【実施例】
【0062】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にするが、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。
【0063】
なお、本実施例、並びに比較例に使用する酸化触媒(DOC)及び触媒化燃焼フィルター(CSF)に使用されるアルミナの細孔径は下記に示す方法によって測定した。
【0064】
<細孔分布測定>
各種アルミナ粉末0.3gを乾燥後、Thermo社製PASCAL140−440を用いて、Hg圧入法により、アルミナの細孔分布を測定した{細孔径としてモード径(直径)を採用した}。
また、酸化触媒(DOC)および触媒化燃焼フィルター(CSF)を単独又はそれらを組み合わせた耐久仕様及びエンジンによる評価試験は下記に示す方法によって測定した。
【0065】
<触媒の耐久試験>
下記実施例、比較例で得られた酸化触媒(DOC)及び触媒化燃焼フィルター(CSF)を、電気炉内で空気雰囲気下、モデルガス評価試験用触媒は750℃、50時間、エンジン評価試験用触媒は750℃、100時間熱処理した。
【0066】
<触媒のモデルガス評価試験>
下記実施例1及び2、比較例1で得られた酸化触媒(DOC)は、コアドリル及びダイアモンドカッターを用いてモデルガス評価用触媒の大きさ(24mm径×66mm長さ、30mL)に切り出した後、750℃、50時間の電気炉による熱処理を実施し、モデルガス評価装置にて、昇温・降温ライトオフ試験を実施した。
1.昇温ライトオフ試験
モデルガス評価用触媒をモデルガス評価装置のホルダーに装着した後、表1に示すガス成分をGHSV(Gas Hourly Space Velocity:気体時空間速度、触媒単位体積当たりの反応ガスの流入速度)40,000/hrで流しながら、室温から400℃まで30℃/分の速度で昇温させる。その際、NO、CO、又はHCの酸化率が各々の数値に達した際の触媒の触媒床温度を計測した。なお、NOT30は、NOの30%が酸化された時の触媒の触媒床温度、COT75は、COの75%が酸化された時の触媒の触媒床温度、またHCT75はHCの75%が酸化された時の触媒の触媒床温度である。
【0067】
【表1】
【0068】
<触媒のエンジン評価試験>
下記実施例3〜7、比較例1〜4の酸化触媒(DOC)及び触媒化燃焼フィルター(CSF)は、750℃、100時間の電気炉による熱処理を実施した後、各々単独又はそれらを組み合わせてコンバーターに格納後、5Lディーゼルエンジンの排気口にコンバーターを装着して、以下の要領で定常試験と昇温・降温ライトオフ試験の2種類の評価試験を実施した。
【0069】
1.定常試験
1−1.NO酸化性能
ディーゼルエンジンの回転数を1,800rpmとし、触媒床温度を250℃及び300℃に固定し、触媒入口及び触媒出口から排気ガスの一部を吸引管で吸引し、NO計でNO濃度を測定し、その差から下記の式でNO酸化率を計算した。
NO酸化率(%)={(入口NO濃度)−(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)×100
1−2.軽油燃焼性
ディーゼルエンジンの回転数を1,800rpmとし、触媒床温度を250℃又は300℃に固定し、触媒入口の手前に設置した噴霧管から軽油を20mL/分(250℃)又は30mL/分(300℃)、5分間隔でON/OFF噴霧し、触媒出口の後ろに設置した熱電対で排気ガスの温度を計測し、軽油噴霧ON/OFFにおける排気ガス温度の上昇分{下記のΔT(℃)}とした。ΔTが高いほど軽油がより燃焼して発熱していることを示しているので、燃焼性に優れている。
ΔT(℃)=(軽油噴霧ON時の触媒出口排気ガス温度)−(軽油噴霧OFF時の触媒出口排気ガス温度)
【0070】
2.昇温・降温ライトオフ試験
ディーゼルエンジンの回転数を1,800rpmとし、触媒床温度を150℃に固定した後、10℃/分で400℃まで昇温させた後、10℃/分で150℃まで降温させた。この昇温時、NO、CO、又はHCの酸化率が各々の数値に達した際の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度を計測した。
なお、NOT30はNOの30%が酸化された時の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度、COT75はCOの75%が酸化された時の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度、またHCT75はHCの75%が酸化された時の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度である。
【0071】
[実施例1]
<酸化触媒DOC(1)の製造>
=下層=
BET比表面積150m
2/g、細孔径9nmのγ−アルミナ粉末Aを1kgと水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーαを得た。
続いてこのスラリーに一体型構造担体、すなわちハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch
2(465k/m
2)/8mil(0.2mm)、7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を浸漬させ、単位体積あたりのアルミナ担持量が65g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(1)の下層塗布済み品を得た。
=上層=
貴金属成分原料として硝酸白金水溶液と硝酸パラジウム水溶液とを混合し、Pt−Pd混合溶液を得た。ここで白金とパラジウムの割合を、重量比で5:1とした。
次に、BET比表面積150m
2/g、細孔径23nmのγ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.292重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させて、Pt−Pd担持アルミナ粉末aを得た。このPt−Pd担持アルミナ粉末aを1114.4g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で8g、精製糖を45g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーβを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み品を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が112.24g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(1)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=0.8g/L、触媒量:112.24g/L、下層アルミナ量:65g/L)を得た。
<触媒化燃焼フィルターCSF(1)の製造>
貴金属成分原料としての硝酸白金水溶液と硝酸パラジウム水溶液とを混合し、Pt−Pd混合溶液を得た。ここで白金とパラジウムの割合を、重量比で2:1とした。
次に、γ−アルミナ粉末Bを600g、BET比表面積165m
2/g、細孔径14nmのγ−アルミナ粉末Cを400gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で2.43重量%となるよう含浸担持させてPt−Pd担持アルミナ粉末bを得た。
そしてPt−Pd担持アルミナ粉末bを543.2g、シリカゾルをシリカ換算で30g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーγを得た。続いてこのスラリーに一体型構造担体、すなわちハニカムウォールフロー型コージェライト担体{300cell/inch
2(465k/m
2)/12mil(0.3mm)、7.5inch(190.5mm)径×6.7inch(170.2mm)長さ、4.85L}を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が28.66g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してCSF(1)(Pt=0.44g/L、Pd=0.22g/L、触媒量=28.66g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(1)からコアドリル及びダイアモンドカッターを用いてモデルガス評価用触媒の大きさ(24mm径×66mm長さ、30mL)に切り出し、750℃、50時間の熱処理後、上記酸化触媒DOC(1)によるモデルガス評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を
図3に示す。なお、酸化触媒DOC(1)の成分、貴金属量を表2、3に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(1){7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を750℃、100時間熱処理後、触媒コンバーター内の前段に配置し、その後段に同条件で熱処理した上記のCSF(1)を置き、その後ろの別の触媒コンバーターに650℃、100時間、10%水蒸気を含む空気気流中で熱処理した選択還元触媒(SCR、特開2009−262098号公報参照)を配置し、これらを直列につないで、
図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0072】
[実施例2]
<酸化触媒DOC(2)の製造>
=下層=
実施例1の下層の調製方法と同様にして、DOC(2)の下層塗布済み品を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.777重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸担持させて、Pt−Pd担持アルミナ粉末cを得た。また、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で3.85重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸担持させて、Pt−Pd担持アルミナ粉末dを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末cを927.2g、Pt−Pd担持アルミナ粉末dを187.2g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で8g、精製糖を45g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーδを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み品を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が112.24g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(2)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=0.8g/L、触媒量:112.24g/L、下層アルミナ量:65g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(2)からコアドリル及びダイアモンドカッターを用いて切り出したモデルガス評価用触媒(24mm径×66mm長さ、30mL)を用いて、750℃、50時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(2)によるモデルガス評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を
図3に示す。なお、酸化触媒DOC(2)の成分、貴金属量を表2、3に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(2){7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を750℃、100時間熱処理後、触媒コンバーター内の前段に配置し、実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0073】
[比較例1]
<酸化触媒DOC(3)の製造>
=下層=
γ−アルミナ粉末A 341g、BET比表面積220m
2/g、細孔径8nmのγ−アルミナ粉末D 506g、BET比表面積160m
2/g、細孔径10nmのγ−アルミナ粉末E 253gに前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.614重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させることにより、Pt−Pd担持アルミナ粉末eを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末eを1106.8g、精製糖を111g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーεを得た。
続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムフロースルー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が110.68g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(3)の下層塗布済み触媒を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末A 279g、γ−アルミナ粉末D 414g、γ−アルミナE 207gに前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.25重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させることにより、Pt−Pd担持アルミナ粉末fを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末fを911.4g、精製糖を91g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーζを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み触媒を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が91.14g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(3)(Pt=1.52g/L、Pd=0.30g/L、触媒総量:201.82g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(3)からコアドリル及びダイアモンドカッターを用いて切り出したモデルガス評価用触媒(24mm径×66mm長さ、30mL)を用いて、750℃、50時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(3)によるモデルガス評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を
図3に示す。なお、酸化触媒DOC(3)の成分、貴金属量を表2、3に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(3){7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を750℃、100時間熱処理後、触媒コンバーター内の前段に配置し、実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す比較用の装置を構成した。この装置を用いても、良好な排ガス浄化性能は得られなかった。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
「評価1」
750℃、50時間の熱処理後の上記触媒によるモデルガス評価試験を取りまとめた
図3及び触媒の成分、貴金属量を表した表2、3から酸化触媒(DOC)単独の場合のNO、CO、及びHCの酸化活性について次のことがわかる。
まず、
図3のNOの酸化活性試験の結果から明らかなように、本発明の実施例1の酸化触媒DOC(1)Pt/Pd=5/1(重量比、以下同じ)は、貴金属を担持する母材として細孔径23nmのアルミナBを使用しているので、白金とパラジウムの総量が26重量%も多いが、貴金属を担持する母材として細孔径10nm以下のアルミナA、D、Eを3種類使用した比較例1(表3参照)の酸化触媒DOC(3)を上回るNOの酸化活性を発揮した。さらに、貴金属を担持する母材として細孔径23nmのアルミナBに細孔径14nmのアルミナCを加えた実施例2の酸化触媒DOC(2)は、細孔径23nmのアルミナAだけを使用した実施例1の酸化触媒DOC(1)よりさらに高いNO酸化活性を発揮した。
但し、COやHCの酸化活性は実施例1、2の酸化触媒DOC(1)、DOC(2)と比較例1の酸化触媒DOC(3)では差異はみられなかった。
これらの結果は、NOの酸化活性の向上にPtやPdの貴金属の母材として12nm以上のアルミナを使用することが有効であり、また、12nm以上のアルミナを複数使用することがNOの酸化活性のさらなる向上に有効であることを示している。
【0077】
[実施例3]
<酸化触媒DOC(4)の製造>
=下層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.293重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.065重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末gを得た。
同様にして、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.45重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸担持させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.323重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末hを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末gを920.3g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末hを186.3g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で5.8g、精製糖を111g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーηを得た。
続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムフロースルー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が111.24g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(4)の下層塗布済み触媒を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.595重量%(Pt/Pd=5/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.172重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末iを得た。また、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で2.89重量%(Pt/Pd=5/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.834重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末jを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末iを755.8g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末jを155.8g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で10.4g、精製糖を92g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーθを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み触媒を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が92.2g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(4)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=2.0g/L、触媒総量:203.44g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(4)を用いて、750℃、100時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(4)によるエンジン評価試験を行った。NOの酸化活性の結果を
図4に、軽油燃焼性の結果を
図5に示す。なお、酸化触媒DOC(4)の成分、貴金属量を表4、5に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(4)を触媒コンバーター内の前段に配置し、その後段に実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0078】
[比較例2]
<酸化触媒DOC(5)の製造>
比較例1の酸化触媒DOC(3)において、すべてのPt−Pd担持アルミナ粉末のPt−Pd担持量を一律21重量%減量した以外は、DOC(2)と同じ触媒調製法でDOC(5)(Pt=1.20g/L、Pd=0.24g/L、触媒総量:201.44g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(5)を用いて、750℃、100時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(5)によるエンジン評価試験を行った。NOの酸化活性の結果を
図4に、軽油燃焼性の結果を
図5に示す。なお、酸化触媒DOC(5)の成分、貴金属量を表4、5に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(5)を触媒コンバーター内の前段に配置し、その後段に実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す比較用の装置を構成した。この装置を用いても、良好な排ガス浄化性能が得られなかった。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
「評価2」
750℃、100時間の熱処理後の上記触媒によるエンジン定常評価試験を取りまとめた
図4、5および触媒の成分、貴金属量を表した表4、5から酸化触媒(DOC)単独の場合のNO酸化活性及び軽油燃焼性について次のことがわかる。
まず、
図4のNO酸化活性試験の結果から明らかなように、本発明の実施例3の酸化触媒DOC(4)(Pt/Pd=5/1)は、白金とパラジウムの量が同一(表5参照)の比較例2の酸化触媒DOC(5)に比べ、特に低温(250℃)で優れたNOの酸化活性を発揮した。さらに、実施例3の酸化触媒DOC(4)は、白金とパラジウムの量を各々30重量%弱増量(表5参照)した比較例1の酸化触媒DOC(3)よりも高いNO酸化活性を発揮し、その効果は低温(250℃)で顕著であった。
また、
図5の軽油燃焼性試験の結果から明らかなように、本発明の実施例3の酸化触媒DOC(4)は、白金とパラジウムの量が同一の比較例2の酸化触媒DOC(5)より、軽油の燃焼に伴う発熱による温度上昇が高く、その効果は低温(250℃)で顕著であった。さらに、実施例3の酸化触媒DOC(4)は白金とパラジウムの量を各々30重量%弱増量した比較例1の酸化触媒DOC(3)よりも軽油の燃焼による発熱の温度上昇も高かった。これらのことは酸化バリウム(BaO)を含み、2種類のアルミナの細孔径が12nm〜40nm{実際は23nm(アルミナA)と14nm(アルミナB)(表4参照)}である実施例3の酸化触媒DOC(4)が酸化バリウムを含まず、アルミナの細孔径も10nm以下{実際は、8nm(アルミナC)、9nm(アルミナD)、および10nm(アルミナE)(表1参照)}である比較例1、2の酸化触媒DOC(3)、DOC(5)よりNOの酸化活性の他、軽油の燃焼性にも優れていることを示している。
【0082】
[実施例4]
<装置構成>
前記実施例3のDOC(4)と前記実施例1のCSF(1)にそれぞれ750℃、100時間の熱処理を施した後、触媒コンバーター内で直列につないで、エンジン評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を
図6に示す。なお、DOC(4)+CSF(1)の成分、貴金属量を表6、7に示した。
上記{DOC(4)+CSF(1)}の触媒コンバーターの後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0083】
[実施例5]
<触媒化燃焼フィルターCSF(2)の製造>
BET比表面積95m
2/g、細孔径10nmのγ−アルミナ粉末F 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液(Pt/Pd=2/1)を貴金属換算で2.43重量%となるよう含浸担持させてPt−Pd担持アルミナ粉末kを得た。
そしてPt−Pd担持アルミナ粉末kを543.2g、アルミナゾルをアルミナ換算で30g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーιを得た。続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムウォールフロー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が28.66g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してCSF(2)(Pt=0.44g/L、Pd=0.22g/L、触媒量=28.66g/L)を得た。
<装置構成>
前記実施例3のDOC(4)と上記CSF(2)にそれぞれ750℃、100時間の熱処理を施した後、触媒コンバーター内で直列につないで、エンジン評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を
図6に示す。なお、DOC(4)+CSF(2)の成分、貴金属量を表6、7に示した。
上記{DOC(4)+CSF(2)}の触媒コンバーターの後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、比較的良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0084】
[比較例3]
<触媒化燃焼フィルターCSF(3)の製造>
実施例5の触媒化燃焼フィルターCSF(2)において、Pt−Pd担持アルミナ粉末のPt−Pd担持量を一律32重量%増量した以外は、CSF(2)と同じ触媒調製法でCSF(3)(Pt=0.58g/L、Pd=0.29g/L、触媒量=28.87g/L)を得た。
<装置構成>
前記比較例1のDOC(3)と上記CSF(3)にそれぞれ750℃、100時間の熱処理を施した後、触媒コンバーター内で直列につないで、エンジン評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を
図6に示す。なお、DOC(3)+CSF(3)の成分、貴金属量を表6、7に示した。
上記{DOC(3)+CSF(3)}の触媒コンバーターの後段に実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、
図1に示す比較用の装置を構成した。この装置を用いても、良好な排ガス浄化性能を得ることができなかった。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
「評価3」
750℃、100時間の熱処理後の上記触媒によるエンジン定常評価試験を取りまとめた
図6および触媒の構成、成分、貴金属量を表した表6、7から酸化触媒(DOC)と触媒化燃焼フィルター(CSF)を組み合わせた場合のNO、CO、HCの酸化活性について次のことがわかる。
図6のNO、CO、及びHCの酸化活性試験から明らかなように、本発明の実施例4では、酸化触媒DOC(4)の後段に、12〜120nmの細孔径を有する2種類のアルミナを使用した触媒化燃焼フィルターCSF(1)を配置した場合であるが、NO、CO、HCのすべてで酸化活性を発揮している。
また、本発明の実施例5では、酸化触媒DOC(4)の後段に、10nmの細孔径を有するアルミナを単独で使用した触媒化燃焼フィルターCSF(2)を配置した場合であるが、NO、CO、HCのすべてで酸化活性を発揮している。
一方、比較例3の触媒{DOC(3)+CSF(3)の組み合わせ}では、酸化触媒、触媒化燃焼フィルター共、実施例4、5よりも貴金属担持量が約30重量%も多いにもかかわらず、NO、CO、HCのすべてで酸化活性が低かった。
以上の結果は、実施例4、5に使用されたDOCとCSFの総貴金属量(Pt+Pdの合計量)にそれほど大きな差異がないことから、DOC+CSFの組み合わせによるNO、CO、HCの酸化活性に及ぼす寄与は、後段のCSFより前段のDOCの方が大きいことを示唆しており、貴金属の低減はDOCよりもCSFに対して有効であると考えられる。
【0088】
[実施例6]
<酸化触媒DOC(6)の製造>
=下層=
γ−アルミナ粉末B 1000gに、前記Pt−Pd混合溶液(Pt/Pd=2/1)を貴金属換算で0.336重量%(Pt/Pd=2/1)となるよう含浸させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.054重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末lを得た。
同様にして、γ−アルミナ粉末C 200gに、同Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.66重量%(Pt/Pd=2/1)となるよう含浸担持させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.268重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末mを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末lを920.6g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末mを186.6g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で3g、精製糖を111g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーκを得た。
続いてこのスラリーに一体型構造担体、すなわちハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch
2(465k/m
2)/8mil(0.2mm)、7.5inch(190.5mm)径×2.64inch(67.1mm)長さ、1.91L}を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が111.02g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(6)の下層塗布済み触媒を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.682重量%(Pt/Pd=2/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.099重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末nを得た。また、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で3.31重量%(Pt/Pd=2/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.481重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末oを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末nを755.9g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末oを155.9g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で4.5g、精製糖を92g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーλを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み触媒を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が91.63g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(6)(Pt=1.1g/L、Pd=0.55g/L、BaO=1.0g/L、触媒総量:202.65g/L)を得た。
<酸化触媒DOC(7)の製造>
実施例3のDOC(4)の製造において、ハニカムフロースルー型コージェライト担体のサイズを300cell/inch
2(465k/m
2)/8mil(0.2mm)、7.5inch(190.5mm)径×2.64inch(67.1mm)長さ、1.91Lに変える以外は、実施例3のDOC(4)と同じ触媒調製法により、DOC(7)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=2.0g/L、触媒総量:203.44g/L)を得た。
<触媒化燃焼フィルターCSF(4)の製造>
γ−アルミナ粉末Bを600g、γ−アルミナ粉末Cを400gに、前記Pt−Pd混合溶液(Pt/Pd=2/1)を貴金属換算で2.39重量%となるよう含浸担持させてPt−Pd担持アルミナ粉末pを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末pを130.3g、シリカゾルをシリカ換算で7.2g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーμを得た。続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムウォールフロー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が6.876g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してCSF(4)(Pt=0.104g/L、Pd=0.052g/L、触媒量=6.876g/L)を得た。
<装置構成>
上記のDOC(6)、DOC(7)、及びCSF(4)をこの順に触媒コンバーター内で直列につないで本発明の装置を構成した。これによるエンジン昇温評価試験を行って、NO、CO、及びHCの酸化活性試験の結果を
図7に示す。なお、DOC(6)、DOC(7)、及びCSF(4)の成分、貴金属量を表8、9に示した。
上記の実施例6のCSF(4)の後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を配置し、
図1の本発明の装置を構成した(実施例1〜5の装置とはDOCが二分割されて設置されている点で相違している)。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0089】
[実施例7]
<装置構成>
上記実施例6のDOC(6)、DOC(7)、及びCSF(4)を用い、DOC+CSF+DOCの順に触媒コンバーター内で直列につないで本発明の装置を構成した。これによるエンジン昇温評価試験を行って、NO、CO、及びHCの酸化活性試験の結果を
図7に示す。なお、DOC(6)、CSF(4)、及びDOC(7)の成分、貴金属量を表8、9に示した。
上記の実施例7のDOC(7)の後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を配置し、
図2の本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0090】
[実施例8]
<酸化触媒DOC(8)の製造>
実施例3の酸化触媒DOC(4)において、すべてのPt−Pd担持アルミナ粉末のPt−Pd担持量を一律24重量%減量した以外は、実施例3と同じ触媒調製法でDOC(8)(Pt=0.91g/L、Pd=0.18g/L、BaO=2.0g/L、触媒総量:203.09g/L)を得た。
<装置構成>
前記実施例6のDOC(6)及びCSF(4)と上記DOC(8)を用い、DOC+CSF+DOCの順に触媒コンバーター内で直列につないで本発明の装置を構成した。これによるエンジン昇温評価試験を行って、NO、CO、及びHCの酸化活性試験の結果を
図7に示す。なお、CSF(4)の成分、貴金属量を表8、9に示した。
上記の実施例8のDOC(8)の後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を配置し、
図2の本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
「評価4」
750℃、100時間の熱処理後の上記触媒(DOC+CSF、DOC+DOC+CSF、又はDOC+CSF+DOC)によるエンジン昇温評価試験を取りまとめた
図7及び触媒の構成、成分、貴金属量を表した表8、9から次のことがわかる。
評価3で得られた知見を基に貴金属担持量をDOCに集中させた本発明の酸化触媒DOC(6)(Pt/Pd=2/1)、酸化触媒DOC(7)(Pt/Pd=2/1)、とCSFの貴金属担持量を大幅に低減させた触媒化燃焼フィルターCSF(4)を直列に並べた実施例6は、PtおよびPdの両方の総担持量が上記実施例4とほぼ同じ(表9参照)であるにも関わらず、実施例4をさらに上回るCO及びHCの酸化活性を発揮したが、NOの酸化活性はやや悪化した。但し、それでも、NOの酸化活性は、貴金属の総担持量が30重量%弱上回る比較例3を上回った。これは、DOCに貴金属の担持を集中させたことでCOやHCの酸化反応がNOの酸化反応より優先して起こっていると考えられ、COやHCの酸化には適しているが、NOの酸化にはやや好ましくない組み合わせであると考えられる。
さらに、本発明の触媒化燃焼フィルターCSF(4)を挟むようにDOC(6)、CSF(4)、DOC(7)の順に直列に並べた実施例7は、PtおよびPdの両方の総担持量が上記実施例4とほぼ同じ(表9参照)であるにも関わらず、実施例4をさらに上回るという優れたNOの酸化活性を発揮した。また、実施例7はCO、HCの酸化活性についても実施例4とほぼ同等で、貴金属の総担持量が30重量%弱上回る比較例3をも上回った。
また、本発明の酸化触媒DOC(6)、触媒化燃焼フィルターCSF(4)、及び更に貴金属担持量を低減させた酸化触媒DOC(8)(Pt/Pd=5/1)を直列に並べた実施例8は、Pt及びPdの両方の総担持量が実施例7に比べさらに10重量%近く低減し、比較例3に比べると30重量%近くも低減(表9参照)しているにも関わらず、HCの酸化活性でやや劣るものの、NO及びCOの酸化活性は比較例3を上回った。
この様に本発明は、高価な貴金属(PtおよびPd)の担持量を20〜30重量%近くも下げながら、BaOの添加、アルミナの細孔仕様の最適化、DOCの配置の最適化などでNO、CO、HCの酸化活性の向上に寄与している。特に、NOの酸化活性の向上においては顕著な効果を発揮している。