(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピックローラによるシートの取り込み時は、前記駆動ユニットによって前記ピックアームが前記シート束を押圧する位置に移動し、前記ピックローラによるシートの取り込み終了後は、前記駆動ユニットによって前記ピックアームが前記シート束を押圧する位置から退避し、
前記ピックアームは、前記シート束の他方面に当接する側の自由端側とは反対側の基端部が前記軸部に支持されると共に前記断続部に連結される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係るシート搬送装置を適用した画像読取装置Aの斜視図である。なお、本実施形態では画像読取装置Aを例示するが、本発明のシート搬送装置はコピー機やプリンタ等の画像形成装置や上述した画像読取装置等を単独、または複合的に含むシート情報処理装置にも適用可能である。
【0011】
画像読取装置Aは、第一ユニットとなる下部ユニット1、第二ユニットとなる上部ユニット2の他、端部ユニット3及び4を備える。下部ユニット1には、読取原稿である紙等のシートSの束が載置あるいは積載される給送トレイ5が接続されている。シートSは矢印d1方向に1枚ずつ順次取り込まれて画像読取装置Aに読み取られ、読み取り後のシートAは画像読取装置Aの背面から矢印d2方向に排出される。
【0012】
端部ユニット3及び4は下部ユニット1に固定されており、上部ユニット2は矢印d3方向に回動可能に端部ユニット3及び4に支持されている。矢印d3方向の回動により、上部ユニット2は下部ユニット1に対して開閉可能となっており、
図1は閉状態を示している。上部ユニット2を開状態とすることで、紙詰まりの解消や、下部ユニット1の上面側の構成及び上部ユニット2の下面側の構成のメンテナンスが容易化する。端部ユニット3には、後述する搬送ローラ対6及び7並びにピックローラ8を駆動する駆動ユニット10が内蔵されている。駆動ユニット10は、例えば、駆動源(ここではモータ)と、駆動源からの駆動力をローラに伝達する歯車機構等の伝達機構とを備える。
【0013】
図2(A)は画像読取装置Aの内部の構成を示す模式図である。本実施形態の場合、シートSが載置される、給送トレイ5の載置面(上面)は水平面をなしており、給送トレイ5から水平方向に延びる搬送路RTが下部ユニット1と上部ユニット2との間に形成されている。以下の説明において、上流側、下流側とはシートSの搬送方向ないし取り込み方向を基準とする。
【0014】
本実施形態では、給送トレイ5の載置面及び搬送路RTを水平方向としたが、
図2(B)の画像読取装置A’に示すように、これらを傾斜した構成も採用可能である。なお、
図2(B)においては画像読取装置A’の各構成のうち、画像読取装置Aに対応する構成については同じ符号を付している。すなわち、給送トレイから水平方向に延びる搬送路を備えてもよいし、あるいは、給送トレイが傾斜して配置され、給送トレイから延びる、傾斜した搬送路を備えるようにしてもよい。
【0015】
図2(A)に戻り、搬送路RTの入口部には、シート検知センサ11が設けられており、シートSの有無を検知する。シート検知センサ11は、例えば、光センサや機械式スイッチである。シート検知センサ11の下流側には、ピックローラ8が下部ユニット1に設けられている。ピックローラ8は、給送トレイ5上にあるシートSの束の一方面側(本実施形態では下側)のシートSを装置内に順次取り込むローラであり、駆動ユニット10の駆動力で回転駆動される。
【0016】
ピックローラ8に対向して、ピックアーム13が上部ユニット2に設けられている。ピックアーム13は、シートSの束の他方面側(本実施形態では上側)からピックローラ8に対してシートSの束を押圧する。本実施形態のように、給送トレイ5の載置面及び搬送路RTを水平方向とした構成においては、ピックアーム13でシートSの束を押圧することで、より確実な給送が可能となる。
【0017】
分離部151は、ピックアーム13の押圧位置よりも下流側において、ピックローラ8と対向する位置において上部ユニット2に配置されている。分離部151は、シートSの束から1枚のシートSに分離する部分であり、シートSの重送を防止する。
【0018】
搬送ローラ対6は、ピックローラ8から搬送されるシートSを下流側に搬送する。搬送ローラ対6は、駆動ローラ62と従動ローラ61とを備える。駆動ローラ62は、駆動ユニット10の駆動力で回転駆動される。従動ローラ61は駆動ローラ62に圧接して駆動ローラ62に連れ回る。シートSは駆動ローラ62と従動ローラ61とに挟まれながら搬送される。本実施形態の場合、駆動ローラ62は下部ユニット1に、従動ローラ61は上部ユニット2に、それぞれ設けられている。なお、駆動、従動の関係は逆であってもよい。
【0019】
搬送ローラ対6の下流側には、レジストセンサ12が下部ユニット1に設けられている。レジストセンサ12はシートSの先端の到達、後端の通過を検知する。レジストセンサ12は、例えば、光センサや機械式スイッチである。
【0020】
レジストセンサ12の下流側には、画像読取部9a、9bが配置されている。画像読取部9a、9bは、例えば、密着型イメージセンサを備える。画像読取部9aは上部ユニット2に配設され、シートSの上面を読み取る。画像読取部9bは下部ユニット1に配設され、シートSの下面を読み取る。画像読取部9a、9bは、例えば、レジストセンサ12によりシートSの先端が検知されると所定時間後に画像の読み取りを開始し、レジストセンサ12によりシートSの後端が検知されると、所定時間後に画像の読み取りを終了する。
【0021】
排出ローラ対7は、搬送ローラ対6から搬送されるシートSを装置外へ排出する。排出ローラ対7は、駆動ローラ72と従動ローラ71とを備える。駆動ローラ72は、駆動ユニット10の駆動力で回転駆動される。従動ローラ71は駆動ローラ72に圧接して駆動ローラ72に連れ回る。シートSは駆動ローラ72と従動ローラ71とに挟まれながら搬送される。本実施形態の場合、駆動ローラ72は下部ユニット1に、従動ローラ71は上部ユニット2に、それぞれ設けられている。なお、駆動、従動の関係は逆であってもよい。
【0022】
次に、ピックアーム13及び分離部151の周辺の構成について説明する。
図3は上部ユニット2の下面図である。ピックアーム13及びその移動機構14並びに分離部151を備えた分離ユニット15は、上部ユニット2の長手方向の中央部に配置されている。なお、上部ユニット2の端部には、端部ユニット3及び4に係止される、係止部2a、係止部2bが設けられており、これらを回動軸として回動して上部ユニット2は下部ユニット1に対して開閉する。
【0023】
図4はピックアーム13、分離ユニット15周辺の機構の斜視図、
図5はピックアーム13、分離ユニット15周辺の機構の一部分解斜視図である。
図6(A)は分離ユニット15を構成する保持部152及び分離部151の組み付け状態の斜視図、
図6(B)は保持部152及び分離部151の分離状態の斜視図である。
図7はピックアーム13周辺の機構の斜視図、
図8はピックアーム13周辺の機構の分解斜視図である。
【0024】
従動ローラ61は、本実施形態の場合、2つ設けられており、いずれも軸部61aに回転自在に支持されている。本実施形態の場合、軸部61aは不図示の回り止めが設けられて回転不能に構成されているが、従動ローラ61と軸部61aとを固定して全体が回転する構成としてもよい。
【0025】
軸部61aは、支持部材2c等を介して駆動ローラ62に接近・離間する方向(
図7のa方向)に変位可能に上部ユニット2の本体部に支持されている。コイルスプリング等の弾性部材63が、軸部61aの中央部と上部ユニット2の本体部との間に装着されており、軸部61aを常時駆動ローラ62に近接する方向に付勢する。これにより、駆動ローラ62に従動ローラ61が圧接されると共に、搬送するシートSの厚みに対応可能となる。
【0026】
ピックアーム13は、軸部61aを回動中心として移動可能に軸部61aに支持されている。軸部61aを従動ローラ61の構成部分のみならず、ピックアーム13の支持部としても兼用することで、ピックアーム13に固有の支持部材を削減できる。これにより、装置の小型化を図れる。
【0027】
ピックアーム13は、シートSの押圧部位であるシート押圧部131と、一対のアーム部132と、連結部133と、延設部135と、端部136と、を含む。シート押圧部131は、軸部61aと平行に延び、シートSの束を押圧する部分を構成すると共に、一対のアームb132の互いに対向する一方端部を連結している。シート押圧部131の背面には分離ユニット15と係合する係合部134が凸状で形成されている。
【0028】
シートSの取り込み方向であるd1方向と直交するピックアーム13の幅(軸部61aと平行な方向の長さ)は、ピックローラ8の軸方向における幅よりも幅広とされている(
図4参照)。これにより、ピックローラ8上のシートSをより確実にピックローラ8に押圧することができる。
【0029】
一対のアーム部132は、軸部61aと直交する方向に互いに平行に延び、軸部61aが挿通する開口部132aがその基端部に形成されて軸部61aに回動自在に支持される。開口部132aが形成された基端部と反対側の自由端側はシート押圧部131により連結されている。
【0030】
シートSの取り込み時に、アーム部132の下面はシートSの上面の位置を規定する。つまり、一対のアーム部132はシートSの搬送ガイドを兼ねている。これにより部品点数の削減を図ることができる。
【0031】
連結部133は、軸部61aと平行に延び、一対のアームb132の互いに対向する基端部を連結している。シート押圧部131、一対のアーム部132及び連結部133は、方形の枠状を形成し、その剛性をより確かなものとしている。
【0032】
延設部135は、一方のアーム部132から軸部61aと平行に延びている。延設部135の一端に形成された端部136は、軸部61aが挿通する開口部132aが形成され、アーム部132の端部と共にピックアーム13の基端部を構成している。端部136には、係合孔136bが形成されている。
【0033】
次に、ピックアーム13を移動する移動機構14について説明する。ピックアーム13は、軸部61aに回動可能に支持されたことにより、シートSの束の他方面側(本実施形態では上面側)からピックローラ8に対してシートSの束を押圧する押圧位置と、当該シート束を押圧する位置から退避して、シートSの束の挿入を許容する退避位置との間で移動可能となっている。移動機構14は、ピックアーム13の移動を付勢する。
【0034】
移動機構14は、断続部141と付勢部材142とを備える。付勢部材142は本実施形態の場合、トーションスプリングであり、従動ローラ61の間の部分において軸部61aに装着されている。付勢部材142の端部142bはピックアーム13に係止され、中央部142aは上部ユニット2の本体部に当接する。付勢部材142は、端部142bと中央部142aとが開く方向に弾性力を発揮し、中央部142aにおいて上部ユニット2の本体部から反力をとってピックアーム13を押圧位置側に付勢する。付勢部材142によって、ピックローラ8によるシートSの取り込み時にピックアーム13を押圧位置に付勢することができる。
【0035】
断続部141は、従動ローラ61とピックアーム13とに連結され、従動ローラ61の回転力をピックアーム13に断続的に伝達する。本実施形態の場合、断続部141はワンウェイクラッチである。
図7において矢印b方向は、従動ローラ61がシートSを搬送するその回転方向である。このようにシートSを搬送する方向の各ローラの回転方向を正回転と呼び、逆方向の回転を逆回転と呼ぶ。断続部141は、逆回転時に従動ローラ61の回転力をピックアーム13に伝達する。
【0036】
断続部141は、連結部141a、141bと、バネ部14cと、を備え、その回転中心を従動ローラ61の回転中心と同心として、軸部61aに設けられている。断続部141や付勢部材142を軸部61aに設けることで、装置の小型化を更に図ることができる。
【0037】
連結部141aは従動ローラ61と接続され、互いに一体的に回転する。連結部141aを従動ローラ61と一体的に成型することも可能である。連結部141bは、突起部141dと、ストッパ141eと、を備える。突起部141dは、ピックアーム13の端部136に形成した係合孔136bに挿入されており、連結部141bとピックアーム13とを連結する。
【0038】
バネ部14cは、連結部141aと連結部141bとに巻き付けられた弾性部材であり、例えば樹脂バネ或いは金属バネである。従動ローラ61の正回転時にはバネ部14cが緩むことで、連結部141aと連結部141bとの間での回転力伝達は行われない。但し、空転負荷分の回転力伝達は行われる。従動ローラ61の逆回転時にはバネ部14cが締まり、連結部141aと連結部141bとの間での回転力伝達が行われる。
【0039】
図9(A)及び(B)はピックアーム13の動作説明図である。
図9(A)は従動ローラ61が逆回転した場合を示し、
図9(B)は従動ローラ61が正回転した場合を示す。
【0040】
図9(B)に示すように、従動ローラ61が正回転すると、断続部141は回転力を伝達しない状態となり、空転負荷によって連結部141bが回転するがストッパ141eが、上部ユニット2の本体部に設けた壁部2dに当接することで回転を停止する。ピックアーム13は、付勢部材142の付勢でピックローラ8側に付勢され、押圧位置に位置する。
図9(B)では図示を省略しているが、ピックローラ8とピックアーム13のシート押圧部131との間には、シートSが介在することになる。
【0041】
図9(A)に示すように、従動ローラ61が逆回転すると、断続部141は動力伝達方向に回転するので、回転力を伝達する状態となり、連結部141bが回転する。連結部141bの回転により突起部141dが係合孔136bの一端と当接して係合状態となり、ピックアーム13を
図9(A)に示す退避位置に回動させる。ピックローラ8とピックアーム13のシート押圧部131との隙間が大きくなり、シートSを束でこれらの間にセットし易くなる。
【0042】
このように、上部ユニット2を下部ユニット1に対して閉状態とした読み取り動作時において、従動ローラ61の回転方向によって、ピックローラ8によるシートSの取り込み時は、ピックアーム13を押圧位置に移動し、ピックローラ8によるシートSの取り込み終了後は、ピックアーム13を退避位置に移動することができる。
【0043】
従動ローラ61の駆動及び回転方向は、駆動ローラ62を介した駆動ユニット10の制御による。したがって、駆動ユニット10を搬送ローラ対6等の各ローラの駆動と、ピックアーム13の駆動とで兼用することができる。なお、駆動ユニット10によるピックアーム13の移動は、下部ユニット1に対して上部ユニット2が閉状態のときのみとし、開状態の場合は移動を禁止するように制御を行ってもよい。
【0044】
なお、本実施形態では断続部141をワンウェイクラッチとして説明したが、トルクリミッタとしてもよい。
図15はその一例を示している。トルクリミッタである断続部141’は、連結部141a’、141b’を備え、その回転中心を従動ローラ61の回転中心と同心として、軸部61aに設けられている。
【0045】
連結部141a’は従動ローラ61と接続され、互いに一体的に回転する。連結部141a’を従動ローラ61と一体的に成型することも可能である。連結部141b’は、ワンウェイクラッチの場合と同様に突起部141dと、ストッパ141eと、を備える。
【0046】
連結部141a’と連結部141b’とは、一体で回転可能で、一定以上の回転負荷がかかると別々に回転可能となっている。よって、ストッパ141eに対する壁部2d等の位置によってピックアーム13の回動範囲を規制することで、ワンウェイクラッチの場合と同様の機能を得ることができる。なお、リミットトルクは、付勢部材142の付勢力によるトルクよりも大きく設定される。
【0047】
次に、
図4〜
図6に戻って分離ユニット15について説明する。分離ユニット15は、分離部151と、保持部152と、付勢部材153と、を備える。
【0048】
分離部151は、分離パッド1511と分離パッド1511が固定される支持体1512とを備える。分離パッド1511は、ピックローラ8に接するように付勢部材153により付勢され、シートSの上面に接してその搬送にピックローラ8よりも低い摩擦力で抵抗する。これにより、シートSが重送される場合に、上側のシートSが取り込まれることを防止し、シートSの束から1枚のシートSに分離することができる。なお、分離部151を分離パッド1511のみから構成することも可能である。
【0049】
分離パッド1511は摩耗することからその交換が必要となる場合がある。本実施形態の場合、分離部151が保持部152に対して着脱自在になっており、分離パッド1511を交換する場合、分離部151毎交換可能となっている。このため、支持体1512は、一対の爪部1512aを備えている。一対の爪部1512aは支持体1512の背面側に延設されている。
【0050】
保持部152は、正面壁部1521と、正面壁部1521の両側に形成された一対の側壁部1522と、を備える。一対の側壁部1522は、軸部61aの軸方向と平行に離間しており、その側方に突出した突起部1522aを備える。保持部152は、上部ユニット2の本体部に、突起部1522aを介して支持され、突起部1522aの軸方向である線L1(
図6)周りに回動自在に支持される。線L1は、軸部61aの軸方向と平行である。保持部152は線L1周りに回動することで、ピックローラ8に接近・離間する方向に変位する。
【0051】
側壁部1522には、また、係合孔1522bが形成されている。支持体1512の爪部1512aは、正面壁部1521に形成された開口部1522cを通過して係合孔1522bと係合する。これにより、分離部151が保持部152に保持される。このように、分離部151を保持部152に取り付ける場合には、正面壁部1521に対して分離部151を押しこむようにすればよく、取り外す場合には、逆方向に分離部151を引けばよい。
【0052】
正面壁部1521の正面は、分離部151が装着される装着面を構成する一方、その中央部には、分離部151の背面に当接する凸部1522bが上下方向に設けられている。分離部151の背面は、正面壁部1521の正面に対して、凸部1522bとの線接触となり、
図6(A)の矢印d4方向(左右方向)に、凸部1522bを基点として分離部151を揺動可能とする。これは、シートSに対する分離パッド1511の接触性を向上する。
【0053】
正面壁部1521の上部には、係合部1521aが形成されている。係合部1521aは、ピックアーム13の係合部134と係合可能となっている。
【0054】
付勢部材153は、例えば、コイルスプリングであり、保持部152の背面と上部ユニット2の本体部との間に介在して、保持部152をピックローラ8側へ常時付勢する。この結果、保持部152に保持された分離部151がピックローラ8側へ常時付勢され、分離パッド1511がピックローラ8側へ押圧されることになる。これは分離パッド1511とシートSとの接触性を向上する。
【0055】
図4に示すように、分離部151及び保持部152は、ピックアーム13のシート押圧部131の背面、一対のアーム部132及び連結部133に取り囲まれる位置に配置され、空きスペースの有効利用を図っている。
【0056】
分離部151の正面側にはピックアーム13のシート押圧部131が存在する。よって、分離部151を交換する際、シート押圧部131が邪魔になる場合がある。そこで、本実施形態では、ピックアーム13を退避位置よりも更に退避した交換位置まで移動可能としている。
【0057】
図10(A)及び(B)はピックアーム13と分離部151及び保持部152との相対位置関係を示しており、
図10(A)はピックアーム13が交換位置にある場合、
図10(B)はピックアーム13が押圧位置にある場合を示している。なお、図示していないが、ピックアーム13の退避位置は、押圧位置と交換位置との間の位置となる。
【0058】
図10(B)に示すように、ピックアーム13が押圧位置にある場合、ピックアーム13のシート押圧部131が分離部151を覆う状態にあり、また、分離部151はアーム部132に囲まれている。したがって、分離部151の交換がしづらくなっている。
【0059】
一方、
図10(A)に示すように、ピックアーム13が交換位置にある場合、分離部151は開放された状態となり、その交換が容易なものとなっている。換言すると、ピックアーム13が押圧位置にある場合は分離部151は実質的に着脱不能となっており、交換位置にある場合に保持部152から着脱自在となっている。こうして本実施形態では分離部151の交換容易性を向上することができる。
【0060】
本実施形態の場合、指先の進入が不可能なほど搬送路RTの入口が狭い場合を想定している。また、交換位置へのピックアーム13の移動は手動操作を想定している。このため、ユーザがピックアーム13を交換位置へ移動する場合には、まず、上部ユニット2を下部ユニット1に対して開状態とし、その後、ピックアーム13を交換位置へユーザが移動させる。上部ユニット2を開状態とすることで、分離部151の交換作業が更に容易なものとなる。
【0061】
特に、本実施形態では、ピックアーム13の係合部134と、保持部152の係合部1521aとを係合することで、ピックアーム13を交換位置に維持することができる。
図10(A)は両者の係合状態を示している。このように、手動操作としてもピックアーム13を交換位置に維持することができるので、交換作業性を向上できる。また、本実施形態では、この係合状態にあっては、
図10(A)に示すようにシート押圧部131の先端面と分離部151の表面とが面S上で面一となっている。よって、分離部151が完全に露出してその交換作業性を向上できる。
【0062】
なお、搬送路RTの入口が広く、指先を差し込むことが可能な構成の場合は、上部ユニット2を開状態とすることを必要とせずに、ピックアーム13を交換位置へ移動可能としてもよい。この構成の場合は、上部ユニット2を下部ユニット1に対して開閉自在とする必要はなく、両者を固定した構造であってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、ピックアーム13の交換位置への移動は手動操作としたが、駆動ユニット10の駆動力によって交換位置まで移動可能な構成としてもよい。この場合、退避位置と交換位置とは同じ位置としてもよい。但し、退避位置は主としてシートSのセットに対応した位置であり、交換位置は分離部151の交換を目的としたものであるから、両者を同じ位置とすると、シートSのセット時において、ピックアーム13とピックローラ8との隙間が広すぎる場合がある。したがって、本実施形態のように、退避位置と交換位置とを異なる位置とし、交換位置が退避位置よりもピックローラ8から更に退避した位置とすることが好ましい。
【0064】
次に、上部ユニット2を開状態として分離部151の交換作業を行った後、上部ユニット2を閉状態にした際、ユーザがピックアーム13の係合部134と、保持部152の係合部1521aとの係合解除を忘れる場合がある。これらが係合状態のままであると、ピックアーム13を押圧位置に移動する際に抵抗となって、確実に押圧位置まで移動できない場合がある。そこで、本実施形態では、上部ユニット2を閉状態にした際、係合が自動的に解除されるようにしている。
【0065】
図11(A)及び
図11(B)はその説明図である。上部ユニット2を開状態から閉状態にする間、保持部152とピックアーム13とは互いに係合状態にある場合には、これらは上部ユニット2の回動軸(2a、2b)周りに共に移動することになる。しかし、本実施形態では、上部ユニット2の閉鎖完了前に分離部151(特に分離パッド1511)がピックローラ8に当接する配置関係としている。
図11(A)はその状態を示す。
【0066】
分離部151がピックローラ8に当接する一方、上部ユニット2が閉方向(d3方向の一方向)に更に回動することで、保持部152及び分離部151は突起部1522a周りに時計回りに僅かに回動し、上部ユニット2の本体部に対して相対変位する。一方、ピックアーム13はそのまま上部ユニット2の回動軸周りに回動する。したがって、ピックローラ8と保持部152との回動軌跡が異なることになり、ピックアーム13の係合部134と、保持部152の係合部1521aとの係合が互いの相対変位によって自動的に解除される。よって、ピックアーム13は、退避位置または押圧位置に位置することになる。
図11(B)はピックアーム13が押圧位置に位置した状態を例示している。
【0067】
このように本実施形態では、上部ユニット2の閉鎖によって保持部152とピックアーム13との係合が自動解除されるようにしたので、解除忘れがあってもピックアーム13を押圧位置に移動可能とすることができる。
【0068】
逆に言うと、分離部151を取り外した状態にあっては、上部ユニット2を閉状態にしても、ピックアーム13の係合部134と、保持部152の係合部1521aとの係合状態が維持される。
図12は、分離部151が無い状態でピックアーム13の係合部134と保持部152の係合部1521aとを係合したまま、上部ユニット2を閉状態にした態様を示す。
【0069】
分離部151が存在しないので、保持部152とピックローラ8との間に、通常よりも大きな隙間Wが形成されている。そこで、厚手のシートSや半折のシートSの通過が可能となる。この結果、これらの画像読み取りを行うことができる。半折のシートSの画像読み取りは、規定サイズ外の大判サイズのシートSの読み取りを行うことを可能とする。例えば、画像読取装置AがA4サイズまで対応可能であるとした場合、A3のシートを半折して両面読み取りを行い、読取画像を合成することで、A3のシートの片面全体の画像を読み取ることが可能となる。
【0070】
次に、画像読取装置Aの制御部の構成について
図13を参照して説明する。
図13は画像読取装置Aの制御部100のブロック図である。
【0071】
制御部100は、CPU等の処理部101と、RAMやROM等の記憶部102と、インタフェース部103と、を備える。処理部101は記憶部102に記憶された制御プログラムを実行し、ホストコンピュータ200からの命令やセンサ群105の検出結果に基づきモータ104の制御等を行う。モータ104は駆動ユニット10の駆動源である。センサ群105には、シート検知センサ11、レジストセンサ12、画像読取部9a、9b等が含まれる。インタフェース部103には、入出力インタフェースやホストコンピュータ200との通信インタフェース等が含まれる。
【0072】
図14は処理部101が実行するモータ104の制御例のフローチャート及びそのときのピックアーム13の動作例を示す図である。
【0073】
S1において、ユーザが給紙トレイ5にシートSを積載し、ホストコンピュータ200から画像読取を指示すると、処理部101はこれを受け付け、S2においてモータ104を正転(各ローラを正回転させる方向の回転)させる。
【0074】
これにより、S11において、搬送ローラ対6、排紙ローラ対7、ピックローラ8が正回転する。略同時に、S12で断続部141が空転負荷により回転するが、ストッパ141eが壁部2dに当接することで回転を停止する。略同時に、S13でピックアーム13が付勢部材142の付勢で押圧位置に降下する。以降、シートSが順次取り込まれてその画像が画像読取部9a、9bで読み取られる。
【0075】
S3において、ユーザがホストコンピュータ200から画像読取終了を指示すると、処理部101はこれを受け付け、S4においてモータ104を所定量逆転させる。
【0076】
これにより、S14において、搬送ローラ対6、排紙ローラ対7、ピックローラ8が逆回転する。略同時に、S15で断続部141が逆回転して突起部141dが係合孔136bの一端と当接して係合状態となり、ピックアーム13が上昇して退避位置へ移動する。これにより新たなシートSがセットし易くなる。
【0077】
S5ではモータ104を停止して一単位の処理が終了する。なお、上部ユニット2の閉鎖時や、画像読取装置Aの電源投入時は、モータ104を所定量正転させた後、所定量逆転させることで、ピックアーム13をピックローラ8から離間させる動作を行い、シートSをセットしやすくすることができる。