(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明が適用された導電性接着剤、これを用いた太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0023】
[薄膜太陽電池モジュール]
太陽電池モジュールを構成する太陽電池としては、例えばガラスやステンレススチールなどの基板上に、光電変換層である半導体層を形成したいわゆる薄膜太陽電池1を用いることができる。薄膜太陽電池1は、
図1(a)(b)に示すように、複数の太陽電池セル2がコンタクトラインによって接続された太陽電池ストリングを構成する。
図2に示すように、このストリング構造を有する薄膜太陽電池1は、単体で、又は複数枚連結されたマトリクスを構成して、裏面側に設けられた封止接着剤のシート3及びバックシート4とともに一括してラミネートされることにより太陽電池モジュール6が形成される。なお、太陽電池モジュール6は、適宜、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム7が取り付けられる。
【0024】
封止接着剤としては、例えばエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)等の透光性封止材が用いられる。また、バックシート4としては、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性等の諸特性に優れるプラスチックのフィルムあるいはシートが用いられ、例えばフッ素系樹脂の高耐性という特徴を生かした、ポリフッ化ビニル(PVF)/ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリフッ化ビニル(PVF)の構成の積層シートを用いることができる。
【0025】
[太陽電池]
本発明が適用された薄膜太陽電池1は、透光性絶縁基板8上に、図示は省略しているが、透明導電膜からなる透明電極膜、光電変換層、裏面電極膜がこの順に積層されて形成され、透光性絶縁基板8側から光を入射させるスーパーストレート型の太陽電池である。なお、薄膜太陽電池には、基材、裏面電極、光電変換層、透明電極の順で形成されたサブストレート型太陽電池もある。以下では、スーパーストレート型の薄膜太陽電池1を例に説明するが、本技術は、サブストレート型の薄膜太陽電池に用いることもできる。
【0026】
また、本発明が適用される太陽電池は、薄膜系太陽電池全般、例えばアモルファスシリコン、微結晶タンデム、CdTe、CIS、フレキシブル等の各種薄膜系太陽電池、あるいは、いわゆる単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、HIT太陽電池といったいわゆるシリコン系太陽電池を用いることができる。
【0027】
透光性絶縁基板8としては、ガラスやポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。
【0028】
透明電極膜としては、例えばSnO
2、ZnO、ITOなどを用いることができる。光電変換層としては、アモルファスシリコン、微結晶シリコンあるいは多結晶シリコンなどのシリコン系光電変換膜や、CdTe,CuInSe
2、Cu(In,Ga)Se
2などの化合物系光電変換膜を用いることができる。
【0029】
裏面電極膜としては、例えば透明導電膜と金属膜の積層構造を有する。透明電極膜は、SnO
2、ZnO、ITOなどを用いることができる。金属膜は、銀、アルミニウム等を用いることができる。
【0030】
このように構成された薄膜太陽電池1は、
図1(a)に示すように、透光性絶縁基板8のほぼ全幅にわたる長さを有する矩形状の太陽電池セル2が複数形成されている。各太陽電池セル2は、電極分割ラインによって分離されるとともに、コンタクトラインによって隣接する太陽電池セル2,2同士において一方の透明電極膜と他方の裏面電極膜とが互いに接続されることで、複数の太陽電池セル2が直列に接続された太陽電池ストリングが構成されている。
【0031】
そして、薄膜太陽電池1は、太陽電池ストリングにおける一端部の太陽電池セル2の透明電極膜の端部上に、太陽電池セル2とほぼ同一長さの線状のP型電極9が形成され、他端部の太陽電池セル2の裏面電極膜の端部上に、太陽電池セル2とほぼ同一長さの線状のN型電極10が形成されている。薄膜太陽電池1は、これらP型電極9及びN型電極10が電極取り出し部となり、タブ線11を介して端子ボックス19へ電気を供給する。
【0032】
[タブ線]
タブ線11は、薄膜太陽電池1のP型電極9及びN型電極10に導通接続されることにより電極を取り出す端子となるものである。タブ線11は、
図3に示すように、例えば一面11aに接着剤層21が積層一体化されることにより積層体20を構成して用いられる。
【0033】
図4に示すように、タブ線11は、接着剤層21を介して薄膜太陽電池1のP型電極9やN型電極10上に接続される集電タブ部12と、端子ボックス19と接続される接続タブ部13とを有し、集電タブ部12と接続タブ部13とは、折り返し部14を介して連続している。なお、
図4では、便宜上、封止接着材のシート3及びバックシート4を省略して図示している。
【0034】
接続タブ部13は、薄膜太陽電池1のモジュール化の際には封止接着材のシート3及びバックシート4を挿通し、バックシート4上に設けられる端子ボックス19と接続される。
【0035】
タブ線11は、例えば厚さ9〜300μmに圧延あるいは電解法にて成形された銅箔やアルミ箔をスリットし、あるいは銅やアルミなどの細い金属ワイヤーを平板状に圧延することにより形成される、P型電極9及びN型電極10とほぼ同じ幅の1〜3mm幅の平角線である。
【0036】
集電タブ部12は、P型電極9及びN型電極10と略同じ長さを有し、タブ線11の一方の面11aに積層された接着剤層21を介してP型電極9及びN型電極10の全面に対して電気的かつ機械的に接合されている。また、接続タブ部13は、タブ線11の一部が折り返し部14で折り返された先の部分であり、薄膜太陽電池1のモジュール化の際には封止接着材のシート3及びバックシート4に設けられた挿通孔を挿通しバックシート4上に折り返されて、先端がバックシート4上に設けられた端子ボックス19の端子台に接続される。
【0037】
折り返し部14は、タブ線11の一部、例えば集電タブ部12の端部に設けられる。タブ線11は、折り返し部14より先が接続タブ部13となる。したがって、タブ線11は、集電タブ部12と接続タブ部13とが折り返し部14を介して連続され、接合部分を有しないため、接合箇所に電荷が集中することによる抵抗値の増大や、接合部分の接続信頼性の低下、接合部分に熱や応力が集中することによる透光性絶縁基板8の損傷等を防止することができる。なお、タブ線11は、折り返し部14を設けることなく、P型電極9及びN型電極10と接続する集電タブと端子ボックス19と接続される接続タブとが接着剤等により接合されるようにしてもよい。
【0038】
タブ線11は、P型電極9及びN型電極10の長さの略2倍程度の長さを有し、全長の略50%の位置で折り返されることが好ましい。これにより、タブ線11は、薄膜太陽電池1のバックシート4上における端子ボックス19の位置にかかわらず、確実に接続タブ部13を端子ボックス19に接続させることができる。
【0039】
図3に示すように、タブ線11は、一面11aにP型電極9又はN型電極10に接続させる接着剤層21が設けられている。接着剤層21は、タブ線11の一面11aの全面に設けられ、導電性接着フィルム23によって構成される。
【0040】
導電性接着フィルム23は、
図3に示すように、熱硬化性のバインダー樹脂層24に導電性フィラーとしてフィラメント凝集体25が含有されてなる。また、導電性接着フィルム23は、押し込み性の観点から、バインダー樹脂の最低溶融粘度が、100〜100000Pa・sであることが好ましい。導電性接着フィルム23は、最低溶融粘度が低すぎると低圧着から本硬化の過程で樹脂が流動してしまい接続不良やセル表面へのはみ出しが生じやすくなる。また、最低溶融粘度が高すぎてもフィルム貼着時に不良を発生しやすく、接続信頼性に悪影響が出る場合もある。なお、最低溶融粘度については、サンプルを所定量回転式粘度計に装填し、所定の昇温速度で上昇させながら測定することができる。
【0041】
[フィラメント凝集体]
タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に挟持され、両者を導通接続させる導電性フィラーとなるフィラメント凝集体25は、細く長い柔軟な金属線、例えば線状ニッケルの凝集体が用いられる。導電性接着フィルム23は、フィラメント凝集体25を導電性フィラーとして用いることにより、タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に挟持された際の接触点を増加させることができ、導通抵抗を低下させ、変換効率の向上を図ることができる。また、導電性接着フィルム23は、フィラメント凝集体25を導電性フィラーとして用いることにより、タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に挟持された場合にも残留応力が発生せず、長期に亘る接続信頼性を確保することができる。
【0042】
フィラメント凝集体25は、バインダー樹脂組成物80質量部に対して5〜40質量部含有されることが好ましい。5質量部に満たないと、タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に接触点を多数設けることができず、導通抵抗の上昇を招く。また、40質量部より多く含有させると、バインダー樹脂組成物の量に対して過剰となり、接着力が低下し、接続信頼性に欠けるおそれがある。
【0043】
また、フィラメント凝集体25は、例えば径が0.5〜8μmのフィラメントが凝集され、径が2〜40μmの大きさのものを用いることが好ましい。フィラメント径が0.5μmに満たない場合やフィラメント凝集体25の径が2μmに満たない場合にも、タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に接触点を多数設けることができず、導通抵抗の上昇を招く。また、フィラメントの径が8μmより大きいものや、フィラメント凝集体25の径が40μmより大きいものは、熱加圧時の残留応力も大きくなるほか、バインダー樹脂層24内におけるフィラメント凝集体25の分散性が低下し、導通性も低下するおそれがあり、含有量を増やすとバインダー樹脂層24の接着性が低下するおそれがある。
【0044】
また、フィラメント凝集体25は、最大径と、導電性接着フィルム23の厚さ、すなわちバインダー樹脂層24の厚さとの比[凝集体の最大径(μm)]/[バインダー樹脂層の厚さ(μm)]が0.2〜2.0であることが好ましい。当該比が0.2に満たない場合、フィラメント凝集体25によってタブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に接触点を多数設けることができず、導通抵抗の上昇を招くおそれがある。また、当該比が2.0を超えると、バインダー樹脂層が薄くなりすぎ、接着力が低下し、接続信頼性に欠けるおそれがある。
【0045】
なお、導電性接着フィルム23は、導電性フィラーとしてフィラメント凝集体25に加え球状の導電性粒子や扁平状の導電性粒子を含有させてもよい。この場合、フィラメント凝集体25と導電性粒子とは99:1〜50:50の割合で含有されることが好ましい。フィラメント凝集体25の割合がこれ以上低下すると、タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間に接触点を多数設けることができず、導通抵抗の上昇を招き、また球状粒子による残留応力の影響で接続信頼性が低下するおそれがある。
【0046】
球状又は扁平状の導電性粒子としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銀、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したもの、カーボン粒子などを挙げることができる。
【0047】
なお、導電性接着フィルム23は、常温付近での粘度が10〜10000kPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、10〜5000kPa・sである。導電性接着フィルム23の粘度が10〜10000kPa・sの範囲であることにより、導電性接着フィルム23をタブ線11の一面11aに設け、リール26に巻装した場合において、いわゆるはみ出しによるブロッキングを防止することができ、また、所定のタック力を維持することができる。
【0048】
導電性接着フィルム23のバインダー樹脂層24の組成は、上述のような特徴を害さない限り、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0049】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0050】
液状エポキシ樹脂としては、常温で流動性を有していれば、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂が全て使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル樹脂など他の有機樹脂と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0051】
潜在性硬化剤としては、加熱硬化型、UV硬化型などの各種硬化剤が使用できる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、何かしらのトリガーにより活性化し、反応を開始する。トリガーには、熱、光、加圧などがあり、用途により選択して用いることができる。なかでも、本実施の形態では、加熱硬化型の潜在性硬化剤が好適に用いられ、P型電極9、N型電極10に加熱押圧されることにより本硬化される。液状エポキシ樹脂を使用する場合は、イミダゾール類、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩などからなる潜在性硬化剤を使用することができる。
【0052】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0053】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整し、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。
【0054】
図3は、タブ線11及び導電性接着フィルム23が積層された積層体20を模式的に示す図である。この導電性接着フィルム23は、剥離基材27上にバインダー樹脂層24が積層され、テープ状に成型されている。このテープ状の導電性接着フィルム23は、リール26に剥離基材27が外周側となるように巻回積層される。剥離基材27としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。
【0055】
導電性接着フィルム23は、バインダー樹脂層24上に、上述したタブ線11が、カバーフィルムとして貼付される。すなわち、導電性接着フィルム23は、バインダー樹脂層24がタブ線11の一面11aに積層される。このように、予めタブ線11と導電性接着フィルム23とを積層一体化させておくことにより、実使用時においては、剥離基材27を剥離し、導電性接着フィルム23のバインダー樹脂層24をP型電極9やN型電極10上に貼着することによりタブ線11と各電極9,10との仮貼りが図られる。
【0056】
上述した導電性接着フィルム23は、フィラメント凝集体25と、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた樹脂生成用溶液を剥離基材27上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、導電性接着フィルム23を得る。その後、導電性接着フィルム23は、ロールラミネート等によりタブ線11の一面11aに貼付される。これにより導電性接着フィルム23が、タブ線11の一面11aの全面に亘って設けられた積層体20が形成される。
【0057】
このような導電性接着フィルム23は、タブ線11がP型電極9上やN型電極10上に仮貼りされた後、加熱押圧ヘッドや真空ラミネータによって所定の温度、圧力で熱加圧される。これにより、
図5に示すように、導電性接着フィルム23は、バインダー樹脂がP型電極9及びN型電極10と集電タブ部12との間より流出されるとともにフィラメント凝集体25が集電タブ部12と各電極9,10との間で挟持され、この状態でバインダー樹脂が硬化する。これにより、導電性接着フィルム23は、集電タブ部12を各電極9,10上に接着させると共に、フィラメント凝集体25を介して集電タブ部12と各電極9,10とを導通接続させることができる。
【0058】
ここで、導電性接着フィルム23は、導電性フィラーとしてフィラメント凝集体25を用いている。フィラメント凝集体25は、通常の球状粒子や扁平状粒子に比して、タブ線11、P型電極9及びN型電極10との接触点が多く、また加圧されることにより隣接するフィラメント凝集体25とも接触することで、横方向にも導通していく。このため、導電性接着フィルム23は、フィラメント凝集体25を用いることにより、タブ線11とP型電極9及びN型電極10との間の導通抵抗が低く抑えられ、変換効率の向上を図ることができる。
【0059】
また、フィラメント凝集体25は、加圧によっても残留応力を殆ど発生させず、熱硬化したバインダー樹脂層24内で浮動することによるタブ線11やP型電極9及びN型電極10との接触面積の減少もない。このため、導電性接着フィルム23は、フィラメント凝集体25を用いることにより、接続信頼性が低下することを防止することもできる。
【0060】
さらに、フィラメント凝集体25は、加圧に対する反発力がほとんど無いため、低圧でタブ線11とP型電極9及びN型電極10との接続を行っても接触面積を増加させることができる。したがって、導電性接着フィルム23は、太陽電池に対する負荷を低減することができる。特に近年では、太陽電池の薄型化が進んでいるため、低圧でタブ線の接続を行うことができれば、熱加圧時における太陽電池の反りや割れなどのリスクを低減することができ有用である。
【0061】
なお、接着剤層21は、導電性接着フィルム23を用いてタブ線11と積層させた積層体20を用いるほか、導電性接着フィルム23をタブ線11と別個に薄膜太陽電池1のP型電極9やN型電極10に設け、次いでタブ線11を重畳させるようにしてもよい。また、接着剤層21は、フィルム状に成形された導電性接着フィルム23以外にも、ペースト状の導電性接着ペーストを用いてもよい。導電性接着ペーストは、ペースト状である他は、導電性接着フィルム23と同様の成分からなり、タブ線11の接続に先立って、P型電極9やN型電極10に塗布され、次いでタブ線11が重畳される。
【0062】
[薄膜太陽電池モジュールの製造工程]
次いで、上述した薄膜太陽電池モジュール6の製造工程について説明する。薄膜太陽電池モジュール6の製造工程は、薄膜太陽電池1の製造工程と、薄膜太陽電池1のP型電極9及びN型電極端子10上に、タブ線11と導電性接着フィルム23との積層体20を配置する工程と、薄膜太陽電池1をモジュール化する工程とを有する。
【0063】
薄膜太陽電池1は通常の方法で製造される。薄膜太陽電池1は、P型電極9及びN型電極端子10上に、積層体20が配置される(
図1)。積層体20は、リール26より所定の長さだけ引き出され、カットされた後、剥離基材27が剥離され、露出された導電性接着フィルム23がP型電極9及びN型電極10上に配置され、ボンダー等によって所定時間タブ線11の上から加圧される。これにより、導電性接着フィルム23を介してP型電極9及びN型電極10上にそれぞれタブ線11が仮配置される。
【0064】
タブ線11が仮配置された薄膜太陽電池1は、モジュール化の工程に移される。モジュール化工程では、薄膜太陽電池1が配列されてタブ線11を介して太陽電池ストリングを形成し、あるいは薄膜太陽電池1単体でモジュール化される。薄膜太陽電池1又は太陽電池ストリングは、封止接着材のシート3とバックシート4が積層され、真空ラミネータ等により一括ラミネート封止される。このとき、接続タブ部13は、封止接着材のシート3とバックシート4に設けられた挿通孔を挿通し、バックシート4上に配設された端子ボックス19に接続される(
図2)。
【0065】
[シリコン系太陽電池]
なお、上記では太陽電池として薄膜太陽電池1を用いた場合を例に説明したが、シリコン系太陽電池を用いた場合も同様に、導電性接着フィルム23を用いてタブ線と電極とを接続し、また太陽電池セル同士を接続することができる。
【0066】
例えば、
図6及び
図7に示すように、受光面の相対向する側縁間に亘る複数のフィンガー電極31が並設されたシリコン系の太陽電池セル30には、全フィンガー電極31と交差するタブ線32が接着剤層33を介して接続される。タブ線32は、上述したタブ線11と同様に、太陽電池セル30の受光面上に接続されフィンガー電極31と接続される集電タブ部35と、太陽電池のモジュール化の際に隣接する太陽電池セル30の裏面電極37、あるいは隣接する太陽電池セル30に設けられたタブ線32と接続される接続タブ部36とを有する。
【0067】
接着剤層33は、上述した接着剤層21と同様に、導電性接着フィルム23や導電性接着ペーストを用いることができる。また、導電性接着フィルム23は、予めタブ線32の両面に積層され一括して太陽電池セル30に貼着されてもよく、タブ線32とは別に形成され別々に太陽電池セル30に貼着されてもよい。
【0068】
集電タブ部35は、フィンガー電極の長手方向と直交する太陽電池セル30の一辺と略同じ長さを有し、接着剤層33を介して全フィンガー電極31と交差するように受光面上に仮貼りされる。接続タブ部36は、集電タブ部35より先の部分であり、隣接する太陽電池セル30の裏面電極37と接着剤層33を介して仮貼りされる。
【0069】
これにより、太陽電池セル30は、ストリング34を構成し、このストリング34が封止接着剤のシート3で挟まれ、受光面側に設けられた表面カバー5及び裏面側に設けられたバックシート4とともに一括して真空ラミネータによってラミネートされる。
【0070】
このとき、タブ線32が真空ラミネータによって所定の温度、圧力で熱加圧されることにより、導電性接着フィルム23は、バインダー樹脂がフィンガー電極31と集電タブ部35との間、及び裏面電極37と接続タブ部36との間より流出されるとともにフィラメント凝集体25がフィンガー電極31と集電タブ部35との間、及び裏面電極37と接続タブ部36との間に挟持され、この状態でバインダー樹脂が硬化する。これにより、導電性接着フィルム23は、タブ線32をフィンガー電極31及び裏面電極37上に接着させると共に、フィラメント凝集体25を介してタブ線32と各電極31,37とを導通接続させることができる。
【0071】
これにより、太陽電池セル30が複数接続された太陽電池モジュール38が形成される。なお、太陽電池モジュール38は、適宜、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム7が取り付けられる。
【0072】
[シリコン系の太陽電池モジュールの製造工程]
次いで、上述したシリコン系太陽電池モジュール38の製造工程について説明する。シリコン系太陽電池モジュール38の製造工程も上記薄膜太陽電池モジュールの製造工程と同様に、シリコン系太陽電池セル30の製造工程と、この太陽電池セル30のフィンガー電極31及び裏面電極37上に、タブ線32を配置する工程と、太陽電池セル30をモジュール化する工程とを有する。
【0073】
シリコン系の太陽電池セル30は、通常の方法で製造される。太陽電池セル30は、フィンガー電極31及び裏面電極37が形成された後、受光面及び裏面にタブ線32が接着剤層33を介して貼着され、これにより太陽電池ストリング34を構成する。なお、以下では、バスバー電極を有しないバスバーレスタイプの太陽電池セル30を例に説明するが、本発明は、バスバー電極を有する太陽電池セル30にも適用できる。バスバー電極を形成した場合、タブ線32は、接着剤層33を介してバスバー電極上に貼着される。
【0074】
タブ線32は、
図6に示すように、受光面上に複数形成されている全フィンガー電極31と交差するように、例えば2本貼着される。また、タブ線32は、隣接する太陽電池セル30の裏面に形成された裏面電極37の所定の位置に、2本貼着される。
【0075】
その後、太陽電池セル30は、モジュール化の工程に移される。モジュール化工程では、
図6に示すように、ストリング34の表裏面に封止接着材のシート3と表面カバー5及びバックシート4が積層され、真空ラミネータ等により一括ラミネート封止されることにより太陽電池モジュール38が形成される。なお、太陽電池モジュール38は、適宜、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム7が取り付けられる。
【0076】
なお、接着剤層33は、真空ラミネータによって一括ラミネート封止されることにより熱加圧される他、ラミネート封止に先立って、加熱ボンダーによってタブ線32とともに熱加圧されることによりタブ線32と各電極31,37とを導通接続させるようにしてもよい。
【実施例】
【0077】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、ニッケルフィラメントの凝集体を導電性フィラーとして用いた導電性接着フィルムを用いて、薄膜系太陽電池のP型電極及びN型電極(ITO膜)、及びシリコン系太陽電池のフィンガー電極及び裏面電極(Agペースト焼成)にタブ線を接続し、モジュール化した後、初期及びTC(Temperature Cycling)試験後の各接続抵抗値を測定、評価した。
【0078】
導電性接着フィルムのバインダー樹脂成分は、
フェノキシ樹脂(YP50:新日鐵化学株式会社製);50質量部
エポキシ樹脂(エピコート630:三菱化学株式会社製);4質量部
液状エポキシ分散型イミダゾール型硬化剤樹脂(ノバキュア3941HP:旭化成イーマテリアルズ株式会社製);25質量部
シランカップリング剤(A−187:モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製);1質量部
である。
【0079】
実施例1〜4ではニッケルフィラメントの含有量を変えた。具体的に、実施例1では、フィラメント径2〜3μmのニッケルフィラメント(F255:バーレインコ社製)を用いて凝集体を得た。ニッケルフィラメントの含有量は5質量部とし、バインダー樹脂層は厚さ20μm、バインダー樹脂層内におけるフィラメント凝集体の径は2〜4μmであった。フィラメントの凝集体の最大径とバインダー樹脂層との比、[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は0.2であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり0%であった。また、導電性接着フィルムを使用するに際し、フラックス等の前処理は不要である。
【0080】
実施例2では、フィラメント凝集体の含有量を10質量部とした。バインダー樹脂層内におけるフィラメント凝集体の径は5〜15μmであった。また、[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は0.8であった。その他の条件は実施例1と同一である。
【0081】
実施例3では、フィラメント凝集体の含有量を20質量部とした。バインダー樹脂層内におけるフィラメント凝集体の径は5〜20μmであった。また、[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は1.0であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり5%であった。その他の条件は実施例1と同一である。
【0082】
実施例4では、フィラメント凝集体の含有量を40質量部とした。バインダー樹脂層内におけるフィラメント凝集体の径は5〜40μmであった。また、[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は2.0であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり20%であった。その他の条件は実施例1と同一である。
【0083】
実施例5及び実施例6ではバインダー樹脂層の厚さ(μm)を変えた。具体的に、実施例5では、バインダー樹脂層の厚さを10μmとし、ニッケルフィラメントの含有量は実施例2と同様に10質量部とした。[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は1.5であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり5%であった。その他の条件は実施例2と同一である。
【0084】
実施例6では、バインダー樹脂層の厚さを30μmとし、ニッケルフィラメントの含有量は実施例2と同様に10質量部とした。[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は0.5であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり0%であった。その他の条件は実施例2と同一である。
【0085】
実施例7及び実施例8では、導電性フィラーとしてニッケルフィラメントに加え、球状ニッケル粒子(SFR−Ni:日本アトマイズ加工社製)や金メッキ樹脂粒子(ミクロパールAU:積水化学工業社製)を含有させた。具体的に、実施例7では、球状ニッケル粒子を加えた。球状ニッケル粒子は粒子径が3μmで、2質量部含有させた。ニッケルフィラメントの凝集体は、8質量部含有させた。その他の条件は実施例2と同一である。
【0086】
実施例8では、金メッキ樹脂粒子を含有させた。金メッキ樹脂粒子は粒子径が4μmで、2質量部含有させた。ニッケルフィラメントの凝集体は、8質量部含有させた。その他の条件は実施例2と同一である。
【0087】
実施例9及び実施例10では、ニッケルフィラメントの径を変えた。具体的に、実施例9では、フィラメント径0.5〜1μmのニッケルフィラメントを用いて凝集体を得た。バインダー樹脂層内におけるフィラメント凝集体の径は3〜10μmであった。[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は0.5であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり0%であった。その他の条件は実施例2と同一である。
【0088】
実施例10では、フィラメント径5〜8μmのニッケルフィラメントを用いて凝集体を得た。バインダー樹脂層内におけるフィラメント凝集体の径は8〜15μmであった。[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は0.8であり、導電性接着フィルムの表面からフィラメント凝集体の露出は、単位面積当たり0%であった。その他の条件は実施例2と同一である。
【0089】
比較例1では、導電性フィラーとして球状ニッケル粒子(SFR−Ni:日本アトマイズ加工社製)を用いた。球状ニッケル粒子は、粒子径が3μm、含有量は10質量部とし、バインダー樹脂層は厚さ20μm、バインダー樹脂層内における球状ニッケル粒子の凝集体の径は3〜10μmであった。球状ニッケル粒子の凝集体の最大径とバインダー樹脂層との比、[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は0.5であり、導電性接着フィルムの表面から球状ニッケル粒子の凝集体の露出は、単位面積当たり1%であった。また、導電性接着フィルムを使用するに際し、フラックス等の前処理は不要である。
【0090】
比較例2では、導電性フィラーとして金メッキ樹脂粒子(ミクロパールAU:積水化学工業社製)を用いた。金メッキ樹脂粒子は、粒子径が4μm、含有量は10質量部とし、バインダー樹脂層は厚さ20μm、バインダー樹脂層内における金メッキ樹脂粒子の凝集体の径は3〜20μmであった。金メッキ樹脂粒子の凝集体の最大径とバインダー樹脂層との比、[凝集体の最大径(μm)]/[接着剤層の厚さ(μm)]は1.0であり、導電性接着フィルムの表面から金メッキ樹脂粒子の凝集体の露出は、単位面積当たり3%であった。また、導電性接着フィルムを使用するに際し、フラックス等の前処理は不要である。
【0091】
比較例3では、無鉛ハンダを用いて薄膜系太陽電池及びシリコン系太陽電池の各電極にタブ線を接続した。接続に際しては、フラックス処理が必要であった。
【0092】
実施例1〜10及び比較例1〜3に係る薄膜系太陽電池及びシリコン系太陽電池は、各接続方法によってタブ線を接続した後、上述した公知の工程を経てモジュール化され、その後、接続抵抗を測定した。測定は、ソーラーシミュレータ(日清紡メカトロニクス株式会社製、ソーラーシュミレーターPVS1116i−M)を用いて、標準的な測定条件(照度1000W/m
2、温度25℃、スペクトルAM1.5G)で行った。また、測定は、いわゆる4端子法にて行い、JIS C8913(結晶系太陽電池セル出力測定方法)に準拠して測定した。
【0093】
測定は、モジュール化初期と、TC(Temperature Cycling)試験後に行った。TC試験は、−55℃35分⇔125℃35分を100サイクル及び500サイクル行った。
【0094】
薄膜系太陽電池では、初期接続抵抗値が、50mΩ未満を◎、50mΩ以上100mΩ未満を○、100mΩ以上を×とした。シリコン系太陽電池では、初期接続抵抗値が、10mΩ未満を◎、10mΩ以上20mΩ未満を○、20mΩ以上を×とした。
【0095】
TC試験後の接続信頼性の評価として、初期の接続抵抗値に比して、1.5倍未満を◎、1.5倍以上2.0倍未満を○、2倍以上を×とした。結果を表1、表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
表1、表2に示すように、導電性フィラーとしてニッケルフィラメントの凝集体を用いている実施例1〜10によれば、薄膜系太陽電池及びシリコン系太陽電池の何れにおいても、初期における接続抵抗値の評価は◎乃至○であり、TC試験後の接続抵抗値の上昇も初期比の2倍未満であった。
【0099】
これは、導電性フィラーとしてニッケルフィラメントの凝集体を用いることで、タブ線及び電極間の接触面積を増加させることで、接続抵抗値の低減を図ることができ、また、残留応力による接続信頼性の低下も生じないためである。
【0100】
一方、導電性フィラーとして球状ニッケル粒子を用いた比較例1では、薄膜系太陽電池及びシリコン系太陽電池の何れにおいても、TC試験500サイクルで、接続抵抗値が初期比の2倍以上に増加した。また、導電性フィラーとして金メッキ樹脂粒子を用いた比較例2では、シリコン系太陽電池において、TC試験500サイクルで、接続抵抗値が初期比の2倍以上に増加した。これは、導電性フィラーの残留応力によって、TC試験後には、タブ線と電極との間の接続面積が減少したためと考えられる。
【0101】
なお、無鉛ハンダを用いた比較例3では、薄膜系太陽電池の電極(ITO膜)との接続では初期、TC試験後のいずれにおいても抵抗値が上昇し、また、シリコン系太陽電池に使用する際においても、フラックス処理が必要となり、工程が煩雑となる。
【0102】
実施例1〜4をみると、実施例1、4では、TC試験500サイクルで接続抵抗値がやや上昇した。これはニッケルフィラメントの充填量が他の実施例に比して少ないためである。また、実施例4では、バインダー樹脂層に対してニッケルフィラメントの充填量が他の実施例に比して多いため、接着力が相対的に低下したためである。
【0103】
実施例5及び6をみると、実施例5では、薄膜系太陽電池において、TC試験500サイクルで接続抵抗値の上昇が見られた。これはバインダー樹脂層の厚さがやや薄く、接着力が相対的に低下したためである。また、実施例6では、両太陽電池において、TC試験500サイクルで接続抵抗値の上昇が見られた。これはバインダー樹脂層の厚さがやや厚く、フィラメント凝集体の接触面積が減少したためである。
【0104】
実施例7及び8をみると、いずれもニッケルフィラメントと球状粒子との配合を8:2とすることで、接続抵抗値、接続信頼性ともに大きな問題はなく使用できることが分かる。
【0105】
実施例9及び10をみると、実施例9では、ニッケルフィラメントの径及びフィラメント凝集体の径がやや小さく、シリコン系太陽電池では正気抵抗値及びTC試験後に接続抵抗値がやや上昇した。