特許第6039890号(P6039890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039890整流子電動機及びそれを用いた電動送風機及び電気掃除機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039890
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】整流子電動機及びそれを用いた電動送風機及び電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20161128BHJP
   A47L 9/00 20060101ALI20161128BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20161128BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20161128BHJP
   H02K 27/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H02K1/14 A
   A47L9/00 H
   H02K1/16 C
   H02K7/14 A
   H02K27/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-143737(P2011-143737)
(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公開番号】特開2013-13212(P2013-13212A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2013年8月23日
【審判番号】不服2015-9480(P2015-9480/J1)
【審判請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】小原木 春雄
(72)【発明者】
【氏名】常楽 文夫
(72)【発明者】
【氏名】法月 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 嘉之
【合議体】
【審判長】 藤井 昇
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−20931(JP,A)
【文献】 特開2011−67090(JP,A)
【文献】 特開2011−83181(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨーク部と、前記ヨーク部の内側に対向して形成される磁極部とからなる固定子鉄心と、前記磁極部に巻装される界磁コイルとからなる固定子と、T字形のティースを有する電機子鉄心に形成されているスロットに巻装される電機子コイルを有し、かつ前記磁極部間に配置される電機子と、を備えた整流子電動機において、
前記固定子の中心と前記固定子の磁極片部先端とのなす角度が等しくなる中心線を磁極部中心とし、
前記磁極部は、該磁極部中心に対して対称な形状であり、
前記固定子鉄心の磁極部に、前記磁極部中心と同じ方向に伸びるスリットを形成すると共に、該スリット位置を前記磁極部中心から前記電機子が回転する進行方向にずらしたことを特徴とする整流子電動機。
【請求項2】
前記磁極部の磁極片部の電機子と対向していない面の先端部に段差部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の整流子電動機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された整流子電動機と、送風機と、からなることを特徴とする電動送風機。
【請求項4】
塵埃を捕集する捕集部材が配置される集塵室と、前記集塵室の下流側に配置され、前記捕集部材に気流を吸い込むための気流を発生させる電動送風機と、を有する電機掃除機において、
前記電動送風機として請求項3に記載された電動送風機を用いることを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子電動機に関し、特に電気掃除機,電動工具用電動機等に使用される整流子電動機の固定子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機及び電動工具用の整流子電動機は、環状の固定子と、この固定子の内側に対向して形成される磁極部間に配置される電機子とで主に構成されている。この種の整流子電動機では、常に小形,軽量,高効率化,ブラシの長寿命化が要求されている。その中でも、高磁束密度で使用される電動機では、とりわけ高効率化,ブラシの長寿命化を達成するために、電機子反作用を低減することが望まれている。
【0003】
電機子反作用は、回転する電機子が発生させる磁界が固定子の磁極部から発生する磁界に対して影響を与える現象であり、これが整流子電動機の高効率化,ブラシの長寿命化に対して悪影響を及ぼしている。従来この電機子反作用を低減するための技術として、固定子鉄心の磁極部中心に単一のスリットを設ける構造や単一のスリットを磁極部の中心軸から傾けて設ける構造が提案されている(特許文献1参照)。また、別の低減手法として、前記磁極部を非対称の磁極にすると共に、複数のスリットを設ける構造が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
一方、スリットを設ける別の理由として、固定子の軽量化を図るために電機子反作用の影響を利用し、固定子における磁極部の磁束密度が疎な部分である電機子の回転進行方向側に複数の貫通穴を設ける構造が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−20931号公報
【特許文献2】特開平6−6943号公報
【特許文献3】特開2003−153471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
整流子電動機のトルクは、固定子からの界磁磁束と電機子からの電機子磁束の和に界磁コイルに流れる電流と電機子コイルの巻数を乗じたものに比例した値と評価されている。電機子反作用の影響で界磁磁束と電機子磁束の和の値が変化するため、この値がトルクを左右させる。特許文献1では単一のスリットを磁極部の中心に配置して電機子反作用を低減させているが、トルクが最大化する界磁磁束と電機子磁束の和となる点については開示されていない。特許文献2では磁極部に複数のスリットを設けて電機子反作用を低減させているが、上記と同様のことが言える。
【0007】
上述した背景技術では、電機子反作用を低減できているものの、トルクが最大化する固定子の界磁磁束と電機子の電機子磁束の和については考慮されていない。
【0008】
また、特許文献3に至っては、磁極部の磁束密度が疎な部分に複数の貫通穴を設けることで軽量化することに主点を置いている。電機子反作用の低減については整流子電動機にあるカーボンブラシと整流子の接触位置で考慮している。
【0009】
本発明の目的は、電機子反作用を低減しつつ、トルクと整流性能の向上を実現することができる整流子電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決した本発明の特徴によれば、環状のヨーク部11と、前記ヨーク部11の内側に対向して形成される磁極部12とからなる固定子鉄心13と、前記磁極部12に巻装される界磁コイル14とからなる固定子1と、T字形のティース23を有する電機子鉄心21に形成されているスロットS1〜S12に巻装される電機子コイル22を有し、かつ前記磁極部12間に配置される電機子2と、を備えた整流子電動機において、前記固定子の中心と前記固定子の磁極片部先端とのなす角度が等しくなる中心線を磁極部中心とし、前記磁極部12は、磁極部中心に対して対称な形状であり、前記固定子1の磁極部12に、前記磁極部中心と同じ方向に伸びるスリット15を形成すると共に、該スリット15位置を前記磁極部12中心から前記電機子が回転する進行方向にずらしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁極部に磁極部中心と同じ方向に伸びるスリットを形成すると共に、該スリット位置を磁極部中心から電機子の回転する進行方向側にずらすことで、電機子反作用を低減しつつ、界磁磁束を阻害せずに整流性能の向上とトルクの向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のスリットを磁極部の中心から電機子の回転進行方向にずらした固定子と電機子の断面図。
図2】本発明のスリットを磁極部の中心から電機子の回転進行方向にずらした磁極部の拡大図。
図3】本発明の実施形態の電動機における界磁磁束と電機子磁束の流路の簡易図。
図4】整流子電動機における、アンペアターンに対する界磁磁束量と界磁磁束と電機子磁束量の和を示した簡易図。
図5】本発明のスリット位置を磁極部中心から距離δ変化させた場合のスリット位置δに対するトルク増加分の簡易グラフ。
図6】本発明のスリットの磁極部の電機子側に開口部を設けた固定子と電機子の断面図。
図7】本発明のスリットの磁極部の電機子側に開口部を設けた固定子において、軸方向の積層された固定子のうち、軸方向の上下部にスリットを設けない固定子鉄心を設けた固定子(a)と、軸方向の中心部にスリットを設けない固定子を複数枚設けた固定子(b)。
図8】本発明の実施形態の固定子の磁極片部の電機子と対向しない面の先端部に段差を設けた固定子の断面図。
図9】電動送風機の構造を示す図。
図10】電気掃除機の外観を示す斜視図。
図11】電気掃除機の掃除機本体を示す斜視図。
図12】スリットの形成された1枚の固定子鉄心の斜視図。
図13】スリットの形成されていない1枚の固定子鉄心の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照し説明する。
【0014】
本発明の実施形態を、図1図9を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明の固定子形状と電機子形状を示す断面図である。図1において、電動機32は固定子1と電機子2とから構成される。固定子1は、ヨーク部11と磁極部12とからなる固定子鉄心13と、磁極部12に巻装される界磁コイル14とからなる。本実施例において、固定子1には磁極部12が2つ対向するように設けられている。ヨーク部11は対向する磁極部12をつなぐように設けられており、ヨーク部11と磁極部12により固定子1は略環状となる。電機子2は、対向する磁極部12の間に配置される。電機子2は、T字型のティース23を有する電機子鉄心21と、電機子鉄心21に形成されているスロットS1〜S12に巻装される電機子コイル22とから構成されている。固定子1は薄板の積層により形成されている。
【0016】
図2は磁極部12の拡大図である。
【0017】
図2のように、固定子1の磁極部12に前記磁極部12の磁極部中心と同じ方向に伸びる楕円状のスリット15が形成される。磁極部12において、スリット15は、磁極部12の中心からδずらした位置にスリット15中心部となるよう配置される。本実施例において、スリット15は固定子鉄心13の外周面近傍から磁極部12の内周面近傍まで伸ばして形成される。スリット15と固定子鉄心13の外周面との間の部分を磁気ブリッジ17a、スリット15と磁極部12の内周面近傍との間の部分を磁気ブリッジ17bと呼ぶこととする。磁気ブリッジ17a,17bの厚さは積層板厚の約3倍以下になるように薄いほうが良い。磁気ブリッジ17a,17bの厚さを薄く設定することで、磁気ブリッジ17a,17bの磁路が狭くなる。磁路が狭くなると磁気飽和するため、ほとんど磁束が通らなくなる。これにより磁束を遮断することができる。また、スリット15は磁極部12の内周面と固定子鉄心13とにわたるものではなく磁気ブリッジ17a,17bを設けているため、ヨーク部11と磁極部12とはつながっており、固定子の機械的強度は維持される。そのため、薄板を積層して構成される固定子の機械的強度を維持しながら最大限にスリット15の効果を得ることができる。磁気ブリッジ17aの長さをa、磁気ブリッジ17bの長さをbとする。本発明の実施例では、磁気ブリッジ17a,17bの厚さをa=b=積層板厚×約1.3倍としている。
【0018】
図2に記載されているように磁極部12とヨーク部11がつながる部分から磁極中心部までの距離をLとする。また、スリット15の中心部から磁極中心部までの距離をδとする。
【0019】
図3に示すように電機子が反時計方向に回転するとき、ヨーク部11→磁極部12→電機子2→磁極部12→ヨーク部11・・・を周回するように界磁磁束が発生し、さらにティース23→磁極部12→ティース23→電機子鉄心21→ティース23・・・を周回するように電機子磁束が発生する。このとき、電機子2の回転方向進行側の磁極部の磁極片部では界磁磁束と電機子磁束は同磁極でもってぶつかり合うため、界磁磁束が減磁される。逆に電機子の回転方向反対側では界磁磁束と電機子磁束は互いに異なる磁極となるため界磁磁束は増磁される。これが電機子反作用の作用であるが、本発明では図2に示すスリットを磁極中心からずらすことで電機子反作用の抑制の調整を可能にした。
【0020】
上述した電機子反作用による主磁束への影響、いわゆる減磁作用は、図4のような界磁磁束と電機子磁束の関係となる。アンペアターンは界磁コイルの巻数と界磁コイルに流れる電流を乗じたものであり、それに応じた界磁磁束が発生する。同じアンペアターンでは、電機子反作用により、界磁磁束と電機子磁束の和である主磁束は界磁磁束のみの磁束よりも小さい。電機子反作用を低減させれば電機子磁束による界磁磁束の減少分も低減できる。本発明では磁極部中心からスリット中心までの配置位置をずらすことにより電機子反作用を抑制しながら界磁磁束と電機子磁束の和の最大点が得られることを見出した。
【0021】
この結果、図5に示すように、スリット15が磁極部12中心に配置されているときをδ=0とし、前記スリット15位置を前記磁極部12の中心から電機子2の回転方向進行側へ離していくと、δ=0を基準としたときのトルクよりも増加していき、増加分のピーク点δ1が得られた。さらにスリット15を磁極部12の中心から離していくと徐々にトルク増加分は減少し、ついにはδ=0のときと同様のトルクが得られてしまう点δ2が現れることを確認した。また、前記スリット15位置を前記磁極部12中心から前記電機子2の回転反対方向へ離すと、δ=0のときよりもトルクは減少してしまう傾向にあることを確認した。中心位置にスリットを設けたもの(δ=0)よりも大きいトルクが得られる範囲は0<δ<δ2である。また、本実施例においては、δ2≒2/3Lであるため、中心位置にスリットをもうけたもの(δ=0)よりも大きいトルクが得られる範囲は0<δ<2/3である。本実施例において、L=9.12mm,δ1=1.52mm、δ2=6mmである。17aや17bの厚さは0.3mmである。ただし、この値は固定子の大きさや配置などによって変わるため、この限りではない。17a,17bの厚さは機械的な強度で決まるため、この限りではない。また、スリットを設けない固定子構造のものよりも基準としたδ=0点でのスリット付の固定子構造のものの方が大きいトルクが得られる。
【0022】
図9は電動送風機の構造を示す図である。
【0023】
電動送風機31は電動機(整流子電動機)32と送風機33から構成される。電動機32は、ハウジング34の内周側に固定された固定子鉄心13に界磁コイル14を巻装した固定子1,ハウジング34に設けられた軸受け8aと、エンドブラケット9に設けられた軸受け8bによって保持されるシャフト10、シャフト10には電機子鉄心21と整流子35が固定され、電機子鉄心21の電機子スロット36中に巻装された電機子巻線37が整流子35に接続された回転子38からなり、整流子35と機械的接触によって電気的接続を行うカーボンブラシ39と、カーボンブラシ39を保持するとともにハウジング34に固定するためのブラシホルダ40とからなる。送風機33は、ナット41によりシャフト10の一端に固定される遠心ファン19、遠心ファン19から出た空気流の速度を落とし圧力回復するディフューザ20、空気流を電動機32内へ導くディフューザ20と一体に成形されたリターンガイド42、遠心ファン19とディフューザ20を覆うファンケーシング43によって構成される。
【0024】
整流子35は、その円周面に整流子片35aを有し、各整流子片35aは回転子38内の電機子巻線37と接続されている。カーボンブラシ39は、つる巻バネ44により整流子35に押し付けられ、整流子35に摺接している。45はカーボンブラシ39を外部電極に接続するためのリード線であり、ブラシホルダ40に設けられた端子(図示せず)と接続されている。
【0025】
電動送風機31が回転を開始すると回転子38が回転し、回転子38と同軸に固定された遠心ファン19も回転する。遠心ファン19が回転するとファンケーシング43の空気取り入れ口46から空気が流入し、遠心ファン19,ディフューザ20,リターンガイド42を通り電動機32内部へと流れ込み、電動機32を冷却しつつ電動機32から排出される。
【0026】
図10に示すように、電気掃除機101は、掃除機本体102と、ホース部103と、手元操作スイッチSW等が設けられた操作管104と、伸縮自在に設けられた延長管105と、第2の吸込具106および第1の吸込具107とを備えて構成されている。
【0027】
掃除機本体102は、内部に電動送風機31(図11参照、以下同じ)を備え、操作管104の手元操作スイッチSWを操作すること等によって電動送風機31の運転の強弱切り替えや、第1の吸込具107に設けられた図示しないパワーブラシの入り切り等が行えるようになっている。
【0028】
掃除機本体102から第1の吸込具107までのホース部103,操作管104,延長管105,第2の吸込具106の内部には、図示しない通風路が設けられており、電動送風機31により発生させた吸引力により吸引された塵埃は、第2の吸込具106,延長管105,操作管104,ホース部103を通じて掃除機本体102に吸引され、集塵装置111(図11参照、以下同じ)に集塵される。
【0029】
掃除機本体102の外殻は、図11に示すように、下ケース201と上ケース202とによって覆われている。集塵装置111は、掃除機本体102の前側(接続口102aが設けられる側)に位置しており、上ケース202の上部には、ハンドル200が一体的に設けられている。また、ハンドル200の前方には、開閉可能な蓋部材30が設けられており、集塵装置111の上部が蓋部材30で開閉可能に塞がれるようになっている。
【0030】
図11に示すように、掃除機本体102は、前端部に、管状の接続口102aを備えている。掃除機本体102の前部側には、接続口102aから吸い込んだ塵埃を分離収集する集塵装置111が備わり、掃除機本体102の後部側には、集塵装置111に連通して吸引力を発生する電動送風機31が備わる。
【0031】
接続口102aには、ホース部103(図10参照)に設けられた図示しない継手管が挿入されて保持されるようになっている。接続口102aの内部には、シール部材が設けられており、シール部材は、継手管と集塵装置111側に設けられた図示しない入口管との気密を保持するようになっている。掃除機本体102の前部下面(集塵装置111の下方)には、キャスタ102cが設けられている。
【0032】
集塵装置111は、塵埃分離部111aと塵埃収容部(塵埃収容器)11bとを有して構成されている。塵埃分離部111aは、吸い込んだ空気を旋回させ、遠心分離作用(サイクロン方式)によって塵埃を分離する部分である。塵埃収容部111bは、塵埃分離部111aに連通しており、塵埃分離部111aで分離された塵埃を収容する図示しない集塵かごを内部に備えている。
【0033】
塵埃分離部111aと塵埃収容部111bとは、集塵装置111の軸方向(前後傾斜方向)に配列され、それぞれの向かい合う軸方向端部同士が接続されて空気の通流可能に連通されており、使用者の操作によって容易に分離可能に構成されている。このうち塵埃分離部111aは、掃除機本体102の前側に配置され、塵埃収容部111bは、塵埃分離部111aよりも掃除機本体102の斜め後側に配置されている。塵埃分離部111aの前端部には、図示しない開口部が設けられており、その開口部が前記入口管に接続されている。
【0034】
塵埃分離部111aは、外筒111a1と、この外筒111a1内に設けられ、フィルタ機能を有する内筒111a2とを有している。塵埃分離部111a内において、空気は、図示しない貫通孔を通じて内筒111a2の外側(外筒111a1の内側)から内筒111a2の内側に流れるようになっており、その際、貫通孔を通らない大きなゴミが外筒111a1と内筒111a2との間に分離されるようになっている。この場合、吸込力にもよるが、例えば、1円玉以上の重さを有するゴミは、外筒111a1内において吸い上げられることなく、外筒111a1に残されるようになっている。
【0035】
これらの外筒111a1と内筒111a2とは、使用者の操作によって容易に分離可能に設けられている。これによって、ゴミ捨て時には、外筒111a1と内筒111a2とを分離することによって、外筒111a1の内部に堆積したゴミを排出することができ、内筒111a2の貫通孔に引っ掛かった髪の毛や糸屑等のゴミがある場合にも、これを容易に除去することができる。
【0036】
このような集塵装置111は、上ケース202の前部に開口した収容室2g(図9参照)に、左右両側から側壁243(図11では片側のみ図示、以下同じ)で保持されるようにして収容される。
【0037】
側壁243は、集塵装置111に沿うように上ケース202の前部から中央部にかけて上り傾斜状に形成されており、側壁243の上端部には、ハンドル200が一体的に固定されている。
【0038】
他の実施例として、図6は前述したスリット15の、磁極部12の内周面側に開口部16を設けたものである。開口部16によりスリット15から磁極部12の内周面は連通している。開口部16を設けることで磁極部12の内周面側に磁気ブリッジ17を有しているよりも磁気抵抗が大きくなるため、さらに磁束を遮断することができ、より電機子反作用の抑制することができる。前記開口部16は固定子鉄心の外周側に設けても同様の効果を奏する。
【0039】
さらに他の実施例として機械的強度を確保するためにスリット15内部に非磁性体の充填またはクサビ等を挿入して補強しても良い。この場合も上記実施例と同様に電機子反作用は抑制できる。
【0040】
図7(a)は本発明の他実施例である。スリット15の磁極部12の内周面側に開口部16を設けた前記磁極部12を有する固定子鉄心13において、軸方向に積層された固定子1の軸方向の中央部に前記スリット15を有さない固定子鉄心13を複数枚積層した前記固定子1である。これにより、製造する際の外力に対する機械的強度を確保することができる。また、図7(b)に示すように、軸方向に積層された固定子1の軸方向の上下部にスリット15を有さない固定子鉄心13を積層して組合せを変えても良い。図7(a)において、固定子はスリット15が設けられている固定子,設けられていない固定子,設けられている固定子という順になるよう設けられている。上記に記載したように全てスリット15を設けた形で製造する際の外力に対する機械的強度を確保するためである。本実施例において、スリット15が設けられている部分の積層固定子鉄心の厚さは8.51mmと7.14mmであり、スリット15が設けられていない部分の積層固定子鉄心の厚さは4.37mmである。これは固定子を電動機に設けるときの凹み係合部が固定子外周面に設けられており、大きさが4mm程度であるためである。この凹み係合部を設ける際の外力により固定子鉄心が変形することを防ぐためにスリット15のない部分が設けられている。凹み係合部はスリット15のない部分に設けられている。ただし、機械的強度が設けられていれば良いため、大きさはこの限りではない。
【0041】
図8は、固定子1の磁極部12の磁極片部18の電機子2に対向しない面の先端部に段差を設けた構造である。前記磁極片部18の先端部の磁気抵抗を増加させ、電機子磁束が磁極部12に流れ込むのを抑え込むことで電機子反作用を抑制している。したがって、本発明の前記磁極部12中心から配置位置を前記電機子2の回転する進行方向へδずらし、磁極部中心と同じ方向に伸びるスリット15と一緒に整流子電動機に採用することで、さらに電機子反作用の抑制の効果を得ることができる。

【符号の説明】
【0042】
1 固定子
2 電機子
11 ヨーク部
12 磁極部
13 固定子鉄心
14 界磁コイル
15 スリット
16 開口部
17 磁気ブリッジ
18 磁極片部
21 電機子鉄心
22 電機子コイル
23 ティース
S1〜S12 スロット
図1
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図3
図4
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図6
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図13