特許第6040146号(P6040146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040146
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ポリエステル織物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/02 20060101AFI20161128BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20161128BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20161128BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20161128BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20161128BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20161128BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   D03D1/02
   D03D15/00 A
   B60R21/235
   D06M15/693
   D06M15/643
   D06M15/564
   D06M15/256
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-500008(P2013-500008)
(86)(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公表番号】特表2013-522489(P2013-522489A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2011002086
(87)【国際公開番号】WO2011122801
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2012年9月13日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0028698
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】クァク,トン−ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ−ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジョン−フン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−モク
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/027228(WO,A1)
【文献】 特開昭60−088120(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/094317(WO,A1)
【文献】 特開平11−200145(JP,A)
【文献】 特開平06−313265(JP,A)
【文献】 特開2009−074215(JP,A)
【文献】 特開平06−306728(JP,A)
【文献】 特開平07−252740(JP,A)
【文献】 特開平08−199448(JP,A)
【文献】 特開平07−048717(JP,A)
【文献】 特開平03−167312(JP,A)
【文献】 特開平04−214437(JP,A)
【文献】 特開平07−054238(JP,A)
【文献】 特表2010−518263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
D06M 13/00−15/715
B60R 21/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米国材料試験協会規格ASTMD885の方法で測定したモジュラス(Young’s modulus)が伸度1%で60〜100g/deであり、伸度2%で20〜60g/deであり乾熱収縮率が1.0%〜6.5%であり、単糸繊度が2.5DPF〜6.8DPFであり、かつ、固有粘度が1.1〜1.2dl/gであるポリエステル繊維を含み、
米国材料試験協会規格ASTMD1777によって測定した織物の厚度は、0.18〜0.43mmであり、
下記計算式1で定義される耐熱定数(X)は、自由落下させるホット−ロッドの温度(T)が600℃である場合に、1.5〜1.8であることを特徴とする、ポリエステル織物。
[計算式1]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D)
(前記計算式1において、
Tは、自由落下させるホット−ロッドの温度であって、
前記ホット−ロッドは、熱伝導率55W/m・Kのスチール材質であり、重量が50gであり、直径10mm、長さ82mmの円形状であり、
tは、前記ホット−ロッドをポリエステル織物から距離(d)が76mm離れるように前記織物の上側方向に配置し、この位置から織物側方向に前記ホット−ロッドを長手方向を鉛直方向として自由落下させ、前記ホット−ロッドの平坦な円形状の端面がポリエステル織物と接触した後から前記ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、
Dは、前記ポリエステル織物の厚度(mm)を示す
【請求項2】
前記ホット−ロッドの温度(T)が450℃である場合、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は2.7〜3.0である、請求項1に記載のポリエステル織物。
【請求項3】
前記ポリエステル繊維の引張強度が8.8〜10.0g/dである、請求項1または2に記載のポリエステル織物。
【請求項4】
米国材料試験協会規格ASTMD885の方法で測定したモジュラス(Young’s modulus)が伸度1%で75〜95g/deであり、伸度2%で22〜55g/deであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維を含むポリエステル織物。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維は、切断伸度が14%〜23%で、溶融熱容量(ΔH)が40〜65J/gであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル織物。
【請求項6】
前記織物は、400〜650デニールの総繊度を有するポリエステル繊維を含むものであることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のポリエステル織物。
【請求項7】
前記ポリエステル織物上に形成されたゴム成分のコーティング層を含み、前記ホット−ロッドがゴム成分のコーティング層を含むポリエステルコーティング織物と接触した後から前記ポリエステルコーティング織物を通過するまでにかかった時間(t、sec)を測定し、前記ゴム成分のコーティング層を含むポリエステルコーティング織物の厚度(D、mm)を測定して、前記計算式1に基づいて、コーティングされたポリエステル織物の耐熱定数が算測され、
前記ホット−ロッドの温度(T)が450℃である場合、コーティングされたポリエステル織物の耐熱定数が6.22〜10.9であり;前記ホット−ロッドの温度(T)が600℃である場合、コーティングされたポリエステル織物の耐熱定数が5.6〜9.7であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル織物。
【請求項8】
前記ゴム成分は、粉末(powder)型シリコーン、液状(liquid)型シリコーン、ポリウレタン、クロロフルオレン、ネオプレンゴム、およびエマルジョン型シリコーン樹脂からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、請求項に記載のポリエステル織物。
【請求項9】
前記ゴム成分の単位面積あたりのコーティング量が20〜200g/mであることを特徴とする、請求項7または8に記載のポリエステル織物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステル織物を含むことを特徴とする、車両用エアバッグ。
【請求項11】
前記エアバッグは、フロンタル用エアバッグまたはサイドカーテン型エアバッグであることを特徴とする、請求項10に記載の車両用エアバッグ。
【請求項12】
固有粘度が1.5〜2.0dl/gのポリエステル重合体を293〜295℃で溶融紡糸してポリエステル未延伸糸を製造するステップと、
前記ポリエステル未延伸糸延伸してポリエステル繊維を製造するステップと、
前記ポリエステル繊維でエアバッグ用生地を製織するステップと、
前記製織されたエアバッグ用生地を精練するステップと、
前記精練された織物をテンタリングするステップとを含み、
前記ポリエステル繊維は、米国材料試験協会規格ASTMD885の方法で測定したモジュラス(Young’s modulus)が伸度1%で60〜100g/deであり、伸度2%で20〜60g/deであり、乾熱収縮率が1.0%〜6.5%であり、単糸繊度が2.5DPF〜6.8DPFであり、
得られた織物は、
米国材料試験協会規格ASTMD1777によって測定した織物の厚度が、0.18〜0.43mmであり、
下記計算式1で定義される耐熱定数(X)が、自由落下させるホット−ロッドの温度(T)が600℃である場合に1.5〜1.8であることを特徴とする、ポリエステル織物の製造方法。
[計算式1]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D)
(前記計算式1において、
Tは、自由落下させるホット−ロッドの温度であって、
前記ホット−ロッドは、熱伝導率55W/m・Kのスチール材質であり、重量が50gであり、直径10mm、長さ82mmの円柱形状であり、
tは、前記ホット−ロッドをポリエステル織物から距離(d)が76mm離れるように前記織物の上側方向に配置し、この位置から織物側方向に前記ホット−ロッドを、長手方向を鉛直方向として自由落下させ、前記ホット−ロッドの平坦な円形状の端面がポリエステル織物と接触した後から前記ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、
Dは、前記ポリエステル織物の厚度(mm)を示す。)
【請求項13】
前記延伸が、延伸比5.99〜6.15で行われることを特徴とする、請求項12に記載のポリエステル織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ用織物およびその製造方法に関し、より詳細には、低いモジュラスおよび高強度高伸率のポリエステル繊維を用い、高強力および高耐熱性の機械的物性に優れたポリエステル織物およびその製造方法、これを含む車両用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エアバッグ(air bag)とは、走行中の車両が約40km/h以上の速度で正面衝突時、車両に加えられる衝突衝撃を衝撃感知センサで感知した後、火薬を爆発させてエアバッグの内部にガスを供給して膨張させることにより、運転者および乗客を保護する装置をいい、一般的なエアバッグシステムの構造は、図1に示した通りである。
【0003】
図1に示されるように、一般的なエアバッグシステムは、雷管122の点火によってガスを発生させるインフレータ(inflator)121と、その発生したガスによって運転席の運転者側に膨張展開されるエアバッグ124とからなり、操舵ホイール101に装着されるエアバッグモジュール100と、衝突時に衝撃信号を発生させる衝撃センサ130と、その衝撃信号に応じてインフレータ121の雷管122を点火させる電子制御モジュール(Electronic Control Module)110とを含んで構成されている。このように構成されたエアバッグシステムは、車両が正面衝突すると、衝撃センサ130で衝撃を感知して電子制御モジュール110に信号を伝達する。この時、これを認識した電子制御モジュール110は、雷管122を点火させ、インフレータ121内部のガス発生剤を燃焼させる。このように燃焼するガス発生剤は急速なガス発生を通じてエアバッグ124を膨張させる。このように膨張して展開されたエアバッグ124は、運転者の前面上体と接触しながら衝突による衝撃荷重を部分的に吸収し、慣性によって運転者の頭と胸が前方に進みながら膨張したエアバッグ124と衝突する場合、エアバッグ124のガスはエアバッグ124に形成された排出孔に急速に排出され、運転者の前面部に緩衝作用するようになる。したがって、前面衝突時に運転者に伝達される衝撃力を効果的に緩衝させることにより、二次的傷害を軽減することができる。
【0004】
前記のように、自動車に用いられるエアバッグは、一定の形態で製造された後、その体積を最少化するために、折り畳まれた状態で自動車のハンドルや自動車の側面ガラス窓または側面構造物などに装着されて折り畳まれた状態を維持し、インフレータ121の作動時にエアバッグが膨張して展開できるようにする。
【0005】
したがって、自動車への装着時にエアバッグのフォールディング性およびパッケージ性を効果的に維持し、エアバッグ自体の損傷および破裂を防止し、優れたエアバッグクッションの展開性能を発揮し、乗客に加えられる衝撃を最少化するためには、衝突時に円滑に展開されるための低通気性、エアバッグ自体の損傷および破裂を防止するための高強力、高耐熱性などの優れた機械的物性と共に、フォールディング性、および乗客に加えられる衝撃を低減させるための柔軟性が非常に重要である。しかし、乗客の安全のために優れた空気遮断効果および柔軟性を同時に維持し、エアバッグの受ける衝撃に十分に耐え、前記インフレータ121から発生する高温高圧のガスに十分に耐えられ、自動車内に効果的に装着されて使用できるエアバッグ用織物は提案されていないのが現状である。
【0006】
従来はナイロン66などのポリアミド繊維がエアバッグ用原糸の材料として使用されていた。しかし、ナイロン66は、耐衝撃性に優れているものの、ポリエステル繊維に比べて耐湿熱性、耐光性、形態安定性の面で劣り、原料費用も高いという欠点があった。
【0007】
一方、特許文献1には、このような欠点が軽減されるポリエステル繊維の使用が提案されている。しかし、このように既存のポリエステル繊維を用いてエアバッグを製造する場合には、高い剛軟度(stiffness)によって自動車内へ装着時に狭い空間に収納しにくく、高弾性率と低伸率によって高温の熱処理などで過度の熱収縮が発生し、高温高湿の苛酷条件下で十分な機械的物性および展開性能を維持するのに限界があった。
【0008】
したがって、車両用エアバッグ用織物として使用するのに適するように優れた機械的物性および空気遮断効果を維持し、高温の熱処理などにおいても十分に耐えられる優れた耐熱性を有し、乗客に加えられる衝撃を低減させるための柔軟性および収納性などの優れた物性特性を有する繊維織物の開発に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04−214437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高強力および高耐熱性の優れた機械的物性、柔軟性、収納性を確保することができるポリエステル織物を提供しようとする。
【0011】
本発明はまた、前記ポリエステル織物を製造する方法を提供しようとする。
【0012】
本発明はさらに、前記ポリエステル織物を含む車両用エアバッグを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記計算式1で定義される耐熱定数(X)が非コーティング織物状態で1.0〜6.5であるポリエステル織物を提供する。
[計算式1]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D)
前記計算式1において、Tは、自由落下させるホット−ロッドの温度であって、350〜750℃の温度範囲を有し、tは、前記ホット−ロッドを自由落下させ、前記ホット−ロッドがポリエステル織物と接触した後から前記ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、Dは、前記ポリエステル織物の厚度(mm)を示す。
【0014】
本発明はまた、ポリエステル繊維でエアバッグ用生地を製織するステップと、前記製織されたエアバッグ用生地を精練するステップと、前記精練された織物をテンタリングするステップとを含む前記ポリエステル織物の製造方法を提供する。
【0015】
本発明はさらに、前記ポリエステル織物を含む車両用エアバッグを提供する。
【0016】
以下、発明の具体的な実現例によるポリエステル織物、その製造方法、およびこれを含む車両用エアバッグについてより詳細に説明する。ただし、これは、発明に対する一つの例示として提示されるものであって、これによって発明の権利範囲が限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実現例に対する多様な変形が可能であることは当業者にとって自明である。
【0017】
追加的に、本明細書全体において、特別な言及がない限り「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なしに含むことを称し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くものと解釈されない。
【0018】
本発明において、エアバッグ用織物とは、自動車用エアバッグの製造に用いられる織物または不織布などをいい、一般的なエアバッグ用織物としては、レピア織機で製織されたナイロン6平織物またはナイロン6不織布を使用しているが、本発明のエアバッグ用織物は、ポリエステル繊維を用い、強靭性および引裂強度などの機械的物性に優れた特徴を有する。
【0019】
ただし、従来のナイロン66などのポリアミド繊維の代わりに、ポリエステルをエアバッグ用原糸として適用するためには、既存の、ポリエステル繊維の高いモジュラスと剛軟度などによるフォールディング性の低下および低い溶融熱容量(ΔH)に起因した機械的物性の低下、これに伴う展開性能の低下を克服できなければならない。
【0020】
ポリエステルは、分子構造上、ナイロンなどに比べて剛軟性(stiffness)が高い構造を有し、高いモジュラス(high modulus)の特性を有するようになる。これにより、エアバッグ用織物として用いて自動車に装着する場合、収納性(packing)が顕著に低下する。また、ポリエステル分子鎖内のカルボキシル末端基(Carboxyl End Group、以下、「CEG」という)は、高温高湿条件でエステル基(ester bond)を攻撃して分子鎖の切断をもたらし、エージング後の物性を低下させる原因となる。
【0021】
これにより、本発明は、低いモジュラスの高強度高伸率のポリエステル繊維を用いてポリエステル織物の耐熱定数を最適化することにより、優れた機械的物性および空気遮断性能などを確保すると同時に、剛軟度を顕著に低下させることができ、エアバッグ用織物への適用時に向上した物性改善効果を得ることができる。
【0022】
特に、本発明者らの実験の結果、所定の特性を有するポリエステル織物でエアバッグ用織物を製造することにより、高温高湿の苛酷条件下でも高強力および高耐熱性の優れた機械的物性、空気流出防止、気密性などを維持することができ、より向上したフォールディング性、形態安定性、および空気遮断効果を示し、エアバッグ用織物としての使用時、自動車への装着などにおいてより優れた収納性(packing)を確保できることが明らかになった。
【0023】
そこで、発明の一実現例により、所定の特性を有するポリエステル織物が提供される。このようなポリエステル織物、つまり、エアバッグ用ポリエステル織物は、下記計算式1で定義される耐熱定数(X)が非コーティング織物状態で1.0〜6.5となり得る。
[計算式1]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D)
前記計算式1において、Tは、自由落下させるホット−ロッドの温度であって、350〜750℃の温度範囲を有し、tは、前記ホット−ロッドを自由落下させ、前記ホット−ロッドがポリエステル織物と接触した後から前記ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、Dは、前記ポリエステル織物の厚度(mm)を示す。
【0024】
本発明者らの実験結果、所定の範囲で最適化された耐熱定数を有する特定のポリエステル織物を用いることにより、高温−高圧ガスのエネルギーを効果的に吸収しかつ耐えられるエアバッグ用織物が提供できることが明らかになった。特に、前記ポリエステル織物において、ゴム成分でのコーティング処理前の非コーティング織物に対する耐熱定数(X)が1.0〜6.5、好ましくは1.1〜5.8を示すことにより、高温−高圧ガスのエネルギーを効果的に吸収しかつ耐えられ、エアバッグ用織物として非常に効果的に使用できることが確認された。
【0025】
この時、耐熱定数とは、前記計算式1に示したように、ポリエステル織物の厚度を基準として高温のホット−ロッド(Hot Rod)が布を通過するまでの滞留時間を意味するものであって、高温条件下でエアバッグ用織物の耐熱性指数を意味する。前記耐熱定数は、エアバッグ用織物の材質に応じて変化する任意値であり、実際にエアバッグが展開される場合、インフレータから噴出される瞬間的な高温−高圧のガスに対してエアバッグ用織物がどれだけ耐えられるかをシミュレーション(simulation)することができる耐熱定数であって、エアバッグ用ポリエステル原糸の溶融熱容量(ΔH)が高いほど、エアバッグ用織物の耐熱定数は高い値を有するようになる。
【0026】
特に、前記ポリエステル織物の耐熱定数が小さくなると、エアバッグ展開時、インフレータで発生する高温−高圧ガスに対して十分に耐えられる織物の耐熱性が低下するため、エアバッグ用織物への適用時に破裂したり熱融着などが発生する。したがって、本発明において、前記ポリエステル織物の耐熱定数は、例えば、ゴム成分がコーティング処理される前の非コーティング織物で1.0未満となる場合には、エアバッグ用織物への適用が困難になることがある。反面、前記ポリエステル織物の耐熱定数が大き過ぎると、織物の結晶化度が過度に高くなって結晶に応力が集中するため、エアバッグ用織物の引張強度および引裂強度などの機械的物性が低下する。したがって、本発明において、前記ポリエステル織物の耐熱定数は、例えば、ゴム成分がコーティング処理される前の非コーティング織物状態で6.5を超える場合には、エアバッグ用織物として十分な機械的物性を確保しにくいことがある。
【0027】
一方、本発明において、前記ポリエステル織物は、別のゴム成分コーティング層なしに非コーティング織物状態でホット−ロッドの温度(T)が450℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は1.20〜3.5、好ましくは1.28〜3.0であり、前記ホット−ロッドの温度(T)が600℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は1.0〜2.0、好ましくは1.05〜1.8となり得る。また、前記ポリエステル織物は、ホット−ロッドの温度(T)が350℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は4.2〜6.0、好ましくは4.4〜5.7であり、前記ホット−ロッドの温度(T)が750℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は1.0〜1.8、好ましくは1.1〜1.5となり得る。
【0028】
本発明のエアバッグ用ポリエステル織物は、前記ポリエステル織物の表面にコーティングまたはラミネートされて形成されたゴム成分コーティング層を含むものとなり得、このようにゴム成分でコーティング処理されたポリエステル織物は、耐熱定数(X)が2.8〜17.0、好ましくは3.0〜16.5を示すことができる。
【0029】
この時、前記ゴム成分としては、粉末(powder)型シリコーン、液状(liquid)型シリコーン、ポリウレタン、クロロフルオレン、ネオプレンゴム、およびエマルジョン型シリコーン樹脂からなる群より選択された1種以上を挙げることができ、コーティングゴム成分の種類は、前記言及された物質にのみ限定されない。ただし、環境配慮型および機械的特性の面でシリコーンコーティングが好ましい。
【0030】
前記ゴム成分コーティング層の単位面積あたりのコーティング量は、20〜200g/m、好ましくは20〜100g/mとなるように使用することができる。特に、OPW(One Piece Woven)タイプのサイドカーテンエアバッグ用織物の場合においては、前記コーティング量が30g/m〜95g/mが好ましく、エアバッグ用平織織物の場合は、前記コーティング量が20g/m〜50g/mの水準が好ましい。
【0031】
前記ポリエステル織物は、ゴム成分コーティング層を含むコーティング織物の場合、ホット−ロッドの温度(T)が450℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は3.3〜10.0、好ましくは3.5〜9.5であり、前記ホット−ロッドの温度(T)が600℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は3.0〜7.0、好ましくは3.2〜6.5となり得る。また、前記ポリエステル織物は、ホット−ロッドの温度(T)が350℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は9.5〜17.0、好ましくは10.0〜16.5であり、前記ホット−ロッドの温度(T)が750℃の時、前記計算式1で定義される耐熱定数(X)は2.8〜6.0、好ましくは3.0〜5.8となり得る。
【0032】
本発明の好ましい一例において、前記耐熱定数は、図2に示したような装置(hot rod tester)を用いて測定することができる。前記測定装置において、ホット−ロッド(hot rod tester)を350〜750℃、好ましくは380〜720℃に加熱した後、前記織物の上側方向から落下できるようにホット−ロッドを配置する。このように加熱されたホット−ロッドを前記織物の上端からポリエステル織物側に自由落下させた後に、前記ホット−ロッドがポリエステル織物と接触した後からホット−ロッドが前記織物を完全に通過するまでの時間を測定し、この測定値をポリエステル織物の厚度を基準として前記計算式1に基づいて算測すると、前記ポリエステル織物の耐熱定数を求めることができる。
【0033】
特に、本発明の具体的な好ましい一実現例において、前記ホット−ロッドは、前記ポリエステル織物から距離(d)が60〜85mm程度離れるように前記織物の上側方向に配置することができる。前記ホット−ロッドは、熱伝導率40〜70W/m・Kの金属またはセラミック材質であり、重量が35〜65gのものを使用することができる。
【0034】
また、本発明において、前記ポリエステル織物に対する厚度は、米国材料試験協会規格ASTMD1777によって測定することができ、優れた機械的物性および空気遮断効果と共に、車両への装着時に優れた収納性およびフォールディング性を確保する面で0.18〜0.43mm、好ましくは0.25〜0.38mmとなり得る。前記ポリエステル織物の厚度は、エアバッグクッションの引裂強度および空気遮断性の面では0.18mm以上となり得、エアバッグクッションのフォールディング性の面で0.43mm以下となり得る。
【0035】
本発明のエアバッグ用織物において、前記ポリエステル織物は、多様な繊度のポリエステル繊維を含むことができる。ただし、このようなポリエステル繊維の繊度に応じて、エアバッグ用織物への適用時に十分な機械的物性および耐熱性を確保するための耐熱定数の最適な物性範囲が変化し得る。前記ポリエステル織物は特に、好ましくは400〜650デニールの繊度を有するポリエステル繊維を使用することができる。前記ポリエステル繊維は、クッションのフォールディング性能とエアバッグ展開時に高温−高圧の展開エネルギーを吸収できる吸収性能の面で低繊度高強力で維持しなければならないため、繊度が400〜650デニールとなり得る。前記ポリエステル繊維は、エネルギー吸収性能の面で400デニール以上の繊度を有することが好ましく、エアバッグクッションの優れたフォールディング性確保の面で650デニール以下の繊度を有することが好ましい。
【0036】
一方、本発明のエアバッグ用ポリエステル織物は、下記計算式2で定義される強靭性(Toughness)が3.5kJ/m〜6.0kJ/m、好ましくは3.8kJ/m〜5.7kJ/mとなり得る。
【0037】
【数1】

【0038】
前記計算式2において、Fは、ポリエステル繊維または織物の長さがdlだけ伸びる時に加えられる荷重を示し、dlは、ポリエステル繊維または織物の長さが伸びた長さを示す。
【0039】
本発明のポリエステル織物は、既存に比べて高い水準の強靭性(Toughness、破断仕事)を満たすことにより、高温−高圧ガスのエネルギーを効果的に吸収しかつ耐えられるエアバッグ用織物が提供できる。この時、強靭性とは、前記計算式2に示したように、繊維(原糸または織物を包括する;以下、同様である)が引張力によって切れるまで消費されるエネルギーであって、急激な衝撃に対する繊維の抵抗性を意味する。ある繊維が荷重Fにおいてその長さがlからl+dlに伸びた場合、この時の仕事(work)はF・dlとなるため、繊維を切断するのに必要な強靭性は、前記計算式2の通りである。つまり、このような強靭性は、原糸および織物の強−伸度曲線の断面積を示すものであって、織物に用いられる原糸の強度および伸度値が高いほど、織物で発現する強靭性は高い値を有するようになる。特に、エアバッグ用織物の強靭性が低くなると、エアバッグ展開時に高温−高圧を有するインフレータの瞬間的な展開衝撃を十分に吸収できる織物の抵抗性が低くなるため、エアバッグ用織物が破れやすくなる結果をもたらすことがある。これにより、本発明のエアバッグ用織物は、例えば、3.5kJ/m以上の強靭性を確保することにより、エアバッグ用織物として効果的に適用することができる。
【0040】
これと共に、本発明のエアバッグ用織物は、エアバッグ展開時に高温−高圧ガスの瞬間的な大きい力で急速に膨張する場合、応力の集中によって優れた水準の引裂強度を有することができる。この時、前記エアバッグ用織物の破裂強度を示す引裂強度は、ポリエステル織物上に別のゴム成分コーティング層を含まない非コーティング織物に対し、米国材料試験協会規格ASTMD2261TONGUE方法で測定した時、18〜30kgfとなり得、コーティング織物に対する引裂強度は、米国材料試験協会規格ASTMD2261TONGUE方法で測定した時、30〜60kgfとなり得る。ここで、エアバッグ用織物の引裂強度が非コーティング織物およびコーティング織物のそれぞれにおいて、前記下限値、つまり、それぞれ18kgfおよび30kgf未満の場合には、エアバッグ展開時にエアバッグの破裂が発生することにより、エアバッグの機能に大きな危険をもたらすこともある。反面、エアバッグ用織物の引裂強度が非コーティング織物およびコーティング織物のそれぞれにおいて、前記上限値、つまり、それぞれ30kgfおよび60kgfを超える場合には、織物の滑脱抵抗力(Edge Comb Resistance)が低くなり、エアバッグ展開時に空気遮断性が急激に劣化することによって好ましくないことがある。
【0041】
また、一般的に、ポリエステルは、分子構造上、ナイロンなどに比べて剛軟性(stiffness)が高い構造を有するもので、これによって高いモジュラスの特性を示し、エアバッグ用織物としての使用時にフォールディング性およびパッキング性(packing)が顕著に低下し、自動車の狭い空間への収納が困難になる。これにより、本発明は、高強力低モジュラスの特性を有するポリエステル繊維を用い、織物の強靭性および引裂強度を維持すると同時に、織物の剛軟度(stiffness)を顕著に低下させることができる。本発明のエアバッグ用織物は、米国材料試験協会規格ASTMD4032方法による剛軟度が1.5kgf以下または0.2〜1.5kgf、好ましくは0.3〜1.2kgf、より好ましくは0.4〜0.8kgfを示すことができる。このように既存のポリエステル織物に比べて織物の剛軟度(stiffness)を顕著に低下させることにより、本発明のエアバッグ用織物は、優れたフォールディング性と柔軟性、およびエアバッグ装着時の向上した収納性を示すことができる。
【0042】
本発明の織物は、エアバッグ用として使用するためには、前記剛軟度範囲を維持することが好ましく、剛軟度が低過ぎる場合には、エアバッグの膨張展開時に十分な保護支持機能を果たせないこともあり、車両への装着時にも形態維持性能が低下して収納性が低下することがある。また、硬過ぎる状態になって折り畳みにくくなることによって収納性が低下することを防止し、織物の変色現象を防止するためには、前記剛軟度は1.5kgf以下が好ましく、特に460デニール未満の場合には0.8kgf以下が好ましく、550デニール以上の場合にも1.5kgf以下となることが良い。
【0043】
前記エアバッグ用織物の米国材料試験協会規格ASTMD737方法による静的空気透過度は、非コーティング織物に対し、ΔPが125paの時、10.0cfm以下、好ましくは0.3〜8.0cfm、より好ましくは0.5〜5.0cfmとなり得、ΔPが500paの時、14cfm以下、好ましくは4〜12cfmとなり得る。また、前記非コーティング織物に対し、米国材料試験協会規格ASTMD6476方法による動的空気透過度は1,700mm/s以下、好ましくは200〜1600mm/s、より好ましくは400〜1400mm/sとなり得る。この時、静的空気透過度とは、エアバッグ用織物に一定の圧力を付与する時の、織物に透過する空気量を意味するもので、原糸の単繊度(Denier per Filament)が小さく織物の密度が高いほど低い値を有することができる。また、動的空気透過度とは、30〜70kPaの平均瞬間差等圧力を付与する場合の、織物への空気透過程度を意味するもので、静的空気透過度と同様に、原糸の単繊度が小さく織物の密度が高いほど低い値を有することができる。
【0044】
特に、エアバッグ用織物の空気透過度は、織物のポリエステル織物上に形成されたゴム成分コーティング層を含むことによって顕著に低下させることができ、ほぼ0cfmに近い値の空気透過度を確保することもできる。ただし、このようにゴム成分コーティング層を含む場合に、本発明のエアバッグ用コーティング織物は、米国材料試験協会規格ASTMD737方法による静的空気透過度が、ΔPが125paの時、2.0cfm以下、好ましくは0.3〜1.7cfm、より好ましくは0.5〜1.5cfmとなり得、ΔPが500paの時、12cfm以下、好ましくは4〜10cfmとなり得る。また、前記コーティング織物に対し、米国材料試験協会規格ASTMD6476方法による動的空気透過度は1,700mm/s以下、好ましくは200〜1,600mm/s、より好ましくは400〜1,400mm/sとなり得る。
【0045】
ここで、本発明のエアバッグ用織物は、非コーティング織物およびコーティン織物に対し、それぞれ前記静的空気透過度範囲の上限値を超えるか、または動的空気透過度範囲の上限値を超える場合には、エアバッグ用織物の気密性を維持する面では好ましくないことがある。
【0046】
本発明にかかるエアバッグ用織物は、米国材料試験協会規格ASTMD5034方法で常温で測定した切断伸度が25%〜60%、好ましくは30%〜50%となり得る。ここで、織物の強靭性の面では前記切断伸度が25%以上が好ましく、滑脱抵抗力の面では前記切断伸度が60%を超えないことが好ましい。
【0047】
また、前記織物は、ASTMD1776の方法で測定した経糸方向および緯糸方向の織物収縮率がそれぞれ1.0%以下、好ましくは0.8%以下となり得る。ここで、織物の形態安定性の面では経糸方向および緯糸方向の織物収縮率が1.0%を超えないことが最も好ましい。
【0048】
一方、本発明は、エアバッグ用織物として優れた性能を確保できるようにするために、多様なエージングを行うことで向上した物性が維持されるようにすることが好ましい。この時、前記エージングとしては、高温エージング(Heat aging)、サイクルエージング(Cycle aging)、および高湿エージング(Humidity aging)からなる群より選択された1種以上を行うことができ、好ましくは、前記3つのエージングを行った後も優れた程度に強度および物性が維持されるようにすることができる。
【0049】
ここで、前記高温エージング(Heat aging)は、織物を高温で熱処理することによってなされ、好ましくは、温度110〜130℃で300時間以上または300〜500時間熱処理することによってなされ得る。また、サイクルエージング(Cycle aging)は、織物に対して高温エージング、高湿エージング、低温エージングを繰り返し行うことによってなされ、好ましくは、温度30〜45℃、相対湿度93〜97%RHで12〜48時間エージングした後に、70〜120℃で12〜48時間エージングし、−10〜−45℃で12〜48時間エージングする工程を2回〜5回繰り返し実施することによってなされ得る。高湿エージング(Humidity aging)は、織物を高温多湿条件下でエージングすることによってなされ、好ましくは、温度60〜90℃および相対湿度93〜97%RHで300時間以上または300〜500時間エージングすることによってなされ得る。
【0050】
特に、本発明のエアバッグ用織物は、前記条件でエージング後に、強力を常温で測定した強力に対して%で計算した強力維持率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上となり得る。このように高温および高湿の苛酷条件下で長時間エージング後も織物の強度および強力維持率が優れた範囲に維持されることにより、エアバッグ用織物として優れた性能を発揮することができる。
【0051】
一方、発明の他の実現例により、所定の特性を有するポリエステル繊維で製造されるエアバッグ用ポリエステル織物が提供される。前記ポリエステル織物は、単糸繊度2.5DPF〜6.8DPFであり、適用される繊維のフィラメントが110本以上で形成されたポリエステル繊維を含むものとなり得る。
【0052】
特に、本発明は、既存の高強度低伸率の高いモジュラスを有するポリエステル繊維ではない、高強度高伸率の低いモジュラスを有するポリエステル繊維を用いることにより、エアバッグ膨張時のエネルギー吸収能力に優れているだけでなく、優れた形態安定性と空気遮断性および優れたフォールディング性を有するエアバッグ用ポリエステル織物を提供することができる。
【0053】
また、本発明のエアバッグ用ポリエステル織物は、多様な繊度のポリエステル繊維を含むことができる。ただし、このようなポリエステル繊維の繊度に応じて、エアバッグ用織物への適用時に十分な機械的物性および耐熱性を確保するための耐熱定数の最適な物性範囲が変化し得る。前記ポリエステル織物は特に、好ましくは400〜650デニールの繊度を有するポリエステル繊維を使用することができる。前記ポリエステル繊維は、クッションのフォールディング性能とエアバッグ展開時に高温−高圧の展開エネルギーを吸収できる吸収性能の面で低繊度高強力で維持しなければならないため、繊度が400〜650デニールとなり得る。前記ポリエステル繊維は、エネルギー吸収性能の面で400デニール以上の繊度を有することが好ましく、エアバッグクッションの優れたフォールディング性確保の面で650デニール以下の繊度を有することが好ましい。
【0054】
本発明のポリエステル織物は、固有粘度が1.05〜2.0dl/g、好ましくは1.10〜1.90dl/gのポリエステルチップで製造されたポリエステル繊維を使用することができる。前記ポリエステル織物が常温および高温、高湿の苛酷条件下でエージング後も優れた物性を維持するためには、ポリエステル繊維を固有粘度1.05dl/g以上のポリエステルチップで製造することが好ましい。また、低収縮の特性を発現するために、固有粘度2.0dl/g以下のポリエステルチップで製造されたポリエステル繊維を含むことが好ましい。
【0055】
前記ポリエステル繊維は、一般的なコーティング織物のラミネートコーティング温度に相当する150℃での収縮応力が0.005〜0.075g/dであることが好ましく、一般的なコーティング織物のゾルコーティング温度に相当する200℃での収縮応力が0.005〜0.075g/dであることが好ましい。つまり、前記150℃と200℃での収縮応力がそれぞれ0.005g/d以上になってはじめてコーティング工程中の熱による織物の傾き現象を防止することができ、0.075g/d以下になってはじめてコーティング工程を経て常温で冷却される時に弛緩応力を緩和させることができる。
【0056】
また、前記ポリエステル繊維は、コーティング工程中の熱処理時に一定水準以上の張力を与えて製織形態を維持し、結果的にエアバッグ用織物の形態変形を防止するために、177℃での収縮率が6.5%以下であることが好ましい。
【0057】
本発明で定義する前記収縮応力は、0.10g/dの固定荷重下で測定した値を基準とし、収縮率は0.01g/dの固定荷重下で測定した値を基準とする。
【0058】
前記ポリエステル繊維は、通常のポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)原糸であることが好ましく、より好ましくはPETを70モル%以上、好ましくは90モル%以上含むPET原糸であることが好ましい。
【0059】
また、前記ポリエステル繊維のフィラメント数は多いほどソフトな触感を与えることができるが、多過ぎる場合には、紡糸性が良くないことがあるため、フィラメント数は96〜160となり得る。
【0060】
特に、前記ポリエステル織物は、米国材料試験協会規格ASTMD885の方法で測定したモジュラス(Young’s modulus)が伸度1%で、つまり、1%伸張した地点で60〜100g/de、好ましくは75〜95g/deであり、伸度2%で、つまり、2%伸張した地点で20〜60g/de、好ましくは22〜55g/deであるポリエステル繊維を使用することができる。これは、通常のポリエステル繊維のモジュラス(Young’s modulus)が1%伸張した地点でのモジュラス(Young’s modulus)が110g/de以上であり、2%伸張した地点でのモジュラスが80g/de以上であるものと比較する時、顕著に低い初期モジュラスを有するポリエステル繊維を用い、本発明のエアバッグ用織物を製造することができるのである。
【0061】
この時、前記ポリエステル繊維のモジュラスは、引張試験時に得られる応力−変形度線図の弾性区間の傾きから得られる弾性係数の物性値で、物体を両側でつかんで伸ばす時、物体の伸びる程度と変形する程度を示す弾性率に相当する値である。前記繊維のモジュラスが高ければ弾性は良いが、織物の剛軟度(stiffness)が劣化することがあり、モジュラスが低過ぎる場合、織物の剛軟度は良いが、弾性回復力が低下して織物の強靭性が劣化することがある。このように、既存に比べて低い範囲の初期モジュラスを有するポリエステル繊維から製造される本発明のポリエステル織物は、既存のポリエステル織物の高い剛軟度(stiffness)問題などを解決し、優れたフォールディング性、柔軟性、および収納性を示すことができる。
【0062】
一方、前記ポリエステル繊維は、引張強度が8.8g/d以上、好ましくは8.8〜10.0g/d、より好ましくは9.2g/d〜9.8g/dであり、切断伸度が14%〜23%、好ましくは15%〜22%を示すことができる。また、前記原糸は、乾熱収縮率が6.5%以下または1.0%〜6.5%、好ましくは2.0%〜5.6%を示すことができ、溶融熱容量(ΔH)が40〜65J/g、好ましくは45〜58J/gを示すことができる。
【0063】
すでに詳述したように、本発明のエアバッグ用ポリエステル織物は、固有粘度および初期モジュラス、伸率範囲を最適な範囲として有するポリエステル繊維を用いて製造し、エアバッグ用織物としての製造時に優れた性能を発揮することができる。
【0064】
前記ポリエステル繊維は、PET重合体を溶融紡糸して未延伸糸を製造し、前記未延伸糸を延伸する方法で製造でき、これら各ステップの具体的な条件や進行方法がポリエステル繊維の物性に直接・間接的に反映され、本発明のエアバッグ用織物に効果的に使用できるポリエステル繊維が製造可能である。
【0065】
特に、より好ましい一実現例において、前記高強度高伸率の低モジュラスのポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートを70モル%以上含み、固有粘度が1.05dl/g以上の高粘度重合体を用い、200〜300℃の低温で溶融紡糸してポリエステル未延伸糸を製造するステップと、前記ポリエステル未延伸糸を5.0〜6.0の延伸比条件下で延伸するステップとを含む方法で製造することができる。この時、カルボキシル末端基(CEG)含有量が低い、好ましくは30meq/kg以下の高粘度PET重合体を用い、低温条件下で、より好ましくは低温/低速条件下で溶融紡糸することにより、原糸の固有粘度の低下およびCEG含有量の増加を最大限に抑制し、原糸の優れた機械的物性を維持しながら、同時に高伸率特性を確保することができる。さらに、後続の延伸工程で5.0〜6.0の最適化された延伸比条件下で延伸を行うことにより、原糸の伸率の低下を最大限抑制することにより、高強度高伸率の低モジュラスを有するポリエステル繊維を製造し、エアバッグ用織物織物に効果的に適用することができる。
【0066】
ここで、前記溶融紡糸工程を高温で行う場合、例えば、300℃を超えて行う場合には、PET重合体の熱分解が多量発生して固有粘度の低下およびCEG含有量の増加が大きくなることがあり、高温で分子内配向性の増加によって伸率の低下およびモジュラスの増加が大きくなることがあり、原糸の表面損傷で全般的な物性の低下をもたらすことがあって好ましくない。また、高過ぎる延伸比、例えば、6.0を超える延伸比条件下で前記延伸工程を進行すると、過延伸水準になって前記延伸糸に切糸または毛羽などが発生することがあり、前記製造方法によって製造されたポリエステル繊維もエアバッグ用織物として使用するのに好ましい物性を示すことが困難である。そして、比較的低い延伸比下で延伸工程を進行すると、繊維配向度が低く、これより製造されたポリエステル繊維の強度が一部低くなり得るため、好ましくは5.0以上の延伸比下で延伸工程を行うことが、エアバッグ用織物などへの適用に適した高強度高伸率の低モジュラスのポリエステル繊維の製造が可能である。
【0067】
一方、このように高い延伸比条件下で高強度でありながらも低モジュラスの高伸率のポリエステル繊維を製造する面で、後続工程の諸条件を最適化して行うことができる。特に、直接紡糸延伸工程で高強度および低収縮の性質を同時に満たしながら、低いモジュラスのポリエステル繊維を製造するために、高粘度のポリエチレンテレフタレート重合チップを用いて溶融紡糸した後、ワインダに巻取るまで多段ゴデットローラを経て、延伸、熱固定、弛緩、巻取る工程を含み、このような工程の諸条件を効果的に最適化することができる。
【0068】
このような側面で、前記延伸工程は、前記未延伸糸をオイルピックアップ量0.2%〜2.0%の条件下でゴデットローラを通過させた後に行うことができる。
【0069】
前記弛緩過程において、弛緩率は1%〜14%が好ましく、1%未満の場合には収縮率の発現が難しく、高い延伸比条件下におけるのと同様に、高い繊維配向度の形成により高伸率の低モジュラスの繊維の製造が困難になることがあり、14%を超える場合には、ゴデットローラ上で糸振れが激しくなって作業性を確保することができない。
【0070】
また、前記延伸工程では、前記未延伸糸をほぼ210〜250℃の温度下で熱処理する熱固定工程を追加的に行うことができるが、より好ましくは、エアバッグ用原糸の溶融熱容量(ΔH)向上のためには、前記延伸工程の適切な進行のために230〜250℃の温度に熱処理を行うことが良い。ここで、温度が210℃未満の場合には、熱的効果が十分でないことにより、高分子結晶構造の結晶化度が不足するだけでなく、弛緩効率も低下することにより、優れた収縮率の達成が難しく、250℃を超える場合には、熱分解による原糸強度の低下およびローラ上のタールの発生が増加して作業性が低下することがある。
【0071】
この時、前記ゴデットローラを通過する延伸糸に対する巻取速度は2,000〜4,000m/min、好ましくは2,500〜3,700m/minで行うことができる。
【0072】
このような工程の最適化により、低い初期モジュラスを有し、高強度高伸率のエアバッグ用ポリエステル繊維を確保することができる。また、このような溶融紡糸および延伸工程の最適化により、高い湿度条件下で酸として存在し、ポリエステル繊維の基本分子鎖の切断を誘発させるカルボキシル末端基(CEG、Carboxyl End Group)を最少化することができる。したがって、このようなポリエステル繊維は、低い初期モジュラスおよび高い伸率範囲を同時に示し、優れた機械的物性および収納性、形態安定性、耐衝撃性、空気遮断効果を有するエアバッグ用織物に好適に適用できる。
【0073】
また、本発明のさらに他の実現例により、ポリエステル繊維を用いたエアバッグ用織物の製造方法が提供される。前記エアバッグ用ポリエステル織物の製造方法は、エアバッグ用生地を製織するステップと、前記製織されたエアバッグ用生地を精練するステップと、前記精練された織物をテンタリングするステップとを含むことができる。
【0074】
本発明において、前記ポリエステル繊維は、通常の製織方法と、精練およびテンタリング工程を経て、最終的なエアバッグ用織物として製造できる。この時、織物の製織形態は、特定の形態に限定されず、平織タイプとOPW(One Piece Woven)タイプの製織形態がいずれも好ましい。
【0075】
特に、本発明のエアバッグ用織物は、前記ポリエステル繊維を緯糸および経糸として用い、ビーミング(beaming)、製織、精練、およびテンタリング工程を経て製造できる。前記織物は、通常の製織機を用いて製造することができ、ある特定の織機を用いることに限定されない。ただし、平織形態の織物は、レピア織機(Rapier Loom)やエアジェット織機(Air Jet Loom)またはウォータージェット織機(Water Jet Loom)などを用いて製造することができ、OPW形態の織物は、ジャカード織機(Jacquard Loom)を用いて製造することができる。
【0076】
ただし、本発明は、既存に比べて高強度高伸率の低い収縮率を有するポリエステル繊維を用いることにより、既存に比べてより高い温度で熱処理工程を行うことができる。つまり、本発明では、前記製織された生地を精練およびテンタリングする工程を経て、テンタリングされた織物にゴム成分でコーティングし、乾燥した後に、加硫温度140〜210℃、好ましくは160〜200℃、および最も好ましくは175〜195℃で硬化させる過程を行い、前記加硫温度は、織物の引裂強度などの機械的物性維持の面で140℃以上にならなければならず、剛軟度の面で210℃以下にならなければならない。特に、前記熱処理工程は、多段階で行うことができ、例えば、150〜170℃で一次熱処理工程を行った後、170〜190℃で二次熱処理工程を行った後に、190〜210℃で三次熱処理工程を行うことができる。
【0077】
このように本発明のポリエステル織物を高温熱処理工程によって製造する場合に、ポリエステル繊維自体の低収縮率特性で製織密度などを向上させることにより、優れた形態安定性および空気遮断効果、剛軟性の向上および引裂強度の改善効果をより大きく付与することができる。
【0078】
また、前記加硫温度において、硬化時間は30〜120秒、好ましくは35〜100秒、および最も好ましくは40〜90秒の範囲で行うことができる。ここで、前記硬化時間が30秒未満の場合に、ゴム成分によるコーティング層の硬化作業が効果的に行われず、織物の機械的物性が低下してコーティングが剥がれるなどの問題があり、前記硬化時間が120秒を超える場合に、最終製造された織物の剛軟度および厚度が増加してフォールディング性が低下する問題が発生する。
【0079】
本発明のエアバッグ用織物は、織物の一面または両面に前述したようなゴム成分によるコーティングを実施することができ、前記ゴム成分のコーティング層は、ナイフコート法、ドクターブレード法、または噴霧コーティング法で適用することができるが、これも前記言及された方法にのみ限定されない。
【0080】
このようにコーティングされたエアバッグ用織物は、裁断と縫製工程を経て一定の形態を有するエアバッグクッション形態で製造できる。前記エアバッグは、特別な形態に限定されず、一般的な形態で製造できる。
【0081】
一方、発明のさらに他の実現例により、上述したポリエステル織物を含む車両用エアバッグが提供される。また、前記エアバッグを含むエアバッグシステムが提供され、前記エアバッグシステムは、関連業者によく知られた通常の装置を備えることができる。
【0082】
前記エアバッグは、大きく、フロンタルエアバッグ(Frontal Airbag)と、サイドカーテンエアバッグ(Side Curtain Airbag)とに分けられる。前記フロンタル用エアバッグには、運転席用、助手席用、側面保護用、膝保護用、足首保護用、歩行者保護用エアバッグなどがあり、サイドカーテンタイプのエアバッグは、自動車の側面衝突や転覆事故時に乗客を保護する。したがって、本発明のエアバッグは、フロンタル用エアバッグとサイドカーテンエアバッグを全て含む。
【0083】
本発明において、前記記載された内容以外の事項は、必要に応じて加減が可能であるので、本発明では特に限定しない。
【発明の効果】
【0084】
本発明によれば、高強力および高耐熱性の優れた機械的物性を有するポリエステル織物およびこれを用いて得られる車両用エアバッグが提供される。
【0085】
このようなポリエステル織物は、低いモジュラス、高強度、高伸率のポリエステル繊維を用い、高温の熱処理工程を通しても熱収縮を最少化し、優れた耐熱性、機械的物性、形態安定性、および空気遮断効果を得ることができるだけでなく、これと同時に、優れたフォールディング性および柔軟性を確保することができ、自動車への装着時の収納性を顕著に改善し、同時に乗客に加えられる衝撃を最少化して搭乗者を安全に保護することができる。
【0086】
したがって、本発明のポリエステル織物は、車両用エアバッグの製造などに非常に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】一般的なエアバッグシステムを示す図である。
図2】本発明の一実施例による耐熱定数の測定装置を示す写真である。
図3】実施例1によって製造されたポリエステル非コーティング織物のホット−ロッドの温度に応じた、ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間を示すグラフである。
図4】比較例1によって製造されたポリエステル非コーティング織物のホット−ロッドの温度に応じた、ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものであって、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1〜5
所定の固有粘度を有するPETチップを、溶融放射機を介して1ステップ(step)としてポリエステル繊維を製造した後に、前記原糸を用い、レピア織機を介してエアバッグ用織物生地を製織し、精練およびテンタリング工程を経て、ポリエステル織物を製造した。
【0090】
この時、PETチップの固有粘度、CEG含有量、溶融紡糸温度、延伸比、熱処理温度、原糸の強靭性、引裂強度、引張強度、溶融熱容量(ΔH)などの物性、および織物の経糸および緯糸の製織密度、製織形態、熱処理温度、ゴム成分、コーティング量は下記表1に示した通りであり、ゴム成分のコーティング層形成工程は、ナイフコーティング(knife over ro1l coating)方法などで行った。これ以外の残りの条件は、エアバッグ用ポリエステル織物製造のための通常の条件に従った。
【0091】
【表1】
【0092】
前記実施例1〜5によって製造されたポリエステル織物に対して次の方法で物性を測定し、測定された物性は下記表2にまとめた。
【0093】
(a)厚度
ゴム成分がコーティング処理前の非コーティングされたポリエステル織物およびゴム成分コーティングされたポリエステル織物を用い、それぞれの厚度(D)を米国材料試験協会規格ASTMD1777によって測定した。
【0094】
(b)耐熱定数
ゴム成分がコーティング処理前の非コーティングされたポリエステル織物およびゴム成分コーティングされたポリエステル織物を用い、それぞれの試験片で横50mm×縦50mmを裁断した後、図2に示したような、ホット−ロッドテスタ(hot rod tester)装置に前記試験片を装着した。また、前記テスタ装置において、ホット−ロッド(スチール材質、直径10mm、長さ82mm、重量50g、熱伝導率55W/m・K)を昇温速度20℃/minで加熱し、それぞれ450℃および600℃の温度(T)に熱した後に、前記試験片から距離(d)が76mm程度離れるように試験片の上側方向に配置し、前記位置からホット−ロッドを試験片側に自由落下させた。このように自由落下させたホット−ロッドが試験片を接触した後から試験片を完全に通過するまでの時間(t、sec)を測定し、下記計算式1によって耐熱定数値を計算した。
【0095】
実施例1によるポリエステル非コーティング織物のホット−ロッドの温度に応じた、ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(t、sec)に対するグラフを図3に示した。これと同様の方法で残りのポリエステル織物に対しても自由落下させたホット−ロッドの滞留時間を測定し、前記計算式1に基づいてそれぞれの耐熱定数を算測した。
【0096】
特に、このような測定をそれぞれのポリエステル織物に対して10回繰り返し実施した後に、平均耐熱定数を算測して下記表2に示した。
[計算式1]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D)
前記計算式1において、Tは、自由落下させるホット−ロッドの温度であって、350〜750℃の温度範囲を有し、tは、前記ホット−ロッドを自由落下させ、前記ホット−ロッドがポリエステル織物と接触した後から前記ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、Dは、前記ポリエステル織物の厚度(mm)を示し、コーティング織物の場合、コーティング層を含む織物の厚度(mm)を示す。
【0097】
(c)強靭性(Toughness)
下記計算式2によって強靭性(Toughness、J/m)値を計算した。
【0098】
【数2】
【0099】
前記計算式2において、Fは、ポリエステル繊維または織物の長さがdlだけ伸びる時に加えられる荷重を示し、dlは、ポリエステル繊維または織物の長さが伸びた長さを示す。
【0100】
この時、織物の強靭性は、コーティング処理前の非コーティングされた織物で測定した。
【0101】
(d)引裂強度
コーティング処理前の非コーティングされた織物およびコーティング処理後のコーティングされた織物を用い、それぞれの試験片で横75mm×縦200mmを裁断した後、前記試験片の上側と下側のそれぞれを米国材料試験協会規格ASTMD2261TONGUEによる装置で上端および下端の噛合装置面(jaw face)の左右空間の間に位置させ、前記噛合装置面(jaw face)の間隔を基準とし、76mm/min、300mm/minの引裂速度でエアバッグ用織物の引裂強度を測定した。
【0102】
(e)引張強度および切断伸度
コーティング処理前の非コーティングされた織物で試験片を裁断し、米国材料試験協会規格ASTMD5034による引張強度測定装置の下部クランプに固定させ、上部クランプを上に移動させながらエアバッグ織物の試験片が破断する時の強度および伸度を測定した。
【0103】
(f)経糸および緯糸方向の織物収縮率
米国材料試験協会規格ASTMD1776によって経糸/緯糸方向の織物収縮率を測定した。まず、コーティング処理前の非コーティングされた織物で試験片を裁断した後、経糸および緯糸方向に収縮前の長さの20cmずつを表示し、149℃で1時間チャンバで熱処理した試験片の収縮した長さを測定し、経糸方向および緯糸方向の布収縮率{(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ×100%}を測定した。
【0104】
(g)剛軟度
コーティング処理前の非コーティングされた織物に対し、米国材料試験協会規格ASTMD4032による剛軟度測定装置を用い、サーキュラベンド(Circular Bend)法で織物の剛軟度を測定した。また、剛軟度測定法でカンチレバー法を適用することができ、織物に曲げを与えるために一定角度の傾斜を与えた試験台のカンチレバー測定機器を用い、織物の曲げ長さの測定を通じて剛軟度を測定することができる。
【0105】
(h)空気透過度
米国材料試験協会規格ASTMD737により、コーティング処理前の非コーティングされた織物を、20℃、65%RH下で1日以上放置した後、ΔPがそれぞれ125paおよび500paの圧力の空気が38cmの円形断面を通過する量を測定し、静的空気透過度として示した。
【0106】
また、ASTMD6476により、動的空気透過度試験器(TEXTEST FX 3350Dynamic Air Permeability Tester)を用い、前記非コーティング織物の動的空気透過度を測定して示した。
【0107】
【表2】
【0108】
比較例1〜3
下記表3に記載された条件を除いては、実施例1〜5と同様の方法によって比較例1〜5のポリエステル織物を製造した。
【0109】
【表3】
【0110】
前記比較例1〜3によって製造されたポリエステル織物に対する物性を下記表4にまとめた。この時、比較例1によるポリエステル非コーティング織物のホット−ロッドの温度に応じた、ポリエステル織物を通過するまでにかかった時間(t、sec)に対するグラフを図4に示し、上述したような方法で比較例1〜3のポリエステル織物に対するそれぞれの耐熱定数を算測した。
【0111】
【表4】
【0112】
前記表2および表4に示したように、本発明にかかり、高強度高伸率の低いモジュラス(Young’s modulus)を有するポリエステル繊維を用い、特定範囲の耐熱定数を有する実施例1〜5のポリエステル織物は、既存のポリエステル繊維を用いた比較例1〜3のエアバッグ用織物に比べて優れた機械的物性および向上した織物収縮率、剛軟度および空気透過度などにおいて優れた物性を有することが分かる。
【0113】
特に、実施例1〜5のポリエステル織物は、ホット−ロッドの実際温度が450℃の時、非コーティング織物状態で1.3〜2.69の耐熱定数を示し、ホット−ロッドの実際温度が600℃の時、非コーティング織物状態で1.11〜1.53の耐熱定数を示すことにより、織物収縮率が0.3%〜0.5%であり、強靭性が3.75〜5.6kJ/mであり、非コーティング織物の引裂強度が19〜26kgfであり、引張強度が227〜305kgf/inchであることはもちろん、剛軟度が0.35〜1.0kgfと非常に優れた特性を有することが分かる。このように、高強度高伸率の低いモジュラス(Young’s modulus)を有するポリエステル繊維を用いて特定範囲の耐熱定数を有する本発明のポリエステル織物は、エアバッグ用織物として最適な物性範囲を有することにより、優れた形態安定性および機械的物性と共に、優れたフォールディング性、収納性を確保できることが分かる。
【0114】
しかし、既存の低強度、低伸率、高い単糸繊度、高いモジュラス(Young’s modulus)を有するポリエステル繊維を用いた比較例1〜3のエアバッグ用織物の場合、ホット−ロッドの実際温度が450℃の時、非コーティング織物状態で0.92〜1.16の耐熱定数を示し、ホット−ロッドの実際温度が600℃の時、非コーティング織物状態で0.82〜0.93の耐熱定数を示すことにより、織物収縮率が0.9%〜1.3%と顕著に増加し、引張強度が187〜200kgf/inchであり、非コーティング織物の引裂強度が13〜20kgfであって、織物の機械的強度も顕著に低下することが分かる。したがって、比較例1〜3のエアバッグ用織物は、前記実施例1〜5のエアバッグ用織物に比べて機械的物性および形態安定性などにおいていずれも不利な物性値を示すことにより、実際にエアバッグ用織物として適用するには問題が多いことが確認された。
図1
図2
図3
図4