(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図6は本発明の一実施形態を示し、
図1はインフレーションフィルム製造装置の概略構成図、
図2は本発明の一実施形態を示すインフレーションフィルム成形用ダイの概略断面説明図、
図3は
図2のA−A断面図、
図4は
図2のB−B断面図、
図5は
図2のC−C円周展開断面図、
図6は
図2のD−D断面図である。尚、
図2では理解を容易とするために溶融合成樹脂の供給口及び各分岐通路を1つの断面図に示しているが、
図2はあくまで説明図であり、本実施形態の各分岐通路の配置状態ではこれらは同一断面に現れない。
【0010】
図1に示すように、インフレーションフィルム製造装置100では、第1押出機11及び第2押出機12よりダイ2に供給された第1溶融合成樹脂31(
図2参照)及び第2溶融合成樹脂32(
図2参照)が、環状の吐出口2a(
図2参照)からチューブ状に押し出される。押し出された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、図示しないブロワーから供給されエアーリング4から吹き出される冷却風により冷却・固化されて合成樹脂チューブ33となる。合成樹脂チューブ33は、ピンチロール5で引取られ、巻取機6に巻き取られる。本実施形態のダイ2は、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の分岐数が多くなっても、外径を大きくすることなく、重量の増加を抑制することができるよう構成されている。
【0011】
図2に示すように、ダイ2は、内部に冷却用通路2bが形成され、上下方向を中心軸とした概略円筒状に形成される。ダイ2は、下端側に、軸方向に積層された第1プレート21、第2プレート22及び第3プレート23を有する。第1プレート21、第2プレート22及び第3プレート23は、下端側からこの順に配置される。また、ダイ2は、第3プレート23の上側に、径方向に間隔をおいて配置される第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26を有する。第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26は、内側からこの順に配置される。さらに、ダイ2は、第1マンドレル24の上側に配置されるマンドレル先端27と、外筒26の上側に配置される調整リング28と、を有する。マンドレル先端27と調整リング28は径方向に間隔をおいて配置され、これらの間隙の上端が前述の吐出口2aをなしている。
【0012】
第1プレート21は板状に形成され、外周面に形成される第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の第1供給口70及び第2供給口80と、第1供給口70及び第2供給口80と連通し上面に形成される第1流出口71及び第2流出口81と、第1供給口70及び第2供給口80と第1流出口71及び第2流出口81とを接続する第1内部通路21a及び第2内部通路21bと、を有する。第1内部通路21a及び第2内部通路21bは、第1供給口70及び第2供給口80から所定区間だけ径方向内側へ延びた後、第1流出口71及び第2流出口81へ向かって上方へ曲がる。本実施形態においては、第1供給口70と第2供給口80は、軸中心について反対側に形成される。また、第1流出口71及び第2流出口81は、径方向について、第1流出口71が外側に形成され、第2流出口81が内側に形成される。
【0013】
第1プレート21の上面には、板状の第2プレート22が重ねられる。
図3に示すように、第1プレート21と第2プレート22の合わせ面には、第1流出口71及び第2流出口81と連続的に形成され、周方向について互いに反対方向へ延びる各一対の第1分岐通路72及び第2分岐通路82が形成される。これにより、第1流出口71及び第2流出口81から流出された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、周方向に対称的に分流され、各第1分岐通路72内及び各第2分岐通路82内の流れは対称的となる。尚、各第1分岐通路72及び各第2分岐通路82は、第1プレート21の上面に形成された第1上面溝21c及び第2上面溝21dと、第2プレート22の下面に形成された第1下面溝22a及び第2下面溝22bにより画成される。各第1分岐通路72及び各第2分岐通路82は、それぞれ、第1プレート21の第1流出口71及び第2流出口81から、第2プレート22の各第1流入口73及び各第2流入口83を接続する。
【0014】
第2プレート22は、下面に形成される各2つの第1流入口73及び第2流入口83と、上面に形成される各2つの第3流出口74及び第4流出口84と、各第1流入口73及び各第2流入口83と各第3流出口74及び各第4流出口84とを接続する各2つの第3内部通路22c及び第4内部通路22dと、を有する。
図2に示すように、各第3内部通路22c及び各第4内部通路22dは、それぞれ上下方向に延びる。本実施形態においては、第1流入口73及び第2流入口83は、径方向について、第1流入口73が外側に形成され、第2流入口83が内側に形成される。本実施形態においては、第3流出口74及び第4流出口84は、径方向について、第3流出口74が外側に形成され、第4流出口84が内側に形成される。
【0015】
第2プレート22の上面には、板状の第3プレート23が重ねられる。
図4に示すように、第2プレート22と第3プレート23の合わせ面には、各第3流出口74及び各第4流出口84ごとに、各第3流出口74及び各第4流出口84と連続的に形成され、周方向へ延びる各一対の第3分岐通路75及び第4分岐通路85が形成される。すなわち、各第3分岐通路75及び各第4分岐通路85は、それぞれ2つの第3流出口74及び第4流出口84ごとに2つづつ、すなわち計4つ形成される。これにより、各第3流出口74及び各第4流出口84から流出された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、周方向に対称的に分流され、各第3分岐通路75内及び各第4分岐通路85内の流れは対称的となる。尚、各第3分岐通路75及び各第4分岐通路85は、第2プレート22の上面に形成された第3上面溝22e及び第4上面溝22fと、第3プレート23の下面に形成された第3下面溝23a及び第4下面溝23bにより画成される。各第3分岐通路75及び各第4分岐通路85は、それぞれ、第2プレート22の各第3流出口74及び第4流出口84から、第3プレート23の各第3流入口76及び各第4流入口86を接続する。
【0016】
第3プレート23は、下面に形成される各4つの第3流入口76及び第4流入口86と、上面に形成される各4つの第5流出口77(
図5参照)及び第6流出口(図示せず)と、各第3流入口76及び各第4流入口86と各第5流出口77及び各第6流出口とを接続する第5内部通路23c及び第6内部通路23dと、を有する。
図2に示すように、各第5内部通路23c及び各第6内部通路23dは、それぞれ上下方向に延びる。本実施形態においては、第3流入口76及び第4流入口86は、径方向について、第3流入口76が外側に形成され、第4流入口86が内側に形成される。本実施形態においては、第5流出口77及び第6流出口は、径方向について、第5流出口77が外側に形成され、第6流出口が内側に形成される。各第5流出口77及び各第6流出口は、周方向に等間隔で配置される。
【0017】
本実施形態においては、第1プレート21の第1内部通路21a及び第2内部通路21bの上側が軸方向へ延びる軸方向通路をなし、第1プレート21と第2プレート22の合わせ面に形成される各第1分岐通路72及び各第2分岐通路82が軸方向通路の押し出し方向端部から分岐する一対の分岐通路をなし、これらが第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の第1の分岐部をなしている。また、第2プレート22の第3内部通路22c及び第4内部通路22dが軸方向へ延びる軸方向通路をなし、第2プレート22と第3プレート23の合わせ面に形成される各第3分岐通路75及び各第4分岐通路85が軸方向通路の押し出し方向端部から分岐する一対の分岐通路をなし、これらが第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の第2の分岐部をなしている。第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、各分岐部で2つずつ分岐されていくことから、第1の分岐部と第2の分岐部を軸方向に連続的に設けることにより、最終的に4本に分岐される。尚、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32を8本に分岐する場合は第2プレート22と同様のプレートをもう1枚重ねればよく、16本に分岐する場合はさらにもう1枚重ねればよい。このように、プレートを1枚重ねる毎に第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の分岐数が2倍ずつで増えていくが、プレートの外径は同じなので、ダイ2の重量増加を最小限に抑えることができる。すなわち、同一面内で分岐を繰り返すもののようにダイ2の外径寸法が大きくなり、重量が飛躍的に増大してしまうことはない。
【0018】
本実施形態においては、第1溶融合成樹脂31の第1分岐通路72及び第3分岐通路75は軸中心からの径方向距離が互いに等しく、第2溶融合成樹脂32の第2分岐通路82及び第4分岐通路85は軸中心からの径方向距離が互いに等しい。このように、各溶融合成樹脂31,32ごとに、複数の分岐通路の軸中心からの径方向距離を等しくすることで 図示しない各部材を一体化する取り付けボルトと各溶融合成樹脂31,32の流通路とが互いに干渉しないような設計を簡単容易に行うことができ、又外径も最小限にする事が出来る。ここで、この作用効果は各分岐通路の軸中心からの径方向距離を厳密に等しくせずとも得ることができ、例えば、径方向距離の差が30mm以内、ダイ2の吐出口径に対して10%以内等であれば、実質的に径方向距離が等しいということができる。
【0019】
図2に示すように、第3プレート23の上面は径方向へ延び、第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26の下端と接触する。第3プレート23の上面には位置決め用の第1凹部23e、第2凹部23f及び第3凹部23gが形成され、それぞれ、第1マンドレル24の下端に形成された第1凸部24d、第2マンドレル25の下端に形成された第2凸部25g、外筒26の下端に形成された第3凸部26cを受容する。本実施形態においては、各凹部23e,23f,23g及び各凸部24d,25g,26cが嵌合部をなしている。また、本実施形態においては、各凹部23e,23f,23g及び各凸部24d,25g,26cは、それぞれ周方向に連続的な環状に形成される。尚、各凹部23e,23f,23g及び各凸部24d,25g,26cを周方向に所定の間隔で並べて形成してもよいし、第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26の位置決め機構を他の構成とすることもできる。また、第3プレート23と、第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26の少なくとも1つを一体的に形成することもできる。
【0020】
第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26はそれぞれ円筒状に形成され、第2マンドレル25の第2外周面25bと外筒26の第2内周面26aとで円筒状の第1軸方向通路78が形成され、第1マンドレル24の第1外周面24aと第2マンドレル25の第1内周面25aとで円筒状の第2軸方向通路88が形成される。第2マンドレル25の第2外周面25bと外筒26の第2内周面26aとの距離Lは下端が最も小さく、第1マンドレル24の第1外周面24aと第2マンドレル25の第1内周面25aとの距離は下端が最も小さい。すなわち、第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88の径方向距離は下端が最も小さい。尚、第2マンドレル25の上面25cは、径方向外側へ向かって上方へ傾斜している。第3プレート23の上面は第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88の一端を閉塞するが、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は第3プレート23の各第5流出口77及び各第6流出口を通じて第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88へ流入する。ここで、第1マンドレル24、第2マンドレル25及び外筒26は、第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88とそれら近傍で嵌合部を有していない。
【0021】
図2に示すように、外筒26の第2内周面26aの下端と、第2マンドレル25の第1内周面25aの下端には、第3プレート23の上面に沿って延びる第1端面溝26b及び第2端面溝25dが形成される。第1端面溝26b及び第2端面溝25dにより、第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88の下端側が径方向に拡幅される。
図6に示すように、第1端面溝26b及び第2端面溝25dは、底面視にて、それぞれ、各第5流出口77及び各第6流出口の直上が最も深く形成され、周方向一方側に隣接する各第5流出口77及び各第6流出口へ向かって徐々に浅くなる。
【0022】
一方、
図5に示すように、第2マンドレル25の第2外周面25bと、第1マンドレル24の第1外周面24aには、それぞれ、下端から所定距離だけ上方へ延びる第1上下溝25e及び第2上下溝24bと、第1上下溝25e及び第2上下溝24bの上端から上方へ傾斜しつつ周方向他方側へ螺旋状に延びる第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cが形成される。本実施形態においては、第1上下溝25e及び第2上下溝24bは、各第5流出口77及び各第6流出口の直上に計4つ形成される。また、第1上下溝25e及び第2上下溝24bと連続する第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cも計4つ形成される。各第1上下溝25e及び各第2上下溝24bは、上下にわたって一定の深さで形成される。また、
図5及び
図6に示すように、第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cは、底面視にて、それぞれ、各第1上下溝25e及び各第2上下溝24bの直上が最も深く形成され、周方向他方側へ向かって徐々に浅くなる。
【0023】
図2に示すように、マンドレル先端27は、第2マンドレル25の上面25cとともに連絡通路89を画成する下部傾斜面27aと、調整リング28の第3内周面28aとともに円筒状の最終軸方向通路2cを形成する第3外周面27bと、を有する。連絡通路89は第2軸方向通路88と連続的に形成され、最終軸方向通路2cの下側で連絡通路89と第1軸方向通路78が合流する。そして、最終軸方向通路2cの上端が前述の吐出口2aをなしている。
【0024】
以上のように構成されたダイ2における第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の流れについて説明する。
第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、第1押出機11及び第2押出機12から第1プレート21の第1供給口70及び第2供給口80へ供給される。第1供給口70及び第2供給口80へ供給された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、第1内部通路21a及び第2内部通路21bを、径方向内側へ向かって流れた後に上方向へ流れ、第1プレート21の第1流出口71及び第2流出口81へ到達する。
【0025】
第1プレート21の第1流出口71及び第2流出口81へ到達した第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、それぞれ、一対の第1分岐通路72及び一対の第2分岐通路82に分流される。ここで、各第1分岐通路72及び各第2分岐通路82は、第1流出口71及び第2流出口81から流出する第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の流れ方向について対称的に形成されていることから、各第1分岐通路72内及び各第2分岐通路82内の流れは対称的となる。分流された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、各第1分岐通路72及び各第2分岐通路82を周方向へ流れ、第2プレート22の各2つの第1流出口73及び第2流出口83へ到達する。この後、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、第2プレート22の各第3内部通路22c及び各第4内部通路22dを上方向へ流れ、第2プレート22の各2つの第3流出口74及び第4流出口84へ到達する。
【0026】
第2プレート22の各第3流出口74及び各第4流出口84へ到達した第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、さらにそれぞれ、一対の第3分岐通路75及び一対の第4分岐通路85に分流される。ここでも、各第3分岐通路75及び各第4分岐通路85は、各第3流出口74及び第4流出口84から流出する第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の流れ方向について対称的に形成されていることから、各第3分岐通路75内及び各第4分岐通路85内の流れは対称的となる。分流された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、各第3分岐通路75及び各第4分岐通路85を周方向へ流れ、第3プレート23の各4つの第3流入口76及び第4流入口86へ到達する。この後、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、第3プレート23の各第5内部通路23c及び各第6内部通路23dを上方向へ流れ、第3プレート23の各4つの第5流出口77及び第6流出口へ到達する。各4つの第5流出口77及び第6流出口における第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の流量は、各分岐部で対称的に分岐されてきたため、同一である。
【0027】
第3プレート23の各第5流出口77及び各第6流出口87へ到達した第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、それぞれ第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88へ進入する。第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88へ進入した第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、第1端面溝26b側及び第2端面溝25d側と、第1上下溝25e側及び第2上下溝24b側と、に分流される。
【0028】
図5に示すように、第1端面溝26b側及び第2端面溝25d側に分流された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、さらに、当該溝内を周方向一方へ流れる第1端面溝本流78a及び第2端面溝本流(図示せず)と、当該溝内から外筒26の第2内周面26a側及び第2マンドレル25の第1内周面25a側へ漏れ出す第1端面溝漏洩流78b及び第2端面溝漏洩流(図示せず)と、に分流される。第1端面溝26b及び第2端面溝25dは各第5流出口77及び各第6流出口の直上が最も深く形成されているため、各第5流出口77及び各第6流出口から流出した直後は第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の殆どが第1端面溝本流78a及び第2端面溝本流である。しかし、第1端面溝26b及び第2端面溝25dは周方向一方へ向かって徐々に浅くなることから、隣接する各第5流出口77及び各第6流出口に近づくにつれて第1端面溝漏洩流78b及び第2端面溝漏洩流として徐々に第1端面溝26b及び第2端面溝25dから漏れ出していき、最終的には殆どが第1端面溝漏洩流78b及び第2端面溝漏洩流となる。
【0029】
第1上下溝25e側及び第2上下溝24b側に分流された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、当該溝内を上方へ流れた後、続いて第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cへ進入する。第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cへ進入した第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、当該溝内を周方向他方へ流れる第1螺旋溝本流78c及び第2螺旋溝本流(図示せず)と、当該溝内から第2マンドレル25の第2外周面25b側及び第1マンドレル24の第1外周面24a側へ漏れ出す第1螺旋溝漏洩流78d及び第2螺旋溝漏洩流(図示せず)と、に分流される。第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cは第1上下溝25e側及び第2上下溝24b側が最も深く形成されているため、第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cへ進入した直後は第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の殆どが第1螺旋溝本流78c及び第2螺旋溝本流である。しかし、第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cは周方向他方へ向かって徐々に浅くなることから、上方へ向かうにつれて第1螺旋溝漏洩流78d及び第2螺旋溝漏洩流として徐々に第1螺旋溝25f及び第2螺旋溝24cから漏れ出していき、最終的には全て第1螺旋溝漏洩流78d及び第2螺旋溝漏洩流となる。
【0030】
このように、第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88へ進入した第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、当該通路内で第1端面溝漏洩流78b及び第2端面溝漏洩流と第1螺旋溝漏洩流78d及び第2螺旋溝漏洩流となって均等に分散される。第2軸方向通路88の第2溶融合成樹脂32は連絡通路89を介して、第1軸方向通路78の第1溶融合成樹脂31は直接的に、最終軸方向通路2cへ進入して合流する。最終軸方向通路2cにて円周方向に均等に分散された第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32は、ダイ2の吐出口2aからチューブ状に押し出される。
【0031】
以上のように構成されたダイ2によれば、第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88を形成する第1マンドレル24,第2マンドレル25及び外筒26が互いに嵌合していないので、嵌合部に第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32が滞留することはなく、吐出口2aから押し出される第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32に劣化した成分が混じることはない。また、外筒26の内周面26a及び第2マンドレル25の内周面25aに、第1端面溝26b及び第2端面溝25dを形成したので、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の滞留が比較的生じやすい第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88の流入側における第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の滞留を的確に抑制することができる。第1端面溝26b及び第2端面溝25dの形成は、本実施形態のように第1軸方向通路78及び第2軸方向通路88の流入側が狭くなっている場合に、極めて有効である。
【0032】
また、各端面溝本流78aと各螺旋溝本流78cが周方向について反対側へ向かうようにしたので、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の分散を効果的に行うことができる。さらに、各上下溝24b,25eを介して各螺旋溝24c,25fが形成されているので、各軸方向通路78,88の下端における第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の流れが安定的となる。
【0033】
また、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の分岐部を、軸方向へ延びる各内部通路21a,21b,22c,22dと、径方向に分岐する一対の各分岐通路72,75,82,85と、により構成し、分岐部を軸方向に連続的に設けたので、ダイ2の外径寸法を大きくすることなく第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の分岐を実現することができ、ダイ2の重量が嵩むことはない。また、各分岐通路72,75,82,85が各プレート21,22,23の合わせ面に形成されるようにしたので、各分岐通路72,75,82,85の形成を簡単容易に行うことができる。また、第1溶融合成樹脂31及び第2溶融合成樹脂32の分岐数に応じてプレートの数を変更すればよく、分岐部の設計自由度が向上する。
【0034】
尚、前記実施形態においては、第1軸方向通路78と第2軸方向通路88の2つの軸方向通路が形成されるものを示したが、軸方向通路の数は1つでもよいし、3以上であってもよい。すなわち、前記実施形態においては、円筒状の部材として第1マンドレル24,第2マンドレル25及び外筒26の3つの部材を配置したが、円筒状の部材の数も任意に変更できる。
【0035】
また、前記実施形態においては、各端面溝25d,26bを各軸方向通路78,88の外側の部材の内周面25a,26aに形成したものを示したが、軸方向通路の内側の部材の外周面に形成してもよいし、外側の部材の内周面と内側の部材の外周面の両方に形成してもよい。
【0036】
一方、前記実施形態においては、各螺旋溝24c,25fを各軸方向通路78,88の内側の部材の第1外周面24a,第2外周面25bに形成したものを示したが、軸方向通路の外側の部材の内周面に形成してもよいし、外側の部材の内周面と内側の部材の外周面の両方に形成してもよい。また、前記実施形態においては、各螺旋溝24c,25fの下端が各上下溝24b,25eの上端と連続するものを示したが、例えば、周方向の溝に連続して螺旋溝を形成してもよいし、上下溝や周方向の溝のような他の溝と連続することなく軸方向通路の下端から直接的に螺旋溝を形成してもよい。
【0037】
また、前記実施形態においては、第1プレート21,第2プレート22及び第3プレート23の3つのプレートにより2つの分岐部を形成したものを示したが、4以上のプレートにより3以上の分岐部を形成してもよい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【解決手段】インフレーションフィルム成形用ダイ2において、軸方向に重ねられる複数のプレート21,22,23を備え、分岐部は、各プレート21,22の内部にて軸方向へ延びる内部通路21a,21b,22c,22dと、隣接するプレート21,22,23の合わせ面に形成され内部通路21a,21b,22c,22dの押し出し方向端部から分岐する一対の分岐通路72,75,82,85と、を有し、分岐部は、軸方向に連続的に複数設けられるようにした。