特許第6039841号(P6039841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039841
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】緩み止めナット
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/12 20060101AFI20161128BHJP
   F16B 39/18 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F16B39/12 Z
   F16B39/18
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-39980(P2016-39980)
(22)【出願日】2016年3月2日
【審査請求日】2016年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515267633
【氏名又は名称】有限会社藤▲崎▼鋲螺
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 進
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 雅至
(72)【発明者】
【氏名】大森 宏明
(72)【発明者】
【氏名】増田 勲
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−036123(JP,Y2)
【文献】 実公昭10−017570(JP,Y1)
【文献】 実開昭59−150014(JP,U)
【文献】 特開平11−006516(JP,A)
【文献】 特開2008−014402(JP,A)
【文献】 特開2005−180679(JP,A)
【文献】 特開2001−169694(JP,A)
【文献】 実公昭26−006107(JP,Y1)
【文献】 実公昭27−001604(JP,Y1)
【文献】 実公昭48−025954(JP,Y1)
【文献】 中国特許出願公開第103277391(CN,A)
【文献】 特開2011−058632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/12
F16B 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び底面の一方に凹部を備える第1ナット及び前記凹部と対向する面に凸部を備える第2ナットによって構成され、且つ、前記凸部の外周面が前記第2ナットの軸心に対して偏心する緩み止めナットであって、
前記凹部の内周面は、波状であり、
前記凸部の外周面は、少なくとも1つの第1突起が設けられている第1領域と、横断面が円弧状の第2領域とを有し
記第領域は、前記第2ナットの軸心よりも前記凸部の外周面の中心軸に近接する位置に設けられている前記凸部の外周面の一部を含み、
前記第2領域は、前記凸部の外周面の中心軸よりも前記第2ナットの軸心に近接する位置に設けられている前記凸部の外周面の全部を含み、
前記凹部を除く前記第1ナットの上面及び底面の一方は、波状であり、
前記凸部を除く前記第2ナットの前記凹部と対向する面に複数の第2突起が設けられ、
前記複数の第2突起のそれぞれは、前記第2ナットの軸心を基準として、その他の前記複数の第2突起のいずれかが設けられている位置と対称的な位置に設けられ、
前記複数の第2突起のいずれかが波状の前記第1ナットの上面及び底面の一方に存在する複数の窪みのいずれかに嵌合する場合、その他の前記複数の第2突起もその他の前記複数の窪みにそれぞれ嵌合する緩み止めナット。
【請求項2】
記少なくとも一つの第1突起は、前記凸部の外周面のうち前記第2ナットの軸心から最も遠い位置に設けられている突起を含む請求項1に記載の緩み止めナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、緩み止めナットに関する。特に、上面及び底面の一方に凹部を備える第1ナット及び当該凹部と対向する面に凸部を備える第2ナットによって構成され、且つ、当該凹部の内周面が第1ナットの軸心に対して偏心する、又は、当該凸部の外周面が第2ナットの軸心に対して偏心する緩み止めナットに関する。
【背景技術】
【0002】
ナットは、ボルトに螺合されることで部材を締め付けることが可能な部品である。当該部材の締め付けを目的とするナットにおいては、緩みの抑制、すなわち、締め付け時とは逆方向へのナットの回転を抑制することが重要である。
【0003】
緩みを効果的に抑制することが可能なナットとして、ハードロックナットとも呼ばれる一対のナットが知られている(例えば、特許文献1参照)。当該一対のナットの具体的な構造及びその作用、効果は、以下の通りである。
【0004】
特許文献1に示される一対のナット(締付ナツト2及び緩止めナツト3)では、一方のナット(締付ナツト2)が上面に凹部を備え、他方のナット(緩止めナツト3)が底面に凸部を備えている。加えて、当該凹部の内周面及び当該凸部の外周面のいずれか一方が、当該一方のナットの軸心又は当該他方のナットの軸心に対して偏心している。そして、当該凹部と当該凸部が当接するように当該一対のナットをボルトに螺合することで、当該凹部の内周面の一部(当該内周面のうち締付ナツト2の軸心に近い部分)と当該凸部の外周面の一部(当該外周面のうち緩止めナツト3の軸心から遠い部分)が強く接触することになる。これにより、ナットの緩みに対する抵抗となる摩擦力を大きくすることが可能となる。その結果、当該一対のナットにおいては、緩みを抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭50―36123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、特許文献1に記載のナットは、ナットが締め付け時とは逆方向へと回転すること(緩むこと)を抑制することが可能である。しかし、少しでも当該ナットが緩んでしまった場合には、当該ナットの更なる緩みを止めることはできない。端的には、特許文献1に記載のナットでは、緩みに対する抵抗となる静止摩擦力を大きくすることができるものの動摩擦力を大きくすることができない。
【0007】
上述の点に鑑み、本発明の一態様は、緩みを効果的に抑制することが可能なナットを提供することを目的の一とする。具体的には、当該ナットが若干緩んだ場合であっても、更なる緩みを抑制することが可能なナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の緩み止めナットは、内周面が波状の凹部を備えた第1ナットと、外周面に少なくとも1つの突起が設けられている第2ナットとによって構成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様の緩み止めナットにおいては、第1ナットの凹部の内周面が波状である。換言すると、当該凹部の内周面には、複数の窪みが周期的に設けられている。そして、第1ナット及び第2ナットがボルトに螺合される際に、凹部の複数の窪みのいずれかに、凸部に設けられている突起を嵌合させることが可能である。この場合、仮に、当該緩み止めナットに対して瞬間的に強い力が加わり、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだ(締め付け時とは逆方向へと回転した)としても、当該突起を、元々嵌合していた窪みに近接する別の窪みに再度嵌合させることが可能となる。これにより、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだとしても、緩む前と同様の緩みに対する抵抗が維持されることとなり、更なる緩みを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1ナットの一例を示す(A)上面図、(B)側面図及び断面図、並びに(C)底面図。
図2】第2ナットの一例を示す(A)上面図、(B)側面図、及び(C)底面図。
図3】第1ナットの一例を示す(A)上面図、(B)側面図及び断面図、並びに(C)底面図。
図4】第2ナットの一例を示す(A)上面図、(B)側面図、及び(C)底面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.構造例1
図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)は、本発明の一態様の緩み止めナットの一例を示す図である。具体的には、図1(A)〜(C)は、緩み止めナットを構成する第1ナット(上面及び底面の一方に凹部を備えるナット)の一例を示す図であり、また、図2(A)〜(C)は、緩み止めナットを構成する第2ナット(当該凹部と対向する面に凸部を備えるナット)の一例を示す図である。なお、図1(A)は上面図、図1(B)の左側半分は側面図、右半分は断面図、図1(C)は底面図である。また、図2(A)は上面図、図2(B)は側面図、図2(C)は底面図である。
【0012】
(1)第1ナット
図1(A)〜(C)に示される第1ナットは、上面の6つの角が面取りされている正六角柱状の外形を備え、且つ、中心部に貫通孔が設けられている。また、当該貫通孔が設けられている第1ナットの内周面には、ボルトと螺合するためのねじ部11が設けられている。また、第1ナットの底面には、内周面が貫通孔と概略同心円状であり、且つ、その直径が貫通孔の直径よりも大きい凹部12が設けられている。そして、凹部12の内周面は、波状である(図1(C)参照)。換言すると、凹部12の内周面には、複数の窪みが周期的に設けられている。
【0013】
(2)第2ナット
図2(A)〜(C)に示される第2ナットは、底面の6つの角が面取りされている正六角柱状の外形を備え、且つ、中心部に貫通孔が設けられている。また、当該貫通孔が設けられている第2ナットの内周面には、ボルトと螺合するためのねじ部21が設けられている。また、第2ナットの上面には、外周面が第2ナットの軸心から偏心する凸部22(外周面の中心軸が第2ナットの軸心からずれている凸部22)が設けられている(図2(A)参照)。そして、凸部22の外周面には、3つの突起23が設けられている。なお、3つの突起23は、第2ナットの軸心よりも凸部22の外周面の中心軸に近接する位置に設けられ、また、凸部22の外周面のうち第2ナットの軸心から最も遠い位置に設けられている突起を含む。
【0014】
(3)作用・効果
図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される緩み止めナットは、第1ナットの凹部12と第2ナットの凸部22が当接するようにボルトに螺号される。ここで、第2ナットの凸部22の外周面は、第2ナットの軸心に対して偏心している。この場合、第2ナットの凸部22の外周面の一部(当該外周面のうち軸心から遠い部分)を第1ナットの凹部21の内周面に強く接触させることが可能である。これにより、当該緩み止めナットにおいては、緩みに対する抵抗となる摩擦力を大きくすることが可能となる。その結果、当該緩み止めナットにおいては、緩みを抑制することが可能である。
【0015】
さらに、図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される緩み止めナットにおいては、第1ナットの凹部12の内周面が波状であり、且つ、第2ナットの凸部22の外周面に3つの突起23が設けられている。この場合、第1ナットの凹部12の波状部分(複数の窪み)に、凸部22に設けられている3つの突起23を嵌合させることが可能である。これにより、仮に、当該緩み止めナットに対して瞬間的に強い力が加わり、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだ(締め付け時とは逆方向へと回転した)としても、当該3つの突起23を、元々嵌合していた窪みに近接する別の窪みに再度嵌合させることが可能となる。その結果、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだとしても、緩む前と同様の緩みに対する抵抗が維持されることとなり、更なる緩みを防止することが可能である。
【0016】
また、図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される緩み止めナットにおいては、第2ナットの3つの突起23が第2ナットの軸心よりも凸部22の外周面の中心軸に近接する位置に設けられている。また、当該緩み止めナットにおいては、第2ナットの3つの突起23が凸部22の外周面のうち第2ナットの軸心から最も遠い位置に設けられている突起を含む。これらの場合、当該3つの突起23を第1ナットの凹部12の内周面に強く接触させることが可能である。これにより、当該緩み止めナットにおいては、緩みに対する抵抗となる摩擦力を大きくすることが可能となる。その結果、当該緩み止めナットにおいては、緩みを抑制することが可能である。
【0017】
2.変形例
図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される緩み止めナットは、本発明の一態様にすぎず、当該緩み止めナットの構成を変更することも可能である。
【0018】
例えば、図1(A)〜(C)に示される第1ナットにおいては、凹部12の内周面が貫通孔と概略同心円状である構成について示したが、当該内周面の中心軸を貫通孔の中心軸(第1ナットの軸心)に対してずらすことも可能である。この場合、当該当該内周面を第2ナットの凸部22の外周面に強く接触させることが可能である。これにより、上述した緩み止めナットにおいては、緩みに対する抵抗となる摩擦力をさらに大きくすることが可能となる。その結果、当該緩み止めナットにおいては、さらに緩みを抑制することが可能である。他方、このような変更を行わない場合には、第1ナットを容易に製造することが可能である。なお、このような変更を行う場合には、図2(A)〜(C)に示される第2ナットの軸心と、凸部22の外周面の中心軸とが一致する(偏心しない)ようにしてもよい。
【0019】
また、図2(A)〜(C)に示される第2ナットにおいては、凸部22の外周面に3つの突起23が設けられる構成について示したが、突起23の個数は3つでなくてもよく、少なくとも1つであればよい。
【0020】
また、図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される第1ナット及び第2ナットにおいては、第1ナットの底面に凹部12が設けられ、且つ、第2ナットの上面に凸部22が設けられる構成について示したが、第1ナットの上面に凹部が設けられ、且つ第2ナットの底面に凸部が設けられる構成とすることも可能である。
【0021】
また、図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される第1ナット及び第2ナットに対して構成を追加することも可能である。例えば、第1ナットを図3(A)〜(C)に示されるように変更し、且つ、第2ナットを図4(A)〜(C)に示されるように変更することも可能である。なお、図3(A)は上面図、図3(B)の左側半分は側面図、右半分は断面図、図3(C)は底面図である。また、図4(A)は上面図、図4(B)は側面図、図4(C)は底面図である。
【0022】
具体的には、図3(A)〜(C)に示される第1ナットにおいては、凹部12を除く第1ナットの底面31が波状であり(図3(A)、(B)参照)、且つ、凸部22を除く第2ナットの上面に4つの突起41が設けられている(図4(A)、(B)参照)。この場合、第1ナットの底面31の波状部分(複数の窪み)に、第2ナットの上面に設けられている4つの突起41を嵌合させることが可能である。これにより、仮に、当該緩み止めナットに対して瞬間的に強い力が加わり、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだ(締め付け時とは逆方向へと回転した)としても、当該4つの突起41を、元々嵌合していた窪みに近接する別の窪みに再度嵌合させることが可能となる。その結果、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだとしても、緩む前と同様の緩みに対する抵抗が維持されることとなり、更なる緩みを防止することが可能である。
【0023】
なお、図4(A)、(B)に示される第2ナットにおいては、第2ナットの上面に4つの突起41が設けられる構成について示したが、突起41の個数は4つでなくてもよく、少なくとも1つであればよい。ただし、突起41によって緩みを防止するためには、図4(A)に示されるように、第2ナットの軸心を含む断面を基準として対称的に設けられていることが好ましい。
【0024】
以上の通り、図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される緩み止めナットの構成は、適宜変更され得る。また、上述した複数の変形例の内容を図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)に示される緩み止めナットに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
11 ねじ部
12 凹部
21 ねじ部
22 凸部
23 突起
31 底面
41 突起
【要約】
【課題】
ナットが若干緩んだ場合であっても、更なる緩みを抑制することが可能なナットを提供する。
【解決手段】
内周面が波状の凹部を備えた第1ナットと、外周面に少なくとも1つの突起が設けられている第2ナットとによって緩み止めナットを構成する。第1ナットの凹部の内周面が波状であることから、凹部の内周面には、複数の窪みが周期的に設けられていることになる。そして、第1ナット及び第2ナットがボルトに螺合される際に、凹部の複数の窪みのいずれかに、凸部に設けられている突起を嵌合させることが可能である。この場合、仮に、当該緩み止めナットに対して瞬間的に強い力が加わり、第1ナット及び第2ナットが若干緩んだとしても、当該突起を、元々嵌合していた窪みに近接する別の窪みに再度嵌合させることが可能となる。これにより、更なる緩みを防止することが可能である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4