特許第6039857号(P6039857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6039857-廃菌床を利用した魚類の与餌方法 図000002
  • 特許6039857-廃菌床を利用した魚類の与餌方法 図000003
  • 特許6039857-廃菌床を利用した魚類の与餌方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039857
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】廃菌床を利用した魚類の与餌方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/00 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   A01K61/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-160384(P2016-160384)
(22)【出願日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年8月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516248565
【氏名又は名称】平田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 倫太郎
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−253221(JP,A)
【文献】 特開2009−159828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色腐朽菌を栽培した後の廃菌床を用い、
該廃菌床を海中に沈設することでフナクイムシ科の生物を着棲・生育させ
該生物を魚類の餌とする
ことを特徴とする廃菌床を利用した魚類の与餌方法。
【請求項2】
前記廃菌床を、海中に沈設した籠状の漁礁内に入れる
ことを特徴とする請求項1記載の廃菌床を利用した魚類の与餌方法。
【請求項3】
前記廃菌床、木片、あるいは前記廃菌床と木片とを、海中に沈設した籠状の漁礁内に水と共に圧入する
ことを特徴とする請求項1または2記載の廃菌床を利用した魚類の与餌方法。
【請求項4】
前記廃菌床の表面を、天然ゴムでコーティングする
ことを特徴とする請求項1または2または3記載の廃菌床を利用した魚類の与餌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃菌床を利用した魚類の与餌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類の餌となるフナクイムシ類などの木質セルロースを食料とする生物を増殖させるためには、丸太を海中に沈めてきた経緯がある。例えば、特許文献1のように。
【0003】
しかし、丸太は硬いうえに浮力があり海面に浮上した場合、航行する船舶等に損傷を与える恐れがあるため丸太等をフナクイムシ類などの餌にする場合、ダイバーに漁礁等に厳重に固定する必要があり、その安全面への投資が、木製タイプの漁礁のコスト上昇を招いている。
【0004】
なお、チップ材を袋に入れて海中に投下する方法も上記のようにコスト高となり、また、フナクイムシ類が持つ、木材に穴を開けその穴に石灰質の膜を塗ることで巣穴にする特性から考えると、一枚一枚は薄いチップ材であっても巣穴を作るのには困難な物体であるため、フナクイムシ類への与餌方法としては向いてないと判断される。例えば、特許文献1のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−35759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為に、この発明は、極めて安価で設置でき、しかも航行する船舶等にも安全なオガ粉等のチップ材を菌糸により一つの塊にした廃菌床を用いた魚類の与餌効果の高い廃菌床を利用した魚類の与餌方法を開発・提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の廃菌床を利用した魚類の与餌方法は、
白色腐朽菌を栽培した後の廃菌床を用い、
該廃菌床を海中に沈設することでフナクイムシ科の生物を着棲・生育させ
該生物を魚類の餌とすることを特徴とする。
【0008】
また、
前記廃菌床を、海中に沈設した籠状の漁礁内に入れる
ことを特徴とする。
【0009】
そして、
前記廃菌床、木片、または、前記廃菌床と木片を、海中に沈設した籠状の漁礁内に水と共に圧入する
ことを特徴とする。
【0010】
さらに、
前記廃菌床の表面を、天然ゴムでコーティングする
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、白色腐朽菌を栽培した後の廃菌床をフナクイムシ類の着棲・生育に利用することにより、漁礁としての効果を奏する。また、廃菌床を一つの塊にし、柔らかく、且つフナクイムシ類が巣穴を作るボリュームを確保できる餌として使用することができ、仮に浮上しても船舶への影響は少なく安全であるとの効果を奏する。
【0012】
さらに、セルロースを食べるために邪魔なリグニンの分解が進んでいる、シイタケ等の白色腐朽菌を栽培した廃菌床を使用することで、与餌効果を上げるとの効果を奏する。
【0013】
また、廃菌床等の海への投入方法及び餌としての廃菌床の交換方法も、搬送管とポンプを使用することにより陸あるいは船上より簡単に行えるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明に使用する廃菌床の一実施例を示す斜視図である。
図2】この発明に使用する廃菌床の加工方法の一実施例を示す説明図である。
図3】この発明の使用状態の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明について詳細に説明する。尚、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0016】
そこで、この発明の一実施例を図1に基づいて詳述すると、白色腐朽菌を栽培した後の廃菌床(1)を用い、該廃菌床(1)を海中に沈設することでフナクイムシ科の生物を着棲・生育させ該生物を魚類の餌とすることを特徴とする廃菌床を利用した魚類の与餌方法より構成されるものである。



【0017】
なお、前記廃菌床(1)は、オガ粉を固めて構成されたものであり、外周に菌糸(X)でまとわれており、さらに、前記廃菌床(1)を、海中に沈設した籠状の漁礁(Y)内に挿入することを特徴とする廃菌床を利用した魚類の与餌方法から構成される。
【0018】
また、海中に沈設した籠状の漁礁(Y)内に収納された前記廃菌床(1)の投入方法や交換方法の一例としては、図3に示すように、例えば、ポンプ等の駆動源(P)を用い、搬送管(5)内で水圧を利用して前記廃菌床(1)を投入し、あるいは、不要になった廃菌床を吸引して排出することにより、陸より容易に挿入、排出できるものである。
【0019】
また、前記廃菌床のほか、木片、前記廃菌床と木片とを水圧を利用して圧送することもあり、これによりフナクイムシの餌をより増やすようにすることも可能である。
【0020】
そして、 前記廃菌床(1)の表面を、天然ゴム(2)でコーティングし、酢(3)に浸漬することにより、コーティング廃菌床(4)とし、乾燥をはやめ、廃菌床(1)の形状が崩れ難くすると共に、有機物であるため、自然界で分解できるものである。
【0021】
廃菌床(1)は、シイタケ等の白色腐朽菌を栽培した後の廃菌床であり、柔らかくフナクイムシ類、あるいは、フナクイムシ科の生物が巣穴を作るボリュームを確保でき魚類の餌として利用するものである。
【0022】
なお、フナクイムシ科の生物とは、フナクイムシ(Teredo navalis)、ヤツフナクイムシ(Lyrodus pedicellatus)、タカノシマフナクイムシ(Lyrodus takanoshimensis)、オオフナクイムシ(Bankia bipalmulata)、ヤセオオフナクイムシ(Bankia carinata)、キタオオフナクイムシ(Bankia setacea)、ニオガイのカモメガイモドキ(Martesis striata)をいう。
【0023】
また、このフナクイムシ科の生物は、前記廃菌床(1)で着棲・生育されて魚類の餌となるものである。
【0024】
籠状の漁礁(Y)とは、金属製で一部開口した箱体であり、該箱内に廃菌床(1)を一個あるいは複数個を収納するものであり、網状、あるいは格子状の素材で籠状に形成されており、該廃菌床(1)に着棲・生育されたフナクイムシ科の生物は、この空隙部を有する箱体状の漁礁よりでることにより魚類の餌となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明の廃菌床を利用した魚類の与餌方法の技術を確立し、これに基づいて製造・販売することにより市場に寄与する点で産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0026】
1 廃菌床
2 天然ゴム
3 酢
4 コーティング廃菌床
5 搬送管
P 駆動源
X 菌糸
Y 漁礁
【要約】
【課題】この発明は、極めて安価で設置でき、しかも航行する船舶等にも安全なオガ粉等のチップ材を菌糸により一つの塊にした廃菌床を用い、魚類の与餌効果の高い廃菌床を利用した魚類の与餌方法を開発・提供する事にある。
【解決手段】白色腐朽菌を栽培した後の廃菌床(1)を用い、該廃菌床を海中に沈設することでフナクイムシカ科の生物を着棲・生育させ、該生物を魚類の餌とすることを特徴し、前記廃菌床を、海中に沈設した籠状の漁礁(Y)内に入れ,前記廃菌床、木片、あるいは前記廃菌床と木片とを、海中に沈設した籠状の漁礁内に水と共に圧入し、前記廃菌床の表面を、天然ゴム(2)でコーティングし、前記廃菌床(1)は、オガ粉を固めて構成されたものであり、外周に菌糸(X)でまとわれ、さらに、前記廃菌床(1)を、海中に沈設した籠状の漁礁(Y)内に挿入することを特徴とする廃菌床を利用した魚類の与餌方法。
【選択図】 図3
図1
図2
図3