【文献】
富田源他,マンニトールスプレー造粒技術を用いた高含量口腔内崩壊錠の開発,第28回 製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集,2011年10月19日,p.126-127,全文を参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糖及び糖アルコールの少なくともいずれかを含有する糖類と、崩壊剤とを含有する混合物を流動させながら、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかを含有する結合液を噴霧して造粒する口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造方法であって、
前記混合物に対し、結合液を固形分として30質量%〜200質量%噴霧して造粒し、
前記固形分が、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかであることを特徴とする口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(口腔内崩壊錠用直打賦形剤及びその製造方法)
本発明の口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、糖類、崩壊剤、更に必要に応じてその他の添加剤を含む造粒物である。前記造粒物は、少なくとも前記糖類及び前記崩壊剤を含有する混合物に結合液を噴霧しながら造粒して得られる。
本発明の口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造方法は、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかを含有する糖類と、崩壊剤とを含有する混合物を流動させながら、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかを含有する結合液を噴霧して製造する方法である。
【0013】
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、前記糖類及び前記崩壊剤を混合して得られた混合物の表面が前記結合液によりコーティングされているため、前記糖類と前記崩壊剤との結合力が上昇するだけでなく、前記崩壊剤の吸湿性が低下する。それにより、本発明の口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、長期間高湿度下に保存したとしても、硬度が低下せず、硬度安定性に優れる。また、吸湿による崩壊剤の膨張が抑えられることから、錠剤表面の変化が少ない。
【0014】
<混合物>
前記混合物は、前記糖類と、前記崩壊剤とを含み、更に必要に応じてその他の添加剤を含む。
【0015】
<<糖類>>
前記混合物における糖類としては、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかの粉末であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蔗糖、乳糖、果糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、スクロース、グリセリン等の粉末などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、乳糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトールの粉末が好ましく、マンニトールの粉末が特に好ましい。
【0016】
前記混合物における糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤における糖類の含有量は、70質量%〜99質量%となるようにすることが好ましい。
【0017】
前記糖類としては、特に制限はなく、市販品を使用してよい。前記市販品としては、乳糖(DFE社製、商品名「Pharmatose」)、マンニトール(ROQUETTE社製、商品名「Pearlitol 50C」;三菱商事フードテック株式会社製、商品名「マンニット」)、エリスリトール(三菱化学フーズ株式会社製、商品名「エリスリトール」)、キシリトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「キシリット」)、ソルビトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「ソルビット」)、マルチトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「アマルティ」、「レシス」)、ラクチトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「ミルヘン」)などが挙げられる。
【0018】
<<崩壊剤>>
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースNa、カルボキシメチルセルロースCa等)等のセルロース誘導体、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、コーンスターチ等のデンプンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)が、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で好ましく、クロスポビドンと、コーンスターチとの併用が、吸湿時の錠剤の硬度低下をより防ぐことができる点で、好ましい。
【0019】
前記崩壊剤の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以上50μm以下が特に好ましい。
【0020】
前記混合物における崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤における崩壊剤の含有量は、1質量%〜30質量%となるようにすることが好ましい。
【0021】
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品として、クロスポビドン[(ISP社製、商品名「ポリプラスドンXL」、「ポリプラスドンXL−10」)、(BASF社製、商品名「コリドンCL」、「コリドンCL−F」、「コリドンCL−SF」)]、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名「L−HPC」)、コーンスターチ(日本食品化工株式会社製、商品名「コーンスターチW」)などが挙げられる。
【0022】
<<その他の添加剤>>
前記混合物におけるその他の添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動化剤、甘味剤、滑沢剤、吸湿剤、除湿剤、コーティング剤、色素、矯味矯臭剤、溶解補助剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記混合物におけるその他の添加剤は、後述する結合液に溶解乃至懸濁させて使用してもよい。
前記その他の添加剤の前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
<結合液>
前記結合液は、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかを含み、更に必要に応じてその他の添加剤を含む。
前記結合液は、崩壊剤を含まないことが好ましい。
前記結合液としては、糖及び糖アルコールの少なくともいずれかを含有する溶液であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蔗糖、乳糖、果糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、スクロース、グリセリン等の溶液などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、乳糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトールの溶液が好ましく、マンニトールの溶液がより好ましい。
【0024】
前記結合液の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記糖及び糖アルコールの少なくともいずれかの粉末を溶媒に溶解させることにより調製する方法などが挙げられる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記糖及び糖アルコールの少なくともいずれかの溶解性が良好となる点で、水が好ましい。
【0025】
前記結合液における前記糖及び糖アルコールの少なくともいずれかの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、マンニトールの場合は40質量%〜60質量%が好ましい。
【0026】
前記結合液の前記混合物(少なくとも前記糖類及び前記崩壊剤を含有する混合物)に対する噴霧固形分量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、30質量%〜200質量%が好ましい。
【0027】
前記結合液としては、特に制限はなく、市販品を使用してよい。前記市販品としては、乳糖(DFE社製、商品名「Pharmatose」)、マンニトール(ROQUETTE社製、商品名「Pearlitol 50C」;三菱商事フードテック株式会社製、商品名「マンニット」)、エリスリトール(三菱化学フーズ株式会社製、商品名「エリスリトール」)、キシリトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「キシリット」)、ソルビトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「ソルビット」)、マルチトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「アマルティ」、「レシス」)、ラクチトール(三菱商事フードテック株式会社製、商品名「ミルヘン」)などが挙げられ、これらの市販品(粉末)を、親水性溶媒等を用いて溶解液とすることにより調製したものを使用することができる。
【0028】
前記糖類と前記結合液との組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、糖アルコールどうしが同種であることが好ましく、前記糖類としてマンニトール粉末と、前記結合液として、マンニトール溶液との組合せがより好ましい。
【0029】
<口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の粉体物性>
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の累積分布図における粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、D
10値としては、30μm〜90μmが好ましく、D
50値としては、70μm〜150μmが好ましく、D
90値としては、160μm〜250μmが好ましい。なお、前記D
50値は、前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の体積平均粒子径に相当する。
前記粒径は、例えば、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA(日機装株式会社製)により測定することができる。
【0030】
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の篩目75μmの通過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、5%〜50%が好ましい。
【0031】
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の嵩密度(ルーズ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、0.4g/mL〜0.6g/mLが好ましい。
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の嵩密度(タップ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、0.5g/mL〜0.7g/mLが好ましい。
前記嵩密度(ルーズ)、及び嵩密度(タップ)は、例えば、A.B.D粉体特性測定器(筒井理化学器械株式会社製)により測定することができる。
【0032】
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤(造粒物)の安息角としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度安定性及び口腔内崩壊性に優れる口腔内崩壊錠を製造できる点で、30°〜40°が好ましい。
前記安息角は、例えば、特開平6−205959号公報に記載されている野上・杉原法により測定することができる。
【0033】
<口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造方法>
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造方法としては、前記糖類及び前記崩壊剤に前記結合液を含む液を噴霧しながら流動層造粒して得られる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
−流動層造粒−
前記流動層造粒は、前記結合液を噴霧することにより前記糖類及び前記崩壊剤の粒子間に液体架橋の凝集を起こさせて造粒する方法であり、流動層造粒装置により実施することができる。
【0035】
前記流動層造粒装置は、流動化(浮遊流動)された粉粒体(前記糖類と前記崩壊剤とを含有する混合物)に前記結合液をスプレーし、前記粉粒体を前記結合液によりコーティングして造粒する装置である。
【0036】
前記流動層造粒装置の市販装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フローコーター、スパイラフロー、グラニュレックス(いずれも、フロイント産業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
<口腔内崩壊錠用直打賦形剤の効果>
本発明の口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、薬剤成分と混合して打錠するだけで、錠剤として必要とされる、錠剤成形性、口腔内崩壊性、摩損性、薬物含量均一性等の性能を維持しつつ、長期間保存しても硬度及び口腔内崩壊の安定性に優れる口腔内崩壊錠を提供することができる。また、本発明の口腔内崩壊錠用直打賦形剤を用いることにより、口腔内崩壊錠における薬剤成分の配合量を簡便に調節することができるため、従来と比して口腔内崩壊錠の製剤設計が容易となる。
【0038】
(口腔内崩壊錠)
本発明の口腔内崩壊錠は、上述の口腔内崩壊錠用直打賦形剤、及び薬剤成分を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0039】
<口腔内崩壊錠用直打賦形剤>
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、上述の口腔内崩壊錠用直打賦形剤を用いる。
前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤の前記口腔内崩壊錠における含有量としては、20質量%〜99.9質量%が好ましい。
【0040】
<薬剤成分>
前記薬剤成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高血圧薬、狭心薬、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬、鎮痛鎮痙薬等に使用される薬剤成分などが挙げられ、具体的には、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド、アカルボースなどが挙げられる。
【0041】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、前記口腔内崩壊錠に用いられる成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、滑沢剤、流動化剤、甘味剤などが好適に挙げられ、この他にも、吸湿、除湿剤、コーティング剤、色素、矯味矯臭剤、溶解補助剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、硬化油などが挙げられる。
【0043】
前記流動化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性シリカ、疎水性シリカ、ケイ酸カルシウム、アルキルホスフェイト(PAP)、水溶性高分子化合物、無水リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0044】
前記甘味剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスパルテーム、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、パラチノースなどが挙げられる。
【0045】
<口腔内崩壊錠の製造方法>
前記口腔内崩壊錠の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記口腔内崩壊錠用直打賦形剤と前記薬剤成分とを混合した後、打錠して錠剤化することにより製造する方法などが挙げられる。この際、使用する混合機や打錠機などは一般的に用いられるものを使用することができる。
【0046】
<口腔内崩壊錠の使用形態>
前記口腔内崩壊錠の使用形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水なしで経口投与する方法、水と共に経口投与する方法などが挙げられる。
【0047】
<口腔内崩壊錠の効果>
本発明の口腔内崩壊錠は、錠剤として必要とされる、錠剤成形性、口腔内崩壊性、摩損性、薬物含量均一性等の性能を維持しつつ、長期間保存しても硬度及び口腔内崩壊の安定性に優れる。また、本発明の口腔内崩壊錠用直打賦形剤を用いることにより、口腔内崩壊錠における薬剤成分及び崩壊剤の配合量を簡便に調節することができるため、従来と比して口腔内崩壊錠の製剤設計が容易となる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明の実施例等を説明するが、本発明は、これらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0049】
(試験例1:造粒方法の違いによる比較試験)
試験例1では、口腔内崩壊錠用直打賦形剤を製造するに際して、造粒方法の違い(崩壊剤を投入するタイミングの違い)により、得られた口腔内崩壊錠用直打賦形剤の物性、並びに該口腔内崩壊錠用直打賦形剤を用いて製造した口腔内崩壊プラセボ錠の硬度安定性及び口腔内崩壊性がどのように影響するのかについて、その違いを評価した。
【0050】
−口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造−
口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、糖類及び崩壊剤をフローコーター(FLO−5、フロイント産業株式会社製)内にて結合液を噴霧しながら流動層造粒することにより製造した。用いた材料を表(1−1)に示し、用いた材料の組成を表(1−2)に示し、得られた直打賦形剤の粉体物性を表(1−3)及び
図1Aに示した。
【0051】
−比較口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造−
比較口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、糖類を造粒装置(フローコーター(FLO−5、フロイント産業株式会社製))内に添加して結合液を4kg噴霧した後に、崩壊剤、更に必要に応じて流動化剤を造粒装置に添加して、残りの結合液を噴霧して流動層造粒することにより製造(後添加)した。用いた材料を表(1−1)に示し、組成を表(1−2)に示し、得られた直打賦形剤の粉体物性を表(1−3)に示した。
【0052】
【表1-1】
【0053】
【表1-2】
【0054】
【表1-3】
【0055】
−口腔内崩壊プラセボ錠の製造−
口腔内崩壊錠は、表(1−4)に記載の直打賦形剤及び滑沢剤を表(1−4)に記載の条件で混合して、得られた混合物(500g)を表(1−4)に記載の条件で打錠することにより製造した。
【0056】
−比較口腔内崩壊プラセボ錠の製造−
比較口腔内崩壊錠は、表(1−4)に記載の直打賦形剤及び滑沢剤を表(1−4)に記載の条件で混合して、得られた混合物(500g)を表(1−4)に記載の条件で打錠することにより製造した。
【0057】
【表1-4】
【0058】
(試験例1の評価)
−錠剤成形性−
錠剤成形性の評価は、得られた「口腔内崩壊プラセボ錠」及び「比較口腔内崩壊プラセボ錠」について、硬度を測定することにより行った。測定機にはシュロイニゲル錠剤硬度計8M(フロイント産業株式会社製)を用いた。結果を
図1Aに示した。
【0059】
−硬度安定性−
硬度安定性の評価は、各プラセボ錠(硬度50N前後のものを使用)を25℃、80%RHの環境(恒湿塩:KBr)で開放状態にて1週間保管し、硬度(n=3)の変化を確認することにより行った。結果を
図1Bに示した。
【0060】
−結果−
図1A及び
図1Bにより、[口腔内崩壊(OD)プラセボ錠1]は、成形性が高く、高湿度下においても硬度が低下しにくいことがわかった。一方、[比較口腔内崩壊(OD)プラセボ錠1]及び[比較口腔内崩壊(OD)プラセボ錠2]は、高湿度下における硬度低下が大きいことがわかった。よって、硬度安定性及び口腔内崩壊性を良好に保つためには、前記糖類及び前記崩壊剤を混合して得られた混合物に対し、前記結合液を固形分として20質量%以上噴霧する必要があることがわかった。
【0061】
(試験例2:単純混合品との比較試験)
試験例2では、本願発明の「口腔内崩壊錠用直打賦形剤」を用いて製造した「口腔内崩壊錠」、及び「比較口腔内崩壊錠用直打賦形剤」を用いて製造した「比較口腔内崩壊錠」の硬度安定性及び薬物含量均一性の違いを評価した。
【0062】
−口腔内崩壊錠の製造−
口腔内崩壊錠は、表(2−1)に記載の材料を表(2−2)に記載の条件で混合して打錠することにより製造した。なお、表(2−1)中のOD錠用直打賦形剤は、試験例1で製造したもの、即ち、「糖類(糖アルコール(D−マンニトール))」及び「崩壊剤(クロスポビトン)」を造粒装置内にて結合液を噴霧しながら流動層造粒することにより製造したものを使用した。
【0063】
−比較口腔内崩壊錠の製造−
比較口腔内崩壊錠は、表(2−1)に記載の材料を表(2−2)に記載の条件で混合して打錠することにより製造した。なお、表(2−1)中の比較OD錠用直打賦形剤は、「糖類(糖アルコール(D−マンニトール))」と「崩壊剤(クロスポビトン)」とを9:1で混合(手混合、3分間)することにより得た。
【0064】
【表2-1】
【0065】
【表2-2】
【0066】
(試験例2の評価)
−硬度安定性−
硬度安定性の評価は、得られた「口腔内崩壊(OD)錠」及び「比較口腔内崩壊(OD)錠」を25℃の開放状態にて、湿度の異なる環境下(55%RH(恒湿塩:Mg(NO
3)
2)、70%RH(恒湿塩:KI)、80%RH(恒湿塩:KBr))にて7日間保管し、硬度(n=3)の変化を確認することにより行った。結果を
図2A〜
図2Cに示した。
【0067】
−薬物含量均一性−
口腔内崩壊錠の薬物含量均一性の評価は、得られた「口腔内崩壊錠」及び「比較口腔内崩壊錠」を第15改正日局方に基づき、判定値(n=10)を算出することにより行った。結果を表(2−3)に示した。
【0068】
【表2-3】
【0069】
−結果−
図2A〜
図2Cにより、[口腔内崩壊(OD)錠1]が最も硬度安定性に優れることがわかった。また、表(2−3)より、[口腔内崩壊(OD)錠1]が最も薬物含量均一性に優れることがわかった。[口腔内崩壊(OD)錠1]において使用する[口腔内崩壊(OD)錠用直打賦形剤1]は、糖類及び崩壊剤を混合して得られた混合物の表面が、結合液によりコーティングされているため、糖類と崩壊剤との結合力が上昇するだけでなく、崩壊剤の吸湿性が低下することがわかった。それにより、本発明の[口腔内崩壊(OD)錠1]は、長期間高湿度下に保存したとしても、硬度が低下せず、硬度安定性に優れることがわかった。
【0070】
(試験例3:崩壊剤水分散液との比較試験)
試験例3では、本願発明の「口腔内崩壊錠用直打賦形剤」を用いて製造した「口腔内崩壊錠」、及び特開2010−189384号公報において開示の「比較口腔内崩壊錠用直打賦形剤」を参考に、崩壊剤水分散液を用いて製造した「比較口腔内崩壊錠」の硬度安定性の違いを評価した。
【0071】
−口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造−
口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、糖類及び崩壊剤を造粒装置内にて結合液を噴霧しながら流動層造粒することにより製造した。用いた材料を表(3−1)に示し、製造条件を表(3−2)に示し、得られた直打賦形剤の粉体物性を表(3−3)及び
図3A〜
図3Bに示した。
【0072】
−比較口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造−
比較口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、糖類を、造粒装置内にて崩壊剤を含む水分散液を結合液として噴霧しながら流動層造粒することにより製造した。用いた材料を表(3−1)に示し、処方を表(3−2)に示し、得られた直打賦形剤の粉体物性を表(3−3)及び
図3A〜
図3Bに示した。
【0073】
【表3-1】
【0074】
【表3-2】
【0075】
【表3-3】
【0076】
−口腔内崩壊プラセボ錠の製造−
口腔内崩壊錠は、表(3−4)に記載の直打賦形剤及び滑沢剤を表(3−4)に記載の条件で混合して、得られた混合物(500g)を表(3−4)に記載の条件で打錠することにより製造した。
【0077】
−比較口腔内崩壊プラセボ錠の製造−
比較口腔内崩壊錠は、表(3−4)に記載の直打賦形剤及び滑沢剤を表(3−4)に記載の条件で混合して、得られた混合物(500g)を表(3−4)に記載の条件で打錠することにより製造した。
【0078】
【表3-4】
【0079】
(試験例3の評価)
−錠剤成形性−
錠剤成形性の評価は、得られた「口腔内崩壊(OD)プラセボ錠」及び「比較口腔内崩壊(OD)プラセボ錠」について、硬度を測定することにより行った。測定機にはシュロイニゲル錠剤硬度計8M(フロイント産業株式会社製)を用いた。結果を表(3−5)、(3−6)、及び
図3C〜
図3Dに示した。
【0080】
−硬度安定性−
硬度安定性の評価は、得られた「口腔内崩壊プラセボ錠」及び「比較口腔内崩壊プラセボ錠」の硬度50N〜60Nのものを使用し、該プラセボ錠を25℃の開放状態にて、湿度の異なる環境下(55%RH(恒湿塩:Mg(NO
3)
2)、75%RH(恒湿塩:NaCl)にて7日間保管し、硬度の変化を確認することにより行った。結果を
図3E〜
図3Fに示した。
【0081】
【表3-5】
【0082】
【表3-6】
【0083】
−結果−
表(3−5)、(3−6)、及び
図3C〜
図3Dより、結合液として、糖アルコール(マンニトール)を用いたプラセボ錠は、成形性に優れることがわかった。これは、
図3A〜
図3Bからもわかるように、結合液として糖アルコール(マンニトール)を用いたプラセボ錠は、他の結合液を用いたプラセボ錠と比較して、糖類及び崩壊剤の表面が糖アルコール(マンニトール)によりコーティングされることにより、糖類と崩壊剤の結合力が上昇したため、成形性に優れる結果となったことが示唆された。
また、
図3E〜
図3Fより、結合液として糖アルコール(マンニトール)を用いたプラセボ錠は、高湿度環境下においても、一定の硬度を安定的に有することがわかった。また、他の結合液を用いたプラセボ錠と比較して、錠剤表面の凹凸が見られず、吸湿による錠剤表面の変化が低いこともわかった。これらの結果から、結合液として糖アルコール(マンニトール)を用いたプラセボ錠は、硬度安定性に優れることがわかった。更に、
図3Fより、崩壊剤として、クロスポビドンと、コーンスターチとを併用したODプラセボ錠4では、クロスポビドンのみを用いたODプラセボ錠3よりも吸湿時の硬度低下をより防ぐことができることがわかった。
【0084】
(試験例4:崩壊剤の粒径による優位性試験)
試験例4では、本願発明の「口腔内崩壊錠用直打賦形剤」のうち、崩壊剤の粒径の違いによる錠剤安定性及び硬度安定性の優位性を評価した。
【0085】
−口腔内崩壊錠用直打賦形剤の製造−
口腔内崩壊錠用直打賦形剤は、糖類及び崩壊剤を造粒装置内にて結合液を噴霧しながら流動層造粒することにより製造した。用いた材料を表(4−1)に示し、組成を表(4−2)に示し、得られた直打賦形剤の粉体物性の結果を表(4−3)に示した。
【0086】
【表4-1】
【0087】
【表4-2】
【0088】
【表4-3】
【0089】
−口腔内崩壊錠の製造−
口腔内崩壊錠は、表(4−4)に記載の材料を表(4−5)に記載の条件で混合して打錠することにより製造した。
【0090】
【表4-4】
【0091】
【表4-5】
【0092】
(試験例4の評価)
−錠剤成形性−
錠剤成形性の評価は、表(4−5)に記載する製造条件にて得られた錠剤の硬度(n=20)を測定することにより行った。測定機にはシュロイニゲル錠剤硬度計8M(フロイント産業株式会社製)を用いた。結果を
図4Aに示した。
【0093】
−摩損性−
摩損性の評価は、表(4−5)に記載する製造条件にて得られた錠剤の摩損度を測定することにより行った。結果を
図4Bに示した。
前記摩損度は、錠剤摩損度試験機(萱垣医理科工業株式会社)により測定した。
【0094】
−口腔内崩壊性−
口腔内崩壊性の評価は、表(4−5)に記載する製造条件にて得られた錠剤の口腔内崩壊時間(n=1)を測定することにより行った。結果を
図4Cに示した。
【0095】
−硬度安定性及び口腔内崩壊時間安定性−
硬度安定性及び口腔内崩壊時間安定性の評価は、各口腔内崩壊錠(硬度50N前後のものを使用)を、25℃で55%RHの環境(恒湿塩:Mg(NO
3)
2)、25℃で75%RHの環境(恒湿塩:NaCl)で開放状態にて1週間保管し、硬度(n=5)及び口腔内崩壊時間の変化(n=5)を確認することにより行った。結果を
図4D〜
図4Eに示した。
【0096】
−結果−
図4A〜
図4Eより、崩壊剤(クロスポビドン)として、50μm以下の体積平均粒子径を有する崩壊剤、より好ましくは25μm〜35μmの範囲に体積平均粒子径を有する崩壊剤を用いることにより、口腔内崩壊性、及び硬度安定性に優れることがわかった。