特許第6039855号(P6039855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039855
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】配管内壁のライニング方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/36 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   B29C63/36
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-147374(P2016-147374)
(22)【出願日】2016年7月27日
【審査請求日】2016年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592036519
【氏名又は名称】株式会社P・C・Gテクニカ
(73)【特許権者】
【識別番号】501219002
【氏名又は名称】TEXAS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 金蔵
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−196628(JP,A)
【文献】 特開2015−066718(JP,A)
【文献】 特開2014−105800(JP,A)
【文献】 特開平06−278791(JP,A)
【文献】 特開2004−291605(JP,A)
【文献】 米国特許第06244846(US,B1)
【文献】 特開平06−091755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/26−63/36
B05C 7/00− 7/08
F16L 55/00−55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端(12)が閉塞し、上端(11)が開口する縦方向に配置された配管(1)の内壁(10)にライナー層(L)を形成する配管ライニング方法であって、
表裏に反転可能な筒状のライニングクロス管(2)に、液状ライニング塗料(3)を含浸させて含浸ライニングクロス管(30)とするとともに、一端が閉じた気密性のフィルムチューブ(4)で包囲して、外周側がフィルムチューブ(4)で、内周側が含浸ライニングクロス管(30)の袋状の被覆ランニングクロス管(5)を形成し、
この被覆ランニングクロス管の他端を、前記配管の前記上端の外周側に同軸的に差し込むとともに、前記開口から前記配管内に入り込む初期反転部を形成し、この初期反転部の前記フィルムチューブ側に圧縮空気で圧力付与して、前記被覆ランニングクロス管を前記配管内に反転移動させながら、反転後に外周側となった前記含浸ライニングクロス管を前記内壁に密着させる配管ライニング方法において、
前記配管の下端部(13)の施工は、前記フィルムチューブ内を減圧して前記内壁と前記含浸ライニングクロス管との間に通気隙間を形成し、前記配管の前記下端部に滞留した空気を前記通気隙間から逃した後に、前記フィルムチューブ内に加圧流体を注入し、前記被覆ランニングクロス管を前記配管内に反転移動させて、前記含浸ライニングクロス管を前記内壁に密着させることを特徴とする配管ライニング方法。
【請求項2】
前記含浸ライニングクロス管が長尺の場合に、前記フィルムチューブ内を加圧、減圧を繰り返して施工して前記含浸ライニングクロス管を前記内壁に密着させることを特徴とする請求項1に記載の配管ライニング方法。
【請求項3】
反転移動が完了した後、前記フィルムチューブ内に注入する加圧流体は温水であって、注水は、前記配管の前記下端に滞留させてから徐々に水深を増やし、前記配管の前記上端が満水になるまで継続して前記含浸ライニングクロス管を前記内壁に密着させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管ライニング方法。
【請求項4】
前記温水は、前記液状ライニング塗料が熱硬化性である場合に、前記液状ライニング塗料を硬化させる熱硬化温度以上の温水であることを特徴とする請求項3に記載の配管ライニング方法。
【請求項5】
前記ライニングクロス管の終端は、前記配管の前記下端から、前記被覆ランニングクロス管の肉厚以上の距離だけ上位に設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の配管ライニング方法。
【請求項6】
前記配管は、液化ガスの地下式貯槽(T)を囲むように配されたヒートフェンス(HF)を構成するとともに、地中に縦方向に埋設されたヒートパイプ(HP)の外管であり、前記フィルムチューブ内に注入する前記加圧流体は、前記ヒートフェンスを構成するプラント温水源から供給される温水であることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の配管ライニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦方向に設置されるとともに下端が閉じた配管の内壁に、補修などのためにライナー層を形成するライニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションや賃貸ビルなどの建造物では、給排水管などの配管の耐久性などを回復更生させるため、配管の内壁に所定の厚みの樹脂層をライナー層として形成するライニング施工が行われている(例えば、本出願と同一出願人による特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のライニング施工は、織物からなり、表裏に反転可能なライニングクロス管に液状ライニング塗料を含浸させて含浸ライニングクロス管とするとともに、外周を一端が閉じた気密性のフィルムチューブで包囲し、袋状の被覆ライニングクロス管を形成する。
【0004】
通常、この被覆ライニングクロス管の長さは、補修対象の配管の長さより幾分長く設定される。この被覆ライニングクロス管の一端を、索条体で連結するとともに、他端を配管の一端の外周側に同軸的に差し込み固定する。そして、被覆ライニングクロス管の固定した部分に初期反転部を形成し、配管の他端側をバキューム吸引、もしくは一端側を圧縮空気で圧力付与することで、被覆ライニングクロス管は、配管の一端側と他端側との圧力差により、配管の内部を連続的に反転しながら他端側に進行する。
【0005】
これにより、配管の全長にわたって内壁に含浸ライニングクロス管が密着する。つづいて、配管の一端側から配管内に高圧空気を供給して、含浸ライニングクロス管の密着を保持しながら液状ライニング塗料を硬化して、配管の内壁にライナー層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4181439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の配管内壁のライニング方法は、両端が開放した構造の配管に適用される施工法であり、配管の一端から挿入した被覆ライニングクロス管を反転させて、含浸ライニングクロス管を配管の内壁に密着させながら他端へ突き出るまで連続反転を行い、他端から突き出た被覆ライニングクロス管は切除して施工する簡便、確実な施工法である。
【0008】
しかしながら、一端が閉塞した配管の場合には、被覆ライニングクロス管を反転させながら閉塞端部から突き出して施工することができない。つまり、表裏に反転した被覆ライニングクロス管の先端部が閉塞端部に近づくと、配管内に残留している空気が圧縮されて、配管内の空気圧が高まる。このため、一端側からフィルムチューブ内に供給された高圧空気の圧力と配管の閉塞端側の残留空気圧とが均衡して、被覆ライニングクロス管の反転、押し込み施工が円滑にできなく、閉塞端部近くの内周壁に、含浸ライニングクロス管を密着できなくなる。
【0009】
上記したように、一端が閉塞した配管である適用例に以下のようなケースがある。
図1に示す如く、LNGなど液化ガスを貯蔵する地下式低温タンクTの外周囲には、土壌層の凍結防止のためヒートフェンスHFが敷設される。このヒートフェンスHFは、地下式低温タンクTの外周囲を取り囲むように、所定の間隔で多数のヒートパイプHPを縦方向に埋設した構成となっている。ヒートフェンスHFには、各ヒートパイプHPに温水を循環させるための温水供給装置(図示せず)が付設されている。ヒートパイプHPには温水が供給され、地下式低温タンクTの周囲の土壌層の凍結を防止している。
【0010】
ヒートパイプHPは、上端が開放して地上に露出し下端が閉塞して地中に埋設する外管1と、この外管の内部に同軸的に配置され上端および下端が開放した内管(図示せず)とを備えている。循環される温水は、内管の上端から下端へ、そして外管1の下端でターンして上端から排出されて、あるいは、逆に、外管1の上端から注入されターンして内管の上端から排出されて、温水供給装置に帰還する。ヒートパイプHPは、腐食、不純物の堆積などで内壁が経時劣化する。ヒートフェンスHFを長期間稼働させるためには、ヒートパイプHPの外管の内壁に堅牢なライナー層を形成して補修することが必要である。
【0011】
このように、ヒートパイプの外管など下端が閉塞した配管の場合には、下端部から空気が抜けず、残留空気が存在する。従って、被覆ライニングクロス管の反転部は、配管内部の残留空気圧に対抗しながら、フィルムチューブ内に供給される高圧空気の圧力で押され、下方に反転移動する。含浸ライニングクロス管と配管の内壁との間は、僅かな隙間があり、多少の空気漏れが存在する。しかし、配管の内壁への反転移動距離つまり含浸ライニングクロス管との密着距離が大きくなったり、加圧付与されたりした状態では、残留空気の抜け道がほとんどなくなる。この結果、含浸ライニングクロス管の反転押込み施工が困難になるとともに、含浸ライニングクロス管に残留空気が存在して硬化すると、不均一でピンホールが存在するライナー層となる恐れもある。
【0012】
本発明の目的は、ヒートフェンスのヒートパイプの外管など、縦方向に配設され、かつ下端が閉塞した配管内に、下端部を含めて堅牢なライナー層を形成するために、一端から挿入した被覆ライニングクロス管を反転させながら配管内壁に密着させてゆく施工において、閉塞した下端部付近の内壁に、含浸ライニング管を確実に密着させることができる配管ライニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(請求項1について)
下端が閉塞し、上端が開口する縦方向に配置された配管の内壁にライナー層を形成する配管ライニング方法であって、表裏に反転可能な筒状のライニングクロス管に、液状ライニング塗料を含浸させて含浸ライニングクロス管とするとともに、一端が閉じた気密性のフィルムチューブで包囲して、外周側がフィルムチューブで、内周側が含浸ライニングクロス管の袋状の被覆ランニングクロス管を形成し、この被覆ランニングクロス管の他端を、配管の上端の外周側に同軸的に差し込むとともに、開口から配管内に入り込む初期反転部を形成し、この初期反転部のフィルムチューブ側に圧縮空気で圧力付与して、被覆ランニングクロス管を配管内に反転移動させながら、反転後に外周側となった含浸ライニングクロス管を配管の内壁に密着させる配管ライニング方法を採用している。
【0014】
そして、配管の下端部の施工は、フィルムチューブ内を減圧して配管の内壁と含浸ライニングクロス管との間に通気隙間を形成し、配管の下端部に滞留した空気を通気隙間から逃した後に、フィルムチューブ内に加圧流体を注入し、被覆ランニングクロス管を配管内に反転移動させて、含浸ライニングクロス管を配管の内壁に密着させることを特徴としている。
【0015】
これにより、被覆ライニングクロス管の反転最終期において、配管内壁との密着範囲は大きく、接触距離が長くても、圧力の上昇した残留空気を逃すことができ、配管の下端部の残留空気は減少し、配管内の圧力バランスは保たれるようになる。よって、フィルムチューブ内を再加圧することで反転は滑らかに進行し、含浸ライニングクロス管を、配管の閉塞した下端部内壁に密着させることが容易にできる。
この結果、閉塞した配管の下端部にも、ライニングクロス管を芯材とした液状ライニング塗料からなる含浸ライニングクロス管が密着したライナー層が形成される。
【0016】
(請求項2について)
含浸ライニングクロス管が長尺の場合に、フィルムチューブ内を加圧、減圧を繰り返して施工して含浸ライニングクロス管を配管の内壁に密着させることを特徴としている。
これにより、配管が非常に長くても配管の上端から下端まで均一の、かつ、堅牢なライナー層が形成できる。
【0017】
(請求項3について)
反転移動が完了した後、フィルムチューブ内に注入する加圧流体は温水であって、温水は、配管の下端に滞留させてから徐々に水深を増やし、配管の上端まで満水になるまで施工して含浸ライニングクロス管を配管の内壁に密着させることを特徴としている。
これにより、配管の下端部に残留する空気や配管の内壁との間に形成された通気隙間に残る泡状空気(空気泡)が、滞留温水の水圧により押し出され、しかも、満水まで水深が上昇するにしたがって水圧が空気泡を上方に押し出すように排出できるので、ピンホールの発生が防止でき、堅牢なライナー層が形成できる。
【0018】
(請求項4について)
温水は、液状ライニング塗料が熱硬化性である場合に、液状ライニング塗料を硬化させる熱硬化温度以上の温水であることを特徴としている。
これにより、硬化工程が短縮でき、サイクルタイムが向上する。
【0019】
(請求項5について)
ライニングクロス管の終端は、配管の下端から、被覆ランニングクロス管の肉厚以上の距離だけ上位に設定されていることを特徴としている。
これにより、従来例のように、一端側から他端側へ含浸ライニングクロス管を突き出し反転して、その後、突き出し部を切除する工程が不要となり、施工が簡単で工数が低減できる。
【0020】
(請求項6について)
配管は、液化ガスの地下式貯槽を囲むように配されたヒートフェンスを構成するとともに、地中に縦方向に埋設されたヒートパイプの外管であり、フィルムチューブ内に注入する加圧流体は、ヒートフェンスを構成するプラント温水源から供給される温水であることを特徴としている。
【0021】
これにより、大量の温水が使用できるため、地中に埋設され熱伝導で地中放熱の著しい配管であっても温度降下なく加熱でき、熱硬化温度以上に保ち易く、硬化工程が短縮できサイクルタイムが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】液化ガス貯槽のヒートフェンスを構成するヒートパイプの外管へライナー層を施工する態様を示す概略図である(実施例1)。
図2】外管に被覆ライニングクロス管を反転挿入する装置の概略図である(実施例1)。
図3】被覆ライニングクロス管の構成を示す斜視図である(実施例1)。
図4】外管に被覆ライニングクロス管を反転挿入する前半工程図である(実施例1)。
図5】外管に被覆ライニングクロス管を反転挿入する後半工程図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の実施形態を、図に示す実施例とともに説明する。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
(実施例1の構成)
図1、2に示すように、液化ガス地下式貯槽ヒートフェンス装置は、地中に埋設された液化ガス(たとえば液化LNG)貯槽T、および、土壌の凍土化を防止するため貯槽Tを囲むように設置されたヒートフェンスHFから構成される。ヒートフェンスHFは、貯槽Tの周囲に所定の間隔で配した多数のヒートパイプHPで構成されている。ヒートフェンスHFには、ヒートパイプHPに温水を循環させるための温水供給装置(図示せず)が付設されている。
【0025】
ヒートパイプHPは、上端11が開口し下端12が閉塞した有底円筒状の外管1と、外管1の内側に同軸的に配されるともに、上、下端とがいずれも開口した内管(図示せず)とを備えている。内管は、外管1へのライナー層Lの形成に先立って、内管を外部に取り出し、内部のクリーニングが行われ、流れ落ちた錆瘤やスケールなどの付着物は万能配管更生車(図示せず)により回収される。クリーニング後には、本発明の配管ライニング方法により、外管1の内壁10にライナー層Lが形成される。
【0026】
内壁10のライニング施工には、図3に示す如く、堅牢で耐久性に優れているガラス繊維、ポリエチレンなどの化学繊維を含む可撓性の織布(厚み1〜4mm)を筒状に成形したライニングクロス管2が使用される。ライニングクロス管2は、外管1の内径に見合った外径を有し、表裏に反転可能で、外管1の長さより幾分短い長さを有する。このライニングクロス管2に液状ライニング塗料3を含浸させ、表裏に反転可能な含浸ライニングクロス管30とする。なお、液状ライニング塗料3は、彩色用の顔料やエポキシ樹脂などを含有した液状のもので、熱硬化性のものが多用される。
【0027】
含浸ライニングクロス管30は、その外周を樹脂など可撓性の材質からなるフィルムチューブ4で全長にわたって被覆され、被覆ライニングクロス管5が構成される。本実施例では、フィルムチューブ4は、図3に示す如く、先端41が索条体Gの先端に締結されて気密状態で閉じるとともに、長さがライニングクロス管2より長く設定されている。
【0028】
被覆ライニングクロス管5は、フィルムチューブ4の先端部41に索条体Gの先端部を連結する。この実施例では、索条体Gは温水を供給するための温水ホース6を兼用しているが、索条体Gと温水ホース6とは別体であってもよい。温水ホース6の先端には、フィルムチューブ4の先端部41を気密的に連結するためのクランプ付きシャワリングノズル61が取り付けられている。
【0029】
この温水ホース6および被覆ライニングクロス管5は、温水ホース6側から反転機7のリール71に巻き取られている(図2参照)。巻き取られている順序は、温水ホース6につづいて、フィルムチューブ4の先端部41、被覆ライニングクロス管5となっている。図1に示す如く、反転機7にはコントローラ72が付設されており、コントローラ72には、温水源73、圧縮空気源74、電源75などが装着されている。
【0030】
(実施例1の施工手順)
次に、本発明になる配管の内壁のライニング施工手順を図4、5の工程1〜10を参照して説明する。なお、図4には、工程1〜5の前半部分を、図5には、工程6〜10の後半部分を分けて記載している。
【0031】
所定の長さを有し、ガラス繊維あるいはビニロン等の化学繊維を織物にして、表裏に反転可能なライニングクロス管2を形成する。このライニングクロス管2に、液状ライニング塗料3を含浸させて含浸ライニングクロス管30とするとともに、この外周を、先端が閉じた気密性のフィルムチューブ4で包囲するか、あるいは、フィルムチューブ4で先に包囲してのち先端を締結するかして、外周側がフィルムチューブ4で内周側が含浸ライニングクロス管30の袋状の被覆ランニングクロス管5を形成する(工程1)。
【0032】
この被覆ランニングクロス管5の後端を、下端12が閉塞し上端11が開口する縦方向に配置された配管1の開口端の外周部に差し込むことで連結する。この連結は、被覆ランニングクロス管5およびフィルムチューブ4の後端を、配管の上端11に被せるように差し込むもので密閉性はなく、空気が僅かに漏れる程度であればよい(工程2)。なお、本実施例では、縦方向に配置された配管とは、垂直以外に、傾斜して配置された配管も含む。
【0033】
そして、この被覆ランニングクロス管5の後端連結部に、初期反転治具8を配管1の内壁10と同軸に挿入し、配管1の上端11より少し窪んだ初期反転部を形成する。なお、被覆ランニングクロス管5は長尺の場合は、被覆ランニングクロス管5が捩れないように押しつぶし偏平にして反転移動がスムースに進むよう反転機7のリール71に一旦巻き取っておく(工程3)。
【0034】
つづいて、初期反転治具8の外周につながるダクトD内に、コンプレッサなどの圧縮空気を加圧付与する。被覆ランニングクロス管5は、初期反転部に作用する加圧空気の圧力により押され、下方(閉塞端部)へ連続的に反転しながら押し込まれていく。反転して外周側にひっくり返った含浸ライニングクロス管30は、配管1の内壁10に加圧空気の圧力によって密着しながら進む(工程4)。
【0035】
含浸ライニングクロス管30の配管1の内壁10での反転移動において、加圧空気の圧力の大きさに依存して反転移動位置が含浸ライニングクロス管30の終端まで届かないこともある。これは、反転移動が圧力差に従うものであり、その圧力差が、配管1の閉塞した下端部13の滞留空気の圧力上昇(背圧)によって生じないためである。そこで、配管1の閉塞した下端部13の施工は、下端部13の残留空気の十分な排気が必要であり、まず、フィルムチューブ4内を減圧する。つまり加圧空気を全て外部(大気)に逃す。これにより、今まで加圧空気の圧力によって内壁10に密着していた含浸ライニングクロス管30との間に僅かの通気隙間が形成され、この僅かの隙間を圧力上昇した残留空気が通過して配管1の上端11より外部(大気)に抜けるようになる(工程5)。
【0036】
背圧がなくなったので、次に、フィルムチューブ4内を再加圧する。すると、ひきつづき反転移動が進行し、被覆ランニングクロス管5の密着が施工できる(工程6)。反転移動の最終段階では、配管1の下端12に到達したフィルムチューブ4内を一旦減圧し、被覆ランニングクロス管5との間に僅かの隙間を設けて後、ノズル61から温水を注水し、フィルムチューブ4内に温水を滞留させる(工程7)。この操作により、配管1の下端12に滞留した残留空気が温水に作用する重力(水圧)によって底部から内壁隅部に押し出される。なお、工程7で注水するのは温水に限ることなく常温の水であっても、あるいは必要に応じて不凍液であっても構わない。
【0037】
その後、フィルムチューブ4内の注水を続け、徐々に満水になるまで継続する。こうすることで水深が深くなるに応じ、水圧は大きくなっていくので、しかも、下端12から順次上方に増加移動する挙動を示すため、底部もしくは内壁隅部に存在する残留空気はこの水圧により下方から上方へ絞り出されように押し出され、配管1の上端11から外部(大気)に排出される(工程8)。これにより、配管1の内壁10とフィルムチューブ4との間に残留している空気、しかも泡状の空気までも含浸ライニングクロス管30の全長に亘って確実に脱気できる。この結果、ピンホールのない堅牢なライナー層Lを形成することができる。
【0038】
上記工程でフィルムチューブ4内を満水にした後、再度フィルムチューブ4内に圧縮空気で圧力付与する(工程9)。これにより、水深が深く水圧の大きい配管1の下端12も、水深が浅く水圧が大きくない上端11にも同じ空気圧力の押付力がさらに付加されるので、含浸ライニングクロス管30の全長に亘って内壁10に強固に密着できる。
【0039】
上記工程のフィルムチューブ4内を満水にして、さらに加圧空気を付与したまま所定の時間液状ライニング塗料3を硬化させる。硬化完了したなら加圧付加を止め(減圧し)て、その後、満水を排水して、さらに、フィルムチューブ4を配管1内から引き出す。配管1内に上端11から下端12まで均一で一様な厚さの芯材を有した堅牢なライナー層Lが形成できる(工程10)。
[実施例2]
【0040】
液状ライニング塗料の硬化促進のため温水を使用することは好適であるが、適用対象がヒートフェンスHF向けの地中配管の場合は、温水の温度低下が早く、硬化の促進効果が低い。温水ホース6経由シャワリングノズル61からでは吐出量が少ない。したがって、温水供給量を増加させる方法として、別の温水供給源からの温水をフィルムチューブ4内に供給する方法を採用することができる。これには、前述のヒートパイプHPに温水を循環させるための温水供給装置が有効に利用できる。
【0041】
この場合、温水源(図1に示す)からの温水を反転機7経由で供給する方法でないため、被覆ライニングクロス管5を外管1へ誘導するための継手の一つであるヘルール継手にバルブを取り付け、このバルブの切替で直接フィルムチューブ4内に温水を供給する方法が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、下端が閉塞した縦方向に設置される配管のライニング施工が可能となり、液化ガスの地下式貯槽を囲むように配されたヒートフェンスを構成するヒートパイプの外管への堅牢なライナー層の形成が確実に実施できる。
【符号の説明】
【0043】
1 ヒートパイプの外管(配管)
2 ライニングクロス管
3 液状ライニング塗料
4 フィルムチューブ
5 被覆ライニングクロス管
6 温水ホース
7 反転機
10 外管の内壁
11 外管の開口した上端
12 外管の閉塞した下端
13 下端部
30 含浸ライニングクロス管
L ライナー層
T 液化ガスの地下式貯槽
HF ヒートフェンス
HP ヒートパイプ
【要約】
【課題】下端が閉塞した配管の内壁に、堅牢なライナー層を形成できる配管ライニング方法の提供。
【解決手段】被覆ランニングクロス管5の後端を、下端12が閉塞し上端11が開口して縦方向に配されたヒートパイプHPの外管1の上端11に連結し、さらに上端から外管1内に、表裏に反転させながら挿入して、反転して外周側となった含浸ライニングクロス管30を内壁10に密着させる配管ライニング方法において、外管1の下端部13の施工は、フィルムチューブ4内の加圧空気を一旦抜き、内壁10との間に通気隙間を形成するとともに、フィルムチューブ4内を再加圧付与することにより、含浸ライニングクロス管30の全長を外管1の内壁10に反転密着させるとともに、密着面間の残留空気を完全に除去し、ピンホールのない堅牢なライナー層Lを形成する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5