【文献】
XOMA Corporation,XOMA Initiates Clinical Trial of NEUPREX At Harvard Medical School in Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation,[online],2007年 1月 9日,[2016年2月23日検索],インターネット,URL,http://globenewswire.com/news-release/2007/01/09/353306/111542/en/XOMA-Initiates-Clinical-Trial-of-NEUPREX-At-Harvard-Medical-School-in-Allogeneic-Hematopoietic-Stem-Cell-Transplantation.html
【文献】
Gaffin SL, Wells M, Jordan JP,Anti-lipopolysaccharide toxin therapy for whole body X-irradiation overdose,The British Journal of Radiology,1985年,Vol.58, No.693,p.881-884
【文献】
Kohn FR, et al.,Protective effect of a recombinant amino-terminal fragment of bactericidal/permeability-increasing protein in experimental endotoxemia,The Journal of Infectious Diseases,1993年11月,Vol.168, no.5,p.1307-1310
【文献】
Kim K, et al.,High-throughput screening identifies two classes of antibiotics as radioprotectors: tetracyclines and fluoroquinolones,Clinical Cancer Research,2009年12月 1日,Vol.15, No.23,p.7238-7245
【文献】
Shalit I, et al.,Enhanced hematopoiesis in sublethally irradiated mice treated with various quinolones,European Journal of Haematology,1997年,Vol.58, No.2,p.92-98
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
BPIおよび/またはその同類物が、(i)対象の放射線への暴露の1日前〜2日後または(ii)放射線暴露の後48時間以内に投与される、請求項1または2に記載の組成物。
キノロン系抗生物質が、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ガレノキサシンおよびデラフロキサシンからなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A-B】
図1.好中球(ANC)および血小板(PLT)の循環レベル、単球表面のmCD14およびTLR4のレベル、エンドトキシン、BPIおよびIL−6の血漿レベルの変化、ならびに発熱の発生を、ヒトの骨髄破壊HSCTの後で観察した。(A)重篤な好中球減少症(n=46)および血小板減少症が起こった(n=48、最下点D7)。データは、元の単位で表示された対数変換値の幾何平均+SEMを表わす。(B)18人の患者において、エンドトキシン活性アッセイ(EAA)により血漿エンドトキシンを評価し、基線(B;n=17)ならびに、骨髄破壊後のD0(n=17)、D7(n=10)、D14(n=15)、D21(n=15)およびD28(n=3)について、EAA単位で報告した。水平の破線(0.4EA単位におけるもの)は、検出の下限(LLD)を示す。pg/mLにおける血漿BPI濃度を、ELISAにより、B(n=48)、D0(n=46)、D7(n=48)、D14(n=48)、D21(n=47)およびD28(n=33)において評価した。点線は、BPI ELISAについてのLLD(<100pg/ml)を示す。LLDより低い試料には、LLDの50%の値を割り当てた。
【
図1C-D】(C)フローサイトメトリーによる単球のmCD14およびTLR4の表面発現の測定により、D0(n=10)におけるmCD14についての最下点、およびD0(n=9)における同時のTLR4発現のピークが明らかとなった。データは、平均蛍光強度(mCD14)または結合インデックス(TLR4)の元の単位で表示された対数変換値の幾何平均+SEMを表わす。(D)血漿IL−6(n=37)および発熱の発生(n=48)は、いずれも、D7においてピークを有した。IL−6データは、元の単位で表示された対数変換値の幾何平均+SEMを表わす。
【0021】
【
図2A-D】
図2.BALB/cマウスは、7GyにおいてBM消失および死亡を示す。(A)6Gy(n=10)、6.5Gy(n=20)および7Gy(n=20)の用量が異なるTBIの後のD30での死亡率(p<0.001、Mantel-Coxログランク)。(B)粘膜損傷の迅速な発生は、TBI後のD3(n=5)における結腸上皮細胞死のピークにより実証され、これは、TBI前のレベルに対して正規化して表わされた(D0=100%)血漿シトルリンレベル(n=7)における最下点と同時に発生した。データは、平均±SEMを表わす。*p<0.05は、D0と比較した1試料t検定により分析されたものである;**p<0.001は、Mann-Whitneyによるものである。(C)代表的なH&E染色された大腿切片は、7GyのTBIの後のD3におけるBM消失を示す(4×倍率)。(D)0Gy(正常対照、n=3/タイムポイント)、6.5Gy(n=8/タイムポイント)、および7Gy(第3日および第10日においてn=8、D15においてはより高い死亡率のためn=6)の後のBM MNC。データは、個々のカウントの平均±SDである。7Gyの後で、6.5Gyに対して、より少ないBMのMNCが存在した(D3:p=0.05、D10:p=0.0002、D15:p=0.02)。
【
図2E-F】同じマウスのBMにおけるLK(E)およびLSK細胞(F)のフローサイトメトリー分析は、7Gyが、前駆体およびHSCの数の減少の延長をもたらしたことを示した。D15までに、6.5マウスは、7Gyマウスより高いLKおよびLSK細胞数を有した(LKおよびLSKの両方について、p=0.01)。各記号は、個々の動物の1本の肢からのBM内のLKまたはLSKの絶対数を表わす。中央値/群を、水平のバーにより示す。血液学的データは、Mann-Whitneyにより分析した。
【0022】
【
図3】
図3.ENRと組みわせたrBPI
21は、7GyのTBIの後のBALB/cマウスの生存率を増大させる。(A)7Gyを照射され、照射の24時間後にENRプラスrBPI
21またはVEH、ENRのみを30日間連続して与えられたか、または無処置(7Gyと表示される)のマウスの生存率。3回の複製実験の複合分析において、rBPI
21/ENR処置マウスは、他群のものを上回った(Mantel-Coxログランクによりp<0.0001、n=70マウス/アーム(arm))。rBPI
21/ENR群の生存率はまた、VEH/ENR、ENRおよび7Gyのものを上回った(ペアワイズMantel-Coxログランクにより、それぞれ、P<0.0001、0.008および<0.0001)。(B)7Gyの所与のrBPI
21またはVEHの照射(14または30日間継続した)、プラスENR(30日間継続した)または無処置(7Gyと表示される)のマウスの、照射の24時間後の生存率。生存率は、rBPI
21処置の期間により影響を受けなかった。データは、ペアワイズMantel-Coxログランクにより分析した(n=20マウス/群)。
【0023】
【
図4】
図4.rBPI
21/ENRは、TBIにより誘導された形成不全の後の造血の回復を加速させる。BALB/cの(一方の後肢の)BM MNCカウント、および(対側後肢からの)病理組織像を、多様な処置の10、15および19日後に評価した。(A)未処置の、月齢が一致する対照(正常)または(b)7Gyを照射されたマウスについて示されるデータ。他のマウスは、7GyのTBIと、照射の24時間後に開始されたその後の処置との両方を受けた:(C)ENR、(D)VEH/ENRまたは(E)rBPI
21/ENR。左パネル:各グラフは、8個体のマウス/群の後肢から洗い流されたBMのMNCのカウント(平均±SD)を示すが、ただし、(B)7Gyのみを与えられたマウスが経験した高い死亡率(生存率の中央値が12〜15日間)により、n=2〜8/タイムポイントがもたらされた場合を除く。Mann-Whitneyにより、rBPI
21/ENRの組み合わせが、7Gy、ENRおよびVEH/ENRと比較して、D10(それぞれ、p=0.0003、0.001および<0.0001)、D15(それぞれ、p=0.0007、p=0.001およびp=0.001)ならびにD19(それぞれ、p=0.0006、p<0.0001およびp<0.0001)において、BMの細胞充実性を改善するという結果となった。データを、2回の複製研究から集積した。両方の研究から同様の結果が得られた。右パネル:示された処置を受けた動物の代表的なD19の大腿のH&E染色切片は、BM MNCカウントとBMの組織像との緊密な相関を示す。
【0024】
【
図5】
図5.rBPI
21/ENR処置は、照射後D30までにBMの細胞充実性の正常レベルへの修復をもたらす。BMの病理組織像(一方の後肢)およびMNCカウント(対側後肢)を、D30まで生存したマウスにおいて評価した。代表的な大腿の組織像は、(A)未処置、月齢が一致する対照(正常)または(B)7Gy照射されたマウスについて示される。他のマウスは、7GyのTBIと、照射の24時間後に開始されたその後の処置との両方を受けた:(C)ENR、(D)VEH/ENRまたは(E)rBPI
21/ENR。組織像に加えて、個々のマウスの後肢から洗い流された対応するBM MNCのカウントを決定した(F)。バーは、それぞれ、n=4、3、12、16および7マウス/群についての平均±SDを示す。7GyのみおよびVEH/ENRにより処置されたマウスの初期の高い死亡率は、これらのコホートのサイズを限定した。rBPI
21/ENR処置のみが、0Gyから統計学的に区別し得るBM MNCカウントをもたらした。rBPI
21/ENR MNCカウントはまた、7Gy、ENRおよびVEH/ENRにおけるカウントと異なった(それぞれ、p=.01、p=0.0002、p=0.001)。2回の複製研究からのデータを示す。全ての研究において同様の結果が得られた。データは、Mann-Whitneyにより分析した。
【0025】
【
図6】
図6.rBPI
21/ENR処置は、7GyのTBIの後の初期造血細胞のより迅速な増殖に関連する。フローサイトメトリーを用いて、月齢が一致する未処置の対照(0Gy)、または7Gyを投与され、その24時間後に無処置(7Gy)、ENR、rBPI
21/ENRまたはVEH/ENR処置を開始されたマウスのBM MNC中に含まれるLK(左パネル)およびLSK(右パネル)細胞を定量した。D10(上パネル)、D19(中パネル)およびD30(下パネル)からの結果を示す。箱髭グラフは、各処置群中の各動物の一方の後肢からのBM中のLKまたはLSK表現型細胞の範囲、25番目および75番目の百分位ならびに数の中央値を表わす。全てのタイムポイントにおいて、0Gy対照についてN=4。D10においてN=8マウス/処置。D19においてN=6〜8マウス/処置。D30までの生存率におけるより高い不等性は、n=3(7Gy)、12(ENR)、16(rBPI21/ENR)および7(VEH/ENR)マウス/群という結果となった。7Gy、ENRまたはVEH/ENRと比較して、rBPI
21/ENR処置は、初期の時点において、LKおよびLSK細胞の両方のより多い数と関連した(D10における全ての比較についてp=0.004、D19においてはそれぞれp=0.004、0.0003および0.0001)。対照を含む全ての群のD30のLKおよびLSK含有量は等しかった。2回の複製実験からのデータを示す。全ての研究において類似の結果が得られた。データは、Mann-Whitneyにより分析した。
【0026】
【
図7】
図7.BALB/cマウスの7Gy照射は、その後の内毒血症と関連する。LALによるエンドトキシンアッセイのために、示された日において血液試料を得、平均±SEMとして示した。エンドトキシンは、D3以降存在した。第0、3、12日においてN=9マウス/タイムポイント、D6においてn=6、およびD9においてn=8。7Gyのみの処置の死亡率は、D12を越える分析のために十分なマウスの評価を妨げた。
【0027】
【
図8】
図8.注射部位の傷害および炎症は、rBPI
21またはVEHのBID注射から生じる。これらの放射線緩和研究の間、一部の7Gy照射BALB/cマウスは、経口のENRのみを投与された。他の7Gy照射マウスは、ENR、ならびに、1日2回、固定された28.5Gの針を備えた無菌の単回使用用インシュリン針を用いて、250μlのrBPI
21またはその処方バッファー(VEHと表示される)の注射を受けた。注射は、放射線の24時間後に開始され、第30日まで継続された。第15日(B)または第19日(A、C)において、マウスを人道的に安楽死させ、腹側皮膚の下側を、局所的な組織傷害の写真による考証のために露出させた。Nikon D90デジタルカメラを用いて画像を取得した。
【0028】
【
図9】
図9.rBPI
21/ENR処置マウスの細胞性BMにおける三血球系造血。BALB/cマウスに、7GYを照射し、その24時間後にrBPI
21/ENRを開始した。マウスを、照射の19日後に安楽死させた。rBPI
21/ENR処置マウスにおける大腿のH&E染色された冠状切片の低倍率の画像を、
図3において示した。これらの画像は、(A)20×および(B)40×でのより高倍率の画像を示す。BMは、異形成のない三血球系造血、相対的な骨髄の過形成、および強力な巨核球の回復を示した。
【0029】
【
図10】
図10.FACSによりBALB/cマウスからのBMにおけるLKおよびLSK細胞を決定するためのゲート戦略。小さな破片を除外するために、BM細胞のFSC対SSCのドットプロット上にゲートを引く。コミット(commit)された系列細胞を、FL−4チャネル(APC陽性)対SSCにおいて決定し、これらを系列マーカーの発現について陰性(陰性〜低いAPC蛍光)の細胞から選別(bifurcate)するためにゲートを引いた。一致するアイソタイプ対照カクテル(これもまたAPCと共役している)の使用を通して、ゲートを確認した。系列陰性細胞を、Sca−1PE x c−kit−PerCP5.5二重蛍光ドットプロット上に可視化して、マウスBM中のLin
−Sca−1
−c−kit
+(LK前駆体細胞)およびLin
−Sca−1
+c−kit
+(LSK幹細胞)の含有量を評価した。示したヒストグラムは、正常マウスの分析からのものである。
【0030】
【
図11】
図11.同種HSCTを受けている患者におけるrBPI
21注入の限定的パイロット臨床試験により、骨髄破壊治療後の耐容性が支持される。6人の患者の内4人が、IRBにより承認された複数機関の、放射線に基づく処置を受けた骨髄破壊HSCTのセッティングにおけるrBPI
21投与の第I〜II相パイロット試験の第1のコホート中に登録された。全員が血液学的悪性疾患を有し、50〜65歳(中央値55)であり、承諾書にサインした。対象は、骨髄破壊の前処置のために、シクロホスファミドおよび1360(n=3)または1400(n=1)分割TBIを受けた。(A)全ての患者に、第1日において4mg/kgのボーラス静脈内rBPI
21を投与し、その後、6mg/kg/日の持続的静脈内注入を72時間にわたり行った。持続的注入の用量および期間を、示した計画に従って増大させたが、試験は、薬物の研究用ロットが古くなった際に支援者(XOMA(US)LLC)により中断された。(B)HSCTの導入の間の重篤な有害効果を示す。
【0031】
【
図12】
図12.骨髄単核細胞、LKおよびLK細胞に対する14および30日間のrBPI
21に加えたENRの効果は同等である。BALB/cマウスに、7Gyを照射し、その24時間後に処置を開始した。一部のマウスに、1日2回、皮下rBPI
21をENRと組み合わせてD15まで投与し、この時点で、残りを、rBPI
21(14)/ENRと称される一群(rBPI
21は中止するがENRはD30まで持続する)、および別の群rBPI21(30)/ENR(rBPI
21およびENRの両方をD30まで持続する)に等分割した。VEH/ENR群は、先に記載するように処置した。rBPI
21(14)/ENRおよびrBPI
21(30)/ENRは、全ての時点において、同レベルの骨髄単核細胞(パネルA、D)、LK(パネルB、E)およびLSK(パネルC、F)を有した。定量化を、方法欄のとおりに行った。棒グラフ+SDは、骨髄単核細胞を表わし、箱髭グラフは、各処置群中の各動物の一方の後肢からの骨髄中のLKまたはLSK表現型細胞の範囲、25番目および75番目の百分位ならびに数の中央値を表わす。rBPI
21(14)/ENRおよびrBPI
21(30)/ENR群について、D15:n=4/群、D18:n=5〜6/群およびD30:8〜10/群。死亡率に起因して、D18においてはn=1(7Gy)およびn=2(VEH/ENR)が存在し、D30においてはこれらの群において生存者は存在しなかった。2個体の正常動物から得られた値を、0Gy値として表わす。1回の研究から得られたデータを示す。
【0032】
【
図13】
図13.末梢血カウントは、14または30日間のrBPI
21に加えてのENR処置の後で同等である。rBPI
21で14日間処置されたBALB/cマウスの末梢血において(rBPI
21(14)/ENR−赤色の丸)、30日間のrBPI
21による処置(rBPI
21(30)/ENR−灰色の丸)と比較して、比較可能なレベルの白血球細胞(WBC)、好中球、単球、血小板およびヘモグロビンを測定した。処置は、7Gy照射の24時間後に開始した。方法において記載するように、末梢血カウントを得た。全てのマウスに、1日2回、皮下rBPI
21をENRと組み合わせてD15まで投与し、この時点において、4個体のマウスから末梢血細胞分析のために採血した。残りを、rBPI
21(14)/ENRと称される一群(rBPI
21は中止するがENRはD30まで持続する)、および別の群rBPI21(30)/ENR(rBPI
21およびENRの両方をD30まで持続する)に等分割した。結果は、D18(n=5〜6/群)およびD30(8〜10/群)において測定された末梢血カウント値の平均+標準偏差を示す。2個体の正常動物から得られた値を、D0値として表わす。1回の研究から得られたデータを示す。
【0033】
【
図14】
図14.(A〜F)顆粒球刺激因子(G−CSF)のレベルは、照射されたマウスおよび未照射のマウスにおいて、rBPI
21処置に応答して増大する。
【
図15】
図15.(A〜C)マウスケラチノサイト走化性因子(マウスKC)のレベルは、未照射のマウスにおいて、rBPI
21処置に応答して増大する。rBPI
21処置によるマウスKCの刺激は、事前の照射により増強される。
【
図16】
図16.単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、別名ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2(CCL2)のレベルは、rBPI
21処置により増大する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、一側面において、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)および/またはその同類物が、単独でまたは抗生物質と組み合わせて、放射線への暴露、化学療法または疾患から生じる組織傷害を緩和することができるという、驚くべき発見に関する。本明細書において記載されるとおり、BPIおよび/またはその同類物は、単独でまたは抗生物質と組み合わせて、偶発的(accidental)または偶発的(incidental)な放射線に暴露された対象(個体)において、および/または、骨髄細胞の枯渇/不全を伴う重篤な骨髄破壊を有する対象において、造血毒性を緩和するため、血液学的機能を刺激するため、および骨髄回復を補助するために用いることができる。
【0035】
本明細書において用いられる場合、BPIおよび/またはその同類物による治療を必要とする対象は、骨髄機能の(部分的または完全な)低下を有する対象である。いくつかの態様において、対象は、1または2以上の血液細胞型または血液細胞系列において不十分な造血を有する。いくつかの態様において、対象は、放射線、化学放射線療法もしくは毒素に暴露されたか、あるいは、対象において骨髄機能の(部分的または完全な)低下をもたらす疾患、または薬物もしくは生物に媒介される造血傷害を有する。骨髄機能の(部分的または完全な)低下を引き起こす疾患の例として、限定されないが、急性および慢性の炎症、感染症、再生不良性貧血、ファンコニー貧血、ブルーム症候群、網様異形成(reticular dysgenesis)、コストマン症候群、先天性良性好中球減少症、新生児敗血症、骨髄異形成症候群、ダイアモンド・ブラックファン貧血、および先天性または後天性の骨髄不全症候群が挙げられる。対象は、他にはBPIおよび/またはその同類物による処置の必要はない。いくつかのかかる態様において、対象は、感染性疾患を有さない。
【0036】
いくつかの態様において、対象は、望まれない組織傷害および/または造血毒性を引き起こすのに十分なレベルの放射線に暴露される。いくつかの態様において、対象は、BPIおよび/またはその同類物による治療の前に、組織傷害および/または造血毒性を引き起こすのに十分な放射線に暴露されている。いくつかの態様において、対象は、放射線に暴露されておらず、組織傷害および/または造血毒性を引き起こすのに十分な放射線への暴露の前に、将来的な放射線暴露を予測して、BPIおよび/またはその同類物による処置を受ける。いくつかの態様において、対象は、BPIおよび/またはその同類物による治療の間、放射線に暴露されている。放射線暴露として、限定されないが、偶発的暴露、核攻撃、局所治療ならびに低および高用量の全身照射などの医療放射線療法から生じる暴露が挙げられる。いくつかの態様において、対象は、癌を有し、放射線療法、化学放射線療法および/または化学療法を経験しているか、現在これを受けているか、または受けることになっている。
【0037】
本発明の幾つかの側面によれば、任意の型の放射線により誘導される組織傷害を緩和するための方法が提供される。放射線への暴露は、低用量においては毒性であり、高用量においては生命を脅かす。放射線により誘導される損傷に対して最も脆弱な組織として、造血系および胃腸管(GI)が挙げられる。中程度の放射線は、循環リンパ球の喪失、および有糸分裂的に活性な造血系前駆体細胞の減少を含む、血球数の迅速な減少を引き起こし得る。血球数の減少は、とりわけ、感染症のリスクの増大および癌の発達に関連する。より高い用量の放射線は、より重篤な、およびしばしば恒久的な骨髄損傷をもたらし得、これは、骨髄幹細胞集団の喪失から生じる。したがって、組織傷害は、例えば、血球数の減少、骨髄幹細胞集団の喪失、または造血毒性であり得る。
【0038】
本発明の幾つかの側面によれば、造血毒性を緩和するための方法が提供される。方法は、BPIおよび/またはその同類物を、単独でまたは抗生物質と組み合わせて投与することを含む。用語「造血毒性」とは、実質的に放射線への暴露から生じる毒性であって、個体(対象)の造血系に有害な影響を及ぼすものを指す。あるいは、造血毒性は、対象の毒素への暴露、または造血傷害への疾患もしくは遺伝的素因から生じる場合もある。この有害効果は、対象において広範に、放射線暴露、化学療法、毒素または疾患として多くの造血細胞型のレベルが変化する(正常であると考えられるレベルと異なる)というかたちにおいて顕現する場合があり、あるいは、有害効果は、対象においてより特異的に、放射線への暴露、化学療法、毒素または疾患の結果として、1または数種のみの造血細胞型が正常であると考えられるレベルと異なるというかたちにおいて顕現する場合もある。
【0039】
BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、造血毒性などの組織傷害を緩和するために投与される。本明細書において用いられる場合、用語「緩和する」とは、疾患、化学療法、毒素または放射線により誘導される組織損傷の程度の低減(損傷が、BPI/同類物の処置の不在下において起こるであろうものより軽い)を指す。したがって、疾患、化学療法、毒素または放射線により誘導される組織損傷の程度の低減は、処置される対象における組織の健康の改善により、評価することができる。処置される対象の組織の健康の改善は、処置される対象における組織の健康を、対照の対象(処置される対象と同じ量の放射線暴露を受けているが、BPI治療を受けていない対象)における組織の健康に対して試験することにより、決定することができる。組織の健康は、直接および間接的測定を含む当業者に公知の任意の多様な方法により測定することができる。直接的測定は、細胞カウントを測定することなどである。いくつかの態様において、測定される組織傷害は、組織の壊死、および/または血球数の減少であってもよい。いくつかの態様において、組織の健康の改善は、ヘマトクリット、白血球カウント、骨髄DNA中へのトリチウム標識チミジンの組み込み、脾臓の重量、脾臓または上腕骨もしくは大腿から得られた骨髄からのバースト形成単位の赤血球の数またはコロニー形成単位(赤血球、顆粒球、マクロファージおよび巨核球を形成する系列)の数、あるいは循環する造血幹細胞または末梢循環中の他の原始造血細胞の計数(enumeration)などのエンドポイントを用いて、造血系の機能を評価することにより測定することができる。
【0040】
本発明の幾つかの側面によれば、骨髄回復のための方法が提供される。方法は、BPIおよび/またはその同類物を、単独でまたは抗生物質と組み合わせて投与することを含む。「骨髄回復」とは、それにより、放射線、化学療法、疾患または毒素により損傷を受けた骨髄が、その正常または正常に近い状態(機能)まで修復されるか、または骨髄機能の測定可能な改善が得られるプロセスを意味する。骨髄機能とは、それにより、多様な血液細胞の型または系統が造血(血液)幹細胞から産生されるプロセスである。骨髄回復を測定するために用いることができるエンドポイントとして、限定されないが、ヘマトクリット、白血球カウント、骨髄DNA中へのトリチウム標識チミジンの組み込み、脾臓の重量、脾臓または上腕骨もしくは大腿から得られた骨髄からのバースト形成単位の赤血球の数またはコロニー形成単位(赤血球、顆粒球、マクロファージおよび巨核球を形成する系列)の数、あるいは循環する造血幹細胞または末梢循環中の他の原始造血細胞の計数が挙げられる。いくつかの態様において、対象は、放射線もしくは毒素に暴露されたか、あるいは、対象において(部分的または完全な)骨髄機能の低下をもたらす疾患または薬物もしくは生物に媒介される造血傷害を有する。骨髄機能の(部分的または完全な)低下を引き起こす疾患の例として、限定されないが、急性および慢性の炎症、感染症、再生不良性貧血、ファンコニー症候群、ブルーム症候群、網様異形成、コストマン症候群、先天性良性好中球減少症、新生児敗血症、骨髄異形成症候群、ダイアモンド・ブラックファン貧血、および先天性または後天性の骨髄不全症候群が挙げられる。
【0041】
本発明の幾つかの側面によれば、造血を刺激するための方法が提供される。方法は、BPIおよび/またはその同類物を、単独でまたは抗生物質と組み合わせて投与することを含む。「造血の刺激」とは、一般に、1または2以上の造血細胞の型または系統の増加を指し、特に、対象が1または2以上の造血細胞の型または系統の欠乏を有する場合は、1または2以上の造血細胞の型または系統の刺激または増強に関する。1または2以上の造血細胞の型または系統の欠乏は、放射線または毒素への暴露、疾患、薬物もしくは生物により媒介される造血系の傷害により引き起こされ得る。1または2以上の造血細胞の型または系統の欠乏を引き起こす疾患の例として、限定されないが、急性および慢性の炎症、感染症、再生不良性貧血、ファンコニー症候群、ブルーム症候群、網様異形成、コストマン症候群、先天性良性好中球減少症、新生児敗血症、骨髄異形成症候群、ダイアモンド・ブラックファン貧血、および先天性または後天性の骨髄不全症候群が挙げられる。造血の欠陥は、リンパ球減少症、白血球減少症、好中球減少症、赤血球減少症、巨核球減少症、血小板の欠乏、単球の欠乏、リンパ球の欠乏、赤血球の欠乏、好中球の欠乏、T細胞の欠乏、またはB細胞、特に顆粒球の欠乏、および/または樹状細胞の欠乏を含み得る。
【0042】
本発明の方法において有用な化合物は、BPI、その生物学的に活性なフラグメント、アナログ、バリアントおよび/またはその同類物である。初めはヒト多形核好中球のアズール親和性顆粒において見出された50〜55kDaのカチオン性抗菌タンパク質であるBPIは、多様な細菌に関連するエンドトキシンおよび細胞フリーの形態のエンドトキシンに対して、高いアフィニティー(pM〜nM)を有する。エンドトキシンに対するBPIの結合は、エンドトキシンがmCD14、MD−2およびTLR4からなる細胞の炎症促進性エンドトキシン受容体複合体に結合することを妨害することにより、グラム陰性細菌の殺傷およびクリアランスを促進し、エンドトキシンにより誘導された炎症およびアポトーシスを阻害する。ほとんどのBPIは、細胞内型であるが、BPIの血漿レベルは、好中球の活性化および脱顆粒と共に上昇する。安定なBPIとして、限定されないが、rBPI
21、rBPI
23、rBPI
50、rBPI(10−193)ala
132および約20〜25kDの分子量を有するBPIのN末端フラグメンが挙げられる。BPIおよびその同類物の調製は、当該分野において米国特許第6268345号、米国特許第6599880号、米国特許第5420019号、米国特許第5980897号および米国公開番号2008/0031874などの刊行物において記載されている。
【0043】
BPIおよび/またはその同類物は、抗生物質(少なくとも1、1または2以上の抗生物質)と組み合わせて提供されてもよい。いくつかの態様において、抗生物質はキノロンである。いくつかの態様において、キノロンはフルオロキノロンであり、これは、典型的には6位または7位において中心環系に結合したフッ素原子を有する。BPIおよび/またはその同類物と組み合わせて投与されるキノロン系抗生物質の例として、限定されないが、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ガレノキサシンおよびデラフロキサシンが挙げられる。
【0044】
BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、同時に投与されても連続的に投与されてもよい。BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とが同時に投与される場合、これらは、同じ処方において投与しても別々の処方において投与してもよく、実質的に同じ時間において投与される。抗生物質とBPIおよび/またはその同類物との投与はまた、連続的であってもよい:二つを、骨髄機能に対して所望の効果を有するために十分に近接した時間において投与することのみが必要である。ある態様において、抗生物質は、BPIおよび/またはその同類物の前に、またはBPIおよび/またはその同類物の投与の後に投与される。これらの化合物の投与の間の時間的別離は、数分間のみ、5時間、12時間、24時間、48時間または96時間のものである場合も、またはより長い場合もある。
【0045】
本発明の化合物は、有効量において投与される。有効量とは、医学的に望ましい結果を提供するために十分な用量であり、当業者により、慣用的な方法を用いて決定することができる。放射線により誘導される組織損傷の処置においては、有効量は、放射線への暴露により引き起こされた組織損傷を(部分的にまたは完全に)阻害するために必要な量であろう。いくつかの態様において、有効量は、処置されている状態の改善をもたらす量である。いくつかの態様において、有効量は、放射線暴露の型および程度、および/または1または2以上のさらなる治療剤の使用に依存し得る。しかし、当業者は、例えばin vitroおよび/またはin vivoでの試験および/または化合物の投与量の他の知見に基づいて、用いるべきBPI/同類物および抗生物質の適切な用量および範囲を決定することができる。いくつかの態様においては、本明細書において記載されるBPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、癌性組織および細胞の殺傷に物質的に干渉することなく、放射線により引き起こされた非癌性組織および細胞の傷害を阻害する投与量において投与することができることが理解されるべきである。
【0046】
対象に投与される場合、BPI/同類物および抗生物質の有効量は、例えば、傷害の重篤度;個々の患者のパラメーター(年齢、身体的状態、サイズおよび体重を含む)、併用処置、処置の頻度、投与の様式に依存するであろう。これらの要因は、当業者に周知であり、慣用的な実験のみを用いて取り組むことができる。いくつかの態様において、最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従った最大の安全な用量が用いられる。
【0047】
有効量は、1または2以上の用量の投与において、1日または数日間または多くの日数にわたり(投与の形態および上で議論された要因に依存して)、典型的には、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg、約0.01mg/kg〜約750mg/kg、約0.1mg/kg〜約500mg/kg、約1.0mg/kg〜約250mg/kg、約10.0mg/kg〜約150mg/kgで変化し得る。
【0048】
BPI/同類物および抗生物質の実際の投与レベルは、特定の患者、組成物および投与の様式について、所望の治療的応答を達成するために有効な量を得るために変更することができる。選択される投与量レベルは、特定の化合物の活性、投与の経路、放射線暴露の重篤度、および処置される患者の先行する治療歴に依存する。しかし、所望の治療的労力を達成するために必要とされるよりも低いレベルにおける化合物の用量により処置を開始すること、および所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、当該分野の技術の範囲内である。
【0049】
BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、対象が骨髄機能の(部分的または完全な)低下を有すると診断された後は、任意の時点で投与することができる。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、対象が、予測される正常レベルと比較して血球数の低下を有すると診断された後、任意の時点で投与することができる。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、組織損傷を引き起こすレベルの放射線への対象の暴露の前、その間または後に、投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の前であるが、放射線により誘導される組織損傷を阻害するために十分に放射線暴露と時間的に近接して投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の1日前までの任意の時間に投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の1〜24時間前に投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の12時間以内に投与される。BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とはまた、放射線暴露の間に投与してもよい。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の後であるが、放射線により誘導される組織傷害から組織を保護する所望の効果を有するために十分に放射線暴露に時間的に近接して投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、暴露の後3日間までの任意の時間に投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の1〜60時間後に投与される。いくつかの態様において、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線暴露の24または48時間以内に投与される。いくつかの態様において、対象は癌を有し、BPIおよび/またはその同類物と抗生物質とは、放射線療法、化学放射線療法または化学療法の後、少なくとも1時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間後であるが、放射線療法、化学放射線療法または化学療法の後、72時間より前に投与される。
【0050】
BPIおよび/またはその同類物ならびに抗生物質、ならびにBPIおよび/またはその同類物と抗生物質とを含む医薬組成物は、任意の好適な経路により対象に投与される。例えば、組成物は、経口で(舌下を含む)、直腸から、非経口的に、大槽内から、膣内から、局所的に、および経皮的に(粉末、軟膏または液滴によるものとして)、口腔から、または鼻から投与することができる。用語「非経口的」投与とは、本明細書において用いられる場合、胃腸管を通すもの以外の投与の様式を指し、これは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、乳房内(intramammary)、眼内、眼球後、肺内、くも膜下腔内、皮下および関節内の注射および注入を含む。外科的移植もまた企図され、これは、例えば、本発明の組成物を例えば脳内などの体内に包埋することを含む。いくつかの態様において、組成物は、全身投与することができる。
【0051】
非経口注射のための本発明の医薬組成物は、薬学的に受容可能な無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳液、ならびに、使用の直前に無菌の注射可能な溶液または分散液に再構成するための無菌の粉末を含む。好適な水性および非水性のキャリア、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびこれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合は、必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0052】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤化剤、乳化剤および分散剤を含んでもよい。微生物の活動の防止は、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどを含めることにより保証することができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を含めることもまた望ましい場合がある。注射可能な医薬製剤の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を含めることにより、引き起こすことができる。
【0053】
一部の場合において、薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。この結果は、水溶性が低い非晶質材料の液体懸濁物の使用により達成することができる。非経口的に投与される薬物の吸収の遅延はまた、当該薬物を油性のビヒクル中に溶解または懸濁することにより達成される。同様に、注射可能なデポー製剤は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸(polyglycolide)などの生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する薬物の比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能処方物もまた、薬物を、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することにより調製される。
【0054】
本発明は、本発明の医薬組成物の経口投与のための方法を提供する。経口の固体製剤は、一般に、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年(Mack Publishing Co. Easton Pa. 18042)において第89章において記載されている。経口投与のための固体製剤として、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、トローチまたはロゼンジ、カシェー(cachet)、ペレット、および顆粒が挙げられる。また、リポソームまたはプロテイノイド封入を用いて本発明の組成物を処方することができる(例えば、米国特許第4,925,673号において報告されるプロテイノイドマイクロスフェアのように)。リポソーム封入は、多様なポリマーにより誘導体化されたリポソームを含んでもよい(例えば米国特許第5,013,556号)。
【0055】
かかる固体製剤において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと混合されるか、またはこれを含むように化学修飾される。賦形剤またはキャリアは、化合物の取り込み、化合物の全体的な安定性、および/または化合物の体内での循環時間の増大を可能にすることができる。賦形剤およびキャリアとして、例えば以下が挙げられる:クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または、(a)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、セルロース、修飾デキストラン、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤、ならびに、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムなどの無機塩、ならびにFAST-FLO(登録商標)、EMDEX(登録商標)、STA-RX 1500(登録商標)、EMCOMPRESS(登録商標)およびAVICEL(登録商標)などの市販の希釈剤、(b)例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゴム(例えばアルギナート、アラビアゴム)、ゼラチン、ポリビニルピロリドンおよびショ糖などの結合剤、(c)グリセロールなどの保水剤、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯デンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、市販のデンプンに基づく崩壊剤を含むデンプン、EXPLOTAB(登録商標)、グリコール酸ナトリウムデンプン、AMBERLITE(登録商標)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン(ultramylopectin)、ゼラチン、オレンジピール、カルボキシメチルセルロース、天然の海綿、ベントナイト、不溶性のカチオン交換樹脂、および寒天、カラヤガムまたはトラガカントなどの粉末化ゴム;(e)パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agents)、(f)オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸を含む四級アンモニウム化合物および脂肪酸などの吸収促進剤、(g)湿潤化剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホサクシナートナトリウム、およびジオクチルスルホナートナトリウムを含むアニオン性洗剤界面活性剤、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムなどのカチオン性洗剤、ラウロマクロゴール400、ポリオキシ40ステアレート、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む非イオン性洗剤など;(h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油、蝋、CARBOWAX(登録商標)4000、CARBOWAX(登録商標)6000、ラウリル硫酸マグネシウムなどの潤滑剤、およびそれらの混合物;(j)処方の間の薬物の流動特性を改善し、圧縮の間の再構成を補助する流動促進剤であって、デンプン、タルク、焼成シリカおよび水和ケイアルミン酸を含むもの。カプセル、錠剤および丸剤の場合、製剤はまた、緩衝化剤を含んでもよい。
【0056】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体製剤は、腸溶性コーティングおよび製薬分野において周知の他のコーティングなどの、コーティングおよびシェルにより調製してもよい。経口投与のための液体製剤は、薬学的に受容可能な乳液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。活性化合物に加えて、液体製剤は、当該分野において一般的に用いられる特定の不活性な希釈剤(例えば水および他の溶媒など)、可溶化剤および乳化剤(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油脂(特に、綿実油、ピーナツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルなど、およびそれらの混合物)を含んでもよい。
【0057】
また本明細書において企図されるのは、本発明の化合物の肺送達である。化合物は、吸入の間に哺乳動物の肺へ送達される。本発明の実施において用いられるために企図されるのは、治療用製品の肺送達のために設計された広範な機械的デバイスであり、これらは、限定されないが、ネブライザー、定量吸入器、および粉末吸入器を含み、これらの全ては、当業者にはよく知られている。全てのかかるデバイスは、本発明の化合物の分配のために好適な処方の使用を必要とする。典型的には、各処方物は、使用されるデバイスの型に特異的であり、治療において用いられる希釈剤、アジュバントおよび/またはキャリアに加えて、適切な噴霧材料の使用を伴ってよい。
【0058】
本発明は、以下の例によりさらに説明され、これは決してさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願を通して引用される参考文献(学術文献、発行された特許、公開された特許出願および同時係属の特許出願を含む)の全ての全内容は、本明細書により参考として援用される。
【0059】
例
材料および方法
患者の特徴
2005〜2009年にボストン小児病院(CHB)またはブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH)において骨髄破壊同種HSCTを受けている患者(n=48)を、施設内審査委員会により承認された研究において、予め募集した。全ての参加者および/または法定後見人が、必要に応じて承諾および/または同意を提供した。年齢は、1〜60歳の範囲であった。血液学的悪性疾患(n=46)のための骨髄破壊レジメンは、1400cGy(n=38)もしくは1375cGy(n=1)のTBIによる化学放射線療法、または、>14mg/kgの経口もしくはIVの同等量のブスルファンを含む組み合わせ化学療法であった(n=7)。再生不良性貧血のための骨髄破壊は、シクロホスファミド200mg/kg(6gm/M
2)プラスATG(n=2)であった。16人の患者がBMを受け、32人がPB幹細胞を受けた。支持治療は、施設の定められた手順に従った(48、49)。予防的経口非吸収性抗生物質を投与した:バシトラシンと、ポリミキシン(BWH)またはバンコマイシン(CHB)のいずれか。血球計算および培養を、臨床研究室の定められた手順に従って行った。16人の患者が、グラム陽性(n=15)またはグラム陰性(n=1)生物のいずれかによる菌血症を有した。体温は、試料取得の±1日以内の最大値を用いて記録した。エンドトキシン活性アッセイ(EAA)の測定は、EAAが利用可能であった場合に追加した。
【0060】
血液の収集および血漿調製
PB試料を、K2−EDTAまたはヘパリンナトリウムVacutainers(商標)(Becton-Dickinson(BD)、Franklin Lakes, NJ)中に引き込み(基線、B)、その後、HSCTの日(D0)、および毎週±1日に前処置した。PBを1200gで5分間、4℃で遠心し、回収し、パイロジェンフリーチューブ中でアリコートにおいて−80℃で保存した。
【0061】
ヒトBPI ELISA
BPIは、ELISA(HyCult, Uden, The Netherlands)により、製造者の説明書に従って測定した。
ヒトPBにおけるエンドトキシン測定
エンドトキシンは、EAAにより、製造者の説明書(Spectral Diagnostics, Toronto, Canada)に従って測定した(27)。
【0062】
ヒトIL−6 ELISA
IL−6は、フローサイトメトリー(MoFlo, DakoCytomation, Glostrup, Denmark)により、抗体被覆蛍光ビーズ(Cytometric Bead Array BD Flex Sets, BD BioSciences, San Jose, CA)およびSummit v4.0ソフトウェア(DakoCytomation)を用いて測定した。
mCD14およびTLR4の測定
CD14およびTLR4の単球表面発現を、先に記載されるように(50)、抗原特異的またはアイソタイプ対照モノクローナル抗体(eBioSciences, San Diego, CA)により測定した。
【0063】
rBPI
21およびエンロフロキサシンによるin vivo 放射線緩和研究
オスBALB/cマウス(ストック#028, Charles River, Wilmington, MA)を、12週齢における照射に先立ち順化した。研究は、ダナ・ファーバー癌研究所のACUCにより承認されたポリシーおよびプロトコルに従って行った。マウスを、Rad Disk(商標)げっ歯類マイクロアイソレーション照射用ケージ(Braintree Scientific, Braintree, MA)中に置き、Gammacell(登録商標)40Exactor(Best Theratronics, Ottawa, Ontario)セシウム源照射器により、1回の7Gyの用量を投与した。その24時間後、マウスを、未処置のまま置くか(7Gy)、または、以下の処置の1または2以上を30日間受けさせた:1)rBPI
21(XOMA(US)LLC, Berkeley, CA)の、注射1回当たり250μlの、2mg/mlのストックを、処方バッファー中で構成し、SCで1日2回、6〜8時間の間隔をあけて投与した(rBPI
21/マウスは、〜42mg/kg/日であった);2)0.33g/Lのクエン酸、1.01g/Lのクエン酸ナトリウム、8.76g/Lの塩化ナトリウム、2.0g/LのPoloxamer P188、および2.0g/Lのポリソルベート80(全てSigma, St. Louis, MO)からなるrBPI
21処方バッファー(VEHと表記される)の250μlを、注射用水中で溶解し、pHを5.0に調整し、濾過滅菌した;3)Baytril(登録商標)(エンロフロキサシン、MedVets, Sandy, UT)を、10mg/kg/日において、25Gの食餌用針(Cadence Science, Cranston, RI)を介した強制経口により、最初の5〜7日間にわたり与え、その後、研究終了または死亡まで、マウスに、続けて抗生物質をその場で(ad lib)水ボトル中で投与した。全てのマウスを少なくとも1日2回観察した。瀕死のマウスはCO
2窒息により安楽死させた。計画された時点において、マウスをイソフルラン麻酔の過剰用量により安楽死させた(IsoFlo(登録商標)Abbott Labs, Abbott Park, IL)。
【0064】
血液および組織調製物
CBCを、Hemavet 950 FS血液学分析器(Drew Scientific, Waterbury, CT)において、EDTA(Becton-Dickinson, Franklin Lakes, NJ)により抗凝固剤処置した心臓血を用いて行った。血液をパイロジェンフリーエッペンドルフチューブ(USA Scientific)中でパイロジェンフリーヘパリン(APP Pharmaceutical, Schaumburg, IL)と混合し、14,000rpmで10分間遠心分離することにより、血漿を得た。単回使用のアリコートを−80°で保存した。一部の研究において、動物1個体あたり一肢からの大腿および脛骨を解剖し、10%の中性に緩衝化したホルマリン(Fisher Scientific, Pittsburg, PA)中で24時間固定し、処理した(冠状切片作製およびヘマトキシリン−エオジン(H&E)染色(Specialized Histopathology Services-Longwood, Boston, MA)を含む)。冷たいRPMI 1640培地に10%FBS(JRH Biosciences, Lenexa, KS)、L−グルタミン、HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびゲンタマイシン(全てInvitrogen, Carlsbad, CA製)を添加したものを用いて骨から細胞を洗い流すことにより、対側大腿および脛骨をBM MNCの計数(enumeration)およびフローサイトメトリーのために用いた。低張溶解バッファー(Sigma)により赤血球を溶解した。BM MNCをトリパンブルー染色により計数(enumerate)した;生存率は、典型的には>90〜95%であった。
【0065】
シトルリン決定
試料を、MassTrak Amino Acid Analysis(AAA)システム(Waters, Milford MA USA)により、AccQTag(商標)誘導体化および紫外/可視検出を用いて分析した。
【0066】
病理組織学的評価
有資格の血液病理学者(JK)が、大腿BMの細胞充実性を、脱灰してホルマリン固定したH&E染色したパラフィン固定切片において、Olympus BX51顕微鏡およびOlympus DP71カメラを用いて、DP Captureソフトウェアにより評価した。各動物について、2枚のスライドを2視野/スライドで、造血細胞により線有されたBM空間のパーセントについて点数化した。有資格の病理学者(J−AV)が、H&E染色したパラフィン固定冠状切片の3つの複製試料において、アポトーシス小体/400×視野を計数した。正常マウスからの試料はアイデンティティを同定したが、全ての他のものは、盲検化(deidentify)し、無作為の順序で分析のために提示した。
【0067】
マウス血漿中のエンドトキシン測定
リムルスアメボサイトライセート(LAL)アッセイを、製造者(Charles River, Boston, MA)の説明書に従って、および先に記載されるように(51)用いて、エンドトキシンを測定した。
【0068】
BM FACS分析
BM細胞を、Fcブロッキングのために、2%ラット抗マウスCD16/CD32および1%正常ラット血清でプレインキュベートし、その後、造血系列マーカー(CD3ε、CD45/B220、CD11b、Ly−6G/Ly−6C、TER 119)を有する細胞を、APC共役系列特異的抗体のカクテル、または等濃度のAPC共役アイソタイプ対照免疫グロブリン、1:20希釈のPE−ラット抗マウスSca 1(クローンD7)およびPerCP−Cy5.5−ラット抗マウスc−Kit(クローン2B8)(全てBD製)により染色した。細胞を、25分間4℃で染色し、冷たいDPBSで2回洗浄し、0.4%パラホルムアルデヒド中で再懸濁した。FACScalibur(商標)フローサイトメーター(BD)において100,000回のイベントを得、FlowJo v.7.0.5(Treestar)ソフトウェアで分析した。系列マーカーについて陰性の細胞を、BM中のlin
−Sca−1
−c−kit
+(LK)およびlin
−Sca−1
+c−kit
+(LSK)のパーセンテージについて評価した(
図10、ゲート戦略)。正常マウスからのデータは、ナイーブなBALB/cマウスについての公開された報告と一致した(52)。
【0069】
統計学
ヒトHSCT研究について、検出不能な分析物を有する試料に、検出の下限の半分における値を割り当てた。ANC、PLT、BPI、TLR4およびIL−6について、データを、対数変換の後で分析した。なぜならば、これはより正規的に近い分布をもたらすからである。これらのデータについて、対数値の幾何平均および平均の標準誤差(SEM)を1つ足したものを示すエラーバーを、次いで、元の単位に戻し変換し、対数軸上にプロットした。異なる時点における同じ患者についての値を比較する場合、基線と比較した値を用いて、マッチドペア(matched pairs)に対するWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。発熱を有する対象または発熱を有さない対象の間の比較は、Mann-Whitney検定を用いて評価した。異なるパラメーター間の相関を評価する場合、対象内の相関は、Spearman相関係数および複数の時点からのデータを用いて計算した。計算した計数を異なる対象にわたって平均し、符号付き順位検定により有意性を試験した。他に記されない限り、全てのp値は両側性であった。Prism v. 4.0a(GraphPad Software; San Diego, CA)およびSAS v. 9.1(SAS Institute, Cary, NC)を用いて、統計学的有意性およびグラフィック出力を作製した。マウス実験についての統計学的分析は、Graph Pad Prismバージョン5により行った。Mantel-Coxログランクを用いて、生存曲線を比較した。シトルリンデータ(ここでは、データを1標本t検定により100%の理論上の平均と比較して分析した)および血液学的分析(表1)(ここでは、アンペアド(unpaired)t検定を行った)を除いて、両側t検定(Mann-Whitney)を、全体を通して行った。アンペアドt検定は、同等の分散を仮定しない。全ての実験において、P値<0.05を、帰無仮説を棄却する。図中に示される場合、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0071】
網掛けした部分は、中央値が、月齢が一致する0Gy対照の正常範囲に該当する値を示す。▲0Gyに対して統計学的に有意;●7Gyに対して統計学的に有意;■VEH/ENRに対して統計学的に有意;▼ENRに対して統計学的に有意。全てp<0.05。
【0072】
結果
ヒト骨髄破壊HSCTは、初期の好中球減少症、内毒血症、BPIの欠乏およびエンドトキシンに対する宿主応答の証拠に関連する。
本発明者らは、HSCTのための骨髄破壊処置を受けた患者におけるエンドトキシンおよびBPIの血漿レベルを試験した。48人の患者のうち39人は、1375(n=1)または1400(n=38)cGyのTBIを含む化学放射線療法を受けたが、9人は、破壊と組み合わせた化学療法のみを受けた。予測される通り、骨髄破壊治療に続く同種HSC注入は、PBカウントの低下および回復をもたらした(
図1A)。骨髄破壊処置の完了(D0)までに、内毒血症は、容易に検出可能であった(
図1B)。同時に、血漿BPI濃度は、急速に低下し(D7の中央値は71倍、四分位間の範囲は、9〜193倍低下した;
図1B)、これは、絶対的な好中球カウントと相関した(ANC;Spearman r=0.66;p<0.001)。ANC最下点(D7)において、血漿BPIは、37/48の患者(77%)において検出不能であり(<100pg/mL)、エンドトキシン活性アッセイにより評価された患者の80%(27)は、内毒血症であった。
【0073】
末梢血(PB)単球上のTLRエンドトキシン受容体TLR4およびmCD14成分は、それぞれ、表面発現の増加および現象を示し、これは、初期のBP単球細胞の生理活性エンドトキシンに対する暴露と一致する(28、29)(
図1C)。よく記載されたTLR4の下流の続発症であるその後のIL−6の上昇と発熱は、BPI最下点(D7、
図1D)において最大であった。IL−6濃度の患者内変化は、EAAと正に相関し(Spearman:0.48、p=.01)、より高いレベルのIL−6濃度は、BPIレベルと逆相関した(Spearman:−.30、p<.0001)。熱およびBPIレベルは、D7において何らの関連も示さず、これはおそらくは、患者の80%近くが検出不能なBPIを有したからである。しかし、D14において、発熱を有した患者は、無熱患者より低いBPIレベルを有した(中央値:検出不能・対・3475pg/mL、p=.01)。重要なことに、HSC注入の直前のD0におけるより低い血漿BPI濃度は、より長い時間の好中球生着と関連し(p=.03、Spearman r=−.32)、血小板回復まで時間がより長いという傾向と関連した(Spearman r=−.26、p=.08)。
【0074】
これらの結果は、内毒血症とカップリングしたBPIの欠乏は、骨髄破壊後のエンドトキシン関連毒性に寄与し得ることを示唆し、BPIの補給は、これらの毒性を弱毒化し得るという可能性を提案する。HSCの投与は骨髄破壊後の生存を可能にするが、HSCの支持は、非意図的な放射線暴露の後では不可能である。HSCなしでの放射線の緩和は、ヒトにおいて実験的に取り組むことはできないので、本発明者らは、マウスモデルを使用して、この仮説を試験した。
【0075】
BALB/cマウスにおける7Gyの一回照射TBIの毒性の特徴づけ
潜在的に致死性の放射線暴露をモデル化するために、本発明者らは、BALB/cマウスにおいて、BM形成不全、GI毒性および高率の初期の死亡と関連する一回照射TBIの用量を定義した。7Gyの一回照射は、12週齢のBALB/cにおいて、30日までの95〜100%の死亡率(LD
95/30)と関連した(
図2A)。7Gy暴露の致死性は、後に続く緩和実験の各々において、再現性よく観察された:5/90の7Gy照射マウス(5.5%)のみが、D30まで生存し、別々の実験における生存率の中央値は、12〜15日間の範囲であった。7GyのTBIの後で病理組織学により評価した小腸上皮アポトーシスは、D3において最大であり、機能的GI腸細胞の質量に直接的に比例する血漿シトルリンレベルの低下と平行した(30)(
図2B)。両方のGI粘膜の所見は、D6〜9までに改善した。内毒血症はまた、D3までに検出可能であり、死亡の直前により高く急上昇するまで持続した(
図7)。D3までに、BMは無形成であり(
図2C)、BMの単球細胞(MNC)の含有量は、対数2つ分近く同時に低下し、これは、造血幹(LSK、Lin
- Sca-1
+ c-Kit
+)および前駆体(LK、Lin
- Sca-1
- c-Kit
+)細胞の減衰を含んだ(
図2D、E、F)。
【0076】
ヒトHSCTの間に経験される粘膜の傷害、炎症および毒性の程度は、骨髄破壊の強度に関連づけられている(31)。モデルが適切に骨髄破壊的であることを確認するために、本発明者らは、7および6.5Gyの造血に対する効果を比較した。組織形成不全は、TBIの用量に関わらずD3において同一であったが、マウスは、6.5Gyの10および15日後において7Gyよりも有意に多いBMのMNC、LKおよびLSK3を有した(
図2D、E、F)。7Gyコホートにおいて、D15までに有意な回復は観察されなかった。7Gyへの暴露の後で、その後の緩和実験を行った。
【0077】
rBPI
21およびエンロフロキサシン(ENR)投与は、TBIに関連する死亡率を著しく低下させる
rBPI
21と、シプロフロキサシンに類似するフルオロキノロン系抗生物質である経口ENRとの組み合わせ(rBPI
21/ENR)を、LD
95/30のTBI用量の7Gyの24時間後に開始し、D30まで継続することにより、D30におけるマウスの生存率の統計学的に有意な改善がもたらされた(
図3)。2回の複製実験のコンポジット分析(n=50マウス/アームを集積する)において、rBPI
21/ENR群の生存率は、VEH/ENRのもの(VEHは、rBPI
21のための処方バッファーを表わす)、ならびにENRまたは7Gy単独群を凌いだ(ペアワイズMantel-Coxログランクにおいて、それぞれ、<.0001、0.03および<.0001)。危険性があった36個体のrBPI
21/ENR処置マウスのうち2個体の死亡のみが、2週間後に起こり、一方、この間隔の間の他の群における喪失は、危険性があった動物のうちの38〜79%の範囲であった。7Gyの後でのD30の生存率は、rBPI
21(1/30生存者)またはそのVEH(1/30生存者)のいずれか単独によっては改善されなかった。したがって、rBPI
21単独治療は、LD
95/30のTBI用量における緩和戦略としては探究しなかった。
【0078】
IVボーラスまたは皮下(SC)注射により投与された場合、rBPI
21は、マウス中で3時間の半減期を有する。最適な持続的または96時間のIVまたはSC注射レジメンは可能ではないので、本発明者らは、1日2回のSC投与を用い、全ての処置をTBIの24時間後に開始し、D30まで継続するることを選択した。
図3において説明されるとおり、rBPI
21/ENRレジメンのための対照であるVEH/ENRは、経口ENR単独よりも悪い30日間の生存率と関連し(組み合わせたn=50/アームによる2回の複製実験についてのペアワイズMantel-Coxログランクにより、p=0.0002)、このことは、SC投与に伴う反復しての取り扱いおよび局所的な皮膚外傷が、著しい毒性と関連したことを示唆した。局所的皮膚傷害は、反復してrBPI
21またはVEHを注射された照射マウスにおいて、ENR単独で処置された照射マウスと比較して、容易に観察される(
図8)。
【0079】
14日後に注射を中止する短縮スケジュール(
図3BにおいてrBPI
21(14)およびVEH(14)と表わされる)を調査した。集団災害のセッティングにおいては経口での抗生物質処置がより容易に配備し得ることを理由として、ENRのスケジュールは変更しなかった。rBPI
21(14)/ENRは、より長期のスケジュールと同じ生存についての利点を有した(
図3B)。rBPI
21(14)/ENRを投与された6個体の照射マウスを、D30まで追跡し、6個体のマウスのうち5個体がD131において生存し続けており、健康に見えた。
【0080】
rBPI
21/ENR投与は、TBI後の造血毒性を緩和する
造血に対する効果を特徴づけるために、本発明者らは、洗い流されたBM腔から回収されたBM MNCを係数した(
図4)。D10において、全照射群は、処置に関わらず、月齢が一致する未照射の対照よりも少ないBM MNCを示した(p<.0001)。しかし、BM MNC含有量は、rBPI
21/ENR処置マウスにおいて、単独またはENRもしくはVEH/ENRと共に7Gyを受けたマウスにおいてよりも、有意に多かった(それぞれ、p=.0003、.001および<.0001)。この同じパターンは、rBPI
21/ENR処置マウスが一貫して他の群より統計学的に有意に多いBM MNC含有量を有したので、D15およびD19において繰り返された(
図4)。rBPI
21/ENR処置は、7Gy単独の後で観察されるより一貫して多いBM MNC含有量と関連した。
【0081】
この急激なBM MNCの増加は、D19において病理組織により評価したBMの細胞充実性において反映された(
図4)。rBPI
21/ENR処置された照射マウスは、80〜90%の範囲の良好に回復したBM細胞充実性を示すが、一方、7Gy単独、ENR、およびVEH/ENRで処置されたマウスは、それぞれ、20、<5、および10〜50%であると推定された。十分な細胞充実性を有する全てのマウスにおいて三血球系造血が観察され、マウスのサブセット、特に著しくはrBPI
21/ENRを投与されたものは、骨髄球の優性および巨核球の増加を示した(
図9)。D30までに、全ての生存マウスは、マウスTBI生存者において先に記載されたように(32)、改善された細胞充実性を示した。しかし、rBPI
21/ENR処置マウスは、より強力な細胞充実性を示し、ENRまたはVEH/ENRよりも有意に多いBM MNCを有した(
図5)。細胞充実性の回復はまた、D30において、より限定された7Gy生存者のプールにおいても観察された。
【0082】
LSKおよびLKの数は、各時点において、月齢が一致する未照射の対照より低いままであったが、rBPI
21/ENRの投与は、TBI後の最初の週におけるLSKおよびLKのBM細胞の数の増加と関連した(
図6)。rBPI
21/ENRマウスにおける後肢1本毎のLSKおよびLKの両方の絶対数は、D10およびD19において、7Gy単独、ENRまたはVEH/ENR処置マウスにおけるよりも有意に多かった。他の処置は、未処置の照射群との差異に関連しなかった。D30において、処置群の間で、または処置と正常対照との間で、生存するマウスの間に差異は存在しなかった。
【0083】
BMの変化は、末梢血カウントの変化と相関した。PBカウントに対する7Gyの効果は、実質的に全ての測定した血液学的パラメーターにおいて観察することができた(表1)。rBPI
21/ENR処置は、白血球(WBC)、好中球、単球および血小板カウントの、7Gy単独、ENRまたはVEH/ENR処置より大きな回復と関連した。他の群とは対照的に、rBPI
21/ENR処置マウスのWBC、好中球および単球レベルの中央値は、正常の範囲内であった。ヘモグロビン中央値もまた、rBPI
21/ENR処置マウスにおいて、より高かったが、この差異は統計学的有意に達しなかった。rBPI
21/ENR処置マウスのWBCおよび好中球は、D30においてENR処置動物よりも有意に高いままであり、この時点において存在した7Gy単独またはVEH/ENRマウスは、他の群との意義のある比較のためには少なすぎた。同等の造血毒性の緩和が、より短いrBPI
21(14)/ENRスケジュールによって観察された(
図12および13)。
【0084】
rBPI
21投与は、炎症関連ケモカインを著しく増加させる
rBPI
21処置は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(
図14)、マウスケラチノサイト走化性因子(マウスKC;ヒトのホモログは、Gro-アルファ、IL-8を含む)(
図15)、および単球走化性タンパク質−1(MCP-1、別名ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2またはCCL2)などの炎症関連ケモカインを有意に増加させる(
図16)。血漿中のG-CSFおよびマウスKCのBPI刺激は、事前の放射線により増強されるが、これにアイソレートされない。理論により拘束されることは意図しないが、このことは、造血効果が現実化される1つの機序を表わす。照射およびrBPI投与の後で達成される血漿レベルは、組換えG-CSFのIVの薬理学的量の注入と一致する。データは、単独またはエンロフロキサシンと組み合わせてのrBPIをSCで1日2回(BID)投与された照射マウスにおけるG-CSFの高度に有意な増大(1〜3対数の増加)を示す。したがって、GCSFの上昇は、rBPIの関数であり、BPIとENRとの組合せに依存しない。それほどには著しくないが、統計学的に優位なG-CSFの上昇もまた、rBPIの単回注射または1日2回(BID)のSC注射のいずれかを受けた未照射のマウスにおいても観察された。
【0085】
骨髄破壊的照射の毒性に関与し得る分子的および細胞的変化を同定するためにHSCTを受けている患者における観察的コホート研究を行った。本発明者らは、骨髄破壊処置に常に続く好中球減少症が、好中球により誘導される強力なエンドトキシン中和活性を有するタンパク質である(25、26)血漿BPIの急激な枯渇と、内毒血症と時間的に同時に関連することを観察した。これらの変化は、全身のエンドトキシン活性の増大と一致する細胞(mCD14、TLR4表面レベル)、血漿(IL-6)および生理学的(発熱)な変化に平行した(24、25)。本発明者らはまた、HSC注入の時点(D0)におけるより低い血漿BPI濃度が、より遅い骨髄球の生着と相関したことを観察し、このことは、エンドトキシンが、注入の時点において、およびその後の期間にわたり、HSCに対して直接的にまたは間接的に何らかの負の影響を発揮することを示唆する。外来性BPI補給が、粘膜の傷害、内毒血症および長期のBM形成不全をもたらすTBI用量に暴露されたヒトにおいて放射線の毒性を緩和する能力を、次いで調べた。BALB/cマウスにおけるLD
95/30の一回照射による骨髄破壊TBIモデルを用いて、本発明者らは、放射線暴露の24時間後に開始されたrBPI
21とENRとの組合せが、3分の2またはそれより多くの動物の生存に関連したことを示した(p<0.0001)。本発明者らは、rBPI
21およびフルオロキノロン系抗生物質を、すぐに実施可能な戦略として選択した;いずれの剤も、健康および病気のヒト(複数の臓器の易感染性を有するヒトを含む)において、生物学的活性および高度に有利な安全性プロフィールを有する(33〜43)。rBPI
21は単独では生存率を改善しなかったが、一方、ENRは単独で幾らかの生存についての利益をもたらした。フルオロキノロン単独の緩和効果は可変性であり、これは、潜在低に、動物モデルおよび処置デザインを含む差異に関連する(15、16)。本研究においては、ENR処置の生存についての利益は、注射レジメンの反復傷害に関わらず、rBPI
21/ENRのものよりも有意に低かった。さらに、VEH/ENRまたはENRで処置された照射された動物は、試験した全ての造血パラメーターの回復の遅延により特徴づけられた。rBPI
21/ENRのみが、生存率の改善およびより迅速かつ完全な造血の回復の両方と、一貫して関連した。これらは、rBPI
21/ENR処置動物の、D19において記録された正常に近いBM細胞充実性およびPBカウントの再構成の後での、97%の生存により示唆された知見に関連し得る。
【0086】
ヒトにおけるARSの罹患率および死亡率に対する造血症候群の寄与(1、2、4、44〜46)は、造血発生に対するrBPI
21/ENRの観察される効果の関与を強調する。同種HSCTは、骨髄破壊により生じるBM不全を緩和する(5)が、資源集約的なHSCTを集団放射線暴露の間に迅速かつ首尾よく移植することができるという可能性は低い(44〜46)。フルオロキノロン(16)およびTLRアゴニストであるフラゲリン(19、21)およびエンドトキシン(17)を含む複数の剤(47)が、動物モデルにおいて、TBIに先だって投与された場合、何らかの放射線保護をもたらす。対照的に、放射線の後で投与された場合に効力(すなわち、放射線緩和)を示す剤は殆どなく、効力は、一般的に、放射線の後数分から数時間以内の投与に依存してきた。残念ながら、緩和戦略のかかる迅速な配備は可能性が低く、24時間またはそれより長く遅延してもよい戦略を非常に望ましいものとしている。
【0087】
暴露された個体を正確にトリアージし、緩和処置から利益を受ける可能性が最も高い個体を決定することができる、確立された放射線の線量測定技術は存在せず、放射線緩和剤の効力および毒性を研究するためのHSCの支持なしでのTBIのヒトの治療的適用も存在しない。これらの限定要因は、最小限の影響を受けた集団または重篤に病気の集団のいずれにおいても毒性をもたらす可能性が低い戦略を選択することの重要性を強調する。ここで研究される戦略の成分は、このクライテリアを満たす。フルオロキノロンの獣医薬であるENRのヒトの同等物は、シプロフロキサシンであり、これは1987年にFDAに認可された。フルオロキノロンは、優れた経口でのバイオアベイラビリティーを有し、良好に耐容され、骨髄破壊的化学放射線療法の後で広範におよび安全に用いられてきた(42、43)。rBPI
21は、可溶性形態において利用可能であり、備蓄を容易にする2〜8℃で保存された場合の安定性が実証されている。これは、SC、IVおよびIPで投与することができ、動物においては鼻内形態において効力が示されている。純粋な内毒血症およびグラム陰性菌血症の動物モデルにおける効力に加えて、rBPI
21は、ヒトにおける内毒血症の徴候および症状を抑止し、関連するサイトカインの調節不全および凝固傷害を低減または除去することができる(38、39)。小児および髄膜炎菌血症を有する対象または主要な手術手法を経験している対象を含む1100人を超える正常な志願者および重篤に病気の患者を登録した第I〜III相の治験において、著しい毒性は観察されていない(33〜41)。パイロット実験(n=4)において、本発明者らはまた、rBPI
21を、骨髄破壊的HSCTの一部としてTBIを受けているが起因する毒性を何ら有さない患者にも投与した(
図11)。まとめると、これらのデータは、rBPI
21/ENRが、あまり考証されていない程度の放射線を暴露された個体に安全に投与できることを示唆する。
【0088】
自然災害、核戦争またはテロリズムの結果として生じる、または意図的な医療上の暴露の有害な結果としての放射線傷害についての世界的な懸念の増大は、本発明者らを、BPIの補給が効果的な放射線緩和戦略に翻訳され得るか否かについての調査に至らせた。本発明者らのデータは、致死性であり得る放射線暴露の24時間も後に開始されたrBPI
21とフルオロキノロン抗生物質との組合せが、生存率を改善する能力、ならびに必要な支持治療の範囲および期間を限定する能力の両方を有することを示唆する。エンドトキシンに対するマウスのヒトと比較して相対的に低い感受性、最適以下の投与量、ならびにこのモデルにおけるSC注射の反復的ストレスおよび炎症応答を考慮して、本発明者らの結果は、この組み合わせの潜在的な利点を過小評価している可能性がある。TBIの24時間後に開始される処置の観察される効力は、他のアプローチにより殆ど共有されず、この利点において重視される。rBPI
21およびフルオロキノロンのヒトの安全性の記録は、迅速な採用のためのプラットフォームを提供し、これは、放射線線量測定の現在の限定要因から生じる必須の過剰処置を考慮すると、特に説得力があり、予期されない副作用の可能性を低減することができる。エンドトキシンを中和することに加えて、rBPI
21は抗菌活性を発揮し、これは、フルオロキノロンの抗生物質活性に加えて、さらなる多剤併用を潜在的に削減し、感染症についての多くの理由を有する照射された個体における耐性種の出現を最少化することができる。この報告は、rBPI
21が放射線毒性に影響を及ぼす機序を探究するための基礎を提供する。rBPI
21または類似の剤についての処方、投与レジメンおよび治療の長さの最適化は、同様に望ましいが、放射線災害の場合における、この適応症についてのrBPI
21の認可の考慮およびその後の組み合わせ緩和治療のための備蓄は、正当であると考えられる。
【0089】
参考文献
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】