【実施例1】
【0048】
実施例1では、比重がめっき液よりも重く、球体をなす難めっき性基材の例として、ゴルフボール1を説明する。
図1から
図4を参照して、ゴルフボール1の表面に保護塗装層10を残したままで、その全周囲に電気めっきにより銅めっき層30をめっきしたゴルフボール1を説明する。
図1の各々の図は、ゴルフボール1の断面図であり、
図1(A)図はゴルフボール1の全体図を示し、
図1(B)図は、ゴルフボール1の一部拡大図を示している。
図2は、導電性皮膜層をなす有機樹脂層20を形成させる工程と、電気めっき工程とにおいて使用される治具を斜視図により説明する説明図である。
図3の各々の図は、有機樹脂層を形成させる工程を説明する説明図である。
図4の各々の図は、銅めっき層30をめっきする工程を説明する説明図である。
【0049】
ゴルフボール1は、中心側から、コア層11、樹脂カバー層12、保護塗装層10の順で積層されている。球体をなす樹脂カバー層12の表面には、多数の球面形状の凹みであるディンプル13が備えられ、ゴルフボールの表面には凹部が備えられている。また、樹脂カバー層12の全周囲を覆うように保護塗装層10が備えられ、凹部を含めて表面全体に艶が付与されている。実施例1のゴルフボール1には、ディンプル13による凹部をも含めて、保護塗装層10を損なわせることなく、更に金属特有の光沢のある金属薄膜層を備えさせた。
【0050】
ゴルフボール1は、保護塗装層10の表面に、内層側から順に導電性皮膜層をなす有機樹脂層20、電気めっきによる銅めっき層30が備えられる。有機樹脂層20は、銀粉粒体と、有機樹脂母材と、有機溶剤との混合溶液を噴霧・乾燥させることにより形成される。有機溶剤は、混合溶液を乾燥させる際に揮発され、有機樹脂層には有機溶剤の成分は残留されず、有機樹脂層は銀粉粒体と有機樹脂母材とから構成される。そして、銀粉粒体が有機樹脂層の表面で接しあって、導電性皮膜層が形成され、難めっき性基材であるゴルフボールに導電性を付与させている。
【0051】
銀粉粒体の粒径は、平均粒径が1μm以上3μm以下とされる。平均粒径が1μm以上とされるため、有機樹脂母材に含まれた銀粒子同士が接し合って、導電性皮膜層に導電性を付与させやすい。また、銀粉粒体の平均粒径が3μm以下とされるため、有機樹脂層の表面に銀粉粒体の凸凹が発生しない。これにより、ディンプル13とディンプルの周囲の外面とに沿って、均一に滑らかな状態の薄膜の有機樹脂層を形成させることができ、基材表面の質感を損なわせることのないめっき下地層とすることができた。
【0052】
有機樹脂母材は、ビニル樹脂であればよい。例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のいずれかであればよいが、特にポリビニルブチラール樹脂が好適である。有機溶剤は、酢酸エチル、酢酸ブチル等であればよい。
【0053】
有機樹脂母材と、銀粉粒体との混合割合が、銀粉粒体10重量部に対して有機樹脂母材が1重量部から2重量部の範囲とされる。有機樹脂母材の混合比率が銀粉粒体10重量部に対して1重量部未満となると、難めっき性基材と有機樹脂母材との接着性が低下され、導電性皮膜層が難めっき性基材から剥離されやすくなる。有機樹脂母材の混合比率が、銀粉粒体10重量部に対して2重量部を超えると、銀粉粒体の接触機会の減少により導電性を確保することが困難となり、均一な膜厚の金属薄膜層を形成させにくくなる。
【0054】
実施例1では、福田金属箔粉工業株式会社製シルコート(登録商標)RL−10(銀粉粒体とポリビニルブチラール樹脂と酢酸イソペンチルとの混合割合が重量比で60:8:32の銀ペースト)と、米山薬品工業株式会社製酢酸エチル(純度98%)とを使用し、銀ペーストと酢酸エチル溶液との混合割合が重量比で、1:3となるように混合し、粘度が低い混合溶液とした。混合溶液の粘度が低いため、噴霧器を使って噴霧塗装しても、基材の外周に均一かつ膜厚の薄い有機樹脂層を形成させることができる。噴霧塗装は、常温において基材のゴルフボールに対する噴霧方向を変えて、ゴルフボールの全周を覆うように噴霧される。一回の噴霧で膜厚1μmから3μmの膜厚の有機樹脂層が形成される。そして、ゴルフボールを支えていた支承点を変えて、複数回の噴霧塗装をして、ゴルフボールの全周囲に亘り有機樹脂層が欠落した部分がない状態で、膜厚を2μm以上10μm以下とした。
【0055】
前記有機樹脂層の膜厚が2μm以上であることにより、ゴルフボールの保護塗装層10と有機樹脂層20とが密着され、銀粉粒体がなす導電性皮膜層の欠損が防がれる。また、膜厚が10μm以下であることにより、基材の質感が損なわれていない状態に有機樹脂層20が形成される。
【0056】
実施例1のゴルフボールは、装飾品としての光沢を向上させるために、有機樹脂層20の上に銅色の銅めっき層30の膜厚が20μm以上となるように電気めっきしている。なお、銅色とは異なり、金色、銀色の金属めっき層をめっきをする場合には、銅めっき層30の表面にそれらに対応した色彩をなす金属皮膜を形成させればよい。銅めっき層30は、後述するように硫酸銅をめっき浴槽として電気めっきすることにより、銅色の銅めっき層が得られる。
【0057】
ここで、
図2の各々の図を参照して、有機樹脂層20の形成工程において、空気中でゴルフボールを保持する保持治具90、及び電気めっき工程において、めっき浴液内でゴルフボールを支承する支承治具100について説明する。
図2(A)図は、保持治具90の斜視図による説明図を示し、
図2(B)図は、支承治具100の斜視図による説明図を示している。
図2(B)図では、ひとつの支承部のみを示し、他を省略している。
【0058】
保持治具90は、基軸97の一方の面から延伸される3本の軸体92,93,93からなり、各々の先方部94,95,95は、ゴルフボール1の表面に向かうように屈曲されている(
図2(A)図)。3つの先方部のうち、一つの基部96が弾性を有する細幅の板状体とされ、先方部94をゴルフボールの表面に向けて付勢させる付勢手段とされている。2つの先方部95,95と、付勢された一つの先方部94が、ゴルフボールの周囲の3点からゴルフボールに接してゴルフボールを保持するようにしている。
【0059】
混合溶液の噴霧工程は、ゴルフボールに向かう噴霧吐出口の向きを変えて、混合溶液がゴルフボールの全周囲に満遍なく行きわたるように噴霧作業が行われる。また、常温で混合溶液を乾燥させてから、混合溶液がゴルフボールを覆っていない部分がないように、付勢手段を弛めてゴルフボールに接する先方部の位置を変える。ゴルフボール1の全周囲に銀色の薄膜が形成されていることにより、導電性皮膜層をなす有機樹脂層の形成が確認できる。
【0060】
めっき浴液中でゴルフボールを支承する支承治具100は、回転軸と複数の支承部とからなり、各々の支承部につき、ひとつのゴルフボールが支承され、複数のゴルフボールが同時にめっき可能とされる(
図2(B)図参照)。電気めっき工程において、回転軸が回転されることにより、各々のゴルフボールに均等に電流が流れるようになる。複数のゴルフボールに均等に電流が流れることにより、均一な膜厚の金属薄膜層を形成させることができる。そうすると、金属薄膜層の膜厚が部分的に厚くなる、又は薄くなるといった個体差が発生しにくくなる。これにより、品質の高いめっきされたゴルフボールを量産させやすくなる。
【0061】
各々の支承部101は、回転軸107から離間されるように延伸された3本の軸体102,103,103からなり、各々の先方部104,105,105は、ゴルフボール1の表面に向かうように屈曲されている(
図2(B)図)。ゴルフボール1の上方に接する軸体102の基部106が、弾性を有する細幅の板状体とされ、先方部104をゴルフボール1の表面に向けて付勢させる付勢手段とされている。ゴルフボール1の下方を支承させる2つの先方部105,105と、ゴルフボールの上方を支承させる付勢された一つの先方部104とが、ゴルフボールの周囲の3点からゴルフボール1に接して、ゴルフボール1を支承させている。支承治具100は、その表面にめっきが析出されないように、前記各々の先方部を除き全体が樹脂膜108で覆われている。
【0062】
ゴルフボール1が、前記4つの先方部がなす4点の支承点により支承されるため、ゴルフボールが支承される際に加わる力が夫々の支承点に分散され、支承点の位置にある有機樹脂層20が損傷されにくくなる。また、電気めっき工程では、電気めっきを開始してから所定の時間経過後に、めっき液中から気中にゴルフボールを取り出し、付勢手段を弛めてゴルフボールに接する先方部の位置をずらすようにする。そして、再度ゴルフボールをめっき液中に浸漬させ、電気めっきを繰り返すことにより、銅めっき層30に欠損がないめっき装飾品が得られる。
【0063】
ここで、
図3から
図5を参照して、ゴルフボールに電気めっきにより銅めっきをする製造方法を説明する。
(導電性皮膜層形成工程)
まず、
図3を参照して、導電性皮膜層形成工程を説明する。ゴルフボール1を水洗・乾燥させて、表面の汚れを除去し、保持治具90にゴルフボールを保持させる(
図2(A)図,
図3(A)図参照)。混合溶液の噴霧・乾燥工程を複数回繰り返し、ゴルフボール1の全周囲に、欠損部がない有機樹脂層20を形成させている。以下に夫々の工程を詳述する。
【0064】
(混合溶液の噴霧・乾燥工程)
噴霧器の噴霧吐出口とゴルフボールとが向かい合う位置を変えながら、ゴルフボールの保護塗装層10の表面に混合溶液を満遍なく噴霧させる。そして、15℃から20℃の室温で約30分乾燥させることにより有機樹脂層20が形成される(
図3(B)図参照)。この時点では、保持治具とゴルフボールとの接点には、有機樹脂層20が形成されていない欠損部21が残っている(
図3(B)図参照)。
【0065】
(接点変更工程)
次に、ゴルフボール1と保持治具90との接点位置をずらし、欠損部21を露出させて混合溶液を噴霧できるようにする(
図3(C)図参照)。
(混合溶液の噴霧・乾燥工程)
ゴルフボール1と保持治具90との接点位置を変更した後に、混合溶液を噴霧・乾燥を繰り返す。そうすると、有機樹脂層が形成されていない欠損部21が埋められ、ゴルフボール1の全周囲が有機樹脂層20に被覆された状態とされる。この噴霧・乾燥工程が数回繰り返されることにより、ゴルフボールの凹凸部に沿う、均一に滑らかな状態の有機樹脂層20が形成される(
図3(D)図)。なお、有機樹脂層20の表面に残った治具跡22は、後述する電気めっき工程で銅めっき層30により埋められ目立たない状態とされる。有機樹脂層20の乾燥後には、ゴルフボール1が保持治具90から取り外され、電気めっき工程で使用される支承治具100に移し替えられる。
【0066】
(電気めっき工程)
次に、
図4の各々の図を参照して、銅めっき層をめっきさせる電気めっき工程について説明する。
図4(E)図は、ゴルフボールを支承治具に支承させた状態を示し、
図4(F)図は、銅めっき層の一部が形成された状態を示している。
図4(G)図は、支承点がずらされた状態を示し、
図4(H)図は、銅めっき層の形成工程が終了された状態を示している。
【0067】
電気めっき工程では、ゴルフボール1の全周囲が銅めっき層30に被覆されるように、2回の硫酸銅めっき工程により、銅めっき層30がめっきされる。まず、支承治具100に導電性皮膜層をなす有機樹脂層20が形成された複数のゴルフボール1を支承させる(
図4(E)図)。
【0068】
(初回の硫酸銅めっき工程)
支承治具100に支承されたゴルフボール1が硫酸銅めっきのめっき液に浸漬され、ゴルフボールの凸凹した表面形状に沿う有機樹脂層20の表面に沿って、銅めっき層30が形成される(
図4(F)図)。初回の硫酸銅めっき工程では、回転軸は回転されず、めっき液中にゴルフボールが静止されたまま電気めっきされる。初回の硫酸銅めっき工程では、静止状態で電気めっきされるため、支承治具の先方部とゴルフボールとが擦れ合って、導電性皮膜層が損傷されることがない。この段階で、有機樹脂層に残った治具跡22が銅めっき層30により埋められ、目立たなくされる。また、支承治具100とゴルフボール1とが接する支承点の位置には、銅めっき層30が形成されないため、欠損部31が残った状態となる(
図4(G)図参照)。
【0069】
硫酸銅めっき浴の浴条件は、銅めっき液は、1リットル当り、硫酸銅が180〜250g、硫酸成分が重量比で98%含有された硫酸の原液が45〜60g含まれており、浴温度が20〜35℃である。電流密度は、8A/dm
2とされる。めっき浴時間は、2回のめっき浴時間の合計で30分〜60分としている。
【0070】
(支承点変更工程)
電気めっきを開始してから所定の時間経過後に、ゴルフボール1がめっき液中から気中に取り出され、ゴルフボール1と支承治具100との支承点の位置が変えられる(
図4(G)図)。ゴルフボール1がめっき液中から気中に取り出されるまでの時間は限定されず、電気めっき工程の時間に応じて適宜選択されればよい。例えば、2回の硫酸銅めっき工程における浴時間の合計時間に対して、半分程度経過した時点で、ゴルフボールを取り出せばよい。
【0071】
(硫酸浴工程)
次に、ゴルフボール1を硫酸浴させ、銅めっき層30の表面を活性化させる。これにより、銅めっき層の表面に発生した酸化皮膜が除去され、初回の硫酸銅めっき工程で形成された銅めっき層と、2回目の硫酸銅めっき工程で形成される銅めっき層との密着性が高くされる。硫酸液の濃度は、例えば、硫酸成分が重量比で98%含有された硫酸の原液に水を加えて、硫酸の原液:水が体積比で1:9の割合となるように希釈されたものであればよい。硫酸浴の後、硫酸成分を洗い流すように水洗がされる。
【0072】
(2回目の硫酸銅めっき工程)
2回目の硫酸銅めっき工程では、支承治具の回転軸107(
図2(B)図参照)が回転されて、各々のゴルフボール1にかかる電流が均等に流れるようにして電気めっきされる。各々のゴルフボール1に電流が均等に流れるため、銅めっき層30が均一に形成され、複数のゴルフボールを同時に電気めっきしても、高品質かつ均一の品質とされためっき装飾品を得ることができる。硫酸銅めっきの浴条件は、初回の硫酸銅めっきの浴条件と同一であるため、説明を省略している。
【0073】
二度の硫酸銅めっき工程により、銅めっき層30の合計膜厚が20μm以上40μm以下となるように銅めっき層30がめっきされる(
図4(H)図)。そのため、初回の硫酸銅めっき工程において生じた銅めっき層の欠損部31が、2回目の硫酸銅めっき工程において埋められ、ゴルフボールの全周囲が銅めっき層30に覆われためっき装飾品となる。また、銅めっき層30の膜厚が、めっき層の艶を出しやすい厚い膜厚とされるため、ゴルフボールの表面には、金属光沢による艶が強く表れた銅めっき層30が形成される。これにより、ディンプル13の内外に亘って、ゴルフボールの保護塗装層10の艶が損なわれていない、光沢のある銅色のゴルフボールが得られた。
【実施例2】
【0074】
実施例2では、
図5の各々の図を参照して、金属薄膜層が銅めっき層30と、その表面に積層された金めっき層40とからなるゴルフボール2を説明する。
図5は、ゴルフボール2の一部拡大断面図を示している。銅めっき層30を形成させる工程までは、実施例1と同様のため説明を省略している。
図5(I)図は、ゴルフボール2が支承治具100に支承された状態を示し、
図5(J)図は、金めっき層40の一部が形成された状態を示している。
図5(K)図は、支承点がずらされた状態を示し、
図5(L)図は、金めっき層40の形成工程が終了された状態を示している。
【0075】
(電気めっき工程)
実施例2でも、ゴルフボール2の全周囲が金めっき層40に被覆されるように、2回の金めっき工程により、金めっき層40がめっきされる。まず、支承治具100に銅めっき層30まで形成されたゴルフボール2を支承させる(
図5(I)図)。
【0076】
(硫酸浴工程)
次に、ゴルフボール2を硫酸浴させ、銅めっき層30の表面を活性化させる。これにより、銅めっき層の表面に発生した酸化皮膜が除去され、銅めっき層30と後述する金めっき工程で形成される金めっき層40との密着性を高くできる。硫酸浴工程の浴条件は、実施例1と同様であればよく、ここでは説明を省略している。硫酸浴の後、硫酸成分を洗い流すように水洗がされる。
【0077】
(1回目の金めっき工程)
硫酸浴により活性化させた銅めっき層30の上に、電気めっきにより金めっき層40の一部がめっきされる(
図5(J)図参照)。金めっき液は、1リットル当り、シアン化金カリウムが2〜6g含まれ、浴温度が30〜40℃とされればよい。電流密度は、0.5〜2A/dm
2である。金めっき層の材質は、純金であってもよく、金コバルト等の金合金とされてもよい。浴時間は限定されず、金めっき層の膜厚に応じて適宜調整されればよい。ここでは、ゴルフボールの全周囲が銅めっき層に覆われており、導電性皮膜層が損傷される恐れがないため、支承治具の回転軸107(
図2(B)図参照)を回転させながら電気めっきがされる。
【0078】
(支承点変更工程)
金めっき浴時間が合計時間の半分程度経過した時点で、ゴルフボール2をめっき液中から取り出し、ゴルフボール2と支承治具100との支承点の位置が変えられる(
図5(K)図)。
【0079】
(2回目の金めっき工程)
1回目の金めっき工程と同様に金めっきがされる(
図5(L)図)。めっき浴条件は1回目と同様であり説明を省略する。実施例2では、銅めっき層30と金めっき層40との合計の膜厚が、20μm以上40μm以下とされる。
【0080】
(保護塗装工程)
保護塗装には顔料を混入しない無色の水溶性のクリアラッカーを使用する。ナフサ、キシレン、トルエン、アセトンなど揮発性の高い溶媒に樹脂を溶かしたものであればよい。塗膜厚さを2〜6μmの薄膜とすることにより、溶剤が揮発されて乾燥され、硬い保護膜が得られると共に、金色が変色することがない耐久性が得られる。
【実施例4】
【0086】
実施例4では、
図7を参照して、比重がめっき液よりも軽い球体として、硬式用の野球のボールに電気めっきをする例を説明する。野球ボール3は、実施例3に記載の第2の支承治具110により支承された状態で電気めっきされ、めっき液から気中に取り出しても、めっき液中においても安定して支承されている。
【0087】
まず、野球ボール3について簡単に説明する。野球ボール3は、中心がコルク等からなる芯材61とされ、その周囲に糸62が巻回され、その上に一対の革材60が被覆される。そして、各々の革材60,60が突き合わされた接合部63に沿って、互いが縫い糸64で縫い合わされ球体をなしている。実施例4の野球ボール3は、革表面にある皺65と、一対の革材60が突き合わされた接合部63の凹凸形状と、接合部63を縫い合わせる縫い糸64による凹凸部形状を損なうことなく、金属特有の光沢のある金属薄膜層50を備えさせた。
【0088】
実施例4では、有機樹脂層23の膜厚を2μmの薄膜とすると共に、銀粉粒体の平均粒径を1μmとした。そのため、有機樹脂層23に含まれる銀粉粒体が、革材表面の皺65や、接合部63の細部にまで入り込んで導電性皮膜層を形成させている。これにより、革表面の皺65や接合部63、縫い糸64の形状に沿って、野球ボールの質感を損なうことのない有機樹脂層23が形成される。銀粉粒体と有機樹脂母材と、有機溶剤との混合割合等は、実施例1と同一であればよく、説明を省略している。
【0089】
金属薄膜層50の膜厚は5μmとされ、革表面にある皺65や接合部63等の形態を変えることなく、そのまま反映できる薄膜とさせている。前記金属薄膜層の膜厚が、1μm以上であるため金属薄膜層50に欠損が生じることがなく、10μm以下であるため革材60の質感が損なわれることもない。金属薄膜層50は、実施例1と同様に銅めっき層であればよいが、銅めっき層を備えさせることなく、直接金めっき層がめっきされてもよい。導電性皮膜層形成工程、及び電気めっき工程は、各層の膜厚以外は、実施例1と同様とされるため、説明を省略している。
【0090】
有機樹脂層23を薄膜とすることにより、革材表面の皺65や、接合部63の細部にまで入り込んだ導電性皮膜層を形成させ、導電性皮膜層に沿うように、薄膜の金属薄膜層50を形成させている。有機樹脂層23と、金属薄膜層50のいずれもが薄膜とされることにより、革材表面の皺65と、接合部63といった野球ボール表面の形態を変えることがなく、質感が損なわれていないめっき装飾品が得られた。
【0091】
(その他)
・上記の実施例では、銅色のめっき層、金色のめっき層を形成させる実施例を説明したが、その他の色、例えば銀色のめっき層を形成させてもよいことは勿論のことである。いずれの基材に対しても導電性皮膜層が均一に滑らかな状態に形成され、めっき層が光り輝く艶のある状態とされるため、金・銀・銅の、同一な質感の光り輝く球技用ボールを提供することができる。
・金属薄膜層が2工程で形成される例を説明したが、工程数は限定されない。
・上記の実施例では、上方支承点が1点の例を説明したが、複数点であってもよいことは勿論のことである。
・上記の実施例ではゴルフボール、硬式用の野球ボールを基材としたが、基材の用途が限定されないことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。