特許第6040382号(P6040382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

<>
  • 特許6040382-実装装置 図000002
  • 特許6040382-実装装置 図000003
  • 特許6040382-実装装置 図000004
  • 特許6040382-実装装置 図000005
  • 特許6040382-実装装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040382
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-254316(P2014-254316)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-115845(P2016-115845A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2015年10月23日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−120003(JP,A)
【文献】 特開2014−187157(JP,A)
【文献】 特開2013−066833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
H01L 21/60、68
B05C 5/00
B23Q 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装ステージが取り付けられる主架台と、
前記主架台上を渡るようにY方向に伸びてその両端がそれぞれX方向に移動自在に前記主架台上に支持されるガントリーフレームと、
Y方向に移動自在に前記ガントリーフレームに支持される実装ヘッドと、
前記ガントリーフレームをX方向に駆動するX方向リニアモータと、
前記実装ヘッドをY方向に駆動するY方向リニアモータと、
前記主架台と離間して配置された副架台と、
X方向に移動自在で且つY方向の移動が拘束されるように前記副架台に取り付けられるY方向荷重受けと、
を備える実装装置であって、
前記X方向リニアモータは、前記副架台に取り付けられるX方向固定子と、前記ガントリーフレームの端部に取り付けられるX方向可動子と、を含み、
前記Y方向リニアモータは、前記ガントリーフレームに対してY方向に移動自在に取り付けられるY方向固定子と、前記実装ヘッドに取り付けられるY方向可動子と、を含み、
前記Y方向固定子の一端と前記Y方向荷重受けとを接続する接続部材を備え
前記Y方向固定子は、前記ガントリーフレームに対してY方向の自由度を持つ板ばねを介して取り付けられている実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の実装装置であって、
前記実装ヘッドと前記ガントリーフレームと前記Y方向リニアモータは複数で、前記各実装ヘッドは前記各ガントリーフレームにそれぞれ支持されて各Y方向リニアモータでY方向に駆動され、
前記各ガントリーフレームの各端部にはそれぞれX方向可動子が取り付けられ、各端部側でそれぞれ共通のX方向固定子と組み合わせられて前記各端部側でそれぞれ複数のX方向リニアモータを構成する実装装置。
【請求項3】
請求項2に記載の実装装置であって、
前記Y方向荷重受けは複数で、前記副架台の共通部材に取り付けられ、
前記接続部材は複数で、前記各接続部材は前記各Y方向固定子と前記各Y方向荷重受けとを接続する実装装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の実装装置であって、
前記主架台に対する前記各X方向可動子の各X方向位置を検出する各位置検出センサと、
前記各位置検出センサで検出した各X方向可動子の各X方向位置データをフィードバックして各X方向可動子の位置制御を行う制御部と、を備える実装装置。
【請求項5】
請求項3から4のいずれか1項に記載の実装装置であって、
前記主架台に支持されたガントリーフレームに対する前記各Y方向可動子の各Y方向位置を検出する各位置検出センサと、
前記各位置検出センサで検出した各Y方向可動子の各Y方向位置データをフィードバックして各Y方向可動子の位置制御を行う制御部と、を備える実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイの電極と基板の電極との間をワイヤで接続する実装装置では、ボンディングヘッド(BH)をXY方向(XY方向は水平面内で互いに直交する方向)に移動させるBH移動装置が用いられている。また、一部のワイヤボンディング装置では、ウェーハを吸着するボンディングステージをXY方向に移動させるステージ移動装置等が用いられている。これらの各装置においては、ボールねじ或いはボイスコイルモータ等を用いてBH或いはステージをXY方向に移動させるものが用いられることが多かった。
【0003】
一方、近年、リニアモータを用いてステージをXY方向に移動させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたステージ装置では、ワーク載置台上を前後にスライドするステージにリニアモータの可動子を取り付け、ワーク載置台とは別の副架台にリニアモータの固定子を固定して、リニアモータによってステージを移動させた際の固定子に加わる反力をワーク載置台とは別の副架台で受けるようにして、ステージ移動の際に振動がワーク載置台に伝わらないようにし、加工時のワークの振動を抑制して加工精度を向上させる方法が提案されている。
【0004】
また、基板の表面に電子部品を接合するためのペーストを塗布するペースト塗布装置において、架台の上に配置された2本のY軸移動装置と、このY軸移動装置によってY方向に移動する2つの支持部材と、各支持部材に取り付けられたX軸移動装置と、X軸移動装置に取り付けられた複数の塗布ヘッドとを含み、支持部材毎の各ヘッド間で異なる塗布パターンを描画する構成が提案されている(例えば、特許文献2の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4554559号公報
【特許文献2】特許第4400836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、複数の実装ヘッドを備え、各実装ヘッドにそれぞれ別個のXY方向移動動作を行わせ、一つの基板の様々な位置に複数種類の電子部品を同時に実装することにより、実装速度、効率の向上を図ることが求められている。この場合、特許文献1に記載された技術はX,Y方向のどちらか一方向への移動には対応可能であるが、XY方向への移動には適用できないという問題があった。また、特許文献2に記載されたようなXY駆動機構を用いると複数の実装ヘッドの移動によって発生する振動が互いに干渉して実装ステージが搭載される架台が振動し、実装精度が低下する場合があった。
【0007】
本発明は、複数の実装ヘッドをXY方向に移動させる実装装置において、実装ステージが取り付けられる主架台の振動を抑制することを目的とし、本発明の他の目的は、複数の実装ヘッドをXY方向に移動させる実装装置において、一の実装ヘッドの移動が他の実装ヘッドの位置に与える影響を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実装装置は、実装ステージが取り付けられる主架台と、主架台上を渡るようにY方向に伸びてその両端がそれぞれX方向に移動自在に主架台上に支持されるガントリーフレームと、Y方向に移動自在にガントリーフレームに支持される実装ヘッドと、ガントリーフレームをX方向に駆動するX方向リニアモータと、実装ヘッドをY方向に駆動するY方向リニアモータと、主架台と離間して配置された副架台と、X方向に移動自在で且つY方向の移動が拘束されるように副架台に取り付けられるY方向荷重受けと、を備える実装装置であって、X方向リニアモータは、副架台に取り付けられるX方向固定子と、ガントリーフレームの端部に取り付けられるX方向可動子と、を含み、Y方向リニアモータは、ガントリーフレームに対してY方向に移動自在に取り付けられるY方向固定子と、実装ヘッドに取り付けられるY方向可動子と、を含み、Y方向固定子の一端とY方向荷重受けとを接続する接続部材を備え、前記Y方向固定子は、前記ガントリーフレームに対してY方向の自由度を持つ板ばねを介して取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の実装装置において、実装ヘッドとガントリーフレームとY方向リニアモータは複数で、各実装ヘッドは各ガントリーフレームにそれぞれ支持されて各Y方向リニアモータでY方向に駆動され、各ガントリーフレームの各端部にはそれぞれX方向可動子が取り付けられ、各端部側でそれぞれ共通のX方向固定子と組み合わせられて各端部側でそれぞれ複数のX方向リニアモータを構成することとしても好適である。
【0010】
本発明の実装装置において、Y方向荷重受けは複数で、副架台の共通部材に取り付けられ、接続部材は複数で、各接続部材は各Y方向固定子と各Y方向荷重受けとを接続することとしても好適である。
【0011】
本発明の実装装置において、主架台に対する各X方向可動子の各X方向位置を検出する各位置検出センサと、各位置検出センサで検出した各X方向可動子の各X方向位置データをフィードバックして各X方向可動子の位置制御を行う制御部と、を備えることとしても好適である。
【0012】
本発明の実装装置において、主架台に支持されたガントリーフレームに対する各Y方向可動子の各Y方向位置を検出する各位置検出センサと、各位置検出センサで検出した各Y方向可動子の各Y方向位置データをフィードバックして各Y方向可動子の位置制御を行う制御部と、を備えることとしても好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数の実装ヘッドをXY方向に移動させる実装装置において、実装ステージが取り付けられる主架台の振動を抑制することができるという効果を奏する。また、本発明は、複数の実装ヘッドをXY方向に移動させる実装装置において、一の実装ヘッドの移動が他の実装ヘッドの位置に与える影響を低減することができるという他の効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における実装装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における実装装置の平面図である。
図3】本発明の実施形態における実装装置のガントリーフレームの支持部とX方向リニアモータの断面を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態における実装装置のガントリーフレームに取り付けられた実装ヘッドとY方向リニアモータの断面を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態における実装装置のガントリーフレームとY方向固定子との接続を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の実装装置について説明する。図1に示す様に、本実施形態の実装装置100は、主架台11と、主架台11の上に支持されるガントリーフレーム20と、ガントリーフレーム20に支持される実装ヘッド70と、ガントリーフレーム20をX方向に駆動するX方向リニアモータ35と、実装ヘッド70をY方向に駆動するY方向リニアモータ55と、主架台11と離間して配置された副架台80と、副架台80に取り付けられるY方向荷重受け54と、を備えており、Y方向リニアモータ55のY方向固定子50の一端とY方向荷重受け54とは接続部材53で接続されている。なお、X方向、Y方向は水平面上で互いに直交する方向であり、本実施形態では、図1に示すようにガントリーフレーム20が伸びる方向をY方向、これと直交する方向をX方向、として説明する。また、Z方向は、XY面に垂直な上下方向である。
【0017】
図1に示す様に、主架台11は四角形状の平面を有する架台であり、その上面に実装ステージ10が取り付けられている。実装ステージ10はその上に半導体ダイを実装する基板を真空吸着するものである。主架台11上面の対向する二辺の近傍には互いに並行にリニアガイド12が取り付けられている。図1図3に示すように、リニアガイド12の上にはスライダ26がX方向に移動自在に取り付けられている。そして、2つのリニアガイド12の各スライダ26の上には、それぞれガントリーフレーム20の各脚部23が取り付けられている。つまり、ガントリーフレーム20は、主架台11の上を渡るようにY方向に伸び、両端の各脚部23はスライダ26に取り付けられて主架台11に取り付けられたリニアガイド12によってX方向に移動自在に支持されている。
【0018】
また、本実施形態の実装装置100は、図1に示すように、主架台11の周囲を囲むように、主架台11と離間した副架台80を備えている。副架台80は、主架台11の四隅の外側に配置された柱81と、柱81の図1に示すY方向プラス側に配置された柱82と、各柱81,82を接続する梁84によって構成されるフレームである。図1図3に示す様に、X方向に伸びる梁84の上には、X方向リニアモータ35のX方向固定子30が取り付けられている。図3に示すように、X方向固定子30は、支持板31の上に永久磁石32が空間を空けて対向して配置されたものである。永久磁石は短冊型で、多数の永久磁石がX方向に向かって並べられている。X方向固定子30の永久磁石32の間の空間にはX方向リニアモータ35のX方向可動子40のコイル42が配置されている。コイル42はその表面と両側の永久磁石32の表面の間に極狭い隙間ができるように配置されている。コイル42は上側のベース板41に固定され、ベース板41は、ガントリーフレーム20の脚部23から伸びるアーム24の先端に取り付けられた平板25にボルト等で固定されている。従って、X方向リニアモータ35の各X方向可動子40は各ガントリーフレーム20と共にX方向に移動する。
【0019】
図1に示すように、1つ(共通)のX方向固定子30には、2つのX方向可動子40が取り付けられている。共通のX方向固定子30の各X方向可動子40が組み合わされる部分は、それぞれX方向リニアモータ35を形成する。従って、図1には、合計4つのX方向リニアモータ35が搭載されている。
【0020】
また、図3に示すように、主架台11のX方向可動子40側の側面には、X方向に向かって直線状に伸びるリニアエンコーダ90の固定部92が取り付けられており、X方向可動子40から主架台11の側に向かって伸びるL字形のラグ91の先端にはリニアエンコーダ90の移動部93が取り付けられている。
【0021】
図1図4に示すように、ガントリーフレーム20には実装ヘッド70が支持されている。図4に示すように、実装ヘッド70には先端に実装ツール73が取り付けられたシャフト72をZ方向に上下動させるZ方向移動機構が格納されている。Z方向移動機構は実装ツール73を上下動させて、実装ステージ10に吸着固定された基板上に半導体ダイを押圧させる。ガントリーフレーム20の内部には空間が設けられており、内面の両側にはY方向に伸びるリニアガイド27が2本取り付けられている。各リニアガイド27にはそれぞれスライダ75が取り付けられ、2つのスライダ75には実装ヘッド70のつり下げ部材74が取り付けられている。
【0022】
図1図2に示すように、Y方向リニアモータ55のY方向固定子50は、Y方向固定子50はY方向に自由度を持たせる接続構造体58を介してガントリーフレーム20の各脚部23の間にY方向に移動自在となるように取り付けられている。接続構造体58は、Y方向固定子50がY方向可動子60から受ける反力を解放するためのY方向の自由度を確保するためのものであり、例えば、リニアガイド、並行リンク等であってよい。図4に示すように、Y方向固定子50は、各脚部23にその両端が接続構造体58を介して取り付けられる溝形のフレーム51の内面に空間を空けて永久磁石52が対向して配置されたものである。X方向固定子30と同様、永久磁石は短冊型で、多数の永久磁石がY方向に向かって並べられている。Y方向固定子50の永久磁石52の間の空間には、実装ヘッド70からY方向固定子50に向かって伸びるフレーム61の中に取り付けられたコイル62が配置されている。コイル62はその表面と両側の永久磁石52の表面の間に極狭い隙間ができるように配置されている。従って、Y方向可動子60は、実装ヘッド70と一緒にY方向に移動する。図1図2に示すように、本実施形態の実装装置100は、2つのガントリーフレーム20にそれぞれ実装ヘッド70とY方向リニアモータ55が取り付けられているので、合計2つのY方向モータが搭載されている。
【0023】
また、図4に示すように、ガントリーフレーム20のケーシング21の外面には、Y方向に向かって直線状に伸びるリニアエンコーダ94の固定部96が取り付けられており、Y方向可動子60からケーシング21に向かって伸びるラグ95の先端にはリニアエンコーダ94の移動部97が取り付けられている。
【0024】
図1図2に示す様に、副架台80は、Y方向プラス側に配置された柱82の間をX方向に接続する梁85が取り付けられている。梁85の高さは、ガントリーフレーム20に取りつけられたY方向固定子50の高さと略同様である。梁85のY方向マイナス側の面には2つのリニアガイド86が取り付けられている。各リニアガイド86にはそれぞれY方向荷重受け54がX方向にスライド可能に取り付けられている。各Y方向荷重受け54と各Y方向固定子50とは接続部材53で接続されている。各リニアガイド86は、各Y方向荷重受け54のY方向プラス側及びY方向マイナス側の移動を拘束するので、各Y方向荷重受け54は、各Y方向固定子50からのY方向プラス向きの荷重及びY方向マイナス側の荷重を受けて共通の梁85に伝達する。
【0025】
以上のように構成された実装装置100の動作について、半導体ダイを実装ステージ10の上に吸着固定されている基板の上に実装する動作を例として説明する。実装装置100の動作は、図示しない制御部(制御部は内部にCPUと記憶部とを含むコンピュータである)によって制御される。
【0026】
制御部は、実装ツール73の先端に半導体ダイを吸着したら、X方向リニアモータ35、Y方向リニアモータ55を駆動して実装ヘッド70の実装ツール73の位置を基板の実装位置に向かって移動させる。X方向に実装ヘッド70を移動させる場合には、リニアエンコーダ90によって検出したX方向可動子40の位置をフィードバックしてX方向可動子40のX方向位置を制御部の指令位置に移動させるように、コイル42への通電を制御する。この制御によりX方向可動子40と共にガントリーフレーム20もX方向に移動する。一方、X方向固定子30にはガントリーフレーム20のX方向の移動方向と逆方向に反力が加わる。X方向固定子30は副架台80に固定されているので、この反力は、主架台11には伝達されない。また、図4に示すリニアエンコーダ94で検出したY方向可動子60のY方向位置をフィードバックしてY方向可動子60のY方向位置を制御部の指令位置に移動させるように、コイル62への通電を制御する。この制御によりY方向可動子60と共に実装ヘッド70もY方向に移動する。一方、Y方向固定子50には実装ヘッド70のY方向の移動方向と逆方向に反力が加わる。先に説明したように、Y方向固定子50は、接続構造体58を介してガントリーフレーム20に対してY方向に移動自在となるように取り付けられているので、Y方向固定子50に加わる反力はY方向固定子50から接続部材53及びY方向荷重受け54を介して副架台80の梁85に伝達される。つまり、Y方向移動子60と共に実装ヘッド70がY方向に移動する際にY方向固定子50に加わるY方向反力は全て副架台80に伝達され、主架台11には伝達されない。このように、本実施形態の実装装置100は、制御部の指令によって実装ヘッド70をXY方向に移動させても、そのXY方向の反力は主架台11に加わらず、主架台11と離間して配置されている副架台80に加わるので実装ステージ10の取り付けられている主架台11が振動することを抑制することができる。
【0027】
本実施形態の実装装置100では、X方向固定子30の上に2つのX方向可動子40が組み合されている。つまり、1つの共通のX方向固定子30に対して2つのX方向可動子40が組み合されている。先に述べたように、X方向可動子40が移動してもその反力は主架台11には伝達されない。ところが、一方のX方向可動子40が移動するとその反力は副架台80のフレームに加わり副架台80を微小に変形させる。この微小変形によって副架台80に取り付けられているX方向固定子30も僅かに変位するので、一方のX方向可動子40の移動が他方のX方向可動子40の位置に対する影響が出るようにも考えられる。
【0028】
しかし、X方向可動子40の位置決めは、X,Y方向リニアモータ35,55が駆動した際に振動(変位)の影響を受けない主架台11に取り付けられているリニアエンコーダ90によって検出した位置信号に基づくフィードバックにより制御している、つまり、X方向可動子40は主架台11に対する位置制御が行われているので、副架台80の変位によってX方向固定子30の位置が変位しても位置検出、制御には全く影響が無い。また、通常、X方向リニアモータ35を駆動する際には推力変動(コギング)が発生するが、X方向可動子40の位置制御は、このような推力変動(コギング)が発生しても所定の精度を確保できるような制御である。X方向固定子30の僅かな変位によってX方向可動子40の推力が僅かに変化するが、その推力の変化量は、上記のような通常の推力変動の1/0〜1/10と非常に小さくX方向可動子40の位置制御に影響を与えるような推力変動ではない。このため、本実施形態の実装装置100では、共通のX方向固定子30に2つのX方向可動子40を組み合わせても、各X方向可動子40の位置をそれぞれ高精度に位置決めすることができる。
【0029】
また、本実施形態の実装装置100では、2つのY方向固定子50のY方向反力を共通の副架台80の梁85で受けていることから、一方のY方向可動子60が移動するとその反力は副架台80の梁85に加わり梁85をY方向に変形させる。この微小変形によって梁85に取り付けられている他のY方向固定子50の位置も僅かに変位するので、一方のY方向可動子60の移動が他方のY方向可動子60の位置精度に対する影響が出るようにも考えられる。
【0030】
しかし、先に述べたX方向可動子40の位置決めと同様、Y方向位置は、X,Y方向リニアモータ35,55が駆動した際に振動の影響を受けない主架台11に支持されているガントリーフレーム20に取り付けたリニアエンコーダ94によって検出した位置信号に基づくフィードバックにより制御されている、つまり、Y方向可動子60は間接的に主架台11に対する位置制御が行われているので、副架台80の変位によってY方向固定子50の位置が変位しても位置検出、制御には全く影響が無い。また、先に説明したと同様、推力の変化は通常駆動の際の推力変動に対して1/5〜1/10と非常に小さく位置制御に影響を与えるものではない。このため、本実施形態の実装装置100では、一方のY方向可動子60の移動により副架台80の梁85を介して他方のY方向固定子50の位置が微小に変位しても位置検出、制御には全く影響が無く、共通の梁85でY方向の反力を受けても各Y方向可動子60の位置をそれぞれ高精度に位置決めすることができる。
【0031】
以上述べたように、本実施形態の実装装置100は、共通のX方向固定子30に2つのX方向可動子40を組み合わせてX方向リニアモータ35とし、Y方向固定子50の反力を共通の梁85で受けるという簡便な構成で、複数の実装ヘッドをXY方向に移動させる実装装置において一の実装ヘッド70の移動が他の実装ヘッド70の位置に与える影響を低減することができるものである。
【0032】
以上述べた実施形態では、Y方向固定子50は、接続構造体58を介してY方向に移動自在にガントリーフレーム20に取り付けられることとして説明したが、例えば、図5に示すように、板ばね59をY方向が板厚方向となるように取り付けて、この板ばね59を介してガントリーフレーム20に取り付けるようにしてもよい。この構成とした場合、板ばね59のY方向の剛性が非常に低くなるので、実装ヘッド70がY方向に移動した際にY方向固定子50に加わる反力はほとんどガントリーフレーム20に伝達されない。つまり、Y方向固定子50はガントリーフレーム20に対して実質的にY方向に移動自在に取り付けられることとなる。このため、Y方向固定子50に加わるほとんどの反力はY方向固定子50から接続部材53及びY方向荷重受け54を介して副架台80の梁85に伝達され、主架台11にはほとんど伝達されない。従って、本実施形態も先に説明した実施形態と同様、実装ヘッド70をXY方向に移動させても、そのXY方向の反力は主架台11に加わらず、主架台11と離間して配置されている副架台80に加わるので実装ステージ10の取り付けられている主架台11が振動することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 実装ステージ、11 主架台、12,27,86 リニアガイド、20 ガントリーフレーム、21 ケーシング、23 脚部、24 アーム、25 平板、26 スライダ、30 X方向固定子、31 支持板、32,52 永久磁石、35 X方向リニアモータ、40 X方向可動子、41 ベース板、42,62 コイル、50 Y方向固定子、51,61 フレーム、53 接続部材、54 Y方向荷重受け、55 Y方向リニアモータ、58 接続構造体、59 板ばね、60 Y方向可動子、70 実装ヘッド、72 シャフト、73 実装ツール、74 つり下げ部材、75 スライダ、80 副架台、81,82 柱、84,85 梁、90,94 リニアエンコーダ、91,95 ラグ、92,96 固定部、93,97 移動部、100 実装装置。
図1
図2
図3
図4
図5