特許第6040239号(P6040239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040239
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】芳香カプセル及び関連する芳香放散装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20161128BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D85/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-523365(P2014-523365)
(86)(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公表番号】特表2014-525798(P2014-525798A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】FR2012051781
(87)【国際公開番号】WO2013021114
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年3月17日
(31)【優先権主張番号】1157183
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514033459
【氏名又は名称】プレゼンシア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】スウィサ,デイビッド
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−000187(JP,A)
【文献】 特公昭33−008845(JP,B1)
【文献】 実開昭54−182145(JP,U)
【文献】 実公昭13−013929(JP,Y1)
【文献】 特開平07−132138(JP,A)
【文献】 実開平07−024340(JP,U)
【文献】 特開2003−310128(JP,A)
【文献】 実開昭59−076238(JP,U)
【文献】 特開平04−106329(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3043595(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第01645295(EP,A1)
【文献】 特開2002−331023(JP,A)
【文献】 特開平11−197228(JP,A)
【文献】 特開2003−164513(JP,A)
【文献】 特開2004−337035(JP,A)
【文献】 実開平03−047023(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/12
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 芳香を吸収する粒状の複数の基質素子と、
− フレームと、
− 互いに面し合って前記フレーム内に固定される第1のグリル及び第2のグリルとを含み、各グリルは、複数のバーを含む、
芳香カプセルであって、
当該芳香カプセル前記複数の基質素子の単一の層中の前記複数の基質素子の各々が前記フレーム内に並びに前記グリルの間に保持されることを可能にし、且つ空気が前記複数の基質素子及び前記バーの周りで前記フレームを通じて循環するのを可能にするよう、1つの同じグリルの前記バーは離間させられ、且つ前記グリルは離間させられる、
芳香カプセル。
【請求項2】
基質素子は、初期寸法から芳香が完全に吸収されるときに達するより小さな最終寸法に時間の経過と共に変化する寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載の芳香カプセル。
【請求項3】
前記第1のグリルの各バーが前記第2のグリルのバーに面するよう、
− 前記第1のグリル及び前記第2のグリルは平面的であり、且つ相互に平行であり、
− 各グリルの前記バーは直線的であり、且つ相互に平行である、ことを特徴とする、
請求項1又は2に記載の芳香カプセル。
【請求項4】
各グリルのために、2つの隣接する第1のバーの間の距離、及び各バーの厚さは、前記複数の基質素子の最小寸法よりも厳密により小さいこと、並びに前記第1のグリルと前記第2のグリルとの間の間隔は、前記複数の基質素子の最小の初期寸法よりも大きく、前記複数の基質素子の最大の初期寸法よりも小さいことを特徴とする、請求項2又は3に記載の芳香カプセル。
【請求項5】
前記複数の基質素子の層の複数の基質素子の単一の列が前記フレームの厚さにおいて延びる隣接する第2のバーの間に保持されるよう、前記第1のグリル及び/又は前記第2のグリルの少なくとも2つの隣接する第2のバーが前記フレームの厚さにおいて延びることを特徴とする、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の芳香カプセル。
【請求項6】
複数の基質素子の単一の列が少なくともそれらの重量の作用の下で時間の経過と共に圧縮するに応じて、当該芳香カプセルがどれぐらい使い尽くされたかの視覚的表示を前記列の高さが構成するよう、前記フレームの厚さにおいて延びる隣接する第2のバーは、垂直に配置されることを特徴とする、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の芳香カプセル。
【請求項7】
重りが前記複数の基質素子の前記列の上に配置されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の芳香カプセル。
【請求項8】
当該芳香カプセルが、前記列の領域において第1の端部によって前記フレームに取り付けられるバネと、該バネの他の端部に取り付けられる端部ストッパとを更に含むことで、前記バネは、前記複数の基質素子がどれぐらい使い尽くされるかと無関係に、前記フレームと前記端部ストッパとの間で圧縮され続けることを特徴とする、請求項5に記載の芳香カプセル。
【請求項9】
前記フレームは、1つの面にある少なくとも1つの雄取付け素子と、他の面にある少なくとも同数の雌取付け素子とを含み、幾つかの芳香カプセルのフレームが幾つかの芳香カプセルの厚さの方向において並置させられた状態で、幾つかの芳香カプセルを一体に接合し得るよう、各雄取付け素子は、前記雌取付け素子のいずれか1つと係合し得ることを特徴とする、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の芳香カプセル。
【請求項10】
機密シールが2つの並置させられるフレームの接合部に嵌められることを特徴とする、請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の芳香カプセル。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか1項に記載の芳香カプセルと、
通風通路と、
該通風通路に沿って空気を推進させるよう設計される空気流発生器と、
前記推進させられる空気が芳香を放散させるよう、前記通風通路内に前記芳香カプセルを取り付けるよう設計される取付け支持体とを含む、
芳香放散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、芳香の放散及び香料入り物質用の支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
香料入り物質のための支持体を以下の通り分類し得る。
− 微小振動と結合され得る或いは結合され得ないベンチュリ効果を使用する微粉化及び空気流に晒されるときに毛管の効果を利用する芯材を使用する微粉化のいずれかによって気化させられることが意図される液体状態にある香料入り物質の貯槽。
− 熱の効果の下で固体状態から液体状態に進み、次に、蒸気状態に進む材料であり、古典的な実例は、香料入り蝋燭である。
− 香料入りワイプのような、物質が浸漬した湿式支持体。
− 香料入り分子が内部に吸収され且つ芳香入り分子が自発的放散又は空気流支援放散によって雰囲気内に放出される固体支持体であり、例えば、自動車乗員室内部で使用される特定の香料入りフィルタ又は雰囲気芳香を放散する特定の装置内で使用されるポリマの乾式カプセル。
【0003】
本発明は、最後の範疇の支持体に関し、より具体的には、芳香を内部に吸収する基質素子を含む芳香カプセルに関する。本発明は、関連する芳香放散装置にも関する。
【0004】
従来技術に関する限り、例えば、文献EP1054697には、ポリマビードの乾式カプセルが記載されている。その文献では、香りが放散されるべきでないときに、プラグを回転させることによってカプセルを環境から隔離し得るよう、カプセルは全体的に球形のプラグ内に作製される円筒形のダクト内に配置される。しかしながら、その文献はビードがカプセルの内側にどのように位置付けられるかに関する特別な詳細を何ら提供していない。
【0005】
更に、文献EP0104758は、カプセルが使用されないときにカプセルを周囲空気から密閉式に隔離するための保護部材を備えるカプセルを記載している。その文献はビードがカプセル内にどのように位置付けられるかに関する特別な詳細を何ら提供していない。
【0006】
香料入り素子の如何なる特別な位置決めに関する情報も提供していない文献FR1500142、WO03/105652、WO2009/003704、及びWO2006/046940についても、同じことが当て嵌まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それはそれとして、本発明は上述の支持体に対して少なくとも1つの技術的利点を有する芳香カプセルを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的を達成するために、芳香カプセルは、
− 芳香を吸収する基質素子と、
− フレームと、
− 互いに面し合ってフレーム内に固定される第1のグリル及び第2のグリルとを含み、各グリルは、複数のバーを含み、
当該芳香カプセルが、単一の層の基質素子がフレーム内に並びにグリルの間に保持されることを可能にし、且つ空気が基質素子及びバーの周りでフレームを通じて循環するのを可能にするよう、1つの同じグリルのバーは離間させられ、且つグリルは離間させられる。
【0009】
基質素子が単一の層においてカプセル内に配置されるという事実は、幾つかの利点をもたらす。第1に、所与の数の基質素子に関して、フレームを通じて循環する空気と接触する基質素子の全表面積は最適化され、或いは最大限化されさえする。第2に、芳香が雰囲気内に吸収される速度は、各基質素子に関して実際上同じである。第3に、カプセルの厚さ、又は同等物である、フレームの厚さは、その他の寸法と比べて比較的小さく、カプセルをコンパクトな芳香放散装置と適合可能にする。第4に、カプセルを通過する空気流は、基質素子に亘って均一に分散させられ、よって、完全な芳香品質が得られる。
【0010】
更に、カプセルは、カプセルの上流からカプセルの下流に循環する空気を作製するのに適した少なくとも1つの空気流発生器を含む、コンパクトな芳香放散装置内に挿入されることが意図されるので、以下の利点も達成される。第1に、芳香分子の雰囲気内への装置による満足な放散は、基質素子が少なくとも2つの層内に配置される場合に必要とされるよりも低い圧力を必要とし、よって、空気流発生器が満足しなければならない要件を対応する程度まで減少させる。第2に、放散させられる芳香分子の流速は実際上不変であり、よって、所与の時間期間内に放散させられる芳香分子の量を、香りを付けられるべき部屋の容積の関数として、容易に且つ正確に計測し得る。
【0011】
1つの特別な機能によれば、各基質素子は、初期寸法から芳香が完全に吸収されるときに達するより小さな最終寸法に時間の経過と共に変化する寸法を有する。
【0012】
他の特別な機能によれば、第1のグリルの各バーが第2のグリルのバーに面するよう、第1のグリル及び第2のグリルは平面的であり、且つ相互に平行であり、各グリルのバーは直線的であり、且つ相互に平行である。
【0013】
よって、カプセルの製造は、工業的尺度で有利に容易である。更に、カプセルを通過する空気流は、カプセルの下流で、層状の空気流に有利に近い。
【0014】
他の特別な機能によれば、各グリルのために、2つの隣接する第1のバーの間の距離、及び各バーの厚さは、基質素子の最小寸法よりも厳密により小さく、第1のグリルと第2のグリルとの間の間隔は、基質素子の最小初期寸法よりも大きく、基質素子の最大初期寸法よりも小さい。
【0015】
よって、基質素子は少なくとも初期的に緊密に詰め込まれ、或いはグリルのバーの間に少なくとも楔止めされるのが有利である。更に、それらの寸法が縮むと、基質素子は、バーの間を如何様にも通過し得ることなく、グリルの間で少なくとも部分的に自由に動き回るようになる。
【0016】
他の特別な機能によれば、基質素子の層の基質素子の単一の列がフレームの厚さにおいて延びる隣接する第2のバーの間に保持されるよう、第1のグリル及び/又は第2のグリルの少なくとも2つの隣接する第2のバーはフレームの厚さにおいて延びる。
【0017】
よって、基質素子の層は、工業的尺度で、カプセルを基質素子で充填するときに製造が比較的容易な、多数の基質素子を有する基質素子の少なくとも1つの列を含むのが有利である。
【0018】
他の特別な機能によれば、その列の基質素子が少なくともそれらの重量の作用の下で時間の経過と共に圧縮するに応じて、カプセルがどれぐらい使い尽くされたかの視覚的表示を列の高さが構成するよう、フレームの厚さにおいて延びる隣接する第2のバーは垂直に配置される。
【0019】
よって、カプセルがどれぐらい使い尽くされたを見るのは容易且つ簡単である。
【0020】
第1の代替的な形態によれば、重りがビードの列の上に配置される。その場合、これは列が時間の経過と共に圧縮させられる(コンパクトになる)ことを保証する。
【0021】
第2の代替的な形態によれば、カプセル0は、列の領域において第1の端部によってフレーム2に取り付けられるバネと、バネの他の端部に取り付けられる端部ストッパとを更に含むので、バネは、基質素子1がどれぐらい使い尽くされるかとは無関係に、フレーム2と端部ストッパとの間で圧縮され続ける。その場合、列が垂直に配置されるか水平に配置されるかに拘わらず、これは時間の経過と共にコンパクトになる(圧縮させられる)ことを保証する。
【0022】
他の特別な機能によれば、フレームは、1つの面にある少なくとも1つの雄取付け素子と、他の面にある少なくとも同数の雌取付け素子とを含み、幾つかの芳香カプセルのフレームが幾つかの芳香カプセルの厚さの方向において並置させられた状態で幾つかの芳香カプセルを一体に接合し得るよう、各雄取付け素子は、雌取付け素子のいずれか1つと係合し得る。
【0023】
よって、香りを付けられるべき部屋の容積に顕著に従って、放散させられる芳香分子の量を変更し得る。
【0024】
他の特別な機能によれば、機密シールが2つの並置させられるフレームの接合部に嵌められる。
【0025】
よって、それらのフレームを介して並置させられるカプセルを通過する空気流は並置の各カプセルを通過させられ、並置させられるカプセルのフレームの間の空気漏れによって引き起こされる空気流圧力の如何なる損失をも伴わない。
【0026】
本発明は、
上記に箇条書きにした芳香カプセルと、
通風通路と、
通風通路に沿って空気を推進させるよう設計される空気流発生器と、
推進させられる空気が芳香を放散させるよう、通風通路内に芳香カプセルを取り付けるよう設計される取付け支持体とを含む、
芳香放散装置、にも関する。
【0027】
本発明の他の機能及び利点は、添付の図面を参照して完全に非限定的な表示によって以下に与えられる記載から明確に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】1つの実施態様に従ったカプセルを示す正面図である。
図2図1のカプセルを示す斜視図である。
図3】開放状態のカプセル、即ち、第2のグリルを備えないカプセルを示す斜視図である。
図4】カプセルをどのように並置するかを示す分解図である。
図5】本発明に従った芳香放散装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図5に例示するように、本発明に従ったカプセル0は、芳香放散装置10の内側に取り外し可能に取り付けられることが意図され、芳香放散装置10は、
− 通風通路11と、
− 通風通路に沿って空気を推進させるよう設計される空気流発生器12と、
− 通風通路の内側に芳香カプセル0を取り付けるよう設計される取付け支持体13とを含む。
【0030】
これらの芳香放散装置の素子は、推進させられる空気が芳香を放散させるような方法で配置される。空気流発生器12は、より具体的には、タービンであり、空気流は大気圧に対して僅かに加圧されるのが好ましい。典型的には、カプセルを通過する空気の超過圧力は、21℃で0.10〜0.80インチ(0.254〜2.032センチメートル)のH2Oのオーダ、即ち、25〜200パスカルのオーダにある。
【0031】
カプセルは使い捨て可能であり、使用済みのときに交換される。その理由のために、芳香放散装置が取付け支持体13の領域において少なくとも1つのカプセルを通風通路11内に挿入し且つ送風通路11から取り外すための手段を含むことが予測されよう。これらの挿入及び取外し手段は、取付け支持体13を伴って或いは伴わないで配置される。その上、取付け支持体は、以下に記載するのと全く同じように、1つのカプセル又は幾つかの相互に並置されるカプセルの取付けを容易に可能にし得る。
【0032】
その最広義の意味において、図1乃至3に描写するように、芳香カプセル0は、
− 芳香を吸収する基質素子1と、
− フレーム2と、
− 互いに面し合ってフレーム2内に固定される第1のグリル3及び第2のグリル4とを含み、グリル3,4の各々は、複数のバー31,32,33,...41,42,43,...を含む。
【0033】
基質素子は、より具体的には、芳香分子が少なくともそれらの周縁部に進入し或いは定着するのを可能にするのに適している。よって、基質素子は、自然蒸発の結果として、或いは、より具体的には、脱着現象を通じて、基質素子が含む少量の芳香モジュールを自発的に分散させる。
【0034】
基質素子は個体である。基質素子は、少なくとも部分的に、多孔性材料及び/又はポリマ材料で作製される。多孔性材料は、例えば、セラミック又は木で構成される。
【0035】
基質素子は、回転楕円体、菱面体、直方体、又は準角柱の形状を取り得る。
【0036】
好適実施態様において、基質素子はポリマで作製される回転楕円体ビードであり、芳香分子は各ビードの全容積内に吸収される。使用されるポリマ及び芳香に依存して、ビードは僅かに知覚可能な方法において6〜18ヶ月に亘って芳香分子を自然に放散させる。そのような材料の1つの例はPebax(登録商標)である。
【0037】
一例として、ポリマビードは、各々、芳香が吸収される前に、3mmの最小寸法及び4mmの最大寸法を有し、芳香が吸収された後に、4mmの最小寸法及び6mmの最大寸法を有する。各ビード内に吸収される芳香の重量は、多かれ少なかれ、芳香が吸収される前のビードの重量に対応する。
【0038】
フレーム、グリル、及びグリルのバーは、芳香に化学的に耐え得る材料で作製される。例えば、この材料は、ポリアミド(PA)のようなプラスチックである。プラスチックは、概して安価であるという利点を有する。
【0039】
芳香に対して不活性の材料でもフレーム、グリル、及びグリルのバーを作製し得る。芳香に対して不活性な材料が意味することは、芳香分子と相互作用しない材料である。従って、そのような材料に芳香を含浸し得ず、そのような材料を芳香で汚染し得ない。芳香に対して不活性な材料は、非限定的に、アルミニウム、銅又は亜鉛のような金属、ガラス、又は芳香に対して不活性であるよう表面処理された材料であり得る。しかしながら、カプセルが全体的に使い捨て可能であり且つ使用済み後に交換されるならば、芳香の香りで汚染されるようになるカプセルは、現実には如何なる問題をも提起しないことが留意されるべきである。
【0040】
2つのグリルのうちの一方、例えば、グリル3を、フレーム2にしっかりと取り付け得るし、或いは、他のグリル4を受け入れることを意図するフレームの面を介して、このグリル3がフレーム2と共に開放的な容器を形成するよう、図3に例示するようにフレーム2と一体形にさえ形成し得る。この他のグリル4は、容器が基質素子1で充填された後に、例えば、取外し可能に、或いは取外し不能に、フレーム2に取り付けられる。
【0041】
カプセル0を通過する空気流は、空気流が存在しない場合の単位時間当たり蒸発させられる芳香分子の量と比べて、単位時間当たり放散させられる芳香分子の量を増大させる。脱着現象は、空気流の対流と効果的に結合する。より具体的には、基質素子の周縁部にある芳香分子は、空気流によって基質からある程度もぎ取られ、その結果、基質素子内により深く吸収される芳香分子は、基質素子の周縁部に向かって引かれ、次いで、芳香分子は基質素子の周縁部からもぎ取られる等である。
【0042】
図1及び2に例示するようなカプセル0の1つの本質的な特徴によれば、1つの同じグリルのバー31,32,33,...,41,42,43,...は離間しており、グリル3,4は離間しているので、カプセル0は、フレーム2内で、グリル3,4の間で、単一の層の基質素子1を保持し得る。基質素子1及びバー31,32,33,...,41,42,43,...の周りでフレーム2を通じる空気の循環は、芳香が放散させられることを可能にする。
【0043】
よって、基質素子は単一の層においてカプセル内に配置され、これは幾つかの利点をもたらす。
【0044】
第1に、所与の数の基質素子に関して、フレームを通じて循環する空気と接触する基質素子の全表面積が最適化され、最大限化されさえする。これは基質素子間のより少ない接触地点又はより小さい接触面積がカプセルを通過する空気流によって掃かれることを意味するからである。
【0045】
第2に、芳香が環境内に脱着させられる速度は、実際上、各基質素子で同じである。換言すれば、その層の各基質素子は、他と全く同じ方法において空気流に晒される。
【0046】
第3に、カプセル0の厚さ又はフレーム2の均等物は、その他の寸法と比べると比較的小さく、カプセル0をコンパクトな芳香放散装置10と適合させる。カプセルは、典型的には、数センチメートルのオーダ、好ましくは、5cmと等しいオーダの幅及び長さ/高さを有し、1センチメートルのオーダ、好ましくは、0.8cmと等しいオーダの厚さを有する。一例として、実際上何らの隙間なくカプセルを通風通路11内に挿入し得るよう、芳香放散装置の通風通路11は、カプセルの幅及び長さ/高さの断面よりも容易に知覚できる程度に高い幅及び長さ/高さの断面を有する。典型的には、芳香放散装置10は、6cmの幅、3cmの深さ、6cmの高さの平行六面体の形態を取り得る。
【0047】
第4に、カプセルを通過する空気流は、基質素子に亘って均一に分配され、よって、完全な芳香品質が得られる。具体的には、空気流は、このようにして、層の各基質素子から、所与の時間期間に亘って実際上一定であり且つ様々の基質素子の間で実際上同じである量の芳香分子を飛沫同伴する。この量は、芳香の量を考慮に入れる密かな香りを作り出すよう、基質素子の製造時に、放散させられるべき芳香に従って、より格別に調節される。
【0048】
更に、芳香放散装置10の空気流発生器12は、カプセル0を通じて通風通路11の上流から下流に空気を循環させ得るので、以下の利点も得られる。
【0049】
第1に、空気流による環境内への芳香分子の満足な放散は、基質素子が幾つかの層内に配置される場合に必要とされるよりも低い圧力を必要とする。
【0050】
これは、カプセルの上流の一定の空気流に関して、通風通路11から出る、即ち、カプセルの下流の空気流の力は、芳香素子が幾つかの層内に配置される場合よりも、芳香素子が単一の層内に配置されるならば、より大きいからである。従って、空気流発生器が満足しなければならない要件は、相応して、要求がより少ない。典型的には、低出力の、従って、より安価で比較的静かなファン又はタービンの使用は、有利に十分であり、且つ満足を与える。
【0051】
第2に、分散させられる芳香分子の流速は実質的に不変であり、よって、香りを付けられるべき部屋の容積に従って所与の時間期間内に分散させられる芳香分子の量を容易且つ精密に計り得る。
【0052】
特に基質素子がポリマ材料で作製されるとき、各基質素子1は、初期寸法から芳香が完全に脱着させられるときに達するより小さい最終寸法まで時間の経過と共に変化する寸法を有する。
【0053】
基質素子1の初期寸法は、1mm〜15mmの間で概ね構成される。より具体的には、ポリマビードの最小初期寸法は4mmであり、ポリマビードの最大初期寸法は6mmであり、これらは芳香が脱着させられた後のポリマビードに関して以前に表示した寸法に正確に対応する。
【0054】
ポリマ基質素子1の最終寸法は、初期寸法の2分の1〜10分の8の間で構成される。より具体的には、ポリマビードの最小最終寸法は3mmであり、ポリマビードの最大最終寸法は4mmであり、これらは芳香が脱着させられる前のポリマビードに関して上記で表示した寸法に正確に対応する。
【0055】
他の特別な機能によれば、第1及び第2のグリル3,4は平面的であり、フレーム2内に固定されるとき、相互に平行である。加えて、各グリルのバー31,32,33,...,41,42,43,...は直線的であり、相互に平行である。更に、図1に描写するように、第1のグリル3の各バー31,32,33,...は、第2のグリル4の各バー41,42,43,...に面する。図1において、グリル3のバー31は、グリル4のバー41を隠している。
【0056】
このように、グリルの形状及びグリルのバーの形状は可能な限り単純であるので、工業的尺度で、カプセルの製造は有利に容易である。更に、カプセルを通過する空気流は、層流の空気流に有利に近い。これは、第1のグリル3のバーが第2のグリル4のバーに面するので、バーがカプセルを通過する空気流に対する障害を余り形成しないからである。このように、この空気流はバーによって可能な限り少なく分配されるので、それは、顕著にはカプセルの下流で、有利に有意に乱流でない。
【0057】
他の特別な機能によれば、図1に例示するように、各グリル3,4に関して、2つの隣接する第1のバー31,32,33,...,41,42,43,...の間の距離及び各31,32,33,...,41,42,43,...の厚さ52は、基質素子1の最小の初期寸法及び/又は最終寸法よりも厳格に小さい。更に、図3に例示するように、第1のグリル3と第2のグリル4との間の間隔53は、基質素子1の最小初期寸法よりも大きく、基質素子1の最大初期寸法よりも小さい。
【0058】
典型的には、各バーの厚さは、0.8mmである。
【0059】
有利には、このように、基質素子1は、少なくとも初期的に締め付けられ続け、或いは少なくともグリル3,4のバーの間に楔止めされる。更に、それらの寸法が減少するに応じて、基質素子1は、バー31,32,33,...,41,42,43,...の間を如何様にも通過し得ることなく、グリル3,4の間で少なくとも部分的に自由に動き回れるようになる。
【0060】
他の特別な機能によれば、第1のグリル3及び/又は第2のグリル4の少なくとも2つの隣接する第2のバー31,32,33,...,41,42,43,...は、フレーム2の厚さにおいて延在する。例えば、これらの2つの隣接するバーは、図3に例示するバー45及び47である。これらの2つの隣接する第2のバーの間に、基質素子の層の単一の列の基質素子1を保持し得る。図3に描写するものに対応する第1の実施例において、グリル4の2つの隣接する第2のバー45及び47は、それらがそれらに面する(図2に描写する)他のグリル3のバー35及び37に触れるまで、フレーム2の厚さにおいて延在する。例示していない他の実施例において、各グリル3及び4の隣接する第2のバーは、それらがフレーム2の厚さの中央において触れるまで、フレーム2の厚さにおいて延在する。
【0061】
唯一の要件は、初期的に列内に配置される基質素子1をカプセルの動作寿命を通じて、即ち、基質素子がそれらの最終新法に達するまで保持することである。よって、上述の第1の実施例では、その間隔が基質素子の最小最終寸法よりも小さいならば、フレーム2の厚さにおいて延びる各バーとそれに面する他のグリル4のバーとの間に間隔があることが許容される。
【0062】
よって、基質素子の層は、基質素子の少なくとも1つの列を含むのが有利である。この列は、制御された数の基質素子を含むのが好ましい。基質素子1が工業的尺度でカプセル0内に装填されるとき、基質素子に対する制御が、その層の制御素子よりもむしろ、その列の基質素子にだけ関係するならば、基質素子の数に対する制御はより容易である。
【0063】
更に、図3に例示するように、フレームの厚さにおいて延びる隣接する第2のバー31,32,33,...,41,42,43,...を垂直に配置し得る。このようにして、時間の経過と共に異なる程度で隣接するバーの間で垂直に自由に動き回るようになる、図1の例示では7個ある列の基質素子1は、少なくともそれらの重量の作用の下でぎっしり詰まる(コンパクトになる)。従って、列の高さはカプセル0がどのように使い尽くされているかの視覚的な表示を形成する。一例として、3mmの直径を備える10個の球形の基質素子1から成るセグメントは30mmの長さを有する。各基質素子の直径が、重力と相俟って、消尽効果の下で平均20%だけ減少するならば、セグメントの長さは少なくとも重力の影響の下で24mmと等しくなる。フレームの厚さにおいて延びる2つのバーの一方は、カプセルが空である故にカプセルが廃棄され且つ他のものと交換させられる必要のある列の高さを表示する標識を帯び得る。
【0064】
よって、カプセルが使い尽くされる程度を簡単且つ容易に観察し得る。加えて、どのように使い尽くされるかの視覚的な表示は絶対的に確実である。何故ならば、それは単一の基質素子ではなく(列を作り上げる)複数の基質素子を観察することに依存するからである。その意味において、列はそれが平均的にどのように使い尽くされるかの表示を構成するが、潜在的に幾分異なり得るそのような基質素子の使用が独立していることに鑑みれば、単一の基質素子がどのように使い尽くされるかと比較的無関係である。
【0065】
列がぎっしり詰まる(コンパクトになる)のを保証するために、ビードの列の上に重りを配置し得ることが想定される。
【0066】
また、この目的のために、この重りが磁性材料で作製されること、並びにカプセルが例えばフレーム2内に配置される永久磁石を更に含むことが想定される。より具体的には、一例として、磁石は重りを引き付けることができ、列の下に配置される。他の実施例では、磁石は重りに反発することができ、列の上に配置される。
【0067】
重り、磁石、又はその他のものを使用しないが、バネを使用して列圧縮機能が行われることも想定される。列を構成する基質素子がどのように使い尽くされるかに関係なく、バネがフレーム2と端部ストッパとの間に圧縮状態に維持されるよう、並びに相応して列が端部ストッパとフレーム2との間にぎっしり詰められる(圧縮される)よう、このバネは列の領域において第1の端部によってカプセル0のフレーム2内に固定され、端部ストッパがバネの他の端部に固定される。この列が垂直に配置されようが水平に配置されようが、この構成は基質素子1の列を圧縮する機能を有利に遂行することが理解されよう。
【0068】
更に、次第に使い尽くされるビードに拘わらず一定である芳香分子流速を維持するために、(この電力が可能である限り)空気流発生器の電力が列の高さに隷属させられることが想定される。例えば、列の初期的な高さとより小さい最終的な高さの間で、空気流発生器の電力は有利に次第に増大させられる。しかしながら、一定の空気流のためにもぎ取られる芳香分子の量は、これらが依然として芳香分子を含むならば、基質素子が使い尽くされる程度に対して多かれ少なかれ不変である。何故ならば、この量は、基質素子が使い尽くされる程度に対して実質的に不変である、空気流によって掃かれる基質素子の表面積により大きく依存するからである。
【0069】
その上、フレーム2は、1つの面にある少なくとも1つの雄取付け素子5と、他の面にある少なくとも同数の雌取付け素子6とを含み得る。各雄取付け素子5は、好ましくは取外し可能に、雌取付け素子6のいずれか1つと係合し得る。このようにして、それらのフレームがそられの厚さの方向において並置された状態で、幾つかのカプセル0を結合させ得る。
【0070】
例えば、図2及び4に顕著に例示するように、切頭円錐形のフィンガ(指)で構成される2つの雄取付け素子5が、フレーム2の両面の一方の面の対向する隅部に配置され、フレームの他方の面は、該他の面の2つの対向する隅部に作製されるオリフィスで構成される2つの雌取付け素子6を有する。図4に例示するように、この構成はカプセルが互いに並置させられ且つ機械的にそこに保持されることを可能にし、カプセルが互いに正確に対向し合い且つ各フィンガが各対応するオリフィス内にそれぞれ楔止めされるようになる状態で互いに1つの同じ方向に向けられる場合に限り、フィンガ及びオリフィスは協働し得る。
【0071】
よって、並置させられるカプセルを位置付け且つ機械的に一体に保持し得る。更に、香りを付けられるべき部屋の容積に顕著に従って、放散させられる芳香分子の量は変更可能である。例えば、カプセルが30立方メートルの部屋を満足に香らせ得るよう、カプセルが多数の基質素子を含むならば、60立方メートルの部屋を満足に香らせるために必要とされることの全ては、この種の2つのカプセルを並置させることである。何故ならば、2倍の芳香分子が雰囲気内に放散させられるからである。更に、同じ芳香が各カプセルの基質素子内に吸収させられるとしても、各々のカプセルがその基質素子内に吸収させられた異なる芳香を有する少なくとも2つのカプセルを並置させることによって、芳香の混合物を放散させることが有利に可能である。
【0072】
カプセルを互いに対して並置させることのこの可能性は、コンパクトな芳香放散装置、即ち、カプセル0の小さい厚さの故の小さい寸法の1つと依然として適合可能である。
【0073】
更に、図4に例示するように、機密シール7を2つの並置させられるフレーム2の間の接合部に嵌め込み得る。
【0074】
よって、それらのフレーム2によって並置させられるカプセル0を通過する空気流は、並置させられるカプセル0のフレーム2の間の空気漏れによって引き起こされる空気流圧力降下を伴わずに、並置の各カプセル0を通過させられる。
【0075】
シール7は雄固定素子5として有利に作用し得ることが留意されるべきである。例えば、シール7はフレーム2の1つの面の周縁に作製される第1の溝内に部分的に挿入され、シール7の他の部分はフレーム2の面から突出し、カプセル0の他の面は、第1の溝と同等の溝を含むが、シール7を含まない。この実施例では、シール7の突出部分を他のカプセルのフレーム2の面の周縁に作製される溝内に挿入することによって、第1のカプセルを他と並置させ得る。
【0076】
請求項において、「含む」という用語は他の素子を排除せず、単数形は複数形を排除しない。
【0077】
本発明は請求されるような本発明の適用の分野から逸脱せずに数多くの他の特定の形態における実施態様を可能にすることが当業者に明らかなはずである。従って、本実施態様は例示的であると考えられるべきであり、付属の請求項の範囲によって定められる分野内で変更され得る。
図1
図2
図3
図4
図5