特許第6040196号(P6040196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040196
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】直流電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20161128BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20161128BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20161128BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20161128BHJP
【FI】
   H02J7/00 301D
   H02J50/12
   H02J50/80
   H02J50/90
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-101382(P2014-101382)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-220817(P2015-220817A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】小谷 弘幸
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−198260(JP,A)
【文献】 特開2010−130800(JP,A)
【文献】 特開2013−123306(JP,A)
【文献】 特開2005−006396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を出力する電力発生手段と、
制御目標値が設定され、前記電力発生手段の出力電力に関する所定の情報が当該制御目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御する制御手段と、
前記交流電力を直流電力に変換し、負荷に供給する電力変換手段と、
前記電力発生手段と前記電力変換手段の間に設けられ、前記電力発生手段の出力端における反射波電力が所定値以下となるように、前記出力端から前記負荷側を見たインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、
を備えた直流電力供給装置であって、
前記負荷に供給される直流電力に関する電気的な物理量を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された物理量が所定の値となるように、前記制御手段に設定される前記制御目標値を制御する制御目標値制御手段と、
前記出力端における進行波電力を検出する電力検出手段と、
を備え
前記制御目標値は、前記進行波電力の目標値であり、
前記制御手段は、前記電力検出手段で検出された進行波電力が前記進行波電力の目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御する、
ことを特徴とする直流電力供給装置。
【請求項2】
前記出力端における反射波電力を検出する反射波電力検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記反射波電力検出手段で検出された反射波電力が予め設定された閾値を超えると、前記電力発生手段の電力発生動作を停止する、請求項に記載の直流電力供給装置。
【請求項3】
交流電力を出力する電力発生手段と、
制御目標値が設定され、前記電力発生手段の出力電力に関する所定の情報が当該制御目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御する制御手段と、
前記交流電力を直流電力に変換し、負荷に供給する電力変換手段と、
前記電力発生手段と前記電力変換手段の間に設けられ、前記電力発生手段の出力端における反射波電力が所定値以下となるように、前記出力端から前記負荷側を見たインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、
を備えた直流電力供給装置であって、
前記負荷に供給される直流電力に関する電気的な物理量を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された物理量が所定の値となるように、前記制御手段に設定される前記制御目標値を制御する制御目標値制御手段と、
前記出力端における進行波電力と前記反射波電力を検出する電力検出手段と、
を備え
前記制御目標値は、前記進行波電力から前記反射波電力を差し引いた前記負荷への供給電力の目標値であり、
前記制御手段は、前記電力検出手段で検出された進行波電力及び反射波電力から前記供給電力を算出し、その算出値が前記供給電力の目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御する、
ことを特徴とする直流電力供給装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記電力検出手段で検出された反射波電力が予め設定された閾値を超えると、前記電力発生手段の電力発生動作を停止する、請求項に記載の直流電力供給装置。
【請求項5】
前記制御目標値制御手段は、前記検出手段で検出された電気的な物理量と前記負荷に設定されている電気的な物理量との差分を算出し、その差分に基づいて前記制御目標値を設定する、請求項1乃至4のいずれかに記載の直流電力供給装置。
【請求項6】
前記電気的な物理量は、前記負荷に供給される直流電流又は直流電圧である、請求項1乃至5のいずれかに記載の直流電力供給装置。
【請求項7】
前記インピーダンス調整手段と前記電力変換手段との間に互いに磁界結合された一対のコイルが設けられ、前記電力発生手段から出力された前記交流電力が前記一対のコイルを介して無線で前記電力変換手段に伝送される、請求項1乃至のいずれかに記載の直流電力供給装置。
【請求項8】
前記負荷は、二次電池である、請求項1乃至のいずれかに記載の直流電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を発生し、その交流電力を直流電力に変換して負荷に供給する直流電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するシステムとして、二次電池を充電するために当該二次電池に直流電力を供給する充電システムが知られている。そして、電気自動車や産業用機器、携帯用電子機器等に内蔵された二次電池を充電する充電システムとして、送電装置と受電装置との間を一対のコイルで磁界結合し、送電装置で発生した交流電力を磁界結合した一対のコイルで受電装置に伝送するワイヤレス電力伝送技術を用いたワイヤレス充電システムが知られている。
【0003】
ワイヤレス充電システムでは、受電装置に内蔵された二次電池がリチウム・イオン電池等の定電流定電圧充電方式で充電される二次電池の場合、例えば、特開2013−70581号公報に示されるように、受電装置内に整流器、定電圧制御器、充電器を設け、整流器で交流電力を直流電力に変換した後、定電圧制御器でその直流電力を所定の定電圧で充電器に出力し、充電器で定電流定電圧充電方式により二次電池を充電する構成が知られている。定電流定電圧充電方式は、定電流で二次電池の充電を開始し、二次電池の電池電圧が所定の電圧に上昇すると、定電圧で充電電流が所定の電流値に低下するまで二次電池の充電を行う方式である。
【0004】
従来、一般に、DC−DCコンバータを用い、二次電池の充電状態に応じてDC−DCコンバータのスイッチング制御を切り換えて定電流定電圧充電方式により二次電池を充電する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−70581号公報
【特許文献2】特許第5431033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の構成では、二次電池の充電を定電流充電若しくは定電圧充電で制御するために、二次電池の前段にDC−DCコンバータ等の充電制御機器を設けているので、充電装置内の直流電力変換後の回路構成が複雑になり、充電装置の小型化やコスト低減の障害になるという問題がある。
【0007】
特に、ワイヤレス充電システムでは、受電装置側にDC−DCコンバータ等の充電制御機器が設けられるので、受電装置の大型化やコスト増を招くことになる。特に、携帯電話や携帯端末等の小型機器については、充電システムの小型化、コスト低減が求められる昨今、このような大型化やコスト増は重要に課題である。
【0008】
上記の問題は、充電システムだけでなく、交流電力を直流電力に変換した後、その直流電力を定電流制御若しくは定電圧制御によって負荷に供給する直流電力供給装置に対しても同様に言えることである。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、負荷の前段にDC−DCコンバータ等の直流電力の供給を制御する制御機器を設けることなく、定電流方式若しくは定電圧方式により直流電力の供給を制御することができる直流電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面に係る直流電力供給装置は、交流電力を出力する電力発生手段と、制御目標値が設定され、前記電力発生手段の出力電力に関する所定の情報が当該制御目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御する制御手段と、前記交流電力を直流電力に変換し、負荷に供給する電力変換手段と、前記電力発生手段と前記電力変換手段の間に設けられ、前記電力発生手段の出力端における反射波電力が所定値以下となるように、前記出力端から前記負荷側を見たインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、を備えた直流電力供給装置であって、前記負荷に供給される直流電力に関する電気的な物理量を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された物理量が所定の値となるように、前記制御手段に設定される前記制御目標値を制御する制御目標値制御手段と、前記出力端における進行波電力を検出する電力検出手段とを備え、前記制御目標値は、前記進行波電力の目標値であり、前記制御手段は、前記電力検出手段で検出された進行波電力が前記進行波電力の目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御することを特徴とする(請求項1)。
【0014】
好ましい実施形態によれば、請求項に記載の直流電力供給装置において、前記出力端における反射波電力を検出する反射波電力検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記反射波電力検出手段で検出された反射波電力が予め設定された閾値を超えると、前記電力発生手段の電力発生動作を停止する(請求項)。
【0015】
本発明の第2の側面に係る直流電力供給装置は、交流電力を出力する電力発生手段と、制御目標値が設定され、前記電力発生手段の出力電力に関する所定の情報が当該制御目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御する制御手段と、前記交流電力を直流電力に変換し、負荷に供給する電力変換手段と、前記電力発生手段と前記電力変換手段の間に設けられ、前記電力発生手段の出力端における反射波電力が所定値以下となるように、前記出力端から前記負荷側を見たインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段とを備えた直流電力供給装置であって、前記負荷に供給される直流電力に関する電気的な物理量を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された物理量が所定の値となるように、前記制御手段に設定される前記制御目標値を制御する制御目標値制御手段と、前記出力端における進行波電力と前記反射波電力を検出する電力検出手段とを備え、前記制御目標値は、前記進行波電力から前記反射波電力を差し引いた前記負荷への供給電力の目標値であり、前記制御手段は、前記電力検出手段で検出された進行波電力及び反射波電力から前記供給電力を算出し、その算出値が前記供給電力の目標値となるように、前記電力発生手段の電力発生動作を制御することを特徴とする(請求項)。
【0016】
好ましい実施形態によれば、請求項に記載の直流電力供給装置において、前記制御手段は、前記電力検出手段で検出された反射波電力が予め設定された閾値を超えると、前記電力発生手段の電力発生動作を停止する(請求項)。
【0017】
好ましい実施形態によれば、請求項1乃至のいずれかに記載の直流電力供給装置において、前記制御目標値制御手段は、前記検出手段で検出された電気的な物理量と前記負荷に設定されている電気的な物理量との差分を算出し、その差分に基づいて前記制御目標値を設定する(請求項)。
【0018】
好ましい実施形態によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の直流電力供給装置において、前記電気的な物理量は、前記負荷に供給される直流電流又は直流電圧である(請求項)。
【0020】
好ましい実施形態によれば、請求項1乃至のいずれかに記載の直流電力供給装置において、前記インピーダンス調整手段と前記電力変換手段との間に互いに磁界結合された一対のコイルが設けられ、前記電力発生手段から出力された前記交流電力が前記一対のコイルを介して無線で前記電力変換手段に伝送される(請求項)。
【0021】
好ましい実施形態によれば、請求項1乃至のいずれかに記載の直流電力供給装置において、前記負荷は、二次電池である(請求項)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る直流電力供給装置によれば、負荷に供給される直流電力に関する電気的な物理量(直流電圧若しくは直流電流)を検出し、その物理量が所定の値(定電流制御の場合の定電流値や定電圧制御の場合の定電圧値等)となるように、制御手段に設定される制御目標値が制御されるので(すなわち、電力発生手段の出力制御の目標値が制御されるので)、電力変換手段と負荷との間に、例えば、DC−DCコンバータ等の当該負荷に供給される電気的な物理量を所定の値に制御する手段(定電流制御手段や定電圧手段等)を設ける必要がなくなる。従って、直流電力供給装置の構成の簡素化やコスト低減が可能になる。
【0023】
また、インピーダンス調整手段と電力変換手段との間を一対のコイルで磁界結合し、電力発生手段の出力電力を無線で負荷を含む受電装置に伝送する場合、受電装置側の回路構成が簡単になり、受電装置の小型化や低コスト化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る充電装置(直流電力供給装置)の構成例を示すブロック図である。
図2】リチウム・イオン電池の充電特性を示す図である。
図3】非接触電力伝送システムの送電部から負荷側の部分の等価回路を示す図である。
図4】結合係数の変化とスミスチャート上での負荷側インピーダンスの変化の関係を示した図である。
図5】制御部の高周波電源の出力電力を制御する制御系の構成を示すブロック図である。
図6】制御部による出力制御の処理手順を示すフローチャートである。
図7】制御部の高周波電源の出力電力を制御する制御系の構成の変形例を示すブロック図である。
図8】制御部の高周波電源の出力電力を制御する制御系の構成の他の変形例を示すブロック図である。
図9】高周波電源の構成の変形例を示す図である。
図10図9に示す高周波電源を用いた場合の制御部の高周波電源の出力電力を制御する制御系の構成を示すブロック図である。
図11】本発明に係る充電装置(直流電力供給装置)の変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る直流電力供給装置の実施形態として、電気自動車等に内蔵された二次電池を充電する充電装置を例に説明する。図1は、本発明に係る充電装置(直流電力供給装置)の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図1に示す充電装置は、非接触電力伝送システム1を利用して受電装置3内の二次電池34(充電式電池。以下、「バッテリ34」という。)を充電する構成である。非接触電力伝送システム1は、磁界共鳴方式により送電装置2から受電装置3に数MHz〜数百MHzの高周波電力を非接触で伝送するシステムである。図1のブロック構成では、バッテリ34を除いた部分が充電装置の構成となる。
【0027】
バッテリ34を非接触で充電する非接触電力伝送システム1として、電気自動車に搭載されたバッテリを充電する充電システムが周知である。以下の説明では、電気自動車の充電システムを例に説明する。
【0028】
送電装置2は、高周波電源21、インピーダンス整合器22、送電部23、制御部24及び通信ユニット25を含み、受電装置3は、受電部31、整流回路32、電圧・電流検出器33、バッテリ34及び通信ユニット35を含む。
【0029】
高周波電源21は、所定の周波数(数MHz〜数百MHzの高周波)の高周波電力を発生する。高周波電源21は、高周波信号(電圧信号)を発生する高周波信号発生回路と、高周波信号発生回路で発生した高周波信号を増幅するパワーアンプと、このパワーアンプに直流の電源電圧を供給するDC−DCコンバータと、パワーアンプから出力される高周波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタと、パワーアンプから出力される高周波電力の電力量を制御する電力制御部を含む。また、高周波電源21の出力端Aには進行波電力Pfと反射波電力Prを検出する電力検出器211が含まれる。
【0030】
パワーアンプは、例えば、D級アンプやE級アンプで構成することができ、高周波信号発生回路から入力される高周波信号によってスイッチング素子をオン・オフ駆動することにより、高周波信号と同一の周期を有し、DC−DCコンバータから入力される直流電圧に依存した振幅の高周波信号を生成する。この高周波信号はローパスフィルタで高周波成分が除去されることにより正弦波の高周波信号に整形されて出力される。
【0031】
電力制御部は、制御部24から入力される出力制御信号SCに基づいてDC−DCコンバータから出力される直流電圧の振幅を制御し、これによりパワーアンプから出力される高周波信号の増幅量(すなわち、高周波電力の電力量)を制御する。
【0032】
電力検出器211は、例えば、双方向性結合器と、その双方向性結合器から出力される進行波電圧vfと反射波電圧vrを検出する一対の電圧計と、進行波電圧vfと反射波電圧vrをそれぞれ進行波電力Pfと反射波電力Prに変換する変換器とで構成される。電力検出器211で検出された進行波電力Pfと反射波電力Prは制御部24に入力される。
【0033】
インピーダンス整合器22は、高周波電源21の出力端Aから負荷側を見たインピーダンスZA(以下、「負荷側インピーダンスZA」)を調整する。インピーダンス整合器22は、例えば、第1のキャパシタC1(図示省略)、インダクタL1(図示省略)、及び第2のキャパシタC2(図示省略)をπ型に接続したπ型回路で構成される。高周波電源21は、特性インピーダンスZo(例えば、50[Ω])の負荷が接続された場合に最適な伝送効率で高周波電力を出力するように設計されている。インピーダンス整合器22は、制御部24からの整合制御信号SSに基づいて、負荷側インピーダンスZAが特性インピーダンスZoとなるように、第1,第2のキャパシタC1,C2の各キャパシタンスを調整する。制御部24は、電力検出器211から入力される反射波電力Prをモニタしながら、第1,第2のキャパシタC1,C2の各キャパシタンスを変化させ、反射波電力Prが所定値以下となるキャパシタンス値に設定する。
【0034】
送電部23は、インピーダンス整合器22から出力される高周波電力を受電装置3の受電部31に無線で伝送する。送電部23は、例えば、複数ターンのソレノイドコイルからなるインダクタ231(以下、「送電用コイル231」と表現する場合がある。)とそのインダクタ231に直列に接続されたキャパシタ232との直列共振回路で構成される。送電部23は、直列共振回路の直列共振周波数fo(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタ231の自己インダクタンス、C:キャパシタ232のキャパシタンス)が高周波電源21から出力される高周波電力の周波数fg(以下、「電源周波数fg」という。)[MHz]に調整されている。
【0035】
制御部24は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGA(field-programmable gate array)などで構成される。制御部24は、高周波電源21に対してDC−DCコンバータの出力電圧を制御する出力制御信号SCを出力し、高周波電源21から出力される高周波電力を制御する。
【0036】
本実施形態では、バッテリ34は、一般に電気自動車に搭載されるリチウム・イオン電池である。リチウム・イオン電池は、定電流で充電を開始し、電池電圧が所定の電圧に上昇すると、定電圧に切り換えて充電電流が所定の電流に低下するまで充電を行う定電流定電圧充電方式の二次電池である。制御部24は、定電流定電圧充電方式によるバッテリ34の充電プロセスにおける定電流充電制御と定電圧充電制御を高周波電源21から出力される高周波電力(出力電力)を制御する(正確には出力電力のフィードバック制御における制御目標値を制御する)ことによって実現する構成に特徴を有する。この制御内容の詳細は後述する。
【0037】
通信ユニット25は、受信装置3内に設けられた通信ユニット35と無線通信を行って、受電装置3から電圧・電流検出器33で検出されたバッテリ34の充電電流Ijと電池電圧Vjの検出データを受信する。通信ユニット25は、受信回路、周波数変換回路及び復調回路を含み、受信回路で通信ユニット35から送信される無線通信信号を受信し、周波数変換回路でその無線通信信号の周波数を所定の低周波に変換した後、復調回路で充電電流Ijと電池電圧Vjの検出データを復調する。通信ユニット25で受信された充電電流Ijと電池電圧Vjの検出データは制御部24に入力される。
【0038】
受電部31は、送電装置2の送電部23との間で磁界結合をして当該送電部23から高周波電力を受電する。受電部31は、送電部23と同一の構成を有し、複数ターンのソレノイドコイルからなるインダクタ311(以下、「受電用コイル311」と表現する場合がある。)とそのインダクタ311に直列に接続されたキャパシタ312との直列共振回路で構成される。受電部31も、直列共振回路の直列共振周波数fo(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタ311の自己インダクタンス、C:キャパシタ312のキャパシタンス)が電源周波数fg[MHz]に調整されている。
【0039】
整流回路32は、受電部31から出力される高周波信号を整流する。整流回路32は、例えば、4個の整流素子をブリッジ接続したブリッジ回路で構成される。4個の整流素子にはショットキーバリアーダイオードが用いられる。なお、整流素子には素子内部に並列にキャパシタが形成され、HF帯では、このキャパシタを通して進相の高周波電流が流れるので、この進相の高周波電流をキャンセルするために整流回路の入力端にインダクタを並列に接続するとよい。
【0040】
電圧・電流検出器33は、直流電圧計と直流電流計を含み、直流電圧計で整流回路32からバッテリ34に印加される直流電圧(電池電圧)Vjを計測し、直流電流計で整流回路32からバッテリ34に供給される直流電流(充電電流Ij)を計測する。電圧・電流検出器33で検出された電池電圧Vjと充電電流Ijは、通信ユニット35,25を介して送電装置2内の制御部24に入力される。
【0041】
バッテリ34は、充電により電池として繰り返し使用可能な二次電池で、ニッケル水素電池、ニッカド電池、リチウム・イオン電池等が含まれるが、本実施形態では、図2に示す充電特性を有するリチウム・イオン電池である。
【0042】
通信ユニット35は、送電装置2内に設けられた通信ユニット25と無線通信を行って、電圧・電流検出器33で検出されたバッテリ34の充電電流Ijと電池電圧Vjの検出データを送電装置2に送信する。通信ユニット35は、キャリア発生回路、変調信号生成回路、変調回路及び送信回路を変調信号生成回路で充電電流Ij及び電池電圧Vjの情報を含む変調信号を生成し、キャリア発生回路で発生したキャリア信号を所定の変調方式により変調信号で変調して通信用信号を生成し、送信回路でその通信用信号を増幅した後、アンテナを介して空中に放射する(通信ユニット25に送信する)。
【0043】
次に、送電装置2から受電装置3に高周波電力を非接触で伝送する場合の受電装置3の配置とインピーダンス整合器22の制御について説明する。
【0044】
バッテリ34は、リチウム・イオン電池であるから、バッテリ34のインピーダンスを抵抗成分だけとすると、受電部31の出力端Cから負荷32側を見たインピーダンスZC=RC+j・XCをZC≒RCと扱うことができる。
【0045】
送電部23のインダクタ231と受電部31のインダクタ311が相互インダクタンスM[H]で結合されている場合、送電部23からバッテリ34までの回路(図3(a)の回路)の等価回路は、図3(b)に示すように、結合部分の回路をトランスのT型等価回路に置き換えた回路で表わすことができる。
【0046】
図3(b)に示す等価回路では、送電部23の入力端Bから受電装置3側を見たインピーダンスZB(以下、「負荷側インピーダンスZB」という。)は、
B=Z1+Z2・Z3/(Z2+Z3) …(1)
1=j・ω・(L−M)+1/(j・ω・C) …(2)
2=RC+Z1=RC+j・ω・(L−M)+1/(j・ω・C) …(3)
3=j・ω・M …(4)
ω=2・π・f
で表わされる。
【0047】
送電部23及び受電部31が磁界共鳴状態の場合(送電部23及び受電部31の直列共振回路が電源周波数fgで直列共振している場合)は、j・ωg・L−1/j・ωg・C=0(但し、ωg=2・π・fg)であり、インダクタ231とインダクタ311の結合係数kは、k=M/√(L・L)=M/Lで表わされるから、これらを(1)式〜(4)式に入れると、負荷側インピーダンスZB=RB+j・XBは、
B=RB=(ωg・k・L)2/RC …(5)
で表わされる。
【0048】
(5)式は、送電部23と受電部31がインピーダンスRCを他の抵抗値RBに変換するインピーダンス変換器として動作することを示している。そして、抵抗値RBは、送電部23と受電部31の磁界結合の度合いを表す結合係数k(0<k<1)と抵抗値RCによって変化する。
【0049】
相互インダクタンスMは、送電用コイル231と受電用コイル311を鎖交する磁束によって変化し、その磁束は、送電用コイル231と受電用コイル311との間の距離dが小さくなるほど大きくなる。従って、相互インダクタンスMは、当該距離dが小さくなるのに応じて増大するように変化し、k=M/Lであるから、結合係数kも当該距離dが小さくなるのに応じて増大するように変化する。
【0050】
抵抗値RCが固定の場合は、負荷側インピーダンスZB=RBを特性インピーダンスZoで正規化した正規化インピーダンスrB=RB/Zoは、図4に示すように、結合係数kの変化に応じてスミスチャート(インピーダンスチャート)の実軸上若しくは実軸の近傍を実軸に沿って変化する。
【0051】
スミスチャートの実軸は電圧反射係数Γを表す軸で、中央の正規化インピーダンスが「1」となる点O1はΓ=0(整合)となる点、右端の正規化インピーダンスが「∞」となる点O2はΓ=+1(全反射)となる点、左端の正規化インピーダンスが「0」となる点O3はΓ=−1(全反射)となる点である。
【0052】
従って、非接触電力伝送システム1では、送電用コイル231と受電用コイル311との間の距離dが、可及的に正規化インピーダンスrBが1.0となる距離doとなるように、送電装置2に対する受電装置3の位置(電気自動車の場合、電気自動車の駐車位置)を調整して、送電装置2から受電装置3に高周波電力が伝送される。
【0053】
バッテリ34がリチウム・イオン電池の場合、図2に示したように、充電開始から充電終了までの間の電池電圧Vjの変動量は少ないが、充電電流Ijの変動量が非常に大きいので、充電期間中のバッテリ34のインピーダンス(Vj/Ij)が大きく変動する。従って、充電期間中にインピーダンスZC=RCも大きく変動し、この変動に応じて負荷側インピーダンスZB=RBが変動するので、制御部24は、電力検出器211から入力される反射波電力Prをモニタしながら、第1,第2のキャパシタC1,C2の各キャパシタンスを変化させる整合制御信号SSをインピーダンス整合器22に出力し、反射波電力Prが所定値以下となるように(正規化インピーダンスrBが1.0の近傍位置となるように)、第1,第2のキャパシタC1,C2の各キャパシタンスを整定する。
【0054】
制御部24によるインピーダンス整合器22のインピーダンス整合動作により、送電装置2から受電装置3に高周波電力が非接触で効率良く伝送され、受電装置3ではその高周波電力を直流電力に変換してバッテリ34の充電が行われる。
【0055】
次に、制御部24のフィードバック制御による高周波電源21の出力制御(出力電力の制御目標値の制御)について、説明する。
【0056】
図5は、制御部24の高周波電源21の出力電力を制御する制御系の構成を示すブロック図である。図5で、図1に示した部材と同一の部材には同一の符号を付している。
【0057】
図5に示す制御系は、フィードバック制御により出力制御信号SC(高周波電源21の出力電力の制御目標値)を所定の周期で更新する制御系である。制御系は、3個の加算器241,242,246と、3個の誤差増幅部243,244,247と、制御切換部245と、出力停止制御部248とを含む。
【0058】
本実施形態では、高周波電源21の出力電力量を制御することによってバッテリ34の定電流充電と定電圧充電の両制御を行うので、制御部24には、定電流充電制御に基づいて出力制御信号SCを生成する処理回路と定電圧充電制御に基づいて出力制御信号SCを生成する処理回路とが設けられている。加算器241及び誤差増幅部243は、定電圧充電制御に基づいて出力制御信号SCを生成する処理回路であり、加算器242及び誤差増幅部244は、定電流充電制御に基づいて出力制御信号SCを生成する処理回路である。
【0059】
バッテリ34は、定電流定電圧充電方式により充電が行われるリチウム・イオン電池であるので、図2に示すように、充電開始からバッテリ34の電圧Vjが所定の電圧Vthに上昇するまでは定電流充電制御が行われ、電圧Vjが電圧Vthに上昇した後は充電電流Ijが最低充電電流Ijminに低下するまで定電圧充電制御が行われる。
【0060】
制御部24には、ユーザによってバッテリ34の定電流充電制御における定電流値ICjと、定電圧充電制御における定電圧値VCjと、最低充電電流Ijminと、電圧Vthが設定される。加算器241は、充電電圧制御における定電圧VCjと電圧・電流検出器33で検出された電池電圧Vjの差電圧ΔVj(=VCj−Vj)を演算し、誤差増幅部243はその差電圧ΔVjに所定のフィードバックゲインを乗じて高周波電源21の出力電力の制御目標値PCVを生成する処理を行う。
【0061】
一方、加算器242は、充電電流制御における定電流ICjと電圧・電流検出器33で検出された充電電流Ijの差電流ΔIj(=ICj−Ij)を演算し、誤差増幅部244はその差電流ΔIjに所定のフィードバックゲインを乗じて高周波電源21の出力電力の制御目標値PCIを生成する処理を行う。
【0062】
制御切換部245は、定電圧充電制御と定電流充電制御を切り換える処理を行うもので、具体的には、加算器246に出力する、差電圧ΔVjに基づく制御目標値PCVと差電流ΔIjに基づく制御目標値PCIとを切り換える制御を行う。制御切換部245には、ユーザによって設定された電圧Vth(定電流充電制御を定電圧充電制御に切り換える電池電圧Vjの閾値)と電圧・電流検出器33で検出された電池電圧Vjとが入力され、制御切換部245は、電池電圧Vjと電圧Vthを比較し、Vj<Vthであれば、制御目標値PCIを加算器246に出力し、Vth≦Vjであれば、制御目標値PCVを加算器246に出力する。
【0063】
加算器246と誤差増幅部247は、制御目標値PCV又は制御目標値PCIと電力検出器211で検出された進行波電力Pfとの差電力ΔPfに基づいて出力制御信号SCを生成する処理回路である。加算器246には、電力検出器211で検出された進行波電力Pfが入力され、加算器246はその進行波電力Pfと制御切換部245から入力される制御目標値PCV又は制御目標値PCIとの差電力ΔPf(=PCV−Pf又はPCI−Pf)を演算する。また、誤差増幅部247は、その差電力ΔPfに所定のフィードバックゲインを乗じて高周波電源21への出力制御信号SCを生成する処理を行う。
【0064】
出力停止制御部248は、高周波電源21の電力出力を停止させる(バッテリ34の充電を停止する)処理を行う。出力停止制御部248は、定電圧充電制御でバッテリ34の充電電流Ijが最低充電電流Ijminに低下すると、充電完了と見做して高周波電源21の電力出力を停止させる。また、電力検出器211による反射波電力Prの検出値がユーザによって予め設定された閾値Prthを超える場合も反射波電力により高周波電源21の損失が増加したり、高周波電源21とインピーダンス整合器22間の無効電力が増加したりするため、高周波電源21の電力出力を停止させる。
【0065】
出力停止制御部248には、ユーザによって設定された反射波電力の閾値Prth及び最低充電電流Ijminと、電圧・電流検出器33による充電電流Ijの検出値と、電力検出器211による反射電力Prの検出値が入力される。出力停止制御部248は、反射電力Prの検出値と閾値Prthを比較し、Prth<Prであれば、出力停止信号Sstopを誤差増幅器243,244に出力する。また、出力停止制御部248は、充電電流Ijの検出値と最低充電電流Ijminを比較し、Ij=Ijminになると、出力停止信号Sstopを誤差増幅器243,244に出力する。
【0066】
誤差増幅器243,244は、出力停止信号Sstopが入力されると、フィードバックゲインをゼロにして出力電力の制御目標値PCV,PCIをゼロにする。これにより、誤差増幅部247から出力電力をゼロにする出力制御信号SCが高周波電源21に出力されるので、高周波電源21の出力電力が強制的にゼロとなるように制御される。
【0067】
次に、制御部24の出力制御の処理手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。以下の説明では、バッテリ34の残容量が「充電要」となったので、電気自動車が所定の充電位置に駐車され、受電装置3から送電装置2への電力供給の要求に基づいて制御部24が高周波電源21の出力を制御する場合について説明する。なお、受電装置3から送電装置2への電力供給の要求は、例えば、通信ユニット25,35を用いた無線による通信によって行うことができる。
【0068】
制御部24は、受電装置3からの電力供給の要求に基づいて高周波電源21に対する高周波電力の出力制御を開始すると、まず、インピーダンス整合器22への整合制御信号SSの出力処理(S1〜S4)を行う。
【0069】
整合制御信号SSの出力処理では、制御部24は、電力検出器211の反射波電力Prの検出値を読み込み(S1)、その反射波電力Prが予め設定された閾Prth以下であるか否かを判定する(S2)。制御部24は、Prth<Prであれば(S2:NO)、インピーダンス整合器22の第1,第2のキャパシタC1,C2の全ての調整値について整合制御信号SSをインピーダンス整合器22に出力したか否かを判定し(S3)、未だ調整値が残っていれば(S3:NO)、制御部24は、現在の第1,第2のキャパシタC1,C2の調整値を所定のステップで変化させ、その変化させた調整値を内容とする整合制御信号SSをインピーダンス整合器22に出力した後(S4)、ステップS5に移行して高周波電源21への出力制御信号SCの出力処理を行う。
【0070】
一方、ステップS3で全ての調整値についてインピーダンス整合器22に整合制御信号SSを出力していれば(S3:YES)、制御部24は、負荷インピーダンスZLはインピーダンス整合の調整範囲外であるとして、ステップS11に移行し、出力停止処理を行って出力制御処理を終了する。
【0071】
制御部24は、ステップS11に移行すると、出力電力の制御目標値PCが「0」の出力制御信号SCを生成して高周波電源21に出力する。高周波電源21は、この出力制御信号SCに基づいて高周波電力の生成動作をするが、制御目標値PCが「0」であるので、高周波電源21は、実質的に高周波電力の生成動作をしない。
【0072】
ステップS2でPr≦Prthであれば(S2:YES)、制御部24は、ステップS5に移行して高周波電源21への出力制御信号SCの出力処理を行う。
【0073】
制御部24は、ステップS5に移行すると、電圧・電流検出器33で検出された電池電圧Vjと充電電流Ijを読み込み、電池電圧Vjが予め設定された電圧Vth以上であるか否かを判別する(S6)。制御部24は、Vj<Vthであれば(S6:NO)、ステップS8に移行して定電流充電制御を行い(S8,S10)、Vth≦Vjであれば(S6:YES)、電圧・電流検出器33で検出された充電電流Ijと予め設定された最低充電電流Ijminを比較し(S7)、Ijmin<Ijであれば(S7:YES)、ステップS9に移行して定電圧充電制御を行う(S9,S10)。
【0074】
通常、バッテリ34が満充電状態でなければ、出力制御の開始後の最初のステップS6の処理ではVj<Vthとなるので、制御部24は、ステップS8に移行して最初に定電流充電制御で受電装置3への高周波電力の供給を制御し(バッテリ34を定電流制御で充電し)、この定電流充電制御で電池電圧Vjが閾値Vthに上昇すると(S6:YES)、定電圧充電制御に切り換えて受電装置3への高周波電力の供給を制御する(バッテリ34を定電圧制御で充電する)。
【0075】
定電流充電制御では、制御部24は、予め設定された定電流ICjと電圧・電流検出器33で検出された充電電流Ijの差電流ΔIj(=ICj−Ij)を算出し(S8)、その差電流ΔIjに所定のフィードバックゲインを乗じて制御目標値PCIを生成した後、更にその制御目標値PCIと電力検出器211で検出された進行波電力Pfとの差電力ΔPf(=PCI−Pf)を算出し、その差電力ΔPfに所定のフィードバックゲインを乗じて出力制御信号SCを生成する(S10)。
【0076】
出力制御信号SCは、高周波電源21に出力され、高周波電源21は、その出力制御信号SCに基づいて高周波電力を生成し、受電装置3側に出力する。高周波電源21から出力される高周波電力は、進行波電力Pfに相当するので、受電装置3にはその進行波電力Pfから反射波電力Prを差し引いた電力PL(=Pf−Pr)が供給される。
【0077】
制御部24は、定電流充電制御の処理をインピーダンス整合処理と並行して行う(S8,S10,S1〜S6のループ処理)。バッテリ34が定電流充電制御によって充電が行われる定電流充電期間では、図2に示すように、電池電圧Vjの変化幅(充電開始時の電池電圧Vjから閾値Vthまで変化幅)は小さく、負荷側インピーダンスZBの変動幅も小さい。従って、定電流充電期間では、負荷インピーダンスZLがインピーダンス整合の調整範囲外となって制御部24が出力停止処理に移行(ステップS3からS11への移行)し、定電流充電処理を中止することはない。
【0078】
定電流充電制御で電池電圧Vjが閾値Vthに上昇すると(S6:YES)、制御部24は、ステップS7の判定処理を行うが、この時には充電電流IjはIjmin<Ijであるので、制御部24は、ステップS9に移行し、定電圧充電制御に切り換えて高周波電源21の出力電力の制御を行う。
【0079】
定電圧充電制御では、制御部24は、予め設定された定電圧VCjと電圧・電流検出器33で検出された電池電圧Vjの差電圧ΔVj(=VCj−Vj)を算出し(S9)、その差電圧ΔVjに所定のフィードバックゲインを乗じて制御目標値PCVを生成した後、更にその制御目標値PCVと電力検出器211で検出された進行波電力Pfとの差電力ΔPf(=PCV−Pf)を算出し、その差電力ΔPfに所定のフィードバックゲインを乗じて出力制御信号SCを生成する(S10)。出力制御信号SCは、高周波電源21に出力され、高周波電源21は、その出力制御信号SCに基づいて高周波電力を生成し、受電装置3側に出力する。
【0080】
制御部24は、定電圧充電制御の処理もインピーダンス整合処理と並行して行う(S9,S10,S1〜S7のループ処理)。バッテリ34が定電圧電制御によって充電が行われる定電圧充電期間では、図2に示すように、充電電流Ijが定電圧充電制御の開始時の電流値から最低充電電流Ijminまで数百分の1に大きく変動するので、負荷側インピーダンスZBが大きく変動する。このため、定電圧充電期間では、負荷インピーダンスZLがインピーダンス整合の調整範囲外となる場合がある。制御部24は、定電圧充電処理中に負荷インピーダンスZLがインピーダンス整合の調整範囲外になると(S3:YES)、出力停止処理(S11)に移行し、定電圧充電処理を中止する。
【0081】
定電圧充電処理中に、負荷インピーダンスZLがインピーダンス整合の調整範囲外になることがなく、充電電流Ijが最低充電電流Ijminに低下すると(S7:NO)、制御部24は、ステップS11に移行し、出力停止処理をして出力制御を終了する。
【0082】
以上で説明したように、本実施形態に係る送電装置2によれば、バッテリ34の電池電圧Vjと充電電流Ijを制御部24にフィードバックし、定電流充電期間では高周波電源21の出力電力の制御目標値を充電電流Ijが定電流ICjとなる制御目標値PCIに制御し、定電圧充電期間では高周波電源21の出力電力の制御目標値を、電池電圧Vjが定電圧VCjとなる制御目標値PCVに制御するので、従来のように、バッテリ34の前段にDC−DCコンバータ等の充電制御機器を設け、その充電制御機器でバッテリ34の定電流充電制御や定電圧充電制御を行わせる必要がなく、受電装置3の構成の簡素化やコスト低減を図ることができる。
【0083】
上記実施形態では、バッテリ34が定電流定電圧充電方式の二次電池であるので、高周波電源21の出力制御を定電流充電制御と定電圧充電制御を切り換えて行う構成としたが、バッテリ34が定電圧充電方式若しくは定電流充電方式で充電可能であれば、図5に示す制御系のブロック図に代えて図7図8に示す制御系のブロック図にしてもよい。
【0084】
図7は、図5において、定電流充電制御に関する加算器242、誤差増幅部244及び制御切換部245の構成を削除したものであり、図8は、図5において、定電圧充電制御に関する加算器241、誤差増幅部243及び制御切換部245の構成を削除したものである。
【0085】
上記実施形態では、高周波電源21から出力される進行波電力Pfを制御していたが、進行波電力Pfに代えて受信装置3に供給される電力PL(進行波電力Pfから反射波電力Prを差し引いた電力)を制御するようにしてもよい。この場合は、図5において、加算器246と電力検出器211との間に進行波電力Pfから反射波電力Prを減算して電力PLを算出する電力演算部を設け、その電力演算部から加算器246に電力PLを入力するようにすればよい。
【0086】
また、進行波電力Pfに代えて高周波電源21から出力される有効電力Pを制御するようにしてもよい。この場合は、図9に示すように、電力検出器211に代えてRF検出器212を設けるとともに、図10に示すように、制御部24に電力演算部249を設け、RF検出器212で高周波電源21の出力端Aにおける高周波(RF)電圧v、高周波(RF)電流i及び位相差θ(RF電圧vとRF電流iの位相差)を検出し、電力演算部249でこれらの検出値から有効電力Pを算出し、加算器246に入力するようにすればよい。
【0087】
なお、有効電力Pは、RF電圧vとRF電流iの振幅をそれぞれVm、Imとすると、P=Vm・Im・cos(θ)/2の演算式により算出される。
【0088】
また、電力演算部249で無効電力Qを演算し、反射波電力Prに代えて無効電力Qを用いて出力停止の制御をするようにしてもよい。この場合は、図10に示すように、出力停止制御部248に無効電力Qの閾値Qthを設定するとともに、電力演算部249で算出した無効電力Qを入力し、出力停止制御部248でその無効電力Qと閾値Qthを比較し、Qth<Qの場合に出力停止信号Sstopを誤差増幅器243,244に出力させるようにすればよい。
【0089】
上記実施形態では、非接触電力伝送システム1を用いた電気自動車の充電システムについて説明したが、本発明は、電気自動車の充電システムに限定されるものではなく、携帯電話や携帯端末等の二次電池を充電する非接触の充電装置にも適用することができる。
【0090】
また、図11に示すように、図1において、無線で高周波電力をバッテリ34側に伝送する構成(送電部23と受電部31)と無線で電池電圧Vjと充電電流Ijの検出値を制御部24に通信する構成(通信ユニット25,35)を除去し、インピーダンス整合器22と整流回路32を直結するとともに電圧・電流検出器33と制御部24を接続して、充電装置4を有線により高周波電力と電池電圧Vj及び充電電流Ijの検出値を伝送する構成にしてもよい。
【0091】
上記実施形態では、被充電体として二次電池を例に説明したが、被充電体は、直流で充電されるものであれば、二次電池に限定されるものではなく、蓄電器であってもよい。また、上記実施形態では、被充電体を充電する充電装置について説明したが、本発明は、直流で電力の供給を受ける負荷に対して、交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を定電流制御若しくは定電圧制御で負荷に供給する直流電力供給装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1 非接触電力伝送システム
2 送電装置
21 高周波電源(電力発生手段)
211 電力検出器(検出手段、反射波電力検出手段)
212 RF検出器(検出手段、交流情報検出手段)
22 インピーダンス整合器(インピーダンス調整手段)
23 送電部
231 インダクタ(送電用コイル)
232 キャパシタ
24 制御部(制御手段、制御目標制御手段)
241,242,246 加算器
243,244,247 誤差増幅部
245 制御切換部
248 出力停止制御部
249 電力演算部(有効電力検出手段、無効電力検出手段、演算手段)
25,35 通信ユニット
3 受電装置
31 受電部
311 インダクタ(受電用コイル)
312 キャパシタ
32 整流回路(電力変換手段)
33 電圧・電流検出器
34 バッテリ(負荷)
4 充電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11