特許第6039887号(P6039887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039887
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   B25J19/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-89771(P2011-89771)
(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公開番号】特開2012-218136(P2012-218136A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月12日
【審判番号】不服2015-21853(P2015-21853/J1)
【審判請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】星野 真吾
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 落合 弘之
【審判官】 平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−140739(JP,A)
【文献】 特開平8−305432(JP,A)
【文献】 特開平8−204072(JP,A)
【文献】 特開2005−147822(JP,A)
【文献】 特開2010−146952(JP,A)
【文献】 特開2008−157169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対して移動可能な可動部と、
前記基台に対して前記可動部を移動させるモーターと、
前記モーターの回転角度を検出するレゾルバと、
前記基台の内部に位置し、前記レゾルバを駆動する駆動回路基板とを備えるロボットであって、
前記駆動回路基板は、熱伝導性を有する平板状の弾性部材を介して前記基台に対してねじ部材によって取り付けられており、
前記駆動回路基板および前記弾性部材は、前記ねじ部材が遊挿される貫通孔を有し、
前記駆動回路基板の一面と前記弾性部材の一面、及び前記弾性部材の他の面と前記基台とは面接触し
前記基台は、当該基台の底面と交差する方向に延びる側面を有し、
前記駆動回路基板が、前記弾性部材を介して前記側面に取り付けられており、
前記側面には、前記基台の内部に連通して前記基台の内部の空気を排気するための連通路を有する導出部が接続されている
ことを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記弾性部材が絶縁部材である
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記弾性部材は、
前記駆動回路基板の一面の全域にわたって面接触している
請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
記基台の外表面に、前記弾性部材との接触部分に対応する範囲に放熱用のフィンが設けられている
請求項1〜のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
前記ロボットを制御するコントローラーとの電気的な接続が遮断されたときに前記駆動回路基板の電源となるバッテリーを有し、
前記駆動回路基板は、
前記レゾルバからの検出信号に基づく前記モーターの回転角度を記憶する記憶部を有する
請求項1〜のいずれか一項に記載に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レゾルバを駆動する駆動回路基板が基台に配置されるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、モーターの回転角度センサーとしてレゾルバを搭載するロボットが知られている。この種のロボットでは、ロボットとコントローラーとが電気的に切り離されてモーターやレゾルバに対し駆動電源が遮断されると、モーターの出力軸が外力で回転しても、モーターの回転角度をレゾルバで検出することができない。そこで、特許文献1では、モーターやレゾルバに対し駆動電源が遮断されても、モーターの回転角度が検出されるように、レゾルバの駆動回路基板にバックアップ用のバッテリーが接続されている。このような構成であれば、コントローラーからの駆動電源が遮断されたときに、バックアップ用のバッテリーからの駆動電源がレゾルバに供給されるため、電源遮断時におけるモーターの回転角度を検出することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−305432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、レゾルバの駆動回路基板に対しその動作の安定性を高めることを目的として、モーターからの振動やモーターからの熱が駆動回路基板に伝わることが抑えられるように、レゾルバの駆動回路基板がモーターから離れた位置に配置されている。一方、近年におけるロボットの高速化にはめざましいものがあり、それにともない、モーターからの振動、モーターからの熱、駆動回路基板そのものの発熱が以前にも増して大きくなっている。そのため、モーターから離れた位置に駆動回路基板を配置するという対策では駆動回路基板における動作の安定性を確保しきれなくなってきており、さらなる対策が強く求められている。
【0005】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、レゾルバを駆動する駆動回路基板が搭載されたロボットにおいて、該駆動回路基板の動作の安定性を高めることの可能なロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットは、基台と、前記基台に対して移動可能な可動部と、前記基台に対して前記可動部を移動させるモーターと、前記モーターの回転角度を検出するレゾルバと、前記基台の内部に位置し、前記レゾルバを駆動する駆動回路基板とを備えるロボットであって、前記駆動回路基板は、熱伝導性を有する平板状の弾性部材を介して前記基台に対してねじ部材によって取り付けられており、前記駆動回路基板および前記弾性部材は、前記ねじ部材が遊挿される貫通孔を有し、前記駆動回路基板の一面と前記弾性部材の一面、及び前記弾性部材の他の面と前記基台とは面接触し、前記基台は、当該基台の底面と交差する方向に延びる側面を有し、前記駆動回路基板が、前記弾性部材を介して前記側面に取り付けられており、前記側面には、前記基台の内部に連通して前記基台の内部の空気を排気するための連通路を有する導出部が接続されている。
【0007】
このロボットによれば、モーターの駆動に基づく振動がロボットの基台を介して駆動回路基板に伝播したとしても、弾性部材の厚さ方向での振動及び面方向での振動は弾性部材の弾性によって吸収される。また、駆動回路基板は、通常ロボットの基台から浮かせた状態で設置されるが、上記構成のように駆動回路基板とロボットの基台とに面接触する熱伝導性の弾性部材を介在させることで、回路基板の熱が弾性部材を通じてロボットの基台へと伝わるため、駆動回路基板とロボットの基台との間における熱伝導性が高められることになる。すなわち、駆動回路基板とロボットの基台との間に熱伝導性の弾性部材を介在させることで、駆動回路基板に生じる振動が抑えられるとともに該駆動回路基板の熱がロボットの基台から放熱されやすくなる。それゆえに、駆動回路基板への機械的な負荷及び熱的な負荷が低減されることから、駆動回路基板の動作の安定性を高めることができる。
また、水平方向に沿って配置された駆動回路基板には、上方から落下してくる異物が付着しやすい。この点、上記構成によれば、例えば基台が水平面あるいは水平面に近い面に設置される場合、駆動回路基板が水平方向と交差する方向に沿うように配置されることになることから、水平方向に沿って配置された駆動回路基板に比べて異物を付着しにくくすることができる。
【0008】
このロボットにおいて、前記弾性部材が絶縁部材であることが好ましい。
【0009】
弾性部材が導電性を有しているとなれば、該弾性部材との接触部分を回避するように駆動回路基板に配線を形成しなければならないため、駆動回路基板を設計するうえでの自由度を大幅に低下させてしまう。この点、上記構成によれば、弾性部材が絶縁部材であることから、弾性部材との接触部分にも配線を形成することが可能になり、駆動回路基板を設計するうえでの自由度を向上させることができる。
【0010】
このロボットにおいて、前記弾性部材は、前記駆動回路基板の一面の全域にわたって面接触していることが好ましい。
【0011】
弾性部材は駆動回路基板の一面に面接触することになるが、該一面との接触面積が少なければ少ないほど、駆動回路基板とロボットの基台との間における熱伝導性が低下することになる。この点、上記構成によれば、駆動回路基板の一面の全域にわたって弾性部材が面接触していることから、駆動回路基板と弾性部材との間における熱伝導性をより高めることができる。
【0014】
このロボットでは、前記基台の外表面に、前記弾性部材との接触部分に対応する範囲に放熱用のフィンが設けられている。
【0015】
このロボットのように基台に放熱用のフィンが設けられることで、ロボットの基台の放熱性を高めることができる。そしてその放熱用のフィンが、弾性部材との接触部分に対応する範囲に設けられていることから、弾性部材を通じた駆動回路基板からの熱を放熱用のフィンから優先的に放熱させることができる。これにより、駆動回路基板の熱を効率よく放熱させることができる。
【0016】
このロボットは、前記ロボットを制御するコントローラーとの電気的な接続が遮断されたときに前記駆動回路基板の電源となるバッテリーを有し、前記駆動回路基板は、前記レゾルバからの検出信号に基づく前記モーターの回転角度を記憶する記憶部を有することが好ましい。
【0017】
このロボットによれば、たとえロボットとコントローラーとの電気的な接続が遮断されたとしても、バッテリーを電源としてレゾルバを駆動させることが可能であるとともに、遮断されていた期間におけるモーターの絶対位置を駆動回路基板の記憶部に記憶させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態にかかるロボットで構成されるロボットシステムの概略構成を示す斜視図。
図2図1におけるA−A線に沿った断面図であって、一部の構成部材を省略して示した図。
図3図1におけるB−B線に沿った断面図であって、一部の構成部品を省略して示した図。
図4】変形例において、ヒートシンクの設置態様の一例を示す断面斜視図であって、一部の構成部材を省略して示した図。
図5】変形例において、内部空間に外気を導入するための導出部が設けられた基台の一例を示す断面図であって、一部の構成部材を省略した示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるロボットの一実施の形態について、図1図3を参照して説明する。図1に示されるように、ロボットシステム1を構成するコントローラー5には、該コントローラー5に電力を供給する主電源6が接続されている。また、コントローラー5には、接続線7a,7bとコネクター8a,8bとを介してロボット10が接続されている。そして、主電源6が供給する電力によりコントローラー5が駆動され、ロボット10への駆動電源の供給やロボット10とコントローラー5との各種信号の送受信が行われる。
【0020】
ロボット10の基台11は、熱伝導性の高いアルミニウムなどの金属からなる箱体形状をなし、該ロボット10が用いられる施設にて、水平面と平行な図示されない配置面に配置されている。基台11の頂部14には、垂直方向に延びる回転中心線C1を中心にして該基台11に対して回動可能な回転軸15が連結されている。回転軸15は、基台11内に設けられた第1モーターM1の出力軸に連結され、該第1モーターM1が正逆回転されることで基台11に対して回転する。この回転軸15には、第1アーム16の基端部が連結固定されており、第1モーターM1が正逆回転されることで第1アーム16は、回転中心線C1を中心にして基台11に対して水平面内で回転する。
【0021】
第1アーム16の先端部には、支持軸17が連結固定されている。支持軸17は、垂直方向に延びる回転中心線C2を中心にして該支持軸17に対して回動可能に第2アーム18を支持している。第2アーム18の基端部には、出力軸がギア等を介して支持軸17に連結された第2モーターM2が固設されている。そして第2アーム18は、第2モーターM2が正逆回転することによって当該第2モーターM2が支持軸17から受ける反力によって、回転中心線C2を中心にして第1アーム16に対して水平面内で回転する。
【0022】
第2アーム18の先端部には、第2アーム18を貫通する上下回転軸19が設けられている。上下回転軸19は、第2アーム18に対して回転可能に、かつ、上下方向に移動可能に支持されている。また上下回転軸19は、第2アーム18に備えられた昇降モーターM3が正逆回転されることによって垂直方向の回転中心線C3に沿って昇降される。上下回転軸19は、第2アーム18に備えられた回転モーターM4が正逆回転させることによって垂直方向に沿う自らの回転中心線C4を中心にして正逆回転される。上下回転軸19の作業部20には、ツール、例えば被搬送物を把持するハンドや被加工物を加工するハンド等の取り付けが可能になっている。これら第2モーターM2、昇降モーターM3、回転モーターM4に接続される各電気配線は、第2アーム18における上端部と基台11の頂部14とに接続された配管部材21を通じて第2アーム18から基台11へと配線されている。
【0023】
また、第1モーターM1には、該第1モーターM1における出力軸の回転角度である絶対位置を検出するレゾルバR1が内蔵されている。レゾルバR1は、基台11の内部に配置された駆動回路基板25に接続され、該駆動回路基板25が出力する駆動電源によって駆動される。また、第2モーターM2、昇降モーターM3、及び回転モーターM4の各々にも、該モーターにおける出力軸の回転角度である絶対位置を検出するレゾルバR2,R3,R4が内蔵されている。これらレゾルバR2〜R4の各々は、第2アーム18における上端部と基台11の頂部14とに接続された配管部材21を通じて上記駆動回路基板25に接続され、該駆動回路基板25が出力する駆動電源によって駆動される。そして、コントローラー5から供給される電源で駆動回路基板25が駆動されると、レゾルバR1〜R4の各々は、該モーターにおける出力軸の絶対位置を示す検出信号を駆動回路基板25に出力する。駆動回路基板25は、アナログ信号であるレゾルバR1〜R4からの検出信号をデジタル信号に変換し、その変換したデジタル信号をコントローラー5に出力する。
【0024】
駆動回路基板25には、各レゾルバR1〜R4が検出した各モーターM1〜M4の絶対位置を所定の周期で記憶する記憶部が実装されている。また、基台11の内部には、駆動回路基板25に電源を供給するためのバッテリー26が配置されている。バッテリー26は、コントローラー5からの電源の供給が遮断されたときに、該駆動回路基板25を駆動するための電源を駆動回路基板25に供給する。そして、コントローラー5からの電源が遮断されると、バッテリー26が駆動回路基板25に駆動電源を供給し、駆動回路基板25が各レゾルバR1〜R4を駆動する。これにより、コントローラー5からの電源が遮断されている期間、駆動回路基板25は、各モーターM1〜M4の絶対位置を記憶部に記憶し続ける。そして、コントローラー5から再び電源が供給されると、駆動回路基板25は、記憶部に記憶された各モーターM1〜M4の絶対位置を示す信号をコントローラー5に出力する。
【0025】
次に、上述した駆動回路基板25の取り付け態様について図2及び図3を参照して説明する。図2に示されるように、基台11にて鉛直方向に延びる側部13の内側面13aには、駆動回路基板25が該内側面13aに沿って取り付けられている。駆動回路基板25は、基台11の内側に向く矩形状の実装面27を有し、該実装面27には、接続線7a,7bに接続されるコネクター28や図示されない複数の電子部品が実装されている。実装面27の4つの隅部の各々には、駆動回路基板25を貫通する貫通孔29が形成され、4つの貫通孔29の各々には、基台11の側部13に螺合されるねじ部材が遊挿されている。
【0026】
駆動回路基板25において実装面27の反対側の側面である取り付け面30と基台11の内側面13aとの間には、取り付け面30と内側面13aとに面接触する矩形平板状の弾性部材33が挟み込まれている。弾性部材33は、駆動回路基板25の取り付け面30の全域にわたって面接触するように、駆動回路基板25と略同じサイズに形成された熱伝導性を有する絶縁部材である。この弾性部材33において上記各貫通孔29と互いに向かい合う部位には、上述したねじ部材の遊挿される図示されない4つの貫通孔が形成されている。
【0027】
そして、駆動回路基板25に対しては、弾性部材33の弾性力が、側部13から駆動回路基板25に向けて作用し、ねじ部材の頭部による押圧力が、駆動回路基板25から側部13に向けて作用する。この際、ねじ部材が貫通孔29に対して移動する範囲で駆動回路基板25は移動することが可能であり、上記弾性力と上記押圧力とが釣り合う位置で該駆動回路基板25は位置決めされる。言い換えれば、ねじ部材が貫通孔29に遊挿される分だけ、また弾性部材33が弾性変形する分だけ、駆動回路基板25は基台11に対して移動することが可能である。
【0028】
なお、こうした構成からなる弾性部材33として、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されたアスカーC硬度30以下、熱伝導率1[W/m・K]であることが好ましい。このような条件を満たす弾性部材として、竹内工業株式会社製の「TMS−22」(アスカーC硬度25、熱伝導率2.2[W/m・k]、体積抵抗率1.0×10^12[Ω・cm])や、ポリマテック株式会社製の「FEATHER−S3S」(アスカーC硬度5、熱伝導率2[W/m・K])を挙げることができる。
【0029】
次に、駆動回路基板25と側部13との間に介在させた弾性部材33の作用について説明する。
【0030】
上記構成のロボット10においては、各モーターM1〜M4の駆動に基づく振動が、ロボット10の各アーム16,18を介して基台11に伝わる。この際、基台11から駆動回路基板25に伝わる振動のうち弾性部材33の厚さ方向での振動は、弾性部材33の弾性によって吸収される。また、基台11から駆動回路基板25に伝わる振動のうち実装面27の面方向での振動は、ねじ部材が貫通孔29に遊挿されているため、これもまた弾性部材33によって吸収される。また例えば、駆動回路基板25の各コネクター28と電気配線の接続とが作業者によって解除される際など、ロボット10のメンテナンス時に作業者によって駆動回路基板25を押し曲げようとする力が作用したとしても、その力が駆動回路基板25と弾性部材33とに分散されることになる。
【0031】
また、駆動回路基板25は、通常、駆動回路基板25の取り付け面30を基台11の内側面13aから浮かせた状態で設置されるが、駆動回路基板25と基台11との間に熱伝導性の弾性部材33が介在させることで、駆動回路基板25の熱が弾性部材33を通じてロボット10の基台11へと伝わるため、駆動回路基板25と基台11との間における熱伝導性が高められることになる。しかも、弾性部材33が取り付け面30の全域にわたって面接触していることから、弾性部材33が取り付け面30の一部に面接触している場合に比べて、駆動回路基板25と弾性部材33との間における熱伝導性が高められることになる。
【0032】
さらに、上述した作用を生じさせる弾性部材33が絶縁部材であることから、該弾性部材33との接触部分である駆動回路基板25の取り付け面30にも配線を形成することが可能である。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係るロボット10によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0034】
(1)上記実施形態によれば、駆動回路基板25の取り付け面30と側部13の内側面13aとに接触する熱伝導性の弾性部材33を設けることによって、該駆動回路基板25における機械的な負荷及び熱的な負荷を低減することができる。その結果、駆動回路基板25の動作の安定性を高めることができる。
【0035】
(2)上記実施形態の弾性部材33が絶縁部材であることから、弾性部材33が導電性を有している場合に比べて、駆動回路基板25を設計するうえでの自由度を向上させることができる。
【0036】
(3)上記実施形態では、駆動回路基板25の取り付け面30の全域にわたって弾性部材33を面接触させることによって駆動回路基板25と弾性部材33との間における熱伝導性が高められていることから、駆動回路基板25の熱が弾性部材33に吸熱されやすくすることができる。その結果、駆動回路基板25への熱的な負荷をさらに低減することができる。
【0037】
(4)上記実施形態では、駆動回路基板25が垂直方向に延びる側部13の内側面13aに取り付けられていることから、駆動回路基板25は、その実装面27が鉛直方向に沿うように配置されている。こうした構成によれば、実装面27が水平面に沿うように配置されている駆動回路基板に比べて、基台11内で発生した異物が落下して駆動回路基板25に付着することを抑えることができる。
【0038】
(5)上記実施形態のロボット10は、コントローラー5からの電源が遮断されたときに、各レゾルバR1〜R4に電源を供給するバッテリー26を搭載している。また、駆動回路基板25に形成された駆動回路基板には、バッテリー26によって駆動される各レゾルバR1〜R4からの検出信号に基づく各モーターM1〜M4の絶対位置を記憶する記憶部が設けられている。こうした構成によれば、コントローラー5とロボット10との電気的な接続が遮断された期間においても、各レゾルバR1〜R4を駆動させることが可能であるとともに各モーターM1〜M4の絶対位置を記憶部に記憶させておくことができる。
【0039】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することも可能である。
【0040】
・上記実施形態において、基台11にヒートシンクを設けてもよい。これについて図4を用いて説明する。
【0041】
図4に示されるように、基台11の側部13における外側面13bには、弾性部材33と内側面13aとの接触部分に対応する範囲を含むように、複数の放熱フィン36で構成されたヒートシンク35が設けられている。こうした構成によれば、基台11そのものの放熱性を高めることができるとともに、弾性部材33を通じた駆動回路基板25からの熱をヒートシンク35から優先的に放熱させることができる。すなわち、ヒートシンク35が設けられていない構成に比べて、駆動回路基板25の熱を効率よく放熱させることができる。
【0042】
・上記実施形態のロボット10は、内部空間が密閉されるように形成された基台11を有していたが、内部空間に外気を導入する構成を有していてもよい。これについて図5を用いて説明する。
【0043】
図5に示されるように、基台11の内部空間に連通する連通路40を有する導出部41を基台11の側部13であって駆動回路基板25に近接した位置に設け、該導出部41を図示しない真空ポンプに接続する。そして、真空ポンプによって基台11の内部空間を外気圧よりも負圧にすることによって、基台11の隙間から内部空間に外気を導入するようにしてもよい。こうした構成によれば、導入された外気によって内部空間における気温の上昇が抑えられることになる。そのため、上記(1)〜(5)に記載した効果に加えて、駆動回路基板25の実装面27からの放熱を促進させることができる。しかも、駆動回路基板25に近接した位置に導出部41を設けることによって、駆動回路基板25周辺における対流が促されることから、駆動回路基板25の実装面27からの放熱を効率よく行うこともできる。なお、この構成に関し、同図5に示されるように、基台11に外気を導入する導入部42が形成されていてもよい。
【0044】
・上記実施形態のロボット10は、コントローラー5からの電源の供給が遮断されている期間に各レゾルバR1〜R4の電源となるバッテリー26を有しているとともに、その期間における各レゾルバR1〜R4からの検出信号を記憶する記憶部が駆動回路基板25に設けられている。これを変更して、例えば、コントローラー5からの電源の供給が遮断されている期間における各モーターM1〜M4の絶対位置の変化が無視できるような場合などには、これらバッテリー26及び記憶部を割愛してもよい。こうした構成によれば、上記(1)〜(4)に記載した効果に加えて、基台11及び駆動回路基板25の構成を簡略化することができる。
【0045】
・上記実施形態では、駆動回路基板25を基台11における側部13の内側面13a、すなわち基台11の内表面に取り付けられている。これを変更して、弾性部材33を介して駆動回路基板25が取り付けられるのであれば、基台11の外表面に駆動回路基板25を取り付けてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、基台11の底面12aに直交する鉛直方向に延びる側部13の内側面13aに沿って実装面27が配置されるように駆動回路基板25が取り付けられている。これを変更して、駆動回路基板25は、例えば実装面27が底面12aの面方向に平行あるいは交差する方向で基台11に取り付けることが可能である。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に記載した効果を得ることができる。
【0047】
・上記実施形態では、駆動回路基板25の取り付け面30の全域にわたって弾性部材33が接触するように構成されている。これを変更して、駆動回路基板25の取り付け面30と弾性部材33との接触部分が、取り付け面30における一部であってもよい。例えば、弾性部材33と取り付け面30との接触部分が、取り付け面30において一方に偏倚していてもよいし、取り付け面30における複数箇所であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)(2)に記載した効果を得ることができる。なお、こうした構成においては、駆動回路基板25のうち、温度上昇が高い部分に対応するように接触部分を設けることが好ましい。
【0048】
・上記実施形態の弾性部材33は絶縁部材で形成されている。これを変更して、弾性部材33が導電性を有していてもよいが、配線が弾性部材によって短絡しないように回路基板を設計する必要がある。こうした構成によれば、上記(1)に記載した効果に加えて、弾性部材33の材質選定に関わる自由度が向上し、弾性部材33に要求される機械的な条件に適した弾性部材を選択することができる。
【0049】
・上記実施形態では、本発明を水平多関節ロボットのロボット10に具体化した。これに限らず、本発明は、可動部を移動させるモーターの絶対位置をレゾルバで検出するとともに該レゾルバの駆動回路が形成された回路基板が搭載されたロボットに適用可能である。
【0050】
・上記実施形態の駆動回路基板25は、該駆動回路基板25に形成された貫通孔及び弾性部材33に形成された貫通孔に遊挿されたねじ部材によって基台11に対して移動可能に取り付けられている。これに限らず、駆動回路基板25は、基台11に対して移動可能に取り付けるうえでは、例えば弾性部材の接触面に接着性を持たせることによって、駆動回路基板25が接着された弾性部材を基台11に接着させることにより、基台11に取り付けられる態様であってもよい。また例えば、ねじ部材ではなく、弾性部材33を介在させたうえでばね部材を用いて基台11に取り付けられる態様であってもよい。
【0051】
・上記実施形態では、ロボット10が水平面に設置されているが、ロボット10の設置面は水平面に限られるものではない。なお、駆動回路基板25は、基台11内で発生した異物が落下しても該駆動回路基板25に付着しにくくなるようにロボット10の設置態様に応じて配置されることが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
C1,C2,C3,C4…回転中心線、M1…第1モーター、M2…第2モーター、M3…昇降モーター、M4…回転モーター、R1,R2,R3,R4…レゾルバ、1…ロボット装置、5…コントローラー、6…主電源、7a,7b…接続線、8a,8b…コネクター、10…ロボット、11…基台、12…底部、12a…底面、13…側部、13a…内側面、13b…外側面、14…頂部、15…回転軸、16…第1アーム、17…支持軸、18…第2アーム、19…上下回転軸、20…作業部、21…配管部材、25…駆動回路基板、26…バッテリー、27…実装面、28…コネクター、29…貫通孔、30…取り付け面、33…弾性部材、35…ヒートシンク、36…放熱フィン、40…連通路、41…導出部、42…導入部。
図1
図2
図3
図4
図5