【実施例】
【0024】
[実施例1]
(実施例1の構成)
図1、2に示すように、液化ガス地下式貯槽ヒートフェンス装置は、地中に埋設された液化ガス(たとえば液化LNG)貯槽T、および、土壌の凍土化を防止するため貯槽Tを囲むように設置されたヒートフェンスHFから構成される。ヒートフェンスHFは、貯槽Tの周囲に所定の間隔で配した多数のヒートパイプHPで構成されている。ヒートフェンスHFには、ヒートパイプHPに温水を循環させるための温水供給装置(図示せず)が付設されている。
【0025】
ヒートパイプHPは、上端11が開口し下端12が閉塞した有底円筒状の外管1と、外管1の内側に同軸的に配されるともに、上、下端とがいずれも開口した内管(図示せず)とを備えている。内管は、外管1へのライナー層Lの形成に先立って、内管を外部に取り出し、内部のクリーニングが行われ、流れ落ちた錆瘤やスケールなどの付着物は万能配管更生車(図示せず)により回収される。クリーニング後には、本発明の配管ライニング方法により、外管1の内壁10にライナー層Lが形成される。
【0026】
内壁10のライニング施工には、
図3に示す如く、堅牢で耐久性に優れているガラス繊維、ポリエチレンなどの化学繊維を含む可撓性の織布(厚み1〜4mm)を筒状に成形したライニングクロス管2が使用される。ライニングクロス管2は、外管1の内径に見合った外径を有し、表裏に反転可能で、外管1の長さより幾分短い長さを有する。このライニングクロス管2に液状ライニング塗料3を含浸させ、表裏に反転可能な含浸ライニングクロス管30とする。なお、液状ライニング塗料3は、彩色用の顔料やエポキシ樹脂などを含有した液状のもので、熱硬化性のものが多用される。
【0027】
含浸ライニングクロス管30は、その外周を樹脂など可撓性の材質からなるフィルムチューブ4で全長にわたって被覆され、被覆ライニングクロス管5が構成される。本実施例では、フィルムチューブ4は、
図3に示す如く、先端41が索条体Gの先端に締結されて気密状態で閉じるとともに、長さがライニングクロス管2より長く設定されている。
【0028】
被覆ライニングクロス管5は、フィルムチューブ4の先端部41に索条体Gの先端部を連結する。この実施例では、索条体Gは温水を供給するための温水ホース6を兼用しているが、索条体Gと温水ホース6とは別体であってもよい。温水ホース6の先端には、フィルムチューブ4の先端部41を気密的に連結するためのクランプ付きシャワリングノズル61が取り付けられている。
【0029】
この温水ホース6および被覆ライニングクロス管5は、温水ホース6側から反転機7のリール71に巻き取られている(
図2参照)。巻き取られている順序は、温水ホース6につづいて、フィルムチューブ4の先端部41、被覆ライニングクロス管5となっている。
図1に示す如く、反転機7にはコントローラ72が付設されており、コントローラ72には、温水源73、圧縮空気源74、電源75などが装着されている。
【0030】
(実施例1の施工手順)
次に、本発明になる配管の内壁のライニング施工手順を
図4、5の工程1〜10を参照して説明する。なお、
図4には、工程1〜5の前半部分を、
図5には、工程6〜10の後半部分を分けて記載している。
【0031】
所定の長さを有し、ガラス繊維あるいはビニロン等の化学繊維を織物にして、表裏に反転可能なライニングクロス管2を形成する。このライニングクロス管2に、液状ライニング塗料3を含浸させて含浸ライニングクロス管30とするとともに、この外周を、先端が閉じた気密性のフィルムチューブ4で包囲するか、あるいは、フィルムチューブ4で先に包囲してのち先端を締結するかして、外周側がフィルムチューブ4で内周側が含浸ライニングクロス管30の袋状の被覆ランニングクロス管5を形成する(工程1)。
【0032】
この被覆ランニングクロス管5の後端を、下端12が閉塞し上端11が開口する縦方向に配置された配管1の開口端の外周部に差し込むことで連結する。この連結は、被覆ランニングクロス管5およびフィルムチューブ4の後端を、配管の上端11に被せるように差し込むもので密閉性はなく、空気が僅かに漏れる程度であればよい(工程2)。なお、本実施例では、縦方向に配置された配管とは、垂直以外に、傾斜して配置された配管も含む。
【0033】
そして、この被覆ランニングクロス管5の後端連結部に、初期反転治具8を配管1の内壁10と同軸に挿入し、配管1の上端11より少し窪んだ初期反転部を形成する。なお、被覆ランニングクロス管5は長尺の場合は、被覆ランニングクロス管5が捩れないように押しつぶし偏平にして反転移動がスムースに進むよう反転機7のリール71に一旦巻き取っておく(工程3)。
【0034】
つづいて、初期反転治具8の外周につながるダクトD内に、コンプレッサなどの圧縮空気を加圧付与する。被覆ランニングクロス管5は、初期反転部に作用する加圧空気の圧力により押され、下方(閉塞端部)へ連続的に反転しながら押し込まれていく。反転して外周側にひっくり返った含浸ライニングクロス管30は、配管1の内壁10に加圧空気の圧力によって密着しながら進む(工程4)。
【0035】
含浸ライニングクロス管30の配管1の内壁10での反転移動において、加圧空気の圧力の大きさに依存して反転移動位置が含浸ライニングクロス管30の終端まで届かないこともある。これは、反転移動が圧力差に従うものであり、その圧力差が、配管1の閉塞した下端部13の滞留空気の圧力上昇(背圧)によって生じないためである。そこで、配管1の閉塞した下端部13の施工は、下端部13の残留空気の十分な排気が必要であり、まず、フィルムチューブ4内を減圧する。つまり加圧空気を全て外部(大気)に逃す。これにより、今まで加圧空気の圧力によって内壁10に密着していた含浸ライニングクロス管30との間に僅かの通気隙間が形成され、この僅かの隙間を圧力上昇した残留空気が通過して配管1の上端11より外部(大気)に抜けるようになる(工程5)。
【0036】
背圧がなくなったので、次に、フィルムチューブ4内を再加圧する。すると、ひきつづき反転移動が進行し、被覆ランニングクロス管5の密着が施工できる(工程6)。反転移動の最終段階では、配管1の下端12に到達したフィルムチューブ4内を一旦減圧し、被覆ランニングクロス管5との間に僅かの隙間を設けて後、ノズル61から温水を注水し、フィルムチューブ4内に温水を滞留させる(工程7)。この操作により、配管1の下端12に滞留した残留空気が温水に作用する重力(水圧)によって底部から内壁隅部に押し出される。なお、工程7で注水するのは温水に限ることなく常温の水であっても、あるいは必要に応じて不凍液であっても構わない。
【0037】
その後、フィルムチューブ4内の注水を続け、徐々に満水になるまで継続する。こうすることで水深が深くなるに応じ、水圧は大きくなっていくので、しかも、下端12から順次上方に増加移動する挙動を示すため、底部もしくは内壁隅部に存在する残留空気はこの水圧により下方から上方へ絞り出されように押し出され、配管1の上端11から外部(大気)に排出される(工程8)。これにより、配管1の内壁10とフィルムチューブ4との間に残留している空気、しかも泡状の空気までも含浸ライニングクロス管30の全長に亘って確実に脱気できる。この結果、ピンホールのない堅牢なライナー層Lを形成することができる。
【0038】
上記工程でフィルムチューブ4内を満水にした後、再度フィルムチューブ4内に圧縮空気で圧力付与する(工程9)。これにより、水深が深く水圧の大きい配管1の下端12も、水深が浅く水圧が大きくない上端11にも同じ空気圧力の押付力がさらに付加されるので、含浸ライニングクロス管30の全長に亘って内壁10に強固に密着できる。
【0039】
上記工程のフィルムチューブ4内を満水にして、さらに加圧空気を付与したまま所定の時間液状ライニング塗料3を硬化させる。硬化完了したなら加圧付加を止め(減圧し)て、その後、満水を排水して、さらに、フィルムチューブ4を配管1内から引き出す。配管1内に上端11から下端12まで均一で一様な厚さの芯材を有した堅牢なライナー層Lが形成できる(工程10)。
[実施例2]
【0040】
液状ライニング塗料の硬化促進のため温水を使用することは好適であるが、適用対象がヒートフェンスHF向けの地中配管の場合は、温水の温度低下が早く、硬化の促進効果が低い。温水ホース6経由シャワリングノズル61からでは吐出量が少ない。したがって、温水供給量を増加させる方法として、別の温水供給源からの温水をフィルムチューブ4内に供給する方法を採用することができる。これには、前述のヒートパイプHPに温水を循環させるための温水供給装置が有効に利用できる。
【0041】
この場合、温水源(
図1に示す)からの温水を反転機7経由で供給する方法でないため、被覆ライニングクロス管5を外管1へ誘導するための継手の一つであるヘルール継手にバルブを取り付け、このバルブの切替で直接フィルムチューブ4内に温水を供給する方法が可能である。