【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決方法として本発明は、リン酸アルミニウムゼオライトの微孔性被膜層が一次被膜層を表し、該被膜層上に一次被膜層の材料とは異なる微孔性またはメソ微孔性二次材料が連続的または断続的に被着されることを提案する。
【0010】
それゆえ、本発明は、上記アルミニウム含有支持体上にゼオライト被膜層が形成されるだけでなく、上記一次被膜層に続いて異なった微孔性またはメソ多孔性二次材料が連続的または断続的に設けられる点で、上述した従来の技術とはとりわけ相違している。したがって、直接の晶出プロセスによってキャリア層上に成長させることが従来不可能であったかもしくは極めて困難であったかするゼオライトタイプを今や著しく良好にかつキャリアの溶解を生ずることもなく被膜層として晶出させることが可能である。上記概略的に示した本発明による思想は上述した従来の技術に比較して顕著な改善ないし利点をもたらす。一次被膜層の形のリン酸アルミニウムゼオライトの微孔性被膜層は、連続的であれ断続的であれ、異なった微孔性またはメソ多孔性二次材料との間にとくに有利な堅固な結合を示す。これは、それぞれのアルミニウム含有支持体上にゼオライト被膜層がより厚くかつ著しく安定的に定着される場合にも、優れたアクセシビリティーをもたらすことになる。最後に、本発明は、結合剤なしのゼオライト被膜層の製造に際し、ゼオライト選択幅の拡大を可能にする。これにより、直接の晶出に際してキャリア材料を溶解させるかあるいはキャリア材料表面に晶出させることが非常に困難で
あった材料も被膜層として
使用可能になる。さらに、一次被膜層としてのリン酸アルミニウムゼオライトの微孔性被膜層を一方とし、上記二次材料を他方とした、両者のコンビネーションによって、微孔性材料からなる被膜層の特性制御におけるフレキシビリティーが向上させられる。アルミニウム含有支持体上への多くのタイプのゼオライトの晶出は一次被膜層の形成によって促進されると共に、よりマイルドな条件下で実施可能である。とくに、孔径の相異するゼオライトのコンビネーションによって、とくに好適な物質輸送を可能にする階層的構造を有する多孔系−つまり、孔径が段階化された階層的多孔系−をつくり出すことができる(sh.Martin Hartmann、Angew Chem Int.Ed Engl.2004 Nov 12;43(44):5800−2)。
【0011】
上記記述は、微孔性一次被膜層にも、たとえば被膜層の形で連続的にもしくは断続的に設けられた微孔性またはメソ多孔性二次材料にもそれ自体として物質流とくにガス流が求められる適用ケースにおいて、それを可能にする機能が帰せられることを示している。重要な適用に当たり、二次材料の種類が基本的に所望の機能を決定する。それゆえ、これは“機能多孔性二次材料”ないし“機能微孔性またはメソ多孔性二次材料”と称することができよう。それゆえ、以下、ケースバイケースで、技術的趣旨の制限を含むことなく、“機能二次材料”も論じられることとする。
【0012】
以下、本発明によるアルミニウム含有支持体のとくに有利な実施態様を詳細に説明する:
【0013】
本発明によるアルミニウム含有支持体は、表面に被着された、少なくとも1のリン酸アルミニウムゼオライト(ALPO)の微孔性被膜層を有する。これらの材料は本発明の趣旨により、インサイチュー晶出に際してアルミニウム含有支持体に由来するアルミニウムによってその化学的組成が変化させられることがなく、さらに、後続する微孔性またはメソ多孔性二次材料の形成プロセスにおいてたとえば固有の対イオンによって二次材料に望まざる影響を与えることもないという利点を有する。このアルミニウム含有支持体は好ましくは、アルミニウム、アルミニウム含有合金とくにアルミニウム合金鋼、またはアルミニウム含有セラミックたとえばケースバイケースで酸化アルミニウムである。
【0014】
本発明上重要な機能二次材料は微孔性またはメソ多孔性である。好ましくは、この微孔性またはメソ多孔性二次材料はALPOとして、とくにSAPO(シリコアルミノホスフェート分子篩組成物)、MeAPOまたはMeSAPOとして存在するかまたは一般にゼオライトケイ酸アルミニウムまたはケイ酸塩の形で、とくにFAU、MFI、LTA、BEA、CHAとして存在する。特別な機能性を有する連続的な非多孔性二次材料も同じく被着することが可能であるが、ただしその場合には物質輸送が妨げられる。
【0015】
微孔性一次被膜層は約2.0nm以下とくに1.0nm以下の平均孔径を有しているのが有利である。この場合、平均孔径は約0.2〜1.0nmとくに約0.3〜0.7nmであるのがとくに有利である。微孔性一次被膜層の平均孔径は微孔性二次材料の平均孔径よりも小さいのが好ましい。ただし、ケースバイケースで、二次被膜層に小さな多孔が存在し、一次被膜層に大きな多孔が存在するのが好適な場合もある。さらに、微孔性二次材料の平均孔径は約0.4〜1.5nmとくに約0.5〜1.3nmであれば有利である。メソ多孔性二次材料の平均孔径は約2〜5nmとくに約2.5〜4nmであれば好適である。
【0016】
本発明によって意図される有利な技術的成果にとって、一次被膜層の厚さならびに連続的または断続的な微孔性またはメソ多孔性二次材料被膜層の厚さは決定的に限定されているわけではない。微孔性一次被膜層は少なくとも約1μmの厚さを有しかつ/または微孔性またはメソ多孔性二次材料は少なくとも約1μmとくに少なくとも約5μmの厚さを有していれば有利であることが判明した。被膜層厚さが約1μm以下であれば、多くの場合、断続的な一次被膜層が生ずる。したがって、既述したように、一次被膜層の表面が多孔性二次材料によって完全に覆われていることは必須というわけではない。ケースバイケースで、多少の差はあれ、断続的な被着が行われてもまったく十分である。一般に、断続的な被膜形成が行なわれる場合でも、表面被覆が約60%以上とくに約90%以上であれば十分である。
【0017】
本発明の具体的な実現に当たり、加えてさらに、微孔性一次被膜層と微孔性またはメソ多孔性二次材料とは、多孔性物質の化学的種類、多孔度または多孔系の種類と配向の点で相違を有し、とくに、漸次的に段階化された多孔度の形の相違を有しているのが有利であることが判明した。漸次的に段階化された多孔度が論じられる場合、それはとくに以下のように−すなわち、物質輸送を促進する“階層的”多孔度として−理解されることとする。さらに、段階化された多孔度は、孔径差の適合化によって、一方の多孔系から他方の多孔系への物質移動を促進する“漏斗効果”を生ずることを特徴としている。多孔度の段階化によって、物質輸送は、同じ被膜層厚さのリン酸アルミニウムゼオライトの微孔性被膜層ととくにゼオライトの形の微孔性またはメソ多孔性二次材料層とにおけるよりも良好に行われることができる。化学的種類の相違の例として、格子組成、含まれている対イオンまたは包有物ならびに材料の親水性および酸性度を挙げておくこととする。またこれには常に、化学的性質の機能特性あるいは、化学作用を示す、純物理的な局所的輸送ブロック以上の特性が結びついている。異なった多孔度は有利には、上述した多孔度範囲の枠内で調整することが可能である。多孔系の種類と配向については、二次元多孔流路系と三次元多孔網目構造とのコンビネーションないし三次元多孔系(3−D)を有する一次被膜層上に被着された二次材料中の好ましくはキャリア表面に対して垂直に配向された多孔系によって有利な拡散特性の実現が可能になるということができる。
【0018】
ケースバイケースで、微孔性またはメソ多孔性二次材料上に、上述したような機能性を帰することのできるさらに別の少なくとも1材料が形成されているのが有利であることがある。とくに、それは機能多孔性材料であってよい。
【0019】
この場合、微孔性一次被膜層と、微孔性またはメソ多孔性二次材料と、被着されたさらに別の多孔性材料とは、適用時の物質輸送を促進すべく、漸次的に段階化された多孔度を有しているのが大幅に好ましい。被膜コーティングされたアルミニウム含有支持体が、防汚被膜層の機能を果たす外側皮膜層を有しているのが好適である適用ケースも存在する。本発明によるアルミニウム含有支持体のフレキシビリティーは、有利には、微孔性一次被膜層および/または多孔性二次材料が機能作用物質および/または金属イオンとくに触媒作用金属イオンを含んでいることができる点に認められる。この場合、とりわけ、金属イオンたとえば白金イオン、パラジウムイオン、ルテニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、コバルトイオン、亜鉛イオンまたはニッケルイオンが好ましい。
【0020】
したがって、結果として、種々の機能コーティング被膜層によって、たとえば汚染防止、不均一触媒反応、物質分離、また、触媒作用と結びついた、吸着ならびに物質浄化およびエネルギー変換等のための種々相違した有利な適用可能性の開拓が可能である。
【0021】
本発明による上述したような被膜コーティングされたアルミニウム支持体は、熱交換器、触媒反応器または熱変態技法構成要素としてまたは防汚作用を有する構成要素として使用するに当たってとくに有利な効率を示す。
【0022】
本発明によるアルミニウム含有支持体が示す利点は、とりわけ、本発明の提案になるアルミニウム含有支持体の製造方法が用いられる場合に達成される。
【0023】
それは上述したタイプのアルミニウム含有支持体の製造方法であり、この製造方法において、1.アルミニウム含有支持体は網目構造形成元素として少なくともリンを含んだ水性懸濁液中で熱水処理され、次いで、インサイチュー晶出によってリン酸アルミニウムゼオライトの微孔性一次被膜層が形成され、その際、とくに、上記水性懸濁液中に化学量論的不足下で存在する網目構造形成アルミニウムと上記水性懸濁液中に存在するすべての網目構造形成元素の総和との間のモル比は0.5以下であるため、化学量論的不足を補償するために必要なアルミニウムは上記アルミニウム含有支持体から奪われ、さらに、2.上記微孔性一次被膜層上に微孔性またはメソ多孔性二次材料が形成され、その際、上記微孔性一次被膜層を有する上記アルミニウム含有支持体は上記微孔性またはメソ多孔性二次材料の形成に必要な網目構造形成元素を含んだ水性懸濁液中でさらなる処理に付されることになる。
【0024】
対策1として上述した“化学量論的不足技法”は基本的に、すでに冒頭に論じた国際公開第2006/048211号パンフレットに由来しており、つまり同文献中で好ましいと判明した方法理論に由来している。この場合、リン酸アルミニウムゼオライト(ALPO)の微孔性被膜層を形成させるため、アルミニウム含有支持体に微孔性一次被膜層を被着させるべく使用される水性懸濁液中には、網目構造形成元素としてリンが含まれていることが看取される。該液中においてリンは、たとえばリン酸またはリン酸塩として、とくに水溶性リン酸塩の形で含まれていてよい。加えてさらに、とくに水溶性リン酸塩として、リン酸アンモニウムが思料可能である。
【0025】
リン酸アルミニウムゼオライト(ALPO)が、たとえばSAPOのように、ケイ素を含んだゼオライトであるケースについては、水性懸濁液は網目構造形成元素としてケイ素も含んでいる。この場合、ケイ素は、ケイ酸またはシリカゾルまたは高分散酸化ケイ素たとえばエーロゾルの形あるいはケイ酸エステルの形で反応液に供給される。加えてさらに、溶解性ケイ酸塩たとえばケイ酸ナトリウムも添加可能である。
【0026】
ケースバイケースで、さらにテンプレート化合物を使用することが有利であることもある。これは構造調整剤(SPA)たとえばアルキルまたはアリールアンモニウム塩、この場合、好ましくはリン酸塩であり、あるいはまた表面活性物質である。
【0027】
所与の対策1の理論によれば、アルミニウムが完全にアルミニウム含有支持体に由来するように構成するかあるいはまた部分的に網目構造形成元素としての懸濁液に由来するように構成するかは当業者の任意である。したがって、多孔性二次材料を形成するために“必要な網目構造形成元素”なる指標は当業者にとって十分な情報である。これは本発明の説明に関連しても、たとえばとくに以下の実施例からしてもそうである。
【0028】
この方法は、化学量論的不足下にある網目構造形成アルミニウムと懸濁液中に含まれているすべての網目構造形成元素の総和とのモル比が0.2以下とくに0.1以下であることによってとくに有利に発展させることができる。加えてさらに、それぞれの被膜層ないし被着さるべき材料を形成させるために用いられる水性懸濁液が約50〜250℃とくに約80〜200℃の温度に調整されるのが有利である。
【0029】
本発明による方法には、微孔性またはメソ多孔性二次材料上ないし該材料の被膜層上に、すでに上記に一例として触れたさらに別の機能多孔性材料が被着されることによって、とくに有利な発展態様が付与される。
【0030】
この機能多孔性材料については以下のように述べることができる。
【0031】
すなわち、この材料は既存の孔径の階梯化を引き継がなければならず、それによって、好ましくは、二次材料の保護機能を果たすと共に汚染を防止し、一次被膜層と二次材料との異なった化学的特性を有利に補完することができるということである。
【0032】
本発明のさらにその他の利点について述べることとする:
【0033】
本発明の利点は、とくに、金属アルミニウムまたはその他のアルミニウム含有キャリア上に非常に良好に付着するリン酸アルミニウム(リン酸塩一次ゼオライト)をベースとして、アルミニウム含有量の高い被膜層の形のゼオライトコンビネーションが本発明になる方法によって初めて実現される点に認められる。一次被膜層への二次材料(たとえば第2のゼオライト被膜層)の付着は、一次被膜層の大きな粗度と化学的類似性(OH末端基、アルミニウム正四面体、場合により、ケイ酸塩正四面体)とによって非常に強固である。本発明により、有利には、リン酸アルミニウム一次被膜層上に異なったゼオライトタイプ(たとえば、ケイ酸アルミニウムゼオライトおよびリン酸アルミニウムゼオライト)からなる二重および多重被膜層をつくり出すことが可能である。
【0034】
本発明による所産は、従来の技術に比較したとくに以下の改善に帰せられる多様な使用可能性を示す:種々異なったゼオライト構造:リン酸アルミニウムおよびリン酸アルミニウム上に被着されるケイ酸アルミニウム、それから導出されたその他の格子イオンを有する系;種々異なった孔半径(大小の孔口)、種々異なった孔隙率、結晶または多孔系の種々異なった配向、線状多孔系および3D多孔系;種々異なった親水性、酸性度、種々異なった合成後改質、種々異なった量および/またはタイプのカチオン(金属)のイオン交換;種々異なった形態(大形結晶ないし通路)、開放マクロ構造を有した個々の結晶の連続被膜層またはナノ粒子/微結晶および、従来実現不可能であった二次被膜層としてのゼオライト被膜層。
【0035】
本発明を上記の説明とも関連させてなお技術的に詳しく述べることが有用であると思われる:先ず、アルミニウム含有支持体上にALPO、SAPO、MeAPOまたはMeSAPOの一次被膜層(リン酸塩一次ゼオライト)を形成させることが可能である。この場合、本発明は好ましくは消費性結晶化を用いる。これは上記アルミニウム含有支持体上に結合剤なしでリン酸塩ゼオライトを堅固に固着させるための方法である。この支持体は次いで、リン酸塩一次被膜層の表面に第2のゼオライト(二次ゼオライト)の形の機能多孔性二次材料の晶出をもたらすさらに別の合成液中に浸漬される。有利な懸濁液は不均一核形成の高い傾向を有しており、これによって、大きなゼオライト表面積を有する既存の一次被膜層上に二次材料とくに二次ゼオライトの成長が生ずる。かくて、とくに好適な均一な核形成となる。第2の合成液の反応技術的パラメータならびに材料パラメータを調整して、一次被膜層の溶解およびアルミニウム含有支持体の溶解が生ずることがなく、かつゼオライトの遊離ゼオライト粉末が形成されることなく、一次被膜層上に晶出が行われるようにするのが有利である。二次ゼオライトの晶出は、たとえば250℃までの温度での熱水合成によって実施される。本発明によるアルミニウム含有支持体製造時の具体的な条件はリン酸塩一次ゼオライト/二次ゼオライトの組み合わせに応じて変化し、したがって、それぞれの場合に適合化されなければならず、これは当業者により技術的に実施可能である。一次ゼオライトと二次ゼオライトとが著しく相違する場合には、一次被膜層上に前以て二次ゼオライトの結晶核を付着しておくのも好適である。
【0036】
上記に詳細に述べられた本発明は、連続した
図7、8に基づいて、さらに詳しく説明することができる:
図7は、アルミニウム含有支持体と、ALPOベースの一次被膜層と、二次材料とからなる複合系を概略的に示したものである。
図8は、一次被膜層と二次材料との特性を変化させることによって実現可能な本発明による複合系を概略的に示したものであり、この場合、各々の被膜層ないしそれらの意味については
図7を参照されたい。第2の二次材料を被着することにより、相応して以下の変種を拡大実現することができる:1)微孔性ALPO一次被膜層+多孔性ALPO二次材料および2)微孔性ALPO一次被膜層+ケイ酸アルミニウム二次材料またはケイ酸塩二次材料;3)小形結晶からなる一次被膜層と大形結晶からなる二次材料またはその逆:4)個々の結晶はそれぞれ互いに癒合していてもよい。5)および6):結晶または多孔系の配向は相違している(たとえば、線状配向多孔系および三次元配向多孔系)。孔径の階梯化:7)では一次被膜層の孔径は小さく、二次材料の孔径は大きい。8)では一次被膜層の方が大きな孔径を有している。9)および10)は一次被膜層と二次材料との化学的特性(たとえば、親水性、酸性度、対イオン:タイプおよび量)の相違をシンボリックに示している。