(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(c)500〜1400℃の温度で、工程(b)で形成された前記枯渇性ケイ素含有金属中間体を、前記水素ガス及び前記オルガノトリハロシランと接触させて、少なくとも0.1%(w/w)のケイ素を含む前記ケイ素含有金属中間体を改質する工程と、(d)100〜600℃の温度で、前記改質されたケイ素含有金属中間体を前記オルガノハライドと接触させて、SiR2X2を形成する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
工程(b)が、7〜1000kPagの圧力においてである、及び/又は工程(a)が、7〜1000kPagの圧力においてである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ジオルガノジハロシランを調製する方法であって、次の別個の連続する工程であって、
(a)500〜1400℃の温度で、i)金、ii)金及び銅、iii)金、銅、及びマグネシウム、iv)銅、ロジウム、及び金、v)銅、ロジウム、及びレニウム、vi)レニウム及びパラジウム、vii)銅、並びにviii)銅及びマグネシウムからなる群から選択される金属を含む金属触媒を、水素ガス及びオルガノトリハロシランを含む混合物で処理して、ケイ素含有金属中間体を形成する工程と、
(b)100〜600℃の温度で、ケイ素含有金属中間体を、式RXに従うオルガノハライド(式中、RはC
1〜C
10ヒドロカルビルであり、Xはハロである)と反応させて、ジオルガノジハロシラン及び枯渇性ケイ素含有金属中間体を形成する工程と、を含む、方法。
【0009】
工程(a)において、500〜1400℃の温度で、i)金、ii)金及び銅、iii)金、銅、及びマグネシウム、iv)銅、ロジウム、及び金、v)銅、ロジウム、及びレニウム、vi)レニウム及びパラジウム、vii)銅、並びにviii)銅及びマグネシウムからなる群から選択される金属を含む金属触媒を、水素ガス及びオルガノトリハロシランを含む混合物で処理して、ケイ素含有金属中間体を形成する。
【0010】
金属触媒は、坦持又は非坦持金属触媒であり得る。担体の例としては、これらに限定されるものではないが、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、及びケイ素の酸化物、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、並びに炭素の他の同素形が挙げられる。1つの実施形態においては、担体は、活性炭である。
【0011】
金属触媒が担体を含む場合には、触媒は、担体及び銅又は混合物の総合重量に基づき、典型的に、0.1〜100%(w/w)未満、あるいは0.1〜50%(w/w)、あるいは0.1〜35%(w/w)の金属又は金属の混合物を含む。
【0012】
金属触媒は、塊、顆粒、フレーク、及び粉末を含むが、これらに限定されない、様々な物理形状を有することができる。
【0013】
非坦持金属触媒の例としては、金属金、金属金及び銅の混合物、金属金、金属銅、及び塩化マグネシウムの混合物、金属銅、金属ロジウム、及び金属金の混合物、金属銅、金属ロジウム、及び金属レニウムの混合物、金属レニウム及び金属パラジウムの混合物、金属銅、並びに金属銅及びマグネシウムの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される、「金属」とは、金属が酸化数0を有することを意味する。
【0014】
坦持金属触媒の例としては、坦持金属触媒が担体及び金属の重量に基づき0.1〜35%(w/w)の少なくとも1つの金属を含む、活性炭担体上の上述の非坦持金属触媒が挙げられる。
【0015】
非担持及び担持金属触媒は、当該技術分野において既知のプロセスにより作製することができる。例えば、非坦持金属触媒を作製するために、金属銅及び金を混合することができる。加えて、これらに限定されないが、ハライド、酢酸塩、硝酸塩、及びカルボン酸塩を含む金属塩を、所望される比率で混合し、その後、既知の還元プロセスに供してもよい。担持金属触媒を作製するための1つのそのような還元プロセスを以下に述べる。この方法では、塩化マグネシウムなどの幾つかの塩は、還元されずに残り得るが、他のものは還元される。
【0016】
坦持金属触媒は、例えば、水又は酸等の溶媒中で塩化金等の金属塩の混合物を作製し、この混合物を担体に適用し、担体の表面上の金塩を還元することにより調製することができる。例えば、Au(I)Clを水又は塩酸に溶解し、活性炭と混合してもよい。その後、過剰なAu(I)Cl溶液を除去し、活性炭−Au(I)Cl混合物を乾燥させてもよい。次いで、500℃で、水素によりAu(I)Clを活性炭上で還元させて、坦持金属触媒を得ることができる。当業者であれば、塩の添加、還元、及び多段階添加とそれに続く還元という順序で実行して、担持触媒を調製することができることを理解するであろう。これらの触媒の幾つかはまた、市販入手可能である。
【0017】
オルガノトリハロシランは、式RSiX
3(I)に従い、式中、RはC
1〜C
10ヒドロカルビルであり、Xはハロであり、例えば、クロロ、ブロモ、フルオロ、又はヨードである。
【0018】
Rで表わされるヒドロカルビル基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有するアクリルヒドロカルビル基は、分枝又は非分枝構造を有し得る。ヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルなどのアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルなどのシクロアルキル、フェニル、及びナプチルなどのアリール、トリル及びキシリルなどのアルカリル、ベンジル、及びフェネチルなどのアラルキル、ビニル、アリル、及びプロペニルなどのアルケニル、スチリル、及びシンナミルなどのアラルケニル、並びにエチニル及びプロイニルなどのアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
オルガノトリハロシランの例としては、メチルトリクロロシラン(CH
3SiCl
3)、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン、エチルトリフルオロシラン、エチルトリヨードシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリブロモシラン、プロピルトリフルオロシラン、プロピルトリヨードシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリブロモシラン、ブチルトリフルオロシラン、ブチルトリヨードシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルトリブロモシラン、ベンジルトリフルオロシラン、及びベンジルトリヨードシランが挙げられる。一実施形態では、オルガノトリハロシランは、メチルトリクロロシランである。
【0020】
オルガノトリハロシランを作製する方法は、当該技術分野において既知である。これらの化合物の多くは、市販入手可能である。
【0021】
工程(a)の反応装置は、ガスと固体との混合に適したどのような反応装置でもよい。例えば、反応装置の構成は、充填床、撹拌床、振動床、移動床、再循環床、又は流動床であり得る。再循環床を使用する場合には、ケイ素含有金属触媒は、工程(a)を行うための床から工程(b)を行うための床に循環させることができる。反応を促進するために、反応装置には、反応領域の温度を制御する手段を有する必要がある。
【0022】
金属触媒を水素とオルガノトリハロシランで処理する温度は、典型的には、500〜1400℃、あるいは600〜1200℃、あるいは650〜1100℃である。
【0023】
金属触媒を水素とオルガノトリハロシランで処理する圧力は、大気圧より低い、大気圧、又は大気圧より高くてよい。例えば、圧力は、典型的には、500〜1400℃の温度で、100〜2000キロパスカルゲージ(kPag)、あるいは100〜1000kPag、あるいは100〜800kPagである。
【0024】
工程(a)における水素対オルガノトリハロシランのモル比は、10,000:1〜0.01:1、あるいは100:1〜1:1、あるいは20:1〜2:1、あるいは20:1〜5:1である。
【0025】
工程(a)における水素及びオルガノトリハロシランの滞留時間は、水素及びオルガノトリハロシランが金属触媒と接触し、ケイ素含有金属中間体を形成するのに十分である。例えば、水素及びオルガノトリハロシランに対する十分な滞留時間は、典型的には、少なくとも0.01秒、あるいは少なくとも0.1秒、あるいは0.1秒〜10分、あるいは0.1秒〜1分、あるいは0.5秒〜10秒である。本明細書で使用される、「滞留時間」とは、ある反応装置体積の反応ガス(すなわち、水素及びオルガノトリハロシラン又はオルガノハライド)が、金属触媒を充填した反応装置を通過する時間を意味する。望ましい滞留時間は、水素及びオルガノトリハロシランの流量を調節することにより達成できる。
【0026】
水素及びオルガノトリハロシランは、典型的には、反応装置へ同時に供給されるが、しかしながら、別個のパルスなどによる他の混合方法も想定される。
【0027】
金属触媒は、十分な量で存在する。本明細書で使用される、「十分な量」の金属触媒とは、金属触媒を水素及びオルガノトリハロシランで処理する時に、以下に説明されるケイ素含有金属中間体を形成するのに十分な触媒である。例えば、十分な量の触媒は、少なくとも0.01mgの触媒/反応装置容積1cm
3、あるいは少なくとも0.5mgの触媒/反応装置容積1cm
3、あるいは1〜10,000mgの触媒/反応装置容積1cm
3である。
【0028】
工程(a)を行うための時間に上限はない。例えば、工程(a)は通常、少なくとも0.1秒、あるいは1秒〜5時間、あるいは1分〜1時間、行われる。
【0029】
本方法の工程(b)において、100〜600℃の温度で、ケイ素含有金属中間体を、式RXに従うオルガノハライド(式中、RはC
1〜C
10ヒドロカルビルであり、Xはハロである)と反応させて、少なくとも1つのジオルガノジハロシラン及び枯渇性ケイ素含有金属中間体を形成する。
【0030】
ケイ素含有金属中間体は、どのような担体も含めたケイ素含有金属中間体の全重量に基づき、少なくとも0.1%(w/w)、あるいは0.1〜90%(w/w)、あるいは1〜20%(w/w)、あるいは1〜5%(w/w)のケイ素を含む。ケイ素含有金属中間体中のケイ素の割合は、標準的な分析試験により測定することができる。例えば、ケイ素の割合は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)及びICP質量分析(ICP−MS)を使用して、測定することができる。
【0031】
オルガノハライドは式RXを有し、式中、Rは、C
1〜C
10アルキル又はC
4〜C
10シクロアルキルであり、Xは、オルガノトリハロシランに関して上記に定義される通りであり、オルガノトリハロシランと同じであるか、又は異なってもよい。
【0032】
Rで表わされるアルキル基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を有する。Rで表わされるシクロアルキル基は、典型的には、4〜10個の炭素原子、あるいは6〜8個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有するアルキル基は、分枝又は非分枝構造を有し得る。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられる。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルが挙げられる。
【0033】
オルガノハライドの例としては、これらに限定されないが、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化シクロブチル、臭化シクロブチル、塩化シクロヘキシル、及び臭化シクロヘキシルが挙げられる。
【0034】
工程(b)で使用するのに適した反応装置は工程(a)に記載される通りである。工程(b)において使用されるのと同じ反応装置を工程(a)で使用してもよいが、別の反応装置を使用してもよい。
【0035】
典型的には、工程(a)で生産されたケイ素含有金属中間体を含む反応装置内にオルガノハライドを供給することによって、オルガノハライドをケイ素含有金属中間体と反応させる。
【0036】
オルガノハライドの滞留時間は、オルガノハライドがケイ素含有金属中間体と反応してジオルガノジハロシランを形成するのに十分である。例えば、オルガノハライドの十分な滞留時間は、典型的には、少なくとも0.01秒、あるいは少なくとも0.1秒、あるいは0.5秒〜10分、あるいは1秒〜1分、あるいは1〜10秒である。所望される滞留時間は、オルガノハライドの流量を調節することにより達成できる。
【0037】
オルガノハライドがケイ素含有金属中間体と反応する温度は、典型的には、100〜600℃、あるいは200〜500℃、あるいは250〜375℃である。
【0038】
工程(b)は、典型的には、ケイ素含有金属中間体が所定の限度を下回るまで行われる。例えば、工程(b)は、典型的には、ケイ素含有金属中間体中のケイ素が、どのような担体も含めた触媒の全重量に基づき、その初期の重量パーセントの90%(w/w)、あるいは1〜90%(w/w)、あるいは1〜40%(w/w)を下回るまで行われる。本明細書で使用される、「ケイ素含有金属中間体中のケイ素の初期の重量パーセント」とは、工程(b)においてケイ素含有金属中間体をオルガノハライドと反応させる前の、ケイ素含有金属中間体中のケイ素の重量パーセントを意味する。ケイ素含有金属中間体中のケイ素の量は、ジオルガノジハロシランの生産をケイ素含有金属中間体中のケイ素の重量パーセントと相関させ、その後、ジオルガノジハロシランの生産を監視することによって監視されるか、又はケイ素含有金属中間体に関して上述されるように測定され得る。
【0039】
工程(b)において、オルガノハライドをケイ素含有金属中間体と反応させる圧力は、大気圧より低い、大気圧、又は大気圧より高くてよい。例えば、圧力は、典型的に、100〜2000キロパスカルゲージ(kPag)、あるいは100〜1000kPag、あるいは100〜800kPagである。
【0040】
ケイ素含有金属中間体は、十分な量で存在する。本明細書で使用される、「十分な量」のケイ素含有金属中間体とは、オルガノハライドと反応させる時に、以下に記載されるジオルガノジハロシランを形成するのに十分な触媒である。例えば、十分な量のケイ素含有金属中間体とは、少なくとも0.01mgの触媒/反応装置容積1cm
3、あるいは少なくとも0.5mgの触媒/反応装置容積1cm
3、あるいは1〜10000mgの触媒/反応装置容積1cm
3である。
【0041】
本方法の工程(a)及び工程(b)は、別個に連続して行われる。本明細書で使用される、「別個に」とは、工程(a)及び工程(b)が重複することも同時に発生することもないことを意味する。本明細書で使用される、「連続して」は、本方法において工程(b)が工程(a)の後に実行されることを意味する。しかし、工程(a)及び(b)の間に、以下に記載するような追加の工程が実行されてもよい。
【0042】
本発明の方法は、工程(b)において、ケイ素含有金属中間体をオルガノハライドと接触させる前、及び工程(d)において、改質されたケイ素含有金属中間体をオルガノハライドと接触させる前に、パージすることもまた含み得る。本明細書で使用される、「パージ」は、ケイ素含有金属中間体を含む反応装置にガス流を導入し、望ましくない材料を除去することを意味する。望ましくない材料は、例えばH
2、O
2、及びH
2Oである。パージは、水蒸気と反応し、それによってそれを除去する、アルゴンなどの不活性ガス又は四塩化ケイ素などの反応性ガスを用いて達成することができる。
【0043】
本発明の一実施形態では、工程(b)で反応させたケイ素含有金属中間体及びオルガノハライドを、水素、オルガノトリハロシラン、又は水素とオルガノトリハロシランの両方の不在下で反応させる。
【0044】
一実施形態では、本方法は、(c)工程(b)においてオルガノハライドと反応させたケイ素含有金属中間体を、500〜1400℃の温度で、水素ガス及びオルガノトリハロシランを含む混合物と接触させて、少なくとも0.1%(w/w)のケイ素を含むケイ素含有金属中間体を改質する工程と、(d)100〜600℃の温度で、改質されたケイ素含有金属中間体をオルガノハライドと接触させて、少なくとも1つのジオルガノジハロシランを形成する工程と、を更に含む。
【0045】
別の実施形態では、本発明の方法は、工程(c)及び(d)を少なくとも1回、あるいは1〜10
5回、あるいは1〜1000回、あるいは1〜100回、あるいは1〜10回反復することを更に含む。
【0046】
オルガノハライド又はオルガノトリハロシランが、標準的な温度及び圧力で又はそれ以下で液体である場合、本方法は、工程(a)及び(c)において、オルガノトリハロシランを金属触媒と接触させる前、又は工程(b)及び(d)において、オルガノハライドをケイ素含有金属中間体と接触させる前に、既知の方法により、オルガノハライド又はオルガノトリハロシランを予備加熱し、気化する工程を更に含み得る。あるいは、本プロセスは、工程(a)において金属触媒、及び工程(c)においてケイ素含有金属中間体と接触させる前にオルガノトリハロシランを蒸気化するために、液体オルガノトリハロシランを通して水素を起泡させる工程を更に含み得る。
【0047】
本プロセスは、生産されるジオルガノジハロシランを回収する工程を更に含んでよい。ジオルガノジハロシランは、例えば、反応装置からガス状のジオルガノジハロシランを除去し、次いで、蒸留によって分離することにより回収することができる。
【0048】
上に記載及び例示したプロセスによって生産されるジオルガノジハロシランは、式R
2SiX
2を有し、式中、R及びXは、オルガノハライドについて上に定義及び例示した通りである。
【0049】
本プロセスに従って調製されるジオルガノジハロシランの例としては、ジメチルジクロロシラン(すなわち、(CH
3)
2SiCl
2)、ジメチルジブロモシラン、ジメチルジヨードシラン、ジメチルジフルオロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジブロモシラン、ジエチルジヨードシラン、ジシクロヘキシルジクロロシラン、及びジシクロへキシルジブロモシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
また、本プロセスは、式R
aHSiX
3−a、RSiX
3、及びR
3SiXを有するもの等の他のオルガノハロシランを生産することもでき、式中、R及びXは、上に定義した通りであり、aは1又は2である。また、本プロセスは、式HSiX
3を有するもの等のヒドロハロシラン(式中、Xは、上に定義した通りである)を生産することもできる。
【0051】
工程(b)及び(d)は、枯渇性ケイ素含有金属触媒を生産する。枯渇性ケイ素含有金属触媒は、オルガノハライドと反応させてジオルガノジハロシランを形成した工程(a)及び(c)において堆積されたケイ素を有した。したがって、枯渇性ケイ素含有金属触媒は、工程(a)及び(c)において調製されたケイ素含有金属触媒と比較してケイ素が枯渇した。
【0052】
本発明の方法は、オルガノトリハロシランからジオルガノジハロシランを生産する。オルガノトリハロシランは他の工業プロセスの副産物であり、ゼロ価ケイ素の生産に必要とされるよりも少ないエネルギーで生産することができるため、本発明の方法は、ゼロ価ケイ素を使用するジオルガノジハロシランの生産方法よりも安価であり得る。更に、本方法は、費用がかかる処分を必要とする大量の金属ハライド副産物を生産しない。また更に、本方法は、他のオルガノシラン類と比較して、良好な選択性を有するより価値のあるジオルガノジハロシランを生産する。最後に、金属触媒は、本方法において改質及び再使用することができ、改質及び再使用することにより、ジオルガノジハロシランの生産及び選択性の増加を提供する。
【0053】
本発明のプロセスは、ポリオルガノシロキサンを生産するために既知のプロセスで加水分解することができるジオルガノジハロシランを生産する。このように製造されるポリオルガノシロキサンは、多くの産業及び応用において用途が見いだされる。
【実施例】
【0054】
下記の実施例は、本発明の方法をよりよく説明するために提示されるものであり、添付の請求項において説明される本発明を制限するものとして見なされるものではない。特に記載のない限り、実施例に記載される全ての部及び割合は、重量による。次の表において、実施例で使用される略称及び用語を説明する。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例1)
18重量%Cu/0.6重量%Au/0.2重量%MgCl
2触媒を、次のように調製した:0.0194gのAuCl
3(99+%、Sigma Aldrich)及び0.0363gのMgCl
2*6H
2O(99+%、Sigma Aldrich)を、0.1mLのHClと2.1mLの脱イオン水に添加し、溶解させた。これを0.8317gのCaCl
2*2H
2O(99+%、Alfa Aesar)に添加し、CuCl
2を溶解させた。次に、溶液を1.1418gのCに添加した。あらゆる過剰な溶液を排出し、混合物を170℃で24時間乾燥させた。0.69gのこの触媒を石英管に充填し、管炉(Lindberg/Blue Minimite管炉)の内側の特注ステンレススチール流管反応装置に設置した。触媒を、100sccmのH
2下、600℃で2時間還元し、その後、温度を650℃にした。この時点で、最初に、室温で蒸気起泡機に含まれる液体n−PrSiCl
3を通して、100sccmのH
2ガス流を起泡する(約2.0sccmのn−PrSiCl
3蒸気流量を与える)ことによって、n−PrSiCl
3を触媒上に導入して、ケイ素含有金属中間体を形成した。次に、ケイ素含有金属中間体を100sccmのH
2下で300℃に冷却し、その後、反応装置を30分間Arでパージした。30分後、1sccmのMeClを、300℃で66分間ケイ素含有金属中間体上に流し、エチル化クロロシランを反応装置から溶出した。溶出したクロロシランを、高速LTMカラムモジュール及びSPB−オクチルカラム(長さ30m×内径250um、Supelco)を用いてAgilent GC−MSによって特徴付け、注入を、100uLの試料ループを備える6方弁(Valco)を介して反応装置の出口から直接試料抽出した。66分後、少量のMeSiCl
3、MeHSiCl
2、Me
2HSiCl、Me
3SiCl、n−PrSiCl
3、n−PrMeSiCl
3、n−PrHSiCl
2、アリル−SiCl
3、EtSiCl
3、EtMeSiCl
2、Me
4Si、及びClMe
2SiOCH
2CH
2OSiMe
2Clと共に、約25mgのMe
2SiCl
2が生産された。
【0057】
(実施例2)
約1.5℃の液体MeSiCl
3を含むステンレススチール起泡機を通して、750℃の金属触媒を含む流通反応装置内に、H
2(100sccm)を起泡することによって、22.3%(w/w)Cu、0.7%(w/w)Au、及び0.2%(w/w)Mgの活性炭坦持混合物を含む金属触媒(0.4856g)(実施例1において触媒を作製するために使用された手順を用いて調製された)を、H
2対MeSiCl
3のモル比が17:1のH
2及びMeSiCl
3で30分間処理し、ケイ素含有金属中間体を形成した。30分後、MeSiCl
3流は停止し、水素流は、反応装置を300℃に冷却している間、約1時間維持した。
【0058】
次いで、50sccmのアルゴン流により、ケイ素含有金属中間体を含む反応装置を約15分間パージした。パージ後、MeClを5sccmの流量で反応装置に供給し、通過させた。反応流出物を定期的にGCにより分析し、Me
2SiCl
2の選択性を測定した。シラン生産速度が低下した後、MeClの供給を停止し、750℃で30分間、触媒をH
2及びMeSiCl
3で再び処理して、ケイ素含有金属中間体を改質した。その後、改質されたケイ素含有金属中間体をアルゴンでパージし、上述のようにMeClで再び反応させた。
【0059】
金属触媒をH
2及びMeSiCl
3で処理してケイ素含有触媒を形成し、形成されたケイ素含有金属中間体をMeClに曝露するこのサイクルを、同じ金属触媒で合計5回行った。一部のサイクルでは、反応温度、反応圧力、又は起泡機の温度を変更した。それぞれのサイクル条件及び選択性の結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
(実施例3)
活性炭上に20.9%のCu及び0.6%のAuを含む金属触媒を、実施例2に記載されるように調製し、処理した。金属触媒を処理してケイ素含有金属中間体を形成するサイクルを1回行った。ステンレススチールの起泡機は24℃であり、ケイ素含有金属中間体の形成において、5:1のH
2対MeSiCl
3のモル比を得た。ケイ素含有金属中間体を形成した後、300℃で実施例2のMeClと反応させた。全てのパラメーター及び結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例4)
活性炭上に14.9%のAuを含む金属触媒を、実施例2に記載されるように調製し、処理した。1回のサイクルが、ケイ素含有金属中間体を生成し、ケイ素含有金属中間体をMeClと反応させて、その後MeClと反応させたケイ素含有触媒からケイ素含有金属中間体を再生する工程を含む、3回のサイクルを行った。サイクル中、MeSiCl
3が金属触媒上を通過させてケイ素含有金属中間体を形成する間、ステンレススチール起泡機を0〜10℃に保った。ケイ素含有金属中間体を、実施例2にあるように300℃でMeClと反応させた。全てのパラメーター及び結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
(実施例5)
活性炭上に4.9%のCu、2.5%のRh、及び0.3%のAuを含む金属触媒を、実施例2に記載されるように調製し、処理した。1回のサイクルが実施例4に記載される通りである、2回の反応サイクルを行い、MeSiCl
3が金属触媒上を通過させてケイ素含有金属中間体を形成する間、ステンレススチールの起泡機を室温に保った。ケイ素含有金属中間体を、実施例2に記載されるように300℃でMeClと反応させた。全てのパラメーター及び結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
(実施例6)
活性炭上に4.9%のCu、2.6%のRh、及び2.5%のReを含む金属触媒を、実施例2に記載されるように調製し、処理した。実施例4に記載されるように、1回の反応サイクルを行った。ステンレススチールの起泡機は23℃であり、ケイ素含有金属中間体の形成において、6:1のH
2対MeSiCl
3のモル比を得た。ケイ素含有金属中間体を、実施例2にあるように300℃でMeClと反応させた。全てのパラメーター及び結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
(実施例7)
活性炭上に6.9%のRe及び1.2%のPdを含む金属触媒を、実施例2に記載されるように調製し、処理した。実施例4に記載されるように、1回の反応サイクルを行った。ステンレススチールの起泡機は23℃であり、ケイ素含有金属中間体の形成において、6:1のH
2対MeSiCl
3のモル比を得た。ケイ素含有金属中間体を、実施例2にあるように300℃でMeClと反応させた。全てのパラメーター及び結果を表7に示す。
【0070】
【表7】