(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物は、(A)成分100質量部に対し、酸化亜鉛を3〜7質量部、および酸化防止剤を0.5〜3.0質量部さらに含有することを特徴とする請求項1または2記載のケーブル接続部用保護部材。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の事情に対処してなされたもので、加工性が良好で、かつ機械特性、熱老化特性および寸法安定性にも優れるエチレンプロピレンゴムをベースとしたゴム材料を用いて機械特性、熱老化特性、寸法安定性を向上させたケーブル接続部用保護部材、およびそのような保護部材を備えた高品質、高信頼性のケーブル接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は下記[1]〜[6]の実施形態を有する。
[1](A)(a-1)エチレン含量52〜55質量%、ジエン含量7.4〜8.4質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)5〜10のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体40〜80質量%、および(a-2)エチレン含量62〜67質量%、ジエン含量4.0〜5.0質量%、ムーニー粘度ML
1+4(125℃)40〜80のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体20〜60質量%からなるポリマー成分100質量部に対して、(B)プロセスオイル30〜60質量部、(C)カーボンブラック40〜70質量部、および(D)架橋剤2〜4質量部を含有する組成物の架橋体で構成されてなることを特徴とするケーブル接続部用保護部材である。
[2][1]に記載のケーブル接続部用保護部材において、(A)成分は、(a-1)成分60〜70質量%、および(a-2)成分30〜40質量%からなることを特徴とするケーブル接続部用保護部材である。
[3][1]または[2]に記載のケーブル接続部用保護部材において、前記組成物は、(A)成分100質量部に対し、酸化亜鉛を3〜7質量部、および酸化防止剤を0.5〜3.0質量部さらに含有することを特徴とするケーブル接続部用保護部材である。
[4][1]乃至[3]のいずれかに記載のケーブル接続部用保護部材において、前記組成物は、(i)ムーニー粘度ML
1+4(100℃)10〜40、(ii)ムーニースコーチ時間t
5(125℃)10〜50分、(iii)デュロメータ硬さ45〜60、(iv)引張伸び 300〜600%、および(v)圧縮永久歪み10〜30%であることを特徴とするケーブル接続部用保護部材である。
[5][1]乃至[4]のいずれかに記載のケーブル接続部用保護部材において、ケーブル接続部に当接される面の表面粗さ(Rz)が4〜8μmであることを特徴とするケーブル接続部用保護部材である。
[6][1]乃至[5]のいずれかに記載のケーブル接続部用保護部材を備えたことを特徴とするケーブル接続部。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工性が良好で、かつ機械特性、熱老化特性および寸法安定性にも優れるエチレンプロピレンゴムをベースとしたゴム材料を用いて機械特性、熱老化特性、寸法安定性を向上させたケーブル接続部用保護部材、およびそのような保護部材を備えた高品質、高信頼性のケーブル接続部が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明のケーブル接続部用保護部材は、(A)(a-1)エチレン含量52〜55質量%、ジエン含量7.4〜8.4質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)5〜10のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体40〜80質量%、および(a-2)エチレン含量62〜62質量%、ジエン含量4.0〜5.0質量%、ムーニー粘度ML
1+4(125℃)40〜80のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体20〜60質量%からなるポリマー成分100質量部に対して、(B)プロセスオイル30〜60質量部、(C)カーボンブラック40〜70質量部、および(D)架橋剤2〜4質量部を含有する組成物の架橋体から構成される。
【0012】
(A)ポリマー成分として使用される(a-1)成分および(a-2)成分の各エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体は、上記条件を満足するものであれば、ジエン成分の種類などは特に限定されるものではなく、市販のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体のなかから、それぞれ1種以上を適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、エチレンおよびプロピレンに、ジエン成分としてエチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどを共重合させたものであって、上記各条件を満たすものが使用される。
【0013】
(a-1)成分および(a-2)成分の各エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体として使用される市販品を例示すると、(a-1)成分としては、例えば、三井化学(株)製の三井EPT X−4010M(商品名;エチレン含量54質量%、ジエン含量7.6質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)8)などが挙げられる。
【0014】
また、(a-2)成分としては、例えば、三井化学(株)製の三井EPT 3062EM(商品名;エチレン含量65質量%、ジエン含量4.5質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)43、油展量20phr)、同三井EPT 3072EM(商品名;エチレン含量64質量%、ジエン含量5.4質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)51、油展量40phr)、JSR(株)製のJSR EP25(商品名;エチレン含量59質量%、ジエン含量5.1質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)63)、同JSR EP35(商品名;エチレン含量52質量%、ジエン含量8.1質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)56)、同JSR EP65(商品名;エチレン含量54質量%、ジエン含量9.0質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)48)、住友化学(株)製のエスプレン502(商品名;エチレン含量56質量%、ジエン含量4.0質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)62)、同エスプレン512F(商品名;エチレン含量65質量%、ジエン含量4.0質量%、ムーニー粘度ML
1+4(100℃)66)などが挙げられる。
【0015】
上記(a-1)成分および(a-2)成分の混合割合は、(a-1)成分が40〜80質量%、好ましくは50〜70質量%、より好ましくは60〜70質量%、(a-2)成分が20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%、より好ましくは30〜40質量%である。(a-1)成分の割合が上記範囲未満、または(a-2)成分の割合が上記範囲を超えると、ゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性が低下する。また、(a-2)成分の割合が上記範囲未満、または(a-1)成分の割合が上記範囲を超えると、ゴム組成物のグリーン強度、および硬化後の機械特性が低下する。
【0016】
(B)成分のプロセスオイルは、主として加工性を改善する作用を有する。プロセスオイルは、特に限定されるものではなく、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、および芳香族系プロセスオイルのいずれであってもよいが、機械特性を向上させ、また、押出加工性、耐汚染性、耐候性、熱老化特性などの観点からはパラフィン系プロセスオイルが好ましい。具体的には、例えば、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルPW−90、同ダイアナプロセスオイルPW−380、JX日鉱日石エネルギー(株)製のスーパーオイルN100(以上、いずれもパラフィン系プロセスオイルの商品名)などが好適に使用される。プロセスオイルは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
このプロセスオイルの配合量は、(A)ポリマー成分100質量部あたり、30〜60質量部の範囲が好ましい。配合量が30質量部未満では、ゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性が低下する。また、混練加工時に分散不良などが生ずるおそれがある。60質量部を超えると、グリーン強度が低下し、硬化後の機械特性も低下する。また、熱老化特性が低下し、加熱時の寸法変化も大きくなる。さらに、加工時に分散不良が生じるおそれがある。プロセスオイルの配合量のより好ましい範囲は、ポリマー成分100質量部あたり、30〜40質量部である。
【0018】
(C)成分のカーボンブラックは、主として機械特性を向上させる作用を有する。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックなどを用いることができる。なかでも、機械特性向上の観点から、ファーネスブラックが好ましく、良押出性ファーネスカーボンブラック(FEF)、汎用ファーネスカーボンブラック(GPF)、半補強性ファーネスカーボンブラック(SRF)、がより好ましい。具体的には、例えば、旭カーボン(株)製の旭#60、旭#55、旭#50U、東海カーボン(株)製のシーストF、シーストV、シーストS、新日化カーボン(株)製のニテロン#10(以上、いずれも商品名)などが好適に使用される。カーボンブラックは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
このカーボンブラックの配合量は、(A)ポリマー成分100質量部あたり、40〜70質量部の範囲が好ましい。配合量が40質量部未満では、機械特性が低下する。また、70質量部を超えると、ゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性が低下する。カーボンブラックの配合量のより好ましい範囲は、ポリマー成分100質量部あたり、50〜60質量部である。
【0020】
(D)成分の架橋剤としては、有機過酸化物が好ましい。硫黄や硫黄化合物など、この種のゴムの架橋剤として広く使用されているその他の架橋剤も使用可能であるが、機械特性(特に、圧縮永久歪み特性)、熱老化特性、寸法安定性などを高める観点からは有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。架橋剤としては、なかでも製造加工工程において加えられる熱履歴や貯蔵安定性の観点からジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサンが好ましく、ジクミルパーオキサイドがより好ましい。有機過酸化物は、(A)ポリマー成分100質量部に対し、2.0〜4.0質量部配合することが好ましく、2.5〜3.5質量部配合することがより好ましい。配合量が2.0質量部未満では、熱老化特性、寸法安定性、機械特性、特に圧縮永久歪みが低下する。また、配合量が4.0質量部を超えると、引張伸びが低下するおそれがある。
【0021】
なお、架橋剤として有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を配合すると加硫速度の
促進、また、機械特性、特に圧縮永久歪みや熱老化特性をさらに向上させることができる。架橋助剤としては、例えば、アクリル酸亜鉛もしくはその塩、メタクリル酸亜鉛もしくはその塩、エチレングリコールジメタクリレート、N,N′−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、多官能性メタクリレートモノマーなどが挙げられる。架橋助剤の配合量は、例えば、メタクリル酸亜鉛もしくはその塩では、ポリマー成分100質量部に対し、通常、1.0〜5.0質量部、好ましくは、2.0〜4.0質量部である。また、N,N′−m−フェニレンジマレイミドでは、ポリマー成分100質量部に対し、通常、0.5〜3.0質量部、好ましくは、0.5〜1.5質量部である。配合量が前記範囲未満では、添加による効果が十分に得られず、前記範囲を超えると、機械特性、特に引張伸びが低下するおそれがある。
【0022】
本発明のケーブル接続部用保護部材を形成する組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、着色剤、難燃剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、その他の添加剤を配合することができる。また、カーボンブラック以外の無機充填剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で使用してもよい。
【0023】
酸化亜鉛(亜鉛華)は、ポリマー成分100質量部に対して、通常、3〜7質量部、好ましくは、4〜6質量部配合される。
【0024】
酸化防止剤は、ポリマー成分100質量部に対して、通常、0.5〜3.0質量部、好ましくは、1.0〜2.0質量部配合される。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤などが知られているが、いずれも使用可能であり、これらの中から1種以上を適宜選択して使用することができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、Irganox 1010、Irganox 1076(以上、いずれもBASF製 商品名)などが例示される。ベンズイミダゾール系酸化防止剤としては、例えば、ノクラックMB(大内新興化学工業(株)製 商品名)などが例示される。キノリン系酸化防止剤としては、ノンフレックスRD(精工化学(株)製 商品名)などが例示される。
【0025】
カーボンブラック以外の無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス繊維などが挙げられる。
【0026】
本発明のケーブル接続部用保護部材は、(A)ポリマー成分、(B)プロセスオイル、(c)カーボンブラック、(D)架橋剤、および必要に応じて配合される各種成分を、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、ニーダー、ロールなどの通常の混練機を用いて均一に混合してゴムコンパウンドを得、これを射出成型などにより所定の形状に成形し架橋させることにより得られる。ゴムコンパウンドを得る際の各成分の配合方法は特に限定されず、架橋剤および架橋助剤などの架橋系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれであってもよい。
【0027】
このようにして得られるケーブル接続部用保護部材は、プロセスオイルおよびカーボンブラックの配合量が抑えられた組成物で形成されているので、機械特性が良好で、熱老化特性、寸法安定性にも優れている。しかも、組成物は流動性が良好で加工性に優れているため、射出成型やトランスファー成型が適用可能であり、外観に優れる成型品を効率よく製造することができる。したがってまた、これを用いて信頼性の高いケーブル接続部を効率よく形成することができる。
【0028】
なお、本発明のケーブル接続部用保護部材を形成する組成物は、(i)ムーニー粘度ML
1+4(100℃)が10〜40であることが好ましく、10〜30であることがより好ましい。ムーニー粘度ML
1+4(100℃)が10未満では、ゴムコンパウンド製造時および製品加工時にリボン切れなどを起こして生産性が低下し、40を超えると、加工性が低下する。また(ii)ムーニースコーチ時間t
5(125℃)が10〜50分であることが好ましく、20〜40分であることがより好ましい。ムーニースコーチ時間t
5(125℃)が10分未満では、ゴムコンパウンド製造時および製品加工時にスコーチ(ヤケ)が発生し、50分を超えると、加硫時間が長くなり生産性が低下する。
ムーニー粘度ML
1+4(100℃)およびムーニースコーチ時間t
5(125℃)は、架橋前の組成物について、JIS K 6300−1(未加硫ゴム―物理特性―第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方)に準拠して測定される。
【0029】
また、本発明のケーブル接続部用保護部材を形成する組成物は、(iii)デュロメータ硬さが45〜60であることが好ましく、50〜60であることがより好ましい。デュロメータ硬さが45未満では、製品に荷重がかかった際につぶれるおそれがあり、60を超えると、硬すぎて保護材としてケーブルに装着できないおそれがある。
デュロメータ硬さは、JIS K 6253−3(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム―硬さの求め方)に準拠してタイプAデュロメータにより測定される。
【0030】
また、本発明のケーブル接続部用保護部材を形成する組成物は、(iv)引張伸びが300〜600%であることが好ましく、400〜500%であることがより好ましい。引張伸びが300%未満では、使用時に破損するおそれがあり、600%を超えると、ケーブル装着時の密着性が低下するおそれがある。
引張伸びは、JIS K 6251(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム―引張特性の求め方)に準拠して測定される。
【0031】
また、本発明のケーブル接続部用保護部材を形成する組成物は、(v)圧縮永久ひずみが10〜30%であることが好ましく、13〜22%であることがより好ましい。圧縮永久ひずみが30%を超えると使用時に形状を保持できないおそれがあり、また密着性が低下するおそれもある。一方、10%に満たないとケーブルへの装着が困難なるおそれがある。
圧縮永久ひずみは、JIS K 6262(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム―常温,高温および低温における圧縮永久ひずみの求め方)に準拠し測定される。
【0032】
また、本発明のケーブル接続部用保護部材を形成する組成物は、熱老化(121℃、6時間)後の引張伸び残率が90%以上であることが好ましく、また、重量変化率が−3〜0%であることが好ましい。引張伸び残率が90%未満であるか、または重量変化率が−3%未満、すなわち、重量変化が前記範囲より大きくなると、寸法安定性の低下などによりケーブル接続部への装着後、保護部材として機能しなくなるおそれがある。
【0033】
また、本発明のケーブル接続部用保護部材は、ケーブル接続部に装着された際にケーブル接続部に当接される面の表面粗さが十点平均粗さ(Rz:JIS B 0601−1994)で4〜8μmであることが好ましく、5〜7μmであることがより好ましい。表面粗さ(Rz)が4μm未満では成形型からの離形が難しくなり、表面粗さ(Rz)が8μmを超えると、機械特性の低下と共にケーブル接続部と保護部材との界面に雨水などが侵入し、絶縁性能が大きく低下するおそれがある。
【0034】
なお、保護部材の表面は、保護部材の成型に用いる成型型内面の表面状態がほぼ転写される。このため、成型型内面の表面粗さを制御することにより、保護部材の表面粗さを所望の範囲に調節することができる。すなわち、成型型内面の表面粗さ(Rz)を4〜8μmの範囲に設定すれば、保護部材の表面を、ほぼそれに対応した表面粗さ(Rz)4〜8μmを有する表面に形成することができる。成型型内面の表面粗さは、内面仕上げ時に使用する研磨材などを適宜選択することによって任意に制御することができる。
【0035】
本発明のケーブル接続部用保護部材は、電力ケーブルをはじめ、各種ケーブルの接続部に装着する保護部材として幅広く用いることができる。接続部は終端接続部であっても中間接続部であってもよい。従来に比べ、機械特性、熱老化特性および寸法安定性が向上しているため、屋外のような厳しい条件下で長期間使用するケーブル接続部における用途に特に有用である。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0037】
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体)(1):
三井化学(株)製 商品名 三井EPT X−4010M;
エチレン含量54質量%、ジエン含量7.6質量%、
ムーニー粘度ML
1+4(100℃)8
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体)(2):
三井化学(株)製 商品名 三井EPT 3062EM;
エチレン含量65質量%、ジエン含量4.5質量%、
ムーニー粘度ML
1+4(125℃)43、油展量20phr
カーボンブラック:
旭カーボン(株)製 商品名 旭#50U
パラフィン系プロセスオイル:
出光興産(株)製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW−90
酸化亜鉛:
三井金属(株)製 商品名 酸化亜鉛二種
酸化防止剤:
BASF製 商品名 Irganox1010
有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド
日油(株)製 商品名 パークミルD−40
硫黄:
細井化学工業(株)製 商品名 硫黄200メッシュ
加硫促進剤:
大内新興化学工業(株)製 商品名 ノクセラーTT−P
【0038】
(実施例1)
EPDM(1)70質量部、EPDM(2)(ポリマー成分量として)30質量部、カーボンブラック55質量部、パラフィン系プロセスオイル30質量部、酸化亜鉛5質量部、酸化防止剤1質量部および有機過酸化物2.5質量部をニーダーにて均一に混練してゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物を射出成型し、外径40mm、長さ100mmの円筒状のケーブル接続部用保護カバーを作製した。また、これとは別に、ゴム組成物を8インチロールでシート状に押し出し、プレス成形加硫を行って、2mm厚のシートを作製した。
【0039】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
実施例1と同様にして、表1に示す成分を表1に示す量で用いて、ケーブル接続部用保護カバーおよびシートを作製した。
【0040】
各実施例および各比較例で得られたシートについて、デュロメータ硬さ、引張伸び、および圧縮永久歪みを測定した。また、熱老化試験を行い熱老化特性を評価した。また、架橋前のゴム組成物のムーニー粘度ML
1+4およびムーニースコーチ時間t
5をそれぞれ100℃および125℃で測定した。さらに、各実施例および各比較例で得られたケーブル接続部用保護カバーの外観から成型性を評価した。測定方法、評価方法などは次の通りである。
【0041】
[ムーニー粘度ML
1+4、ムーニースコーチ時間t
5]
JIS K 6300−1に準拠して測定した。
[デュロメータ硬さ]
JIS K 6253−3に規定するタイプAデュロメータにより測定した。
[引張伸び]
JIS K 6251に基づき、3号試験片を用いて測定した。
[圧縮永久歪み]
JIS K 6262に準拠し、100℃で70時間の条件で圧縮率25%として測定した。
[熱老化特性]
JIS K 6257に準拠し、121℃で168時間の熱老化後、上記と同様にして引張伸びを測定し、次式より引張伸び残率を算出した。また、熱老化前後の重量を測定し次式よりその変化率を算出した。
引張伸び残率(%)
=[(熱老化後引張伸び)/(初期引張伸び)]×100
重量変化率(%)
=[{(熱老化後重量)−(熱老化前重量)}/(熱老化前重量)]×100
[成型性]
得られたケーブル接続部用保護カバーの外観を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:外観良好
○:外観概ね良好(僅かに材料のフロー痕あり)
△:外観不良
×:材料の流動性が悪く成型できず
【0042】
これらの結果を表1下欄に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、実施例1〜5はいずれも、加工性の指標であるムーニー粘度およびムーニースコーチ時間、デュロメータ硬さ、および引張伸び、圧縮永久歪み、熱老化特性、成型性において、良好な結果が得られた。
(100℃)5〜10のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体40〜80質量%、および(a-2)エチレン含量62〜67質量%、ジエン含量4.0〜5.0質量%、ムーニー粘度ML
(125℃)40〜80のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体20〜60質量%からなるポリマー成分100質量部に対して、(B)プロセスオイル30〜60質量部、(C)カーボンブラック40〜70質量部、および(D)架橋剤2〜4質量部を含有する組成物の架橋体で構成されてなるケーブル接続部用保護部材、並びにそれを備えたケーブル接続部。