(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレキャストの通廊セルを設置する場合、通廊セルの底面下方に充填するコンクリートは、充填性に優れていることが好ましい。例えば、特許文献1に記載の技術では、締固め不要で流動性に優れた高流動コンクリートを通廊セルの底面下方の空隙に充填している。高流動コンクリートは、締固めを要する一般的な有スランプコンクリートと比較して、充填性に優れているものの、通路セルの底面下方へのコンクリートの充填性はより高い方が好ましい。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑み、通廊セルの底面下方へのコンクリートの充填性を更に向上する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、通廊セルの底面に複数の孔を形成することとした。詳細には、本発明は、ダム通廊の構築方法であって、前リフトの堤体コンクリート上に、前記ダム通廊の通廊セルであって、底面に複数の孔が形成されたプレキャストの通廊セルが載置される架台を設置する架台の設置工程と、前記架台上に前記通廊セルを載置する通廊セルの設置工程と、前記架台に載置される通廊セルの底面下方の空隙、通廊セルの底面下方の周囲、及び通廊セルの周囲にコンクリートを打設して前記通廊セルを埋設するコンクリートの打設工程と、を含み、前記コンクリートの打設工程では、前記複数の孔から充填状況を確認しながら、前記通廊セルの底面下方の空隙にコンクリートを打設する、ダム通廊の構築方法である。
【0007】
本発明に係るダム通廊の構築方法によれば、コンクリートの打設に際して、複数の孔を介して、通路セルの底面下方にコンクリートが充填されているか否かの確認を確実に行うことができる。例えば通廊セルの底面の中央に空気抜き孔が一つだけ形成されている従来の通廊セルと比較して、通路セルの底面下方にコンクリートが充填されているか否かの確認を確実に行うことができる。その結果、通路セルの底面下方にコンクリートを十分に充填することができる。なお、複数の孔を介してコンクリートを充填するようにしてもよい
。また、コンクリートの打設工程は、通廊セルの設置工程後でなくてもよい。例えば、架台に載置される通廊セルの底面下方の空隙や通廊セルの底面下方の周囲は、架台に通廊セルを載置する前にコンクリートを打設してもよい。
【0008】
通廊セルの底面下方の空隙とは、架台に載置される通廊セルの底面と架台の設置面との間に形成される空間である。架台の設置面とは、前リフトの堤体コンクリートの上面である。リフトとは、1つのブロックで1回に連続して打ち込む部分のコンクリート1回分の高さである。前リフトとは、直前に打設された堤体コンクリートのブロックである。通廊セルの底面下方の周囲とは、換言すると、空隙の周囲であり、通廊セルの周囲のうち、架台の設置面から通廊セルの底面までの領域である。通廊セルの周囲とは、通廊セルの底面下方の周囲以外の領域、つまり、通廊セルの周囲のうち、通廊セルの底面よりも上部である。
【0009】
また、前記コンクリートの打設工程では、前記通廊セルの底面下方の空隙を前記通廊セルの底面下方の周囲に先行し、又は、前記通廊セルの底面下方の空隙と前記通廊セルの底面下方の周囲とを同時にコンクリートを打設し、その後、前記通廊セルの周囲にコンクリートを打設するようにしてもよい。
【0010】
従来、通廊セルの底面下方の空隙は、通廊セルの底面下方の周囲や通廊セルの周囲と比較して、コンクリートの充填が困難であり、作業に時間を要していた。また、通廊セルの底面下方の空隙のコンクリートの充填性を向上するため、例えば、高流動コンクリートを用いる場合には、通廊セルの底面下方の周囲のコンクリートを先行して打設し、通廊セルの底面下方の空隙に打設する高流動コンクリートを堰き止める壁を作る必要があった。そのため、通廊セルの底面下方の空隙と比較して、コンクリートの打設量が多い通廊セルの底面下方の周囲のコンクリートの打設を部分的に行う必要があるなど、作業効率の低下が懸念されていた。
【0011】
本発明に係る通廊セルの構築方法では、通廊セルの底面下方の空隙について、通廊セルの底面下方の周囲に先行してコンクリートを打設できるため、通廊セルの底面下方の空隙と比較して、コンクリートの打設量が多い通廊セルの底面下方の周囲のコンクリートの打設を止めずに作業することができる。その結果、従来よりも作業効率を向上することができる。その後に打設するとは、次工程で打設してもよく、また、間に他の工程が介在した上で打設してもよい。
【0012】
通廊セルの底面下方の空隙について、通廊セルの底面下方の周囲に先行してコンクリートを打設する構築方法は、所謂RCD工法(Roller Compacted Dam−Concrete)、CSG工法(Cemented Sand and Gravel)に好適に用いることができる。通廊セルの底面下方の空隙と通廊セルの底面下方の周囲とについて、コンクリートを同時に打設する構築方法は、所謂拡張レヤ工法、柱状ブロック工法を想定に好適に用いることができる。
【0013】
ここで、本発明に係る通廊セルの構築方法を所謂RCD工法、CSG工法に適用する場合には、以下のように構築してもよい。例えば、前記コンクリートの打設工程では、前記通廊セルの底面下方の空隙に高流動コンクリートを打設し、その後、前記通廊セルの底面下方の周囲及び前記通廊セルの周囲に有スランプコンクリートを打設するようにしてもよい。
【0014】
高流動コンクリートを用いることで、従来よりも充填性を更に向上することができる。高流動コンクリートは、締固め不要で流動性に優れたコンクリートである。有スランプコンクリートは、堤体コンクリートに従来より用いられている締固めを要するコンクリート
である。その後に打設するとは、次工程で打設してもよく、また、間に他の工程が介在した上で打設してもよい。
【0015】
また、本発明に係る通廊セルの構築方法は、前記コンクリートの打設工程前に、前記通廊セルの底面下方の空隙と前記通廊セルの底面下方の周囲との境界に型枠を設置する型枠の設置工程を更に含むものでもよい。
【0016】
上記のように型枠を設置することで、通廊セルの底面下方の空隙について、通廊セルの底面下方の周囲に先行して、高流動コンクリートを打設することができる。型枠には、一例として、ラス型枠を用いることができる。
【0017】
ここで、本発明に係る通廊セルの構築方法を所謂拡張レヤ工法、柱状ブロック工法に適用する場合には、以下のように構築してもよい。例えば、前記コンクリートの打設工程では、前記コンクリートの打設工程では、前記通廊セルの底面下方の空隙に、有スランプコンクリートの打設面と架台の天端との間に隙間ができるように有スランプコンクリートを打設し、その後、当該隙間に充填材を充填するようにしてもよい。
【0018】
高流動コンクリートを用いる場合、締固めを要する一般的な有スランプコンクリートとは別に、高流動コンクリートの製造設備が必要となる。また、高流動コンクリートは、有スランプコンクリートと比較して、練り混ぜ時間や打設時間が多くかかるため、工程の遅延が懸念される。本発明に係る通廊セルの構築方法によれば、高流動コンクリートを用いずに堤体を構築することができる。そのため、高流動コンクリートの設備が不要となり、コストを削減することができる。また、練り混ぜ時間や打設時間を短縮できるため、従来よりも作業効率を向上することができる。なお、その後に充填するとは、次工程で充填してもよく、また、間に他の工程が介在した上で充填してもよい。
【0019】
また、本発明に係る通廊セルの構築方法は、前記コンクリートの打設工程後に、前記複数の孔から前記充填材を充填する、充填材の充填工程を更に含むものでもよい。通廊セル内から充填材を充填できるので、通廊セルの周囲のコンクリートの打設工程に左右されずに充填作業を行うことができる。その結果、従来よりも作業効率を向上することができる。
【0020】
ここで、本発明は、上述した通廊セルの構築方法によって構築されたダム通廊として特定してもよい。例えば、本発明に係るダム通廊は、前リフトの堤体コンクリート上に設置された架台に連続して複数載置されたダム通廊の通廊セルであって、底面に複数の孔が形成されたプレキャストの通廊セルを備える。
【0021】
また、本発明は、上述した通廊セルの構築方法に用いる、ダム通廊の通廊セルとして特定してもよい。例えば、本発明に係るダム通廊の通廊セルは、ダム通廊の構築において、架台上に設置されるダム通廊の通廊セルであって、前記通廊セルの底面下方の空隙にコンクリートを打設する際にコンクリートの充填状況を確認する複数の孔が底面に形成されている。また、複数の孔は、千鳥状に形成してもよい。複数の孔はコンクリートを充填する際の孔や充填材を充填する際の孔として用いてもよく、この場合特に、コンクリートや充填材の充填性を向上するとともに、作業効率を向上することができる。
【0022】
また、本発明は、上述した通廊セルの製造に用いる型枠として特定することができる。例えば、本発明に係る通廊セルの製造に用いる型枠は、ダム通廊の構築において、架台上に載置される通廊セルの製造に用いる型枠であって、通廊セルを模った型枠本体と、前記型枠本体のうち、通廊セルの底面に対応する領域に設けられ、前記通廊セルの底面下方の空隙にコンクリートを打設する際にコンクリートの充填状況を確認する複数の孔を形成す
るための突起と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通廊セルの底面下方へのコンクリートの充填性を更に向上する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るダム堤体を正面から見た透視図を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るダム通廊の一例を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る通廊セルの正面図を示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る通廊セルの側面図を示す。
【
図6】
図6は、通廊セルの型枠の分解斜視図を示す。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る、RCD工法・CSG工法における通廊セルの構築方法のフロー図を示す。
【
図8】
図8は、架台の設置工程において、差筋が設置された状態を示す。
【
図9】
図9は、架台の設置工程において、架台が設置された状態を示す。
【
図10】
図10は、通廊セルの設置工程において、通廊セルが設置された状態を示す。
【
図11】
図11は、型枠の設置工程において、ラス型枠が設置された状態を示す。
【
図12】
図12は、型枠の設置工程において、ラス型枠が設置された状態の斜視図を示す。
【
図13】
図13は、高流動コンクリートの打設工程において、高流動コンクリートの打設状況を示す。
【
図14】
図14は、高流動コンクリートの打設工程において、高流動コンクリートが打設された状態を示す。
【
図15】
図15は、有スランプコンクリートの打設工程において、通廊セルの底面下方の周囲が打設された状態を示す。
【
図16】
図16は、有スランプコンクリートの打設工程において、通廊セルの周囲が打設された状態を示す。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る、拡張レヤ工法・柱状ブロック工法における通廊セルの構築方法のフロー図を示す。
【
図18】
図18は、有スランプコンクリートの打設工程(1)において、通廊セルの底面下方、及びその周囲が打設された状態を示す。
【
図19】
図19は、通廊セルの設置工程において、通廊セルが設置された状態を示す。
【
図20】
図20は、有スランプコンクリートの打設工程(2)において、通廊セルの周囲が打設された状態を示す。
【
図21】
図21は、充填材の充填工程において、通廊セルの底面下方の隙間に充填材が充填された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。但し、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本発明は以下で説明する態様に限定されない。
【0026】
<第1実施形態>
<ダム堤体、ダム通廊>
図1は、第1実施形態に係るダム堤体を正面から見た透視図を示す。
図2は、第1実施形態に係るダム通廊の一例を示す。
図2は、ダム通廊の一例であり、
図1の円で囲まれた
領域に対応する。ダム堤体1は、コンクリートによって構成され、内部にプレキャストからなる通廊セル2が連続して設置されることで構成されるダム通廊3(監査廊ともいう)が設けられている。このようなダム堤体1は、後述するダム堤体の構築方法を実行することで構築される。
【0027】
<通廊セル>
図3は、第1実施形態に係る通廊セルの正面図を示す。
図4は、第1実施形態に係る通廊セルの側面図を示す。
図5は、
図4のA−A断面図を示す。
図3から
図5に示す通廊セル2は、工場にて製造されたコンクリート製のプレキャストの通廊セル2であり、ダム通廊3のうち、水平な通廊を構成する。通廊セル2は、水平な底面21と、底面21の両端部から垂直に立ち上げられた壁22と、壁22の上端に連なる逆U字状の天井23と、を備える。通廊セル2の底面21には、排水溝24が形成されている。また通廊セル2の底面21には、コンクリートの打設の際に充填状況を確認するための充填孔25が、千鳥状に複数形成されている。また、通廊セル2の壁22には、通廊セル2を吊り上げる際に用いる吊孔26が形成されている。
【0028】
図3から
図5に示す通廊セル2は、通廊セル2の一例であり、通廊セル2として、他に、ダム通廊3の階段部分を構成する階段用の通廊セル、ダム通廊3のカーブ部分を構成するカーブ用の通廊セル、ダム通廊3の交差部分を構成する交差用の通廊セル、通廊セル2の出入り口を構成する出入口用の通廊セル等が例示される。そして、これらの種々の通廊セルを適宜組み合わせることでダム通廊3が構築される。これらの種々の通廊セルも、底面21には、充填孔25が千鳥状に複数形成されている。
【0029】
<通廊セルの型枠>
図6は、通廊セルの型枠の分解斜視図を示す。
図6は、
図3から
図5に示す通廊セルの型枠4を示す。通廊セルの型枠4は、外型枠41、内型枠42、吊孔用の突起43、充填孔用突起44、排水溝用の型枠45を備える。外型枠41及び内型枠42は、本発明の型枠の本体の一例である。外型枠41は、通廊セル2の壁22の外側、及び壁に連なる天井の外側を支持する、一対の第1外型枠411,411、通廊セル2の底面21の外側を支持する第2外型枠412を備える。内型枠42は、通廊セル2の壁22の内側、及び壁22に連なる天井23の内側を支持する、一対の第1内型枠421,421、通廊セル2の底面21の内側を支持する第2内型枠422を備える。一対の第1内型枠421,421の外側には、吊孔26を形成するための吊孔用の突起43が接続されている。また、第2内型枠422の外側には、排水溝24を形成するための排水溝用の型枠45、及び充填孔25を形成するための充填孔用突起44が千鳥状に4カ所接続されている。
【0030】
なお、
図6に示す通廊セルの型枠4は、通廊セルの型枠の一例である。通廊セルの型枠は、他に、階段用の通廊セルの型枠、カーブ用の通廊セルの型枠、交差用の通廊セルの型枠、出入口用の通廊セルの型枠等が例示される。これらの種々の通廊セルの型枠にも、第2内型枠の外側には、充填孔用突起44が千鳥状に複数接続されている。
【0031】
外型枠41同士の接続、内型枠42同士の接続、外型枠41と内型枠42との接続は、ボルト、ナット、セパレータ等、既存の固定具や金具を用いて適宜行うことができる。
【0032】
<通廊セルの構築方法>
次に通廊セルの構築方法について説明する。通廊セルの構築方法は、所謂RCD工法(Roller Compacted Dam−Concrete)、及びCSG工法に適用する方法と、所謂拡張レヤ工法、及び柱状ブロック工法に適用する方法とに分けて説明する。第1実施形態では、RCD工法・CSG工法における通廊セルの構築方法について説明する。
【0033】
<RCD工法・CSG工法における通廊セルの構築方法>
図7は、第1実施形態に係る、RCD工法・CSG工法における通廊セルの構築方法のフロー図を示す。RCD工法・CSG工法における通廊セルの構築方法は、比較的大規模ダムに好適に用いることができる。
【0034】
まず、ステップS01では、前リフトの堤体コンクリート11上に、通廊セル2を載置する架台5が設置される(架台の設置工程)。ここで、
図8は、架台の設置工程において、差筋が設置された状態を示す。
図8に示すように、前リフトの堤体コンクリート11上に、通廊セル2の横幅よりも狭い間隔で差筋51,51が設置される。
図9は、架台の設置工程において、架台が設置された状態を示す。
図9に示すように、差筋51,51に、架台5を構成する架台の脚材52,52が溶接固定される。更に、架台の脚材52,52の上端に、通廊セル2を支持する水平受材53が溶接固定される。また、架台の脚材52,52に、筋交い状に補強鉄筋54,54が溶接固定される。以上により、架台5の設置が完了する。
【0035】
次に、ステップS02では、架台5上に通廊セル2が載置される(通廊セルの設置工程)。
図10は、通廊セルの設置工程において、通廊セルが設置された状態を示す。
図10に示すように、架台の設置工程で設置された架台5上に、クレーン等で吊り上げた通廊セル2が載置される。通廊セル2は、ダム通廊3の長手方向に連なるように順次載置される。架台5と通廊セル2は、例えば架台5の水平受材53に溶接した金具(図示せず)を用いて接続することができる。通廊セル2同士は、継手金具(図示せず)を介してボルトやコッターにより接続することができる。以上により、通廊セル2の設置が完了する。
【0036】
次に、ステップS03では、前リフトの堤体コンクリート11上に、通廊セル2の底面下方の周囲を囲むようにラス型枠6が設置される(型枠の設置工程)。
図11は、型枠の設置工程において、ラス型枠が設置された状態を示す。
図12は、型枠の設置工程において、ラス型枠が設置された斜視図を示す。
図11、
図12に示すように、前リフトの堤体コンクリート11上に、通廊セル2の底面下方の周囲を囲むようにラス型枠6が設置される。
図12では、水平な通廊を構成する通廊セル2が複数接続され、両端部にダム通廊3の階段部分を構成する階段用の通廊セルが接続されている。そして、これらの複数の通廊セル2の底面下方の周囲を取り囲むようにラス型枠6が設置される。なお、
図12の手前側に位置する階段用の通廊セルには、はしごが設置されている。以上により、ラス型枠6の設置が完了する。
【0037】
次に、ステップS04では、高流動コンクリートC1が打設される(高流動コンクリートの打設工程)。高流動コンクリートの打設工程は、本発明のコンクリートの打設工程の一例である。高流動コンクリートC1は、締固め不要で流動性に優れたコンクリートである。ここで、
図13は、高流動コンクリートの打設工程において、高流動コンクリートの打設状況を示す。また、
図14は、高流動コンクリートの打設工程において、高流動コンクリートが打設された状態を示す。
図13に示すように、ラス型枠6の内側、かつ、通廊セル2の底面下方の空隙に、例えばホッパにより高流動コンクリートC1が打設される。高流動コンクリートC1の打設は、複数の充填孔25から充填状況を確認しながら行われる。その結果、
図14に示すように、通廊セル2の底面下方に高流動コンクリートC1を十分に充填することができる。以上により、高流動コンクリートC1の打設が完了する。
【0038】
次に、ステップS05では、有スランプコンクリートC2が打設される(有スランプコンクリートの打設工程)。有スランプコンクリートの打設工程は、本発明のコンクリートの打設工程の一例である。有スランプコンクリートC2は、堤体コンクリートに従来より用いられている締固めを要するコンクリートである。ここで、
図15は、有スランプコン
クリートの打設工程において、通廊セルの底面下方の周囲が打設された状態を示す。
図16は、有スランプコンクリートの打設工程において、通廊セルの周囲が打設された状態を示す。
図15に示すように、ラス型枠6の外側、かつ、通廊セル2の底面下方の周囲に、例えばホッパ(図示せず)により有スランプコンクリートC2が打設される。その後、順次、通廊セル2の周囲に有スランプコンクリートC2が打設される。その結果、
図16に示すように、通廊セル2の底面下方に高流動コンクリートC1が充填され、それ以外の周囲には、有スランプコンクリートC2が打設され、通廊セル2と堤体コンクリート(高流動コンクリートC1、有スランプコンクリートC2)が一体化したダム通廊3の一部が完成する。以上により、有スランプコンクリートC2の打設が完了する。
【0039】
以上説明した工程が適宜繰り返されることで、ダム堤体1及びダム通廊3が完成する。
【0040】
<効果>
第1実施形態に係るダム通廊の構築方法(RCD工法・CSG工法における通廊セルの構築方法)によれば、高流動コンクリートC1の打設に際して、複数の充填孔25を介して、通廊セル2の底面下方に高流動コンクリートC1が充填されているか否かの確認を確実に行うことができる。したがって、例えば通廊セルの底面の中央に空気抜き孔が一つだけ形成されている従来の通廊セルと比較して、通廊セル2の底面下方に高流動コンクリートC1が充填されているか否かの確認を確実に行うことができる。その結果、通廊セル2の底面下方に高流動コンクリートを十分に充填することができる。なお、複数の孔を介してコンクリートを充填するようにしてもよい。また、高流動コンクリートC1を用いることで、例えば有スランプコンクリートを用いる場合と比較して、充填性を向上することができる。
【0041】
また、第1実施形態に係るダム通廊の構築方法では、ラス型枠6を通廊セル2の底面下方の周囲を囲むように設置することで、通廊セル2の底面下方の空隙について、通廊セル2の底面下方の周囲に先行して、高流動コンクリートC1を打設することができる。そのため、通廊セル2の底面下方の空隙と比較して、コンクリートの打設量が多い通廊セル2の底面下方の周囲のコンクリートの打設を止めずに作業することができる。その結果、従来よりも作業効率を向上することができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態では、通廊セルの構築方法を、所謂拡張レヤ工法、及び柱状ブロック工法に適用する場合について説明する。拡張レヤ工法・柱状ブロック工法における通廊セルの構築方法は、中規模ダムや小規模ダムに好適に用いることができる。なお、通廊セル2や通廊セルの型枠4は、第1実施形態で説明したものを用いることができる。したがって、これらの説明は割愛する。また、拡張レヤ工法、及び柱状ブロック工法における通廊セルの構築方法によって構築されるダム堤体1やダム通廊3は、第1実施形態と比較して、中規模又は小規模であるものの、ダム堤体1やダム通廊3の機能は同じである。したがって、これらの説明も割愛する。
【0043】
<拡張レヤ工法・柱状ブロック工法における通廊セルの構築方法>
図17は、第2実施形態に係る、拡張レヤ工法・柱状ブロック工法における通廊セルの構築方法のフロー図を示す。ステップS11では、
図8、
図9に示すように、ステップS01と同様に、前リフトの堤体コンクリート11上に、通廊セル2を載置する架台5が設置される(架台の設置工程)。その際、架台5の天端(水平受材53の天端)を嵩上げして、架台5が設置される。例えば、架台5は、嵩上げ分として、天端が有スランプコンクリートC2の打設面よりも30mm高くなるように設置される。なお、架台5の嵩上げに代えて、後述するステップS21の有スランプコンクリートの打設工程において、有スランプコンクリートC2の打設面が架台5の天端よりも低くなるようにして調整してもよい
。
【0044】
次に、ステップS12では、通廊セル2の底面下方、及びその周囲に有スランプコンクリートC2が打設される(有スランプコンクリートの打設工程(1))。有スランプコンクリートの打設工程(1)は、本発明のコンクリートの打設工程の一例である。ここで、
図18は、有スランプコンクリートの打設工程において、通廊セル2の底面下方、及びその周囲が打設された状態を示す。
図18に示すように、通廊セル2の底面下方、及びその周囲に有スランプコンクリートC2が打設される。有スランプコンクリートC2は、打設面が、嵩上げされた架台5の天端よりも低くなるように打設される。換言すると、有スランプコンクリートC2の打設面と架台5の天端との間に隙間7ができるように有スランプコンクリートC2が打設される。以上により、通廊セル2の底面下方、及びその周囲の、有スランプコンクリートC2の打設が完了する。
【0045】
次に、ステップS13では、架台5上に通廊セル2が載置される(通廊セルの設置工程)。
図19は、通廊セルの設置工程において、通廊セルが設置された状態を示す。
図19に示すように、架台5上に、クレーン等で吊り上げた通廊セル2が載置される。通廊セル2は、ダム通廊3の長手方向に連なるように順次載置される。架台5と通廊セル2は、第1実施形態と同様に、例えば架台5の水平受材53に溶接した金具(図示せず)を用いて接続することができる。通廊セル2同士は、継手金具(図示せず)を介してボルトやコッターにより接続することができる。以上により、通廊セル2の設置が完了する。
【0046】
次に、ステップS14では、通廊セル2の周囲に有スランプコンクリートC2が打設される(有スランプコンクリートの打設工程(2))。有スランプコンクリートの打設工程(2)は、本発明のコンクリートの打設工程の一例である。有スランプコンクリートの打設工程(2)では、通廊セル2の周囲に、有スランプコンクリートC2が順次打設される。
図20は、有スランプコンクリートの打設工程(2)において、通廊セルの周囲が打設された状態を示す。
図20に示すように、通廊セル2の底面下方の隙間7以外に有スランプコンクリートC2が打設される。以上により、通廊セル2の周囲の有スランプコンクリートC2の打設が完了する。
【0047】
次に、ステップS15では、通廊セル2の底面下方の隙間7(有スランプコンクリートC2の打設面と架台5の天端との間に隙間7)に充填材Mが充填される(充填材の充填工程)。
図21は、充填材の充填工程において、通廊セルの底面下方の隙間に充填材が充填された状態を示す。
図21に示すように、充填材の充填工程では、通廊セル2内の複数の充填孔25から、充填材Mとしての高流動モルタルが、通廊セル2の底面下方の隙間7に充填される。以上により、通廊セル2と堤体コンクリート(有スランプコンクリートC2)が一体化したダム通廊3の一部が完成する。以上により、充填材Mの充填が完了する。
【0048】
以上説明した工程が適宜繰り返されることで、ダム堤体1及びダム通廊3が完成する。
【0049】
<効果>
第2実施形態に係るダム通廊の構築方法(拡張レヤ工法・柱状ブロック工法における通廊セルの構築方法)によれば、高流動コンクリートC1を用いることなく、ダム堤体1及びダム通廊3を構築することができる。高流動コンクリートC1を用いる場合、締固めを要する一般的な有スランプコンクリートC2とは別に、高流動コンクリートC1の製造設備が必要となる。また、高流動コンクリートC1は、有スランプコンクリートC2と比較して、練り混ぜ時間や打設時間が多くかかるため、工程の遅延が懸念される。第2実施形態に係るダム通廊の構築方法では、高流動コンクリートC1を用いないため、高流動コンクリートC1の設備が不要となり、コストを削減することができる。また、練り混ぜ時間や打設時間を短縮できるため、従来よりも作業効率を向上することができる。
【0050】
また、有スランプコンクリートC2の打設に際して、複数の充填孔25を介して、通廊セル2の底面下方に有スランプコンクリートC2が充填されているか否かの確認を確実に行うことができる。したがって、例えば通廊セルの底面の中央に空気抜き孔が一つだけ形成されている従来の通廊セルと比較して、通廊セル2の底面下方に有スランプコンクリートC2が充填されているか否かの確認を確実に行うことができる。その結果、通廊セル2の底面下方に有スランプコンクリートC2を十分に充填することができる。なお、複数の充填孔25を介して有スランプコンクリートC2を充填するようにしてもよい。
【0051】
また、第2実施形態に係る通廊セルの構築方法は、有スランプコンクリートの打設工程後に、複数の充填孔25から充填材Mを充填することができる。充填材Mは、通廊セル2内から充填できるので、他の工程に左右されずに充填作業を行うことができる。その結果、従来よりも作業効率を向上することができる。また、複数の充填孔25が千鳥状に形成されているため、充填材の充填性を向上するとともに、作業効率を向上することができる。更に、通廊セル2を設置する際、既に架台5の大半が有スランプコンクリートC2に埋設されている。そのため、通廊セル2を設置する際に、通廊セル2と架台5との接触を低減でき、その結果、接触による通廊セル2の破損も低減できる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るダム通廊の構築方法、ダム通廊、ダム通廊の通廊セル、及び通廊セルの製造に用いる型枠は、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者にとって自明である。
【解決手段】前リフトの堤体コンクリート上に、前記ダム通廊の通廊セルであって、底面に複数の孔が形成されたプレキャストの通廊セルが載置される架台を設置する架台の設置工程と、前記架台上に前記通廊セルを載置する通廊セルの設置工程と、前記架台に載置される通廊セルの底面下方の空隙、通廊セルの底面下方の周囲、及び通廊セルの周囲にコンクリートを打設して前記通廊セルを埋設するコンクリートの打設工程と、を含み、前記コンクリートの打設工程では、前記複数の孔から充填状況を確認しながら、前記通廊セルの底面下方の空隙にコンクリートを打設する。