特許第6040394号(P6040394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040394
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】高周波切替器、及びバイアス電圧出力器
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   H03K17/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-516422(P2013-516422)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2012063222
(87)【国際公開番号】WO2012161228
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-115293(P2011-115293)
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504293528
【氏名又は名称】イマジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牧田 實
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−142217(JP,A)
【文献】 特開昭63−173417(JP,A)
【文献】 実開昭61−189602(JP,U)
【文献】 特開平11−031993(JP,A)
【文献】 特開昭63−286001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00
H01P 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から高周波が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された高周波が外部へ出力される複数の出力端子と、
前記出力端子毎に設けられ、対応する出力端子へ前記入力端子から入力された高周波を伝送する複数の分岐伝送ラインと、
前記分岐伝送ライン毎に設けられ、対応する分岐伝送ラインに高周波が流れるオン状態と高周波が流れないオフ状態とを切り替える複数の切替手段とを備え、
前記各切替手段が制御されて、高周波が出力される出力端子が切り替わる高周波切替器であって、
前記各切替手段は、前記分岐伝送ラインにおいてカソードが前記入力端子側となってアノードが前記出力端子側になるように設けられた伝送側ダイオードと、カソードが接地されてアノードが前記分岐伝送ラインにおける前記伝送側ダイオードと前記出力端子との間に電気的に接続された接地側ダイオードとを備え、
前記各分岐伝送ラインでは、前記伝送側ダイオードより出力端子側に、前記接地側ダイオードのアノードの接続箇所を挟むように、第1コンデンサー及び第2コンデンサーが設けられ
さらに、前記入力端子を接地させる入力側接地ラインを備え、該入力側接地ラインは、電気長が互いに異なる複数の分岐接地ラインに分岐し、各分岐接地ラインがそれぞれ接地されているとともに、各分岐接地ラインは、取り除き可能に構成されていることを特徴とする高周波切替器。
【請求項2】
請求項1において、
前記接地側ダイオードは、当該高周波切替器を流れる高周波の波長をλとし、0以上の整数をnとした場合に、前記伝送側ダイオードから略(2n+1)×λ/4離れた位置で、カソードが接地されている
ことを特徴とする高周波切替器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記伝送側ダイオードにバイアス電圧を印加するための伝送側バイアスラインと、
前記接地側ダイオードにバイアス電圧を印加するための接地側バイアスラインとを備え、
前記伝送側バイアスライン及び前記接地側バイアスラインは、前記分岐伝送ラインに比べて通電面積が小さい
ことを特徴とする高周波切替器。
【請求項4】
請求項3において、
前記伝送側バイアスライン及び前記接地側バイアスラインは、当該高周波切替器を流れる高周波の波長をλとし、0以上の整数をnとした場合に、前記分岐伝送ラインから略(2n+1)×λ/4離れた位置で接地されている
ことを特徴とする高周波切替器。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つにおいて、
前記接地側ダイオードは、前記各分岐伝送ラインに対して複数設けられ、該接地側ダイオードのカソードが接続される接地導体と前記分岐伝送ラインとの間に直列に接続されている
ことを特徴とする高周波切替器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つの高周波切替器の各伝送側ダイオード及び各接地側ダイオードに対して、バイアス電圧を出力するバイアス電圧出力器において、
電源に接続され、前記伝送側ダイオード及び前記接地側ダイオードのうち、順バイアスを印加するダイオードに対しては、前記電源から印加された電圧を降圧してバイアス電圧として出力し、逆バイアスを印加するダイオードに対しては、前記電源から印加された電圧を昇圧してバイアス電圧として出力することを特徴とするバイアス電圧出力器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の出力端子の中から高周波が出力される出力端子を切り替える高周波切替器、及びその高周波切替器のダイオードにバイアス電圧を出力するバイアス電圧出力器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の出力端子の中から高周波が出力される出力端子を切り替える高周波切替器が知られている。このような高周波切替器は、例えば、燃焼室でマイクロ波エネルギーを利用する多気筒エンジンに適用できる。高周波切替器を用いることで、1つの電磁波発振器から複数の燃焼室にマイクロ波を順番に供給することができる。
【0003】
例えば特開昭51−77719号公報の図8には、4気筒の間でマイクロ波の供給先を切り替える分配器(高周波切替器)が記載されている。分配器は、ロータを回転させてスイッチの切り替えを行う。また、例えば特開平7−74672号公報には、ダイオードを利用して、送信回路と受信回路との間でアンテナの接続先を切り替える高周波スイッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−77719号公報
【特許文献2】特開平7−74672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の高周波切替器では、機械式の切替手段により、高周波が出力される出力端子の切り替えが行われる。しかし、機械式では、高速の切り替えが難しく、スイッチの接触箇所で電気的なロスが生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の出力端子の中から高周波が出力される出力端子を切り替える高周波切替器において、高周波が出力される出力端子の切り替えを高速且つ低ロスで行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、外部から高周波が入力される入力端子と、前記入力端子に入力された高周波が外部へ出力される複数の出力端子と、前記出力端子毎に設けられ、対応する出力端子へ前記入力端子から入力された高周波を伝送する複数の分岐伝送ラインと、前記分岐伝送ライン毎に設けられ、対応する分岐伝送ラインに高周波が流れるオン状態と高周波が流れないオフ状態とを切り替える複数の切替手段とを備え、前記各切替手段が制御されて、高周波が出力される出力端子が切り替わる高周波切替器であって、前記各切替手段は、前記分岐伝送ラインにおいてカソードが前記入力端子側となってアノードが前記出力端子側になるように設けられた伝送側ダイオードと、カソードが接地されてアノードが前記分岐伝送ラインにおける前記伝送側ダイオードと前記出力端子との間に電気的に接続された接地側ダイオードとを備え、前記各分岐伝送ラインでは、前記伝送側ダイオードより出力端子側に、前記接地側ダイオードのアノードの接続箇所を挟むように、第1コンデンサー及び第2コンデンサーが設けられ、
さらに、前記入力端子を接地させる入力側接地ラインを備え、該入力側接地ラインは、電気長が互いに異なる複数の分岐接地ラインに分岐し、各分岐接地ラインがそれぞれ接地されているとともに、各分岐接地ラインは、取り除き可能に構成されている。
【0008】
第1の発明では、各切替手段が制御されると、複数の出力端子の中から、高周波が出力される出力端子が切り替わる。各切替手段は、伝送側ダイオードと接地側ダイオードとを備えている。伝送側ダイオードは、分岐伝送ラインにおいて、カソードが入力端子側となってアノードが出力端子側になるように設けられている。一方、接地側ダイオードは、カソードが接地されて、アノードが分岐伝送ラインにおける伝送側ダイオードと出力端子との間に接続されている。高周波切替器では、高周波を出力させる出力端子に接続する分岐伝送ライン(以下、「出力側伝送ライン」という。)に対しては、伝送側ダイオードに順バイアスが印加され、接地側ダイオードに逆バイアスが印加される。一方、高周波を出力させない出力端子に接続する分岐伝送ライン(以下、「非出力側伝送ライン」という。)に対しては、伝送側ダイオードに逆バイアスが印加され、接地側ダイオードに順バイアスが印加される。各分岐伝送ラインでは、接地側ダイオードのアノードの接続箇所を挟むように、2つのコンデンサーが接続されている。従って、伝送側ダイオードと接地側ダイオードとに極性の異なる電圧を印加することが可能である。
【0009】
ここで、接地側ダイオードがない場合は、非出力側伝送ラインの伝送側ダイオードに逆バイアスを印加しても、その伝送側ダイオードの寄生容量を通って、高周波が幾らか通過してしまう。その結果、高周波を出力させないはずの非出力側伝送ラインの出力端子から、高周波が幾らか出力されてしまう。それに対して、第1の発明では、非出力側伝送ラインにおいて接地側ダイオードに順バイアスを印加して、非出力側伝送ラインにおける前記寄生容量から出力端子側が接地される。従って、前記寄生容量から出力端子側のインピーダンスが増大し、非出力側伝送ラインの出力端子から出力される高周波が低減される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記接地側ダイオードが、当該高周波切替器を流れる高周波の波長をλとし、0以上の整数をnとした場合に、前記伝送側ダイオードから略(2n+1)×λ/4離れた位置で、カソードが接地されている。
【0011】
第2の発明では、接地側ダイオードのカソードが、伝送側ダイオードから略(2n+1)×λ/4離れた位置で接地されている。そのため、接地側ダイオードを導通させたときに、非出力側伝送ラインにおける前記寄生容量から出力端子側のインピーダンスが無限大になる。非出力側伝送ラインは、入力端子に接続されていないことと等価となり、出力側伝送ラインに影響を与えなくなる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記伝送側ダイオードにバイアス電圧を印加するための伝送側バイアスラインと、前記接地側ダイオードにバイアス電圧を印加するための接地側バイアスラインとを備え、前記伝送側バイアスライン及び前記接地側バイアスラインは、前記分岐伝送ラインに比べて通電面積(電気が流れる方向に直交する導体の断面積)が小さい。
【0013】
第3の発明では、伝送側バイアスライン及び接地側バイアスラインは、分岐伝送ラインに比べて通電面積が小さい。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記伝送側バイアスライン及び前記接地側バイアスラインは、当該高周波切替器を流れる高周波の波長をλとし、0以上の整数をnとした場合に、前記分岐伝送ラインから略(2n+1)×λ/4離れた位置で接地されている。
【0015】
第4の発明では、各バイアスラインが、分岐伝送ラインから略(2n+1)×λ/4離れた位置で接地されている。
【0016】
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、前記接地側ダイオードが、前記各分岐伝送ラインに対して複数設けられ、該接地側ダイオードのカソードが接続される接地導体と前記分岐伝送ラインとの間に直列に接続されている。
【0017】
第5の発明では、分岐伝送ラインと接地導体との間に、複数の接地側ダイオードが直列に接続されている。ここで、インピーダンスの不整合による高周波の反射により、分岐伝送ラインにおける接地側ダイオードの接続箇所の高周波電位が上昇するおそれがある。電力が比較的大きな高周波が伝送される場合は、高周波の反射により接地側ダイオードに大きな逆電圧が作用し、接地側ダイオードが損傷するおそれがある。それに対して、第5の発明では、複数の接地側ダイオードを直列に接続しているので、接地側ダイオードの逆耐電圧が上昇する。
【0018】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、前記入力端子を接地させる入力側接地ラインを備え、前記入力側接地ラインは、電気長が互いに異なる複数の分岐接地ラインに分岐し、各分岐接地ラインがそれぞれ接地されている。
【0019】
第6の発明では、入力側接地ラインに、電気長が互いに異なる複数の分岐接地ラインが設けられている。そのため、高周波切替器の完成後に、例えば、最短経路の分岐接地ラインを取り除くことで、入力側接地ラインの電気長を調節することが可能である。
【0020】
第7の発明は、第1乃至第6の何れか1つの発明の高周波切替器の各伝送側ダイオード及び各接地側ダイオードに対して、バイアス電圧を出力するバイアス出力器において、電源に接続され、前記伝送側ダイオード及び前記接地側ダイオードのうち、順バイアスを印加するダイオードに対しては、前記電源から印加された電圧を降圧してバイアス電圧として出力し、逆バイアスを印加するダイオードに対しては、前記電源から印加された電圧を昇圧してバイアス電圧として出力する。
【0021】
第7の発明では、順バイアスを印加するダイオードに対しては、電源から印加された電圧を降圧したバイアス電圧を出力し、逆バイアスを印加するダイオードに対しては、電源から印加された電圧を昇圧したバイアス電圧を出力する。ここで、例えば、前記プラズマ燃焼エンジンを搭載した自動車にて高周波切替器を使用する場合は、その自動車のバッテリー(例えば、12V)からバイアス電圧を生成することが考えられる。その場合、順バイアスの場合は、自動車のバッテリーよりもバイアス電圧を低くし、逆バイアスの場合は、自動車のバッテリーよりもバイアス電圧を高くすると、一般的なダイオードを好適に制御できる。第7の発明では、そのような技術的思想に基づき、電源から印加された電圧を降下又は上昇させてバイアス電圧として出力している。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、非出力側伝送ラインにおいて接地側ダイオードを導通させて、非出力側伝送ラインにおける前記寄生容量から出力端子側のインピーダンスを増大させるので、非出力側伝送ラインの出力端子から出力される高周波が低減される。従って、高周波が出力される出力端子の切り替えを高速で行うためにダイオードを使用しても、出力側伝送ラインの出力端子に多くの高周波エネルギーを伝送できる。本発明によれば、高速且つ低ロスで、高周波が出力される出力端子の切り替えを行うことができる。
【0023】
また、第2の発明では、伝送側ダイオードから接地点までの距離を最適化して、非出力側伝送ラインが出力側伝送ラインに影響を与えないようにしている。そのため、入力端子から見たインピーダンスは出力側伝送ラインのインピーダンスだけになるので、インピーダンス整合が取りやすくなる。従って、高周波を出力させる出力端子にさらに多くの高周波エネルギーを供給でき、高周波が出力される出力端子の切り替えをさらに低ロスで行うことができる。
【0024】
また、第3の発明では、伝送側バイアスライン及び接地側バイアスラインの通電面積を分岐伝送ラインに比べて小さくして、入力端子から見た各バイアスラインの高周波インピーダンスが高い状態になるようにしている。従って、各バイアスラインが分岐伝送ラインにおける高周波の伝送に与える影響が小さくなり、高周波が出力される出力端子の切り替えをさらに低ロスで行うことができる。
【0025】
また、第4の発明では、各バイアスラインを分岐伝送ラインから略(2n+1)×λ/4離れた位置で接地して、入力端子から見た各バイアスラインの高周波インピーダンスが高い状態になるようにしている。従って、各バイアスラインが分岐伝送ラインにおける高周波の伝送に与える影響が小さくなり、高周波が出力される出力端子の切り替えをさらに低ロスで行うことができる。
【0026】
また、第5の発明では、複数の接地側ダイオードを直列に接続して、接地側ダイオードの逆耐電圧を上昇させている。従って、インピーダンスの不整合による高周波の反射によって、接地側ダイオードが損傷することを抑制することができる。
【0027】
また、第6の発明では、電気長が互いに異なる複数の分岐接地ラインを入力側接地ラインに設けて、高周波切替器の完成後に入力側接地ラインの電気長を調節できるようにしている。そのため、高周波切替器の組み立て及び使用部品のバラツキにより生じる回路インピーダンスのバラツキに対して、高周波切替器個々にインピーダンスを調節することができる。従って、例えば電磁波発振器やアンテナなどの他の機器と接続した高周波切替器の使用状態において、インピーダンス整合を最良の状態にすることができる。
【0028】
また、第7の発明では、バイアスの印加方向に応じて、電源から印加された電圧を降下又は上昇させたバイアス電圧を出力しているので、各ダイオードを好適に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施形態に係る内燃機関の概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係るプラズマ生成装置のブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る高周波切替器の概略構成図である。
図4図4は、実施形態に係る高周波切替器を設けた回路基板の上面図である。
図5図5は、実施形態に係る入力側接地ラインの電気長の調節を説明するための回路図である。
図6図6は、実施形態に係る高周波切替器を2系統にした場合の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
【0031】
本実施形態1は、本発明に係る高周波切替器33を有する電磁波放射装置13を備えた多気筒エンジン10である。電磁波放射装置13は、各シリンダ24の燃焼室20にマイクロ波を放射してマイクロ波プラズマを生成するプラズマ生成装置30の一部を構成する。エンジン10は、エンジン本体11とプラズマ生成装置30とを備えている。
−エンジン本体−
【0032】
エンジン本体11は、図1に示すように、シリンダブロック21とシリンダヘッド22とピストン23とを備えている。シリンダブロック21には、円形断面のシリンダ24が複数形成されている。各シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている(図示省略)。クランクシャフトは、シリンダブロック21に回転自在に支持されている。
【0033】
シリンダヘッド22は、ガスケット18を挟んで、シリンダブロック21上に載置されている。シリンダヘッド22は、シリンダ24及びピストン23と共に、燃焼室20を区画している。シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、点火プラグ15が1つずつ設けられている。また、シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。吸気ポート25には、吸気バルブ27及びインジェクター29が設けられている。一方、排気ポート26には、排気バルブ28が設けられている。
−プラズマ生成装置−
【0034】
プラズマ生成装置30は、図2に示すように、放電装置12と電磁波放射装置13とを備えている。プラズマ生成装置30は、放電装置12により生成された放電プラズマに、電磁波放射装置13が放射するマイクロ波のエネルギーを供給することにより、放電プラズマを拡大させたマイクロ波プラズマを生成する。
【0035】
放電装置12は、燃焼室20毎に設けられている。放電装置12は、高電圧パルスを出力するパルス生成器14と、該パルス生成器14からの高電圧パルスが印加されると放電が生じる放電器15とを備えている。
【0036】
パルス生成器14は、例えば自動車用の点火コイルである。パルス生成器14は、直流電源91(例えば自動車用のバッテリー)に接続されている(図示省略)。パルス生成器14は、電子制御装置35から点火信号を受けると、直流電源から印加された電圧を昇圧し、昇圧後の高電圧パルスを放電器15に出力する。
【0037】
放電器15は、例えば自動車用の点火プラグである。点火プラグ15には、後述の混合器34を介して高電圧パルスが供給される。点火プラグ15では、高電圧パルスが供給されると、中心電極16と接地電極17の間の放電ギャップにおいて、絶縁破壊が生じて放電プラズマ(スパーク放電)が生成される。
【0038】
電磁波放射装置13は、電磁波用電源31と電磁波発振器32と高周波切替器33と混合器34と放射アンテナ16とを備えている。本実施形態では、点火プラグ15の中心電極16が放射アンテナ16を兼ねている。電磁波放射装置13では、電磁波用電源31と電磁波発振器32と高周波切替器33が1つずつ設けられ、燃焼室20毎に混合器34と放射アンテナ16が設けられている。
【0039】
電磁波用電源31は、直流電源91に接続されている。電磁波用電源31は、電子制御装置35から電磁波駆動信号を受けると、電磁波発振器32にパルス電流を供給する。電磁波駆動信号はパルス信号(例えば、TTL信号)である。電磁波用電源31は、電磁波駆動信号の立ち上がり時点から立ち下がり時点に亘って、所定のデューティー比でパルス電流を繰り返し出力する。パルス電流は、電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘って繰り返し出力される。
【0040】
電磁波発振器32は、例えばマグネトロンである。電磁波発振器32は、パルス電流を受けるとマイクロ波パルスを出力する。電磁波発振器32は、電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘ってマイクロ波パルスを繰り返し出力する。なお、電磁波発振器32として、マグネトロンの代わりに、半導体発振器等の他の発振器を使用してもよい。
【0041】
高周波切替器33は、複数の放射アンテナ16の間で、電磁波発振器32から出力されたマイクロ波を供給するアンテナを切り替える。高周波切替器33は、電子制御装置35により制御される。高周波切替器33についての詳細は後述する。
【0042】
混合器34は、パルス生成器14からの高電圧パルスと電磁波発振器32からのマイクロ波とを別々の入力端子で受けて、同じ出力端子から点火プラグ15へ高電圧パルスとマイクロ波とを出力する。混合器34は、高電圧パルスとマイクロ波とを混合可能に構成されている。混合器34では、第1入力端子がパルス生成器14に電気的に接続され、第2入力端子が高周波切替器33に電気的に接続され、出力端子が放射アンテナ16に電気的に接続されている。
−高周波切替器の構成−
【0043】
高周波切替器33は、図3及び図4に示すように、入力端子41、複数の出力端子42、及び複数の分岐伝送ライン45を備えている。入力端子41は、電磁波発振器32の出力側に電気的に接続され、電磁波発振器32から出力されたマイクロ波が入力される。各出力端子42は、混合器34の入力側に電気的に接続される。各出力端子42からは、入力端子41に入力されたマイクロ波が混合器34へ出力される。分岐伝送ライン45は、出力端子42に対応して設けられている。複数の分岐伝送ライン45は、入力側が互いに接続され、出力側が対応する出力端子42に接続されている。なお、入力端子41は、入力側接地ライン43を介して、接地されている。
【0044】
各分岐伝送ライン45には、マイクロ波が流れるオン状態とマイクロ波が流れないオフ状態とを切り替える切替部(切替手段)46がそれぞれ設けられている。各切替手段46は、伝送側ダイオード63と接地側ダイオード65とを備えている。伝送側ダイオード63と接地側ダイオード65は、共にPINダイオードであるが、他の種類のダイオードを使用してもよい。また、各分岐伝送ライン45には、入力端子41側から順番に、第1コンデンサー51と第2コンデンサー52がそれぞれ設けられている。
【0045】
各伝送側ダイオード63は、対応する分岐伝送ライン45において、カソードが入力端子41側となってアノードが出力端子42側になるように設けられている。各伝送側ダイオード63は、第1コンデンサー51よりも入力端子41側に設けられている。高周波切替器33には、各伝送側ダイオード63に対応して伝送側バイアスライン64が設けられている。各伝送側バイアスライン64は、伝送側ダイオード63にバイアス電圧を印加するための電気線路である。各伝送側バイアスライン64は、一端が第1信号入力部81に接続され、他端が分岐伝送ライン45における伝送側ダイオード63と第1コンデンサー51の間の第1ストリップライン71に接続されている。
【0046】
接地側ダイオード65は、カソードが接地されて、アノードが分岐伝送ライン45における伝送側ダイオード63と出力端子42との間に電気的に接続されている。接地側ダイオード65のアノードは、第1コンデンサー51と第2コンデンサー52との間の第2ストリップライン72に接続されている。高周波切替器33には、各接地側ダイオード65に対応して接地側バイアスライン66が設けられている。各接地側バイアスライン66は、接地側ダイオード65にバイアス電圧を印加するための電気線路である。各接地側バイアスライン66は、一端が第2信号入力部82に接続され、他端が第2ストリップライン72に接続されている。
【0047】
なお、第1信号入力部81及び第2信号入力部82は、分岐伝送ライン45毎に設けられている。第1信号入力部81及び第2信号入力部82は、後述するバイアス電圧出力器90から出力されたバイアス電圧を受ける。
【0048】
各伝送側バイアスライン64には、インダクター67がそれぞれ設けられている。各伝送側バイアスライン64では、インダクター67の両端がそれぞれコンデンサー68,69を介して接地されている。
【0049】
各接地側バイアスライン66には、インダクター77がそれぞれ設けられている。各接地側バイアスライン66では、インダクター77の両端がそれぞれコンデンサー78,79を介して接地されている。
【0050】
図4に、2層プリント基板上に構成された高周波切替器33の上面(表面)を示す。プリント基板85の裏面は、接地パターンになっている。
【0051】
プリント基板85では、中央部に入力端子41が配置され、その入力端子41から4つの分岐伝送ライン45が等角度間隔で放射状に延びている。分岐伝送ライン45では、入力端子41側から順番に、伝送側ダイオード63、第1コンデンサー51、及び第2コンデンサー52が配置されている。伝送側ダイオード63と第1コンデンサー51との間には第1ストリップライン71が形成され、第1コンデンサー51と第2コンデンサー52との間には第2ストリップライン72が形成され、第2コンデンサー52と出力端子42の間には第3ストリップライン73が形成されている。
【0052】
各伝送側ダイオード63は、カソードが入力端子41の周りのランド86(銅箔の領域)に接続され、アノードが第1ストリップライン71の内端に接続されている。前記ランド86は、入力側接地ライン43を介して、接地パターン100(接地導体)に接続されている。入力側接地ライン43は、伝送側ダイオード63のカソードを直流的に接地している。入力側接地ライン43のライン幅は、第1〜第3ストリップライン71,72,73に比べて大幅に狭くなっている。入力側接地ライン43の通電面積は、第1〜第3ストリップライン71,72,73に比べて大幅に小さくなっている。
【0053】
伝送側ダイオード63、第1コンデンサー51及び第2コンデンサー52は、何れも電極幅が各ストリップライン71,72,73の幅に等しい。これにより、伝送側ダイオード63、第1コンデンサー51、及び第2コンデンサー52におけるストリップライン71,72,73との接続点において、物理的な寸法差により生ずるインピーダンス不整合が小さくなる。また、プリント基板85は、ストリップライン71,72,73の特性インピーダンスがマイクロ波と整合する様に、基板絶縁材料の厚み、及び材質が選択されている。
【0054】
各分岐伝送ライン45の第2ストリップライン72と接地パターン100との間には、2つの接地側ダイオード65が直列に接続されている。第2ストリップライン72には、一方の接地側ダイオード65のアノードが接続され、接地パターンには、他方の接地側ダイオード65のカソードが接続されている。
【0055】
各分岐伝送ライン45の第1ストリップライン71には、伝送側バイアスライン64が接続されている。伝送側バイアスライン64には、インダクター67が設けられている。伝送側バイアスライン64は、インダクター67の両端がコンデンサー68,69を介してそれぞれ接地されている。なお、これらのコンデンサー68,69を省略して伝送側バイアスライン64を直接接地してもよい。また、図4では、インダクター67と第1信号入力部81とを接続する電気線路を一部省略している。
【0056】
また、第2ストリップライン72には、接地側バイアスライン66が接続されている。接地側バイアスライン66には、インダクター77が設けられている。接地側バイアスライン66では、インダクター77の両端がコンデンサー78,79を介してそれぞれ接地されている。なお、これらのコンデンサー78,79を省略して接地側バイアスライン66を直接接地してもよい。また、図4では、インダクター77と第2信号入力部82とを接続する電気線路を一部省略している。
【0057】
ここで、各バイアスライン64,66のライン幅は、分岐伝送ライン45のストリップライン71,72,73に比べて大幅に狭くなっている。各バイアスライン64,66の通電面積は、ストリップライン71,72,73に比べて大幅に小さくなっている。また、各バイアスライン64,66は、分岐伝送ライン45から高周波切替器33を流れるマイクロ波の波長λの略4分の1離れた位置で、コンデンサー68,69,78,79を介して接地されている。そのため、入力端子41から見た場合に、各バイアスライン64,66の高周波インピーダンスは非常に高い状態になる。そのため、各バイアスライン64,66は、対応する分岐伝送ライン45における高周波の伝送に殆ど影響を与えない。
【0058】
また、出力端子42から出力されたマイクロ波の一部は、放射アンテナ16で反射され、分岐伝送ライン45における高周波電位が上昇するおそれがある。つまり、放射アンテナ16とのインピーダンスの不整合による反射波により、分岐伝送ライン45では過電圧が生じるおそれがある。接地側ダイオード65には、高い逆電圧が作用する。本実施形態では、接地側ダイオード65が反射波による逆電圧によって破損しないように、接地側ダイオード65に、逆耐電圧が高いものが採用されている。
【0059】
また、図5に示すように、入力側接地ライン43は、複数に分岐接地ライン48に分岐して、各分岐接地ライン48が接地パターン100に接続されている。図5では、電磁波発振器32までの電気長が最も短い最も右側の分岐接地ライン48により、有効長L1が決まっている。有効長を長くする場合は、最も右側の分岐接地ライン48を取り除く。そうすると、電気長が次に短い右から2番目の分岐接地ライン48により有効長が決まり、有効長がL2になる。高周波切替器33は、基板完成品の状態で容易に電気長の調整が可能である。そのため、高周波切替器33の組み立て及び使用部品のバラツキにより生じる回路インピーダンスのバラツキに対して、高周波切替器33個々にインピーダンスを調節できる。従って、電磁波発振器32及び放射アンテナ16と接続した高周波切替器33の使用状態において、インピーダンス整合を最良の状態にすることができる。
−高周波切替器の動作−
【0060】
高周波切替器33の動作(切替動作)について説明する。高周波切替器33は、各分岐伝送ライン45の切替部46が制御されて、高周波が出力される出力端子42が切り替わる切替動作を行う。各切替部46は、図2に示すバイアス電圧出力器90を介して、電子制御装置35によって制御される。
【0061】
ここで、バイアス電圧出力器90は、入力側が電子制御装置35に接続され、出力側が高周波切替器33の各分岐伝送ライン45に対応する第1信号入力部81及び第2信号入力部82に接続されている。また、バイアス電圧出力器90は、直流電源91(例えば、自動車用の12Vのバッテリー)から電力の供給を受ける。
【0062】
バイアス電圧出力器90は、電子制御装置35から切替信号を受けると、高周波切替器33の各伝送側ダイオード63及び各接地側ダイオード65に対して、バイアス電圧を出力する。バイアス電圧出力器90は、伝送側ダイオード63及び接地側ダイオード65のうち、順バイアスを印加するダイオードに対しては、直流電源91から印加された電圧を降圧したプラスのバイアス電圧(例えば、+5Vのバイアス電圧)を出力し、逆バイアスを印加するダイオードに対しては、直流電源91から印加された電圧を昇圧したマイナスのバイアス電圧(例えば、−100Vのバイアス電圧)を出力する。
【0063】
バイアス電圧出力器90は、高周波を出力させる出力端子42に対応する分岐伝送ライン45a(出力側伝送ライン)に対しては、その伝送側バイアスライン64の第1信号入力部81にプラスのバイアス電圧を出力すると同時に、その接地側バイアスライン66の第2信号入力部82にマイナスのバイアス電圧を出力する。また、バイアス電圧出力器90は、高周波を出力させない出力端子42に対応する分岐伝送ライン45b(非出力側伝送ライン)に対しては、その伝送側バイアスライン64の第1信号入力部81にマイナスのバイアス電圧を出力すると同時に、その接地側バイアスライン66の第2信号入力部82にプラスのバイアス電圧を出力する。
【0064】
そうすると、出力側伝送ライン45aでは、順バイアスが印加された伝送側ダイオード63が導通し、逆バイアスが印加された接地側ダイオード65が遮断される。一方、非出力側伝送ライン45bでは、逆バイアスが印加された伝送側ダイオード63が遮断され、順バイアスが印加された接地側ダイオード65が導通する。その結果、入力端子41から見て、出力側伝送ライン45aが導通し、非出力側伝送ライン45bが遮断された状態になる。入力端子41に入力されたマイクロ波は、出力側伝送ライン45aを介して出力端子42から出力される。
【0065】
図6は、出力端子42が2つの場合の高周波切替器33の切替動作時の等価回路を示している。図6では、電磁波発振器32に対して、上側の出力側伝送ライン45aが導通し、下側の非出力側伝送ライン45bが遮断されている。非出力側伝送ライン45bのコンデンサーCは、伝送側ダイオード63に逆バイアスが印加されたときのジャンクションの寄生容量である。
【0066】
ここで、接地側ダイオード65を設けない場合は、通常マイクロ波の領域では、前記寄生容量を通じて幾分かの高周波が出力端子42側の漏れる可能性がある。そうすると、高周波を出力させないはずの非出力側伝送ライン45bの出力端子42から、高周波が幾らか出力されてしまう。
【0067】
本実施形態では、非出力側伝送ライン45bにおいて、接地側ダイオード65に順バイアスを印加して、非出力側伝送ライン45における前記寄生容量から出力端子42側が接地される。特に、高周波切替器33を流れるマイクロ波の波長をλとした場合に、前記寄生容量からλ/4だけ離れた位置で接地される。従って、非出力側伝送ライン45bでは、前記寄生容量から出力端子42側のインピーダンスZ2が略無限大となる。非出力側伝送ライン45bは、電磁波発振器32に接続されていないことと等価となり、出力側伝送ライン45aに影響を与えることはない。これにより、電磁波発振器32から見たインピーダンスは、出力側伝送ライン45aのインピーダンスZ1だけになる。従って、インピーダンスの整合を取ることができ、ほぼ全てのエネルギーが出力側伝送ライン45aに伝送される。
【0068】
切替動作では、1つの出力端子42から高周波が出力されるように、高周波が出力される出力端子42の切り替えが行われる。1つの分岐伝送ライン45が出力側伝送ライン45aとなって、それ以外の分岐伝送ライン45が非出力側伝送ライン45bになる。
【0069】
電子制御装置35は、高周波が出力される出力端子42を切り替える際に切替信号を出力する。切替信号を受けたバイアス電圧出力器90は、点火信号が入力されるパルス生成器14に対応する点火プラグ15だけにマイクロ波が供給されるように、高周波切替器33の各切替部46にバイアス電圧を出力する。具体的に、バイアス電圧出力器90は、高電圧パルスが印加される点火プラグ15に対応する出力端子42に接続する分岐伝送ライン45が出力側伝送ライン45aになって、高電圧パルスが印加されない点火プラグ15に対応する出力端子42に接続する分岐伝送ライン45が非出力側伝送ライン45bになるようにバイアス電圧を出力する。
−プラズマ生成装置の動作−
【0070】
エンジン本体11の動作を絡めてプラズマ生成装置30の動作を説明する。
【0071】
エンジン10は、プラズマ生成装置30によって生成したマイクロ波プラズマにより、燃焼室20の混合気に着火するプラズマ着火運転を行う。複数の燃焼室20の間では点火タイミングがずれている。
【0072】
各シリンダ24では、ピストン23が上死点を達する直前に、吸気バルブ27が開かれて、吸気行程が開始される。そして、ピストン23が上死点を通過した直後に、排気バルブ28が閉じられて、排気行程が終了する。電子制御装置35は、吸気行程中のシリンダ24に対応するインジェクター29に対して噴射信号を出力し、そのインジェクター29に燃料を噴射させる。
【0073】
続いて、ピストン23が下死点を通過した直後に、吸気バルブ27が閉じられて、吸気行程が終了する。吸気行程が終了すると、圧縮行程が開始される。電子制御装置35は、圧縮行程中のシリンダ24に対応するパルス生成器14に対して、ピストン23が上死点に達する直前に点火信号を出力する。これにより、パルス生成器14から出力された高電圧パルスが、点火プラグ15へ供給される。その結果、点火プラグ15の放電ギャップにおいて放電プラズマが生成される。
【0074】
また、電子制御装置35は、各シリンダ24に対応するパルス生成器14から高電圧パルスが出力される直前に、電磁波用電源31に電磁波駆動信号を出力する。なお、電磁波駆動信号の出力に先立って、点火信号が入力されるパルス生成器14に対応する点火プラグ15がマイクロ波の供給先になるように、高周波切替器33の切替動作が行われている。
【0075】
これにより、電磁波用電源31から電磁波発振器32へパルス電流が出力され、電磁波発振器32からマイクロ波パルスが出力される。マイクロ波パルスは、放射アンテナ16から燃焼室20へ放射される。マイクロ波パルスは、放電プラズマが生成される直前から直後に亘って継続的に放射される。放電プラズマが生じるタイミングでは、マイクロ波パルスにより強電界領域(燃焼室20において電界強度が相対的に強い領域)が、中心電極16の先端の近傍に形成されている。放電プラズマはマイクロ波のエネルギーを吸収して拡大し、比較的大きなマイクロ波プラズマになる。燃焼室20では、マイクロ波プラズマにより混合気が体積着火され、混合気の燃焼が開始される。
なお、放射アンテナ16からのマイクロ波パルスの放射開始タイミングは、放電プラズマが消滅する前であれば、放電プラズマの生成後であってもよい。
【0076】
シリンダ24では、混合気が燃焼するときの膨張力により、ピストン23が下死点側へ動かされる。そして、ピストン23が下死点に達する直前に、排気バルブ28が開かれて、排気行程が開始される。上述したように、排気行程は、吸気行程の開始直後に終了する。
−実施形態の効果−
【0077】
本実施形態では、非出力側伝送ライン45bにおいて接地側ダイオード65を導通させて、非出力側伝送ライン45bにおける前記寄生容量から出力端子42側のインピーダンスを増大させるので、非出力側伝送ライン45bの出力端子42から出力される高周波が低減される。従って、高周波が出力される出力端子42の切り替えを高速で行うためにダイオードを使用しても、出力側伝送ライン45aの出力端子45に多くの高周波エネルギーを伝送できる。
【0078】
また、本実施形態では、伝送側ダイオード63から接地点までの距離を最適化して、非出力側伝送ライン45bが出力側伝送ライン45aに影響を与えないようにしている。入力端子41から見たインピーダンスは、出力側伝送ライン45aのインピーダンスだけになる。インピーダンス整合は取りやすくなる。従って、高周波を出力させる出力端子42にさらに多くの高周波エネルギーを供給でき、高周波が出力される出力端子42の切り替えをさらに低ロスで行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、伝送側バイアスライン64及び接地側バイアスライン66の通電面積を分岐伝送ライン45に比べて小さくして、入力端子41から見た各バイアスライン64,66の高周波インピーダンスが高い状態になるようにしている。従って、各バイアスライン64,66が分岐伝送ライン45における高周波の伝送に与える影響が小さくなり、高周波が出力される出力端子42の切り替えをさらに低ロスで行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、各バイアスライン64,66を分岐伝送ライン45から略n×λ/4離れた位置で接地して、入力端子41から見た各バイアスライン64,66の高周波インピーダンスが高い状態になるようにしている。従って、各バイアスライン64,66が分岐伝送ライン45における高周波の伝送に与える影響が小さくなり、高周波が出力される出力端子42の切り替えをさらに低ロスで行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、複数の接地側ダイオード65を直列に接続して、接地側ダイオード65の逆耐電圧を上昇させている。従って、インピーダンスの不整合による高周波の反射によって、接地側ダイオード65が損傷することを抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、電気長が互いに異なる複数の分岐接地ライン48を入力側接地ライン43に設けて、高周波切替器33の完成後に入力側接地ライン43の電気長を調節できるようにしている。そのため、高周波切替器33の組み立て及び使用部品のバラツキにより生じる回路インピーダンスのバラツキに対して、高周波切替器33個々にインピーダンスを調節することができる。従って、電磁波発振器32及び放射アンテナ16と接続した高周波切替器33の使用状態において、インピーダンス整合を最良の状態にすることができる。
【0083】
また、本実施形態では、バイアスの印加方向に応じて、直流電源91から印加された電圧を降下又は上昇させたバイアス電圧を出力しているので、各ダイオード63,65を好適に制御することができる。
《その他の実施形態》
【0084】
前記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0085】
前記実施形態において、プラズマ生成装置30は、放電装置12を省略して、電磁波放射装置13だけでマイクロ波プラズマを生成してもよい。この場合、マイクロ波プラズマを生成するのに必要なピーク電力は増大するが、装置構成を簡素化できる。また、放電装置12の代わりに、熱電子を放出するグロープラグを使用してもよい。この場合、マイクロ波のエネルギーにより熱電子が加速されて、マイクロ波プラズマが生成される。
【0086】
また、前記実施形態では、高電圧パルスが供給される中心電極16を放射アンテナ16としていたが、中心電極16とは別途に放射アンテナ16を設けてもよい。放射アンテナ16は、例えば点火プラグ15を貫通するように設けたり、シリンダヘッド22に設けたりすることができる。
【0087】
また、前記実施形態において、1つの燃焼室20に対して複数の放射アンテナ16を設けてもよい。燃焼室20では、複数の放射アンテナ16からタイミングをずらしてマイクロ波が放射される。複数の放射アンテナ16の近傍では、異なるタイミングでマイクロ波プラズマが生成される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、複数の出力端子の中から高周波が出力される出力端子を切り替える高周波切替器、及びその高周波切替器のダイオードにバイアス電圧を出力するバイアス電圧出力器について有用である。
【符号の説明】
【0089】
33 高周波切替器
41 入力端子
42 出力端子
45 分岐伝送ライン
46 切替部(切替手段)
51 第1コンデンサー
52 第2コンデンサー
63 伝送側ダイオード
65 接地側ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6