(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039832
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/02 20060101AFI20161128BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20161128BHJP
B23K 11/36 20060101ALI20161128BHJP
B23D 79/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B23K11/02 330
E04C5/18 105
B23K11/36 320
B23D79/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-5007(P2016-5007)
(22)【出願日】2016年1月14日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】596117821
【氏名又は名称】コーリョー建販株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100190230
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 良吉
(74)【代理人】
【識別番号】100118692
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 菜穂恵
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(72)【発明者】
【氏名】大田 真司
(72)【発明者】
【氏名】森山 洋介
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−106573(JP,A)
【文献】
特開平09−066451(JP,A)
【文献】
特開平02−285137(JP,A)
【文献】
特開2002−254177(JP,A)
【文献】
特開昭57−208455(JP,A)
【文献】
特開平10−331332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00−11/36
E04C 5/00− 5/20
B23D 79/00−79/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さの棒鋼を環状に曲げ加工する工程と、
環状に曲げ加工された前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程と、
前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る工程と、
を含み、
前記削り取る工程は、前記膨らみを前記棒鋼の周方向の全体にわたり所定量削り取り、
前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみの大きさが前記周方向において異なる、溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【請求項2】
前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみの前記棒鋼の軸線に直交する方向の最大寸法が前記棒鋼の外径の1.1〜1.3倍である、請求項1に記載の溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【請求項3】
前記削り取る工程は、前記棒鋼に装着された押し抜きせん断用の工具を前記棒鋼に沿ってスライド移動させることによって前記膨らみを削り取り、
前記押し抜きせん断用の工具は、それぞれが押し抜き刃を有すると共に前記棒鋼を挟んで配置される第1押し抜き工具と第2押し抜き工具とで構成されている、請求項1又は2に記載の溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【請求項4】
前記第1押し抜き工具の押し抜き刃は、前記棒鋼の軸線に直交する方向における一方の端部が他方の端部よりも突出するように傾斜し、前記第2押し抜き工具の押し抜き刃は、前記棒鋼の前記軸線に直交する方向における前記他方の端部が前記一方の端部よりも突出するように傾斜している、請求項3に記載の溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【請求項5】
所定の長さの棒鋼を環状に曲げ加工する工程と、
環状に曲げ加工された前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程と、
前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る工程と、
を含み、
前記削り取る工程は、前記膨らみのうち環状に曲げ加工された前記棒鋼の外側に位置する部位を削り取る、溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【請求項6】
所定の長さの棒鋼を環状に曲げ加工する工程と、
環状に曲げ加工された前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程と、
前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る工程と、
を含み、
前記削り取る工程は、前記膨らみのうち環状に曲げ加工された前記棒鋼の内側に位置する部位を削り取る、溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【請求項7】
所定の長さの棒鋼を環状に曲げ加工する工程と、
環状に曲げ加工された前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程と、
前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る工程と、
を含み、
前記削り取る工程は、前記膨らみのうち環状に曲げ加工された前記棒鋼の外側及び内側に位置する部位を削り取る、溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の耐震性能等を高めるために鉄筋コンクリート造の柱や梁の主筋を取り囲むように配置される溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄筋コンクリート造の柱や梁には、主筋と、この主筋を取り囲むように配置されるせん断補強筋とが用いられている。近年、前記せん断補強筋の中でも、現場での溶接作業が不要であり、かつ、コンクリートの充填性にも優れる溶接閉鎖型せん断補強筋が多く用いられるようになってきている。前記溶接閉鎖型せん断補強筋は、主に、所定の長さに切断された棒鋼を環状(フープ状)に曲げ加工し、その後、前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接により接合することによって製造される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−74436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記突き合わせ抵抗溶接による接合部(溶接部)には、前記棒鋼の外径の1.5〜1.8倍程度の比較的大きな膨らみが生じる。このため、従来の溶接閉鎖型せん断補強筋においては、例えば、鉄筋の組立時に前記接合部の膨らみが前記主筋に干渉してしまう場合があり、鉄筋の組立性の面で改良の余地があった。また、前記接合部の膨らみによって鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さが不足してしまうおそれもあった。
【0005】
そこで、本発明は、溶接閉鎖型せん断補強筋において、前記突き合わせ抵抗溶接によって生じる前記接合部の膨らみに起因する不具合の少なくとも一つを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明
による溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法は、所定の長さの棒鋼を環状に曲げ加工する工程と、曲げ加工された前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程と、前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る工程と、を含む。
本発明の一態様において、前記削り取る工程は、前記膨らみを前記棒鋼の周方向の全体にわたり所定量削り取り、前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみの大きさが前記周方向において異なる。本発明の他の態様において、前記削り取る工程は、前記膨らみのうち環状に曲げ加工された前記棒鋼の外側に位置する部位を削り取る。また、本発明の他の態様において、前記削り取る工程は、前記膨らみのうち環状に曲げ加工された前記棒鋼の内側に位置する部位を削り取る。さらに、本発明の他の態様において、前記削り取る工程は、前記膨らみのうち環状に曲げ加工された前記棒鋼の外側及び内側に位置する部位を削り取る。
【発明の効果】
【0007】
前記溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法は、前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る工程を含む。このため、前記溶接閉鎖型せん断補強筋の製造方法によれば、前記接合部の溶接強度への影響を抑制しつつ、前記接合部の膨らみに起因する不具合を抑制することが可能な溶接閉鎖型せん断補強筋を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る溶接閉鎖型せん断補強筋の使用例を示す図である。
【
図2】前記溶接閉鎖型せん断補強筋の製造する際の削り加工工程において用いられる削り加工装置の一例を示す図である。
【
図3】前記削り加工装置に用いられる上側押し抜き工具の構成を示す図であり、(A)は前記上側押し抜き工具の正面図、(B)は前記上側押し抜き工具の平面図、(C)は前記上側押し抜き工具の左側面図、(D)は前記上側押し抜き工具の底面図である。
【
図4】前記削り加工装置に用いられる下側押し抜き工具の構成を示す図であり、(A)は前記下側押し抜き工具の正面図、(B)は前記下側押し抜き工具の平面図、(C)は前記下側押し抜き工具の左側面図、(D)は前記下側押し抜き工具の底面図である。
【
図5】前記上側押し抜き工具と前記下側押し抜き工具とが組み合わされた状態(削り加工の対象である棒鋼に装着された状態)を示す図であり、
図5(A)は正面図、
図5(B)は平面図、
図5(C)は左側面図である。
【
図6】前記削り加工装置による削り加工後の接合部の一例を示す要部断面拡大図である。
【
図7】前記削り加工装置による削り加工後の前記接合部の他の例を示す要部断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接閉鎖型せん断補強筋の使用例を示す図である。
図1に示されるように、実施形態に係る溶接閉鎖型せん断補強筋(以下単に「せん断補強筋」という)1は、鉄筋コンクリート造の柱や梁において、主筋2に直交すると共に、主筋2を取り囲むように配置される。実施形態に係るせん断補強筋1は、主に、曲げ加工工程、溶接工程、削り加工工程を経て製造される。
【0010】
前記曲げ加工工程は、あらかじめ所定の長さに切断された棒鋼(異形棒鋼を含む)を環状(例えば、円形フープ状や多角形フープ状)に曲げ加工する工程である。前記曲げ加工工程は、公知の油圧式鉄筋ベンダー(図示省略)などを用いて行われ得る。
【0011】
前記溶接工程は、前記曲げ加工工程において環状に曲げ加工された棒鋼の両端面(両切断面)を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程である。前記突き合わせ抵抗溶接としては、主にフラッシュバット溶接とアプセットバット溶接とがあるが、本実施形態においては、前記フラッシュバット溶接によって、前記環状に曲げ加工された棒鋼の前記両端面が接合されるものとする。その主な理由は、前記フラッシュバット溶接は、接合断面の大小にかかわらず安定した溶接が可能で、十分な溶接強度を得られるので、特に前記削り加工工程(後述する)を考慮した場合に、前記アプセットバット溶接よりも前記フラッシュバット溶接を用いた方が好ましいと考えられるからである。但し、前記フラッシュバット溶接に限定するものではなく、例えば十分な溶接強度が得られる場合には前記アプセットバット溶接が用いられてもよい。前記溶接工程は、公知のフラッシュバット溶接機やアプセットバット溶接機(いずれも図示省略)などを用いて行われ得る。
【0012】
前記削り加工工程は、前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみを削り取る工程である。既述のように、前記突き合わせ抵抗溶接によって前記両端面の前記接合部には膨らみが生じ、この膨らみは前記棒鋼の外径の1.5〜1.8倍程度の大きさを有している。そして、前記膨らみが例えば主筋2に干渉することによって鉄筋の組立性を低下させたり、前記膨らみによってコンクリートのかぶり厚さが不足したりするおそれがある。このような課題に対して、前記膨らみをなくすことも考えられるが、前記膨らみを完全に削り取るようにすると、前記接合部の溶接強度に影響を与える可能性があるので好ましくない。そこで、本実施形態における前記削り加工工程では、前記膨らみのすべてを削り取るのではなく、前記膨らみをその一部を残すように削り取ることにより、前記接合部の溶接強度への影響を抑制しつつ、前記課題の少なくとも一つを改善するようにしている。以下、前記削り加工工程について詳細に説明する。
【0013】
図2は、前記削り加工工程において用いられる削り加工装置3の一例を示している。この削り加工装置3は、前記溶接工程において棒鋼Sの前記両端面の前記接合部に生じた膨らみSaを押し抜きによって削り取るように構成されている。
図2に示されるように、削り加工装置3は、クランプユニット4と、押し抜きユニット5と、制御ユニット6と、を含む。
【0014】
クランプユニット4は、前記溶接工程を経た棒鋼Sをクランプするものであり、フロアF上に固定設置されている。クランプユニット4は、第1油圧シリンダ41と、第1油圧シリンダ41のロッド41aの先端部に取り付けられたクランプ部材保持部42と、クランプ部材保持部42に保持された上側クランプ部材43と、上側クランプ部材43の下方の台座44上に固定された下側クランプ部材45と、を有する。上側クランプ部材43と下側クランプ部材45とは、互いに対向して配置されている。
【0015】
そして、クランプユニット4は、前記溶接工程を経た棒鋼Sが下側クランプ部材45上に載置された後、第1油圧シリンダ41の作動によって上側クランプ部材43を下側クランプ部材45に向かって移動させ、上側クランプ部材43と下側クランプ部材45とで棒鋼Sを挟み込むことによって棒鋼Sをクランプする。なお、本実施形態において、クランプユニット4は、棒鋼Sの前記接合部の膨らみSaよりも軸方向の一方側(
図2では左側)の部位をクランプする。
【0016】
押し抜きユニット5は、クランプユニット4によってクランプされた棒鋼Sの前記接合部の膨らみSaを、二分割構造の押し抜きせん断用の工具によって削り取るものであり、フロアF上にクランプユニット4に隣接して設けられたレールR上に移動可能に設置されている。押し抜きユニット5は、クランプユニット4とは反対側の所定部位が連結部材7A、7Bを介して移動用油圧シリンダ8のロッド8aに連結されており、移動用油圧シリンダ8の作動によってクランプユニット4に近づく方向とクランプユニット4から離れる方向とに移動可能に構成されている。
【0017】
押し抜きユニット5は、第2油圧シリンダ51と、第2油圧シリンダ51のロッド51aの先端部に取り付けられた工具保持部52と、工具保持部52に保持された上側押し抜き工具53と、上側押し抜き工具53の下方の台座54上に固定された下側押し抜き工具55と、を有する。上側押し抜き工具53と下側押し抜き工具55とは、クランプユニット4における上側クランプ部材43と下側クランプ部材45と同様、互いに対向して配置されている。
【0018】
そして、押し抜きユニット5は、前記溶接工程を経た棒鋼Sが下側押し抜き工具55上に載置された後、第2油圧シリンダ51の作動によって上側押し抜き工具53を下側押し抜き工具55に向かって移動させて、棒鋼Sを挟んで上側押し抜き工具53と下側押し抜き工具55とを合わせることによって棒鋼Sに上側押し抜き工具53及び下側押し抜き工具55を装着する。なお、本実施形態において、押し抜きユニット5は、棒鋼Sの前記接合部の膨らみSaよりも前記軸方向の他方側(
図2では右側)の部位に上側押し抜き工具53及び下側押し抜き工具55を装着する。その後、押し抜きユニット5は、移動用油圧シリンダ8の作動によってクランプユニット4に近づく方向に移動することで、棒鋼Sの前記接合部の膨らみSaを削り取る。
【0019】
図3は、上側押し抜き工具53の構成を示す図である。
図3(A)は、上側押し抜き工具53の正面図であり、
図3(B)は、上側押し抜き工具53の平面図であり、
図3(C)は、上側押し抜き工具53の左側面図であり、
図3(D)は、上側押し抜き工具53の底面図である。
【0020】
図3に示されるように、上側押し抜き工具53は、工具保持部52に保持されるベース部531と、ベース部531の下面に着脱可能に取り付けられた工具本体532と、を有する。工具本体532の下面には、左右方向に延びる一対の平坦面532a、532aが設けられており、この一対の平坦面532a、532aの間に半円筒部532bが陥凹形成されている。一対の平坦面532a、532aは、後述する下側押し抜き工具55の一対の平坦面552a、552aとの合わせ面を構成し、半円筒部532bは、棒鋼Sを受け入れる棒鋼受入れ部を構成する。また、工具本体532は、ベース部531の一方の側面(クランプユニット4側に位置する側面であり、
図3(A)における左側面)から突出する突出部532cを有している。そして、半円筒部532bの一端部となる突出部532cの先端には、半円筒部532bと同じ内径を有した半円状の押し抜き刃532dが形成されている。この押し抜き刃532dは、平面視において、正面側が背面側に比べて突出するように傾斜して形成されている(
図3(B)参照)。
【0021】
図4は、下側押し抜き工具55の構成を示す図である。
図4(A)は、下側押し抜き工具55の正面図であり、
図4(B)は、下側押し抜き工具55の平面図であり、
図4(C)は、下側押し抜き工具55の左側面図であり、
図4(D)は、下側押し抜き工具55の底面図である。
【0022】
図4に示されるように、下側押し抜き工具55は、上側押し抜き工具53とほぼ同様の構成を有しており、台座54に固定されるベース部551と、ベース部551の上面に着脱可能に取り付けられた工具本体552と、を有する。工具本体552の上面には、左右方向に延びる一対の平坦面552a、552aが設けられ、この一対の平坦面552a、552aの間に半円筒部552bが陥凹形成されている。一対の平坦面552a、552aは、上側押し抜き工具53の一対の平坦面532a、532aとの合わせ面を構成し、半円筒部552bは、棒鋼Sを受け入れる棒鋼受入れ部を構成する。また、工具本体552は、ベース部551の一方の側面(クランプユニット4側に位置する側面であり、
図4(A)における左側面)から突出する突出部552cを有している。そして、半円筒部552bの一端部となる突出部552cの先端には、半円筒部552bと同じ内径を有した半円状の押し抜き刃552dが形成されている。但し、下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dは、平面視において、上側押し抜き工具532の押し抜き刃532dとは逆向きに傾斜して、すなわち、背面側が正面側に比べて突出するように傾斜して形成されている(
図4(B)参照)。
【0023】
ここで、本実施形態において、上側押し抜き工具53の半円筒部532b及び下側押し抜き工具55の半円筒部552bの内径、すなわち、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532d及び下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dの内径は、棒鋼Sの外径よりも僅かに大きく、具体的には、棒鋼Sの外径の1.1〜1.3倍となっている。このように押し抜き刃532d、552dの内径を棒鋼Sの外径よりも僅かに大きくするのは、膨らみSaを削り取ることによって膨らみSaに起因する不具合を抑制すると共に、膨らみSaのすべてを削り取るのではなく、膨らみSaを僅かに残す(薄く残す)ことによって前記接合部の溶接強度の低下を防止するためである。
【0024】
図5は、上側押し抜き工具53と下側押し抜き工具55とが組み合わされた状態、すなわち、押し抜きユニット5によって前記溶接工程を経た棒鋼S(想像線で示す)に装着された状態を示している。
図5(A)は、正面図であり、
図5(B)は、平面図であり、
図5(C)は、左側面図である。
【0025】
図5に示されるように、棒鋼Sに上側押し抜き工具53及び下側押し抜き工具55が装着されると、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532d及び下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dは、棒鋼Sの外周面を囲むように配置される。また、平面視において、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532dと下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dとは、逆向き(互い違い)に傾斜している。すなわち、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532dは、棒鋼Sの軸線Xに直交する方向における一方の端部が他方の端部よりも突出するように傾斜し、下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dは、棒鋼Sの前記軸線Xに直交する方向における前記他方の端部が前記一方の端部よりも突出するように傾斜している(
図5(B)参照)。
【0026】
図2に戻って、制御ユニット6は、削り加工装置3の全体動作を制御するものであり、フロアF上に設置されている。また、制御ユニット6は、図示省略の信号線等を介してクランプユニット4、押し抜きユニット5及び移動用油圧シリンダ8に接続されている。そして、制御ユニット6は、オペレータによる入力部(図示省略)への操作に基づいて、クランプユニット4の第1油圧シリンダ41、押し抜きユニット5の第2油圧シリンダ51及び移動用油圧シリンダ8の作動を制御する。
【0027】
次に、以上のような構成を有した削り加工装置3の動作を説明する。まず、前記オペレータは、削り加工装置3を作動させる前に、すなわち、削り加工装置3が待機状態(
図2の状態)にあるときに、前記曲げ加工工程及び前記溶接工程を経た棒鋼Sを、クランプユニット4の下側クランプ部材45上及び押し抜きユニット5の下側押し抜き工具55上に載置する。このとき、棒鋼Sは、前記接合部の膨らみSaよりも前記軸方向の一方側の部位が下側クランプ部材45上に配置され、前記接合部の膨らみSaよりも前記軸方向の他方側の部位が下側押し抜き工具55上に配置される。
【0028】
次いで、前記オペレータは、前記入力部を介して第1油圧シリンダ41及び第2油圧シリンダ51の作動指令を入力する。すると、制御ユニット6は、クランプユニット4に制御信号を出力し、クランプユニット4は、第1油圧シリンダ41を作動させて上側クランプ部材43と下側クランプ部材45とで棒鋼Sを挟み込んでクランプする。また、制御ユニット6は、押し抜きユニット5に制御信号を出力し、押し抜きユニット5は、第2油圧シリンダ51を作動させて上側押し抜き工具53と下側押し抜き工具55とを合わせ、これにより、上側押し抜き工具53及び下側押し抜き工具55を棒鋼Sに装着する。
【0029】
次いで、前記オペレータは、前記入力部を介して移動用油圧シリンダ8の作動指令を入力する。すると、制御ユニット6は、移動用油圧シリンダ8に制御信号を出力し、移動用油圧シリンダ8を作動させる。これにより、押し抜きユニット5がクランプユニット4に近づく方向に移動する。この押し抜きユニット5の移動により、棒鋼Sに装着された上側押し抜き工具53及び下側押し抜き工具55が棒鋼Sに沿ってスライド移動し、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532d及び下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dが前記接合部の膨らみSaを削り取る。ここで、上述のように、押し抜き刃532d、552dは、棒鋼Sの外周面を囲むように配置されており、また、押し抜き刃532d、552dの内径は、棒鋼Sの外径の1.1〜1.3倍となっている。このため、押し抜き刃532d、552dは、前記接合部の膨らみSaのすべてを削り取るのではなく、その一部を残すように前記接合部の膨らみSaを削り取る。具体的には、押し抜き刃532d、552dは、前記接合部の膨らみSaを棒鋼Sの周方向の全体にわたり所定量(ここでは、棒鋼Sの外径の0.2〜0.7倍に相当する量)削り取る。これにより、
図6に示されるように、膨らみSaの破線で示される部位が削り取られ、前記接合部には、結果的に、棒鋼Sの外径dの1.1〜1.3倍の外径Dを有した膨らみが残ることになる。
【0030】
また、本実施形態において、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532dは、棒鋼Sの軸線Xに直交する方向における一方の端部が他方の端部よりも突出するように傾斜し、下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dは、棒鋼Sの軸線Xに直交する方向における前記他方の端部が前記一方の端部よりも突出するように傾斜している。このため、押し抜き刃532d,552dによって削り取られた前記接合部の膨らみSaの部位が、削り片として棒鋼Sから容易かつ速やかに分離される。
【0031】
そして、押し抜き刃532d、552dが前記接合部の膨らみSaを削り取った後、削り加工装置3は、前記待機状態(
図2)に戻る。すなわち、押し抜きユニット5は、移動用油圧シリンダ8によってクランプユニット4から離れる方向に移動して元の位置に戻ると共に、第2油圧シリンダ51によって上側押し抜き工具53を下側押し抜き工具55から離れる方向に移動させて元の位置に戻す(すなわち、装着された上側押し抜き工具53及び下側押し抜き工具55が棒鋼Sから取り外される)。また、クランプユニット4は、第1油圧シリンダ41によって上側クランプ部材43を下側クランプ部材45から離れる方向に移動させて元の位置に戻す(すなわち、棒鋼Sのクランプが解除される)。
【0032】
以上説明したように、本実施形態において、せん断補強筋1は、あらかじめ所定の長さに切断された棒鋼(異形棒鋼を含む)Sを環状に曲げ加工する工程(曲げ加工工程)、前記曲げ加工工程で環状に曲げ加工された棒鋼Sの両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する工程(溶接工程)、及び、前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみSaを削り取る工程(削り加工工程)を経て製造される。ここで、前記接合部の膨らみSaを削り取る工程では、前記接合部の膨らみSaのすべてを削り取るのではなく、その一部を残すように膨らみSaを削り取る。具体的には、本実施形態において、前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみの外径、換言すれば、せん断補強筋1における部分的な膨らみの外径は、棒鋼Saの外径の1.1〜1.3倍となる。このため、前記接合部の膨らみSaに起因する不具合が抑制されると共に、前記接合部の膨らみSaを削り取ることによる前記接合部の溶接強度への影響も抑制される。
【0033】
なお、上述の実施形態では、前記削り加工工程において、前記接合部の膨らみSaを棒鋼Sの周方向の全体にわたって所定量削り取り、前記周方向の全体にわたって膨らみSaの一部を均一に薄く残すようにしている。しかし、これに限られるものではない。前記接合部の膨らみSaの削り取り量が前記周方向において異なる、すなわち、前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみの大きさが前記周方向において異なるようにしてもよい。例えば、上側押し抜き工具53の押し抜き刃532d及び下側押し抜き工具55の押し抜き刃552dを、棒鋼Sの軸線Xに対して偏心させて形成し、膨らみSaの棒鋼Sの軸線Xに直交する方向の一方側を他方側に比べてより多く削り取るようにしてもよい。好ましくは、前記接合部の膨らみSaのうち、環状に曲げ加工された棒鋼Sの外側に位置する部位及び/又は内側に位置する部位を、それ以外の部位よりも多く削り取るようにする。前記外側に位置する部位を多く削り取ることによってコンクリートのかぶり厚さが不足してしまうことが抑制され、前記内側に位置する部位を多く削り取ることによって主筋2との干渉が抑制されるからである。
【0034】
また、上述の実施形態では、前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみが円形断面を有しており、その外径が棒鋼Saの外径の1.1〜1.3倍となっている。しかし、前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみは、必ずしも円形断面を有する必要はなく、前記削り取る工程を経た後に前記接合部に残る膨らみの棒鋼Sの軸線Xに直交する方向の最大寸法が、棒鋼Saの外径の1.1〜1.3倍となっていればよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、前記接合部の膨らみSaを棒鋼Sの周方向の全体にわたって所定量削り取っているが、前記接合部の膨らみSaの一部をそのまま残すようにしてもよい。例えば、
図7(A)〜(C)に示されるように、前記接合部の膨らみSaのうち、環状に曲げ加工された棒鋼Sの外側に位置する部位及び/又は内側に位置する部位を削り取る一方、それ以外の部位についてはそのまま残すようにする。なお、この場合においても、前記外側に位置する部位及び/又は前記内側に位置する部位のすべてが削り取られている必要はなく、前記外側に位置する部位及び/又は前記内側に位置する部位の大部分が削り取られていればよい。
【0036】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…溶接閉鎖型せん断補強筋
2…主筋
3…削り加工装置
4…クランプユニット
5…押し抜きユニット
6…制御ユニット
8…移動用油圧シリンダ
41…第1油圧シリンダ
43…上側クランプ部材
45…下側クランプ部材
51…第2油圧シリンダ
53…上側押し抜き工具(第1押し抜き工具)
55…下側押し抜き工具(第2押し抜き工具)
532d,552d…押し抜き刃
【要約】
【課題】溶接閉鎖型せん断補強筋において、突き合わせ抵抗溶接によって生じる接合部の膨らみに起因する不具合の少なくとも一つを抑制する。
【解決手段】溶接閉鎖型せん断補強筋1は、所定の長さの棒鋼を環状に曲げ加工する曲げ加工工程、環状に曲げ加工された前記棒鋼の両端面を突き合わせ抵抗溶接によって接合する溶接工程、及び、前記突き合わせ抵抗溶接によって生じた前記両端面の接合部の膨らみをその一部を残すように削り取る削り加工工程を経て製造される。
【選択図】
図1