特許第6040008号(P6040008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040008
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】電線用プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20161128BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20161128BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20161128BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20161128BHJP
   F16L 57/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   H02G3/04 037
   H02G3/32
   B60R16/02 623V
   F16B5/07 L
   !F16L57/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-251003(P2012-251003)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-100014(P2014-100014A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森 貞男
(72)【発明者】
【氏名】中川 健一
(72)【発明者】
【氏名】小形 茂
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−199558(JP,A)
【文献】 特開2010−154668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
F16B 5/07
H02G 3/32
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索される電線を保持して前記車両に固定される電線用プロテクタであって、
前記電線を保持する筐体状の保持部材と、この保持部材の一側面側に組付けられ前記車両に固定される固定部材と、前記保持部材の他側面側に組付けられ前記保持部材の外周側で係止部を介して前記固定部材を前記保持部材に係止させるカバー部材とを有し、
前記保持部材には、前記カバー部材側に向けて突出された突起部が設けられ、前記カバー部材には、前記カバー部材を貫通して形成され前記突起部が挿入可能な挿入部が設けられ、前記突起部には、前記挿入部に挿入された状態で係止されるロック部が設けられ、
前記係止部は、前記ロック部が係止された状態で係止されることを特徴とする電線用プロテクタ。
【請求項2】
請求項1記載の電線用プロテクタであって、
前記保持部材と前記固定部材とには、係合して前記固定部材を前記保持部材の所望の配置位置に保持するロック凸部とロック凹部とが設けられていることを特徴とする電線用プロテクタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電線用プロテクタであって、
前記係止部は、前記保持部材の上下方向にそれぞれ設けられた一対の係止部からなり、この一対の係止部は、それぞれの係止位置が異なることを特徴とする電線用プロテクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線用プロテクタであって、
前記固定部材と前記カバー部材とには、それぞれの前記保持部材に対する組付けを案内する案内部が設けられていることを特徴とする電線用プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される電線用プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索される電線を保持する電線用プロテクタとしては、電線を保持する保持部材としてのクランプ部材と、このクランプ部材を収容する固定部材としての受け部材と、この受け部材を閉塞するカバー部材としての蓋部材とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電線用プロテクタでは、受け部材と蓋部材とがそれぞれの両側面に形成されたロック爪とロック孔の係合によって嵌合固定されている。このような内部にクランプ部材が収容された受け部材と蓋部材は、車両に配置固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−61219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような電線用プロテクタでは、受け部材と蓋部材との係止部としてのロック爪とロック孔とが両側面に設けられているので、受け部材と蓋部材との一側面がパネルなどの車両側に位置されている場合、他側面側のロック爪とロック孔との係合を確認することができるが、一側面側のロック爪とロック孔との係合を確認することが困難であった。
【0006】
また、蓋部材は、受け部材のみに組付けられるので、蓋部材に外力が加わった場合、蓋部材が変形し易く、この蓋部材の変形によってロック爪とロック孔との係合が外れてしまう恐れがあった。
【0007】
そこで、この発明は、固定部材とカバー部材との係止部の係止を確認することができ、カバー部材の変形による係止部の係止解除を抑制することができる電線用プロテクタの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両に配索される電線を保持して前記車両に固定される電線用プロテクタであって、前記電線を保持する筐体状の保持部材と、この保持部材の一側面側に組付けられ前記車両に固定される固定部材と、前記保持部材の他側面側に組付けられ前記保持部材の外周側で係止部を介して前記固定部材を前記保持部材に係止させるカバー部材とを有し、前記保持部材には、前記カバー部材側に向けて突出された突起部が設けられ、前記カバー部材には、前記カバー部材を貫通して形成され前記突起部が挿入可能な挿入部が設けられ、前記突起部には、前記挿入部に挿入された状態で係止されるロック部が設けられ、前記係止部は、前記ロック部が係止された状態で係止されることを特徴とする。
【0009】
この電線用プロテクタでは、車両に固定される固定部材が保持部材の一側面側に組付けられ、保持部材の外周側で係止部を介して固定部材を保持部材に係止させるカバー部材が保持部材の他側面側に組付けられるので、車両側に固定部材が配置されてカバー部材との係止部が車両側の死角に配置されることがなく、係止部の係止を確認することができる。
【0010】
また、カバー部材は、筐体状の保持部材の他側面側に組付けられるので、保持部材にカバー部材を組付けた状態では保持部材によってカバー部材の剛性が向上し、外力によるカバー部材の変形を抑制でき、係止部の係止解除を抑制することができる。
【0011】
従って、このような電線用プロテクタでは、固定部材とカバー部材との係止部の係止を確認することができ、カバー部材の変形による係止部の係止解除を抑制することができる。また、この電線用プロテクタでは、係止部が突起部に設けられたロック部が係止された状態で係止されるので、カバー部材の挿入部に突起部が挿入された状態でロック部の係止状態を確認することで、係止部の係止状態を直接確認しなくても、容易に係止部の係止状態を確認することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電線用プロテクタであって、前記保持部材と前記固定部材とには、係合して前記固定部材を前記保持部材の所望の配置位置に保持するロック凸部とロック凹部とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の電線用プロテクタであって、前記係止部は、前記保持部材の上下方向にそれぞれ設けられた一対の係止部からなり、この一対の係止部は、それぞれの係止位置が異なることを特徴とする。
【0015】
この電線用プロテクタでは、係止部が保持部材の上下方向にそれぞれ設けられた一対の係止部からなるので、固定部材とカバー部材との係止部による係止を強化することができる。
【0016】
また、一対の係止部は、それぞれの係止位置が異なるので、一方の係止部の係止を他方の係止部の係止より遅らせることにより、一方の係止部の係止を確認することで、他方の係止部の係止を確認することができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線用プロテクタであって、前記固定部材と前記カバー部材とには、それぞれの前記保持部材に対する組付けを案内する案内部が設けられている。
【0018】
この電線用プロテクタでは、固定部材とカバー部材とにそれぞれの保持部材に対する組付けを案内する案内部が設けられているので、固定部材とカバー部材との保持部材への誤った組付けを防止でき、係止部を確実に係止させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、固定部材とカバー部材との係止部の係止を確認することができ、カバー部材の変形による係止部の係止解除を抑制することができる電線用プロテクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタの分解斜視図である。
図3】(a)は図1のX−X断面図である。(b)は図3(a)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図3を用いて本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタについて説明する。
【0022】
本実施の形態に係る電線用プロテクタ1は、車両に配索される電線3を保持して車両に固定される。
【0023】
そして、この電線用プロテクタ1は、電線3を保持する筐体状の保持部材5と、この保持部材5の一側面側に組付けられ車両に固定される固定部材7と、保持部材5の他側面側に組付けられ保持部材5の外周側で係止部9を介して固定部材7を保持部材5に係止させるカバー部材11とを有する。
【0024】
また、保持部材5には、カバー部材11側に向けて突出された突起部13が設けられ、カバー部材11には、カバー部材11を貫通して形成され突起部13が挿入可能な挿入部15が設けられ、突起部13には、挿入部15に挿入された状態で係止されるロック部17が設けられ、係止部9は、ロック部17が係止された状態で係止される。
【0025】
さらに、係止部9は、保持部材5の上下方向にそれぞれ設けられた一対の係止部9a,9bからなり、この一対の係止部9a,9bは、それぞれの係止位置19a,19bが異なる。
【0026】
また、固定部材7とカバー部材11とには、それぞれの保持部材5に対する組付けを案内する案内部21が設けられている。
【0027】
図1図3に示すように、電線3は、コネクタや機器などに接続部(不図示)を介して電気的に接続され、電源からコネクタや機器などへの電力供給、もしくは両端にコネクタが接続されて機器間の電気的接続などに適用される。この電線3は、複数本(ここでは2本)が保持部材5に保持されている。なお、保持部材5が位置する電線3の長さ方向の両側外周には、蛇腹形状のコルゲートチューブ23が配置されている。
【0028】
保持部材5は、グロメット25と、プロテクタ27とからなる。グロメット25は、ゴムなどの弾性材料からなり、直方体形状に形成され、電線挿通部29と、スリット31とを備えている。電線挿通部29は、グロメット25の中央部に電線3の長さ方向に貫通して設けられた複数(ここでは2つ)の孔部となっている。この電線挿通部29は、スリット31から電線3が配置され、電線3の外周に密着される。
【0029】
スリット31は、グロメット25の両側面に電線挿通部29の長さ方向に沿って形成され、グロメット25を2分割している。このようなスリット31で分割された一方のグロメット25に電線3を電線挿通部29に配置させ、他方のグロメット25で閉塞することにより、例えば、電線3の両端にコネクタなどが接続されている場合であっても、電線3にグロメット25を装着することができる。なお、スリット31は、グロメット25の片側側面に設けてグロメット25を上下方向に開閉可能としてもよく、この場合にはグロメット25の部品点数を削減することができる。
【0030】
プロテクタ27は、直方体の筐体状に形成され、ヒンジを介して開閉可能に設けられた2つの分割部材からなり、内部にグロメット25が収容される。なお、プロテクタ27の分割としては、ヒンジを設けずに2つの分割部材としてもよい。このプロテクタ27は、グロメット25を収容した状態で、結合部33でロックすることによって、グロメット25の外周面を押圧して圧縮し、電線3とグロメット25との密着性を向上させる。このような保持部材5のプロテクタ27には、固定部材7とカバー部材11とが組付けられる。
【0031】
固定部材7は、断面コ字状に形成され、側壁の内部に車両側に固定される、例えば、差込溝などの固定部35が設けられている。この固定部35は、車両側に設けられた鉄板ブラケットなどの車両側固定部(不図示)が差し込まれ、固定部材7を介して保持部材5が車両に固定される。この固定部材7は、保持部材5の一側面側から組付けられ、係合部37を介して保持部材5のプロテクタ27に係合されている。
【0032】
係合部37は、プロテクタ27と固定部材7との互いの対向面であるプロテクタ27の上下面と固定部材7の内周面にそれぞれ形成された複数の凹凸部39,41からなる。この複数の凹凸部39,41は、固定部材7の保持部材5への組付方向(電線3の長さ方向と直交する方向)に沿って延設された複数のリブとなっている。
【0033】
この複数の凹凸部39,41により、固定部材7の保持部材5に対する配置位置を変更可能とし、固定部材7を保持部材5に対して所望の配置位置で保持させることができる。このため、固定部材7、保持部材5、車両側固定部などに製造のバラツキがあっても、固定部材7の保持部材5に対する配置位置を変更することによって、製造のバラツキを吸収することができる。
【0034】
このような複数の凹凸部39,41は、固定部材7の保持部材5への組付方向に沿って設けられた複数のリブの係合であるので、車両の振動などによる固定部材7の保持部材5に対する配置位置の横ズレを防止することができる。また、プロテクタ27に設けられた複数の凹凸部39は、固定部材7に設けられた複数の凹凸部41より多くなるように設定されている。このため、例えば、固定部材7の固定部35が固定される車両側固定部が寸法公差の範囲内で上限、もしくは下限の位置にある場合であっても、固定部材7において係合していない凹凸部41より係合している凹凸部41の方が多くなり、固定部材7の保持部材5に対する保持を安定させることができる。
【0035】
このような複数のリブにおいて、固定部材7に設けられたリブ間には、ロック凸部43が設けられ、保持部材5のプロテクタ27に設けられた複数のリブには、ロック凸部43が係合可能なロック凹部45が設けられている。
【0036】
ロック凸部43は、固定部材7の内周面の上下に撓み可能に複数(ここでは上下にそれぞれ2つ)設けられ、固定部材7の内方に向けて突設されている。このロック凸部43は、固定部材7が保持部材5の所望の配置位置に組付けられた状態で、ロック凹部45に係合される。
【0037】
ロック凹部45は、プロテクタ27の複数のリブが同一箇所で切り欠かれた切欠部となっている。このロック凹部45は、固定部材7が保持部材5の所望の配置位置に組付けられた状態で、ロック凸部43が係合されて固定部材7が保持部材5から脱落することを防止する。このようなロック凸部43とロック凹部45とによって保持部材5に保持される固定部材7は、所望の配置位置でカバー部材11によって係止される。
【0038】
カバー部材11は、固定部材7と逆向きの断面コ字状に形成され、固定部材7と反対側の側面である保持部材5の他側面側から保持部材5のプロテクタ27に組付けられ、保持部材5の外周側の中央部で係止部9を介して固定部材7を保持部材5の所望の配置位置で係止する。
【0039】
係止部9は、保持部材5の外周側の中央部で上下方向にそれぞれ設けられた一対の係止部9a,9bからなる。このように係止部9を保持部材5の外周側の中央部に設けることにより、固定部材7の固定部35が車両側固定部に固定された状態でも、パネルなどの車両側の周辺部材が死角となることがなく、係止部9の係止状態を目視によって確認することができる。これら一対の係止部9a,9bは、それぞれ固定部材7に設けられた係止凸部47と、カバー部材11に設けられた係止凹部49とからなる。
【0040】
係止凸部47は、固定部材7のロック凸部43の近傍で上下面に複数(ここでは上下面にそれぞれ2つ)外方に向けて突設されている。この係止凸部47は、固定部材7が保持部材5の所望の配置位置に組付けられた状態で、カバー部材11の係止凹部49に係止される。
【0041】
係止凹部49は、係止凸部47が挿入可能な環状に形成され、カバー部材11の上下面から複数(ここでは上下面にそれぞれ2つ)組付方向に向けて突設されている。この係止凹部49は、固定部材7が保持部材5の所望の配置位置に組付けられた状態で、係止凸部47が係止されて固定部材7とカバー部材11とが保持部材5に保持される。
【0042】
なお、係止凹部49は、係止凸部47と係止した状態で、固定部材7のロック凸部43の外側に位置される。このため、固定部材7が保持部材5に組付けられた状態では、ロック凸部43が外方に向けて撓もうとしても、係止凹部49によって撓みが規制され、ロック凸部43とロック凹部45との係合が解除されることを防止できる。
【0043】
このような係止凸部47と係止凹部49とで構成された一対の係止部9a,9bは、それぞれの係止位置19a,19bが異なっている。ここでは、例えば、保持部材5の上方に位置する係止部9aは、保持部材5の下方に位置する係止部9bより遅く係止される。詳細には、固定部材7が保持された保持部材5にカバー部材11を組付けると、まず、下方に位置する係止部9bにおいて、係止凸部47と係止凹部49との係止が開始される。次に、この係止部9bの係止開始に応じて、上方に位置する係止部9aにおいて、係止凸部47と係止凹部49との係止が開始される。そして、係止部9bの係止完了に応じて、係止部9aの係止が完了される。
【0044】
このように上方に位置する係止部9aの係止のタイミングを下方に位置する係止部9bの係止のタイミングより遅らせることにより、目視し易い上方に位置する係止部9aの係止を確認するだけで、下方に位置する係止部9bの係止を確認することができる。
【0045】
これら一対の係止部9a,9bは、カバー部材11の上下面に外力が加わって、カバー部材11が開く方向に変形した場合、その係止が解除される可能性がある。しかしながら、カバー部材11の内方には、筐体状の保持部材5が位置されているので、カバー部材11の上下面に外力が加わっても、カバー部材11が開く方向に変形することが抑制され、係止部9での係止解除を防止することができる。
【0046】
このような係止部9における係止、すなわち固定部材7とカバー部材11との係止は、案内部21によって案内される。案内部21は、固定部材7の上面で係止凸部47,47間に設けられた案内凹部51と、カバー部材11の上面で係止凹部49,49間に設けられた案内凸部53とからなる。
【0047】
この案内部21における案内凹部51への案内凸部53の挿入の可否により、カバー部材11の保持部材5に対する上下方向の誤った組付けを防止でき、一対の係止部9a,9bの係止を確実に行うことができる。また、案内凸部53が案内凹部51に挿入された状態では、カバー部材11が上下方向に開くことがなく、係止部9の係止解除を防止することができる。
【0048】
このような案内部21によって案内される固定部材7とカバー部材11との係止は、保持部材5のプロテクタ27に設けられた突起部13がカバー部材11に設けられた挿入部15内に挿入されるか否かによって、その係止が可能か否かが決定される。
【0049】
突起部13は、保持部材5のプロテクタ27のカバー部材11が組付けられる側の側面にカバー部材11側に向けて突設されている。この突起部13は、カバー部材11の挿入部15に挿入可能である場合には固定部材7とカバー部材11との係止部9を係止可能とし、挿入部15に挿入できない場合には固定部材7とカバー部材11との係止部9を係止不能とする。
【0050】
挿入部15は、長穴形状に形成され、カバー部材11の側壁を厚さ方向に貫通する孔部となっている。なお、挿入部15は、突起部13より固定部材7の保持部材5に対する配置位置の変更方向に大きく形成されている。ここで、通常、車両側固定部は、電線3の車両への配索状態を保持するため、車両に等間隔に複数設けられており、この車両側固定部に合わせて電線3には複数の保持部材5と固定部材7とが組付けられている。このため、挿入部15の長穴の範囲は、隣り合う車両側固定部までの寸法公差内で突起部13が挿入可能な範囲となっている。
【0051】
このような挿入部15へ突起部13を挿入できる場合には、固定部材7とカバー部材11との係止部9が係止可能となって保持部材5に固定部材7を係止させることができる。この場合には、固定部材7の固定部35が隣り合う車両側固定部までの寸法公差内にあり、固定部材7の固定部35を車両側固定部に固定することができる。
【0052】
これに対して挿入部15へ突起部13を挿入できない場合には、固定部材7とカバー部材11との係止部9が係止することができない。この場合には、固定部材7の固定部35が隣り合う車両側固定部までの寸法公差外にあり、固定部材7の固定部35を車両側固定部に固定することができない。
【0053】
このような挿入部15への突起部13の挿入の可否により、固定部材7の車両側への固定の前に、固定部材7の固定部35を車両固定部に固定できるか否かを判断することができる。このため、固定部材7を車両側に固定する際に、固定部材7の保持部材5に対する配置位置を変更する必要がなく、組付性を向上することができる。加えて、固定部材7を車両側に固定する際に、電線3に引っ張りや折れ曲がりなどの無理な力がかかることがない。
【0054】
このような挿入部15に挿入される突起部13には、ロック部17が設けられている。ロック部17は、突起部13の先端側の上面に撓み可能に設けられ、突起部13の上方に向けて突設されている。このロック部17は、突起部13が挿入部15に挿入された状態で、挿入部15の開口縁部に係止される。
【0055】
このロック部17が挿入部15の開口縁部に係止されたときには、係止部9が係止された状態となっている。詳細には、一対の係止部9a,9bにおけるそれぞれの係止凹部49,49は、図3(a)の仮想線で示すように、ロック部17を基点とする半径Ra,Rbによって描かれる挿入軌跡に沿って係止凸部47,47に係止される。このため、ロック部17が挿入部15の開口縁部に係止された状態では、必ず係止部9が係止状態となる。
【0056】
このようなロック部17を突起部13に設けることにより、例えば、一対の係止部9a,9bの係止状態が車両側の周辺部材によって目視しづらい状況であっても、ロック部17の係止を目視によって確認することにより、係止部9の係止を確認することができる。加えて、突起部13にロック部17を設けることにより、保持部材5に対するカバー部材11の保持を強化することができる。
【0057】
このように構成された電線用プロテクタ1における保持部材5への固定部材7とカバー部材11との組付方法は、まず、車両側固定部の位置を確認し、保持部材5に対する所望の配置位置に固定部材7を配置させる。次に、保持部材5の一側面から固定部材7を固定部材7と保持部材5との複数の凹凸部39,41を係合させながら挿入する。次に、保持部材5の他側面からカバー部材11を挿入し、カバー部材11の挿入部15に保持部材5の突起部13を挿入可能であるか否かを確認する。なお、この挿入の可否の確認は、挿入部15がカバー部材11を貫通する孔部であるので、目視によって行うことができる。
【0058】
そして、挿入部15に突起部13を挿入可能である場合には、固定部材7とカバー部材11との係止部9を係止させると共に、ロック部17を挿入部15の開口縁部に係止させて固定部材7とカバー部材11とを保持部材5に保持させる。このとき、係止部9とロック部17との係止状態を目視によって確認する。なお、係止部9の係止状態を目視しづらい場合には、ロック部17と挿入部15の開口縁部との係止状態を確認する。
【0059】
このような電線用プロテクタ1では、車両に固定される固定部材7が保持部材5の一側面側に組付けられ、保持部材5の外周側で係止部9を介して固定部材7を保持部材5に係止させるカバー部材11が保持部材5の他側面側に組付けられるので、車両側に固定部材7が配置されてカバー部材11との係止部9が車両側の死角に配置されることがなく、係止部9の係止を確認することができる。
【0060】
また、カバー部材11は、筐体状の保持部材5の他側面側に組付けられるので、保持部材5にカバー部材11を組付けた状態では保持部材5によってカバー部材11の剛性が向上し、外力によるカバー部材11の変形を抑制でき、係止部9の係止解除を抑制することができる。
【0061】
従って、このような電線用プロテクタ1では、固定部材7とカバー部材11との係止部9の係止を確認することができ、カバー部材11の変形による係止部9の係止解除を抑制することができる。
【0062】
また、係止部9は、突起部13に設けられたロック部17が係止された状態で係止されるので、カバー部材11の挿入部15に突起部13が挿入された状態でロック部17の係止状態を確認することで、係止部9の係止状態を直接確認しなくても、容易に係止部9の係止状態を確認することができる。
【0063】
さらに、係止部9は、保持部材5の上下方向にそれぞれ設けられた一対の係止部9a,9bからなるので、固定部材7とカバー部材11との係止部9による係止を強化することができる。
【0064】
また、一対の係止部9a,9bは、それぞれの係止位置19a,19bが異なるので、例えば、上方に位置する係止部9aの係止を下方に位置する係止部9bの係止より遅らせることにより、係止部9aの係止を確認することで、係止部9bの係止を確認することができる。
【0065】
さらに、固定部材7とカバー部材11とには、それぞれの保持部材5に対する組付けを案内する案内部21が設けられているので、固定部材7とカバー部材11との保持部材5への誤った組付けを防止でき、係止部9を確実に係止させることができる。
【0066】
なお、本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタでは、一対の係止部のうち上方に位置する係止部の係止を下方に位置する係止部の係止より遅らせているが、これに限らず、一対の係止部の係止位置は、周辺部材との干渉や目視による係止の確認のし易さなどを考慮して適宜設定すればよい。
【0067】
また、固定部材の固定部は、車両側固定部であるブラケットが挿入される差込溝となっているが、これに限らず、固定部は、車両側固定部であるクリップ固定穴に固定されるクリップ部や車両側固定部であるボルト締結孔にボルトで共締めされるボルト締結部などであってもよく、配置位置が固定された車両側固定部に固定されるものであれば、固定部はどのような形態であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…電線用プロテクタ
3…電線
5…保持部材
7…固定部材
9…係止部
9a,9b…一対の係止部
11…カバー部材
13…突起部
15…挿入部
17…ロック部
19a,19b…係止位置
21…案内部
図1
図2
図3