特許第6040332号(P6040332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6040332
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】袋付き薬服用記録ノート
(51)【国際特許分類】
   A61J 7/00 20060101AFI20161128BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61J7/00 L
   B42D15/00 331E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-110595(P2016-110595)
(22)【出願日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516164162
【氏名又は名称】大東 栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】大東 栄子
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3085368(JP,B2)
【文献】 特開2004−141413(JP,A)
【文献】 特開2004−122446(JP,A)
【文献】 特開2004−314621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/00
B42D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左端に設けられたとじ穴をリング又は紐でとじられた多数の台紙を含み、1枚の台紙が一回の服用に対応する台紙部を備える袋付き薬服用記録ノートであって、
各台紙は、
左半分の全体の所定領域に設けられ、服用記録をつけるためのメモ欄部と、
右半分の全体の所定領域に取り付けられ、ジッパーにより開口を開閉自在に液密状にシールする透明のプラスチック製袋部と、
を有し、
前記メモ欄部は、薬の名前、使用量、使用日時、使用したときの痛みを複数段階の痛みに分けていずれかをチェックさせるためのメモ欄であり、
前記プラスチック製袋部は、開封済みの内服液の空き袋を収納する袋であることを特徴とする袋付き薬服用記録ノート。
【請求項2】
請求項1に記載の袋付き薬服用記録ノートにおいて、
前記各台紙は、
前記右半分を前記左半分から切り取り可能にする切り取り線を有することを特徴とする袋付き薬服用記録ノート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服用する薬と服用記録を管理することができる袋付き薬服用記録ノートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
がん患者に出現する強い痛みを抑えるため、デュロテップパッチ若しくはフェントステープなどの貼付タイプの鎮痛剤が使用される。これらは、患者の肌に貼り3日(若しくは1日毎)に交換する鎮痛剤である。貼付中は持続的に薬剤を放出する。しかしながら、鎮痛作用が効かずに痛みが生じる場合があり、モルヒネを水に溶かした薬剤を1包ずつ個装した内服液(商品名「オプソ」大日本住友製薬株式会社 登録商標第4516002号)及びロキソプロフェンの錠剤(商品名「ロキソニン」第一三共株式会社 登録商標第1861751号)が、レスキュー時に使用する鎮痛剤として患者には渡されている。患者は、痛くなったら一回に内服液を予め決められた数の袋ずつ、途中に適当にロキソプロフェンの錠剤を使用しながら苦痛をコントロールする。
【0003】
一方で、がん患者に出現する痛みは、全てがんが原因であるわけではない。がん自体による痛みの他に、がん治療に起因する痛みや、がんとは無関係な痛みもがん患者には出現する。モルヒネは、がんによる疼痛には効果のある鎮痛剤であるが、がんとは無関係な痛みの発生に対して使用されていないか、或いはがんの疼痛に対して量的には十分であるかを見極める必要がある。
【0004】
特許文献1によれば、痛みの程度の時間的変化、投与した薬の種類と量、服用時間などを記録できる「痛みノート」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3085368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
末期患者の疼痛マネジメント・トータルペインのコントロールをするにあたり、重要な役割は痛みの記録とレスキュー時に引用する内服液の使用の確認である。正しく決められた用法を守り飲用しているかを、患者本人、家族が日常生活で常に確認できれば、1日使用量の貼付タイプの鎮痛剤の使用量の判断材料となり得る。また、モルヒネを用いた対応によって結果が期待できる痛みなのかどうか、時系列に判定可能になる。精神的な苦痛によるうつ病対策、神経因性疼痛によるアロディニア対策につながるのでは無いかと考える。
【0007】
特許文献1の「痛みノート」によれば、薬を服用した場合の痛みの変化を、薬の量、服用時間と合わせて記録することが可能であり、痛みの予防方法を見つけたりすることが期待される。
【0008】
しかしながら、内服液のような液状の薬においては、飲んだ後の袋が廃棄されてしまうと、実際に服用したのかが分からなくなってしまう。また、患者は、痛みで我を失っている可能性もあり、きちんと飲めたのか、飲み残しは無いのかがチェックできない。
【0009】
そこで、本発明は、服用する薬の個装毎に記録ノートを対応させ、服用後も保管できる袋付きの薬服用記録ノートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、モルヒネを水に溶かした薬剤を1包ずつ個装した内服液が、実際にどのくらい服用されたか確認するため、服用後の飲み残しがあるままの状態で空の袋を取っておき、残った液体の量を把握できるようにすることが重要と考えた。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の袋付き薬服用記録ノートは、左端に設けられたとじ穴をリング又は紐でとじられた多数の台紙を含み、1枚の台紙が一回の服用に対応する台紙部を備える袋付き薬服用記録ノートであって、各台紙は、 左半分の全体の所定領域に設けられ、服用記録をつけるためのメモ欄部と、右半分の全体の所定領域に取り付けられ、ジッパーにより開口を開閉自在に液密状にシールする透明のプラスチック製袋部と、を有し、前記メモ欄部は、薬の名前、使用量、使用日時、使用したときの痛みを複数段階の痛みに分けていずれかをチェックさせるためのメモ欄であり、前記プラスチック製袋部は、開封済みの内服液の空き袋を収納する袋であることを特徴とする。また、本発明の袋付き薬服用記録ノートにおいて、前記各台紙は、前記右半分を前記左半分から切り取り可能にする切り取り線を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、服用する薬の1個装毎に保管するプラスチック製袋と薬服用記録のメモ欄が対応しているので、服用後すぐに記録することができる。または、服用直前に服用日時、痛みの状況等を記入することにより、記録を確実にすることができる。服用後は、内服液の空き袋を入っていたプラスチック製袋に戻し、ジッパーを閉じることにより袋内部が液密状にシールされ、液体が外にこぼれるのを防ぐことができ、内服液の空き袋と服用した日時を確実に対応させることができる。そして、使用したときの痛みを複数段階の痛みに分けて例示しているので、痛みの程度を客観的に把握でき、空き袋に残っている内服液の量から使用量と痛みの程度を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る袋付き薬服用記録ノートを示す図である。
図2】袋付き薬服用記録ノートの使用方法の説明図である。
図3】袋付き薬服用記録ノートの使用方法の説明図である。
図4】痛みの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る袋付き薬服用記録ノートの一実施の形態について、図1図3に基づいて説明する。
図1Aは本発明に係る袋付き薬服用記録ノート1の平面図である。薬服用記録ノート1は、多数の台紙2の左端に設けられたとじ穴6をリング3や紐(図示せず)などでとじたものである。台紙2の大きさは、B5サイズ程度である。台紙2の右半分に透明のプラスチック製袋4が貼着されている。切り取り線7は、台紙2の右半分を容易に切り取り可能にする。左半分には服用記録のメモ欄5が設けられている。一枚の台紙2は、一回の服用に対応する。
【0015】
透明なプラスチック製袋4は、上辺が開口してジッパー4aにより開閉自在となっている。ジッパー4aは、プラスチック製袋4の袋内部を液密状にシール可能とする。プラスチック製袋4は、内服液の空の袋を入れる。ただし、予め1回の服用分を入れておいても良い。
【0016】
メモ欄5には、「薬の名前」、「使用量」、「使用日時」、「使用したときの痛み」、および備考欄が設けられている。「使用したときの痛み」については、服用したときの痛みが複数段階の痛みに分けて5段階のレベルにマークできるようになっている。このように、予め痛みの段階を示しておくことにより、時系列的に見たときに痛みの程度が客観的に把握できるようになる。
【0017】
薬服用記録ノート1には、表紙を付けることができる。図1B図1Cにおいて、薬服用記録ノート1のリング3に表表紙8と裏表紙9を取り付けた状態を示した。表表紙8と裏表紙9の両方とも厚手の紙であり、切り取り線7よりも右側の位置に置いて、容易に山折りができるように折線8a、9aが設けられている。折線8a、9aよりも右側の把持片8b、9bは、薬服用記録ノート1を包みこむように機能する。表表紙8と裏表紙9に夫々、面ファスナ8c、9cを取り付けておけば、包みこむ形態を維持できるようになり、容易に携帯できるようになる。
【0018】
図2は薬服用記録ノート1の服用前の使用方法を示しており、図2Aは、プラスチック製袋4のジッパー4aを開けて、内服液使用後の空き袋10を入れている途中の状態で、図2Bはプラスチック製袋4に空き袋10を入れてジッパー4aによりシールしている状態である。空き袋10に液体の内服液が残っていても、ジッパー4aを閉じておくことにより飲み残した内服液rが外にこぼれない。また、プラスチック製袋4は透明であるので、容易に空き袋10の数を把握できる。モルヒネは肌から吸収されにくいことはよく知られているが、過敏な家族が空き袋10に付着した内服液の飲み残しに触ると影響を受けることがある。本実施例によれば、プラスチック製袋4で空き袋10は、シールされており、飲み残しに家族が触れることも予防できる。
【0019】
図3は袋付き薬服用記録ノート1の服用後の使用方法を示しており、内服液の空き袋10を確認して、空き袋10を破棄する場合には、袋付き薬服用記録ノート1の中央の切り取り線7で台紙2を切断して右半分のジッパー付プラスチック製袋4を取り除き、左半分のメモ欄5のみ残すことができる。
【0020】
図4は、1日の痛みの変化を示す一例であり、特許文献1の「痛みノート」にしたがって、末期患者の痛みと薬の使用を時系列に示したものである。痛みが発生し時刻t1、t2、t4において内服液を使用し、時刻t3においてロキソプロフェンの錠剤を使用した。痛みは、5段階で示されており、時系列的に配置することにより傷みの変化が分かる。薬服用記録ノート1は、薬を服用したときに記入されるので、4枚の台紙2に対して記入及び空き袋10の収容がなされている。したがって、薬服用記録ノート1を見れば、正しく決められた用法を守り飲用しているかを、患者本人、家族が日常生活で常に確認できる。
【0021】
飲み残しが大量に残っている状態をその後本人、または家族が確認できれば、尋常でない疼痛のあまり本人が飲んでいるつもりでも実際は飲めていなかったことを知ることができる。または、飲み残こしてしまったので疼痛が持続したと判断すれば、使用にあたってのフィードバックが可能となる。また、この状態が続くようであれば貼付タイプの鎮痛剤では足りない、もしくは、がんの疼痛とは関係無い精神的な苦痛による「うつ病」若しくは、神経因性疼痛によるアロディニアとの推測も可能である。
【0022】
そして、医師にとってみれば、痛みが発生し、レスキューとして内服液の出動回数が増えれば、貼付タイプの鎮痛剤の薬量では痛みのコントロールができないと判断することができる。コントロールができないと判断した場合には、貼付タイプの鎮痛剤の薬量を増量する。それにともない、レスキュー時の内服液の1回量も増量される。
【0023】
本実施例の薬服用記録ノート1を用いるにあたり、特許文献1に記載された「痛みノート」を併用して用いて、薬の服用時以外の時点の痛みのレベルも時系列的に記録すれば、痛みの変化を時系列的にみることができる。時系列的な記録として「痛みノート」を、個別的な記録として薬服用記録ノート1を利用すれば、両者により疼痛マネジメント・トータルペインコントロールの材料とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 薬服用記録ノート
2 台紙
3 リング
4 プラスチック製袋
5 メモ欄
6 とじ穴
7 切り取り線
【要約】
【課題】服用する薬の個装毎に台紙を対応させ、服用後も薬の空き袋を保管できる袋付きの記録ノートを提供する。
【解決手段】
袋付き薬服用記録ノート1は、左端が閉じられ夫々が一回の服用に対応して設けられた多数の台紙を有し、台紙2の右半分にはジッパーが袋の開口を開閉自在に液密状にシールする透明のプラスチック製袋4を備え、左半分に薬の名前、使用量、使用日時、使用したときの痛みを複数段階の痛みに分けていずれかをチェックさせる服用記録のメモ欄5を設けている。1包ずつプラスチック製袋4に入れておくことにより、一包につき、一枚の服用記録のメモ欄を対応させ、服用後の空き袋をもとのプラスチック製袋4に戻すことにより保管できるようにした。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4