特許第6040222号(P6040222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6040222コーナー適合プリフォームおよびその形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040222
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】コーナー適合プリフォームおよびその形成方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20161128BHJP
   D03D 3/00 20060101ALI20161128BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   D03D1/00 A
   D03D3/00
   C08J5/04
【請求項の数】24
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-503947(P2014-503947)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公表番号】特表2014-511948(P2014-511948A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】US2012032154
(87)【国際公開番号】WO2012138748
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/079,503
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508135080
【氏名又は名称】アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088029
【弁理士】
【氏名又は名称】保科 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリング,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】マクレイン,マイケル
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0247034(US,A1)
【文献】 特表2011−516743(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0105269(US,A1)
【文献】 特表2012−507640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08−15/14
C08J5/04−5/10
5/24
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成および条件を備える、コーナー適合プリフォーム。
・横糸ヤーンあるいは繊維の1もしくは2以上の層と織り込んだ、縦糸ヤーンあるいは繊維の2もしくは3以上の層。
・縦糸ヤーンあるいは繊維と横糸ヤーンあるいは繊維との織込みを備えるベース層。
・そのベース層から伸び、しかも、そのベース層に一体に織られる、1もしくは2以上のフランジあるいは脚。
・前記1もしくは2以上のフランジあるいは脚、およびベース層を、コーナー周りに折ること。
・前記1もしくは2以上のフランジあるいは脚のそれぞれは、それらフランジあるいは脚の内部に前記コーナー周りに織っていない連続した縦糸ヤーンによる強化の部分を少なくとも一つ含み、前記部分によって、前記フランジあるいは脚を前記コーナー周りに折ることができるように構成していること。
【請求項2】
前記プリフォームは、平織りである、請求項1のプリフォーム。
【請求項3】
前記プリフォームは、前記ベース層から伸びる2もしくは3以上のフランジあるいは脚を分離するクレビスをさらに備える、請求項1のプリフォーム。
【請求項4】
前記1もしくは2以上のフランジあるいは脚を、90°の角度、またはその90°よりも小さな角度あるいは大きな角度で折る、請求項1のプリフォーム。
【請求項5】
前記1もしくは2以上のフランジあるいは脚を、曲がりあるいは湾曲を形成するように折る、請求項1のプリフォーム。
【請求項6】
前記プリフォームは、「パイ」、「T」あるいは「L」の形のいずれかである、請求項1のプリフォーム。
【請求項7】
前記縦糸および横糸のヤーンあるいは繊維は、ガラス、炭素、セラミックス、アラミド、ポリエステル、ナイロン、およびレーヨンからなるグループの中の材料から作る、請求項1のプリフォーム。
【請求項8】
前記縦糸および/または横糸の繊維は、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ、ガラス、あるいはセラミックスである、請求項7のプリフォーム。
【請求項9】
請求項1のプリフォームを備える、三次元の繊維強化コンポジット構造物。
【請求項10】
マトリックス材料をさらに備える、請求項9のコンポジット構造物。
【請求項11】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、およびセラミックスらなるグループの中から選択する、請求項10のコンポジット構造物。
【請求項12】
次の各工程を備える、コーナー適合プリフォームの形成方法。
・横糸ヤーンあるいは繊維の1もしくは2以上の層と、縦糸ヤーンあるいは繊維の2もしくは3以上の層とを織り込むことにより、ベース層およびそのベース層から伸びる1もしくは2以上のフランジあるいは脚を形成する工程であり、そのとき、前記ランジあるいは脚を前記ベース層に一体に織る。
・前記ランジあるいは脚のそれぞれの内に、少なくとも一つの部分として、前記横糸ヤーンあるいは繊維と織らない連続的な縦糸ヤーンあるいは繊維による強化を与える工程。
・前記1もしくは2以上のフランジあるいは脚およびベース層を折ることにより、コーナーを形作る工程。
【請求項13】
前記少なくとも一つの部分は、プリフォームの前記1もしくは2以上のフランジあるいは脚をコーナー周りに折るためのヒンジである、請求項12の方法。
【請求項14】
織っていない縦糸ヤーンあるいは繊維を、前記脚あるいはフランジの織り部分を通して引ことにより、前記コーナーにおける前記織っていない縦糸ヤーンあるいは繊維の余分な長さを取り除き、コーナー周りを強化する連続した縦糸ヤーンあるいは繊維を伴うプリフォームを生み出す工程をさらに備える、請求項12の方法。
【請求項15】
前記プリフォームは、機で織る、請求項12の方法。
【請求項16】
前記ベース層から伸びる2もしくは3以上のフランジあるいは脚は、前記2もしくは3以上のフランジもしくは脚の間のクレビスを形作る、請求項12の方法。
【請求項17】
前記ランジあるいは脚を、90°の角度、またはその90°よりも小さな角度あるいは大きな角度で折る、請求項12の方法。
【請求項18】
前記ランジあるいは脚を、曲がりあるいは湾曲を形成するように折る、請求項12の方法。
【請求項19】
前記プリフォームは、「パイ」、「T」あるいは「L」の形のいずれかである、請求項12の方法。
【請求項20】
前記縦糸および横糸のヤーンあるいは繊維は、ガラス、炭素、セラミックス、アラミド、ポリエステル、ナイロン、およびレーヨンからなるグループの中の材料から作る、請求項12の方法。
【請求項21】
前記縦糸および/または横糸のヤーンあるいは繊維は、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ、ガラス、あるいはセラミックスである、請求項12の方法。
【請求項22】
請求項12の方法を備える、三次元の繊維強化コンポジット構造物の形成方法。
【請求項23】
前記プリフォームをマトリックス材料で少なくとも部分的に含浸する工程をさらに備える、請求項22の方法。
【請求項24】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、およびセラミックスらなるグループの中から選択する、請求項23の方法。
【発明の詳細な説明】
【引用による組み入れ】
【0001】
ここで引用するすべての特許、特許出願、文書、文献、製造者の使用説明書、解説、製品仕様書、およびここで述べる製品についての製品説明書を引用によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【技術分野】
【0002】
この発明は、一般的には、織りプリフォームに関し、特には、強化コンポジット材料に用いる織りプリフォームに関する。より詳しくは、この発明は、コーナー適合プリフォームに関し、そのコーナーで連続的な繊維強化を伴って、湾曲あるいは角をなす形に形作ることができる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
構造的な構成要素あるいは部品を製造するために、強化コンポジット材料を用いることは、今や一般的である。特に、軽量、強固、丈夫、耐熱性、および形作る上での適合性といった好ましい特性が求められるところでは大きな利点を得ている。そのような構成要素あるいは部品は、たとえば、航空、航空宇宙産業、人工衛星、高性能レクレーション製品、およびその他の分野で用いられる。
【0004】
そのような構成要素あるいは部品は、典型的に、マトリックス材料の中に埋め込んだ強化素材から構成される。強化の構成部分は、ガラス、炭素、セラミックス、アラミド、ポリエステル、および/または、物理的、熱的、化学的および/またはその他の好ましい特性、第1には応力に対する大きな耐久性を示すその他の材料から構成される。
【0005】
そのような強化材料、それらは結局のところ完成品の構成要素になるのであるが、それらを使用するとき、たとえば非常に大きな強度のようなそれら強化素材の望ましい特性が、完成したコンポジット部品に授けられることになる。典型的な構成要素である強化材料は、織られたり編まれたり、あるいはその他のやり方で強化プリフォームのための好ましい形状および形に形成される。通常、選択理由である強化材料の特性が最大限に活用されるように注意が図られる。また、そのような強化プリフォームについては、マトリックス材料と組み合わせることにより必要な完成品を得、あるいは、完成品の最終生産のために役立つ在庫品を得る。
【0006】
必要な強化プリフォームを構成した後、マトリックス材料をプリフォームへと導く。それにより、強化プリフォームは、マトリックス材料で包まれ、マトリックス材料は強化プリフォームの構成要素の間のすき間部分を埋める。マトリックス材料としては、たとえば、エポキシ、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミックス、炭素および/またはその他の材料で、必要とする物理的、熱的、化学的および/または他の特性を示すものなど、いろいろな材料を広く適用することができる。マトリックスとして用いる材料としては、強化プリフォームの材料と同じものでも良いし、異なるものでも良く、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似したものでも良いし、類似しないものでも良い。しかし、通常、それらは強化プリフォームと同じ材料ではなく、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似しない。なぜなら、第1にコンポジットを用いる通常の目的は、ただ一つの構成材料だけでは得ることができない組合せ特性を完成品で得ることにあるからである。強化プリフォームおよびマトリックス材料は、そのように組み合わされた後、熱硬化処理あるいは他の公知の方法で同じ作業工程において硬化および安定化され、さらに、目的とする構成部品を製造するための他の作業工程に入る。ここで、そのように硬化した時点において、マトリックス材料の固体化したものが、通常、強化材料(たとえば、強化プリフォーム)に非常に強く付着していることに気付くことが大事である。結局、完成品上の応力が、繊維間の接着剤として機能するそのマトリックス材料を特に通して、補強された強化プリフォームの構成材料に有効に移され保持される。強化プリフォームに破損や途切れがあれば、完成品に加わる応力を移したり耐えるという、プリフォームの能力を制限する。
【0007】
構成要素あるいは部品にしばしば求められることは、たとえば平板、薄板、長方形あるいは正方形の立体などの幾何学的に単純な形状以外のものを製造することである。これに応えるための一つの方法は、そのような基本的な幾何学形状を組み合わせることにより、求められる複雑な形態にすることである。そのような典型的な組合せの一つは、上で述べたようにして作った強化プリフォームを互いに角度をもって(典型的には、直角)接合することにより作ったものである。そのような角度をもって強化プリフォームを接合し配列する普通の目的は、1または2以上の端壁やたとえば「T」交差を含む強化プリフォームを形作る狙いとする形を作り出すこと、あるいは、強化プリフォームの組合せで得たものおよびコンポジット構造について、圧力や張力などの外力を受けた場合でもたわみや破損に耐えられるように強化することである。とにかく、関連する動機は、構成する構成要素間の各連結をできるだけ強固にすることである。強化プリフォームの構成要素それ自体に求められる非常に大きな強度が与えられるとき、構造上の「チェーン」における「弱いリンク」となるのが、実際上、連結における弱さである。
【0008】
交差する構成の一例について、USP第6,103,337号が示している。その文献に示す内容は、参照によってこの中に含ませる。その文献においては、2つの強化板(補強プレート)をT型に結合する有効な方法を示している。具体的には、第1の強化パネルの端に第2の強化パネルを配置するようにして、両パネルを接合するようにしている。
【0009】
今まで、そのような結合を作るための他のいろいろな方法が提案されている。パネル構成要素と、角度をもって置く強化のための構成要素とを互いに別々に作り硬化することが提案されている。後者の構成要素は、単一のパネル接触面をもつか、あるいは、一端が二股に分かれて分岐した同一平面上の2つのパネル接触面をもっている。そして、2つの構成要素は、熱硬化接着剤あるいは他の接着材料を用いて、強化のための構成要素のパネル接触面を他の構成要素の接触面に接着によって結合する。しかし、硬化したパネルに対しあるいは複合構造の外皮に対し張力がかかると、結合の有効な強度が接着剤の強度であり、マトリックス材料あるいは強化材料のそれでないことから、受け入れることができないような小さな値の負荷が「はがし(ピ−ル)」力となり、それが強化のための構成要素をパネルとの界面でパネルから分離してしまう。
【0010】
そのような両構成要素の界面に金属ボルトやリベットを用いることはできない。なぜなら、そのような付加物があると、複合構造自体の完全な形の少なくとも一部を破壊し弱めてしまうし、重さを増すことになるし、そのような構成要素と周囲の材料との熱膨張係数に違いを生じてしまうからである。
【0011】
この問題を解決する他の方法では、結合領域の全域に高い強度の繊維を加えるという考え方を基礎にしている。すなわち、2つの構成要素の一方を他方に縫い、縫い糸によってそのような強化繊維が結合に加わるようにしている。USP第4,331,495号がそのような方法の一つを示し、また、USP第4,256,790号がそれを分割したものである。これらの特許は、繊維層を接着によって結合した第1および第2の複合パネル間の接合について示している。第1のパネルは、一端で二股に分かれ、従来技術のように同一平面上の2つのパネル接触面をもつ。その第1のパネルと第2のパネルとを結合するため、両パネルを通して未硬化のフレキシブルな複合糸を縫い込んでいる。その後、両パネルおよび縫い込んだ糸は、同時に硬化、つまり「共に硬化」される。また、USP第5,429,853号が、結合強度を改良する他の方法を示している。
【0012】
今までも強化のための複合物を構造的に一体化しようとする改良がなされ成功しているが、特にUSP第6,103,337号のものでは、接着剤あるいは機械的な結合部材を用いる場合とは異なる方法における問題に取り組みそれを改良するという要求がある。この点から、特殊化した専用の機械によって、三次元(「3D」)の織り構造を作り出す方法が考えられる。しかし、それにはかなりの費用がかかるし、しかも、織機で単純な構造を作り出すという要求が強く求められるところである。この事実にもかかわらず、繊維強化コンポジットの構成要素に加工することができる3Dプリフォームは、魅力的である。なぜなら、それらの構成要素は、今までの二次元の積層コンポジットよりも大きな強度を提供するからである。それらのプリフォームは、面外荷重を支えるコンポジットを必要とする用途に特に有用である。しかし、上に述べた今までのプリフォームでは、大きな面外荷重に耐える上、自動織機で織る上で、およびいくつかの場合に、プリフォームに厚さの異なる部分を得る上で能力的な制限がある。
【0013】
他の方法として、二次元(「2D」)の構造に織り、それを所定の3D形に折り込むことが考えられる。しかし、2Dのプリフォームを3D形に折り込むとき、当初の試みでは、プリフォ−ムを折り込むときに、一般にところどころゆがめてひずみを生じてしまうことになった。ひずみが生じる原因は、織られた繊維の長さがプリフォ−ムを折り込むときの長さと異なるからである。これによって、織られた繊維の長さが短すぎる領域には、くぼみや波状を生じ、また、織られた繊維の長さが長すぎる領域には、曲げを生じる。3Dプリフォーム織り構造物の一例、そのものでは、プリフォームを折ったとき領域に波状あるいはループを生じるだろうが、USP第6,874,543号がその一例を示す。そのすべての内容を参照によってここに組み込む。
【0014】
折りによるゆがみの問題を解決する一つの方法を、米国特許第6,446,675号が示す。その特許のすべての内容を参照によってここに組み入れる。この特許文献は、T型あるいはパイ型に折ることができる2D構造を備える。T型あるいはパイ型と称するのは、プリフォームの折り部分が、ベースあるいは母材に直立する1あるいは2の脚あるいはフランジ(Tおよびパイの形の)を生み出すからである。これを成し遂げるため、織り時に繊維長さを整えることにより、折りの場所で上述したくぼみやゆがみが生じるのを防ぐ。織り処理(あるいは工程)のとき、折り領域において、ある繊維は長く織り、他の繊維は短く織る。それらの短い繊維および長い繊維は、その後、プリフォームを折るとき、長さが一様になり、折りにスムーズな変化を生じる。
【0015】
折ったプリフォームの利点は、強化すべきパネルと強化パネルとの間の結合の強さである。それらを一緒に織るので、両パネルは、強化材料と最終のコンポジットのマトリックス材料とを共有し、単一の構造を作り出す。一体に織った強化フランジつまり脚と母材材料つまりベースとの間の連結は、今までの強化におけるように、接合強度を接着剤の強度だけに頼るような、もはや弱いリンクではない。むしろ、プリフォームの繊維は、脚とベースとを一緒に一体的に織るのである。
【0016】
しかし、湾曲あるいは急な角のような複雑な形の強化がしばしば求められる。折ったT型あるいはパイ型の強化には、湾曲あるいは角の面に適合させるため、脚にダーツを設けることが必要である。折りプリフォームのフランジ材料が湾曲あるいは角の形になるので、湾曲する外側と内側とで、湾曲面の長さが必然的に異なる。曲げるとき、湾曲する外側、つまりより大きな径をもつ面の円弧の長さは増大し、それに対し、湾曲する内側では、円弧の長さが減少する。一般的な折りプリフォームの脚は、湾曲あるいは角の面に適合させることが必要であるため、長さを変えることができない。湾曲あるいは角の面に適合させるため、脚にダーツを設けること、すなわち、脚を変化する円弧長さに合致させるように裁断することが必要である。
【0017】
一般に、長さの変化に適合させるため、裁断は湾曲半径の部分に沿うが、その他、湾曲半径に沿わないように行うこともある。湾曲したプリフォームの内側の長さが減少することを許すため、脚を裁断し、しかも、裁断した端を重なり合わせるか、あるいは、余分な材料を取り除く。同様に、湾曲した外側の長さが大きくなることに合わせるため、脚を裁断し、脚の裁断端間に三角形のギャップを生じるようにする。いずれの配置あるいは配列においても、ダーツが各脚の強化材料の連続性を損なう。T型あるいはパイ型の3Dプリフォームの脚にダーツを設けることは、プリフォームの荷重運搬能力をひどく落とす。それは、ダーツによって、コーナー周辺の主要な荷重経路を切断していたからである。
【発明の概要】
【0018】
それゆえに、在来式の織機で織ることができ、コーナーに適合する3つの面のすべてを強化する繊維を備える織りコーナープリフォームあるいはフィッテングに対する要望がある。
【0019】
したがって、この発明の目的は、ダーツを必要とせずに全ての面を結びつける連続した糸(ヤーン)を備えるコーナーフィッテング、およびその形成方法を提供することにある。
【0020】
また、この発明の他の目的は、平らな織りファブリックが作る面の全てを結びつける連続した糸(ヤーン)を備えるコーナーフィッテング、およびその形成方法を提供することにある。
【0021】
この発明の一つの形態は、織りベースと、そのベースに一体的に織った1もしくは2以上のフランジあるいは脚を含むコーナー適合プリフォームである。そのプリフォームは、脚あるいはフランジ内に、特に作り出した区域を備える。その区域には、織らない連続した縦糸がある。脚あるいはフランジに織っていない区域は、プリフォームのフランジをコーナー周りに折るためのヒンジとなる。折った後、織っていない余分な縦糸は、脚あるいはフランジの織り部分を通して引き戻され、コーナー周りを強化する連続した縦糸を伴うプリフォームを生み出す。
【0022】
この発明の別の形態は、コーナー適合プリフォームの形成方法であり、その方法は、ベースあるいは母材を、そのベースから伸びる1もしくは2以上のフランジあるいは脚と一体的に織る工程を備える。その平らな織りプリフォームは、脚あるいはフランジ内に、特に作り出した区域を備える。その区域には、織らない連続した縦糸がある。その織っていない区域は、プリフォームのフランジをコーナー周りに折るためのヒンジとなる。折った後、織っていない余分な縦糸は、脚あるいはフランジの織り部分を通して引き戻され、コーナー周りを強化する連続した縦糸を伴うプリフォームを生み出す。
【0023】
ひとたびコーナーフィッテングを作り出したなら、その後それを公知の方法でコンポジットに構成することができるし、引き続いてコンポジットを構成するより大きなプリフォームあるいは構造に組み入れることもできる。
【0024】
この発明を特徴づけるいろいろな新しい特徴については、特許請求の範囲に特に示す。この発明、ならびに、それを使用することによって得る作用効果および特定の目的について良く理解するため、詳細な説明を参照されたい。そこには、この発明の好ましい実施形態(これに限定されない)が図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施形態である織りコーナー適合プリフォームの断面図である。
図2】この発明の一実施形態である平らな織りコーナー適合プリフォームの模式図であり、縦糸と横糸の径路を示す。
図3】この発明の一実施形態であるコーナー適合プリフォームの製造方法の一工程を示す。
図4】この発明の一実施形態で製造した実際のコーナー適合プリフォームの写真である。
図5】この発明の一実施形態であるコーナー適合プリフォームの製造方法の一工程を示す。
【好ましい実施形態の説明】
【0026】
さて、図に戻ると、図1は、この発明の一つの実施例によるパイ‐プリフォーム100の断面図である。そのプリフォーム100は、平らな織りプリフォームであり、在来式の織機上で、当業者に知られた織りパターンを用いて折ることができる。平織りが最も好ましいパターンである。プリフォーム100は、縦糸ヤーン(あるいは繊維)15の2もしくは3以上の層と、横糸ヤーン(あるいは繊維)18の1もしくは2以上の層とを用いて織ることができる。図1に示す実施例によるプリフォームは平らな織りであるので、横糸ヤーン18が、プリフォームの幅に沿って横切る。
【0027】
図1に示す実施例から分かるように、縦糸ヤーン15および25を、たとえば6層に配置する。たとえば、下の5層がプリフォームのベース10を形成し、そして、上の層がプリフォーム100の1もしくは2以上のフランジあるいは脚20を形成するように用いることができる。平らな織りプリフォームにおいて、横糸ヤーン18を、ベース10の下層の縦糸ヤーン15のいくつかあるいは全てを通して織り、その後で上層の縦糸ヤーン25と織り込む。留意すべきことは、クレビス30を作り出すために、横糸ヤーン18をプリフォーム100の中央部の縦糸ヤーンのいくつかとは織らないことである。そのクレビスは、脚あるいはフランジ20を分離する。フランジあるいは脚20については、図1に示すように、クレビス30の一方の側の最上層を、たとえば矢印方向に持ち上げることにより形成することができる。プリフォーム自体は、USP第6,874,543号および第7,712,488号が示す方法によって織ることができる。それらの米国特許の全体の内容を参照によってここに組み込む。
【0028】
図2に示す実施例によれば、この発明は、特に作り出した区域28をもつプリフォーム100の織りに基づく。区域28には、連続した縦糸ヤーン15’があるが、それらの縦糸ヤーン15’はプリフォーム100に織り込まない。別に言うと、脚あるいはフランジ20の全領域において、横糸ヤーン18を縦糸ヤーン25に一体的に織るのであるが、領域部分28は例外である。その織らない区域28における縦糸ヤーン15’はヒンジとなり、プリフォーム100のフランジあるいは脚20をコーナー周りに折ることができる。図2に示すように、プリフォーム100の中央の「V」部分が、縦糸ヤーン15’を横糸ヤーン18と織っておらず、その区域28は、ヒンジとして、フランジ20をコーナー周りに折ることができる。「V」部分の形は、フランジあるいは脚20を回転すべき角度、あるいはプリフォームを適合すべきコーナーの形に基づいて決める。たとえば、必ずしも直角のコーナーに適合させるのではなく、90°よりも大きな角度をもつコーナーに適合させるような構造物を作り出すためにプリフォーム100を用いるとすれば、そのようなプリフォームの「V」部分は、90°の曲がりをもつものよりも狭くなるであろう。同様に、コーナーの角度が90°よりも小さいならば、その際のコーナー適合プリフォームの「V」部分は、直角の形をもつものよりも広くなるであろう。当業者であるなら、プリフォームのフランジあるいは脚に沿って織らない区域を作るという同じ技術を用い、湾曲の形に応じてフリンジ(へり)区域を異ならせることにより、湾曲を滑らかにすることを考えるであろう。たとえば、図5に、多数の「V」部分を用いることによって形成したプリフォーム200の一例を示す。
【0029】
コーナー適合プリフォーム100を形成する次のステップあるいは工程は、たとえば、図3に示すように、矢印の方向にプリフォームを折ることである。折った後、織っていない余分な縦糸ヤーン15’は、脚あるいはフランジ20の織り部分を通して矢印方向に引き戻され、たとえば、図3に示すように、コーナー周りを強化する連続した縦糸ヤーン25を伴うプリフォームを生み出す。上の実施例で説明したように、図3は、コーナー特性のある織り状態のパイプリフォームの模式図である。しかし、図1−3、および5に示す構造物は、まさしく図示するためのものであり、実際のプリフォームは、1、2、3もしくはそれ以上の脚あるいはフランジ20を備えることができる。すなわち、断面形状がパイ型でなければならないことはなく、この発明の方法により、たとえば「T」あるいは「L」などの他の形を作り出すことができる。
【実例】
【0030】
この手法の有効性を確認するため、試作品のプリフォーム100を織った。それを図4に示す。プリフォーム100は、炭素繊維(カーボン・ファイバ)を用いて織った。しかし、この発明は、目的に適った他の材料製の繊維にも適用することができる。したがって、この発明で用いる材料は、ここに述べる材料に限定されることがなく、たとえば、ナイロン、レーヨン、ガラス、炭素、セラミックス、アラミド、ポリエステル、および/または、物理的、熱的、化学的および/またはその他の好ましい特性を示すその他の材料によって、強化の構成要素を作ることができる。この発明は、また、ストレッチ・ブロークン可能なものを含む他の繊維にも実際上適用することができる。適用可能な繊維として、ストレッチ・ブロークン可能なものには、たとえばカーボン・ファイバ、ガラス、セラミック、そしてまた、ストレッチ・ブロークンが不可能あるいは不要なものには、たとえば、ペピン社が製造するDiscotex(ディスコテックス、登録商標)がある。ディスコテックスによって織物構造物を織ると、その織物構造物をその強化方向に伸ばし、プリフォームの単純な最初の形から複雑な形を形成することができる。
【0031】
プリフォーム100は、在来式の有ひ織機上、平織りパターンを用いて織った。このパターンを選択した理由は、それが他の通常のパターン(たとえば、あや織りや朱子織り)よりも多くのけん縮があり、繊維を単層の繊維層の中を横切らせることが最も難しいからである。しかし、先に述べたように、どのような織りパターンを用いてもプリフォームを作り出すことができる。
【0032】
ここでは、主に、コーナー適合プリフォームの形成に関して説明してきた。適用する際には、そのようなコーナーフィッテングを、装置の2もしくは3以上の部分の結合を強化したい場合に用いることができる。たとえば、航空宇宙産業において、縦および横の両方向のスティフナが外板を支持している場合、その
外板材料とスティフナ間の結合を強化することがしばしば必要である。
【0033】
最終のプリフォームは、マトリックス材料、たとえば、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミックス、炭素および/またはその他の材料で含浸することができる。樹脂含浸方法には、たとえば樹脂トランスファー成形あるいは化学的気相浸透などがあり、それにより、三次元のコンポジット構造物を形成する。
【0034】
この発明の好ましい実施例およびそれらの変形例について説明したが、この発明は、それらのものに限定されるわけではない。この発明の考え方の範囲は、特許請求の範囲の記載によって定まる。
図1
図2
図3
図4
図5