特許第6040232号(P6040232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040232
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/10 20060101AFI20161128BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20161128BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20161128BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161128BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20161128BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F01N3/10 AZAB
   F01N3/08 B
   F01N3/24 E
   F01N3/28 301E
   F01N3/035 E
   B01J23/58 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 241
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-515537(P2014-515537)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2013060669
(87)【国際公開番号】WO2013172128
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-110519(P2012-110519)
(32)【優先日】2012年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】岡島 利典
(72)【発明者】
【氏名】永田 誠
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/083315(WO,A2)
【文献】 特開平11−151439(JP,A)
【文献】 特開2011−220158(JP,A)
【文献】 特表2011−506827(JP,A)
【文献】 特開2008−279428(JP,A)
【文献】 特開2005−262071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、煤などの微粒子成分を浄化するため、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物の内、特に一酸化窒素を酸化し、軽油を燃焼するための貴金属成分を含む酸化触媒(DOC)と、煤などの微粒子成分を捕集し、燃焼(酸化)除去するための貴金属成分を含む触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる還元剤を供給する還元剤噴霧手段と、窒素酸化物を還元剤と接触させて還元除去する選択還元触媒(SCR)を排気ガス流路の上流側からこの順に配置した排気ガス浄化装置において、
酸化触媒(DOC)は、細孔径が12〜120nmのアルミナ(Al)に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及び酸化バリウム(BaO)を担持した触媒層を有し、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:2であることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記触媒層は、一体構造型担体に一層以上に被覆されることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記触媒層は、その下層にアルミナからなる下地層を有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記細孔径が12〜120nmのアルミナは、細孔径が異なる二種以上のアルミナ混合物であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記酸化触媒(DOC)は、触媒化フィルター(CSF)と還元噴霧手段との間にもさらに設置することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
前記酸化触媒(DOC)は、酸化バリウムの量が0.5〜4.0g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
前記酸化触媒(DOC)は、触媒層の被覆量が50〜300g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項8】
前記酸化触媒(DOC)は、貴金属の総担持量が金属換算で0.5〜4.0g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
前記触媒化燃焼フィルター(CSF)は、細孔径が12〜120nmのアルミナ又はその範囲内で細孔径が異なる二種以上のアルミナ混合物に、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を担持した触媒層を有し、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:4であることを特徴とする請求項1又は5に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項10】
前記触媒化燃焼フィルター(CSF)は、触媒層の被覆量が4〜100g/Lであることを特徴とする請求項9に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項11】
前記触媒化燃焼フィルター(CSF)は、貴金属の総担持量が金属換算で0.05〜2.0g/Lであることを特徴とする請求項9又は10に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項12】
前記選択還元触媒(SCR)の後に、さらにアンモニア酸化触媒(AMOX)を配置することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関し、より詳しくは、希薄燃焼機関からの排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分の内、特に一酸化窒素(NO)の酸化性能及び軽油など未燃の燃料の燃焼性能に優れた酸化触媒(DOC)と触媒化燃焼フィルター(CSF)を組み合わせた排気ガス浄化触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー、ガスタービン、リーンバーン型ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される排気ガスには、燃料や燃焼空気に由来した様々な有害物質が含まれる。このような有害物質としては炭化水素(HC)、可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOFともいう)、煤(Soot)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などがあり、これら有害成分の排出量に対する規制は年々強化されている。それら有害成分の浄化方法としては、排気ガスを触媒に接触させて浄化する方法が実用化されている。
【0003】
このような希薄燃焼機関では、燃料の種類や供給量や供給のタイミング、空気の量等を制御して有害物質の発生量を抑制することも検討されている。しかし、従来の触媒や制御方法では満足の行く排気ガスの浄化はできていなかった。特に、希薄燃焼機関では、窒素酸化物が排出されやすく、加えて、その規制は益々強化されているが、既存のNOx浄化技術では、自動車に搭載されるディーゼルエンジンの場合、その稼動条件は常に変化することから、有害物質の排出を抑制することは困難である。
更に、近年、温室効果ガスとして二酸化炭素(CO)の排出量の規制も強化されている。COの排出量は、エンジンの稼動に使用する燃料の量に比例するため、燃焼機関では使用する燃料が少なく燃費の良いことが望まれる。ディーゼルエンジンは、燃費がよく、COの排出量の少ない燃焼機関であるが、排気ガスには多量のNOxが含まれる。
ディーゼルエンジンからのNOx排出を抑制するには、機械的に空燃比を小さくし、エンジンに還元成分でもある燃料を多量に供給することも考えられるが、燃費の悪化を招き、COの排出も増やしてしまう。また、このような燃焼制御では、燃費が良いというディーゼルエンジンの利点を生かせなくなる。
【0004】
ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される排気ガス中のNOxを浄化する方法としては、NOx(NO及びNO)を含む排気ガスを尿素の分解で発生するアンモニア(NH)成分の存在下で、酸化チタン、酸化バナジウム、ゼオライト等を主成分とする選択還元触媒と接触させて還元脱硝する技術が知られており、選択還元法、または選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction:以下、SCRということがある)法といわれている。
このNH成分を還元剤として用いるSCRでは、主として次に示す反応式(1)〜(3)によって、NOxを最終的にNに還元する。
【0005】
4NO + 4NH + O → 4N + 6HO …(1)
6NO + 8NH → 7N + 12HO …(2)
NO + NO + 2NH → 2N + 3HO …(3)
【0006】
実際、NH成分によるNOxの浄化では、上記式(3)のようにNOとNOが概ね半分ずつ含まれる雰囲気で反応が促進する(非特許文献1参照)。しかしながら、希薄燃焼機関から排出されるNOx成分の殆どは一酸化窒素(NO)である(特許文献1参照)ことから、NOxを効率的に浄化するため、排気ガス中のNO成分の濃度が増すように、排気ガス流路にNO酸化手段を配置することが提案されている(特許文献2参照)。具体的には、NOの酸化能力の高い白金(Pt)が酸化触媒として使用される。
このようなNO酸化手段を利用して、有害微粒子成分、NOxを一つの触媒系で同時に浄化する方法も提案されている。その一つが、排気ガス流路中に酸化触媒と、その後段にフィルターを配置し、その後段でアンモニア成分を噴霧し、その後段に配置される選択還元触媒(SCR)でNOxを浄化するものである(特許文献3参照)。
【0007】
このような触媒配置によって、酸化触媒で排気ガス中のNOをNOに酸化し、微粒子成分の燃焼除去し、NOxを還元浄化するという手段を一つの触媒系で同時に行うことができる。そして、このNOの酸化触媒成分として白金成分が有効とされている(特許文献4、非特許文献2参照)。
このように、NOxの浄化、微粒子成分の浄化手段が提案されているが、いずれの場合もSCRの前方にDOCを配置し、排気ガス中のNO濃度を増してSCRにおけるNOx浄化の効率化を図るものである。
【0008】
また、ディーゼルエンジンの燃費向上には、煤やSOF(これらをまとめて、以下「微粒子成分」またはPM:Particulate Matterということがある)の浄化技術も影響を与える。微粒子成分は、排気ガスの流路中に耐熱性フィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)を配置し、このフィルターで微粒子成分を濾し取る方法が実用化されている。濾し取られた微粒子成分は、フィルターに堆積するがフィルターに微粒子成分が堆積し続けると、フィルター目詰まりに伴う背圧上昇によってエンジンの出力低下を招いてしまう。そこで、フィルターに堆積した微粒子成分を燃焼除去してフィルターを再生することが検討されている(特許文献3、特許文献4)。
特許文献3、特許文献4のシステムでは、DOCの後段にDPFを配置し、フィルターに堆積した微粒子成分を酸素の他、NOを利用して燃焼除去している。NOを利用するとより低温から微粒子成分を燃焼させることができるので、微粒子成分の燃焼除去が促進されると共に圧損上昇を抑えてフィルター再生までのインターバルを長くすることができる。このように微粒子成分を捕集して燃焼除去するフィルターのうち、触媒成分を被覆したDPFはCSF(Catalyzed Soot Filter)ともいわれている。
【0009】
このように、DOCには排気ガス中のHCやCOを酸化除去する目的で、またCSFには排気ガス中の煤やSOFを酸化浄化する目的で、各々白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の貴金属成分が使用されているが、DOCは前述のように排気ガス中のNOをNOに酸化する作用も有する。NO量を増加した排気ガスは、後方のSCRにおけるNOx還元浄化や、DPFやCSFにおける微粒子成分の燃焼を促進する。
また、DOCで排気ガス中のHCを利用して排気ガスの温度を上昇させることは、DOCの後方に配置したDPF又はCSFに堆積した微粒子成分の燃焼除去を促進するのに有効である。そのため、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムでは、DOCにHC成分を供給し、HC成分を燃焼(酸化)させることがある。このような排気ガス温度の上昇のためにHC成分を使用する手段としては、エンジンに燃料を多めに供給し、未燃焼のHCを発生させてDOCに供給する方法や、エンジンからDOCまでの間の配管中で燃料を噴霧して供給する方法がある。
【0010】
このように、様々なNOxの浄化、微粒子成分の浄化手段が提案されているが、近年、排気ガス規制の強化に伴い、希薄燃焼機関からの排気ガスに対応する排気ガス浄化システムに用いられる触媒の数が増えると共に、個々の触媒の高機能化も必要とされる傾向にある。そのため、DOCやCSFに使用される高価な貴金属の量が増大する傾向にある。
そこで、PtやPdなどの貴金属を含有するDOCやCSFにはCO、HC、煤などの酸化除去性能、NOの酸化性能、及び軽油など未燃の燃料の燃焼性を向上させると同時に、貴金属の使用量を減らすと云う、相反する二つの課題の解決が求められるようになった。
【0011】
そのため、本出願人は、ディーゼル機関から排出される排気ガス流路に、酸化手段と、尿素水溶液噴霧手段と、特定の選択還元触媒をこの順序で配置し、該酸化手段である貴金属成分として白金成分またパラジウム成分を含み、この貴金属成分の量が金属換算で0.1〜3g/L、貴金属成分中の金属換算の白金量が50〜100w%である酸化触媒により、排気ガス中の炭化水素成分、一酸化炭素、一酸化窒素、亜酸化窒素を酸化して、二酸化窒素濃度を増した後、尿素水溶液噴霧手段から選択還元触媒に尿素水溶液を噴霧供給し、150〜600℃で接触させて、生成したアンモニアによって窒素酸化物を窒素と水に分解することを特徴とする排気ガス浄化方法を提案した(特許文献5参照)。これにより、尿素の加水分解を触媒系の外で行うことなく、シンプルな構成で、規格化され容易に入手可能な尿素水を使用してNOxを浄化できるようになった。
しかし、これは酸化触媒の改良に関するものではなく、まだ貴金属の使用量を十分に減らせたとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平05−38420号公報(請求項1、段落0012、0013、0014)
【特許文献2】特開平08−103636号公報(請求項1、段落0002、0012)
【特許文献3】特開平01−318715号公報
【特許文献4】特表2002−502927号公報(請求項1、段落0007、0008)
【特許文献5】特開2009−262098号公報(請求項12、段落0015)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Catalysis Today 114(2006)3−12(第2頁左欄)
【非特許文献2】「低温の酸化雰囲気下、Pt触媒のNO酸化性能への担体物質とエージングの影響」(Influence of Support Materials and Aging on NO Oxidation Performance of Pt Catalysts under an Oxidative Atmosphere at Low Temperature), JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN, Vol.40 (2007) No.9 pp.741−748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、希薄燃焼機関からの排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分の内、特に一酸化窒素(NO)の酸化性能及び軽油など未燃の燃料の燃焼性能に優れた酸化触媒(DOC)と触媒化燃焼フィルター(CSF)を組み合わせた排気ガス浄化触媒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、DOC、CSF、SCRの順に触媒を配置し、DOCとSCR触媒の間に還元成分としてNH成分の供給手段を配置した排気ガス浄化装置において、DOCが貴金属成分のPt及びPdを細孔径が12〜120nmの一種以上のアルミナに担持し、その際、PtとPdを重量比で1:1〜11:2とし、酸化バリウムを添加した触媒層を有することで、特に、NOの酸化活性及び軽油など未燃の燃料の燃焼性を促進することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明の第1の発明によれば、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、煤などの微粒子成分を浄化するため、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物の内、特に一酸化窒素を酸化し、軽油を燃焼するための貴金属成分を含む酸化触媒(DOC)と、煤などの微粒子成分を捕集し、燃焼(酸化)除去するための貴金属成分を含む触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる還元剤を供給する還元剤噴霧手段と、窒素酸化物を還元剤と接触させて還元除去する選択還元触媒(SCR)を排気ガス流路の上流側からこの順に配置した排気ガス浄化装置において、酸化触媒(DOC)は、細孔径が12〜120nmのアルミナ(Al)に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及び酸化バリウム(BaO)を担持した触媒層を有し、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:2であることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
【0017】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記触媒層は、一体構造型担体に一層以上に被覆されることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記触媒層は、その下層にアルミナからなる下地層を有することを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記細孔径が12〜120nmのアルミナは、細孔径が異なる二種以上のアルミナ混合物であることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記酸化触媒(DOC)は、触媒化フィルター(CSF)と還元噴霧手段との間にもさらに設置することを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、前記酸化触媒(DOC)は、酸化バリウムの量が0.5〜4.0g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、前記酸化触媒(DOC)は、触媒層の被覆量が50〜300g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、前記酸化触媒(DOC)は、貴金属の総担持量が金属換算で0.5〜4.0g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1又は5の発明において、前記触媒化燃焼フィルター(CSF)は、細孔径が12〜120nmのアルミナ又はその範囲内で細孔径が異なる二種以上のアルミナ混合物に、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を担持した触媒層を有し、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:4であることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、前記触媒化燃焼フィルター(CSF)は、触媒層の被覆量が4〜100g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第9又は10の発明において、前記触媒化燃焼フィルター(CSF)は、貴金属の総担持量が金属換算で0.05〜2.0g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第1の発明において、前記選択還元触媒(SCR)の後に、さらにアンモニア酸化触媒(AMOX)を配置することを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の排気ガス浄化装置は、NOの酸化活性、軽油など未燃の燃料の燃焼性に優れ、ディーゼルエンジンなどの希薄燃焼機関から排出されるHC、CO、NOx、煤などの微粒子成分の内、特にNOの酸化性能及び軽油など未燃の燃料の燃焼性能に優れている。
さらに、本発明の排気ガス浄化装置は、高価な貴金属の使用量が少なくて済むから低コストで製造する事ができ、排気ガス浄化装置を安定的に生産し供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の排気ガス浄化触媒装置において、酸化触媒(DOC)、触媒化フィルター(CSF)、還元成分の供給手段、及び選択還元触媒(SCR)をこの順に配置した構成を模式的に示す説明図である。
図2図2は、本発明の排気ガス浄化触媒装置において、酸化触媒(DOC)、触媒化フィルター(CSF)、酸化触媒(DOC)、還元成分の供給手段、及び選択還元触媒(SCR)をこの順に配置した構成を模式的に示す説明図である。
図3図3は、酸化触媒(DOC)を用いたモデルガス評価試験におけるNO、CO、及びHCの酸化性能を示すグラフである。
図4図4は、酸化触媒(DOC)を用いた台上ディーゼルエンジンによる排気ガス浄化試験におけるNO酸化活性を示すグラフである。
図5図5は、酸化触媒(DOC)を用いた台上ディーゼルエンジンによる排気ガス浄化試験における軽油燃焼性を示すグラフである。
図6図6は、酸化触媒(DOC)と触媒化燃焼フィルター(CSF)を用いた台上ディーゼルエンジンによる排気ガス浄化試験における、NO、CO、及びHCの酸化活性を示すグラフである。
図7図7は、酸化触媒(DOC)2個と触媒化燃焼フィルター(CSF)を直列に並べ、台上ディーゼルエンジンで排気ガス浄化試験したときの、NO、CO、及びHCの酸化活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の排気ガス浄化装置をディーゼル自動車用途に適用した場合について主に詳述するが、本発明は発電など様々な電力源に使用されるディーゼルエンジンにも有効であることはいうまでもない。
【0022】
I.[排気ガス浄化装置(DOC+CSF+SCR)]
本発明は、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の窒素酸化物(NO)を酸化するための貴金属成分を含む特定の酸化触媒(DOC)と、排気ガス中の微粒子成分(PM)を捕集し、燃焼(酸化)除去するための貴金属成分を含む触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる還元剤を供給する還元剤噴霧手段と、窒素酸化物(NOx)を還元剤と接触させて還元除去するための貴金属を含まない選択還元触媒(SCR)を排気ガス流路の上流側からこの順に配置した排気ガス浄化装置であり、この排気ガス浄化触媒装置(DOC+CSF+SCR)を触媒装置Iともいう。
すなわち、本発明の触媒装置Iは図1のように、ディーゼルエンジン1からの排気ガス流路2中、酸化触媒(DOC)4と触媒化燃焼フィルター(CSF)5の後方に、還元剤噴霧手段3を設け、この噴射手段3の後方に選択還元触媒(SCR)6を配置した排気ガス浄化触媒装置である。
【0023】
本発明の触媒装置Iでは、DOC及びCSFによりNOをNOに酸化することで、それらの後方に配置するSCRにおける尿素水溶液やアンモニア水溶液(以下、アンモニア成分、またはNH成分ということがある)を使用したNOx還元反応を促進する。
また、CSF内で蓄積された煤は、ディーゼルエンジンの筒内又はディーゼルエンジンとDOCの中間部の配管内に未燃の軽油を定期的に噴霧することで未燃の軽油をDOCで燃焼させて排気ガス温度を上昇させ、その燃焼熱で燃焼される。
【0024】
1.[DOC:酸化触媒]
本発明に使用されるDOCは、排気ガス中のNO、HC、CO、及び軽油等の未燃の燃料を酸化する貴金属成分を含む酸化触媒であり、貴金属成分として、少なくとも白金成分とパラジム成分を含有する。
【0025】
(貴金属成分)
酸化触媒では、前記のとおり、貴金属成分として一般に白金成分が使用され、パラジウム成分も使用されることがある。但し、Pd成分のみでは充分なNO酸化活性を得ることは難しい。また、Pd成分は、ディーゼルエンジンの燃料である軽油や重油中の硫黄成分により被毒し易く、長期間の使用で失活してしまうことがある。
Pdはこの様な問題点はあるものの、価格がPtに比べかなり安価なこと、HC種や排気ガスの雰囲気によっては、Ptより高い酸化活性を示す場合があるため、PtとPdの担持比率を適切に配分することにより、性能面、価格面で最適な条件を見出すことができる。
【0026】
本発明では、以上のことを勘案し、PtとPdの比率については、1:1〜11:2であることが好ましく、3:2〜11:2であることがより好ましい。1:1未満であると白金の含有量の減少に伴うHC、CO、NO等の酸化活性の低下、及び未燃の軽油等の燃焼による排気ガスの発熱能力の低下が大きくなり、11:2を超えると価格面でのメリットがなくなる恐れがある。
【0027】
また、本発明ではDOCの貴金属成分の担持量が一体構造型担体の体積あたりの金属換算で0.5〜4.0g/Lであることが好ましく、0.8g/L〜3.0g/Lであることがより好ましい。貴金属成分の量が少なすぎると、HCやCOの酸化除去性能、NOの酸化性能、及び軽油など未燃の燃料の燃焼性が十分に得られず、貴金属成分の量が多すぎると価格面でのメリットがなくなる恐れがある。
さらに、本発明では酸化触媒(DOC)の触媒層の被覆量が、50〜300g/Lであることが好ましく、70〜250g/Lであることがより好ましい。触媒層の被覆量が、50g/L未満であると、担持される白金等の貴金属の分散性が悪化することにより酸化活性が低下し、300g/Lを超えると、セル内が狭くなることで圧損が増大するので好ましくない。
【0028】
(助触媒成分)
本発明の排気ガス浄化装置における酸化触媒(DOC)では、バリウム(Ba)が助触媒として使用される。Baは、イオン化傾向が高い元素の一つであり、電子をPtやPdなどの貴金属に与え、貴金属の還元を促進する。特に、BaはPdとの相性が良く、Pdの活性を促進する働きを有する。
Baの出発塩としては、アルミナ上で高分散させるために、水に可溶な塩が好ましく、酢酸バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム(水に溶かすと水酸化バリウムになる)が使用される。
それらの中でも、酢酸バリウムや水酸化バリウム(酸化バリウム)は、水への溶解度が高く、電気炉内で空気雰囲気下、熱処理により酸化物にする際、比較的低温で酸化され易いので好ましい。
【0029】
本発明において、Baの担持量は、酸化バリウム換算で0.5〜4.0g/Lが好ましく、0.5〜3.0g/Lがより好ましい。酸化バリウム換算での担持量が0.5g/Lより少ないとPtやPdへの電子供与性に乏しくなることが懸念される。一方、酸化バリウム換算での担持量が4.0g/Lより多いと、Ptで酸化されたNOを吸蔵して、NOとして放出する能力が増大してしまうことが懸念される。
【0030】
(無機母材)
上記貴金属成分や助触媒成分は、無機酸化物(無機母材)に担持され、必要に応じ他の触媒成分と混合し、触媒組成物として構造型担体に被覆される。このように貴金属成分を担持する母材としての無機酸化物は、公知の排気ガス浄化用触媒材料が使用できる。このような無機材料は、耐熱性が高く、その比表面積値が大きいことで貴金属成分を安定に高分散できる多孔質の無機酸化物が好ましい。
貴金属や助触媒を担持するための無機酸化物(無機母材)の一例として、アルミナが挙げられる。アルミナの素材としては、γ−アルミナ、β−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナが挙げられ、なかでもγ−アルミナが好ましい。また、γ−アルミナにランタン、ジルコニア、セリアなどを添加することが好ましい。特に、ランタンが添加されたγ−アルミナは、耐熱性に優れ、白金成分やパラジウム成分等の貴金属成分を担持させた場合、高温時にも高い触媒活性を維持することが可能である(特開2004−290827号公報)。
【0031】
本発明において、アルミナは、細孔径(モード径、以下同じ)が12〜120nmであることが好ましく、更に、12〜80nmであることがより好ましく、12〜60nmであることがさらに好ましい。アルミナの細孔径が12nmより小さいと細孔内でのガスの拡散が遅くなる上、煤などにより細孔が閉塞される恐れがある。一方、細孔径が120nmより大きいと相対的にBET比表面積が小さくなり、貴金属や助触媒などの分散性が悪化するので好ましくない。
また、アルミナのBET比表面積値(BET法による、以下同様)は、80〜250m/gであることが好ましく、更に、100〜200m/gであるものがより好ましい。アルミナのBET比表面積値が250m/gより大きいと相対的に細孔径が小さくなるので、ガスの拡散の悪化や細孔の閉塞が懸念される。一方、BET比表面積が80m/gより小さいと貴金属や助触媒の分散性の悪化が懸念される。
【0032】
本発明では、細孔径が12〜120nmのアルミナは一種でもよいが、細孔径が異なる二種以上のアルミナ混合物であることが好ましい。それは分子量が小さいガス種ほど細孔径が小さい母材の方がガスと活性種との接触確率の面から好ましく、逆に分子量が大きいガス種ほど細孔径が大きい母材の方が細孔内ガス拡散の面から好ましいと考えられるためである。例えば、長鎖のHCは分子量が大きいので、細孔径が20〜120nmと大きくないと細孔内に入りにくいので、細孔径の比較的大きいアルミナが好ましいが、一方でCOやNOは、分子が小さいので、細孔径が12〜20nmと小さくても細孔内に入ることができ反応しやすいため、細孔径の比較的小さいアルミナが好ましいというわけである。
【0033】
(下地材)
本発明においては、DOCの担体として後述する両端が開口した通孔を集積してハニカム状にした一体構造のフロースルー型ハニカム構造体が使用される。通常、このハニカム構造体として、四角柱セル仕様の物が使用されるため、触媒スラリーを塗布すると表面張力により四隅に触媒が溜まり易くなる。そのため、四角柱セルの四隅だけ触媒層が厚くなり、逆に、それ以外の部位の触媒層が相対的に薄くなる。触媒層が厚くなるとガスが触媒層の表面から底まで拡散するのに時間を要すため、触媒層が厚い部分では底の方の貴金属が有効に使われないことになる。これを避けるため、予め、底層となる下地材料を塗布して、四隅を埋めておくことが好ましい。
このような材料として、アルミナ、シリカ、ゼオライトなどが使用できる。これらの材料は、その物性によって限定されないが、ある程度のBET比表面積を有し、安価であるものが好ましい。
【0034】
なお、下地材の被覆量は20〜130g/Lが好ましく、30〜100g/Lがより好ましい。下地材の被覆量が20g/L未満であると、四角柱セルの四隅を埋める効果が乏しくなることが懸念される。一方、130g/Lを超えるとセル内が狭くなることで圧損が増大するので好ましくない。
【0035】
(貴金属出発塩及び可燃性物質)
上記の無機母材に貴金属の白金とパラジウムを担持させるため、白金の出発塩として、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)炭酸塩、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、水酸化白金(IV)酸の硝酸溶液、硝酸白金、ジニトロジアミン白金硝酸、塩化白金(IV)酸などを用いることができる。また、パラジウムの出発塩として、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウムなどを用いることができる。白金の出発塩として好ましいのは、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、硝酸白金、ジニトロジアミン白金硝酸、テトラアンミン白金(II)硝酸塩などで、貴金属以外の成分が触媒調製時の熱処理により容易に揮発する物が好ましい。
なお、塩化物を出発塩とする場合、製法によっては塩素が残留して触媒活性に悪影響を及ぼす恐れがある。
これらの金属塩との水溶液と、無機母材とを混合した後は、適宜公知の方法により乾燥、焼成を行うことができる。
【0036】
担持に際しては白金とパラジウムを各々別々に担持してもよいが、本発明では、相乗効果を期待し、白金とパラジウムをできる限り多く近接させるため、白金とパラジウムの各々の出発塩水溶液の性質(酸性、アルカリ性)を合わせることが好ましい。例えば、テトラアンミン白金(II)酢酸塩−テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩(アルカリ性同士)、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液−テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩(同左)、硝酸白金−硝酸パラジウム(酸性同士)、ジニトロジアミン白金硝酸−硝酸パラジウム(同左)、塩化白金(IV)酸−塩化パラジウム(同左)などの組み合わせが挙げられる。
白金とパラジウムの出発塩水溶液の性質を同じにすることにより、両方の水溶液を混合させても沈殿を生じることなく、均一溶液のままで存在するようになり、無機母材に担持させた後も、白金粒子とパラジウム粒子は各々混合した状態で存在し、それぞれが近接し易くなる。
【0037】
また、本発明では、予め、触媒成分を加えてスラリーを製造する際に可燃性物質を添加しておくことが好ましい。スラリーを一体構造を有する担体にコート後、焼成する際に可燃性物質が焼かれて発熱し、高温を発生させることで担体上に触媒成分を焼結させると共に、白金等の貴金属成分を無機母材上に固着させることで焼成に要する温度を低減することができるからである。
さらに、可燃性物質を用いると、触媒表面近傍で可燃性物質が燃焼(酸化)して空気中の酸素を消費するため、触媒表面が還元状態になる可能性があるので、白金等の貴金属が高温下で還元雰囲気となり、白金等の貴金属がメタルの状態を保ったまま、粒子成長することが期待できる。
可燃性物質としては、安価で炭素を含む材料が好ましく、例えば、精製糖のほか、果糖、ブドウ糖、脳糖などの単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖などの二糖類が挙げられる。
これらの可燃性物質は、材料として安全である上、可溶性にも優れ、発火温度も350℃と触媒成分をハニカム構造体に塗布して焼成する際の条件で十分燃焼するだけでなく、分子を形成する炭素数も6〜12と小さいため、燃焼しても完全燃焼し易く、煤等の残渣が残り難いという特色がある。
このDOCは、装置内に1個だけ用いてもよいが、2個用いて(DOC+DOC+CSF+SCR)の装置としてもよい。
【0038】
2.[一体型構造を有する担体]
本発明において、DOCには貴金属成分を分散性よく担持するために一体型構造を有する担体、すなわちハニカム構造体(以下、ハニカム担体ともいう)が使用される。ハニカム構造体とは、多数の通孔が集中したハニカム形状の構造体である。このようなハニカム構造体の材質には、ステンレス、シリカ、アルミナ、炭化珪素、コーディエライトなどが使用できるが、本発明には、いずれの材質のハニカム構造体も使用できる。
【0039】
このようなハニカム構造体は、DOCだけでなく、後述するSCRの用途でも両端が開口した通孔を集積してハニカム状にしたフロースルー型ハニカム構造体が使用されることが望ましい。一方、後述するDPF、CSFには、通孔開口部の一方を開口し、もう一方を閉口した通孔を集積してハニカム状にしたウォールフロー型ハニカム構造体が使用されることが望ましい。このようなハニカム構造体型触媒では、一つのハニカム構造体に各ハニカム構造型触媒専用の触媒組成物を被覆しても良い。
このようなハニカム担体は、公知のハニカム構造型担体の中から選択可能であり、その全体形状も任意であり、円柱型、四角柱型、六角注型など、適用する排気系の構造に応じて適宜選択できる。さらに、開口部の孔数は、処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、通常、ディーゼル自動車の排気ガス浄化用途としては、1inch(6.45cm)当たり100〜1500個が好ましく、100〜900個であることがより好ましい。1inch(6.45cm)当たりのセル密度が100個以上であれば、排気ガスと触媒の接触面積を確保することができ、充分な排気ガスの浄化機能が得られ、1inch(6.45cm)当たりのセル密度が1500個以下であれば、著しい排気ガスの圧力損出を生じることがなく内燃機関の性能を損なうことがない。
また、ハニカム担体のセル壁の厚みは、2〜12mil(ミリインチ:0.05〜0.3mm)が好ましく、3〜8mil(0.076〜0.2mm)がより好ましい。
【0040】
(触媒調製法)
本発明に使用されるハニカム担体からDOCなどの触媒を調製するには、一般にウォッシュコート法が用いられる。
まず、触媒材料、ハニカム担体を用意する。触媒材料は必要に応じてバインダーや界面活性剤などの添加剤を水または水に水溶性有機溶媒を加えた溶媒と混合してスラリー状混合物にしてから、ハニカム担体へ塗工した後、乾燥、焼成する事により製造される。すなわち、触媒材料と水または水に水溶性有機溶媒を加えた溶媒(以下、水系媒体ともいう)と所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中で各触媒成分が均一に分散できる量を用いれば良い。
【0041】
触媒材料は、少なくとも白金を含む貴金属成分を無機母材として含んでいる。貴金属成分は、予め無機母材に担持させておくこともできる。金属触媒成分と無機母材は水系媒体中で混合してスラリーを調製しておく。
触媒材料を調製するにあたり、貴金属を、予め無機母材に担持させておく場合、適宜公知の方法を採用できる。
その一例を示すと、まず、貴金属成分の原料として硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物などの化合物、具体的には水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)炭酸塩、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、水酸化白金(IV)酸の硝酸溶液、硝酸白金、ジニトロジアミン白金硝酸、塩化白金(IV)酸などを用意し、パラジウムの出発塩として、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウムなどを用意する。これらから選択して水、有機溶媒に溶解して貴金属成分原料の溶液を用意する。
【0042】
次に、この貴金属成分原料の溶液を、水系媒体と共に無機母材と混合した後、50〜200℃で乾燥して溶媒を除去した後、300〜1200℃で焼成する。なお、上記成分以外に、バインダー等として公知の触媒材料を配合してもよい。このような公知の触媒材料としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、セリア、アルカリ金属材料、アルカリ土類金属材料、遷移金属材料、希土類金属材料、銀、銀塩等が挙げられ、必要に応じて分散剤、pH調整剤を合わせて使用することができる。
【0043】
触媒組成物をハニカム担体に被覆するには、触媒組成物をスラリー状混合物として塗工する。触媒組成物は一層としてもよいし、二層以上になるように塗布してもよい。触媒組成物を塗工した後、乾燥、焼成を行う。なお、乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜600℃が好ましく、特に400〜600℃が好ましい。乾燥時間は0.5〜2時間、焼成時間は1〜3時間が好ましい。加熱は、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0044】
(DOCの機能)
エンジンからの排気ガスに含まれるNOxは、その多くがNOである。従来の排気ガス浄化装置では、SCR触媒におけるNOx浄化を促進するため、NOとNOを適切な比率にすることが望ましいとされてきた。このNO:NO比率は、Fe−βやMFIなどのゼオライトを主要な成分としたSCR触媒では凡そモル比で1:1とされる。
本発明の排気ガス浄化装置でも、SCR触媒の前方にDOCを配置して、NOをNOに酸化し、NOx中のNO濃度を上昇させる。このようなNO酸化性能は、貴金属成分が遷移金属より高く、Pd成分よりもPt成分の方が優れている(特開2009−167844:段落[0021]、特公表2008−526509:段落[0005]、特開2008−155204:段落[0006]、非特許文献4(JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN, Vol.40 (2007) No.9 pp.741−748)。
また、DOCの後段には、ウォールフロータイプのハニカム構造体でトラップされた煤などの微粒子を燃焼除去する手段が配置される。また、ディーゼルエンジンの筒内又はディーゼルエンジンとDOCの中間部の配管内に、未燃の軽油を定期的に噴霧して燃焼させるために、排気ガス温度を上昇させ、その燃焼熱で煤などの微粒子を燃焼させる。微粒子の燃焼除去手段としては、ウォールフロータイプのハニカム構造体単独(DPF)や触媒化されたウォールフロータイプのハニカム構造体(CSF)が使用される。燃焼に要する燃料を節約し、煤などの微粒子を燃焼させるための開始温度を下げることができるために、触媒化されたウォールフロータイプのハニカム構造体(CSF)の使用が一般的である。
【0045】
3.[CSF:触媒化燃焼フィルター]
本発明において、触媒化燃焼フィルター(CSF)とは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の微粒子成分(PM)を捕集し、燃焼(酸化)除去するための貴金属成分を含む触媒化燃焼フィルターである。触媒化燃焼フィルター(CSF)は、細孔径が12〜60nmのアルミナ一種、又はその範囲内で細孔径が異なる二種以上のアルミナ混合物に、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)を担持した触媒層を有し、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:4であることが好ましい。
本発明の触媒装置Iにおいて、CSFは耐熱性の高いバグフィルターでも良いが、シリカ、アルミナ、炭化珪素、コーディエライトなどの無機酸化物の焼結体を多孔質化して得られたウォールフロータイプのハニカム型構造体を触媒化して使用することが望ましい。
【0046】
CSFには貴金属成分として、少なくとも白金成分とパラジム成分を含有する。Pt成分を含有させることでCSFでもNO酸化性能を発揮させ、排気ガス中のNO濃度を増し、CSF後段のSCR触媒におけるNOx還元浄化能力を向上させることができる。
また、Pt成分にPd成分を加えることで、Pt成分の揮発を抑制することが期待できる。触媒化燃焼フィルター(CSF)は、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:4であることが好ましく、3:2〜11:4であることがより好ましい。この範囲を外れると、前記DOCの場合と同様に好ましくない。1:1未満であると白金の含有率の低下に伴うHC、CO、NO等の酸化活性の低下が大きくなり、11:4を超えるとパラジウムが共存しても揮発した白金等の貴金属によるSCRの脱硝性能の低下が大きくなるためである。そして、触媒化燃焼フィルター(CSF)は、白金の担持量が金属換算で0.05〜2.0g/Lであることが好ましく、0.1〜1.5g/Lであることがより好ましい。
【0047】
さらに、本発明では触媒化燃焼フィルター(CSF)の触媒層を構成する酸化成分の被覆量が、4〜100g/Lであることが好ましく、5〜50g/Lであることがより好ましい。酸化成分の被覆量が、4g/L未満であると、担持される白金等の貴金属の分散性が悪化することにより酸化活性が低下し、100g/Lを超えると、後述するようにフィルターセル壁に無数に開いた細孔が狭くなることで圧損が増大するので好ましくない。
このようなCSFは、本発明ではDOCと同様の「酸化触媒組成物を被覆した構造体」であるといえる。そのため、無機母材については、DOCの項で詳細に述べた多孔質な無機酸化物がすべて使用できる。また、白金等の貴金属の出発塩についてもDOCの項で詳細に述べた原料がすべて使用できる。
【0048】
前記DOCと同様、CSFにもハニカム構造体(一体構造型担体)が使用される。特に、通孔開口部の一方を開口し、もう一方を閉口した通孔を集積してハニカム状にしたウォールフロー型担体の使用が望ましい。ウォールフロー型担体は、通孔の壁が多孔質からできていて、微粒子成分は排気ガスと共に通孔開口部から通孔の中に進入し、排気ガスが通孔壁の多孔質の孔を通過して後方に排出され、微粒子成分は閉口された通孔の中に堆積する。このように堆積した微粒子成分は、前述のとおり燃焼除去されることでCSFが再生され、再び排気ガスの中から微粒子成分を補足することができる。
但し、DOCに使用されるフロースルー型ハニカム構造体とは異なり、フィルターとしての機能を有するウォールフロー型ハニカム構造体が使用されるため、CSFとして使用される触媒成分はDOCと同じ機能を有しながら、DOCとは異なる機能も求められる。
実際、ウォールフロー型ハニカム構造体にフロースルー型ハニカム構造体と同じ量の触媒成分を塗布すると、通孔の壁が多孔質からできているとはいえ、圧損が異常に増大してしまい、エンジンの出力を著しく低下させる。そのため、ウォールフロー型ハニカム構造体に触媒成分を塗布する場合、フロースルー型ハニカム構造体に比べ、触媒成分の単位体積当たりの使用量は半分以下にすることが好ましい。
【0049】
(CSFの機能)
CSFの主たる役割は、ウォールフロータイプのハニカム構造体にトラップされた煤などの微粒子成分の酸化除去であり、貴金属が担持された触媒成分の機能は、煤など微粒子成分の酸化除去の開始温度を下げることにある。しかも、CSFには、酸化触媒機能があるので、CSFに付着した煤、SOFなどの浮遊粒子状物質を比較的低温から燃焼させることができるため、煤などの燃焼用燃料の消費を低減することが可能になる。また、NOの排出量が多い場合、DOCだけではNOを十分にNOに酸化しきれないが、CSFはDOCでは酸化しきれないNOをさらにNOに酸化することもできる。
【0050】
4.[SCR触媒:選択還元触媒]
本発明の触媒装置Iは、SCR触媒(選択還元触媒)をDOC、CSFの後段に配置している。この構造によりHC、COやNOxの他、煤やSOFについても高い浄化性能を発揮する。
【0051】
本発明の排気ガス浄化装置に使用されるSCR触媒は、アンモニア成分を還元剤として排気ガス中のNOxを還元浄化するものである。SCR触媒材料としては、ゼオライトや後述するゼオライト類似の化合物(結晶金属アルミノリン酸塩)の他、バナジウム酸化物、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化ガリウム、酸化スズ等の碑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の各種無機材料が挙げられる。また、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカと上記酸化物との混合物や複合化物等も挙げられる。ただし、自動車用途ではバナジウムのような有害な重金属を含まないことが望ましい。
本発明では、SCR触媒がゼオライト又は結晶金属アルミノリン酸塩を含むことが好ましい。また、本発明では、PtやPdなどの貴金属成分は、アンモニア成分を酸化しNOxを生成するので含まないことが好ましい。
【0052】
ゼオライトは、結晶中に微細孔を持つアルミノ珪酸塩の総称であり、その細孔内に選択的に分子を取り込み、反応を促進させることができる。このようなゼオライトや上記無機材料は、SCR材料として優れたNOx還元浄化性能を有するが、貴金属に汚染されるとNOxの還元浄化性能を著しく低下させてしまう。ところが、本発明によれば、DOC中の貴金属成分であるPtが高温に晒されても飛散しにくい状態でハニカム構造体に担持されているので、ゼオライトや上記無機材料が汚染されるのを防ぎ、SCR触媒として優れたNOx還元浄化性能を長期間にわたって安定的に発揮させることができる。
SCR触媒は、フロースルー型ハニカム構造体、又はウォールフロー型ハニカム構造体などの一体構造型担体であることが好ましい。
【0053】
(ゼオライト及びゼオライト類似の化合物)
本発明においてゼオライトは特に限定されないが、Y型、β型、MFI型、CHA型、USY型、SUZ型、MCM型、PSH型、SSZ型、ERB型、ITQ型、モルデナイト、フェリエライトの中から適宜選択できる。また、ゼオライトと同様の層状構造を有する結晶性金属アルミノリン酸塩(Crytal metal aluminophosphate)が挙げられる(特開昭60−86011)。このような結晶性金属アルミノリン酸塩は、結晶性リン酸アルミニウム(ALPO:Aluminophosphate)や、結晶性ケイ酸リン酸アルミニウム(SAPO:Silicoaluminophosphate)が知られており、SCR触媒材料としても検討されている(US2008/0241060)。このようなゼオライト、及びゼオライト類似の化合物は、単独でも良いが、2種以上の材料を混合してもよく、複数の材料を構造型担体表面に多層化して被覆してもよい。また、ゼオライト、及びゼオライト類似の化合物は、そのカチオンサイトに鉄や銅等の遷移金属成分や、セリウムやランタン等の希土類成分をイオン交換したものであってもよい。
【0054】
このようなゼオライト、及びゼオライト類似の化合物のうち、本発明ではSCR触媒材料としてβ型ゼオライトの使用が好ましい。β型ゼオライトは、比較的大きな径を有する一方向に整列した直線的細孔とこれに交わる曲線的細孔とからなる比較的複雑な3次元細孔構造を有し、イオン交換時のカチオンの拡散、およびNH等のガス分子の拡散が容易であると共に反応性と耐久性に優れるという性質を有している。
また、ゼオライトは、NHのような塩基性化合物が吸着できる酸点を有しており、そのSi/Al比に応じてその酸点の数が異なる。一般的にSi/Al比が低いゼオライトは酸点の数が多いが、水蒸気共存下での耐久において劣化度合いが大きく、逆にSi/Al比が高いゼオライトは耐熱性に優れているが酸点は少ない。NH選択還元触媒においては、ゼオライトの酸点にNHが吸着し、そこが活性点になってNOなどの窒素酸化物を還元除去するので、酸点が多い方(Si/Al比が低い方)が脱硝反応には有利である。このようにSi/Al比には、耐久性と活性がトレードオフの関係にあるが、これらを考慮すると、ゼオライトのSi/Al比は5〜500が好ましく、10〜100がより好ましく、15〜50がさらに好ましい。このような特性は、SCR触媒に好適なβ型ゼオライト、そしてMFI型ゼオライトも同様に有している。
【0055】
(β型ゼオライト)
本発明においてSCR触媒材料には、ゼオライトのカチオンサイトに鉄元素がイオン交換したβ型ゼオライトを使用することが好ましい。また、この鉄元素がイオン交換されたゼオライトには、鉄成分として酸化鉄が含まれていても良い。このようにして鉄元素を含むゼオライトはNH吸着脱離速度が速く、SCRとしての活性も高いため、主成分として含むことが好ましい。ここで、主成分とは、SCR触媒の担体に被覆される触媒組成物に仕様される全ゼオライト量のうち、50wt%以上であることをいう。
β型ゼオライトは、前述のような3次元細孔構造を有し、イオン交換時のカチオンの拡散、およびNH等のガス分子の拡散が容易である。また、このような構造はモルデナイト、ホージャサイト等が一方向に整列した直線的な空孔のみを有するのに対して、特異な構造で、複雑な空孔構造であるがゆえに、β型ゼオライトは、熱による構造破壊が生じ難く安定性が高く、自動車用触媒にとって有効な材料である。
【0056】
(鉄元素が添加されたβ型ゼオライト)
一般にゼオライトには固体酸点として、カチオンがカウンターイオンとして存在する。カチオンとしては、アンモニウムイオンやプロトンが一般的であるが、カチオン種として鉄元素が添加されたβ型ゼオライト(以下、「Fe−β」ということがある)が好ましい。
β型ゼオライトが鉄元素によりイオン交換される割合は、鉄元素(イオン)1個と、ゼオライト中の一価のイオン交換サイトである[AlO4/2]−単位の2個とがイオン対を形成することに基づいて、次の式(9)で表されることが好ましい。
[単位重量のゼオライト中にイオン交換により含まれる鉄イオンのモル数/{(単位重量のゼオライト中の存在するAlのモル数)×(1/2)}]×100・・・(9)
イオン交換率は、10〜100%である事が好ましく、12〜92%であることがより好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。イオン交換率が92%以下であると、ゼオライトの骨格構造がより安定化し、触媒の耐熱性、ひいては触媒の寿命が向上し、より安定した触媒活性を得ることができる。ただし、イオン交換率が低すぎて、10%未満になると充分な脱硝性能が得られない場合がある。なお、前記イオン交換率が100%である場合には、ゼオライト中のカチオン種全てが鉄イオンでイオン交換されていることを意味する。このように、イオン交換されたゼオライトは優れた浄化能力を発揮する。
【0057】
(各種無機材料)
本発明において、無機材料としては、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化ガリウム、酸化スズ等の卑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の中から適宜選択できる。それ以外にも、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカは耐熱性に優れ、比表面積が上記酸化物より大きいため、上記酸化物と混合または複合化することで上記酸化物自体の比表面積を増大させることができるので、より好ましい。
なかでも、セリアは、NOx吸着機能材料として知られており、本発明においてもNOx吸着を促進することでNHとNOxのSCR反応を促進できる機能を有する。また、ジルコニアは、その他成分を熱的に安定な状態で高分散させる為の分散保持材料としての効果を期待できる。その他、タングステンの酸化物は、酸性が強く、アルカリ成分である尿素やアンモニアの吸着力が大きいので、タングステンの酸化物を使用することで脱硝性能が高くなるという作用効果を期待できるため、これらの酸化物を単独または混合もしくは複合化して使用することが好ましい。
これらの酸化物およびそれらの複合酸化物は、組成、構造、製法によって特に限定されない。例えば、上記元素を含む硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物等の形態を有する出発原料を水溶液中に溶解させた後、混合し、pH調整等により沈殿物として沈降させるか蒸発乾固させるかして得られた固形物を焼成してもよいし、混合もしくは複合化する際には、これらの複数の金属塩を一度に可溶化させて上記処理を行ってもよいし、単一もしくは複数の金属塩に上記処理を行うことにより酸化物を形成させた後、残りの金属塩を一度にまたは逐次に担持してもよい。
【0058】
5.[還元剤噴霧手段]
本発明の排気ガス浄化触媒装置において、還元剤噴霧手段(Injector)は、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる還元剤を供給するものであって、通常、還元剤の貯蔵タンクと配管、その先端に取り付けられた噴霧ノズルから構成される。
還元剤噴霧手段の位置は、触媒化燃焼フィルター(CSF)の後方、かつ窒素酸化物(NOx)を還元剤と接触させて還元するための選択還元触媒(SCR)の前方に設置される。さらに、二個目の酸化触媒(DOC)がCSFとSCRの間に設置される場合は、二個目のDOCの後方に配置することが好ましい。
還元成分の種類は、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる。尿素成分としては、濃度31.8〜33.3重量%の規格化された尿素水溶液、例えば商品名アドブルー(Adblue)を使用でき、またアンモニア成分であれば、アンモニア水のほか、アンモニアガスを使用してもよい。ただし、還元成分であるNHは、それ自体に刺激臭等の有害性があるため、還元成分としてはNH成分をそのまま使用するよりも、脱硝触媒の上流から尿素水を添加して、熱分解や加水分解によりNHを発生させ、これを還元剤として作用させる方式が好ましい。
【0059】
6.[AMOX:アンモニア酸化触媒]
本発明の排気ガス浄化装置においては、必要に応じ、SCRの後にさらにアンモニア酸化触媒(AMOX)を配置することができる。通常、SCRではNOxやNHが規制値以下まで浄化し切れない場合にAMOXが追加使用される。
そのため、AMOXにはNHの酸化機能を有する触媒の他、NOxの浄化機能を有する触媒成分も含まれている。NHの酸化機能を有する触媒としては、貴金属成分として、白金、パラジウム、ロジウムなどから選ばれる一種以上の元素をアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの一種以上からなる無機材料の上に担持したものが好ましい。また、希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の助触媒を加えて耐熱性を向上させた無機材料を使用することも好ましい。貴金属としての白金及びパラジウムは、優れた酸化活性を発揮する。これを、比表面積が高く、耐熱性も高い上記無機材料に担持することにより、貴金属成分が焼結し難くなり、貴金属の比表面積を高く維持することで活性サイトが増え、高い活性を発揮することができる。
一方、NOxの浄化機能を有する触媒としては、SCRの項で述べたゼオライト及び酸化物のすべてが使用できる。
これら二種類の触媒は、均一に混合して一体型を有するハニカム構造体に塗布すればよいが、NHの酸化機能を有する触媒を下層に、NOxの浄化機能を有する触媒を上層に塗布してもよい。
【0060】
II.[排気ガス浄化装置(DOC+CSF+DOC+SCR)]
本発明では、上記排気ガス浄化装置(DOC+CSF+SCR)に対して、CSFの後段にもう一つのDOCを配置し、最初のDOCで、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO)を酸化し、次のCSFで排気ガス中の微粒子成分(PM)を捕集し、燃焼(酸化)除去し、さらに次のDOCで未燃のCO、HC、及びNOを酸化する機能を増強し、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる還元剤を供給した後、SCFで窒素酸化物(NOx)を還元剤と接触させて還元除去することができる。以下、この排気ガス浄化触媒装置(DOC+CSF+DOC+SCR)を触媒装置IIともいう。
【0061】
すなわち、本発明の触媒装置IIは図2のように、ディーゼルエンジン1からの排気ガス流路2中、酸化触媒(DOC)4を触媒化燃焼フィルター(CSF)5の両側に挟み込むと共に、その後方に、還元剤噴霧手段3を設け、この噴射手段3の後方に選択還元触媒(SCR)6を配置した排気ガス浄化触媒装置である。
こうしてDOCをCSFの前後に設置し、前段DOCの貴金属の一部を後段のDOCに持ってくることにより、触媒システムとしての容量は増大するものの貴金属の総使用量を減らしながらNOの酸化性能を向上させることができ、それらの後方に配置するSCRにおける尿素水溶液やアンモニア水溶液(NH成分)を使用したNOx還元反応を促進する。
【実施例】
【0062】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にするが、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。
【0063】
なお、本実施例、並びに比較例に使用する酸化触媒(DOC)及び触媒化燃焼フィルター(CSF)に使用されるアルミナの細孔径は下記に示す方法によって測定した。
【0064】
<細孔分布測定>
各種アルミナ粉末0.3gを乾燥後、Thermo社製PASCAL140−440を用いて、Hg圧入法により、アルミナの細孔分布を測定した{細孔径としてモード径(直径)を採用した}。
また、酸化触媒(DOC)および触媒化燃焼フィルター(CSF)を単独又はそれらを組み合わせた耐久仕様及びエンジンによる評価試験は下記に示す方法によって測定した。
【0065】
<触媒の耐久試験>
下記実施例、比較例で得られた酸化触媒(DOC)及び触媒化燃焼フィルター(CSF)を、電気炉内で空気雰囲気下、モデルガス評価試験用触媒は750℃、50時間、エンジン評価試験用触媒は750℃、100時間熱処理した。
【0066】
<触媒のモデルガス評価試験>
下記実施例1及び2、比較例1で得られた酸化触媒(DOC)は、コアドリル及びダイアモンドカッターを用いてモデルガス評価用触媒の大きさ(24mm径×66mm長さ、30mL)に切り出した後、750℃、50時間の電気炉による熱処理を実施し、モデルガス評価装置にて、昇温・降温ライトオフ試験を実施した。
1.昇温ライトオフ試験
モデルガス評価用触媒をモデルガス評価装置のホルダーに装着した後、表1に示すガス成分をGHSV(Gas Hourly Space Velocity:気体時空間速度、触媒単位体積当たりの反応ガスの流入速度)40,000/hrで流しながら、室温から400℃まで30℃/分の速度で昇温させる。その際、NO、CO、又はHCの酸化率が各々の数値に達した際の触媒の触媒床温度を計測した。なお、NOT30は、NOの30%が酸化された時の触媒の触媒床温度、COT75は、COの75%が酸化された時の触媒の触媒床温度、またHCT75はHCの75%が酸化された時の触媒の触媒床温度である。
【0067】
【表1】
【0068】
<触媒のエンジン評価試験>
下記実施例3〜7、比較例1〜4の酸化触媒(DOC)及び触媒化燃焼フィルター(CSF)は、750℃、100時間の電気炉による熱処理を実施した後、各々単独又はそれらを組み合わせてコンバーターに格納後、5Lディーゼルエンジンの排気口にコンバーターを装着して、以下の要領で定常試験と昇温・降温ライトオフ試験の2種類の評価試験を実施した。
【0069】
1.定常試験
1−1.NO酸化性能
ディーゼルエンジンの回転数を1,800rpmとし、触媒床温度を250℃及び300℃に固定し、触媒入口及び触媒出口から排気ガスの一部を吸引管で吸引し、NO計でNO濃度を測定し、その差から下記の式でNO酸化率を計算した。
NO酸化率(%)={(入口NO濃度)−(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)×100
1−2.軽油燃焼性
ディーゼルエンジンの回転数を1,800rpmとし、触媒床温度を250℃又は300℃に固定し、触媒入口の手前に設置した噴霧管から軽油を20mL/分(250℃)又は30mL/分(300℃)、5分間隔でON/OFF噴霧し、触媒出口の後ろに設置した熱電対で排気ガスの温度を計測し、軽油噴霧ON/OFFにおける排気ガス温度の上昇分{下記のΔT(℃)}とした。ΔTが高いほど軽油がより燃焼して発熱していることを示しているので、燃焼性に優れている。
ΔT(℃)=(軽油噴霧ON時の触媒出口排気ガス温度)−(軽油噴霧OFF時の触媒出口排気ガス温度)
【0070】
2.昇温・降温ライトオフ試験
ディーゼルエンジンの回転数を1,800rpmとし、触媒床温度を150℃に固定した後、10℃/分で400℃まで昇温させた後、10℃/分で150℃まで降温させた。この昇温時、NO、CO、又はHCの酸化率が各々の数値に達した際の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度を計測した。
なお、NOT30はNOの30%が酸化された時の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度、COT75はCOの75%が酸化された時の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度、またHCT75はHCの75%が酸化された時の一段目の酸化触媒(DOC)の触媒床温度である。
【0071】
[実施例1]
<酸化触媒DOC(1)の製造>
=下層=
BET比表面積150m/g、細孔径9nmのγ−アルミナ粉末Aを1kgと水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーαを得た。
続いてこのスラリーに一体型構造担体、すなわちハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch(465k/m)/8mil(0.2mm)、7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を浸漬させ、単位体積あたりのアルミナ担持量が65g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(1)の下層塗布済み品を得た。
=上層=
貴金属成分原料として硝酸白金水溶液と硝酸パラジウム水溶液とを混合し、Pt−Pd混合溶液を得た。ここで白金とパラジウムの割合を、重量比で5:1とした。
次に、BET比表面積150m/g、細孔径23nmのγ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.292重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させて、Pt−Pd担持アルミナ粉末aを得た。このPt−Pd担持アルミナ粉末aを1114.4g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で8g、精製糖を45g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーβを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み品を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が112.24g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(1)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=0.8g/L、触媒量:112.24g/L、下層アルミナ量:65g/L)を得た。
<触媒化燃焼フィルターCSF(1)の製造>
貴金属成分原料としての硝酸白金水溶液と硝酸パラジウム水溶液とを混合し、Pt−Pd混合溶液を得た。ここで白金とパラジウムの割合を、重量比で2:1とした。
次に、γ−アルミナ粉末Bを600g、BET比表面積165m/g、細孔径14nmのγ−アルミナ粉末Cを400gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で2.43重量%となるよう含浸担持させてPt−Pd担持アルミナ粉末bを得た。
そしてPt−Pd担持アルミナ粉末bを543.2g、シリカゾルをシリカ換算で30g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーγを得た。続いてこのスラリーに一体型構造担体、すなわちハニカムウォールフロー型コージェライト担体{300cell/inch(465k/m)/12mil(0.3mm)、7.5inch(190.5mm)径×6.7inch(170.2mm)長さ、4.85L}を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が28.66g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してCSF(1)(Pt=0.44g/L、Pd=0.22g/L、触媒量=28.66g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(1)からコアドリル及びダイアモンドカッターを用いてモデルガス評価用触媒の大きさ(24mm径×66mm長さ、30mL)に切り出し、750℃、50時間の熱処理後、上記酸化触媒DOC(1)によるモデルガス評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を図3に示す。なお、酸化触媒DOC(1)の成分、貴金属量を表2、3に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(1){7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を750℃、100時間熱処理後、触媒コンバーター内の前段に配置し、その後段に同条件で熱処理した上記のCSF(1)を置き、その後ろの別の触媒コンバーターに650℃、100時間、10%水蒸気を含む空気気流中で熱処理した選択還元触媒(SCR、特開2009−262098号公報参照)を配置し、これらを直列につないで、図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0072】
[実施例2]
<酸化触媒DOC(2)の製造>
=下層=
実施例1の下層の調製方法と同様にして、DOC(2)の下層塗布済み品を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.777重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸担持させて、Pt−Pd担持アルミナ粉末cを得た。また、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で3.85重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸担持させて、Pt−Pd担持アルミナ粉末dを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末cを927.2g、Pt−Pd担持アルミナ粉末dを187.2g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で8g、精製糖を45g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーδを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み品を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が112.24g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(2)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=0.8g/L、触媒量:112.24g/L、下層アルミナ量:65g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(2)からコアドリル及びダイアモンドカッターを用いて切り出したモデルガス評価用触媒(24mm径×66mm長さ、30mL)を用いて、750℃、50時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(2)によるモデルガス評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を図3に示す。なお、酸化触媒DOC(2)の成分、貴金属量を表2、3に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(2){7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を750℃、100時間熱処理後、触媒コンバーター内の前段に配置し、実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0073】
[比較例1]
<酸化触媒DOC(3)の製造>
=下層=
γ−アルミナ粉末A 341g、BET比表面積220m/g、細孔径8nmのγ−アルミナ粉末D 506g、BET比表面積160m/g、細孔径10nmのγ−アルミナ粉末E 253gに前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.614重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させることにより、Pt−Pd担持アルミナ粉末eを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末eを1106.8g、精製糖を111g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーεを得た。
続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムフロースルー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が110.68g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(3)の下層塗布済み触媒を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末A 279g、γ−アルミナ粉末D 414g、γ−アルミナE 207gに前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.25重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させることにより、Pt−Pd担持アルミナ粉末fを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末fを911.4g、精製糖を91g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーζを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み触媒を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が91.14g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(3)(Pt=1.52g/L、Pd=0.30g/L、触媒総量:201.82g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(3)からコアドリル及びダイアモンドカッターを用いて切り出したモデルガス評価用触媒(24mm径×66mm長さ、30mL)を用いて、750℃、50時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(3)によるモデルガス評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を図3に示す。なお、酸化触媒DOC(3)の成分、貴金属量を表2、3に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(3){7.5inch(190.5mm)径×3.3inch(83.8mm)長さ、2.39L}を750℃、100時間熱処理後、触媒コンバーター内の前段に配置し、実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す比較用の装置を構成した。この装置を用いても、良好な排ガス浄化性能は得られなかった。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
「評価1」
750℃、50時間の熱処理後の上記触媒によるモデルガス評価試験を取りまとめた図3及び触媒の成分、貴金属量を表した表2、3から酸化触媒(DOC)単独の場合のNO、CO、及びHCの酸化活性について次のことがわかる。
まず、図3のNOの酸化活性試験の結果から明らかなように、本発明の実施例1の酸化触媒DOC(1)Pt/Pd=5/1(重量比、以下同じ)は、貴金属を担持する母材として細孔径23nmのアルミナBを使用しているので、白金とパラジウムの総量が26重量%も多いが、貴金属を担持する母材として細孔径10nm以下のアルミナA、D、Eを3種類使用した比較例1(表3参照)の酸化触媒DOC(3)を上回るNOの酸化活性を発揮した。さらに、貴金属を担持する母材として細孔径23nmのアルミナBに細孔径14nmのアルミナCを加えた実施例2の酸化触媒DOC(2)は、細孔径23nmのアルミナAだけを使用した実施例1の酸化触媒DOC(1)よりさらに高いNO酸化活性を発揮した。
但し、COやHCの酸化活性は実施例1、2の酸化触媒DOC(1)、DOC(2)と比較例1の酸化触媒DOC(3)では差異はみられなかった。
これらの結果は、NOの酸化活性の向上にPtやPdの貴金属の母材として12nm以上のアルミナを使用することが有効であり、また、12nm以上のアルミナを複数使用することがNOの酸化活性のさらなる向上に有効であることを示している。
【0077】
[実施例3]
<酸化触媒DOC(4)の製造>
=下層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.293重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.065重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末gを得た。
同様にして、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.45重量%(Pt/Pd=5/1)となるよう含浸担持させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.323重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末hを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末gを920.3g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末hを186.3g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で5.8g、精製糖を111g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーηを得た。
続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムフロースルー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が111.24g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(4)の下層塗布済み触媒を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.595重量%(Pt/Pd=5/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.172重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末iを得た。また、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で2.89重量%(Pt/Pd=5/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.834重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末jを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末iを755.8g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末jを155.8g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で10.4g、精製糖を92g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーθを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み触媒を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が92.2g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(4)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=2.0g/L、触媒総量:203.44g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(4)を用いて、750℃、100時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(4)によるエンジン評価試験を行った。NOの酸化活性の結果を図4に、軽油燃焼性の結果を図5に示す。なお、酸化触媒DOC(4)の成分、貴金属量を表4、5に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(4)を触媒コンバーター内の前段に配置し、その後段に実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0078】
[比較例2]
<酸化触媒DOC(5)の製造>
比較例1の酸化触媒DOC(3)において、すべてのPt−Pd担持アルミナ粉末のPt−Pd担持量を一律21重量%減量した以外は、DOC(2)と同じ触媒調製法でDOC(5)(Pt=1.20g/L、Pd=0.24g/L、触媒総量:201.44g/L)を得た。
<装置構成>
上記の酸化触媒DOC(5)を用いて、750℃、100時間の熱処理後の上記酸化触媒DOC(5)によるエンジン評価試験を行った。NOの酸化活性の結果を図4に、軽油燃焼性の結果を図5に示す。なお、酸化触媒DOC(5)の成分、貴金属量を表4、5に示した。
その後、上記の酸化触媒DOC(5)を触媒コンバーター内の前段に配置し、その後段に実施例1と同様にして、CSFとSCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す比較用の装置を構成した。この装置を用いても、良好な排ガス浄化性能が得られなかった。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
「評価2」
750℃、100時間の熱処理後の上記触媒によるエンジン定常評価試験を取りまとめた図4、5および触媒の成分、貴金属量を表した表4、5から酸化触媒(DOC)単独の場合のNO酸化活性及び軽油燃焼性について次のことがわかる。
まず、図4のNO酸化活性試験の結果から明らかなように、本発明の実施例3の酸化触媒DOC(4)(Pt/Pd=5/1)は、白金とパラジウムの量が同一(表5参照)の比較例2の酸化触媒DOC(5)に比べ、特に低温(250℃)で優れたNOの酸化活性を発揮した。さらに、実施例3の酸化触媒DOC(4)は、白金とパラジウムの量を各々30重量%弱増量(表5参照)した比較例1の酸化触媒DOC(3)よりも高いNO酸化活性を発揮し、その効果は低温(250℃)で顕著であった。
また、図5の軽油燃焼性試験の結果から明らかなように、本発明の実施例3の酸化触媒DOC(4)は、白金とパラジウムの量が同一の比較例2の酸化触媒DOC(5)より、軽油の燃焼に伴う発熱による温度上昇が高く、その効果は低温(250℃)で顕著であった。さらに、実施例3の酸化触媒DOC(4)は白金とパラジウムの量を各々30重量%弱増量した比較例1の酸化触媒DOC(3)よりも軽油の燃焼による発熱の温度上昇も高かった。これらのことは酸化バリウム(BaO)を含み、2種類のアルミナの細孔径が12nm〜40nm{実際は23nm(アルミナA)と14nm(アルミナB)(表4参照)}である実施例3の酸化触媒DOC(4)が酸化バリウムを含まず、アルミナの細孔径も10nm以下{実際は、8nm(アルミナC)、9nm(アルミナD)、および10nm(アルミナE)(表1参照)}である比較例1、2の酸化触媒DOC(3)、DOC(5)よりNOの酸化活性の他、軽油の燃焼性にも優れていることを示している。
【0082】
[実施例4]
<装置構成>
前記実施例3のDOC(4)と前記実施例1のCSF(1)にそれぞれ750℃、100時間の熱処理を施した後、触媒コンバーター内で直列につないで、エンジン評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を図6に示す。なお、DOC(4)+CSF(1)の成分、貴金属量を表6、7に示した。
上記{DOC(4)+CSF(1)}の触媒コンバーターの後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0083】
[実施例5]
<触媒化燃焼フィルターCSF(2)の製造>
BET比表面積95m/g、細孔径10nmのγ−アルミナ粉末F 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液(Pt/Pd=2/1)を貴金属換算で2.43重量%となるよう含浸担持させてPt−Pd担持アルミナ粉末kを得た。
そしてPt−Pd担持アルミナ粉末kを543.2g、アルミナゾルをアルミナ換算で30g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーιを得た。続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムウォールフロー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が28.66g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してCSF(2)(Pt=0.44g/L、Pd=0.22g/L、触媒量=28.66g/L)を得た。
<装置構成>
前記実施例3のDOC(4)と上記CSF(2)にそれぞれ750℃、100時間の熱処理を施した後、触媒コンバーター内で直列につないで、エンジン評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を図6に示す。なお、DOC(4)+CSF(2)の成分、貴金属量を表6、7に示した。
上記{DOC(4)+CSF(2)}の触媒コンバーターの後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、比較的良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0084】
[比較例3]
<触媒化燃焼フィルターCSF(3)の製造>
実施例5の触媒化燃焼フィルターCSF(2)において、Pt−Pd担持アルミナ粉末のPt−Pd担持量を一律32重量%増量した以外は、CSF(2)と同じ触媒調製法でCSF(3)(Pt=0.58g/L、Pd=0.29g/L、触媒量=28.87g/L)を得た。
<装置構成>
前記比較例1のDOC(3)と上記CSF(3)にそれぞれ750℃、100時間の熱処理を施した後、触媒コンバーター内で直列につないで、エンジン評価試験を行った。NO、CO、及びHCの酸化活性の結果を図6に示す。なお、DOC(3)+CSF(3)の成分、貴金属量を表6、7に示した。
上記{DOC(3)+CSF(3)}の触媒コンバーターの後段に実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を触媒コンバーターで直列につないで、図1に示す比較用の装置を構成した。この装置を用いても、良好な排ガス浄化性能を得ることができなかった。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
「評価3」
750℃、100時間の熱処理後の上記触媒によるエンジン定常評価試験を取りまとめた図6および触媒の構成、成分、貴金属量を表した表6、7から酸化触媒(DOC)と触媒化燃焼フィルター(CSF)を組み合わせた場合のNO、CO、HCの酸化活性について次のことがわかる。
図6のNO、CO、及びHCの酸化活性試験から明らかなように、本発明の実施例4では、酸化触媒DOC(4)の後段に、12〜120nmの細孔径を有する2種類のアルミナを使用した触媒化燃焼フィルターCSF(1)を配置した場合であるが、NO、CO、HCのすべてで酸化活性を発揮している。
また、本発明の実施例5では、酸化触媒DOC(4)の後段に、10nmの細孔径を有するアルミナを単独で使用した触媒化燃焼フィルターCSF(2)を配置した場合であるが、NO、CO、HCのすべてで酸化活性を発揮している。
一方、比較例3の触媒{DOC(3)+CSF(3)の組み合わせ}では、酸化触媒、触媒化燃焼フィルター共、実施例4、5よりも貴金属担持量が約30重量%も多いにもかかわらず、NO、CO、HCのすべてで酸化活性が低かった。
以上の結果は、実施例4、5に使用されたDOCとCSFの総貴金属量(Pt+Pdの合計量)にそれほど大きな差異がないことから、DOC+CSFの組み合わせによるNO、CO、HCの酸化活性に及ぼす寄与は、後段のCSFより前段のDOCの方が大きいことを示唆しており、貴金属の低減はDOCよりもCSFに対して有効であると考えられる。
【0088】
[実施例6]
<酸化触媒DOC(6)の製造>
=下層=
γ−アルミナ粉末B 1000gに、前記Pt−Pd混合溶液(Pt/Pd=2/1)を貴金属換算で0.336重量%(Pt/Pd=2/1)となるよう含浸させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.054重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末lを得た。
同様にして、γ−アルミナ粉末C 200gに、同Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で1.66重量%(Pt/Pd=2/1)となるよう含浸担持させた後、水酸化バリウム水溶液を酸化バリウム換算で0.268重量%となるよう含浸させることにより、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末mを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末lを920.6g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末mを186.6g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で3g、精製糖を111g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーκを得た。
続いてこのスラリーに一体型構造担体、すなわちハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch(465k/m)/8mil(0.2mm)、7.5inch(190.5mm)径×2.64inch(67.1mm)長さ、1.91L}を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が111.02g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(6)の下層塗布済み触媒を得た。
=上層=
γ−アルミナ粉末B 1kgに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で0.682重量%(Pt/Pd=2/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.099重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末nを得た。また、γ−アルミナ粉末C 200gに、前記Pt−Pd混合溶液を貴金属換算で3.31重量%(Pt/Pd=2/1)、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で0.481重量%となるよう含浸担持させて、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末oを得た。
そして、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末nを755.9g、Pt−Pd−Ba担持アルミナ粉末oを155.9g、水酸化バリウムを酸化バリウム換算で4.5g、精製糖を92g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーλを得た。
続いて、このスラリーに前記の下層塗布済み触媒を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が91.63g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してDOC(6)(Pt=1.1g/L、Pd=0.55g/L、BaO=1.0g/L、触媒総量:202.65g/L)を得た。
<酸化触媒DOC(7)の製造>
実施例3のDOC(4)の製造において、ハニカムフロースルー型コージェライト担体のサイズを300cell/inch(465k/m)/8mil(0.2mm)、7.5inch(190.5mm)径×2.64inch(67.1mm)長さ、1.91Lに変える以外は、実施例3のDOC(4)と同じ触媒調製法により、DOC(7)(Pt=1.2g/L、Pd=0.24g/L、BaO=2.0g/L、触媒総量:203.44g/L)を得た。
<触媒化燃焼フィルターCSF(4)の製造>
γ−アルミナ粉末Bを600g、γ−アルミナ粉末Cを400gに、前記Pt−Pd混合溶液(Pt/Pd=2/1)を貴金属換算で2.39重量%となるよう含浸担持させてPt−Pd担持アルミナ粉末pを得た。
そして、Pt−Pd担持アルミナ粉末pを130.3g、シリカゾルをシリカ換算で7.2g、および水をボールミルに投入し、所定の粒度になるまでミリングしてスラリーμを得た。続いてこのスラリーに実施例1と同様のハニカムウォールフロー型コージェライト担体を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が6.876g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成してCSF(4)(Pt=0.104g/L、Pd=0.052g/L、触媒量=6.876g/L)を得た。
<装置構成>
上記のDOC(6)、DOC(7)、及びCSF(4)をこの順に触媒コンバーター内で直列につないで本発明の装置を構成した。これによるエンジン昇温評価試験を行って、NO、CO、及びHCの酸化活性試験の結果を図7に示す。なお、DOC(6)、DOC(7)、及びCSF(4)の成分、貴金属量を表8、9に示した。
上記の実施例6のCSF(4)の後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を配置し、図1の本発明の装置を構成した(実施例1〜5の装置とはDOCが二分割されて設置されている点で相違している)。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0089】
[実施例7]
<装置構成>
上記実施例6のDOC(6)、DOC(7)、及びCSF(4)を用い、DOC+CSF+DOCの順に触媒コンバーター内で直列につないで本発明の装置を構成した。これによるエンジン昇温評価試験を行って、NO、CO、及びHCの酸化活性試験の結果を図7に示す。なお、DOC(6)、CSF(4)、及びDOC(7)の成分、貴金属量を表8、9に示した。
上記の実施例7のDOC(7)の後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を配置し、図2の本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0090】
[実施例8]
<酸化触媒DOC(8)の製造>
実施例3の酸化触媒DOC(4)において、すべてのPt−Pd担持アルミナ粉末のPt−Pd担持量を一律24重量%減量した以外は、実施例3と同じ触媒調製法でDOC(8)(Pt=0.91g/L、Pd=0.18g/L、BaO=2.0g/L、触媒総量:203.09g/L)を得た。
<装置構成>
前記実施例6のDOC(6)及びCSF(4)と上記DOC(8)を用い、DOC+CSF+DOCの順に触媒コンバーター内で直列につないで本発明の装置を構成した。これによるエンジン昇温評価試験を行って、NO、CO、及びHCの酸化活性試験の結果を図7に示す。なお、CSF(4)の成分、貴金属量を表8、9に示した。
上記の実施例8のDOC(8)の後段に、実施例1と同様にして、SCRの熱処理品を配置し、図2の本発明の装置を構成した。この装置を用いることで、良好な排ガス浄化性能を確認した。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
「評価4」
750℃、100時間の熱処理後の上記触媒(DOC+CSF、DOC+DOC+CSF、又はDOC+CSF+DOC)によるエンジン昇温評価試験を取りまとめた図7及び触媒の構成、成分、貴金属量を表した表8、9から次のことがわかる。
評価3で得られた知見を基に貴金属担持量をDOCに集中させた本発明の酸化触媒DOC(6)(Pt/Pd=2/1)、酸化触媒DOC(7)(Pt/Pd=2/1)、とCSFの貴金属担持量を大幅に低減させた触媒化燃焼フィルターCSF(4)を直列に並べた実施例6は、PtおよびPdの両方の総担持量が上記実施例4とほぼ同じ(表9参照)であるにも関わらず、実施例4をさらに上回るCO及びHCの酸化活性を発揮したが、NOの酸化活性はやや悪化した。但し、それでも、NOの酸化活性は、貴金属の総担持量が30重量%弱上回る比較例3を上回った。これは、DOCに貴金属の担持を集中させたことでCOやHCの酸化反応がNOの酸化反応より優先して起こっていると考えられ、COやHCの酸化には適しているが、NOの酸化にはやや好ましくない組み合わせであると考えられる。
さらに、本発明の触媒化燃焼フィルターCSF(4)を挟むようにDOC(6)、CSF(4)、DOC(7)の順に直列に並べた実施例7は、PtおよびPdの両方の総担持量が上記実施例4とほぼ同じ(表9参照)であるにも関わらず、実施例4をさらに上回るという優れたNOの酸化活性を発揮した。また、実施例7はCO、HCの酸化活性についても実施例4とほぼ同等で、貴金属の総担持量が30重量%弱上回る比較例3をも上回った。
また、本発明の酸化触媒DOC(6)、触媒化燃焼フィルターCSF(4)、及び更に貴金属担持量を低減させた酸化触媒DOC(8)(Pt/Pd=5/1)を直列に並べた実施例8は、Pt及びPdの両方の総担持量が実施例7に比べさらに10重量%近く低減し、比較例3に比べると30重量%近くも低減(表9参照)しているにも関わらず、HCの酸化活性でやや劣るものの、NO及びCOの酸化活性は比較例3を上回った。
この様に本発明は、高価な貴金属(PtおよびPd)の担持量を20〜30重量%近くも下げながら、BaOの添加、アルミナの細孔仕様の最適化、DOCの配置の最適化などでNO、CO、HCの酸化活性の向上に寄与している。特に、NOの酸化活性の向上においては顕著な効果を発揮している。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の排気ガス浄化装置は、希薄燃焼により発生するNOxの浄化技術、例えばディーゼル自動車用途をはじめ、ガソリン自動車、船舶等の移動体用途や、発電機等の定置用途などに使用可能であり、特にディーゼル自動車用に有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 ディーゼルエンジン
2 排気ガス流路
3 還元剤噴霧手段
4 酸化触媒(DOC)
5 触媒化燃焼フィルター(CSF)
6 選択還元触媒(SCR)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7