特許第6040228号(P6040228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6040228-診断用ペプチドの検出 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040228
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】診断用ペプチドの検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20161128BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20161128BHJP
   G01N 33/564 20060101ALI20161128BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01N33/53 D
   G01N33/531 A
   G01N33/564
   C07K16/18ZNA
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-511860(P2014-511860)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-517296(P2014-517296A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012059636
(87)【国際公開番号】WO2012163768
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】1108970.3
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1111469.1
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503259129
【氏名又は名称】ノルディック・ビオサイエンス・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】NORDIC BIOSCIENCE A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】レーミング,ディアーナ・ユリー
(72)【発明者】
【氏名】カルスダル,モルテン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシリアディス,エフスタティオス
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/117694(WO,A2)
【文献】 特表2002−512939(JP,A)
【文献】 特開2009−155226(JP,A)
【文献】 特開2006−133177(JP,A)
【文献】 国際公開第99/028344(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液またはその流体成分を含む試料中のタンパク質のシトルリン化断片についてアッセイする方法であって、
前記試料を、シトルリンを含む抗体結合部位を末端に有する前記タンパク質のシトルリン化断片に対して特異的な結合親和性を有する抗体またはその断片と接触させるステップと、ここで、前記抗体または抗体断片の結合には、前記結合部位における特異的末端アミノ酸配列と前記シトルリンの両方の存在が必須であり、
前記抗体の前記タンパク質断片に対する結合を検出するステップと
を含み、
前記抗体または結合断片が、以下のC末端アミノ酸配列:
【表1】
のいずれか1つまたは以下のN末端配列:
【表2】
のいずれか1つを含む結合部位に対する特異的結合親和性を有する、方法。
【請求項2】
前記結合の検出が定量的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結合の量を、健常個体の集団について確立された対照値および線維性疾患または関節リウマチを特徴とする個体の集団について確立された対照値と比較する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料中のペプチドが、前記抗体または抗体断片との結合について、前記抗体または抗体断片と結合する既知の濃度の結合剤と競合する競合アッセイとして行われる、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質のペプチド断片と特異的に結合する抗体または抗体断片であって、前記ペプチド断片が、特異的結合のために、少なくとも1つのシトルリンを含む抗体特異的N末端またはC末端アミノ酸配列を有することが必須であり、
前記抗体または抗体断片が、以下のC末端アミノ酸配列:
【表3】
のいずれか1つまたは以下のN末端配列:
【表4】
のいずれか1つを含む結合部位に対する特異的結合親和性を有する、抗体または抗体断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環中のシトルリン化ペプチドのアッセイに関し、複数の生理的状態および疾患に関する診断上意義のある情報を生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸アルギニンをシトルリンに修飾することは、翻訳後修飾であり、PAD酵素(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ)の存在によりこの修飾が促進される。シトルリンの存在およびアルギニンからの修飾は、RA患者において特に重要である。なぜなら、いくつかの自己抗体がシトルリン特異的であることが見出されているからである。これらの自己抗体は、リウマチ因子のような従来のRAマーカーと比較して、特異性および感受性が増加している。
【0003】
十分な証拠はないが、コラーゲンおよびその他のタンパク質に対する自己免疫は、RAの場合における病原と関連すると考えられることが示唆されており、よって、自己免疫(自己抗原)の道筋をたどることにより、この疾患の病原の証拠をより多く発見できると考えられる。
【0004】
シトルリン化は、アポトーシス小体において一般的に見出されるので、分解についてのマーカーとして作用すると考えられる。
【0005】
シトルリン化ペプチド、特に環状シトルリン化ペプチドに対するヒト抗体(抗CCP抗体)の検出は、関節リウマチの実験室における診断およびモニタリングにおける標準であるが、ヒト血清または血漿におけるシトルリン化タンパク質の定量の臨床的利用性について対処した研究は比較的少ない。
【0006】
Takizawaら(Takizawaら、2006)は、ヒト体液中のシトルリン化自己抗原の存在について調査した。合成ペプチドR16Cit(EGGGVRGPRVV)およびR252Cit(GNEITRGGSTS)(ともにフィブリノゲンを起源とする)に対してそれぞれ産生された2つのモノクローナル抗体、すなわちcF16.1およびcF252.1が、シトルリン化フィブリノゲンの検出のためのELISAにおいて被覆抗体として用いられた(Rは、アルギニンから置換されたシトルリンを示す)。2つのモノクローナル抗体の正確なエピトープ特異性は、報告されなかった。関節リウマチの患者を起源とする滑液について、ELISAにおいて陽性シグナルが検出されたが、全てのRA(および対照)血漿試料は陰性のままであり、Takizawaは、フィブリノゲンが血液中でシトルリン化されないと結論付けた。
【0007】
循環中のシトルリン化フィブリノゲンの欠如は、RA患者の別の研究において後に確認され(Van Steendamら、2010)、循環免疫複合体がフィブリノゲン−βおよびフィブロネクチンを、非シトルリン化形態でのみ含有することが報告された。一方、シトルリン化ビメンチンおよび少量のフィブリノゲン−βが、RA患者の滑液からの免疫複合体において検出された。
【0008】
Changら(Changら、2005)は、RA患者の血漿におけるシトルリン化フィブロネクチンの存在について報告した。レベルは定量されなかったが、健常対照および全身性エリテマトーデス(SLE)の患者と比較して、RA血漿においてより高いと報告された。彼らは、ヒトフィブロネクチンと結合するモノクローナル抗体(Abcam)を被覆体として用いるサンドイッチELISAを用い、抗シトルリンウサギ抗体(Biogenesis)を検出体として用いた。サンドイッチアッセイにより検出されたフィブロネクチン分子の特徴決定は、示されなかった。しかし、アッセイに組み込まれた抗体は、特異的タンパク質分解性のシトルリン化フィブロネクチンネオエピトープを定量するためには役に立たないであろう。なぜなら、被覆抗体により認識されるヘパリン結合ドメイン中にエピトープを共有するインタクトなシトルリン化フィブロネクチンからも、シトルリン化フィブロネクチン断片からも、上記ネオエピトープを区別できないからである。
【0009】
また、Zhaoら(Zhaoら、2008)は、RA血漿を起源とする高分子量免疫複合体中のシトルリン化フィブリノゲンの存在について報告した。簡単に述べると、RA血漿試料から得られた免疫複合体の分画の後に、シトルリン化フィブリノゲンの存在を、イムノブロット上で抗シトルリン検出キット(Upstate、Chicago、IL、USA)を用いて決定した。このようなバンドは、健常対照血漿からの対応するイムノブロットにおいて存在しなかった。
【0010】
Tillemanら(2008)は、炎症性関節炎、主に関節リウマチの患者から得られた滑液細胞質タンパク質抽出物中のシトルリン化ビメンチンの断片の存在について報告した。質量分析により、シトルリン化フィブリノゲン、シトルリン化フィブロネクチンおよびシトルリン化ビメンチンが、RA患者の滑液中で検出された(Tabushiら、2008)。
【0011】
RAにおける自己抗体の大多数は、他の疾患の患者でも見出されるので、診断的利用性は限られている。しかし、いくつかの(比較的)特異的な自己抗原、特にシトルリン化残基を有するものが記載されており、これらは、シトルリン化フィラグリン、シトルリン化ビメンチンおよび環状シトルリン化ペプチドを含む(van Galenら、2005;Schellekenesら、1998)。
【0012】
Lundgrenら(2005)は、シトルリン化II型コラーゲンが、著しい関節炎誘発性の特性を有し得ることを示唆している。その後の報告で、RA患者の滑液中のシトルリン化3重らせんII型コラーゲンエピトープの存在が確認され(Uysalら、2009)、II型コラーゲン(天然およびシトルリン化の両方)に対する自己免疫がRA病原性において重要な因子であることが提案された。滑液中でのシトルリン化II型コラーゲンの検出は、捕捉抗体として天然II型コラーゲンに対するモノクローナル抗体を、および、検出抗体としてシトルリン化II型コラーゲンと結合するモノクローナルACC2を用いて達成された。後者の抗体は、シトルリン化フィブリノゲンと交差反応性であった(Uysalら、2009)。
【0013】
脱タンパクおよび高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量に続く循環中のシトルリンレベルの定量は、小腸上皮放射線損傷の生理的マーカーであると報告された(Lutgensら、2003)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
我々は、今回、シトルリン化ペプチドを、血液または血漿のような流体成分中において、シトルリンの存在とペプチドの末端アミノ酸配列とを組み合わせたエピトープに対して特異性を有する抗体を用いて検出できることを確立した。我々は、シトルリンがタンパク質断片の端またはその付近に存在する場合に、その断片は循環中で優先的に残存すると仮定する。特異的アミノ酸配列と関連したシトルリンに対する特異性を有する抗体の使用は、該アミノ酸配列が由来する特異的タンパク質の断片として得られるペプチドの検出を可能にする。このことは、様々なプロテイナーゼによる分解に対する耐性を変化させるシトルリン化が原因であると考えられる。このようなペプチドの定量により、関連するタンパク質の産生および/または分解が変化する様々な疾患状態と関連する診断情報を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、今般、血液またはその流体成分を含む試料中のタンパク質のシトルリン化断片についてアッセイする方法であって:前記試料を、シトルリンを含む抗体結合部位を末端に有する前記タンパク質のシトルリン化断片に対して特異的な結合親和性を有する抗体またはその断片と接触させるステップと、ここで、前記抗体または抗体断片の結合に、前記結合部位における特異的末端アミノ酸配列と前記シトルリンの両方の存在が必須であり;前記抗体の前記タンパク質断片に対する結合を検出するステップとを含む方法を提供する。シトルリンは、前記配列中の完全に末端の位置であってよく、このことは、抗体結合のために必須であり得る。エピトープの位置は、N末端またはC末端であってよい。好ましくは、抗体が必須とするアミノ酸配列は、前記タンパク質に特異的である。
【0016】
好ましくは、前記抗体またはその断片は、シトルリンを含む抗体結合部位を末端に有するビメンチンのシトルリン化断片に対して特異的な結合親和性を有し、ここで、前記抗体または抗体断片の結合には、シトルリンを含有する末端ビメンチンアミノ酸配列の存在が必須であり、前記ビメンチン断片に対する前記抗体の結合を検出する。
【0017】
好ましくは、前記抗体またはその断片は、SOCS−2、アルファ1アンチトリプシン、バーシカン、ビグリカンまたはラミニンの、シトルリンを含む抗体結合部位を末端に有するシトルリン化断片に対して特異的な結合親和性を有し、ここで、前記抗体または抗体断片の結合には、シトルリンを含有する前記タンパク質に特異的な末端アミノ酸配列の存在が必須であり、前記断片に対する前記抗体の結合を検出する。
【0018】
あるいは、前記抗体またはその断片は、エラスチンまたはV型およびVI型コラーゲンの、シトルリンを含む抗体結合部位を末端に有するシトルリン化断片に対して特異的な結合親和性を有し、ここで、前記抗体または抗体断片の結合には、シトルリンを含有する前記タンパク質に特異的な末端アミノ酸配列の存在が必須であり、前記断片に対する前記抗体の結合を検出する。
【0019】
結合の前記検出は、好ましくは定量的である。典型的には、結合の量を、健常個体の集団について確立された対照値および線維性疾患または関節リウマチを特徴とする個体の集団について確立された対照値と比較する。
【0020】
前記方法は、前記試料中のペプチドが、抗体または抗体断片との結合について、前記抗体または抗体断片と結合する既知の濃度の結合剤と競合するような競合アッセイとして行うことができる。
【0021】
血液またはその成分中でシトルリン化ペプチドのレベルの変化が検出できる疾患は、関節リウマチならびに肝線維症、皮膚線維症および肺線維症のような線維症が関与する様々な疾患を含む。関連するタンパク質、疾患状態および具体的な例示的ペプチド末端配列の発生に関与するプロテイナーゼを、以下の表に列挙する。
【表1】
【0022】
本発明により検出できる他のシトルリン化ペプチドは、以下の末端配列を含有するものを含む。
【表2】
【0023】
標的にできる他の配列は、以下の表に示す通りである。
【表3】
【0024】
標的にできるさらなる配列を、以下の表に示す。
【表4】
【0025】
アッセイは、ELISAフォーマットまたはRIAフォーマットを含む任意の既知の型の競合アッセイフォーマットを用いて行ってよい。
【0026】
抗体および抗体全体の代わりに採用できる抗体断片は、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、またはそれらに限定されないが、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片を含むその免疫反応性断片(すなわち、同じ抗原決定基と結合できる)を含む。
【0027】
本発明は、タンパク質のペプチド断片と特異的に結合する抗体または抗体断片であって、前記ペプチド断片が、特異的結合のために、少なくとも1つのシトルリンを含む抗体特異的N末端またはC末端アミノ酸配列を有することが必須である抗体または抗体断片をさらに提供する。このような抗体または抗体断片は、上記の末端アミノ酸配列のいずれか1つに特異的であってよい。
【0028】
添付の図面については、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】線維化した肝臓、皮膚および肺の抽出物のウェスタンブロットにおいて、Milliporeの抗シトルリンキット中の抗体により検出されたシトルリン化タンパク質を示す図である。
図2】3つの異なる線維化組織におけるシトルリン特異的反応性を示す図1からのデータの、単純化したまとめを示す概略図である。点のバンドは健常および疾患組織の両方において検出された分子の存在を示し、実線のバンドはシトルリン残基を有する疾患特異的(線維化)断片を示す。
図3】シトルリン化ビメンチンペプチド配列であるRLRSSVPGV−Citに対して産生された2つのモノクローナル抗体の、選択ペプチドに対する特異的反応性と、伸長ペプチドに対するいくらかの交差反応性とを示す、実施例2において得られた結果を示す図である。非シトルリン化ペプチドであるRLRSSVPGV−Citに対する結合は検出できなかった。
図4】ビメンチンを起源とし、NB212 ELISAにおいて検出されたシトルリン化ペプチド断片の濃度の上昇を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を、以下の実施例によりさらに明らかにし、説明する。
【実施例1】
【0031】
線維化組織におけるシトルリン化タンパク質の存在を調べるために、修飾抗シトルリン抗体を利用するUpstate社製のシトルリン検出キットを用いていくつかのウェスタンブロット実験を行った。この抗体は、シトルリンが出現するペプチドのアミノ酸配列に関係なく、シトルリンを含むペプチドと反応する。
【0032】
3つの異なる分類の線維化試料を分析した。CCl処置ラットからの肝臓組織、ブレオマイシン処置マウスからの皮膚および線維化肺組織を、それぞれ以下のプロトコールを用いて抽出した。組織を、液体窒素を用いて急速冷凍し、鋼製の乳鉢中で粉砕した。これを、次いで、ROCHE社製のプロテアーゼ阻害剤を含む0.5M酢酸溶液で希釈し、穏やかに振とうしながら4℃にて1晩放置した。溶液を、次いで、60%の振幅にて各3秒間、5パルス音波処理した。濃度を算出し、溶液を−80度にて貯蔵した。反応性のバンドは、種々の異なる分子量におけるシトルリン特異的反応性を表す。反応するバンドのいくつかは、異なる組織間で共通するが、その他のバンドは、疾患組織に特有である。各組織につき15の疾患試料および5つの対照試料を用いた。代表的な結果を図1に示す。
【0033】
図1におけるデータを単純化した概略図を図2に示し、この図は、全ての疾患について特異的なシトルリン化タンパク質(実線)および対照においても見出されるもの(点)を示し、図1の集合的な結果を分析するために作り出された。
【0034】
集合的な予備的結果は、健常組織に存在しないシトルリン化タンパク質が疾患組織に強く存在することを示す。このようなシトルリン化タンパク質/断片は、選択された疾患のバイオマーカーとして役に立つ可能性がある。
【実施例2】
【0035】
シトルリン化ビメンチン配列RLRSSVPGV−Citに対するモノクローナル抗体を、KLH−CGG−RLRSSVPGV−Citを用いる免疫化およびビオチン−RLRSSVPGV−Citとの反応性についてのスクリーニングにより、従来の技術を用いて産生した。抗体の特異性を、その後、以下に記載するような競合ELISAにおいて評価した。
【0036】
ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(Roche)を、5ng/mlのBio−RLRSSVPGV−Citを含有する25mM Tris−BTB緩衝液(BSA、Tween20およびBronidox)である被覆緩衝液100μL/ウェルとともにインキュベートした。振とうしながら20℃にて30分間インキュベートした後に、プレートを5回洗浄し、20μL/ウェルの標準物質(合成ペプチドRLRSSVPGV−Cit)、QC試料および希釈未知試料を加えた。その後、各ウェルに、インキュベーション緩衝液中に120ng/mlに希釈した100μLのモノクローナル抗体を加え、プレートを振とうしながら20℃にて1時間インキュベートした。洗浄の後に、100μLのHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンを各ウェルに加え、プレートを振とうしながら20℃にて1時間インキュベートした。この後に、5回の洗浄ステップを行い、その後、100μL/ウェルのTMB(TMB:Kem−En−Tec cat.4380−100−125)を加え、暗所で振とうしながら20℃にて15分間インキュベートした。最後に、100μL/ウェルの停止溶液を各ウェルに加え、試料を、650nmを基準として450nmで、ELISAリーダーにて読み取った。
【0037】
選択されたモノクローナル抗体NB212の選ばれたペプチドに対する反応性を、マイクロタイタープレートに結合させた配列RLRSSVPGV−Citのペプチドと、モノクローナル抗体との結合において競合する溶液中の選ばれたペプチドとを採用する競合アッセイにおいて評価した。結果を図3に示す。抗体は、末端シトルリン残基を有する無作為配列のペプチド(DGVPGKDGP−Cit)と結合せず、末端シトルリンがない標的アミノ酸配列RLRSSVPGVと結合せず、標的ペプチドの伸長バージョンRLRSSVPGV−Cit−Lとだけ弱く結合することがわかる。よって、抗体は、シトルリン(この場合、末端位置にある)とビメンチンアミノ酸配列とをともに含有するエピトープと特異的に結合する。
【実施例3】
【0038】
ELISAを、基本的には図3を参照して上記した通りに行ったが、ヒト血清試料を、ウェルに2重で加える前に、10mM PBS−BTB緩衝液で1:8に予め希釈した。
【0039】
8つの血清試料を、肝線維症と診断された対象から得て、これらを、対照として提供される健常ボランティアからの6つの試料とともにELISAにおいて試験した。2回目の実験では、関節リウマチ(RA)の患者からの7つの血清試料を、5つの対照と比較した。結果を図4に示す。
【0040】
ビメンチンを起源とする循環シトルリン化ペプチド断片の劇的な上昇(モノクローナル抗体NB212により検出される)が、肝線維症の対象および関節リウマチの患者の両方において観察される。対照的に、比較的低いレベルのこれらのシトルリン化分子が、健常対照の対象の血液において見出される。
【0041】
本明細書では、明確にそうでないと示されない限り、用語「または」は、言及する条件のうちの1つだけを満たすことが要求される演算子「排他的または」ではなく、該条件のいずれかまたは両方を満たす場合に真の値を返す演算子の意味で用いられる。用語「含む(comprising)」は、「からなる」を意味するよりもむしろ「含む(including)」の意味で用いられる。上で記載される全ての先行する教示は、本明細書に参照により組み込まれている。本明細書における任意の先行する発表された文書についての記載は、それらの教示が、本出願の日付にてオーストラリアまたは他の場所において一般的な知識であることを認めるかまたは示すものとは解されないものとする。
【0042】
[参考文献]
【表5A】
【表5B】
図2
図3
図4
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]