特許第6039892号(P6039892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039892低延性タービンシュラウドを弾力的に実装する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039892
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】低延性タービンシュラウドを弾力的に実装する装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/04 20060101AFI20161128BHJP
   F01D 11/08 20060101ALI20161128BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20161128BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F01D9/04
   F01D11/08
   F02C7/28 A
   F02C7/28 E
   F01D25/00 L
   F01D25/00 M
   F01D25/24 D
   F01D25/24 N
   F01D25/24 P
   C04B35/80 C
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-180058(P2011-180058)
(22)【出願日】2011年8月22日
(65)【公開番号】特開2012-97732(P2012-97732A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】12/915,424
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・アルバース
(72)【発明者】
【氏名】マーク・マルスコ
(72)【発明者】
【氏名】バリー・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ヂエク
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジョンソン
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−512322(JP,A)
【文献】 特開平10−103014(JP,A)
【文献】 特開2004−076601(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0111682(US,A1)
【文献】 実開昭56−017326(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/00−06
F01D 11/00−24
F01D 25/00、24
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンのタービンシュラウド装置であって、
各々のシュラウドセグメント(18)が、低延性材料からなり、対向する第1の端面と第2の端面との間に延在する対向する前壁及び後壁と、対向する内壁及び外壁とによって画成される断面形状を有する環状シュラウドを形成するように構成された前記複数の円弧状シュラウドセグメント(18)と、
前記シュラウドセグメント(18)を囲み、前記シュラウドセグメント(18)の第1の方向への軸方向運動を抑止するように、前記シュラウドセグメント(18)に圧接する支承面(52)を含む環状タービンケース(44)と、
前記タービンケース(44)に取付けられ、前記シュラウドセグメント(18)の前記支承面(52)とは軸方向反対側に位置決めされ、径方向外側向きのシールスロットを画成する環状ノズル支持体と、
前記シールスロット内に配置され、前記タービンケース(44)の内表面に接触するように径方向外側に延びているピストンリング(80)と、
前記ノズル支持体と前記シュラウドセグメント(18)との間に配置され、前記シュラウドセグメント(18)を、前記支承面(52)に対して第1の方向に弾力的に押圧するばね部材(86)と
を含むタービンシュラウド装置。
【請求項2】
前記ばね部材(86)が環状の波形ばねである、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記ばね部材(86)が、複数の環状の折り畳み部を含む断面形状を有する環状シールである、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記ノズル支持体と前記シュラウドセグメント(18)との間に延びる環状シール部材を更に含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記ノズル支持体が、前記シュラウドセグメント(18)の至近のボディの一端部に配置された環状後部フランジを含み、該後部フランジが、前記シュラウドセグメント(18)の近傍の1つ以上の環状シールポケットを画成する1つ以上の環状の離間した軸方向に延びるシール歯を含む、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記ばね部材(86)が前記シールポケットの1つの内部に配置される、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記ばね部材が、弾力的に押圧する機能及びシール機能の両方を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記シュラウドセグメントがセラミックマトリクス複合材からなる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
ガスタービンエンジンのタービンシュラウド装置であって、
各々のシュラウドセグメント(18)が、低延性材料からなり、対向する第1の端面と第2の端面との間に延在する対向する前壁及び後壁と、対向する内壁及び外壁とによって画成される断面形状を有する環状シュラウドを形成するように構成された前記複数の円弧状シュラウドセグメント(18)と、
前記シュラウドセグメント(18)を軸方向で囲う環状タービンケース(244)と、
前記タービンケース(244)に取付けられ、前記シュラウドセグメント(18)の軸方向で一方の側に位置決めされ、径方向外側向きのシールスロット(78)を画成する環状ノズル支持体(254)と、
前記シールスロット(78)内に配置され、前記タービンケース(44)の内表面に接触するように径方向外側に延びているピストンリング(80)と、
前記ノズル支持体と前記シュラウドセグメント(18)との間に配置された第1のばね部材(286)と、
前記タービンケース(244)に設けられた第2のばね部材(386)と
を含み、
前記第1のばね部材(286)が前記シュラウドセグメント(18)を軸方向の第1の方向に押圧し、前記第2のばね部材(386)が前記シュラウドセグメント(18)を前記第1の方向と反対方向に押圧する
タービンシュラウド装置。
【請求項10】
前記環状ノズル支持体(254)と前記シュラウドセグメント(18)との間に設けられた環状の折り畳み部を含む断面形状を有する環状シールをさらに有する請求項9に記載のタービンシュラウド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガスタービンエンジンに関し、特に該エンジンのタービン部内に低延性材料からなるシュラウドを実装する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なガスタービンエンジンは、直列流関係にある高圧圧縮機、燃焼器及び高圧タービンを有するターボ機械コアを含む。コアは周知の方法で一次ガス流を生成するように動作可能である。(ガス発生機タービンとも呼ばれる)高圧タービンは、一次ガス流からエネルギを抽出する1つ以上のロータを含む。各ロータは、回転ディスクによって担持されるブレード又はバケットの環状配列を備える。ロータを通る流路の一部は、ブレード又はバケットの先端を囲む静止構造体のシュラウドによって画成される。これらのコンポーネントは極度の高温環境で動作し、適切な耐用寿命を確保するために空冷されなければならない。通常、冷却に使用される空気は圧縮機から抽出(抽気)される。抽気エアを使用すると燃料消費率(「SFC」)に悪影響を及ぼすので、概して最小限に抑えるべきである。
【0003】
金属製のシュラウド構造の代わりにセラミックマトリクス複合材料(CMC)などの高温耐性がより高い材料を使用することが提案されてきた。これらの材料には、シュラウドセグメントなどの製品の設計及び応用に際して考慮されなければならない特異な機械的特性がある。例えば、CMC材料は、金属材料と比較すると引張延性又は破断点ひずみ率が比較的低い。更に、CMCの熱膨張率(「CTE」)は、約1.5〜5マイクロインチ/インチ/°Fの範囲にあり、これは金属製シュラウドの補強として使用される市販の合金とは大幅に異なる。このような合金の典型的なCTEは、約7〜10マイクロインチ/インチ/°Fの範囲にある。
【0004】
CMCシュラウドは、熱成長によるストレスを低減するようにセグメント化されてもよく、エンジンのクリアランス制御システムが効率的に動作できるようにする。あるセグメント化されたCMCシュラウドは、「箱形」設計を組み込む。
【0005】
CMCシュラウドは、シュラウドが効率的に動作するために確実に位置決めされなければならない。しかし、CMCコンポーネントとそれらを囲む金属製ハードウェアとの熱膨張の差によって動作クリアランスが変化し、過抑制、過負荷、及び/又は所望の予荷重の損失を引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6503051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、CMCの低延性タービン構造を弾力的に実装するための装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の必要性は、タービンシュラウドなどの低延性のタービンコンポーネントを弾力的に実装する装置を提供する本発明によって対処される。シュラウドの軸方向位置は、ばね部材によって少なくとも部分的に決定され得る。
【0009】
本発明の一態様によれば、ガスタービンエンジンのタービン流路装置は、エンジンの一次燃焼ガス流路に少なくとも部分的に曝され、低延性材料からなる流路コンポーネントと、流路コンポーネントを囲む金属製の環状静止構造体と、流路コンポーネントと静止構造体との間に配置され、流路を第1の軸方向に弾力的に押圧する第1のばね部材と、流路コンポーネントと静止構造体との間に配置され、流路コンポーネントを第1のばね部材とは逆の第2の軸方向に押圧する第2のばね部材とを含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、ガスタービンエンジンのタービン流路装置は、エンジンの一次燃焼ガス流路に少なくとも部分的に曝され、低延性材料からなる流路コンポーネントと、流路コンポーネントの第1の方向への軸方向運動を抑止するように流路コンポーネントに圧接する支承面を含む、流路コンポーネントを囲む金属製の環状静止構造体と、流路コンポーネントと静止構造体との間に配置され、流路コンポーネントを支承面に対して第1の方向に弾力的に押圧するばね部材とを含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、ガスタービンエンジンのタービンシュラウド装置は、各々のシュラウドセグメントが、低延性金属からなり、対向する第1の端面と第2の端面との間に延在する対向する前壁及び後壁と、対向する内壁及び外壁とによって画成される断面形状を有する環状シュラウドを形成するように構成された複数の円弧状シュラウドセグメントと、シュラウドセグメントの第1の方向への軸方向運動を抑止するようにシュラウドセグメントに圧接する支承面を含む環状タービンケースと、シュラウドセグメントを支承面に対して第1の方向に弾力的に押圧するばね部材とを含む。
【0012】
本発明は、以下の添付図面と併せて下記の説明を参照することにより、明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の態様により構成されたシュラウド実装装置を組み込んだ、ガスタービンエンジンのタービン部の一部の概略断面図である。
図2】幾つかのスプラインシールと共に示した本発明の態様により構成されたタービンシュラウドの分解斜視図である。
図3】ピストンリングシールの正面図である。
図4】環状波形ばねの正面図である。
図5図4の線5−5に沿った断面図である。
図6】本発明の態様により構成された代替のシュラウド実装装置を組み込んだ、ガスタービンエンジンのタービン部の一部の概略断面図である。
図7】本発明の態様により構成された別の代替のシュラウド実装装置を組み込んだ、ガスタービンエンジンのタービン部の一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面全体を通して同一の参照番号は同一の要素を示す図面を参照すると、図1は周知のタイプのガスタービンエンジンの一部である高圧タービン(「HPT」)の小部分を示す。高圧タービンの機能は、高温の加圧された燃焼ガスを上流側の燃焼器(図示せず)から抽出し、周知の方法でエネルギを機械的仕事に変換することである。高圧タービンは、燃焼器に加圧空気を供給するために、シャフトを介して上流側の圧縮機(図示せず)を駆動する。
【0015】
図示の実施例では、エンジンはターボファンエンジンであり、低圧タービンはガス発生機タービンの下流側に位置し、ファンを駆動するシャフトに結合される。しかし、本明細書に記載の原理は、ターボジェット及びターボシャフトエンジン、並びにその他の車両用に、又は静止した用途で使用されるタービンエンジン用にも同様に応用できる。更に、一例としてタービンノズルが使用されているが、本発明の原理は、ガスタービンエンジンの一次燃焼ガス流路に少なくとも部分的に曝されるいずれの低延性流路コンポーネントにも応用できる。
【0016】
HPTは固定ノズル10を含む。これは一体型でも組立て構造でもよく、環状の外側バンド14で囲まれた複数の翼形の静止タービンベーン12を含む。外側バンド14は、タービンノズル10を通って流れるガス流の径方向外側の境界を画成する。これは連続する環状部材でもよく、セグメント化されていてもよい。
【0017】
ノズル10の下流側には、エンジンの中心線軸の周りを回転し、翼形のタービンブレード16の配列を支持するロータディスク(図示せず)が配置されている。複数の円弧状シュラウドセグメント18からなるシュラウドが、タービンブレード16を取り囲み、これを密接に囲むことによってタービンブレード16を通って流れる高温ガス流の流路の径方向外側の境界を画成するように配置されている。
【0018】
図2に示されるように、各々のシュラウドセグメント18は、対向する内壁及び外壁20、22と、対向する前壁及び後壁24、26とによって画成される概ね長方形の、又は「箱」形の中空断面形状を有する。図示の実施例では、壁の間に円弧状の遷移部が設けられているが、鋭角の、角張った遷移部を使用してもよい。シュラウドセグメント18は径方向内側の流路面28を有する。1つ以上のパッド30が外壁22から突起し、位置合わせのためにこれを利用できる。取付け穴32が外壁22を貫通している。壁20、22、24、及び26内にシュラウド空洞34が形成される。
【0019】
シュラウドセグメント18は、周知のタイプのセラミックマトリクス複合材(CMC)から構成される。一般に、市販のCMC材は例えばSiCなどのセラミック繊維を含み、その形状には窒化ホウ素(BN)などの軟質材料が塗布される。繊維はセラミックマトリクス内に担持され、その形態の1つは炭化ケイ素(SiC)である。通常は、CMC材の室温での引張延性は約1%未満であり、これは本明細書では引張延性が低い材料であると定義し、意味するために用いられる。一般に、CMC材の室温での引張延性は約0.4〜約0.7%の範囲である。これは、室温での引張延性が少なくとも約5%、例えば約5〜約15%の範囲である金属と対比される。シュラウドセグメント18は、その他の低延性、高温耐性材料からも構成できよう。
【0020】
シュラウドセグメント18の流路面28は、CMC材と共に使用するのに適する周知のタイプの環境障壁コーティング(「EBC」)、耐摩耗性材料、及び/又は摩耗対応材36の層を組み込んでもよい。この層は「摩擦被覆層」と呼ばれることがある。図示の実施例において、耐摩耗性材料36の厚さは、約0.51mm(0.020インチ)〜約0.76mm(0.030インチ)である。
【0021】
シュラウドセグメント18は、(一般に「スラッシュ」面とも呼ばれる)対向する端面38を含む。端面38は、「ラジアル面」と呼ばれるエンジンの中心線軸に平行な面に並んでいてもよく、又はこのラジアル面に対して鋭角をなす向きに配置されてもよい。完全なリングとして組み立てられると、隣接するシュラウドセグメント18の端面38の間に端部隙間ができる。端面38に1つ以上のシール40を備えてもよい。同様のシールは「スプラインシール」として知られており、これは端面38内のスロット42に挿入される金属又は適宜の材料の薄片の形態である。スプラインシール40は、シュラウドセグメント18の間の隙間にわたっている。
【0022】
シュラウドセグメント18は、図1に示されるように静止金属エンジン構造体に実装される。この実施例では、静止構造体はタービンケース44の一部である。各々の取付け穴32の内側に、ハンガ46又は負荷分散器が配置されている。図示したボルトなどの固締具48がハンガ46に噛み合い、取付け穴を貫通し、シュラウドセグメント18のパッド30をタービンケース44の内表面に対して位置決めする。ハンガ46(又はワッシャ)と固締具48の柄部との間、及びハンガ46(又はワッシャ)とシュラウドセグメント18の外壁22との間を緊密に嵌合させることにより、取付け穴32を介したシュラウド空洞34からの空気漏れを防止するため、ハンガ46又は分離ワッシャ(図示せず)を使用してもよい。シュラウドセグメント18は径方向に固締され、又は配置される。
【0023】
タービンケース44は、径方向内側に突起し、軸方向を向いた支承面52を画成するフランジ50を含む。フランジ50を、ケース44に機械的に連結される別個の部品として形成することもできよう。支承面52は、シュラウドセグメント18の後方移動に対する堅固なストッパの役割を果たす。
【0024】
金属製のノズル支持体54が、シュラウドセグメント18の軸方向前方に配置される。ノズル支持体は概ね円錐形のボディ56を含む。環状の前部フランジ58が、ボディ56の前端部から径方向外側に延びている。ノズル支持体54は、例えば前部フランジ58を貫通する機械的固定具(図示せず)を用いてタービンケース44に強固に結合される。環状の後部フランジ60はボディ56の後端部に配置され、外脚部62と内脚部64とを有する。この構成では、第1、第2、及び第3の環状のシール歯66、68及び70がそれぞれ後部フランジ60から後方に延びている。任意の数のシール歯を使用してもよい。シール歯は、後部フランジ60と共に、内側及び外側の環状シールポケット72及び74を画成する。環状レール76は、外脚部62の直前でボディ56から径方向外側に延びる。外脚部62とレール76は共に、環状シールスロット78を画成する。
【0025】
ピストンリング80の形態のシールがシールスロット78内に配置され、ケース44の内表面に対して密封する。ピストンリング80は、図3に詳細に図示されている。周知のタイプのピストンリング80は、連続的(又はほぼ連続的)な周方向の密封を行う。これは1つの周方向位置で分割され、径方向外側へのばね張力をもたらす。ピストンリング80は、重複する端部タブ82及び84などのリング端部間の漏れを低減する役割を果たす周知の機能を含んでもよい。異なるタイプの端部配置、多部分又は「隙間なし」リング、又はタンデムリング(図示せず)を使用することもできよう。
【0026】
ばね部材86は、ノズル支持体54とシュラウドセグメント18の前壁24との間に配置される。図4及び5に示されるように、ばね部材86は「波形ばね」と呼ばれるタイプの環状ばねであり、一連の交互の波形88を備える。図示の実施例では、ばね部材は外側のシールポケット74内に配置されているが、前壁24に沿ったいずれの径方向位置に配置してもよい。軸方向で計測した波形88の凹凸高さ「H」は、ばね部材86が取り付けられると、これが所望の予荷重でシュラウドセグメント18を後方に押し込むような高さに選択される。例えば、周囲温度での静的予荷重は、約890N(200重量ポンド)程度でよい。この機能は以下により詳細に記載する。図示した波形ばね、コイルばね又は板ばねなどの様々な構造のばねをこの機能のために使用してもよい。複数のばね部材を直列又は並列で使用してもよい。
【0027】
シール部材90をノズル支持体54とシュラウドセグメントとの間に配置してもよい。図示の実施例では、シール部材は軸方向に弾性がある環状金属シールである。その断面形状は幾つかの環状の折り目や折り畳み部を含み、「W」の文字に似ている。従って、このタイプのシールは一般に「W形シール」と呼ばれている。この例では、シール部材90は、内脚部64とシュラウドセグメント18の前壁24との間の内側シールポケット72内に配置されている。シール部材90は、前壁24に沿ったいずれの径方向位置に配置されてもよい。
【0028】
動作時には、ばね部材86はタービンケース44のフランジ50に対して軸方向後方にシュラウドセグメント18に荷重をかける。支承面52は、軸方向運動に対する強固なストッパとなる。エンジンの運転中、シュラウドセグメント18と周囲の金属コンポーネントとの間に熱膨張率の差が生じる。その結果、様々なコンポーネント相互の空隙が変化する。ばね部材86は、フランジ50に対するシュラウドセグメント18の適宜の予荷重を保ちつつ、必要に応じて膨張又は収縮して前記運動を吸収する。軸方向の予荷重をもたらすばね部材86を使用することで、例えばシュラウドセグメント18と周囲の金属製ハードウェアとに熱膨張率の差による過負荷又は予荷重の損失など、完全に剛性の取付けがなされた場合に予測される問題点が解消される。更に、本明細書に記載の実装装置は、純然たるボルト接合とは異なり、シュラウドセグメント18の軸方向位置を保つために、シュラウドセグメント18とタービンケース44との間の予測し得ない摩擦負荷に依存しない。
【0029】
ノズル支持体54とシュラウドセグメント18との間に様々な構造のばね及びシール部材を使用してもよい。例えば、図6はタービンケース44、シュラウドセグメント18、及びノズル支持体154の代替構造を示している。ノズル支持体154の構造は前述のノズル支持体54と同様であり、後端部に配置された環状の後部フランジ160を含む。第1、第2、第3の環状シール歯166、168及び170は、それぞれ後部フランジ160から後方に延びる。任意の数のシール歯を使用してもよい。シール歯は、後部フランジ160と共に内側及び外側の環状シールポケット172及び174を画成する。
【0030】
ばね部材186は、ノズル支持体154とシュラウドセグメント18の前壁24との間に配置される。この構成では、ばね部材186は前述のタイプのW形シールであり、外側のシールポケット174内に配置される。これは前壁24に沿ったいずれの径方向位置に配置されてもよい。W形シールの特性(合金、材料の厚さ、形状及び折り目の数など)は、ばね部材186が取り付けられると、これが所望の予荷重でシュラウドセグメント18を後方に押し込むように選択される。このようにばね部材は、ばね部材とシール装置の両方の役割を果たす。
【0031】
複数のばね部材を用いてシュラウドセグメント18を設置することも可能である。例えば、図7はタービンケース244、シュラウドセグメント18、及びノズル支持体254の別の構成を示している。ノズル支持体254の構造は前述のノズル支持体54と同じである。
【0032】
この場合は環状の波形ばねである第1のばね部材286は、ノズル支持体254とシュラウドセグメント18の前壁24との間で前部シールポケット274内に配置されている。波形ばねの特性(合金、材料の厚さ、波形の形状や数など)は、第1のばね部材286が取り付けられると、これが所望の予荷重でシュラウドセグメント18を後方に押し込むように選択される。
【0033】
タービンケース244は、後部シールポケット374を画成するフランジ250を含む。この場合は環状の波形ばねである第2のばね部材386は、フランジ250とシュラウドセグメント18の後壁26との間でポケット374内に配置されている。第2のばね部材386も前述のようなW形シールであってよい。その特性(合金、材料の厚さ、波形の形状や数など)は、第2のばね部材386が取り付けられると、これが所望の予荷重でシュラウドセグメント18を前方に押し込むように選択される。シュラウドセグメント18の軸方向位置は、ばね部材286及び386からの荷重が均衡するポイントによって決定される。
【0034】
前述のシュラウド実装装置は、低延性のシュラウドをタービンエンジン内に軸方向に設置し、適切な密封を確実にするために有効である。それによって、安定した位置決めを行いつつ、CMC材と金属との熱膨張率の差が許容される。
【0035】
本明細書では、ガスタービンエンジンのタービンシュラウドの実装装置について記載してきた。本発明の特定の実施形態を記載してきたが、当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であることは明らかであろう。従って、上述の本発明の好適な実施形態の説明、および本発明を実施するための最良の形態は、説明目的のみのためであり、限定する目的のためではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7