(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039834
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】有機物の燃料化及び堆肥化装置
(51)【国際特許分類】
C05F 17/02 20060101AFI20161128BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20161128BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20161128BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20161128BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20161128BHJP
C10L 5/46 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
C05F17/02
B09B3/00 DZAB
C02F11/04 Z
B01J19/08 C
B09B3/00 A
B09B3/00 304Z
C02F11/06 A
C10L5/46
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-10458(P2016-10458)
(22)【出願日】2016年1月22日
【審査請求日】2016年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512051859
【氏名又は名称】愛和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久美
【審査官】
柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−089276(JP,A)
【文献】
特開2002−096046(JP,A)
【文献】
特開2003−236590(JP,A)
【文献】
特開2014−176785(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3150628(JP,U)
【文献】
特開2011−230082(JP,A)
【文献】
特開2001−310113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F 3/00−17/02
B09B 3/00
B01J 19/00−19/08
C01B 13/00−13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵槽の長手方向に沿って移動体を往復動可能に配置し、この移動体に発酵槽内に投入した被処理物を撹拌する撹拌装置を設け、発酵槽の床面から活性酸素を含む空気を被処理物中に送り込むとともに前記撹拌装置の羽根の回転によって被処理物を徐々に発酵槽の一端の取出し部に送るようにした有機物の燃料化及び堆肥化装置において、前記床面には幅方向にエアレーション用の溝部が形成され、この溝部には活性酸素を含む空気の噴出口が下向きに形成された配管が配置され、また前記溝部内は活性酸素によって分解されにくい材料からなる小片が充填され、この小片間に空気が通過できる隙間が形成され、前記配管は活性酸素発生装置の下流端に接続され、この活性酸素装置の上流端は圧気源に接続される空気導入口とされ、この空気導入口の下流側に電子発生装置が配置され、この電子発生装置の下流側に2価の鉄イオンまたは1価の銅イオンを含む水溶液を霧化して供給する霧化装置を配置し、この霧化装置に導入する空気は、前記電子発生装置の下流側から取り入れることを特徴とする有機物の燃料化及び堆肥化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜屑や木屑などの有機物を活性酸素を利用して分解し、燃料や堆肥にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミなどを好気性分解発酵菌を用いて分解し、コンポスト(堆肥)に変化させる装置として特許文献1に開示される装置が知られている。
この装置は箱型容器内に好気性分解発酵菌からなるバイオ菌床槽を設け、このバイオ菌床槽に上方から生ごみを投入するとともに、箱型容器内に配置した撹拌羽を回転させることで発酵を促進する構造になっている。
【0003】
上記の発酵処理装置は処理対象が野菜屑などであれば、24時間程度で分解を完了させることができるが、もみ殻や木屑などのセルロースの含有量が多いものは処理できず、且つ好気性分解発酵菌の温度管理も面倒である。
【0004】
そこで、特許文献2には活性酸素を利用した有機物(野菜屑や木屑など)を低温(20〜60℃)で加水分解する装置が提案されている。
この装置は野菜屑や木屑などを投入するドラム状容器内に撹拌羽を設けるとともに、容器の底部に多孔管を配置し、容器外に設置した電子化装置によって発生した活性酸素を含む空気を前記多孔管から容器内に噴出させ、容器内の野菜屑や木屑などを加水分解する構造になっている。
【0005】
上記の電子化装置の構造は特許文献3に開示されている。即ち、電子化装置は、高電圧を流した放電針から電子を発生させる放電管の先端に電磁コイルを巻き付け、その中心に空気を流し込むことで空気中の酸素分子を励起させ、一重項酸素などの活性酸素種を生成するものである。
【0006】
また、ヒドロキシラジカルによって脱臭を行う技術として特許文献4が開示されている。この特許文献4に開示される装置は水の電解によって、ヒドロキシラジカルまたは次亜塩素酸を含む水を生成し、この水を放電電極で霧化させる構成になっている。
【0007】
更に特許文献5には、過酸化水素(H
2O
2)からヒドロキシラジカル(HO・)を生成するに際して、2価鉄イオンを触媒とするフェントン反応を利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−155090号公報
【特許文献2】実用新案登録第3150628号公報
【特許文献3】実用新案登録第3133388号公報
【特許文献4】特開2012−65979号公報
【特許文献5】特開2008−194662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された発酵処理装置は処理対象が野菜屑などであれば、24時間程度で分解を完了させることができるが、もみ殻や木屑などのセルロースの含有量が多いものは処理できず、且つ好気性分解発酵菌の温度管理も面倒である。
【0010】
特許文献2〜5に開示されるように、ヒドロキシラジカル(HO・)によって有機物中の炭素原子と水素原子間の結合(C−H)を切断することで有機物を分解することで、今まで分解しにくかった、紙、木屑、汚泥なども短時間のうちに分解することができる。
【0011】
上記のように、紙、木屑、汚泥なども短時間のうちに分解するには、生成されたヒドロキシラジカル(HO・)などの活性酸素を処理対象物中に均一に供給することが必要である。
【0012】
このためには、処理装置の床から活性酸素を含んだ空気を供給するエアレーションが考えられるが、床にエアレーション用の穴をあけると、処理対象物によって穴が塞がり、メンテナンスが大変になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る有機物の燃料化及び堆肥化装置は、発酵槽の長手方向に沿って移動体を往復動可能に配置し、この移動体に発酵槽内に投入した被処理物を撹拌する撹拌装置を設け、発酵槽の床面から活性酸素を含む空気を被処理物中に送り込むとともに前記撹拌装置の羽根の回転によって被処理物を徐々に発酵槽の一端の取出し部に送るようにしたゴミ処理装置の床面に、幅方向にエアレーション用の溝部を形成し、この溝部には活性酸素を含む空気の噴出口が下向きに形成された配管を配置し、また前記溝部内は活性酸素によって分解されにくい材料からなる小片を充填し、この小片間に空気が通過できる隙間を形成した。
【0014】
前記エアレーションの配管は活性酸素発生装置の下流端に接続され、この活性酸素装置の上流端は圧気源に接続される空気導入口とされ、この空気導入口の下流側に電子発生装置が配置され、この電子発生装置の下流側に2価の鉄イオンまたは1価の銅イオンを含む水溶液を霧化して供給する霧化装置を配置した構成とすることが好ましい。
【0015】
特に、霧化装置に導入する空気は、電子発生装置の下流側から取り入れるようにすることで、スーパーオキシドや過酸化水素を高濃度で含むエアを霧化に利用することができ、効率的に活性酸素を発生させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る有機物の燃料化及び堆肥化装置によれば、エアレーション用の溝部内に配置する配管の空気噴出孔を下向き(斜め下向きを含む)としたことで、目詰まりを起こすことがない。また、前記溝部内にセラミック、ガラス、金属、小石などの活性酸素によって分解されにくい材料からなる小片を充填し、これら小片間に空気の流路を確保したので、常に一定量の活性酸素を含む空気を被処理物中に送り込むことができる。
【0017】
また、前記エアレーション用の溝部内に配置する配管に活性酸素を送り込む活性酸素発生装置では、2価の鉄イオン(または1価の銅イオン)を含む水溶液を霧化した状態で過酸化水素を含む空気中に供給するようにすれば、気液界面においてフェントン反応が進行し、ヒドロキシラジカル(HO・)が生成される。ここで、気液界面においてはバルク中の反応に比べ大幅に速くなり、有機物を分解および脱臭に有効なヒドロキシラジカルを高濃度で混合容器内に送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る有機物の燃料化及び堆肥化装置を実施する装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
有機物の燃料化及び堆肥化装置を実施する装置は長さ30m〜60m、幅8m〜16m、深さ1.5m〜2.5mの発酵槽1を備える。この発酵槽1の長手方向の上縁にはレール2が設けられ、レール2,2間に枠状をなす第1の移動体3が架け渡されている。この第1の移動体3は図示しないモータにより発酵槽1の長手方向に沿って往復動する。
【0020】
前記第1の移動体3には幅方向のレール4が設けられ、レール4,4間に第2の移動体5が架け渡されている。この第2の移動体5は図示しないモータにより発酵槽1の幅方向に沿って往復動する。
【0021】
図示例にあっては、第2の移動体5の幅を発酵槽1の幅の約半分とし、
図1において、左側半分に被処理物を投入し右側半分には被処理物を投入しないような処理方法も可能とすることで、被処理物の量に応じた処理方法を選択できるようにしている。
尚、左側及び右側の両方に被処理物を投入した場合には、片側づつ処理することになる。
【0022】
第2の移動体5には撹拌装置6が設けられている。この撹拌装置6は昇降動可能とされた一対の支持フレーム7,7間に撹拌羽根8を回転自在に支持している。撹拌羽根8は先端部が手の平状になっており、例えば
図2において右側(前方)に第1の移動体3が進む際に時計方向に回転することで、被処理物を左側(後方)に送り出す。
【0023】
第1の移動体3の前方への移動速度は数m/日とし、発酵槽1の前端に到達したら、撹拌装置6を上方に移動して直ちに発酵槽1の後端まで戻り、再度撹拌装置6を下げ、前記と同じ動作を繰り返す。この動作を繰り返す間に、発酵槽1内に添加した好気性バクテリアによって生ごみなどの被処理物は発酵・分解される。
【0024】
図3に示すように、前記発酵槽1の床面9には幅方向にエアレーション用の溝部10が形成され、この溝部10には活性酸素を含む空気の供給管11が配置され、この供給管11には空気の噴出口12が下向き(斜め下向き)に形成されている。
【0025】
また、前記溝部10内は活性酸素によって分解されにくい材料、例えばセラミック、ガラス、金属、木、小石などからなる小片13が充填され、この小片13間に空気が通過できる隙間14が形成されている。
【0026】
前記供給管11には活性酸素発生装置15からオゾン(O
3)やヒドロキシラジカル(HO・)などの活性酸素を含んだ空気が送り込まれる。
【0027】
図4に示すように、前記活性酸素発生装置15の上流端には配管16を介して圧気源17から空気が送り込まれ、活性酸素発生装置15内には上流側から順に、電子源18及び噴霧装置19を配置している。尚、電子源18と噴霧装置19との間に筒状の誘電コイルを設け、更に電子を励起してもよい。
【0028】
電子源18は透明真空管20内にカソード(陰極:エミッタ)21とアノード(陽極)22を設けた電界放出型であり、カソード21としてはカーボンナノチューブなどからなる冷陰極を示している。またアノード22としてはリング状や格子状のものを用いる。更にカソード21とアノード22間に集束電極や引出し電極を配置するようにしてもよい。
図示例では冷陰極型電子源を示したが、熱陰極型電子源を用いることも可能である。
【0029】
噴霧装置19は先端が絞られた筒状外側ケース23内にノズル24を同軸状に配置し、ノズル24には塩化鉄(II)水溶液が供給され、外側ケース23内にはポンプを備えた配管25を介して電子源18よりも下流側の空気を送り込むようにしている。
【0030】
以上において、電子源18のカソード21とアノード22間に直流電圧を印加すると、カソード21からアノード22に向かって電子eが放出され、放出された電子eが空気中の酸素分子の外郭電子軌道に入り込み、スーパーオキシドアニオン(・O
2-)が生成される。
【0031】
スーパーオキシドアニオン(・O
2-)と空気中の水素イオンとが反応して過酸化水素(H
2O
2)が生成される。また、オゾン(O
3)も生成される。
【0032】
過酸化水素(H
2O
2)やオゾン(O
3)を含む空気が噴霧装置19まで送られると、噴霧装置19から供給されるFe
2+によってフェントン反応が進行し、ヒドロキシラジカル(HO・)が生成される。また酸化されたFe
3+はH
2O
2と反応してFe
2+に戻り、このとき活性種の1つであるヒドロぺルオキシドラジカル(OOH・)が生じる。
H
2O
2+Fe
2+→HO・+Fe
3+
Fe
3++H
2O
2→Fe
2++OOH・+H
+
【0033】
上記反応によって生じたヒドロキシラジカル(HO・)は、オゾン(O
3)よりも酸化力が強く、木屑なども短時間のうちに分解し、且つ生ゴミ、下水汚泥などが放つ異臭に対する脱臭効果にも優れる。
【0034】
更に、噴霧装置19からは塩化鉄(II)水溶液が霧状になって供給されるため、フェントン反応は気液界面で進行する。気液界面での反応速度はバルク中に比較して1000倍とも言われており、極めて短時間のうちにフェントン反応が起こる。
【0035】
特に、噴霧装置19に供給される空気は、電子源18の下流側のスーパーオキシドアニオン(・O
2-)、過酸化水素(H
2O
2)、オゾン(O
3)を含む空気を用いているため、より効果的にフェントン反応が進む。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明による有機物の燃料化及び堆肥化装置は、野菜等の生ごみに限らず、木屑や下水汚泥などが含まれる廃棄物も分解でき、バイオ燃料の生産にも利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…発酵槽、2…レール、3…第1の移動体、4…レール、5…第2の移動体、6…撹拌装置、7…支持フレーム、8…撹拌羽根、9…床面、10…溝部、11…供給管、12…空気の噴出口、13…小片、14…隙間、15…活性酸素発生装置、16…配管、17…圧気源、18…電子源、19…噴霧装置、20…真空管、21…カソード、22…アノード、23…外側ケース、24…ノズル、25…配管。
【要約】
【課題】 短時間のうちに木屑やプラスチックなどを含んだゴミでも分解することができる脱臭効果に優れた有機物の燃料化及び堆肥化装置を提供する。
【解決手段】
発酵槽1の床面9には幅方向にエアレーション用の溝部10が形成され、この溝部10には活性酸素を含む空気の供給管11が配置され、この供給管11には空気の噴出口12が下向き(斜め下向き)に形成されている。また、前記溝部10内は活性酸素によって分解されにくい材料、例えばセラミック、ガラス、金属、木、小石などからなる小片13が充填され、この小片13間に空気が通過できる隙間14が形成されている。
【選択図】
図3