【実施例】
【0054】
以下の方法に従って、本発明の異方性光学フィルム及び比較例の異方性光学フィルムを製造した。
【0055】
[実施例1]
厚さ100μm、76×26mmサイズのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:A4300)の縁部全周に、ディスペンサーを使い硬化性樹脂で高さ0.2mmの隔壁を形成した。この中に下記の光硬化性樹脂組成物を充填し、別のPETフィルムでカバーした。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 65重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
・ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(屈折率:1.536) 35重量部
(ダイセルサイテック社製、商品名:Ebecyl150)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
この両面をPETフィルムで挟まれた0.2mmの厚さの液膜に対して、UVスポット光源(浜松ホトニクス社製、商品名:L2859−01)の落射用照射ユニットから出射される平行光線をレンチキュラーレンズを介して線状光線に変換した紫外線を垂直に、照射強度10mW/cm
2として1分間照射して、
図1に示すような線状の微小な領域を多数有する実施例1の異方性拡散媒体体を得た。そこから、PETフィルムを剥がして本発明の異方性拡散フィルムを得た。
【0056】
[実施例2]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の異方性拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 45重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
・フルオレン骨格ジアクリレート(屈折率:1.591) 12重量部
(大阪ガスケミカル社製、商品名:オクゾールEA−F5503)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 43重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0057】
[実施例3]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の異方性拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 45重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
・アダマンタン骨格アクリレート(屈折率:1.521) 15重量部
(出光興産社製、商品名:アダマンテートX−A−101)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 40重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0058】
[実施例4]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の異方性拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 30重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
トリメチロールプロパントリアクリレート(屈折率:1.474) 15重量部
(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートTMP−A)
・ビフェニル骨格アクリレート(屈折率:1.568) 15重量部
(第一工業製薬社製、商品名:ニューフロンティアOPPE)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 40重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0059】
[実施例5]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の異方性拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 25重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
トリメチロールプロパントリアクリレート(屈折率:1.474) 5重量部
(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートTMP−A)
ウレタンアクリレート(屈折率:1.491) 15重量部
(共栄社化学社製、商品名:UA−306I)
・エポキシアクリレート(屈折率:1.523) 40重量部
(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステルM−600A)
・ジフェニルオキサイド骨格アクリレート(屈折率:1.566) 15重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPOB−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0060】
[比較例1]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の異方性拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 55重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 45重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0061】
[比較例2]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の異方性拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 30重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
トリメチロールプロパントリアクリレート(屈折率:1.474) 15重量部
(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートTMP−A)
・ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(屈折率:1.536) 5重量部
(ダイセルサイテック社製、商品名:Ebecyl150)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 50重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0062】
[比較例3]
下記の光硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の拡散フィルムを得た。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460) 10重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18、重量平均分子量:5,890)
・ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(屈折率:1.536) 90重量部
(ダイセルサイテック社製、商品名:Ebecyl150)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0063】
実施例1〜5、比較例1〜3で使用したシリコーン・ウレタン・アクリレートの重量平均分子量(Mw)の測定は、ポリスチレン換算分子量として、GPC法を用いて下記条件で行った。
デガッサー:DG-980-51(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU-980-51(日本分光株式会社製)
オートサンプラー:AS-950(日本分光株式会社製)
恒温槽:C-965(日本分光株式会社製)
カラム:Shodex KF-806L × 2本 (昭和電工株式会社製)
検出器:RI (SHIMAMURA YDR-880)
温度:40℃
溶離液:THF
注入量:150μl
流量:1.0ml/min
サンプル濃度:0.2%
【0064】
(SEM及びEDSによる評価)
SEM及びEDSについては次の条件で撮影した。
SEM
実施例1で得られた異方性光学フィルムの断面の状態、および含有元素の情報を、SEMおよびEDSにより観察した。観察は、異方性光学層の表面にカーボン蒸着したのち行った。以下に、SEMおよびEDS観察の条件を示す。
分析装置 JSM−6460LV(日本電子社製)/INCA(OXFORD社製)
前処理装置 C(カーボン)コーティング:45nm SC−701C(サンユー電子社製)
SEM条件 加速電圧 :15KV
照射電流 :0.15nA
真空度 :高真空
画像検出器:反射電子検出器
試料傾斜 :0度
【0065】
(異方性拡散フィルムの異方性評価)
光源の投光角、受光器の受光角を任意に可変できる変角光度計ゴニオフォトメータ(ジェネシア社製)を用いて、実施例および比較例の異方性拡散フィルムの評価を行った。光源からの直進光を受ける位置に受光部を固定し、その間のサンプルホルダーに実施例および比較例で得られた異方性拡散フィルムをセットした。
図2に示すように回転軸(L)としてサンプルを回転させてそれぞれの入射角に対応する直線透過光量を測定した。この評価方法によって、どの角度の範囲で入射される光が拡散するかを評価することができ、つまり、拡散の異方性を知ることができる。この回転軸(L)は、
図1(a)に示されるサンプルの構造において、B−B軸と同じ軸である。直線透過光量の測定は、視感度フィルターを用いて可視光領域の波長を測定した。
【0066】
(異方性拡散フィルムの位相差の評価)
王子計測機器の位相差測定装置KOBRA−WRを用いて、実施例および比較例の異方性拡散フィルムの面内位相差を測定した。測定波長は586.5nmとして、入射角を変えて位相差を測定し、最も高い位相差となる測定値を評価した。
【0067】
(異方性拡散フィルムのクロスニコル間での光漏れ評価)
2枚の偏光板を用意し、クロスニコルになるように重ね合わせ、その間に実施例および比較例の異方性拡散フィルムを挟み光漏れを観察した。光漏れを定量的に評価するため、日本電飾社製ヘイズメーターNDH−2000を用い、異方性拡散フィルムを挟まないクロスニコルの偏光板の全光線透過率(TT
0)を基準として、異方性拡散フィルムを挟んだ状態での全光線透過率(TT
1)を測定し、その差を光漏れの透過率変化(ΔTT=TT
1−TT
0)として評価した。なお、この測定の際には異方性拡散フィルムを回転させ最も透過率が高くなる測定値を用いて評価した。ΔTTは低いほど好ましく、1.0以下で実用に供するものであり、0.8以下で好ましく使用することができる。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例ならびに比較例のゴニオフォトメーターによって測定された直線透過率から光学異方性を評価し表1に示した。実施例1〜5と比較例1と2の異方性光学フィルムは光線の入射角度による直線透過率が50%以上の差で変化量が多かったことから、充分な光学異方性を示していると判断できた。一方で、比較例3の光学フィルムは光線の入射角度による直線透過率が約15%の差で変化量が少なく、充分な光学異方性を示さないばかりか、拡散領域での拡散も充分とはいえないと判断できた。
【0070】
表1には実施例ならびに比較例の位相差(Re)の測定結果と光漏れの透過率変化(ΔTT)を併せて示した。実施例1〜5の位相差は25nm以下と充分に低く、かつ、光漏れも少ないことがわかる。さらに、特に実施例4〜5の異方光学性フィルムは10nm以下の低い位相差となり、光漏れはほぼゼロとなる。一方で、比較例の位相差は高く、かつ、光漏れも大きいことがわかる。位相差が小さく、クロスニコル偏光板での光漏れが少ない光学フィルムは、各種ディスプレイに用いられた場合、輝度の向上、コントラストの向上に寄与する光学フィルムとして有用であるといえる。
【0071】
図5に示すように、実施例1の異方性光学フィルムの断面図は低屈折率領域と高屈折率領域が交互に形成されていることがわかる。実施例1の異方性光学フィルムについて、EDSによるマッピングを行った。
図6が炭素について、
図7が珪素について示したものである。なお、
図6と
図7は同一視野にて測定した。測定した元素の濃度が高くなるほど黒に近づき、逆に測定した元素の濃度が薄くなるほど白に近づくことになる。
図6と
図7に示すように、濃淡が線状になっていることが確認された。また、炭素と珪素ではほぼ逆のマッピングになることが示されている。すなわち、炭素濃度が高い箇所では珪素の濃度が低くなり、炭素濃度が低い箇所では珪素の濃度が高くなっていることがわかる。これは、異方性光学フィルムを形成する材料が線状に配向していることを示した結果であり、シリコーン骨格を有する光硬化性化合物の硬化物であるシリコーン樹脂が線状に相対的に多くなっている部分と、シリコーン骨格を有さない化合物が線状に相対的に多くなっている部分が示されたものである。