特許第6039856号(P6039856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6039856-熱交換システム 図000002
  • 特許6039856-熱交換システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039856
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F24J 3/08 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   F24J3/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-157050(P2016-157050)
(22)【出願日】2016年8月9日
【審査請求日】2016年8月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514081427
【氏名又は名称】株式会社アグリクラスター
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【弁理士】
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】福宮 健司
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−75994(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0079953(US,A1)
【文献】 特開2014−202404(JP,A)
【文献】 特開2014−122712(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2085718(EP,A1)
【文献】 特許第5690960(JP,B1)
【文献】 特許第5067956(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの帯水層又は深度の異なる複数の帯水層に達する地中の穴に立設される筒であって、側面に有する浸水部を介して地下水が内部に流入する外筒と、
前記外筒に収容される筒であって、下方に有する通水部を介して地下水が内部に流入する内筒と、
前記内筒内の地下水を、前記通水部よりも浅い位置からくみ上げることで、前記内筒内に下方から上方に向けた対流を生じさせる揚水手段と、
地上のヒートポンプから前記内筒の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、上方に折り返して前記内筒の外部に引き出され、前記ヒートポンプから送り出される液体を循環させる循環管と、を備え、
前記内筒内の地下水と、前記循環管を流れる液体と、の間で熱を移動させることを特徴とする
熱交換システム。
【請求項2】
前記外筒内又は前記内筒内の地下水の温度を計測する第1水温計と、
前記揚水手段によってくみ上げられた地下水の温度を計測する第2水温計と、
前記揚水手段によってくみ上げられた地下水を前記外筒内に返送する送水手段と、
前記第1水温計の計測結果と前記第2水温計の計測結果との組合せに基づいて、前記送水手段を機能させるか否かを決定し、前記送水手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする
請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記送水手段は、前記揚水手段によってくみ上げられた地下水を前記外筒内における前記通水部よりも浅い位置に返送することで、前記外筒内に上方から下方に向けた対流を生じさせることを特徴とする
請求項2に記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記揚水手段は、
一端が前記内筒の内部に引き込まれていると共に、他端が前記地中の穴の外部に達している揚水管と、
前記揚水管内の地下水に動力を付与する揚水ポンプと、を備え、
前記送水手段は、
前記揚水管の途中に設けられている切替弁と、
一端が前記切替弁に接続されていると共に、他端が前記外筒の内部に引き込まれている送水管と、を備えていることを特徴とする
請求項2又は3に記載の熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を利用した熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原油価格の高騰やCO2削減に対する意識の高まりにより、ランニングコストが安くクリーンエネルギーである地中熱を利用したヒートポンプ(以下、地中熱ヒートポンプという。)が開発され、市場に導入されつつある。
【0003】
特許文献1及び2に開示されている地中熱ヒートポンプは、井戸に建て込んだUチューブに水などの液体を流し、井戸内の地下水とUチューブを流れる液体との間で熱のやり取りをすることで、地中熱を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5067956号公報
【特許文献2】特許第5690960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような地中熱ヒートポンプにおいては、熱交換効率の向上を図ることで、他の熱交換システムとの差別化を推し進め、利用価値を高めることが要求される。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、利用価値を高めた熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、一つの帯水層又は深度の異なる複数の帯水層に達する地中の穴に立設される筒であって、側面に有する浸水部を介して地下水が内部に流入する外筒と、前記外筒に収容される筒であって、下方に有する通水部を介して地下水が内部に流入する内筒と、前記内筒内の地下水を、前記通水部よりも浅い位置からくみ上げることで、前記内筒内に下方から上方に向けた対流を生じさせる揚水手段と、地上のヒートポンプから前記内筒の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、上方に折り返して前記内筒の外部に引き出され、前記ヒートポンプから送り出される液体を循環させる循環管と、を備え、前記内筒内の地下水と、前記循環管を流れる液体と、の間で熱を移動させることを特徴とする熱交換システムである。
【0008】
本発明によれば、仮に、複数の帯水層のうち上層の帯水層ばかりから、地中の穴に地下水が流入する場合であっても、あるいはそれ以外の場合であっても、地中の穴に流入した地下水を直ぐにくみ上げてしまうことはなく、流入した地下水を地中の穴の中で対流させることができる。そして、地中の穴の中で生じた対流により、地中の穴の中の地下水と、循環管を流れる液体と、の間で熱を効率的に移動させることができる。これにより、熱交換システムの利用価値が高まる。
【0009】
(2)本発明はまた、前記外筒内又は前記内筒内の地下水の温度を計測する第1水温計と、前記揚水手段によってくみ上げられた地下水の温度を計測する第2水温計と、前記揚水手段によってくみ上げられた地下水を前記外筒内に返送する送水手段と、前記第1水温計の計測結果と前記第2水温計の計測結果との組合せに基づいて、前記送水手段を機能させるか否かを決定し、前記送水手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする上記(1)に記載の熱交換システムである。
【0010】
上記発明によれば、送水手段を機能させた場合に、系外への地下水の排出量を抑制することができる。第1水温計の計測結果と第2水温計の計測結果との組合せに基づいて、地中の穴の中の地下水と循環管を流れる液体との間での熱の移動に影響が少ない場合に送水手段を機能させることで、地中熱の有効利用と排水量の抑制との双方を同時に実現することができる。これにより、熱交換システムの利用価値が高まる。
【0011】
(3)本発明はまた、前記送水手段は、前記揚水手段によってくみ上げられた地下水を前記外筒内における前記通水部よりも浅い位置に返送することで、前記外筒内に上方から下方に向けた対流を生じさせることを特徴とする上記(2)に記載の熱交換システムである。
【0012】
上記発明によれば、外筒内に返送された地下水が通水部を介して直ちに内筒に流入してしまうことはなく、返送された地下水を外筒内で対流させることができる。そして、外筒内で生じた上方から下方への対流と、内筒内で生じた下方から上方への対流と、の双方向への対流により、外筒内の地下水と、内筒内の地下水と、の間で熱を効率的に移動させることができる。これにより、熱交換システムの利用価値が高まる。
【0013】
(4)本発明はまた、前記揚水手段は、一端が前記内筒の内部に引き込まれていると共に、他端が前記地中の穴の外部に達している揚水管と、前記揚水管内の地下水に動力を付与する揚水ポンプと、を備え、前記送水手段は、前記揚水管の途中に設けられている切替弁と、一端が前記切替弁に接続されていると共に、他端が前記外筒の内部に引き込まれている送水管と、を備えていることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の熱交換システムである。
【0014】
上記発明によれば、揚水ポンプという一つの動力源を備えるだけで、系外への地下水の排出と、内筒内からくみ上げられた地下水の外筒内への返送と、の双方を行うことができる。これにより、熱交換システムの利用価値が高まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱交換システムの利用価値が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
図2】制御盤の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱交換システムについて詳細に説明する。
【0018】
まず、図1及び図2を用いて、熱交換システム1の構成について説明する。図1は、熱交換システム1の概略図である。図2は、制御盤21の構成を示すブロック図である。なお、各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。
【0019】
図1に示す熱交換システム1は、地中熱を利用したヒートポンプ(地中熱ヒートポンプ)システムである。この熱交換システム1は、制御盤21によって統括的に制御される。すなわち、熱交換システム1は、制御盤21の制御下において動作して、その動作状況が制御盤21によって管理される。具体的に、熱交換システム1は、各所に配置された温度計の計測結果などに基づいて、各部の動作が所望する状況となるようにフィードバック制御される。
【0020】
このような熱交換システム1は、井戸2と、循環管3と、循環ポンプ4と、地下水温度計測管5と、循環液温度計6と、ヒートポンプ7と、揚水手段8と、揚水温度計(第2水温計)9と、送水手段10と、制御盤21等を備えている。
【0021】
井戸2は、深度の異なる複数の帯水層WBL1,WBL2,WBL3に達する地中GRDの穴であり、径の異なる外筒11と内筒12とを有する。各帯水層WBL1,WBL2,WBL3は、地下水を含む地層である。
【0022】
外筒11は、地中GRDの穴に立設される有底の筒であり、透水性を良くするための硅砂SSが周囲に設けられ、側面に有するスリット(浸水部)13を介して地下水が内部に流入する。外筒11の内部には、帯水層WBL1,WBL2,WBL3から地下水が流入している。スリット13は、各帯水層WBL1,WBL2,WBL3に対応する深度に有していることが好ましく、外筒11に適宜設けられている。このような外筒11には、内筒12が収容されていると共に、地下水温度計測管5と、送水管18とが挿入されている。
【0023】
内筒12は、外筒11に収容される有底の筒であり、下方に有する通水孔(通水部)14を介して地下水が内部に流入する。内筒12の内部には、帯水層WBL1,WBL2,WBL3から外筒11を経由して地下水が流入している。内筒12の内部に流入している地下水の自然水位(一点鎖線で図示)は、外筒11の内部に流入している地下水の自然水位(内筒12の外部の自然水位)と一致している。通水孔14は、内筒12の内部に流入した地下水が乱流となる構造を有している。そのような内筒12には、循環管3と、揚水管15とが挿入されている。
【0024】
なお、内筒12が通水孔14を有する「下方」との位置は、できる限り下方の位置であることが好ましいが、後述する揚水手段8によって内筒12内に下方から上方に向けた対流を生じさせる位置であれば良く、内筒12の中間付近の位置を排除する意味合いを持つものではない。
【0025】
循環管3は、地上のヒートポンプ7から内筒12の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、内筒12における下方で上方に折り返して内筒12の外部に引き出されている。この循環管3は、循環ポンプ4の動力によって、ヒートポンプ7から送り出される水などの液体を循環させる。これにより、内筒12内の地下水と、循環管3を流れる液体と、の間で熱の移動が可能になる。すなわち、熱交換システム1は、内筒12内の地下水が循環管3を流れる液体よりも低温の場合、循環管3を流れる液体を冷却する。一方、熱交換システム1は、内筒12内の地下水が循環管3を流れる液体よりも高温の場合、循環管3を流れる液体を加熱する。
【0026】
循環ポンプ4は、循環管3の途中に設けられ、地下水温度計測管5を構成する地下水温度計(第1水温計)5bの計測結果や、循環液温度計6の計測結果などに基づいて動作する。これにより、循環ポンプ4は、循環管3内の液体に動力を付与することで、循環管3内の液体を循環させる。
【0027】
地下水温度計測管5は、外筒11内に挿入されている。この地下水温度計測管5は、管本体5aと、複数の地下水温度計5bと、を備えている。複数の地下水温度計5bは、互いに所定の間隔(例えば、10m間隔)をおいて管本体5aに取り付けられている。これら複数の地下水温度計5bは、外筒11内の地下水の温度を計測し、その計測結果を信号にして出力し、その信号を制御盤21に入力する。
【0028】
循環液温度計6は、循環管3の途中に設けられている。この循環液温度計6は、外筒11内の地下水と熱の移動をする前の循環管3内の液体の温度を計測し、その計測結果を信号にして出力し、その信号を制御盤21に入力する。
【0029】
ヒートポンプ7は、循環管3等が接続されている。このヒートポンプ7は、循環管3を流れる液体の冷熱又は温熱をかき集め、かき集めた冷熱又は温熱を冷暖房や給湯などに利用可能にする。すなわち、ヒートポンプ7は、井戸2において循環管3内の液体に移動していた地下水の冷熱又は温熱を取り出して、冷暖房や給湯などに利用可能にする。
【0030】
揚水手段8は、内筒12内の地下水を、内筒12が有する通水孔14よりも浅い位置からくみ上げることで、内筒12内に下方から上方に向けた対流を生じさせる。具体的に、揚水手段8は、揚水管15と揚水ポンプ16とを備えている。
【0031】
揚水管15は、その一端が内筒12の内部に引き込まれていると共に、その他端が井戸2の外部(排水設備等)に達している。この揚水管15は、揚水ポンプ16の動力によって内筒12から取り込まれた地下水を、井戸2の外部に排出する。
【0032】
揚水ポンプ16は、揚水管15の途中に設けられ、地下水温度計測管5を構成する地下水温度計5bの計測結果や、循環液温度計6の計測結果などに基づいて動作する。この揚水ポンプ16は、内筒12から揚水管15に地下水を取り込んで、揚水管15内の地下水に動力を付与する。
【0033】
揚水温度計9は、揚水管15の途中に設けられている。この揚水温度計9は、揚水手段8によってくみ上げられた揚水管15内の地下水の温度を計測し、その計測結果を信号にして出力し、その信号を制御盤21に入力する。
【0034】
送水手段10は、揚水手段8によってくみ上げられた地下水を外筒11内における浅い位置に返送することで、外筒11内に上方から下方に向けた対流を生じさせる。
【0035】
なお、地下水を返送する外筒11内の「浅い位置」とは、できる限り浅い位置であることが好ましく、特に、自然水位付近の位置や自然水位よりも上方の位置であることが好ましいが、地下水の返送によって外筒11内に上方から下方に向けた対流を生じさせる位置、すなわち、通水孔14よりも浅い位置であれば良く、外筒11の中間付近の位置や外筒11の下方の位置を排除する意味合いを持つものではない。
【0036】
具体的に、送水手段10は、切替弁17と送水管18とを備えている。
【0037】
切替弁17は、揚水管15の途中に設けられ、地下水温度計測管5を構成する地下水温度計5bの計測結果や、揚水温度計9の計測結果などに基づいて動作する。この切替弁17は、揚水手段8によってくみ上げられた地下水の経路を、井戸2の外部に達する揚水管15と、外筒11の内部に引き込まれている送水管18とで切り替える。
【0038】
送水管18は、その一端が切替弁17に接続されていると共に、その他端が外筒11の内部に引き込まれている。この送水管18は、揚水手段8によってくみ上げられた地下水を外筒11内に返送する。
【0039】
図2に示すように、制御盤21は、データロガー22とCPU(Central Processing Unit)23とを有する。
【0040】
データロガー22は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記録媒体によって構成されている。このデータロガー22には、CPU23が各種処理を実行するための処理プログラムと各種処理を実行する際に用いられる各種データ(判定部25が判定に用いるデータを含む。)及び各種フラグが記憶されている。
【0041】
CPU23は、データロガー22に記憶された処理プログラムを実行することによって、通信部24、判定部25及び制御部26として機能する。
【0042】
通信部24は、熱交換システム1の各部との間で信号を送受信する。具体的に、通信部24は、地下水温度計測管5を構成する地下水温度計5b、循環液温度計6及び揚水温度計9等から出力された信号を、判定部25に転送する。そして、通信部24は、制御部26が出力する制御信号を、循環ポンプ4、ヒートポンプ7、揚水ポンプ16及び切替弁17に転送する。
【0043】
判定部25は、地下水温度計測管5を構成する地下水温度計5b、循環液温度計6及び揚水温度計9等から出力された信号に基づいて各種判定を行うことで、循環ポンプ4、ヒートポンプ7、揚水ポンプ16及び切替弁17等のそれぞれの運転状況を決定する。そして、判定部25は、判定結果を信号にして制御部26に出力する。
【0044】
制御部26は、循環ポンプ4、ヒートポンプ7、揚水ポンプ16及び切替弁17等のそれぞれに対して、通信部24を介して、判定部25から出力された信号に基づく制御信号を出力し、それぞれの運転状況を制御する。
【0045】
このようなCPU23は、地下水温度計5bの計測結果と揚水温度計9の計測結果との組合せに基づいて、送水手段10を機能させるか否かを決定し、送水手段10を制御する制御手段として機能する。
【0046】
次に、熱交換システム1における熱の流れを図1に基づいて説明する。
【0047】
まず、夏季などに冷房を行う場合を説明する。ヒートポンプ7は、循環管3を流れる液体から冷熱をかき集め、かき集めた冷熱を冷房に利用する。循環管3を流れる液体は、ヒートポンプ7において加熱される。ヒートポンプ7で加熱された循環管3内の液体は、内筒12内の地下水を加熱する際に冷却されて、ヒートポンプ7で再び利用可能となる。循環管3を流れる液体によって加熱された内筒12内の地下水は、帯水層WBL1,WBL2,WBL3からの外筒11を経由した地下水の移動や、揚水手段8による揚水、あるいは、大気との接触等によって冷却される。
【0048】
続いて、冬季などに暖房や給湯を行う場合を説明する。ヒートポンプ7は、循環管3を流れる液体から温熱をかき集め、かき集めた温熱を暖房や給湯に利用する。循環管3を流れる液体は、ヒートポンプ7において冷却される。ヒートポンプ7で冷却された循環管3内の液体は、内筒12内の地下水を冷却する際に加熱されて、ヒートポンプ7で再び利用可能となる。循環管3を流れる液体によって冷却された内筒12内の地下水は、帯水層WBL1,WBL2,WBL3からの外筒11を経由した地下水の移動や、揚水手段8による揚水、あるいは、大気との接触等によって加熱される。
【0049】
このように、熱交換システム1によれば、仮に、複数の帯水層WBL1,WBL2,WBL3のうち上層の帯水層WBL1ばかりから、地中GRDの穴(井戸2)に地下水が流入する場合であっても、あるいはそれ以外の場合であっても、地中GRDの穴(井戸2)に流入した地下水を直ちにくみ上げてしまうことはなく、流入した地下水を地中GRDの穴(井戸2)の中で対流させることができる。そして、地中GRDの穴(井戸2)の中で生じた対流により、地中GRDの穴(井戸2)の中の地下水と、循環管3を流れる液体と、の間で熱を効率的に移動させることができる。これにより、熱交換システム1の利用価値が高まる。
【0050】
また、送水手段10を機能させた場合に、系外への地下水の排出量を抑制することができる。地下水温度計5bの計測結果と揚水温度計9の計測結果との組合せに基づいて、地中GRDの穴(井戸2)の中の地下水と循環管3を流れる液体との間での熱の移動に影響が少ない場合に送水手段10を機能させることで、地中熱の有効利用と排水量の抑制との双方を同時に実現することができる。これにより、熱交換システム1の利用価値が高まる。
【0051】
さらに、揚水手段8によってくみ上げられた地下水を浅い位置に返送するので、外筒11内に返送された地下水が通水孔14を介して直ちに内筒12に流入してしまうことはなく、返送された地下水を外筒11内で対流させることができる。そして、外筒11内で生じた上方から下方への対流と、内筒12内で生じた下方から上方への対流と、の双方向への対流により、外筒11内の地下水と、内筒12内の地下水と、の間で熱を効率的に移動させることができる。これにより、熱交換システム1の利用価値が高まる。
【0052】
また、揚水ポンプ16という一つの動力源を備えるだけで、系外への地下水の排出と、内筒12内からくみ上げられた地下水の外筒11内への返送と、の双方を行うことができる。これにより、熱交換システム1の利用価値が高まる。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置、大きさ、長さ、数量、形状、材質、タイミングなどは適宜変更できる。
【0054】
すなわち、上記実施形態では、揚水手段8を構成する揚水ポンプ16による動力によって送水手段10が機能する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内筒12内の地下水をくみ上げて外筒11内へ返送する送水手段は、揚水手段8を構成する揚水ポンプ16とは別の送水ポンプを備えることで、揚水手段8とは独立して機能するものであっても良い。
【0055】
あるいは、上記実施形態では、地下水温度計測管5が外筒11内に挿入されている場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、井戸2内の地下水の温度を計測することができれば良く、地下水温度計測管5が内筒12内に挿入されているものであっても良い。
【0056】
あるいは、上記実施形態では、深度の異なる複数の帯水層WBL1,WBL2,WBL3に達する地中GRDの穴に熱交換システム1が設けられている場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一つの帯水層に達する地中GRDの穴に熱交換システム1が設けられているものであっても良い。一つの帯水層の深度は浅くても深くても良く、帯水層に達していれば、帯水層を貫通するように熱交換システム1が設けられていても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 熱交換システム
2 井戸
3 循環管
4 循環ポンプ
5 地下水温度計測管
5a 管本体
5b 地下水温度計(第1水温計)
6 循環液温度計
7 ヒートポンプ
8 揚水手段
9 揚水温度計(第2水温計)
10 送水手段
11 外筒
12 内筒
13 スリット(浸水部)
14 通水孔(通水部)
15 揚水管
16 揚水ポンプ
17 切替弁
18 送水管
21 制御盤
22 データロガー
23 CPU
24 通信部
25 判定部
26 制御部
WBL1,WBL2,WBL3 帯水層
GRD 地中
SS 珪砂
【要約】
【課題】利用価値を高めた熱交換システムを提供する。
【解決手段】熱交換システム1は、深度の異なる複数の帯水層WBL1,WBL2,WBL3に達する地中GRDの穴に立設される筒であって、側面に有するスリット13を介して地下水が内部に流入する外筒11と、外筒11に収容される筒であって、下方に有する通水孔14を介して地下水が内部に流入する内筒12と、内筒12内の地下水を、通水孔14よりも浅い位置からくみ上げることで、内筒12内に下方から上方に向けた対流を生じさせる揚水手段8と、地上のヒートポンプ7から内筒12の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、上方に折り返して内筒12の外部に引き出され、ヒートポンプ7から送り出される液体を循環させる循環管3と、を備え、内筒12内の地下水と、循環管3を流れる液体と、の間で熱を移動させる。
【選択図】図1
図1
図2