(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例による擬似SOCウエハの製造方法について説明する。
【0011】
まず、
図1A〜
図1Cを参照して、本実施例の方法で作製された擬似SOCウエハの概略構造について説明する。
【0012】
図1Aは、実施例による擬似SOCウエハの平面図であり、
図1B及び
図1Cは、実施例による擬似SOCウエハの断面図である。
図1B及び
図1Cはそれぞれ、
図1Aに示すBB方向断面図及びCC方向断面図である。
【0013】
面内方向に並べられた複数の半導体チップ1b、1c等が樹脂基板1a中に封止されて、再構築ウエハ1が形成されている。再構築ウエハ1では、1組のユニットとしてまとめたい複数の半導体チップ(例えばロジックとメモリ)が近接して配置され、複数のユニットが行列状に並べて配置されている。擬似SOCウエハの完成後、各ユニットが切り離されて、個々の製品となる。
【0014】
図1A〜
図1C(及び、後に説明する
図2A〜
図2V、
図3A、
図3B)には、ユニット1つ分の領域近傍を例示し、1つ分のユニットUnが、2つの半導体チップ1b及び1cで形成されている場合を例示する。
【0015】
再構築ウエハ1の上方に、再配線層21が形成されている。再配線層21は、半導体チップ1b、1c間を電気的に接続する配線部分21aや、外部への引き出し配線部分を含む。平面
図1Aに示すように、この例では、半導体チップ1b、1c間を電気的に接続する配線21aが、複数本平行に配置されている。断面
図1Bは、配線21aの長さ方向に沿った、配線21aを通る部分の断面図であり、断面
図1Cは、配線21aの幅方向に沿った、配線21aを横切る部分の断面図である。
【0016】
配線21aは、例えば、各々の幅が2μm以下で、隣り合う間隔が2μm以下のパターン(2μm以下のラインアンドスペースパターン)で形成された微細配線である。以下に説明するように、本実施例では、配線21a等の微細な配線を、ダマシン法により形成する。
【0017】
次に、
図2A〜
図2V、及び、
図3A、
図3Bを参照して、実施例による擬似SOCウエハの製造方法について説明する。
図2A〜
図2Vは、実施例による擬似SOCウエハの製造方法の主要工程を示すBB方向断面図である。
【0018】
図2Aを参照する。再構築ウエハ1を用意する。半導体チップ1b及び1cは、それぞれ、端子の配置された面が露出するように、面内方向に並んで配置されている。半導体チップ1b及び1cを封止する樹脂の材料(樹脂基板1aの材料)は、例えばアクリル系樹脂等の絶縁性樹脂である。
【0019】
図2Bを参照する。樹脂基板1の全面上に、シード層2を形成する。シード層2は、例えば、スパッタリングによりTi層を厚さ20nm堆積し、Ti層上にスパッタリングによりCu(銅)層を厚さ100nm堆積して形成される。Ti層が、その上に形成されるCu部材と下地との密着性向上、及びCuの酸化・拡散防止の働きを持つ。
【0020】
図2Cを参照する。シード層2上に、レジストを例えば厚さ8μm塗布してレジスト層を形成する。このレジスト層を露光し、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)により現像して、レジストパターンRP1を形成する。レジストパターンRP1は、半導体チップ1b及び1cの各端子上に開口を有する。
【0021】
図2Dを参照する。シード層2を給電層とする電解めっきにより、導電材料として例えばCuを堆積して、レジストパターンRP1の各開口内に、ピン3を形成する。ピン3のめっき高さは、例えば3μmである。各ピン3が、半導体チップ1b及び1cの各端子に電気的に接続される。なお、ピン3のめっき高さは、設計に応じて適宜選択することができる。
【0022】
図2Eを参照する。レジストパターンRP1をアセトン等により除去する。そして、ピン3の外側のシード層2を除去する。各ピン3が、電気的に分離される。シード層2のCu層は、例えば、硫酸カリウムをエッチング液とするウェットエッチングで除去される。シード層2のTi層は、例えば、フッ化アンモニウム水溶液をエッチング液とするウェットエッチングや、また例えば、CF
4とO
2との混合ガスをエッチングガスとするドライエッチングで除去される。
【0023】
図2Fを参照する。例えば、フェノール系樹脂を厚さ4μmスピンコートで塗布し、200℃〜250℃(例えば250℃)でキュア(硬化)させることにより、ピン3を埋め込む絶縁層4を形成する。
【0024】
図2Gを参照する。絶縁層4の上部を化学機械研磨(CMP)で研磨除去して、ピン3の上面を露出させる。
【0025】
図2Hを参照する。絶縁層4上に、例えば、感光性フェノール系樹脂を厚さ2μm塗布して、絶縁層5を形成する。後の工程で、絶縁層5に形成された配線溝6内に、配線10が形成される。絶縁層5の厚さは、必要な配線10の厚さに応じて適宜選択することができる。
【0026】
図2Iを参照する。絶縁層5に、露光及び現像により、配線溝6を画定するパターンを形成し、さらに例えば250℃でのキュア(硬化)を行う。絶縁層5に形成された配線溝6が、ピン3を露出させる。例えば配線溝6aは、半導体チップ1bの端子に接続するピン3と、半導体チップ1cの端子に接続するピン3の両方を露出し、後の工程で配線溝6a内に形成される配線21aが、半導体チップ1b、1c間を電気的に接続する。
【0027】
図2Jを参照する。配線溝6の内面を覆って、絶縁層5上に、シード層7を形成する。シード層7は、例えば、シード層2と同様にして形成される。
【0028】
図2Kを参照する。シード層7上に、レジストを例えば厚さ8μm塗布してレジスト層RL2を形成する。レジスト層RL2の厚さは、後の
図2Mに示す工程でめっきにより堆積されるCuが、レジスト層RL2の上面上にオーバーフローしないような厚さであればよい。
【0029】
図2Lを参照する。レジスト層RL2を露光し、例えばTMAHにより現像して、レジストパターン(マスクパターン)RP2を形成する。レジストパターンRP2は、配線溝6を露出する配線形成用開口8aと、配線形成用開口8aの外側に配置され、配線溝6を露出しないダミー形成用開口8bとを有する。
【0030】
図2Mを参照する。シード層7を給電層とする電解めっきにより、配線形成用開口8a内及びダミー形成用開口8b内のそれぞれに、導電材料として例えばCuを堆積する。配線形成用開口8a内では、導電材料が、配線溝6内に充填され、さらに、絶縁層5の上面上に堆積されて、配線導電部材9aが形成される。配線導電部材9aは、配線溝6内でピン3に電気的に接続される。ダミー形成用開口8b内では、導電材料が、絶縁層5上に堆積されて、ダミー導電部材9bが形成される。
【0031】
絶縁層5の上面上の配線導電部材9aのめっき高さが、例えば3μmとなるように、めっきが行われる。配線導電部材9aのめっき高さを例えば3μmとするとき、絶縁層5の上面上のダミー導電部材9bのめっき高さは、例えば3.5μm程度となる。後に説明するように、配線導電部材9aの上面に比べて、ダミー導電部材9bの上面が高くなっていることが好ましい。
【0032】
図2Nを参照する。レジストパターンRP2をアセトン等により除去する。そして、例えば150℃で2分のアニールを行って、めっきで成膜したCuのグレインを成長させ、膜質を安定させる。このような、めっき後のセルフアニールを促進するアニールの好ましい条件は、120℃〜200℃で1分〜10分、酸素濃度が低い環境が特に好ましいが、大気中でも構わない。なお、セルフアニールにより、例えばめっき膜厚3μmであれば、室温(20℃〜25℃)でも24時間程度でグレインが成長する。
【0033】
図2Oを参照する。絶縁層5の上面上の配線導電部材9a及びダミー導電部材9bをCMPで研磨除去する。絶縁層5の配線溝6内に充填された配線導電部材9aが残されて、配線10が形成される。このCMPにより、配線10の外側のシード層7も除去され、各配線10が電気的に分離される。半導体チップ1bと1cとを電気的に接続する配線10を、特に配線21aと呼んでいる。このようにして、ダマシン法による銅配線10を形成することができる。なおここで、銅配線とは、必要に応じて他の元素が銅に添加された導電材料を用いた配線も含む。
【0034】
図3Aは、配線導電部材9a及びダミー導電部材9bの形成された段階の、擬似SOCウエハの概略平面図である。ダマシン法により形成される配線10として、半導体チップ1bと1cとを接続する配線21aを代表的に(破線で)示す。
【0035】
なお、配線導電部材9a及びダミー導電部材9bの輪郭が、それぞれ、レジストパターンRP2の配線形成用開口8a及びダミー形成用開口8bの開口形状に対応する。配線21aの輪郭が、配線溝6aの形状に対応する。
【0036】
配線形成用開口8aの開口は、半導体チップ1bと1cとに亘り、ダマシン法による配線形成領域の配線溝を内包する形状である。ダミー形成用開口8bの形状例として、
図3Aには、溝状のものを示す。ダミー形成用開口8bは、配線形成用開口8aの外側に配置され、リング状に配線形成用開口8aを囲んでいる。ダミー形成用開口8bは、半導体チップ1b及び1cの外側に配置されている。
【0037】
ユニット領域Un内(この例では、半導体チップ1b及び1cの内側の領域、及び、半導体チップ1bと1cの間の領域)は、ダマシン法により形成される配線10の配置領域として確保しておきたい。そのため、ダミー導電部材9bは、ユニット領域Unの外側(この例では半導体チップ1b及び1cの外側)の(あるいは、隣接するユニット領域Unの間の)スクライブ領域Scに配置されている。
【0038】
ここで、絶縁層5上面上の配線導電部材9aをCMPで研磨除去して配線10を残す際に、ダミー導電部材9bが形成されていることの利点について説明する。
【0039】
まず、ダミー導電部材9bが形成されていない比較例について考える。一般に、CMPは、研磨される表面の凸部の外周部で進行しやすい傾向がある。この比較例では、配線導電部材9aの外周部が研磨されやすく、その結果、配線導電部材9aの外周部側の配線10ほど研磨されやすくなり、ディッシングが起こりやすい。
【0040】
本実施例では、配線導電部材9aの外側に、配線導電部材9aよりも高いダミー導電部材9bが形成されている。これにより、まずダミー導電部材9bの上部が研磨されるので、配線導電部材9aの外周部が研磨されにくくなる。従って、配線10の上面高さが面内でばらつくディッシングを抑制することができる。
【0041】
なお、ダミー導電部材9bは、配線導電部材9aよりも高く形成されていることが好ましいが、ダミー導電部材9bが配置されていれば、配線導電部材9aより低かったとしても、ダミー導電部材9bが配置されていない場合に比べれば、配線導電部材9aの外周部における過度の研磨の抑制効果が期待される。
【0042】
ダミー導電部材9bと配線導電部材9aとを電解めっきで同時形成する場合に、ダミー導電部材9bを、配線導電部材9aよりも高く形成するためのおおまかな指針は、以下のようなものと考えられる。配線形成用開口8aの底に露出した表面積に比べて、ダミー形成用開口8bの底に露出した表面積を狭くすることにより、ダミー形成用開口8b内で、配線形成用開口8a内よりも厚くめっき膜を成長させられ、高いダミー導電部材9bを形成できるであろう。
【0043】
ただし、配線形成用開口8aを狭くし過ぎると、高いダミー導電部材9bの形成が難しくなることがわかった。配線形成用開口8aの好適な寸法については、後述の第2実験に沿って説明する。
【0044】
図3Bに示すように、ダミー導電部材9bは、リング状に閉じた平面形状でなくてもよい。
図3Bは、円柱状の複数のダミー導電部材9bが、配線導電部材9aを囲んでランダムに分布している例を示す。なお、ダミー導電部材9bの形状は、円柱状に限定されない(ダミー形成用開口8bの穴形状は、円柱状に限定されない)。
【0045】
図3Aに示すように、配線導電部材9aは、擬似SOCウエハのユニット領域Unごとに配置される。つまり、配線導電部材9aを形成するCu層は、ウエハ全面を覆わずに、ユニット領域Unごとに分割されて配置されている。
【0046】
擬似SOCウエハの樹脂基板1aの全面上に、Cu層が形成されると、樹脂基板材料の熱膨張係数及びヤング率が、ともに、Cu層の熱膨張率及びヤング率よりも低いことに起因して、ウエハが反ってしまい、Cu層により形成される配線にクラックが生じたりする。なお、Cuの熱膨張率は13ppm/Kであり、ヤング率は130GPaである。
【0047】
本実施例では、ダマシン法で配線を形成する領域をユニットごとに分割して、配線導電部材9aを形成していることにより、上述のような反りに起因する問題を抑制できる。ただし、分散して配置された配線導電部材9aに起因して、各配線導電部材9aの外周部が研磨されやすくなる。配線導電部材9aの外周部が研磨されやすくなることは、ダミー導電部材9bにより抑制することができる。
【0048】
図2Pを参照して、製造工程の説明を進める。絶縁層5上に、例えば、感光性フェノール系樹脂を厚さ5μmスピンコートで塗布して、絶縁層11を形成する。
【0049】
図2Qを参照する。絶縁層11に、露光及び現像により、ビアホール12を画定するパターンを形成し、さらに例えば250℃でのキュア(硬化)を行う。ビアホール12が、配線10を露出させる。
【0050】
図2Rを参照する。ビアホール12の内面を覆って、絶縁層11上に、シード層13を形成する。シード層13は、例えば、シード層2と同様にして形成される。
【0051】
図2Sを参照する。シード層13上に、レジストを塗布してレジスト層を形成する。このレジスト層を露光し、例えばTMAHにより現像して、レジストパターンRP3を形成する。レジストパターンRP3は、各ビアホール12を内包する平面形状の開口を有する。
【0052】
図2Tを参照する。シード層13を給電層とする電解めっきにより、レジストパターンRP3の各開口内に、導電材料として例えばCuを堆積する。導電材料が、ビアホール12内に充填され、さらに絶縁層11の上面上に堆積されて、配線14が形成される。配線14が、配線10に電気的に接続される。
【0053】
図2Uを参照する。レジストパターンRP3をアセトン等により除去する。そして、シード層2の除去と同様にして、配線14の外側のシード層13を除去する。各配線14が、電気的に分離される。
【0054】
図2Vを参照する。配線14を覆って絶縁層11上に、例えば、感光性フェノール系樹脂を塗布し、露光及び現像を行い、さらに例えば250℃でのキュア(硬化)を行って、ビアホール15を有する絶縁層16を形成する。各ビアホール15は、配線14の上面内に開口する。
【0055】
次に、
図2R〜
図2Uを参照して説明した配線14の形成工程と同様にして、各ビアホール15上に、配線17を形成する。
【0056】
そして、絶縁層16の形成工程と同様にして、配線17の上面内にコンタクト窓18が開口した絶縁層19を形成する。
【0057】
このようにして、実施例による擬似SOCウエハが形成される。再構築ウエハ1上に形成された、ピン3、配線10、配線14、配線17をまとめて、再配線層21と呼んでいる。本実施例では、ピン3、配線14、及び配線17の形成には、セミアディティブ法が用いられ、配線10の形成には、ダマシン法が用いられている。
【0058】
上述のように、ダマシン法による配線10の形成時に、残される配線10を含む配線導電部材9aの周りにダミー導電部材9bを形成した状態で、研磨除去を行うことにより、残される配線10の上面高さの面内におけるばらつきを抑制することができる。
【0059】
次に、ダミー導電部材によるディッシング抑制効果等について調べた第1実験について説明する。
【0060】
まず、
図4A〜
図4Cを参照して、第1実験で形成されるモデル試料の概略構造について説明する。
図4A及び
図4Bは、モデル試料の概略平面図であり、
図4Cは、モデル試料の、平面
図4Aに示すCC断面に沿った概略断面図である。
【0061】
樹脂基板31の上方に、導電部材38が形成されている。樹脂基板31は、直径約150mm(6インチ)の円形状で、材料はフィラー入りのエポキシ樹脂である。樹脂基板31は、半導体チップは埋め込まれていないが、擬似SOCウエハの再構築ウエハに対応する。
【0062】
図4Aに示すように、基板面内に13個のユニット領域Unが並んで配置されている。ユニット領域Unは、擬似SOCウエハのユニット領域に対応する。各ユニット領域Unは、10mm角の正方形である。
【0063】
図4Bに示すように、各ユニット領域Un内に、導電部材38が行列状に配置されている。導電部材38は、例えば、擬似SOCウエハのユニット領域内で隣接半導体チップ間を接続する配線に対応し、ダマシン法で形成されている。各導電部材38は直径100μmの円柱状であり、ユニット領域Un内に2500個程度の導電部材38が配置されている。
【0064】
なお、図示の簡略化のため、
図4Aは個々の導電部材38を区別して示さず、
図4Bにはユニット領域Unに配置された導電部材38として81個(9行×9列)の導電部材38を例示し、
図4Cにはユニット当たり9列分の導電部材38を例示する。
【0065】
次に、
図5A〜
図5Fを参照して、第1実験のモデル試料の作製方法について説明する。
図5A〜
図5Fは、モデル試料の作製方法の主要工程を示すCC方向断面図であり、1つ分のユニット領域Un近傍を示す。
【0066】
図5Aを参照する。樹脂基板31上に、フェノール系樹脂を厚さ5μm塗布し、250℃でキュア(硬化)を行って、絶縁層32を形成する。絶縁層32上に、感光性フェノール系樹脂を厚さ5μm塗布し、露光及び現像により、凹部33を画定するパターンを形成し、さらに250℃でキュア(硬化)を行って、絶縁層34を形成する。
【0067】
凹部33の内面を覆って、絶縁層34上に、シード層35を形成する。シード層35は、スパッタリングによりTi層を厚さ20nm堆積し、Ti層上にスパッタリングによりCu層を厚さ100nm堆積して形成される。
【0068】
図5Bを参照する。シード層35上に、レジストを(絶縁層34上面上の厚さとして)厚さ5μm塗布して、レジスト層RL31を形成する。
【0069】
図5Cを参照する。レジスト層RL31を露光し、現像を行って、レジストパターンRP31を形成する。レジストパターンRP31は、導電部材形成用開口36aとダミー形成用開口36bとを有する。導電部材形成用開口36aは、ユニット領域Un内の全凹部33を内包する形状であり、幅10mmである。
【0070】
導電部材形成用開口36aの外側に、ダミー形成用開口36bが配置されている。ダミー形成用開口36bは、後述の
図6Aに示すようなライン状のダミー導電部材37bの形成時には、レジストパターンRP31に溝状凹部を画定し、後述の
図6Bに示すような柱状のダミー導電部材37bの形成時には、レジストパターンRP31に穴状凹部を画定する。
【0071】
図5Dを参照する。シード層35を給電層とする電解めっきによりCuを堆積して、導電部材形成用開口36a内及びダミー形成用開口36b内のそれぞれに、導電部材37a及びダミー導電部材37bを形成する。導電部材37aの絶縁層34上面上のめっき高さは、3μmである。
【0072】
図5Eを参照する。レジストパターンRP31をアセトン等により除去する。そして、150℃で2分のアニールを行う。
【0073】
図5Fを参照する。絶縁層34の上面上の導電部材37a及びダミー導電部材37bをCMPで研磨除去する。導電部材37aのうち凹部33内の部分が残されて、導電部材38が形成される。
【0074】
第1実験では、ダミー導電部材37bの形状を変化させて、ディッシング抑制効果等について評価した。
【0075】
図6A及び
図6Bは、第1実験でのダミー導電部材37bの形状を示す概略平面図である。導電部材37a及びダミー導電部材37bが形成された状態を示す。なお、導電部材37a及びダミー導電部材37bの輪郭が、それぞれ、レジストパターンRP31の導電部材形成用開口36a及びダミー形成用開口36bの開口形状に対応する。
【0076】
図6Aは、ライン形状のダミー導電部材37bを示す。ユニット領域Unごとに、導電部材37aの周りを、1本のライン形状のダミー導電部材37bがリング状に囲んでいる。
【0077】
図6Bは、円柱形状のダミー導電部材37bを示す。各ユニット領域Unの導電部材37aを囲むように、複数個のダミー導電部材37bが分布している。なお、
図6Bの場合のように、導電部材37aの周りに分散配置された複数個のダミー導電部材37bをまとめたものも、ダミー導電部材37bと呼ぶ。
【0078】
幅20μmのライン状ダミー導電部材37bが形成された第1試料と、幅5μmのライン状ダミー導電部材37bが形成された第2試料と、直径70μmの円柱状ダミー導電部材37bが形成された第3試料と、直径5μmの円柱状ダミー導電部材37bが形成された第4試料の、4種の試料を作製した。併せて、2種の比較試料を作製した。
【0079】
図6C及び
図6Dは、比較試料を示す概略平面図である。
図6Cは、第1比較試料を示す。第1比較試料は、導電部材37aを形成するめっき工程でマスクパターンを用いず、基板全面にCu層37aを形成したものである。
図6Dは、第2比較試料を示す。第2比較試料は、ダミー導電部材37bが形成されず、ユニット領域Unごとに分割された導電部材37aのみが形成されている。
【0080】
図7Aは、第1試料〜第4試料、及び第1、第2比較試料について、めっき高さをまとめたグラフである。各試料とも、左側に導電部材37aのめっき高さ(ダマシン法による配線形成領域のめっき高さ)を示し、右側にダミー導電部材37bのめっき高さ(スクライブ領域のめっき高さ)を示す。
【0081】
導電部材37aのめっき高さは、どの試料でも3.0μmと等しく設定されている。ダミー導電部材37bのめっき高さは、第1比較試料(Cu層全面形成)では3.0μmとして扱うことができ、第2比較試料(ダミーなし)では0.0μmとなる。
【0082】
ダミー導電部材37bのめっき高さは、第1試料(ライン状/幅20μm)で3.5μm、第2試料(ライン状/幅5μm)で2.2μm、第3試料(円柱状/直径70μm)で3.6μm、第4試料(円柱状/直径5μm)で1.7μmであった。
【0083】
第1試料(ライン状/幅20μm)及び第3試料(円柱状/直径70μm)では、導電部材37aよりも高いダミー導電部材37bが形成されている。第2試料(ライン状/幅5μm)及び第4試料(円柱状/直径5μm)では、導電部材37aよりも低いダミー導電部材37bが形成されている。
【0084】
図7Bは、第1試料〜第4試料、及び第1、第2比較試料について、CMP後に残った導電部材38のディッシング量をまとめたグラフである。ユニット領域の最外周に配置された導電部材38のディッシング量が測定されている。
【0085】
ディッシング量は、第1比較試料(Cu層全面形成)で180nm、第2比較試料(ダミーなし)で360nm、第1試料(ライン状/幅20μm)で150nm、第2試料(ライン状/幅5μm)で300nm、第3試料(円柱状/直径70μm)で160nm、第4試料(円柱状/直径5μm)で310nmであった。
【0086】
第2比較試料(ダミーなし)に比べて、ダミー導電部材37bの形成された第1〜第4試料では、ディッシングが抑制されていることがわかる。第1比較試料(Cu全面形成)は、上述のように基板の反りが生じやすいが、Cu層が全面形成されているので、ディッシングは生じにくい。導電部材37aよりも高いダミー導電部材37bが形成された第1試料と第3試料では、第1比較試料と同程度に、ディッシングが抑制されていることがわかる。
【0087】
図8は、第1、第2比較試料の基板の反りを示したグラフである。第1比較試料(Cu層全面形成)では、Cu層表面側で、基板中心部が基板縁部に対して凹むような反りが生じる。基板中心部と基板縁部との高さの差で反りが評価される。
【0088】
第1比較試料(Cu層全面形成)の反りは、Cuめっき時点で0.3mmであり、Cuめっき後のアニールにより増加して0.6mmとなっている。第2比較試料(ダミーなし)の反りは、Cuめっき時点で0.01mmであり、アニール後も0.01mmである。第2比較試料は、基板内で分割されたCu層(導電部材37a)を形成するようにしたことで、反りが抑制されている。第1試料〜第4試料も、分割されたCu層(導電部材37a)により、反りを抑制させることができる。
【0089】
次に、ダミー導電部材形成のためのマスクパターンが有するダミー形成用開口の好適な寸法について調べた第2実験について説明する。第2実験では、レジスト層に様々な寸法の開口を形成し、開口内に電解めっきでCu層を堆積させて、開口の寸法とめっき高さとの関係について調べた。
【0090】
図6Aに示したようなライン状のダミー導電部材に対応する溝状開口と、
図6Bに示したような円柱状のダミー導電部材に対応する穴状開口とを形成した。溝状開口の幅は、100μm、70μm、50μm、30μm、15μm、8μm、5μm、及び2μmと変化させた。穴状開口の直径は、100μm、70μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、及び5μmと変化させた。
【0091】
図9Aは、溝状開口の幅とめっき高さとの関係を示すグラフである。溝状開口については、幅が15μmを下回ると、めっき高さが低くなっていくことがわかる。これより、ライン状のダミー導電部材を形成するとき、めっき高さ低下を抑制するには、溝状開口を幅15μm以上の広さにすることが好ましいといえる。
【0092】
図9Bは、穴状開口の直径とめっき高さとの関係を示すグラフである。穴状開口については、直径が40μmを下回ると、めっき高さが低くなっていくことがわかる。これより、柱状のダミー導電部材を形成するとき、めっき高さ低下を抑制するには、穴状開口を直径40μm以上の広さにすることが好ましいといえる。
【0093】
なお、開口の好ましい大きさは、Cuに限らず、電解めっきで形成される導電材料について概ね同様であろうと考えられる。
【0094】
次に、配線形成工程の違いによって生じる配線特性の違いについて説明する。上述のように、擬似SOCウエハの再配線をダマシン法により形成する際、樹脂基板の全面上にめっき層を形成すると、ウエハが反ってしまうことに起因して、配線にクラックが生じたりする。一方、樹脂基板上に分割してめっき層を形成することにより、反りが抑制されるので、配線の品質向上が図られる。
【0095】
図10Aは、基板上の全面にCu層をめっきし、不要部のCu層を研磨除去して形成された配線の断面を示す、走査イオン顕微鏡(SIM)による電子顕微鏡写真である。
【0096】
図10Bは、基板上に分割してCu層をめっきし、不要部のCu層を研磨除去して形成された配線の断面を示す、SIMによる電子顕微鏡写真である。
【0097】
図10A及び
図10Bに示す試料とも、Cu層のめっき後、研磨前にアニールを行なって、Cuのグレインを成長させている。配線の下方から上方に向かって、グレインが成長している。
【0098】
基板全面にCu層を形成した
図10Aの試料では、途中の厚さでグレインの成長が止まり、グレインの成長した下層とグレインの成長していない上層とに分離したようなパターンが観察されている。
図10Aの試料では、基板が反って応力が掛かった状態でCu層のアニールが行われている。これに起因して、グレインが成長しにくいと思われる。
【0099】
一方、基板上に分割してCu層を形成した
図10Bの試料では、下面から上面に至るまで成長したグレインが観察される。分割形成されたCu層により反りが抑制され、応力が低減されているので、
図10Aの試料に比べてグレインが成長しやすいと思われる。例えば上記実施例による銅配線10においても、
図10Bの試料のように、配線の全厚さに亘って成長したグレインが得られるものと考えられる。
【0100】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0101】
以上説明した実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
基板上方に、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に、凹部を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記凹部を露出する第1開口と、前記第1開口の外側に配置され、前記凹部を露出しない第2開口とを有するマスクパターンを形成する工程と、
前記第1開口内及び前記2開口内にそれぞれ導電材料を堆積して、第1導電部材及び第2導電部材を形成する工程と、
前記第1導電部材及び前記第2導電部材を、前記絶縁層の上側で研磨除去して、前記凹部内に前記第1導電部材を残す工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記2)
前記基板は、複数の半導体チップが1組にまとめられたユニットを、複数個面内方向に並べて埋め込み、
前記凹部は、複数個の前記ユニットのうちのある第1ユニットが含む半導体チップに電気的に接続する導電部材を露出し、
前記研磨除去後、前記凹部内に残された前記第1導電部材は、前記第1ユニットが含む半導体チップに電気的に接続する付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3)
前記第2開口は、前記第1ユニットを形成する半導体チップの外側に配置される付記2に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4)
前記第1導電部材の上面よりも、前記第2導電部材の上面が高く形成される付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)
第1導電部材及び第2導電部材は、電解めっきにより同時に形成される付記1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記6)
前記第2開口は溝状凹部を画定し、前記第2開口は幅15μm以上の広さである付記5に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記第2開口は穴状凹部を画定し、前記第2開口は直径40μm以上の広さである付記5に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記第2開口は溝状凹部を画定し、リング状に前記第1開口を囲む形状で配置されている付記1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記第2開口は穴状凹部を画定し、複数の開口が前記第1開口の周りに分布するように配置されている付記1〜5、7のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記基板は、複数の半導体チップが1組にまとめられたユニットを、複数個面内方向に並べて埋め込み、前記第2開口は、隣接する前記ユニットの間のスクライブ領域に配置されている付記1〜9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記基板を形成する材料の熱膨張係数及びヤング率が、ともに、前記導電材料の熱膨張率及びヤング率よりも低い付記1〜10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記12)
さらに、前記第1導電部材にアニールを行う工程を有する付記1〜10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記13)
複数の半導体チップが埋め込まれた基板と、
前記基板の上方に形成された絶縁層と、
前記絶縁層内に形成され、前記複数の半導体チップの少なくとも1つに電気的に接続され、全厚さに亘って成長したグレインを有する銅配線と
を有する半導体装置。
(付記14)
前記基板及び前記絶縁層は樹脂で形成されている付記13に記載の半導体装置。