩、ラセミおよび非ラセミ形態または個々の異性体、水和物および溶媒和物を含めたその結晶質形態、および非晶質形態を含めた、ロラゼパムのそのような全ての医薬形態を包含するものとする。商業的な理由で典型的な量は、しばしば1〜6mgであり、特に1〜4mgであって、1mg、2mg、2.5mg、3mg、および4mgを含めたものであるが;1〜10の両端を含めた各整数も、適切な特定の投薬量を表す。いくつかの実施形態では、ミリグラムを単位とするロラゼパムの量は、1〜10の整数+(または−)0.25または0.5mgである。余分な0.25または0.5は、徐放性ロラゼパムビーズと遅延徐放性ロラゼパムビーズとの間で均等に分割することができる。あるいは、余分な量の全体を、徐放性ロラゼパムビーズに入れることができ、または遅延徐放性ロラゼパムビーズに全体を入れることができ、またはそれらの間の任意の変形例にすることができる。例えば、2.25mgの全ロラゼパム用量を処方する際、1mgが徐放性ロラゼパムビーズとして存在してもよく、1.25mgが遅延徐放性ロラゼパムビーズとして存在してもよい(例えば、余分な量は、全体が遅延徐放性ロラゼパムビーズ中にある。)。
【0020】
徐放性ロラゼパムビーズは、所望のin vitro溶解放出プロファイルを実現するために、母材をベースにしたビーズまたは障壁コーティングをベースにしたビーズを含めた任意の徐放性ビーズ技法を使用して処方することができる。母材をベースにしたビーズは、一般に、ポリマー母材材料、ロラゼパムを含み、かつ結合剤や充填剤などの追加の賦形剤を含んでいてもよい、混合物の造粒および押出しによって作製される。典型的なポリマー母材材料には、様々なグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、様々なEudragitブランドの組成物などのポリアクリレート、およびポリエチレンオキシドが含まれるが、これらに限定するものではない。結合剤および充填剤は、デンプン、微結晶質セルロース(MCC)などを含む。押し出されたビーズは、典型的には球形化および乾燥に供される。障壁コーティングをベースにしたビーズは、典型的には糖核またはMCC核などのノンパレイル種子核で始まり、その後、連続機能コーティング層が形成される。例えば、核を封止コートでコーティングし、その後、薬物および結合剤を有する薬物層コートで、その後、放出制御ポリマーコート層(障壁層)でコーティングすることができる。障壁層は、一般に、成膜材料としての水不溶性ポリマーであるが、これに限定するものではない。その例には、エチルセルロースなどのセルロース、アクリレートポリマーおよびコポリマーが含まれる。追加の材料は、通常、被膜の性能を強化するために含まれる。これらには:柔軟性を与えかつコートの亀裂または物理的変化が薬物放出特性を損なわないことを確実にする可塑剤;加工または貯蔵中の粒子の接着/凝集を最小限に抑える粘着防止助剤;表面コーティングを助ける分散剤/湿潤剤;および薬物放出用のチャネルを提供することが示される細孔形成剤が含まれるが、これらに限定するものではない。いずれかの種類の徐放性ビーズにおいて、ロラゼパム薬物含量は一般に低く、ビーズの重量に対して典型的には7重量%未満であり、より典型的には5重量%未満、しばしば1〜4重量%未満である。徐放性ロラゼパムビーズは、典型的には1ミリメートル未満のサイズを有し、頻繁にはビーズは、0.4〜0.8ミリメートルのサイズ範囲内にある。
【0021】
遅延徐放性ロラゼパムビーズは、遅延コーティング層を有する徐放性ロラゼパムビーズ核である。核として使用される徐放性ロラゼパムビーズは、第1の集団で使用される徐放性ロラゼパムビーズと同じにすることができまたは異ならせることができる。典型的な実施形態では、遅延コーティングは周知の腸溶コーティングであり;即ち、pH依存性溶解度を有するポリマーをベースにしたものである。これらのポリマーは、酸性の水性媒体に不溶でありまたは実質的に不溶であるが、pHが増大するにつれ、より可溶性になる。一般にそのようなポリマーは、限定するものではないが、酢酸フタル酸セルロースまたはポリメタクリレートおよびそれらのコポリマーなどの遊離酸基を有するが、これらに限定するものではない。有用な腸溶コーティングは、Eudragit FS 30 Dをベースにすることができる。その他の可能性ある腸溶コーティング材料には、Eudragit S 100およびEudragit S 12.5が含まれる。腸溶コーティングは、単一の腸溶ポリマーまたは組合せをベースにすることができ、典型的には可塑剤をさらに含有する。ビーズは、ポリマーをベースにしたコーティングが残るように乾燥することによって除去される、液体媒体をしばしば介して従来の手段によってコーティングすることができる。遅延徐放性ロラゼパムビーズは、コーティングの厚さにより、徐放性ロラゼパムビーズよりも通常はわずかに大きい。それにも関わらず、遅延徐放性ロラゼパムビーズも、典型的には1ミリメートル以下であり、しばしば0.4〜0.9の範囲内にある。
【0022】
腸溶コーティングは、腸溶コーティングが拡散し侵食されるよう十分に溶解するまで、かつ/または溶解してなくなるまで、胃および/または腸内での薬物の放出を防止することができる。ポリマーの種類およびコーティングの量を選択することにより、腸溶コーティングは、任意の所望のレベルのpH保護を行うことができ;例えばpH6、6.8、7などでの放出/可溶である。一般に本発明は、pH7以上で、特に約pH7.4で放出するように設計された腸溶コーティングを好む。市販の腸溶コーティングは、指定されたpHで放出することが、製造業者によってしばしば示される。したがってpH7で放出がなされると示されるものは、pH7で放出するように設計されると考えられ、結腸放出が行われることが時々記述される。GI管内では、pHが小腸内でpH6から徐々に増大し、末端回腸で約pH7.4になる。本発明の好ましい実施形態では、遅延徐放性ロラゼパムビーズは、末端回腸内でまたはその付近で放出し始めることを目標とする。例えばpH7.4で放出するように設計されたとしても、腸溶コーティングは一般に完全ではなく、しばしば、pH7よりも前に薬物がかなり放出される。本発明の目的のため、「pH7以上で放出するように設計された」腸溶コーティングは、2媒体溶解試験でpH7.4リン酸緩衝媒体の代わりにpH6.8リン酸緩衝媒体を用いた場合、2〜6時間の間に放出の著しい低減がなされるものを含む。著しい低減は、少なくとも50%である。例えば、遅延徐放性ビーズが4時間でロラゼパムの30%を放出した場合(pH7.4緩衝媒体での2時間目)、同じビーズは、より低いpH6.8緩衝媒体を使用して試験をしたときに4時間で15%以下しか放出しないと考えられる。この50%の低減は、6時間にも当てはまると考えられる。しばしば低減は、より著しく、pH6.8緩衝液を使用して試験をした場合にpH7.4緩衝液での放出のわずか35%以下、時々25%以下を実現する。以下の例で示されるように、Eudragit FS 30 Dは、「pH7以上で放出するように設計された」腸溶コーティングを提供するのに適している。
【0023】
遅延徐放性ロラゼパムビーズのいくつかの実施形態は、2媒体溶解試験において4時間でロラゼパムの20〜50%の放出を提供し、8時間で50〜80%の放出を提供し;しかしpH7.4緩衝媒体の代わりにpH6.8緩衝媒体を使用する修正された2媒体溶解試験では4時間でロラゼパムの10%未満の放出を提供し、8時間以内で35%未満、好ましくは30%未満の放出を提供するのに十分な、放出メカニズムおよび腸溶コーティングを有する。
【0024】
あるいは遅延コーティングを、pHの感受性ではなく厚さおよび水溶性に基づく時間遅延コーティングとすることができる。一般に、時間遅延放出用の被膜形成剤は、水溶性であり、GI内を通過する間に溶解し、または水不溶性であって生理学的条件下で膨潤し、膨潤したコーティングを通した拡散によって薬物放出を制御することができる。時間遅延の持続時間は、ポリマーの親水性および膨潤特性とコートの厚さの影響を受ける。そのようなポリマーの例は、酢酸セルロース、エチルセルロース、グリセリド、置換メタクリレート、ポリ酢酸ビニル、HPMC、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)である。いくつかの実施形態では、コーティングは、ゆっくりと溶解してなくなる低い水溶性のポリマーを含有する。その他の実施形態では、コーティングは、水溶性および水不溶性のポリマー(または、より高いおよびより低い水溶性のポリマー)の混合物を含有する。ポリマーの比と、厚さ/量を制御することによって、所望の時間遅延を実現することができる。水溶性ポリマーの例には、セルロースエーテル、例えばHPMC、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、Na CMC、およびポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。それほど可溶性ではない、または不溶性のポリマーには、エチルセルロースおよびポリメタクリレートが含まれる。
【0025】
実際には、本発明の医薬組成物は、1日1回の投薬計画を行うことができる。(i)徐放性ロラゼパムビーズとして、および(2)遅延徐放性ロラゼパムビーズとして提供されたロラゼパムの量の制御、ならびに提供された徐放性および遅延の程度は、患者におけるロラゼパムの有用な血漿中濃度レベルを生成することができる。徐放性ロラゼパムビーズは、投与直後に数時間にわたってロラセパムを放出する。遅延徐放性ロラゼパムビーズは、最初の遅延後、典型的には数時間の、徐放を開始する。いくつかの実施形態では、遅延はおよそ6時間(例えば、5〜7時間、通常は5〜6時間)であり、かつ/または末端回腸の高いpHで開始する。末端回腸への平均通過時間は、一般に約6時間とみなされる。したがって、ロラゼパムのまる1日の用量は、時間と共に拡がって血漿中変動を低減させ、それと共に、最小治療濃度の保証が維持される。このように、本発明の好ましい組成物は、1日1回の投薬で、定常状態の条件下で24時間にわたり治療効果をもたらすことができる。定量的に、本発明のある好ましい実施形態は、24時間にわたる定常状態の条件下(例えば、1日用量から1日用量まで)、少なくとも20時間、しばしば少なくとも22時間、時々24時間にわたり、10ng/ml以上の血漿中濃度を提供することになる。
【0026】
明確にするために、「定常状態」という用語は、医薬分野におけるその通常の意味で使用する。この用語は、一定であることを意味せず、むしろ、薬物の一貫して連続した投与の後、典型的には数日後(例えば、ロラゼパムの場合には、半減期の5倍、または3〜5日)に得られる動的平衡である。例えば、規則的な計画(1日当たり2または3回)に基づいてロラゼパム即放性錠剤を既に摂取している患者は、次の用量が投与されるときに彼/彼女の血液中にロラゼパムを有する。摂取後、その用量が放出され、血液中のロラゼパムの量が最大血漿中濃度または「Cmax」まで増加する。ロラゼパムは、同時に身体の生物学的作用によって血液から代謝されかつ/または除去されており、したがって血漿中濃度は降下する。薬物血漿中濃度の減少は、ロラゼパムの次の用量が摂取されるまで継続することになる。薬物血漿中濃度は、ロラゼパムの新たな用量が血液に吸収される直前に、その最低濃度レベル、「Cmin」に到達することになる。新たな用量は、血漿中濃度の上昇を引き起こし、サイクルが繰り返され、もう一度Cmaxに到達し、その後Cminに降下し、新たにロラゼパムが投与されるようになる。定常状態とは対照的に、ロラゼパムの第1の用量は、投薬時には血液中にロラゼパムが存在しないので、異なる血漿中の値をもたらす。そのような単回用量実験に関するCminは、最初はゼロである。Cmaxは、典型的には定常状態のCmaxよりも著しく低い。本発明は、ロラゼパムの長期投与(1週以上、おそらくは何カ月または何年)に適用可能であるので、定常状態のパラメーターはより意味のあるものとすることができる。事実、本発明のいくつかの実施形態では、単回用量試験(例えば、初期用量)は、血流中に治療濃度をもたらすのが1時間よりも早くなく、しばしば2時間以前でなく、いくつかの実施形態では3時間以前でない。いくつかの実施形態では、最小治療薬血漿中濃度は10ng/mlであると解釈することができる。
【0027】
好ましい実施形態は、b.i.dまたはt.i.d.投与計画による即放性錠剤を介した、ロラゼパムの同じ全1日量の投薬から得られる定常状態Cmaxとほぼ等しい、またはそれ未満の、1日1回の投薬からのロラゼパム血漿定常状態Cmaxを提供する。「ほぼ等しい」という用語は、制御放出組成物の定常状態Cmaxが、b.i.d.またはt.i.dで与えられた対応する即放性錠剤(同じ全1日用量を有する)に関する定常状態Cmaxの±35%以内、好ましくは±20%であることを意味する。いくつかの実施形態では、制御放出組成物の定常状態Cmaxは、b.i.d.で与えられた対応する即放性錠剤の定常状態Cmaxに近く、またはそれ未満である。「近い」という用語は、±15%、好ましくは±10%を意味する。徐放性組成物のロラゼパム血漿定常状態Cminは、好ましくは、b.i.d.(同じ全1日用量を有する)で与えられた対応する即放性錠剤の定常状態Cminにほぼ等しく、またはそれよりも大きい。いくつかの実施形態では、定常状態Cminは、b.i.d.で与えられた対応する即放性錠剤のCminに近く、またはそれよりも大きい。「ほぼ等しい」および「近い」という用語は、Cmaxに関するものと同じ意味を有する。
【0028】
本発明の組成物のロラゼパム定常状態CmaxおよびCmin値は、b.i.d.での即放性錠剤の、対応する用量のCmaxおよびCminにほぼ等しくてもよいが、組成物は、鎮静、傾眠、眩暈、記憶障害などの有害事象のリスクを低下させると考えられる。Cmaxを超えると、ロラゼパム血中濃度の増加率も有害事象のリスクに相関すると考えられ:ロラゼパム血漿中濃度のより遅い上昇は、有害事象のリスクを少なくする。1日1回の剤形である本発明の組成物は、即放性錠剤の使用よりも、ロラゼパム血中濃度の遅い増加をもたらす。この相違は「Tmax」、即ち、用量が投与された後に定常状態Cmaxを再び得るための時間によって説明することができる。本発明の医薬組成物の好ましい実施形態は、典型的には、4時間よりも早くないTmax、しばしば6時間よりも早くない、より典型的には7時間よりも早くない、しばしば8時間よりも早くないTmaxを提供する。
【0029】
2つの徐放性ビーズ集団であって一方が放出開始前に遅延をさらに有する集団の使用は、有利な薬物動態プロファイルを提供することができる。薬物の放出は、効果的に滑らかになり長くなって、Cmax付近で比較的平らな血漿中濃度対時間曲線をもたらす(例えば、フラットトップ(flat top))。しばしば曲線は、少なくとも8時間にわたり、好ましくは少なくとも10時間にわたり、時々少なくとも12時間にわたり、±2ng/ml以内の変動で一定になる。
【0030】
本発明の別の態様は、単回用量薬物動態試験で十分な量および持続時間でロラゼパム長期放出ビーズを含む、徐放性ロラゼパム医薬組成物に関し、この組成物は、4時間以降にTmaxを含み、かつ20時間を超えて、好ましくは少なくとも24時間にわたり、より好ましくは少なくとも28時間にわたり、さらにより好ましくは少なくとも30時間にわたりロラゼパムの連続吸収を含む、薬物動態プロファイルを有する。組成物は、ロラゼパムを0.5から10mg含有する、ビーズが充填されたカプセルなどの経口剤形である。典型的には、組成物は、1日1回の投薬計画で投与したときに24時間にわたり治療効果を維持する(定常状態で)。
【0031】
「長期放出ビーズ」は、初期遅延があってもよい、長期徐放をもたらす任意の医薬微粒子である。長期放出ビーズは、組成物中の単独のビーズとして、または即放性および/または徐放性ビーズを含む1つもしくは複数のその他のビーズと組み合わせて使用することができる。長期放出ビーズは、例えば、即放性および/または比較的高速の徐放性ビーズと併せて使用されてもよい低速徐放性ビーズとすることができる。または長期放出ビーズは、ロラゼパムの2つの放出を有する混成ビーズとすることができ;即ち、外側コーティングからの最初の放出の後、ビーズのより内側部分から徐放がなされる。混成ビーズは、単独で、または即放性および/または徐放性ビーズと組み合わせて使用することができる。長期放出ビーズは、上述の遅延徐放性ビーズとすることもでき、徐放性ビーズと併せて使用することができかつ即放性ビーズと共に使用されてもよい。
【0032】
長期放出ビーズは、薬物動態試験の20時間後であってもロラゼパムの吸収が検出可能であるように十分な量でかつ十分に長い放出(持続時間)で、徐放性組成物中に存在する。試験は、投与中は絶食状態で実施され、120時間実行する。剤形からのロラゼパムの連続放出および付随する吸収は、血漿中のロラゼパムの濃度の損失と、ロラゼパムの既知の(または測定された)排除率とを比較することによって、推論することができる。ロラゼパムの任意の明らかな量が身体に吸収されている限り、血漿中濃度の低下は、基本的なロラゼパム排除率よりも遅くなる。即放性錠剤の濃度低下との比較を使用して、徐放性組成物がより低速で低下するか否か、したがってロラゼパムの放出および吸収を実現しているか否かを確認しまたは決定することができる。濃度に関する対数スケールを使用してプロットしたときに、グラフによってその相違はより容易に理解される。「連続吸収」は、徐放性組成物により提供されたロラゼパムの比較的途切れのない放出および吸収を指す。吸収は初期遅延を有していてもよいが、放出および吸収が開始されると、薬物投入剤形が本質的に消耗されるまで、徐放性組成物はロラゼパムを放出し続けることになる。対照的に、ロラゼパムの2回分のボーラス用量を提供する組成物などの非徐放性組成物は、2回目のボーラスが22時間で放出された場合であっても「連続吸収」はなされないと考えられる。
【0033】
十分な持続時間を有するようにロラゼパムを放出する長期放出ビーズ形態で、その吸収が単回用量薬物動態試験で20時間を超えても見られるような、十分な量のロラゼパムを与えることによって、定常状態Cmin(およびCmax)は、驚くほど改善することができる。好ましくは吸収は、少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも28時間、さらにより好ましくは少なくとも30時間、さらに少なくとも32時間まで進行する。吸収は、単回用量薬物動態試験から決定されるように大抵はわずかであるが、その累積効果は、Cmin、Cmax、および全吸収/曝露、即ち曲線下面積(AUC:Area Under the Curve)に有意な増加をもたらすことができる。長期放出および吸収により、いくつかの実施形態では、0〜120時間からの全AUCのほぼ半分が、単回用量薬物動態試験の最初の24時間で実現され;一般には0〜120時間での全AUCの40〜60%、しばしば45〜55%が、0〜24時間で実現される。そのように長い間吸収する薬物を提供する能力の一部は、ロラゼパムのビーズまたは微粒子形態に起因する。一般に、GI管内の通過時間は12〜24時間である。しかし粒径が1mm以下のビーズの場合、通過時間を非常に長くすることができる。ビーズは、腸管の上下に浸出してもよくかつ/または内腔組織の裂溝などで遅延してもよい。したがって、徐放性組成物の次の投与が生じる場合、その前の用量は、ロラゼパムをなお放出していてもよい。ロラゼパム徐放性ビーズおよびロラゼパム遅延徐放性ビーズを有する前述の組成物は、好ましくはこれら長期吸収およびAUCの目標の1つまたは複数を満足させ、この遅延徐放性ビーズは長期放出ビーズとして働く。同様に、ロラゼパム長期放出ビーズを含む徐放性ロラゼパム医薬組成物は、典型的にはCmin、Cmax、およびTmax値を満足させ、これらにはロラゼパム徐放性ビーズおよびロラゼパム遅延徐放性ビーズを有する組成物に関して既に記述されたような好ましい値が含まれる。
【0034】
本発明の特定の実施形態は、徐放性ロラゼパムビーズと遅延徐放性ロラゼパムビーズとにほぼ均等に分割された、ロラゼパム2mgを含有しかつ1日1回の投薬が行われる医薬組成物に関する。そのような組成物は、1日1回投与した場合、好ましくは26ng/ml以下、通常は23ng/ml以下の定常状態Cmaxを提供する。しかしCminは、治療レベルよりも下に降下しない。好ましくはCminは、1日1回投与した場合に少なくとも10ng/mlであり、時々少なくとも11ng/mlであり、少なくとも12ng/mlとすることができる。Tmaxは、典型的には1日1回投与した後4〜12時間の範囲内にある。
【0035】
典型的には本発明の組成物は、ロラゼパム1〜6mgの範囲内で用量比例性を示す。比例性は、典型的にはAUC(全曝露)に関するものであるが、好ましくは定常状態CmaxおよびCminでも見出される。下記の近似は、定常状態Cmaxに関する好ましい実施形態に適用することができる。ロラゼパム各1mgは、10ng/ml±20%以下のロラゼパム血漿定常状態Cmaxを提供する。したがって、この実施形態の下では、2mgの用量が、好ましくは20から24ng/ml以下、好ましくは20〜24ng/mlの範囲内の定常状態Cmaxを提供し;3mgの用量は、好ましくは30〜36ng/ml以下、好ましくは30から36ng/mlの範囲内の定常状態Cmaxを提供する、などである。これらの値は、1日1回の投薬を想定する。ロラゼパム定常状態Cminは、ロラゼパム各1mgごとに、好ましくは少なくとも5ng/mlである。例えば、ロラゼパム2mgは、好ましくは少なくとも10ng/mlのロラゼパム血漿定常状態Cminを有し;一方、ロラゼパム4mgは、好ましくは少なくとも20ng/mlのロラゼパム血漿定常状態Cminを有するなどである。やはりこれらの値は、1日1回の投薬計画を想定する。
【0036】
明らかにするために、定常状態Cmax、Cmin、およびTmaxに関する値の全ては、単一対象に関するものとすることができるが、より一般的には多数の対象、例えば多数の患者、生物学的利用能試験の多数の参加者などの平均である。また、定常状態の値は、当技術分野で公知の方法により、単回用量薬物動態試験から計算することができる。そのような計算値(「シミュレーション」とも呼ぶ。)は、本発明の目的のために定常状態の値を決定するのにも適切である。
【0037】
本発明の医薬組成物は、任意のロラゼパム処置可能状態を処置するのに使用することができる。これらの状態は、ほとんどしばしば不安関連障害の処置または管理に関係する。その例には:全般性不安障害、および大うつ病に関連した不安症が含まれるが、これらに限定するものではない。しかしロラゼパムのその他の使用も本発明に適用することができ;例えばPTSD、不眠症および/または睡眠障害、双極性障害、強迫性障害(OCD)、社会不安障害、痙攣などである。本発明の医薬組成物は、一般に1日当たり1回投与される。用量は、通常1日1回投与されるが、一部の臨床医は、一部の患者に対して全1日用量を1日当たり1回または複数回の投与に分割することを選択することもある。
【0038】
本発明について、下記の非限定的な例に関してさらに記述する。
【0039】
(例1)
下記の名目上の組成を有する徐放性ロラゼパムビーズを作製した。
【表1】
【0040】
ビーズは、ロラゼパム、HPMC、およびデンプンをスクリーニングし(30メッシュ)、5分刻みで混合することによって作製した。MCCをスクリーニングし(30メッシュ)、引き続き10分間混合しながら添加した。乾燥混合物を、水を添加しながら造粒し、押し出し、球形化した。ビーズを乾燥して、残留含水量を3%w/w未満にし、画分を40メッシュと25メッシュとの間でスクリーニングした。ビーズのサンプルを、2媒体in vitro溶解試験に供し、その結果を以下に示す。平均を、
図1でグラフに示す。
【表2】
【0041】
(例2)
遅延徐放性ロラゼパムビーズを、上記徐放性ロラゼパムビーズを使用することによって作製し、腸溶コーティングを付着させた。腸溶コーティングは、pH7以上で放出するように設計し、特にpH7.4で自由な放出がなされることを目的とした。得られた遅延徐放性ロラゼパムビーズは、下記の名目上の組成を有する。
【0043】
遅延徐放性ロラゼパムビーズを、例1により得られたビーズをコーティングすることによって作製した。Eudragit、可塑剤、および水を混合し、スクリーニングして(35メッシュ)、コーティング溶液/懸濁液を形成した。核ビーズを、Glatt流動床乾燥機を使用してコーティング溶液/懸濁液でコーティングした。任意でコロイド状二酸化ケイ素を、噴霧乾燥機を介してさらにコーティングすることができる。次いでコーティングされたビーズを乾燥し、過大サイズのビーズを、18メッシュスクリーンカットオフを使用することによって除去する。
【0044】
遅延徐放性ロラゼパムビーズのサンプルを、pH7.4緩衝媒体を使用する2媒体in vitro溶解試験に供し、その結果を以下にまとめる。平均結果を、
図2にグラフで表す。
【0045】
【表4】
比較のため、遅延徐放性ビーズのサンプルを、修正した2媒体in vitro溶解試験に供し、そこではpH7.4緩衝媒体の代わりにpH6.8緩衝媒体を用いた。結果を以下にまとめ、平均を、
図3でグラフに示す。
【表5】
【0046】
上記結果からわかるように、遅延徐放性ビーズは、2媒体試験溶解試験で使用されたpH7.4緩衝液と比較すると、pH6.8緩衝液において4時間および6時間で放出された量の著しい低減を示した。
【0047】
(例3)
徐放性ロラゼパムビーズおよび遅延徐放性ロラゼパムビーズを含有する医薬組成物を、カプセルに例1および2のビーズを充填することによって形成した。硬質ゼラチンカプセルに、下記の名目上の量の成分を充填して、2mgのロラゼパム経口剤形を形成した。
【表6】
【0048】
名目上の2mgのロラゼパムカプセルを、24対象が関与する単回用量薬物動態試験で評価した。用量を、絶食状態の下で投与した。試験を120時間続けた。試験の平均は、ロラゼパムが30時間を超えて吸収されたことを示した。計算された定常状態値は、本発明の2mgのロラゼパムを1日1回投薬することにより、ロラゼパムの治療濃度が24時間にわたって維持されることを示す。定常状態CmaxおよびCminは、1mgの即放性ロラゼパム錠剤のb.i.d.投薬計画(12時間当たり1mgは、1日当たり2mgに等しい)で実現された、対応するCmaxおよびCminにそれぞれほぼ等しい。
【0049】
上記特許および論文のそれぞれは、参照により本明細書に組み込む。記述してきた本発明は、本発明を多くの方法で変えてもよくかつそのような修正の全ては下記の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると考えられることが明らかである。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. (i)ロラゼパム徐放性ビーズと(ii)ロラゼパム遅延徐放性ビーズとを含む医薬組成物であって、前記組成物に含有されるロラゼパムの全量が0.5〜10mgであり、典型的には1〜6mg、例えば1〜4mgである医薬組成物。
2. 前記組成物が、患者に1日1回投与される場合、少なくとも24時間にわたり治療効果を維持する、上記1に記載の医薬組成物。
3. 前記組成物中のロラゼパムの少なくとも95%、好ましくは100%が、前記徐放性ビーズと前記遅延徐放性ビーズとの組合せに含有される、上記1または2に記載の医薬組成物。
4. 前記徐放性ビーズが、ロラゼパムの20〜70%、より典型的には25〜60%、しばしば30〜50%を2時間で放出するような2媒体in vitro溶解試験での溶解プロファイルを有し;前記2媒体in vitro溶解試験は、0.1N HClを含む媒体中で2時間にわたり実施され、次いでリン酸緩衝液を含みpHが7.4である媒体中で実施される、上記1から3までのいずれかに記載の医薬組成物。
5. 前記溶解プロファイルが、1〜5時間以内でロラゼパムの50%の放出および/または4〜10時間以内でロラゼパムの70%の放出をさらに含む、上記4に記載の医薬組成物。
6. 前記溶解プロファイルが、ロラゼパムの90%が10時間よりも前には放出されないことをさらに含む、上記4または5に記載の医薬組成物。
7. 前記ロラゼパム遅延徐放性ビーズが、6時間程度でありかつ/または末端回腸の高pHで開始される、in vivoでの放出の遅延を有する、上記1から6までのいずれかに記載の医薬組成物。
8. 前記ロラゼパム遅延徐放性ビーズが、ロラゼパムの90%の放出が10時間後に、典型的には12時間後に生ずるような2媒体in vitro溶解試験での溶解プロファイルを有し;前記2媒体in vitro溶解試験は、0.1N HClを含む媒体中で2時間にわたり実施され、次いでリン酸緩衝液を含みpHが7.4である媒体中で実施される、上記1から7までのいずれかに記載の医薬組成物。
9. 前記遅延徐放性ビーズが、pH依存性の遅延コーティングを含有し、前記遅延徐放性ビーズは、ロラゼパムの20〜80%、典型的には25〜50%が4時間で放出されるような2媒体in vitro溶解試験での溶解プロファイルを有し;前記2媒体in vitro溶解試験は、0.1N HClを含む媒体中で2時間にわたり実施され、次いでリン酸緩衝液を含みpHが7.4である媒体中で実施される、上記1から8までのいずれかに記載の医薬組成物。
10. 前記徐放性ビーズが、ポリマー母材中に分散されたロラゼパムを含み、前記遅延徐放性ビーズが、ポリマー母材中にロラゼパムが分散されている核と、前記核を取り囲む腸溶コーティングとを含む、上記1から9までのいずれかに記載の医薬組成物。
11. 徐放性ビーズ中および遅延徐放性ビーズ中の前記ポリマー母材がHPMCを含む、上記10に記載の医薬組成物。
12. 前記腸溶コーティングが、pH7以上で放出するように設計されている、上記10または11に記載の医薬組成物。
13. 前記組成物が、1日1回投薬された場合、ロラゼパム各1mgごとに10ng/ml+20%以下のロラゼパム血漿定常状態Cmax、および/またはロラゼパム各1mgごとに少なくとも5ng/mlのロラゼパム血漿定常状態Cminを提供する、上記1から12までのいずれかに記載の医薬組成物。
14. 前記組成物が、1日1回投与された場合、(1)b.i.d.で与えられかつ同じ全1日量のロラゼパムを有する即放性錠剤によって実現された対応するCmaxにほぼ等しいロラゼパム血漿定常状態Cmax、および/または(2)b.i.d.で与えられかつ同じ全1日量のロラゼパムを有する即放性錠剤によって実現された対応するCminにほぼ等しいロラゼパム血漿定常状態Cminを提供する、上記1から13までのいずれかに記載の医薬組成物。
15. 前記組成物が、単回用量薬物動態試験で決定される、20時間を超えて、好ましくは少なくとも24時間にわたり、より好ましくは少なくとも28時間にわたり、さらにより好ましくは少なくとも30時間にわたり、ロラゼパムの連続吸収を示す、上記1から14までのいずれかに記載の医薬組成物。
16. 徐放性ロラゼパム医薬組成物であって、単回用量薬物動態試験で、前記組成物が、4時間以上でTmaxを含みかつ20時間を超えて、好ましくは少なくとも24時間にわたり、より好ましくは少なくとも28時間にわたり、さらにより好ましくは少なくとも30時間にわたりロラゼパムの連続吸収を含む薬物動態プロファイルを有するように、十分な量および持続時間でロラゼパム長期放出ビーズを含み;前記組成物は、ロラゼパムを0.5〜10mg含有する経口剤形であり;前記組成物は、患者に1日1回投与された場合、少なくとも24時間にわたり治療効果を維持する医薬組成物。
17. 前記薬物動態プロファイルが、0〜120時間での全AUCの40〜60%、しばしば45〜55%が0〜24時間で実現されることを含む、上記16に記載の組成物。
18. ロラゼパムで処置可能な患者の状態を処置するための、特に不安症を処置するための方法であって、その必要がある患者に、上記1から17までのいずれかに記載の医薬組成物を、定常状態の条件下で24時間の治療効果がもたらされるように十分な用量で1日1回投与することを含む方法。