(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1、第2及び第3開口部が、一の方向に沿って、第1、第3、第2の順に間隔をおいて形成された基板に対し、前記各開口部に機能性材料を着弾させて塗布する塗布装置であって、
前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を吐出して塗布する第1吐出部、前記第2開口部に第2機能性材料を吐出して塗布する第2吐出部、前記第3開口部に第3機能性材料を吐出して塗布する第3吐出部を有し、
前記第3吐出部は前記第3機能性材料を吐出する際、前記第2開口部内に第2機能性材料、前記第3開口部内に第3機能性材料がそれぞれ塗布されている場合に、前記第3の開口部の中心よりも、前記第2開口部と前記第3開口部のうち先に機能性材料が塗布された開口部に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させる
塗布装置。
第1、第2及び第3開口部が、一の方向に沿って、第1、第3、第2の順に間隔をおいて形成された基板に対し、前記各開口部に機能性材料を着弾させて塗布する塗布装置であって、
前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を吐出して塗布する第1吐出部、前記第2開口部に第2機能性材料を吐出して塗布する第2吐出部、前記第3開口部に第3機能性材料を吐出して塗布する第3吐出部を有し、
前記第2吐出部が前記第2開口部に対して吐出した機能性材料の液滴量が、前記第1吐出部が前記第1開口部に対して吐出した第1機能性材料の液滴量よりも少ない場合、前記第3開口部内の中心よりも前記第2開口部側に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させる
塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発明の態様>
本発明の一態様に係る塗布装置は、第1、第2及び第3開口部が、一の方向に沿って、第1、第3、第2の順に間隔をおいて形成された基板に対し、前記各開口部に機能性材料を着弾させて塗布する塗布装置であって、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を吐出して塗布する第1吐出部、前記第2開口部に第2機能性材料を吐出して塗布する第2吐出部、前記第3開口部に第3機能性材料を吐出して塗布する第3吐出部を有し、前記第3吐出部は前記第3機能性材料を吐出する際、前記第2開口部内の第2機能性材料が前記第1開口部内の第1機能性材料より少ない場合、前記第3開口部内の中心よりも前記第2開口部側に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させるものとする。
【0013】
尚、ここで言う「開口部」とは、前記基板の表面に厚みを薄くして形成された凹部、或いは基板上に別部材を配して形成された凹部を指し、基板の貫通孔を含まないものとする。
ここで、本発明の別の態様として、前記第1、第2及び第3吐出部の各々は、それぞれ対応する前記第1、第2及び第3開口部のいずれかの内部に前記機能性材料を吐出するノズルと、前記ノズルからの液滴の吐出を制御する吐出制御部とを有し、さらに前記基板と前記第1、第2及び第3吐出部との各相対位置を制御する位置制御部とを備えることができる。
【0014】
また、本発明の別の態様として、前記基板の前記第1、第3及び第2開口部の間には、それぞれ隔壁が形成され、前記第1吐出部と前記第2吐出部は、前記第1開口部及び前記第3開口部間における第1隔壁上と、前記第3開口部及び前記第2開口部間における第2隔壁上に、前記第1機能性材料と前記第2機能性材料が前記一の方向に沿ってそれぞれ所定の幅で乗り上げるように塗布し、且つ、前記第2隔壁上への前記第2機能性材料の乗り上げ幅が、前記第1隔壁上への前記第1機能性材料への乗り上げ幅よりも小さくなるように、前記第1機能性材料と前記第2機能性材料とをそれぞれ吐出することができる。
【0015】
また、本発明の別の態様として、前記第3吐出部は、前記第3開口部の中心よりも前記第2開口部に近接する位置にずらして前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部に着弾させることができる。
また、本発明の別の態様として、前記第3吐出部は、一の前記第3開口部内の複数の位置に前記第3機能性材料を滴下し、前記一の第3開口部内において、前記第2開口部に近接する位置に着弾させる1滴当たりの液滴量を、これ以外の位置に着弾させる1滴当たりの液滴量よりも多くすることができる。
【0016】
また、本発明の別の態様として、前記複数の位置には前記一の方向に沿った2以上の位置を含むことができる。
また、本発明の一態様における機能膜の塗布装置は、第1、第2及び第3開口部が、一の方向に沿って、第1、第3、第2の順に間隔をおいて形成された基板に対し、前記各開口部に機能性材料を着弾させて塗布する塗布装置であって、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を吐出して塗布する第1吐出部、前記第2開口部に第2機能性材料を吐出して塗布する第2吐出部、前記第3開口部に第3機能性材料を吐出して塗布する第3吐出部を有し、前記第3吐出部は前記第3機能性材料を吐出する際、前記第2開口部内に第2機能性材料、前記第3開口部内に第3機能性材料がそれぞれ塗布されている場合に、前記第3の開口部の中心よりも、前記第2開口部と前記第3開口部のうち先に機能性材料が塗布された開口部に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させるものとする。
【0017】
また、本発明の一態様における有機ELパネルの製造方法では、基板の上方に、第1電極を複数にわたり形成する第1工程と、前記各第1電極の上方において、第1、第2及び第3開口部を一の方向に沿って存在させるように、前記第1、第3、第2の順に間隔をおいて隔壁を形成する第2工程と、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を塗布する工程、前記第2開口部に第2機能性材料を塗布する工程、前記第3開口部に第3機能性材料を塗布する工程を、いずれかの順次で行って機能層を形成する第3工程と、前記各機能層の上方に、第2電極を形成する第4工程とを有し、前記第3機能性材料を塗布する工程を実行する際、前記第2開口部内の第2機能性材料が前記第1開口部内の第1機能性材料より少ない場合、前記第3開口部内の中心よりも前記第2開口部側に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を第3開口部内に着弾させるものとする。
【0018】
ここで本発明の別の態様として、前記第3機能性材料を塗布する工程を実行する際、
前記第1開口部及び前記第3開口部間における第1隔壁上と、前記第3開口部及び前記第2開口部間における第2隔壁上に、それぞれ塗布された前記第1機能性材料と前記第2発光材料が前記一の方向に所定の幅で乗り上げており、前記第2隔壁上への前記第2機能性材料の乗り上げ幅を、前記第1隔壁上への前記第1機能性材料への乗り上げ幅よりも小さくすることもできる。
【0019】
また本発明の別の態様として、前記第3機能性材料を塗布する工程では、前記一の方向に沿って、前記第3開口部の中心よりも前記第2開口部に近接する位置にずらして前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部に着弾させることもできる。
また本発明の別の態様として、前記第3機能性材料を塗布する工程では、前記第3開口部内の複数の位置に前記第3機能性材料を滴下し、前記第3開口部内において、前記第2開口部に近接する位置に着弾させる1滴当たりの液滴量を、これ以外の位置に着弾させる1滴当たりの液滴量よりも多くすることもできる。
【0020】
また本発明の別の態様として、前記複数の位置には前記一の方向に沿った2以上の位置を含むこともできる。
また本発明の別の態様として、前記第1、第2及び第3開口部は、一対の長辺と、一対の短辺とで囲まれた開口形状を有し、前記基板上において、前記一対の短辺の延伸方向を前記第1方向として存在しているものとすることもできる。
【0021】
ここで本発明の別の態様として、前記第1、第2、第3機能性材料は互いに同色の材料を含み、前記塗布する工程では、前記第1、第2及び第3開口部内における前記第1、第2、第3機能性材料の体積を互いに異ならせることもできる。
或いは本発明の別の態様として、前記第1、第2、第3の機能性材料は互いに異色の材料を含むこともできる。
【0022】
ここで本発明の一態様である塗布装置は、第1、第2及び第3開口部が、一の方向に沿って、第1、第3、第2の順に間隔をおいて形成された基板に対し、前記各開口部に機能性材料を着弾させて塗布する塗布装置であって、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を吐出して塗布する第1吐出部、前記第2開口部に第2機能性材料を吐出して塗布する第2吐出部、前記第3開口部に第3機能性材料を吐出して塗布する第3吐出部を有し、前記第2吐出部が前記第2開口部に対して吐出した機能性材料の液滴量が、前記第1吐出部が前記第1開口部に対して吐出した第1機能性材料の液滴量よりも少ない場合、前記第3開口部内の中心よりも前記第2開口部側に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させるものとする。
【0023】
また、本発明の一態様である有機ELパネルの製造方法は、基板の上方に、第1電極を複数にわたり形成する第1工程と、前記各第1電極の上方において、第1、第2及び第3開口部を一の方向に沿って存在させるように、前記第1、第3、第2の順に間隔をおいて隔壁を形成する第2工程と、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1機能性材料を塗布する工程、前記第2開口部に第2機能性材料を塗布する工程、前記第3開口部に第3機能性材料を塗布する工程を、いずれかの順次で行って機能性層を形成する第3工程と、前記各機能性層の上方に、第2電極を形成する第4工程と、を有し、前記第3機能性材料を塗布する工程を実行する際、前記第2開口部内に第2機能性材料、前記第3開口部内に第3機能性材料がそれぞれ塗布されている場合に、前記第3の開口部の中心よりも、前記第2開口部と前記第3開口部のうち先に機能性材料が塗布された開口部に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させるものとする。
【0024】
また、本発明の一態様である薄膜トランジスタの製造方法は、基板の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート電極と対向するようにゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上方において、第1、第2及び第3開口部を一の方向に沿って存在させるように、第1、第3、第2の順に間隔をおいて隔壁を形成する工程と、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1半導体材料を塗布する工程、前記第2開口部に第2半導体材料を塗布する工程、前記第3開口部に第3半導体材料を塗布する工程をいずれかの順次で行って、前記ソース電極と前記ドレイン電極と電気的に接続する半導体層を形成する半導体形成工程とを有し、前記第3半導体材料を塗布する工程では、前記第2開口部内の第2半導体材料が前記第1開口部内の第1半導体材料より少ない場合、前記第3開口部内の中心よりも前記第2開口部側に前記第3半導体材料の液滴の重心をずらして、前記第3半導体材料の液滴を第3開口部内に着弾させるものとする。
【0025】
また、本発明の一態様である薄膜トランジスタの製造方法は、基板の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート電極と対向するようにゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上方において、第1、第2及び第3開口部を一の方向に沿って存在させるように、第1、第3、第2の順に間隔をおいて隔壁を形成する工程と、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1半導体材料を塗布する工程、前記第2開口部に第2半導体材料を塗布する工程、前記第3開口部に第3半導体材料を塗布する工程をいずれかの順次で行って、前記ソース電極と前記ドレイン電極と電気的に接続する半導体層を形成する半導体形成工程とを有し、前記第3半導体材料を塗布する工程では、前記第2開口部に前記第2半導体材料、前記第3開口部内に前記第3半導体材料がそれぞれ塗布されている場合に、前記第3の開口部の中心よりも、前記第2開口部と前記第3開口部のうち先に半導体材料が塗布された開口部に前記第3半導体材料の液滴の重心をずらして、前記第3の半導体材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させるものとする。
【0026】
また、本発明の一態様である薄膜トランジスタの製造方法は、基板の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート電極と対向するようにゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上方において、第1、第2及び第3開口部を一の方向に沿って存在させるように、第1、第3、第2の順に間隔をおいて隔壁を形成する工程と、前記一の方向に沿って、前記第1開口部に第1半導体材料を塗布する工程、前記第2開口部に第2半導体材料を塗布する工程、前記第3開口部に第3半導体材料を塗布する工程をいずれかの順次で行って、前記ソース電極と前記ドレイン電極と電気的に接続する半導体層を形成する半導体形成工程とを有し、前記第3半導体材料を塗布する工程では、前記第2吐出部が前記第2開口部に対して吐出した機能性材料の液滴量が、前記第1吐出部が前記第1開口部に対して吐出した第1機能性材料の液滴量よりも少ない場合、前記第3開口部内の中心よりも前記第2開口部側に前記第3機能性材料の液滴の重心をずらして、前記第3機能性材料の液滴を前記第3開口部内に着弾させるものとする。
<実施の形態1>
(有機EL装置1)
図1は、実施の形態1に係る有機EL装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0027】
有機EL装置1は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御部11とを備えてなる。
有機EL表示パネル10は、複数の有機EL素子が、互いに交差する(ここでは直交する)X方向及びY方向にマトリクス状に配設されている。
駆動制御部11は、一例として4つの駆動回路12〜15と制御回路16とで構成されている。駆動回路の数はこれ以外でも良い。
【0028】
有機EL装置1の利用形態としては、例えば
図2に示すようにオーディオ装置と組み合わせたテレビジョンシステムの一部とすることができる。有機EL装置1は液晶ディスプレイ(LCD)のようにバックライトを必要としないので薄型化に適しており、システムデザイン設計という観点から優れた特性を発揮する。
(有機EL表示パネル10)
図3(a)は有機EL表示パネル10の1画素を示す部分断面図である。また
図3(b)は、有機EL表示パネル10の1画素を示す部分的な正面図である。
【0029】
有機EL表示パネル10では、赤(R)色、青(B)色、緑(G)色の各発光色の有機EL素子100R、100G、100Bがバンク105で区画された各領域にX方向に沿って配置されている。有機EL表示パネル10では、各素子100R、100G、100Bがサブピクセルを構成する。
図3(b)に示すように、隣接する3つの有機EL素子100R、100G、100Bを1組として1画素(ピクセル)を構成する。尚、X方向に沿って、1画素毎にバスバー領域100Xが設けられている。
【0030】
図3(a)に示すように、有機EL表示パネル10は、TFT基板110(以下、単に「基板110」と記載する。)と、その上面に同順に積層された陽極102と、電極被覆層103と、ホール注入層104とを有する。ホール注入層104の上には、さらに同順に積層された有機発光層106R(第1有機発光層)、106G(第2有機発光層)、106B(第3の有機発光層)のいずれかと、電子輸送層107と、陰極108と、封止層109とを有する。
【0031】
陽極102、電極被覆層103、有機発光層106R、106G、106Bは、有機EL素子100R、100G、100B毎に個別に形成される。ホール注入層104、電子輸送層107、陰極108、封止層109は基板110の基板の平面全体にわたり一様に形成される。有機EL素子100R、100G、100Bは、一例としてトップエミッション型としている。
【0032】
バスバー領域100Xには補助電極102A及び電極被覆層103Aが同順に積層されている。
次に、有機発光層106R、106G、106Bを形成するためのウェットプロセスに用いる塗布装置1000を説明する。
(塗布装置1000)
図4は、塗布装置1000の機能ブロック図である。塗布装置1000は、作業テーブル20と、インク吐出部30(第1インク吐出部30R、第2インク吐出部30G、第3インク吐出部30B)と、液滴観察装置40と、制御装置(PC)25とを備える。
[制御装置25]
制御装置25は、CPU250、記憶手段251(HDD等の大容量記憶手段を含む)、表示手段(ディスプレイ)253、入力手段252で構成される。制御装置25は具体的にはパーソナルコンピュータ(PC)である。
【0033】
記憶手段251には、制御装置25に接続された作業テーブル20、インク吐出部30を駆動するための制御プログラム等が格納されている。塗布装置1000の駆動時には、CPU250が入力手段252を通じてオペレータにより入力された指示と、前記記憶手段251に格納された各制御プログラムに基づいて所定の制御を行うようになっている。
さらに記憶手段251には、各色インクを用いた場合における、バンク頂部への乗り上げ幅に関するデータ(X
R、X
L)に基づいて、ノズル標準位置P
0からノズル移動量A分だけずれたノズル移動位置P
Aを算出する制御プログラム(以下、「ノズル位置制御プログラム」と称する。)が格納されている。また記憶手段251には、塗布対象基板の情報(開口部の大きさ、位置、深さ、数等)が格納されている。
[作業テーブル20]
図5に、制御装置25を除く塗布装置1000の構成を示す。
【0034】
図5に示す作業テーブル20はいわゆるガントリー式であり、基台20と、基台20上面の四隅に立設されたスタンド201A、201B、202A、202Bと、基台20の中央に塗布対象基板を載置するためのステージSTとを備える。
スタンド201A、201B(202A、202B)には、基台200の長手(Y)方向に沿って、ガイドシャフト203A(203B)が平行に軸支される。ガイドシャフト203A(203B)にはリニアモータ部204(205)が挿通される。リニアモータ部204、205上には、ステージSTを跨ぐようにガントリー部210が掛け渡されて搭載される。
【0035】
リニアモータ部204、205はケーブルN
1を介し、
図4に示すモータ制御部213と接続される。モータ制御部213はリニアモータ部204、205とサーボモータ221を駆動制御する。リニアモータ部204、205が同方向に等速で駆動されると、ガントリー部210がガイドシャフト203A、203Bの長手(X)方向に沿ってスライド自在に往復運動する。
【0036】
ガントリー部210には、L字型の台座からなる移動体(キャリッジ)220が配設される。移動体220にはサーボモータ部(移動体モータ)221が配設され、サーボモータ部221の軸の先端に不図示のギヤが配されている。ギヤはガントリー部210の長手方向(Y方向)に沿って形成されたガイド溝211に嵌合される。ガイド溝211の内部にはそれぞれ長手方向に沿って微細なラックが形成されている。ギヤはラックと噛合しているので、サーボモータ部221が駆動すると、移動体220はいわゆるピニオンラック機構によって、Y方向に沿って往復自在に精密に移動する。
【0037】
図4に示すように、モータ制御部213は制御装置25内のCPU250に接続される。塗布装置1000の駆動時には、CPU250が記憶手段251に格納された駆動制御プログラムに基づき、モータ制御部213を介してリニアモータ部204、205を駆動制御する。これによってインク吐出部30のヘッド部301R、301G、301Bと塗布対象基板との相対位置制御がなされる。
[インク吐出部30]
インク吐出部30(第1インク吐出部30R、第2インク吐出部30G、第3インク吐出部30B)は、塗布装置1000において、RGB色毎に対応するように同様の構成を以て配されている。
【0038】
第1インク吐出部30R、第2インク吐出部30G、第3インク吐出部30Bは、ヘッド部301R、301G、301Bと、これに接続された吐出制御部300R、300G、300Bとを備える。
以下、第1インク吐出部30Rの構成を例に説明する。
ヘッド部301Rは
図6の断面図に示すように、圧電素子3010Rと、液室3020Rと、ノズル3030Rと、振動板3040Rとを有する。
【0039】
圧電素子3010Rはピエゾ素子であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛等からなる板状の圧電体3013を一対の電極3011、3012で挟設した積層体である。圧電素子3010Rは振動板3040Rの上に積層されて配される。
液室3020Rは、ノズル3030Rから吐出する直前のインクを貯留する空間である。液室3020R内のインクは、
図5に示すようにヘッド部301Rに接続された輸液チューブL1によって外部から供給される。
【0040】
ノズル3030Rは極細ノズルであって、液室3020Rとともに筐体3050Rを放電加工して形成される。ノズル3030Rは上流側において液室3020Rと連通するように形成される。
振動板3040Rは、ステンレスやニッケルからなる薄板であり、液室3020Rの上部に配される。圧電素子3010Rの変形とともに変形することで、液室3020Rの体積が可逆的に減少又は復元可能に調節される。
【0041】
ヘッド部301Rは、上記した3010R〜3040Rの構成要素からなるインク吐出機構部304Rを複数備えている。インク吐出機構部304Rは、ヘッド部301Rの長手方向に沿って一定間隔毎に複数(例えば数千個)にわたり単列をなして形成される。
吐出制御部300Rは、各圧電素子3010Rを個別に駆動するための駆動回路を備える。装置1000の駆動時には各圧電素子3010Rに対し、例えば数百Hzの周波数の波形電圧を印加することで圧電素子3010Rを変形させる。この変形に伴って振動板3040Rが振動し、液室3020Rの体積が減少または復元される。液室3020Rの体積減少時にノズル3030Rからインクが吐出(滴下)する。電圧波形としては、例えば矩形パルス電圧を含む波形を利用できる。吐出制御部300Rから各圧電素子3010Rへの電圧印加のタイミングは、CPU250が記憶手段251に格納された所定の制御プログラムに基づいて指示することで調整される。オペレータが予め入力手段252で入力し、記憶手段251に格納されている塗布対象基板上の開口部の位置情報と、ヘッド部301Rの走査速度とをCPU250が特定し、所定のタイミングでパルス電圧を各圧電素子3010Rに印加することで、目的の位置にノズル3030Rからインク液滴を吐出させて着弾させることができる。
【0042】
尚、
図5の構成例では、3つの吐出制御部300R、300G、300Bは一つの筐体に収納されて移動体220に固定される。ヘッド部301R、301G、301Bは一例として一体的に構成され、本体部302から垂下される。
また、作業テーブル20のステージSTに対するヘッド部301Rの角度を調節することで、塗布対象基板に対するノズル3030Rの相対的なピッチを調整できる。
【0043】
さらに、ヘッド部301Rのノズル3030Rの配列は上記した1列に限定されない。例えばノズル3030Rを複数列にわたって形成したり、複数列で且つ千鳥状にノズル3030Rを形成して、ノズル3030R同士のピッチを狭く調節することもできる。
一般に、一定の電圧を印加したときに各ノズル3030Rから滴下されるインク液滴は均一である。通常、インクの液滴量はインク液滴のサイズに比例する。
[液滴観察装置40]
液滴観察装置40は、機能的には液滴観察カメラ402と、カメラ制御部400とを備える。
【0044】
具体的には
図5に示すように、液滴観察カメラ402は公知のCCDカメラであって、対物レンズ403を下方に向けて配される。液滴観察カメラ402の後端からはケーブル404が延出され、カメラ制御部400と接続される。カメラ制御部400はCPU250に接続されている。液滴観察カメラ402は固定台401に固定しているが、固定方法はこれに限定されず、基台200に液滴観察カメラ402を直接固定するようにしてもよい。液滴観察カメラ402はケーブル404でカメラ制御部400と接続され、当該カメラ制御部400は
図4のようにCPU250に接続されている。
【0045】
塗布装置1000において、液滴観察カメラ402は
図5に示すように、塗布対象基板に塗布されたインク液滴の様子を撮像できる位置に向けられている。
これにより撮像時には、液滴観察カメラ402に内蔵されている発光ライトのストロボ発光と同期して、連続的に静止画及び動画の画像データが得られる。制御装置25のCPU250は所定の制御プログラムに基づき、撮像した画像データを記憶手段251に格納するとともに、ディスプレイ153に表示する。さらにCPU250は、オペレータの選択に従い、画像データに示された液滴の面積を基づき、バンク頂部に乗り上げた液滴の幅を算出する。
(有機EL表示パネル10の全体的な製造方法)
実施の形態1に係る表示パネル10の製造方法の一例について
図7、
図8を用いて説明する。当然ながら、この製造方法は一例に過ぎず、ウェットプロセスを用いた有機発光層形成工程以外は、その他の公知の方法でも有機EL表示パネル10を製造できる。
【0046】
先ず、基板本体を準備し(
図7のS1)、その表面にTFT(薄膜トランジスタ)を含む配線部を形成する(
図7のS2)。そして配線部中の駆動TFTのゲート・ドレイン電極に対応する位置に前記コンタクトホールを存在させつつ、前記配線部の上に平坦化膜を一様に成膜する(
図7のS3)。これにより基板110を得る。
次に、基板110の上面に、各有機EL素子100R、100B、100G、バスバー領域100Xを形成する各形成予定領域に合わせ、陽極102と透明導電膜(電極被覆層103)とを順に積層形成する。また、バスバー領域100Xには、補助電極102A及び電極被覆層103Aを積層形成する。(
図7のS4、S5、
図8(a))。このとき前記コンタクトホールを介して陽極102と前記配線部のSD電極とを電気接続する。
【0047】
次に、前記電極被覆層103を含む基板110の基板平面全体を覆うように、ホール注入層104を積層形成する(
図7のS6)。
ここで陽極102の形成は、例えばスパッタリング法や真空蒸着法を用いAg薄膜を製膜した後、フォトリソグラフィ法を用いて当該Ag薄膜をパターニングすることにより行う。
【0048】
また、電極被覆層103の形成は、例えば陽極102の表面に対し、スパッタリング法などを用いITO薄膜を製膜し、当該ITO薄膜をフォトリソグラフィ法などを用いパターニングして行う。
またホール注入層104の形成方法として、先ず、電極被覆層103の表面を含む基板110の表面に対し、スパッタリング法などを用いて金属膜を製膜する。その後、形成された金属膜を酸化してホール注入層104を得る。
【0049】
次に、
図8(b)に示すように、例えばスピンコート法などを用い、ホール注入層104の上を覆うように、バンク材料層1050を形成する。バンク材料層1050の形成には、感光性レジスト材料、例えば紫外線硬化型樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などの絶縁性を有する有機材料を用いることができる。
次にバンク材料層1050の上方に、バンクを形成しようとする箇所に所定パターンの開口部502が設けられたマスク501を配する。ここでは開口部502の幅D
0をバンク幅に合わせ、マスクのX方向幅を形成すべきバンク105のX方向間隙(発光領域及びバスバー領域のX方向幅)に相当するS
1またはS
2に設定している。
【0050】
この状態でマスク501の開口部502を通して紫外線(UV)を照射し、露光処理を行う。その後は所定の現像処理とベーク処理を実施することでバンク105を形成できる(
図7のS7)。
尚、バンク105の材料に無機材料を用いる場合、バンク材料層1050の形成方法としては、有機材料を用いる場合と同様に塗布法等を採用できる。前記無機材料のパターニングは、フォトエッチング法に基づき、所定のエッチング液(テトラメチルアンモニウムハイドロキシオキサイド(TMAH)溶液等)を用いてエッチングすることで行う。
【0051】
次に
図8(c)に示すように、バンク105で隔てられた開口部である各開口部101R、101G、101Bに、所定のウェットプロセスに基づいて有機発光材料を含むインク液滴をY方向に沿って複数滴下し、塗布する。ここで
図9は、装置1000のヘッド部301をX方向に走査し(いわゆる横打ち)、ノズル番号n
1、n
4〜n
11、n
14〜n
21の各ノズル3030Gを用いてX方向に並ぶ所定の各開口部101Gにインク液滴を滴下させる様子を表している。バンク105のY方向ピッチを考慮して、ノズル番号n
2、n
3、n
12、n
13、n
22のノズル3030Gは使用しない。開口部101R、101G、101Bは、Y方向を長辺、X方向を短辺とする形状を有する。インク液滴は、開口部101R、101G、101B内の各中心線Y
1に沿って所定ピッチでインク液滴を着弾させる。
【0052】
図9の例では、1の開口部101G内に合計8個のノズル3030Gを使用してインクを滴下する例を示しているが、もちろん使用するノズル数はこれ以外であってもよい。
図9では、短辺と長辺を有する長尺状の開口部に対し、インク吐出部30(ヘッド部301)を行(X)方向に走査する場合(いわゆる横打ちを行う場合)を示している。図中、Dはバンク105の頂部のX方向幅、Wは開口部101R、101G、101BのX方向幅を示す。
【0053】
全てのインクを塗布した後は、ベーキング処理または室温状態にて溶媒を蒸発乾燥させる。これにより適切に各有機発光層106R、106G、106Bが形成される(
図7のS8)。
次に、真空蒸着法等に基づき、有機発光層106R、106G、106Bの上面及びバンク105の表面にわたり、電子輸送層107、陰極108を順次形成する(
図7のS9及びS10、
図8(d))。
【0054】
その後、陰極108の上面に封止層109を形成することにより、有機EL表示パネル10が完成する(
図7のS11)。
(ウェットプロセスによる有機発光層106R、106G、106Bの形成)
次に、実施の形態1の主たる特徴の一つである、有機発光層106R、106G、106Bを形成するためのウェットプロセスについて、課題とともに詳細に説明する。
[従来の問題]
図10(a)に、塗布対象基板10Xとヘッド部301Gのノズル3030Gとの配置関係を示す。塗布対象基板10XはX方向断面を示している。
【0055】
X方向に沿って各ノズル3030R、3030G、3030Bを各開口部101R、101G、101B(バンク105に設けられた開口部)に対応させる場合、通常はCPU250及び吐出制御部300R、300G、300Bによって、開口部101R、101G、101BのX方向中央位置(
図9の中心線Y
1を通る)をインク着弾のための標準位置P
0とされる。インク液滴はCPU250により、各ノズル3030R、3030G、3030Bから標準位置P
0を狙って所定タイミングで滴下される。
【0056】
ここで開口部101Gにインクを着弾させる際、開口部101Gに隣接する開口部101Rまたは101Bに、すでにインク溜まり1060R、1060Bが存在する場合、滴下するインク液滴がインク溜まり1060R、1060Bと接触することで、ブリッジや混色等の問題を生じる場合がある。
図13(b)は従来の有機EL表示パネルの製造工程の構成を示す断面図である。当図では基板110の表面に陽極102、ホール注入層104を形成し、一定間隔ごとに一定幅のバンク105を形成し、隣接するバンク105の間の発光領域に、有機発光材料を含むインク溜まり1060R、1060G、1060Bがそれぞれ所定の充填量で塗布された直後の様子を示している。
【0057】
インク塗布直後はインク溜まり1060R、1060G、1060Bが未乾燥のため、各液面がバンク105、105の間から上部に盛り上がって張り出している。このため滴下しようとするインク液滴が、すでに塗布されたインク溜まり1060R、1060G、1060Bのそれぞれと十分に間隙を保っていないと、インク溜まり1060R、1060G、1060Bのいずれかと接触して混色を起こし、正しく塗布できない。当図では赤色インク溜まり1060Rが塗布された基板に緑色インクを滴下した結果、滴下中に緑色のインクが赤色インク溜まり1060と接触し、最終的にインク溜まり1060Rと1060Gが隔壁105の頂部上で繋がって(ブリッジの発生)、混色が生じた様子を示す。
【0058】
このような問題は、サブピクセルである有機EL素子100の微細化に伴って顕著になる。
[ウエットプロセスの設定]
ここで隣接塗布領域に充填されたインクとの接触による課題を考慮した場合、隣接塗布領域におけるインクの充填状態によっては、滴下するインク液滴の着弾位置を考慮する必要がある。そこで実施の形態1のウェットプロセスでは、制御装置25のCPU250は記憶手段251に格納されたノズル位置制御プログラムに基づき、作業テーブル20を制御して、ノズル3030Gからのインクの着弾位置を次のように制御する。
(ケースA):開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bのいずれか一方にのみインクが塗布されている場合
この場合は、一方の隣接開口部に充填されたインク溜まりの外周が接触しない位置にインク液滴を着弾させる必要がある。このため制御装置25のCPU250は、ノズル制御プログラムに従い、吐出制御部300Gを介して、未塗布の開口部側に、標準位置P
0から所定の移動量Aだけノズル位置を移動し、滴下位置を移動位置P
A1に補正する(
図11)。これにより滴下しようとするインク液滴の重心を、未塗布の開口部側に近接させ、滴下中にインク液滴が隣接開口部に塗布されたインク溜まりと接触するのを防止する。また、インクの滴下位置が常に標準位置P
0である場合、インクが実際に滴下される位置が標準位置P
0からずれないように高い精度が要求される。それに対して、標準位置をP
0である場合に比べて、滴下位置をP
A1に設定することにより、インクの実際の滴下位置が多少ずれたとしても隣接開口部のインクと接触しにくいため、インクジェット装置の塗布位置制御に余裕度を持たせることが出来る。
(ケースB):開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bの両方に、乗り上げ幅X
R、X
Lが異なるインク溜まりが存在する場合
この場合は、両方の隣接開口部に充填されたインク溜まりの外周が接触しない位置に着弾させる必要がある。このため制御装置25のCPU250は、ノズル制御プログラムに従い、吐出制御部300Gを介して、インク液滴の乗り上げ幅X
R、X
Lのうち、小さい方の開口部側に、標準位置P
0から所定の移動量Aだけノズル位置を移動し、滴下位置を移動位置P
A2に補正する(
図12)。これにより滴下しようとするインク液滴の重心を、乗り上げ幅が小さい方の開口部側に近接させ、滴下中にインク液滴が隣接開口部に塗布されたインク溜まりと接触するのを防止する。
【0059】
ここで、インク液滴のバンク頂部への「乗り上げ幅が異なる」原因については限定されず、例えば充填量が異なる場合や、濃度、粘度等の特性が異なる場合のいずれも含むものとする。
また、インクが液滴されてからの経過時間が経過するほど、バンク頂部への乗り上げ幅は減少する傾向にある。
(ケースBの変形例1):開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bの両方にインクが塗布され、かつ、開口部101Rが開口部101Bよりも先に塗布されている場合
この場合は、インク滴下の経過時間が長い開口部101Rでインクの乾燥が先行し、開口部101Bよりもバンク頂部へのインクの乗り上げ幅が小さい傾向がある。そのため、特に乾燥が遅れている開口部101Bに充填されたインク溜まりの外周が接触しない位置にインク液滴を着弾させる必要がある。このためCPU250は、ノズル制御プログラムに従い、吐出制御部300Gを介して、開口部101R側に、標準位置P
0から所定の移動量Aだけノズル位置を移動し、滴下位置を移動位置P
A1に補正する。
【0060】
これにより、滴下しようとするインク液滴の重心を、先に塗布された開口部101R側に近接させ、滴下中にインク液滴が後から開口部101Bに塗布されたインク溜まりと接触するのを防止する。
(ケースBの変形例2):開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bの両方にインクが塗布され、かつ、開口部101Rに滴下したインクの量よりも、開口部101Bに滴下したインクの量が多い場合
この場合は、滴下されたインクの量が少ない開口部101Rの方で、開口部101Bよりもバンク頂部へのインクの乗り上げ幅が小さい傾向がある。そのため、特に開口部101Bに充填されたインク溜まりの外周が接触しない位置にインク液滴を着弾させる必要がある。このためCPU250は、ノズル制御プログラムに従い、吐出制御部300Gを介して、標準位置P
0から所定の移動量Aだけ、開口部101Rに近づく方向にノズル位置を移動し、滴下位置を移動位置P
A1に補正する。
【0061】
これにより開口部101Gに滴下しようとするインク液滴の重心を開口部101R側に近接させ、滴下中にインク液滴が開口部101Bに塗布されたインク溜まりと接触するのを防止する。
(ケースC):X方向に沿って複数のノズル位置からインクを滴下する場合
図14に、実施の形態1の変形例3を示す。当図では、開口部101Gに対し、X方向に沿って並列配置された2つのノズル3030GA、3030GBを有するヘッド部301G’を用いてインク塗布する場合を示す。この場合でも制御装置25のCPU250は、ノズル制御プログラムに従い、乗り上げ幅の小さい方向(図面右側)に向かって、標準位置P
0(この場合はノズル3030GA、3030GBの中間に位置させる)から移動位置PA
3だけ、ヘッド部301G’をずらしてウェットプロセスを実施できる。
【0062】
また、CPU250はインク乗り上げ幅の小さい方に近接するノズル3030GAより滴下するインク液滴dr1の液滴量を、ノズル3030GBより滴下するインク液滴dr2の液滴量よりも多くなるように設定し、インク滴下中における混色の発生を効果的に防止することができる。インク液滴量の調整は、記憶手段251に格納した所定プログラムに基づき、CPU250が吐出制御部300Gを介して圧電素子3010Gへの印加電圧を制御することで実施できる(
図6)。
【0063】
このケースCでは、ヘッド部301G’において、X方向に2列にわたりノズル3030GA、3030GBを配設しているが、ノズルの配列はX方向に3列以上あってもよい。この場合、少なくともX方向に沿って、インク液滴のバンク乗り上げ幅が小さい方の隣接開口部に最も近接するノズルからの吐出量を、これ以外のノズルからの吐出量よりも多くなるように設定すればよい。
【0064】
或いはヘッド部301‘を走査して、1のインクノズル(例えば3030GA)からX方向に2滴のインク液滴を順次着弾させ、このうち乗り上げ幅の小さい方に近接する着弾位置へ滴下するインク液滴dr1の液滴量を、乗り上げ幅の大きい方に近接する着弾位置へ滴下するインク液滴dr2の液滴量よりも多くなるように設定することも可能である。
(ケースD):開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bのいずれも未塗布の場合、及び、開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bに、乗り上げ幅が同じインク溜まりが存在する場合
この場合、CPU250は従来と同様に、標準位置P
0にノズル位置を合わせる。両バンク頂部105よりも内側にインク液滴を滴下することで、少なくとも隣接開口部にインク液滴がはみ出るのを防げる。
【0065】
尚、インク液滴の重心をずらす方法としては吐出制御部300Gを介して圧電素子3010Gへの駆動波形を調節することでインク液滴の形状を制御するなど幾つかの方法が考えられるが、インク液滴の着弾位置をずらす方法が比較的容易で実現し易いと考えられる。
この(ケースA)、(ケースB)、(ケースBの変形例1)、(ケースBの変形例2)、(ケースC)に基づく各ウエットプロセスの設定は、具体例として以下の(i)〜(iii)の手順を順次行うことで実施できる。
【0066】
(i)まずオペレータは、入力手段252から、使用する塗布対象基板10Xの1の開口部に塗布する各インクの総量と、塗布対象基板上の開口部の形状の情報を入力し、記憶手段251に格納する。
(ii)続いてCPU250が、既知のインク総量及び既知のインク溜まりの形状の情報に基づき、各インク溜まりのバンク105への乗り上げ幅X
R、X
Lを算出させる。さらに乗り上げ幅X
R、X
Lに応じたノズル移動量Aを算出し、各算出結果を関連付けて記憶手段251のテーブル欄に格納する。
【0067】
この(i)、(ii)の手順をRGB3色分について行う。
ここでCPU250は、ノズル移動量Aを例えば以下の式1で算出することができるが、この方法に限らない。
[式1] A=(P
0−P
A)={(D−X
R)+(D−X
L)}/2
但し、DはバンクのX方向頂部幅、X
R及びX
Lはそれぞれ隣接するインク溜まりのバンク頂部へのX方向乗り上げ幅とする(
図10(a)参照)。(D−X
R)、(D−X
L)はそれぞれ、バンク頂部において、インク溜まりが乗り上げていない幅を示す。
【0068】
[乗り上げ幅X
R、X
Lの算出例]
図3(b)に示す有機EL素子100R、100G、100Bは、その周縁形状(開口形状)がY方向に沿った一対の長辺とX方向に沿った一対の短辺(ここでは半円弧状であるが、便宜上「辺」と称する)で囲まれた形状を有する。この場合CPU250は、たとえば以下のように乗り上げ幅X
R、X
Lを求めることができる。
【0069】
図10(b)は、インク塗布後の
図9におけるB−B’矢視断面図である(
図9ではインク不図示、
図10(b)では隣接塗布領域のインクは不図示)。当図に示すように、正面図において、長手(Y)方向両端部が略半球状となるインク溜まりにおける、乗り上げ幅X
R、X
Lの求め方を例示する。この場合、全体の液滴体積V
totalを、部分体積V
1、V
2、V
3、V
4の総和(V
total=V
1+V
2+V
3+V
4)として考える。
【0070】
ここで、バンク105に対するインクの接触角をθ、隣接するバンク頂部間隙をW、X=(X
R+X
L)/2とすると、
図10(d)のように、近似的に次の関係を導くことができる。
[式2]
バンクに囲まれた部分の体積V
1=開口部の底面積×バンク高さ
[式3]
インク乗り上げ部分の外周を円弧上に含む円を想定するとき、当該円の半径R=(W+2X)/(2sinθ)
[式4]
V
2のXZ断面積Dc=高さhの半円面積−長辺Rの直角三角形の2面積
=πR2×{2θ/(2π)}−(W+2X)・(Rcosθ)/2
[式5]
体積V
2=Dc・L1
[式6]
半球状のV
3とV
4の合計体積=π/6・(R−Rcosθ)・{(W−2X)
2+(R−Rcosθ)
2}
以上の式2〜6演算すると、次のように、いわゆるカルダノの公式である
[式7]
A・X
3+B・X
2+C・X=0
(但しA、B、Cはバンクディメンジョン、接触角、インク充填量等)
の3次方程式を導くことができる。この式7の解が乗り上げ幅X
R、X
Lであり、CPU250は演算によって乗り上げ幅X
R、X
Lをそれぞれ求めることが可能である。
【0071】
尚、滴下するインクの粘度、濃度、塗布量、成分等のパラメータを考えると、各開口部101R、101G、101Bからのインク溜まりのはみ出しの態様は、RGB各色のインク毎に共通していると考えられる。従って実施の形態1では、Y方向に並ぶ各開口部101R、101G、101Bでのインク液滴のはみ出し方が共通しているものとする。
[乗り上げ幅X
R、X
Lの求め方の変形例]
乗り上げ幅X
R、X
L算出方法、上記(ii)のようにCPU250が既知のインク液滴体積と開口部の形状から算出する方法に限定されない。たとえば以下の方法を挙げられる。
【0072】
(iii)オペレータは塗布装置1000を操作し、塗布対象基板上の開口部にインクを塗布させる(テスト塗布)。
(iv)続いてノズル制御プログラムに従い、CPU250は液滴体積測定装置40を用い、カメラ制御部400を介して塗布対象基板上に塗布されたインク溜まりを垂直(Z)方向から液滴観察カメラ402で撮影する。CPU250は撮影した画像データを記憶手段251に記憶する。CPU250は塗布前の開口部の形状と塗布後のインク溜まりの形状とを重ね合わせることで、画像データより直接、乗り上げ幅X
R、X
Lを測定する。CPU250は測定結果を記憶手段251に格納する。
【0073】
ここでインクの種類によっては、RGB各色のインクの蒸発乾燥速度に大きな差がある場合がある。体積の多いインク溜まり(例えば1060R)を形成しても、目的の色のインク溜まり(たとえば1060G)を滴下する直前において、必ずしもインク溜まり(1060R)の乗り上げ幅が開口部101Gを挟んで反対に位置するインク溜まり(1060B)の乗り上げ幅より大きいとは限らない。この場合は、(iii)、(iv)の方法のように、予めインクを塗布する直前において液滴観察カメラ402で撮影した画像データで乗り上げ幅X
R、X
Lを測定しておけば、インク(1060B)を滴下しようとする直前の乗り上げ幅X
R、X
Lの正確な値を測定することができる。
【0074】
[ウエットプロセスの制御例]
次に、上記ウエットプロセスの設定方法を用いたウエットプロセスの制御例を順に説明する。ここでは以下の(1)→(2)→(3A)→(4A)のステップの流れと、(1)→(2)→(3B)→(4B)のステップの流れを例示する。
(1)準備ステップ
まず、オペレータは上記(i)の手順に従い、塗布対象基板の情報と、RGB各色インクの各総量を塗布装置1000に入力する。次にCPU250は、(ii)の手順に従い、各インクのインク溜まりの乗り上げ幅X
R、X
Lをそれぞれ求め、記憶手段251に格納する。
【0075】
或いはオペレータが(i)、(iii)の手順を順次行い、CPU250が(iv)のステップを行っても良い。
尚、この準備ステップは有機EL表示パネルの量産の際には最初時にのみ行えばよい。
(2)1色目塗布ステップ
次にCPU250は、ノズル制御プログラムに従い、吐出制御部300Rによってノズル3030Rの位置を調節する。これにより各開口部101R内の標準位置P
0に第1色目のインクを塗布する(ケースCの制御)。このように第1色目のインクを滴下する場合は、塗布対象位置を標準位置P
0として従来と同様に塗布を実行する。
(3A)2色目塗布ステップその1
次にCPU250はノズル制御プログラムに従い、第2色目のインク塗布を実行する。ここでは開口部101Rの隣の開口部101Gに塗布する場合を挙げる。CPU250は記憶手段251のテーブル欄に格納されている、1色目のインクの乗り上げ幅(X
R、X
Lのいずれか)の情報を特定する。CPU250は吐出制御部300Gを介し、ノズル3030Bから開口部101Bへの着弾位置を標準位置P
0からノズル移動量A=P
0−P
A1={(D−X
R)+(D−X
L)}/2だけずらした位置に修正する(
図11を参照)。CPU250は吐出制御部300Rを介し、ノズル3030Gより第2色目のインクを開口部101G内の修正位置に滴下する(ケースAの制御の実行)。
【0076】
この方法でCPU250は、
図9に示したようにインク吐出部30Gを走査し、全ての開口部101Gに塗布を行って第2色目のインク溜まり1060Gを形成する。
(4A)3色目塗布ステップその1
次にCPU250は、(3A)と同様の方法で、3色目のインク塗布として、開口部101Gの隣の開口部101Bに塗布する。CPU250は吐出制御部300Bを介し、ノズル3030Bより第3色目のインクを開口部101B内の修正位置に滴下する(ケースAの制御の実行)。
【0077】
この方法でCPU250はインク吐出部30Bを走査し、全ての開口部101Bに塗布を行って第3色目のインク溜まり1060Bを形成する。
以上でウエットプロセスが終了する。
(3B)2色目塗布ステップその2
(3A)以外のステップ例として、2色目の塗布は開口部101Gを飛ばして開口部101Bに先に行う例を挙げる。CPU250は吐出制御部300Bを介してノズル3030Bの位置を調節する。そして1色目の塗布ステップ(2)と同様に、インク吐出部30Bを走査し、全ての開口部101Bに塗布を行って第2色目のインク溜まり1060Bを形成する。
(4B)3色目塗布ステップその2
(3B)のステップを行った場合、次にCPU250は、記憶手段251に格納されている1色目及び2色目のインクの乗り上げ幅(X
R、X
L)の情報を特定する。この場合、CPU250はX方向両側の開口部101R、101Bにインクが塗布された状態で、開口部101R、101Bの間にある開口部101Gに第3色目のインクを塗布する(ケースBの制御の実行)。
【0078】
すなわちCPU250は、前記ノズル位置制御プログラムに基づき、吐出制御部300Gを介してノズル3030Gの位置を調節し、バンク105の頂部への乗り上げ幅が小さいX
R、X
Lのいずれかの方に向かって(ここではX
R)、開口部101Gの着弾位置を標準位置P
0から移動位置P
A2に補正する。このような制御方法で、CPU250は全ての開口部101Gに対して塗布を行い、第3色目のインク溜まり1060Gを形成する。
【0079】
以上でウエットプロセスを終了する。
(効果)
以上のウェットプロセスの制御例では、(3A)、(4A)の各ステップ実行時には、両隣で隣接するバンク105のうち、インクが乗り上げていないバンク頂部の幅領域の平均値の分だけ(P
A={(D−X
R)+(D−X
L)}/2)、インクの着弾位置を移動させる。また(4B)のステップ実行時には、両隣で隣接するバンク105のうち、インクの乗り上げ幅の小さい開口部側に向かって、バンク頂部の幅領域の平均値の分だけ(P
A={(D−X
R)+(D−X
L)}/2)、インクの着弾位置を移動させる。これにより各開口部101R、101G、101Bへのインクの塗り分けを適切に行うことができ、インクの混色を効果的に防止できる。
【0080】
また、インク滴下時における異色インク同士の接触を防げるため、有機発光層106R、106G、106Bの各膜厚を適切に設定でき、有機EL素子100R、100G、100Bにおけるキャビティ設計を正確に行える。その結果、優れた画像表示性能の有機EL表示パネル10を実現できる。
また、実施の形態1のウェットプロセスでは、標準位置P
0のみに着弾させて塗布を行う場合に比べて着弾精度をそれほど厳密にしなくてもよいため、高精細な塗布対象基板10Xであってもウェットプロセスを比較的容易に実施できる利点もある。
【0081】
尚、上記の例では、乗り上げ幅X
R、X
Lを求めた上で、乗り上げ幅X
R、X
Lを考慮して塗布制御を行っているが、必ずしも乗り上げ幅X
R、X
Lを算出する必要はなく、例えば、画像観察による乗り上げ幅の計測といった実験的手段に頼ってもよい。
乾燥による体積収縮の影響については、RGB塗布の時間間隔、塗布量、インクの蒸発性によって左右される。しかしながら乗り上げ幅の算出や計測を行うのではなく、単にインクの塗布順や、インクジェット装置から吐出されるときのインク量に基づいて、乗り上げ幅の大小関係を推定し、塗布制御を行ってもよい。
【0082】
例えば、インクが先に吐出された開口部のほうが、インクの乾燥が進み、乗り上げ幅が小さくなりやすいという推定のもとに、隣接する開口部のうち、先に機能性材料が塗布された開口部に重心をずらして、インクを中央に位置する開口部に着弾させてもよい。
また、開口部101Gに隣接する開口部101R、101Bの両方にインクが塗布されており、かつ、開口部101Rに対してインク吐出部が吐出したインクの量よりも、開口部101Bに対してインク吐出部が吐出したインクの量が多い場合においては、101Bにおける乗り上げ幅が101Rにおける乗り上げ幅よりも大きくなりやすいと推定することできる。この推定に基づき、制御装置25のCPU250は、未塗布の開口部側に、標準位置P
0から所定の移動量Aだけ、開口部101Rに近づく方向にノズル位置を移動させ、滴下位置を移動位置P
A1に補正する、塗布制御を行ってもよい。
(有機EL表示パネル10の各構成材料)
次に、有機EL表示パネル10を製造する場合の各構成要素の具体的材料を例示する。
[基板110の材料]
基板110は有機EL表示パネル10のベース部分であり、実施の形態2で示す絶縁性の基板本体1011の上に、TFT配線部(不図示)を形成して構成する。このため基板本体1011の材料としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料等が挙げられる。一方、TFT配線部は、有機EL素子100R、100G、100Bをアクティブマトリクス駆動方式で駆動するための配線(駆動TFT及びスイッチングTFT等の薄膜トランジスタ、電源線、信号線を含む配線)を有するように形成する。このため、金属材料及び絶縁材料等を用いる。尚、TFT配線部の表面には、不図示の層間絶縁膜(平坦化膜等)を形成するが、層間絶縁膜は絶縁材料を用いて形成できる。
[陽極102の材料]
陽極102の材料としては、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル及びこれらの合金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)からなる群より選ばれる少なくとも一つの材料が挙げられる。
【0083】
尚、陽極102の表面には公知の透明電極材料を用いて透明導電膜を設けることもできる。透明導電膜の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)が挙げられる。なお、補助電極102Aにも同様の材料を用いることができる。
[電極被覆層103の材料]
電極被覆層103の材料は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)が挙げられる。なお、電極被覆層103Aにも同様の材料を用いることができる。
[ホール注入層104の材料]
ホール注入層104の材料としては、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物材料を例示できる。
【0084】
尚、ホール注入層104の材料は、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)なども挙げられる。
尚、ホール注入層104と有機発光層106R、106G、106Bの間にホール輸送層を形成してもよい。
[バンク105の材料]
バンク105の材料は特に限定されないが、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)が好適である。製造時にエッチング処理およびベーク処理などが施されるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などを生じない耐性の高い材料であることが好ましい。また表面に撥水性を持たせるため、フッ素処理を施すこともできる。
[有機発光層106R、106G、106Bの材料]
具体的な発光性の有機材料としては、例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質を挙げることができる。
[電子輸送層107の材料]
電子輸送層107の材料としては、陰極108から注入された電子を効率よく有機発光層106R、106G、106Bへ輸送する機能を有する材料を用いる。例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、あるいはこれらの組み合わせで形成することが好ましい。
[陰極108の材料]
陰極(第2電極)108の材料としては、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)などが挙げられる。トップエミッション型の有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料が好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
[封止層109の材料]
封止層109の材料としては、有機発光層106などが水分や空気に晒されるのを抑制する機能を有する材料を用いる。例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料が挙げられる。トップエミッション型の有機EL表示パネル10では、光透過性材料が好ましい。
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2として、
図4と
図15〜
図17を用い、TFTの製造方法(及びTFT基板の製造方法)を例示する。
【0085】
実施の形態2では、機能膜として有機TFTにおける有機半導体層を形成するため、上記塗布装置1000を用いる。有機TFTを形成する基板は、前記基板TFT基板110と同一である。
(TFT基板110の製造方法)
図15(a)に示すように、基板本体1011の主面上にゲート電極1012a、1012bを形成する(
図7(b)のS21)。ゲート電極1012a、1012bの形成に関しては、上記陽極102の形成方法と同様の方法とする
次に、
図15(b)に示すように、ゲート電極1012a、1012bおよび基板本体1011の上を覆うように、絶縁層1013を積層形成する(
図7(b)のS22)。
【0086】
そして、
図15(c)に示すように、絶縁層1013の主面上に、ソース電極1014a、1014bおよびドレイン電極1014c、1014d、接続配線1015をそれぞれ形成する(
図7(b)のS23)。
次に、
図16(a)に示すように、ソース電極1014a、1014b、ドレイン電極1014c、1014d、接続配線1015、親液層1019a、1019b(
図16(a)では図示を省略)、さらには絶縁層1013の露出部1013a、1013b上を覆うように、隔壁1016を形成するための感光性レジスト材料膜10160を堆積させる(
図7(b)のS24)。
【0087】
そして、
図16(b)に示すように、フォトリソグラフィ法に基づき、堆積させた感光性レジスト材料膜10160に対し、上方にマスク501を配し、マスク露光およびパターニングを施す(
図7(b)のS25)。マスク501には隔壁1016の形成予定部分に窓部501a、501b、501c、501dを開けておく。尚、
図16(b)では図示を省略するが、マスク501には、窓部501a、501b、501c、501dが開けられた領域以外にも隔壁1016の形成部分に窓部を設ける。
【0088】
上記工程により、
図16(c)に示す隔壁1016を形成できる(
図7(b)のS26)。隔壁1016は、開口部1016a、1016b、1016cを含む複数の開口部を規定する。開口部1016aでは、接続配線1016が囲繞され、開口部1016bでは、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cおよび親液層1019aが囲繞され、開口部1016cでは、その底部でソース電極1014bおよびドレイン電極1014dおよび親液層1019bが囲繞されている。そして、開口部1016b、1016cの各々においては、ソース電極1014a、1014bおよびドレイン電極1014c、1014dが、それぞれ所定の位置関係を以って配置される。
【0089】
次に塗布装置1000を用い、
図17(a)に示すように、隔壁1016を形成した後、隔壁1016により規定される開口部(開口部1016b、1016c)に対し、有機半導体層1017a、1017bを形成するための有機半導体インク10170a、10170bを塗布する(
図7(b)のS27)。
このとき従来では、開口部1016b、1016cにおけるX方向の中央位置を標準位置P
0とし、インク液滴を塗布している。しかしながら先に塗布されたインクの液滴が隔壁1016の頂部に乗り上げている場合があり、これと滴下中のインク液滴が接触する恐れがある。
【0090】
そこで実施の形態2では、実施の形態1の(ケースA)の制御のように、CPU250はノズル位置制御プログラムに基づき、隔壁1016の頂部のX方向幅Dに対するインクの乗り上げ幅X
Lを考慮して、インクの着弾位置を標準位置P
0から移動位置P
A4にずらして調節する。
ここで
図17(a)の例では、先に開口部1016bに有機半導体インク10170aを塗布し、その一部が隔壁1016の頂部に乗り上げ幅X
Lで乗り上げている。従って、開口部1016aに有機半導体インク10170bを塗布する際には、開口部1016aにおけるインクの着弾位置を標準位置P
0から所定の移動位置P
A4にずらして調節する。この制御の詳細については、実施の形態1と同様に行うことができる。
【0091】
これにより
図13(a)のように、各インク液滴の接触を防止することができる。有機半導体インク10170a、10170bを乾燥させることにより(
図7(b)のS28)、開口部1016b、1016cに対して、有機半導体層1017a、1017bを各々適切に形成することができる(
図7(b)のS29)。
最後に、
図17(b)に示すように、開口部1016aを含むコンタクト領域など除く全体を覆うようにパッシベーション膜1018を形成すると(
図7(b)のS30)、TFT基板110が完成する。
【0092】
尚、上記構成例では、隣接する開口部を開口部1016b、1016cの2つとしたが、実施の形態1と同様に隣接する3つの領域、或いはそれ以上の数の領域とすることもできる。この場合、X方向両側の領域に塗布工程が行われ、中央の開口部に半導体材料を塗布する場合に、実施の形態1の(ケースB)と同様の制御を行い、同様の効果を期待できる。
<その他の事項>
本発明の機能膜の製造方法を有機EL表示パネルの製造方法に適用する場合は、当然ながら有機発光層の製造のみならず、正孔注入層や正孔輸送層等、ウェットプロセスにて材料を塗布する工程を持つ、その他の機能層の製造にも適用することが可能である。
【0093】
表示パネル10では、有機発光層106R、106G、106Bの下方に陽極102、有機発光層106R、106G、106Bの上方に陰極108を配設したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば陽極102と陰極108の位置を逆に配設することもできる。陽極102と陰極108の位置を逆に配設する構成でトップエミッション型とする場合、陰極108を反射電極層とし、陽極102を透明電極層とする必要がある。
【0094】
また上記実施の形態1では、RGB各発光色に対応する各有機発光層106R、106G、106Bを形成したが、表示パネル上にはRGB以外の組み合わせの各色や、単色だけの有機発光層を形成してもよい。
実施の形態1では、ヘッド部301を標準位置P
0から移動位置P
Aにずらして調節する方法を示したが、作業テーブル20にXYターンテーブルを用いる場合、ヘッド部301の位置を標準位置P
0とし、移動位置P
AまでXYターンテーブル上のステージ(塗布対象基板)を移動させる方法も採用できる。
【0095】
実施の形態1では、バンク105をピクセルバンク構造としたが、本発明はこれに限定されず、バンクをラインバンク構造とすることもできる。この場合も本発明を適用することで、上記と同様の効果を期待できる。
上記実施の形態1、2では、インク吐出部30をX方向に走査する、いわゆる横打ちを行う例を示したが、インク吐出部30をY方向に走査する、縦打ちを行ってもよい。これによっても同様の効果を期待できる。