(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表示領域に発光素子が配設されてなる素子基板と、前記素子基板における発光素子上に形成された封止樹脂層と、当該封止樹脂層を介して前記素子基板に対向配置された対向基板とを有する表示装置であって、
前記封止樹脂層は、
前記表示領域の外周に沿って枠状に形成された第1封止部と、
前記第1封止部の内側において前記表示領域を覆って形成された第2封止部と、
前記第2封止部の一部が分岐しながら延伸して、前記第1封止部の内部に侵入した樹枝状部と、を有し、
前記樹枝状部の先端は、前記第1封止部の外周よりも内側に位置することを特徴とする表示装置。
前記第1封止剤は、エネルギーの付与を開始した時点から、エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間が前記第2封止剤より短いことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
発光素子が配設された素子基板と、前記素子基板における発光素子上に形成された封止樹脂層と、当該封止樹脂層を介して前記素子基板に対向配置された対向基板とを有する表示装置を製造する製造方法であって、
前記素子基板及び前記対向基板のいずれか一方において、前記表示領域の外周に沿って枠状に第1封止剤を塗布し、前記第1封止部の内側に第2封止剤を塗布する塗布工程と、
前記第1封止剤及び前記第2封止剤に、エネルギーを付与して硬化させる硬化工程と、
前記第1封止剤と前記第2封止剤を介して、前記対向基板と前記素子基板を対向配置して貼り合わせる貼合工程と、を有し、
前記エネルギーの付与を開始した時点から、前記第1封止剤が、前記エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間を第1封止剤の可使時間とし、
前記エネルギーの付与を開始した時点から、前記第2封止剤が、前記エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間を第2封止剤の可使時間とした場合、
前記エネルギーの付与を開始してから前記対向基板と前記素子基板を貼り合わせるまでの貼合せ時間を、前記第1封止剤と第2封止剤のうちいずれか一方の可使時間の30%以上60%以下である時間に定める
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<発明の態様>
本発明の一態様にかかる表示装置は、封止樹脂層を、表示領域の外周に沿って枠状に形成された第1封止部と、第1封止部の内側において表示領域を覆って形成した第2封止部とで構成している。この表示装置においては、第2封止部の周りを取り囲む第1封止部の存在によって、封止性が高められる。
【0014】
ここで、第1封止部と第2封止部との間に応力が生じることがある。この応力より、第1封止部と第2封止部との間に空隙が発生したり、第1封止部と第2封止部の界面近傍において、第1封止部と素子基板あるいは対向基板との間に別の封止膜が介在している場合には、第1封止部と別の封止膜の間の密着性が低下し、場合によっては別の封止膜が剥がれたりする可能性がある。
【0015】
このような空隙や剥がれが生じると封止樹脂層の封止性が低下する原因となる。
【0016】
これに対して、上記態様の表示装置においては、第2封止部の一部が分岐しながら延伸して、第1封止部の内部に侵入した樹枝状部と、を有しているので、第1封止部の中に、第2封止部の一部による樹枝状部が侵入して形成されている。すなわち、第1封止部と第2封止部とは、界面付近で相互に入り組んでいるので、アンカー効果によって第1封止部と第2封止部との接合強度は高められる。従って、第1封止部と第2封止部との間の応力によって生じる封止樹脂層の封止性低下を抑制することができる。
【0017】
また、樹枝状部の先端が第1封止部の外周よりも内側に位置することにより、封止樹脂層の封止性の低下を抑制することができる。
【0018】
上記態様の表示装置において、以下のようにしてもよい。
【0019】
第1の封止部の材料は第1封止剤、第2の封止部の材料は第2封止剤であって、第1封止剤と第2封止剤の材料は、それぞれ主成分が樹脂材料である。
【0020】
第1封止部は、第1封止剤を塗布して硬化させることによって形成し、第2封止部は、第2封止剤を塗布して硬化させることによって形成する。
【0021】
第1封止部は、第2封止部の外周を囲む内枠部と、内枠部の外周を囲む外枠部とで構成する。このように第1封止部を2重の枠体で構成することによって、封止部が2重の枠体のうち1つのみ有する場合と比較して封止効果を向上することができる。
【0022】
第1封止部が2重の枠体であって、樹枝状部が内枠部の内部に侵入し、その先端が内枠部の外周よりも内側に位置していれば、第1封止部は、内枠部及び外枠部ともに決壊することなく、シール性が2重に保たれている。第一封止剤の外枠部と内枠部の両方が決壊していない状態においては、外枠部と内枠部のいずれか一方が決壊している状態よりも封止性能が保たれる。また、樹枝状部が、内枠部の外周端に到達しており、第2封止部材の材料が、内枠部と外枠部の間に位置している場合、あるいは、樹枝状部が外枠部の内部に侵入し、さらにその先端が外枠部の外周端よりも内側に位置している場合は、外枠部については決壊がないので、封止性の劣化を抑制できる。
【0023】
なお、本明細書では基板の外周と内周とは、基板の中心(基板の重心としてもよい)に対して基板の端部に位置する側を外周側とよび、基板の中心に近い側を内周側とする。
【0024】
また、本明細書では「決壊」とはある特定の材料が、基板の外周側に位置する封止剤の外周端に到達しているか、または外周端を突き破って外周側に位置する封止剤の外側に流出していることを意味している。
【0025】
第1封止剤は、第2封止剤と比べて、エネルギーの付与を開始した時点から、エネルギーの付与を行う前における粘度の2倍の粘度になるまでの時間(可使時間)が短いこと、もしくは第1封止剤と第2封止剤とは可使時間が略同じであることが、第1封止部による封止作用を良好にする上で好ましい。
【0026】
対向基板は、表示領域に対応する領域に、カラーフィルタを有していてもよい。
【0027】
本発明の一態様にかかる表示装置の製造方法においては、素子基板及び対向基板のいずれか一方において、表示領域の外周に沿って枠状に第1封止剤を塗布すると共に、第1封止部の内側に第2封止剤を塗布する塗布工程と、第1封止剤及び第2封止剤に、エネルギーを付与して硬化させる硬化工程と、第1封止剤と第2封止剤を介して、対向基板と素子基板を対向配置して貼り合わせる貼合工程と、を有し、エネルギーの付与を開始してから前記対向基板と前記素子基板を貼り合わせるまでの時間は、エネルギーの付与を開始した時点から、第1封止剤と第2封止剤のうちいずれかが、エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間の17%より大きく、且つ、エネルギーの付与を開始した時点から、第1封止剤及び第2封止剤のいずれかが、エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間の60%以下に設定した。
【0028】
この製法によれば、第1封止部と第2封止部の間に空隙ができるのが抑えられると共に、第2封止部の一部が分岐しながら延伸して第1封止部の侵入し、その先端が第1封止部の外周よりも内側に位置する樹枝状部を形成することができる。
【0029】
この樹枝形状部により、アンカー効果によって第1封止部と第2封止部との接合強度は高められる。従って、封止樹脂層の封止性低下を抑制することができる。 また、樹枝状部の先端が第1封止部の外周よりも内側に位置することにより、封止樹脂層の封止性の低下を抑制することができる。
【0030】
また、ネルギーの付与を開始してから前記対向基板と前記素子基板を貼り合わせるまでの時間は、エネルギーの付与を開始した時点から、第1封止剤と第2封止剤のうちいずれかが、エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間の30%以上であることが好ましい。
【0031】
第1封止剤210によって2重の枠状部材を形成する場合煮、内周側の枠上部材の外周よりも、樹枝上部の先端が内側に位置することにより、封止樹枝層の封止性を良好に保つことが出来る。
【0032】
第1封止部による封止作用を良好にするために、第1封止剤は、エネルギーの付与を開始した時点から、エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間(可使時間)が第2封止剤より短いこと、あるいは第1封止剤と第2封止剤は、可使時間が略同じであることが好ましい。
【0033】
また塗布工程において、第1封止剤を塗布した後に第2封止剤を塗布することが好ましい。
【0034】
塗布工程において、第1封止剤と第2封止剤とが接触しないように塗布することが好ましい。第1封止剤の塗布直後に第2封止剤が第1封止剤に接触すると、第1封止剤の硬化度が非常に低いため、第2封止剤が第1封止剤の外へ染み出す可能性がある。そこで、塗布工程において、第1封止剤と第2封止剤とが接触しないように塗布することで。第2封止剤が第1封止剤へ染み出す現象を抑制できる。
【0035】
さらに、塗布工程において、貼合工程までに第1封止剤と第2封止剤とが接触しないように塗布することによって、第2封止剤の第1封止剤の外への染み出しを防止する効果はより大きくなる。
【0036】
塗布工程において、第1封止剤を、2重以上の枠状に塗布することが好ましい。これにより2重の枠状のうち1方にしか塗布しない場合と比較して第1封止部の封止性を高めることができるので、酸素や水分が基板と対向基板との間へ侵入しにくくなり、発光素子の性能劣化を抑制することができる。
【0037】
以下、実施の形態に係る表示パネルについて、図面を参照しながら説明するが、実施の形態では好ましい形態を示すものであり、本発明はこの形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、他の実施の形態との組み合わせも、矛盾が生じない範囲で可能である。
【0038】
<実施の形態>
1.全体構成
本実施の形態に係る表示装置1の全体構成について図面を用いて説明する。
【0039】
図1は、表示装置1の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0040】
表示装置1は、同図に示すように、表示パネル10と、これに接続された駆動制御部100とから構成されている。
【0041】
表示パネル10は、例えば、有機材料の電界発光現象を利用したトップエミッション型の有機EL表示パネルである。駆動制御部100は、4つの駆動回路101〜104と、これらを制御する制御回路105とから構成されている。
【0042】
図15は、この表示装置1を用いたテレビシステムの一例を示す外観形状である。
2.表示パネル10の構成
表示パネル10の構成について詳細に説明する。
【0043】
図2は、実施の形態の表示パネル10の要部を模式的に示す断面図である。
【0044】
図1,2において、X方向が横方向、Y方向が縦方向、X方向およびY方向と垂直であって、紙面から前方に飛び出る方向がZ方向である。
【0045】
表示パネル10において、前方(Z方向)が光の取出し方向である。
【0046】
表示パネル10は、
図2に示すように、EL基板(「素子基板」に相当する。)11とCF基板(「対向基板」に相当する。)12とが、封止樹脂層20を介して対向配置されて構成されている。
【0047】
封止樹脂層20は、EL基板11とCF基板12とを接合すると共に、表示パネル10の外部から水分やガスがEL基板11の(発光素子に侵入するのを防止する役割を果たす。
【0048】
表示パネル10は、その表示領域においてRGB各色に対応するトップエミッション型の有機EL素子がマトリクス状に隣接配置され、CF基板の上面側にカラー画像を表示するようになっている。各有機EL素子がサブピクセルに相当し、3色のサブピクセルの組みで1画素(ピクセル)が形成されている。
【0049】
なお、1つのサブピクセルはY方向に長く、3つのサブピクセルがX方向に配置されることで、平面視において略正方形状のピクセルが得られる。
(1)EL基板11
EL基板11は、TFT基板111の前面に、陽極112、補助電極(不図示)、バンク113、発光層114、陰極(不図示)、薄膜封止層(不図示)などが順次積層されて構成されている。
【0050】
上記TFT基板111は、基板本体に複数のTFT素子が設けられ、その上面に層間絶縁膜が形成されている。基板本体は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料、あるいは有機樹脂フィルムである。層間絶縁膜は、例えば、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料で形成される。
【0051】
陽極112は、サブピクセルごとに独立して配置され、バンク113は、サブピクセル同士の間に形成されている。
【0052】
陽極112及び補助電極は、金属配線であり、例えば、Al(アルミニウム)あるいはアルミニウム合金で形成されている。あるいは、Ag(銀)、銀とパラジウムと銅との合金、銀とルビジウムと金との合金、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成されていても良い。
【0053】
表示パネル10はトップエミッション型であるので、陽極112は、光反射性の高い材料で形成されている。
【0054】
バンク113は、絶縁材料、具体的には、樹脂等の有機材料からなり、発光層114を仕切るように前方に突出して形成され、例えば横断面形状が台形状である。材料の例として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等がある。
【0055】
発光層114は、所定の発光色を有する有機層であって、バンク113同士の間に形成されている。
【0056】
発光層114は、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質で形成される。
【0057】
陰極及び封止層は、発光層114及びバンク113を全体にわたって連続して被覆するように形成されている。
【0058】
陰極は、いわゆる透明電極であって、ITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化インジウム亜鉛)等からなる。
【0059】
薄膜封止層は、例えば、SiO(酸化シリコン),SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)、SiC(炭化ケイ素)、SiOC(炭素含有酸化シリコン)、AlN(窒化アルミニウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)等の材料で形成された薄膜である。なお、後述するように表示パネルがボトムエミッション型である場合には、陽極は、光反射性の高い材料でなくてもよいし、陰極は透明電極でなくてもよい。
【0060】
(2)CF基板12
光透性材料からなる透明基板121の背面に、カラーフィルタ122R,122G,122B及びブラックマトリクス(以下、「BM」と記載する。)123が配設されて構成されている。
【0061】
透明基板121は、例えば、上述したTFT基板111の基板本体と同様の材料からなる基板である。
【0062】
各カラーフィルタ122R,122G,122Bは、赤色、緑色、青色に対応した各波長域の可視光を透過する樹脂材料、例えばポリイミド系材料で形成され、EL基板11に形成されている各発光層114の位置に合わせて配設されている。
【0063】
BM123は、例えば光吸収性及び遮光性に優れる黒色顔料を含む紫外線硬化樹脂材料で形成される。このBM123は、EL基板11のバンク113に対向する位置に形成され、カラーフィルタ122R,122G,122B同士を区画するように井桁状に形成され、表示コントラストを向上させる機能を有する。
(3)封止樹脂層20
上記EL基板11とCF基板12とは、封止樹脂層20を介して対向配置されている。
【0064】
ここで、EL基板11の有機発光層のサブピクセル(R),(G),(B)に対応して、CF基板12のカラーフィルタ(R),(G),(B)が位置するように、またEL基板11のバンク113とCF基板12のBMが対応するように配置されている。
【0065】
図3は、表示パネル10において封止樹脂層20を形成する位置を示す平面図である。
【0066】
封止樹脂層20は、表示領域の外側に枠状に形成された第1封止部(DAM、およびシール剤とも呼ぶ)21と、第1封止部21の内側において表示領域に形成された第2封止部(FILL、および充填剤とも呼ぶ)22とからなる。
【0067】
硬化型のアクリル樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等である。
【0068】
第1封止部21は、第2封止部22と比べて弾性率の大きい材料で形成される。例えば、第1封止部21の弾性率は4GPa、第2封止部22の弾性率は2GPaである。
【0069】
図3において第2封止部22を形成している領域は、表示パネル10の表示領域とほぼ一致している。
【0070】
図4(a)〜(d)は、表示パネル10の封止樹脂層20において、第1封止部21と第2封止部22の境界24の近傍を拡大した模式図である。これらの図において、図面上方が表示パネル10の外側、図面下方が表示パネル10の内側である。
【0071】
図4(a)は、第1封止部21が1重の枠で形成されている例を示している。
【0072】
また、
図3(b)、及び
図4(b)〜(d)は、第1封止部21が2重の枠で形成されている例、すなわち、第1封止部21が、第2封止部22の外周を囲む内枠部21aと、当該内枠部21aの外周を囲む外枠部21bとからなる例を示している。(b)〜(d)のように、第1封止部21を2重の枠体で構成することによって、第2封止部22へ水分や酸素が入り込みにくくすることができ、第1封止部21の封止効果を向上できる。
【0073】
図4(a)〜(d)に示すように、第1封止部21には、第2封止部22の一部が第1封止部21の内周211から侵入して分岐しながら延伸した樹枝状部23が形成されている。そして、樹枝状部23の先端は、第1封止部21の外周212には到達せず、外周212よりも内側に位置している。
【0074】
図4(b),(c),(d)では、内枠部21a及び外枠部21bに対して、樹枝状部23が侵入する度合いが以下のように異なっている。
【0075】
(b)では、樹枝状部23が、第1封止部21の内周211から内枠部21aの途中まで侵入し、樹枝状部23の先端は内枠部21aの外周213に到達していない。
【0076】
第1封止部21のうち、内枠部21a及び外枠部21bの両方を前記第2封止部22が突き抜けていない。そのため、第2封止部22は2重の枠体部で封止され、封止性が良好である。なお、第2封止部22が、第1封止部21の最外周面を突き抜けて第1封止部21の外側に流れ出すことを、以下「決壊」と呼ぶ。なお、第2封止部22が、内枠部21a及び外枠部21bを有しており、第2封止部がそれぞれ内枠部21a、および外枠部21bの外側に流れだすことも、同様に「決壊」と呼ぶ。また、第2封止部が内枠部21a及び外枠部21bの外側へ流れ出す場合、内枠部21a及び外枠部21bそれぞれの外周が視認しにくくなる場合がある。ここで、第1封止部の角部(第1封止部が枠状に形成されている場合、それぞれの辺の端部)は第2封止部が到達しにくい。したがって、第1封止部の外周を、枠状の第1封止部において隣り合う2つの頂角を結んだ直線と定義してもよい。同様に、内枠部の外周は内枠部の隣り合う2つの頂角を結んだ直線としてもよい。
【0077】
(c)では、樹枝状部23が、内枠部21aを突き抜けて、第2封止部22の材料が、内枠部21aと外枠部21bとの間に入り込んでいる。また、(d)では、樹枝状部23aが、内枠部21aを突き抜けて、第2封止部22の材料が、内枠部21aと外枠部21bとの間に入り込み、さらに、外枠部21bの内周214から外枠部21bの中に侵入して、樹枝状部23bが形成されている。(c)、(d)の場合は、外枠部21bの外周端部よりも樹枝状部23の先端が内側に位置することにより、外枠部21bよりも外側から、外気や空気が、発光素子が形成されている領域に侵入しにくくすることができる。(a)の場合も、樹枝状部23の先端は、第1封止部21の外周212には到達せず、外周212よりも内側に位置している。そのため、同様の効果を奏することができる。 また(b)の場合、内枠部21aと外枠部21bの両方が決壊していないので、外枠部21bは決壊していないが内枠部21aは決壊している場合(例えば(c)及び(d))と比較し、第1封止部21の封止性能が劣化しにくい。
【0078】
3.表示パネル10の製造方法
表示パネル10は、(1)EL基板11を準備する工程と、(2)CF基板12を準備する工程と、(3)EL基板11とCF基板12とを貼り合わせる工程とを経て製造される。各工程について以下に説明する。
(1)EL基板11準備工程
EL基板11の製造工程を説明する。
【0079】
まず、TFT基板に層間絶縁膜を形成する。その後、層間絶縁膜の上面に陽極及び補助電極用の金属薄膜を形成し、当該金属薄膜をパターニングして陽極112及び補助電極を得る。金属薄膜の形成は例えばスパッタリング法を利用し、パターニングは例えばフォトリソグラフィ法を利用することで実施できる。
【0080】
次に、バンク用の材料である絶縁性有機材料からなるバンク材料層を形成し、バンク材料層をパターニングしてバンク113を得る。バンク材料層の形成は例えば塗布等により実施することができ、パターニングは、例えば、所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させ、余分なバンク材料層を現像液で洗い出す(ウェットプロセス)ことで実施できる。
【0081】
次に、バンク形成後、バンクで区画された領域内に有機発光層を形成する。有機発光層の形成は、例えばインクジェット法により有機EL材料を含む組成物インクを滴下し、そのインクを乾燥させることで実施できる。
【0082】
その後、バンクや有機発光層の上面を被覆するように陰極を形成し、さらに、封止層を形成することによって、EL基板11が作製される。
【0083】
陰極の形成は、例えばスパッタリングにより実施でき、封止層の形成は、例えばスパッタリング、化学気相成長(CVD)、原子層堆積(ALD)等により実施できる。
【0084】
(2)CF基板12準備工程
CF基板12の製造工程を説明する。
【0085】
まず、紫外線硬化樹脂(例えば紫外線硬化アクリル樹脂)材料を主成分とし、これに黒色顔料を添加してなるBM材料を溶媒に分散させてBMペーストを調整し、当該BMペーストを透明基板121の一方の面(上面)に塗布する。
【0086】
塗布したBMペーストを乾燥し、溶媒をある程度揮発させて、ペーストの形態を保持できる程度になると、バンクの位置に対応するように所定形状の開口部を持つパターンマスクを重ねる。
【0087】
そして、重ねたパターンマスクの上から紫外線照射を行い、その後、BMペーストを焼成し、パターンマスク及び未硬化のBMペーストを除去して現像・キュアすることにより、バンクの位置に合わせたBMが完成する。
【0088】
次に、BMを形成した透明基板121の表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするカラーフィルタ(R)の材料を溶媒に分散させ、フィルタペースト(R)を塗布する。溶媒をある程度除去した後、所定のパターンマスクを載置し、紫外線照射を行う。
【0089】
その後、キュアを行い、パターンマスク及び未硬化のフィルタペースト(R)を除去して現像すると、カラーフィルタ(R)が形成される。そして、(G),(B)についても同様の工程を各色のカラーフィルタ材料について繰り返すことで、カラーフィルタ(G),(B)を形成する。
【0090】
これにより、各有機発光層の位置に合わせて各色のカラーフィルタが形成され、CF基板12が作製される。
【0091】
なお、カラーフィルタ(R),(G),(B)は、BMに沿って形成されており、隣接する両側のBMの端部上面に一部が乗り上げた状態で形成される。
【0092】
(3)貼着工程
図5は、貼着工程の一例を示す図である。
【0093】
EL基板11とCF基板12とを貼り合わせる貼着工程では、EL基板11の表面に、第1封止部21の材料である第1封止剤210及び第2封止部22の材料である第2封止剤220を塗布する工程、封止剤の硬化を開始させる工程、封止剤が塗布されたEL基板11に対してCF基板12を重ね合せる工程とを含み、重ね合せた状態でも封止剤の硬化が進行する。
【0094】
第1封止剤210及び第2封止剤220の可使時間について説明する。
【0095】
各封止剤は、UVを照射することによって樹脂に含まれる反応開始剤が反応し硬化反応が開始される。そして反応開始後は、反応の進行に伴って封止剤の粘度が上昇する。
【0096】
ここで、エネルギーの付与を開始した時点から、エネルギーの付与を行う前の粘度の2倍の粘度になるまでの時間を、封止剤の可使時間とする。
【0097】
この可使時間は、例えば、封止剤に用いる樹脂の種類を選択することによって調整することができる。また、樹脂に遅延剤を混合して、その混合量を変えることによって調整することもできる。
【0098】
<第1封止剤210の塗布>
CF基板12の表面における表示領域を囲む外周部分に沿って、第1樹脂部21を形成するためのペースト材料である第1封止剤(DAM剤)210を枠状に塗布する。
【0099】
第1封止剤210としては、アクリル樹脂(UV硬化性)、エポキシ樹脂(UV硬化性)、エポキシ樹脂(熱硬化性)等が挙げられる。塗布するときの粘度(初期粘度)は100,000mPa・s〜1,000,000Pa・sとする。
【0100】
塗布方法はディスペンサを用い、幅200um〜500um、高さ30〜80umで、閉ループを描画するように塗布する。
【0101】
ここでは、UV硬化性エポキシ樹脂を用い、粘度は500,000Pa・sとする。
【0102】
第1封止剤は、例えば 断面積5000〜20000μm
2となるように塗布する。
【0103】
図5(a)では、CF基板12の外周部分に第1封止剤210が塗布された状態を示している。
【0104】
<第2封止剤220の塗布>
図5(a)に示すように、CF基板12の表面上に枠状に塗布された第1封止剤210の内側領域(すなわち表示領域)に、第2封止部22を形成するための第2封止剤(FILL剤)220を滴下する。
【0105】
このとき、第2封止剤220は、CF基板12の表面上に、間隔を空けて複数箇所に滴下していく。
【0106】
それによって、第1封止剤210の内側に第2封止剤220が塗布される。第1封止剤210と第2封止剤220は塗布直後に接触しないように塗布されることが好ましい。具体的には、封止剤の塗布量や塗布位置を調整する方法が考えられる。第2封止剤220は外周側に広がるが、塗布直後の第1封止剤210の硬化が進んでいない状態で、第2封止剤220が第1封止剤210に接触すると、第2封止剤が第1封止剤を突き破って第1封止剤の外側に流出してしまう可能性がある。第1封止剤と第2封止剤が塗布直後に接触しないように塗布することで、第2封止剤が外側に流出する現象を抑制することが出来る。
【0107】
また、基板の貼り合わせ時に第2封止剤が外側へ向かって同心円状に広がる。この際にあらかじめ第1封止剤と第2封止剤が接触していると、第2封止剤が第1封止剤を突き破ってしまう可能性がある。そこで、基板同士を貼り合わせるまで、第1封止剤210と第2封止剤220が接触しないように塗布することで、より、第2封止剤が第1封止剤の外側へ流出しにくくすることができる。
【0108】
第2封止剤220としては、アクリル樹脂(UV硬化性)、エポキシ樹脂(UV硬化性)、エポキシ樹脂(熱硬化性)が挙げられる。
【0109】
第2封止剤220を塗布するときの粘度(初期粘度)は、材料の拡がり具合と密着性とを考慮して、第1封止剤210の粘度よりも低く、50[mPa・s]〜1000[mPa・s]、その中でも100mPa・s〜500mPa・sに設定され、ディスペンサで塗布する。
【0110】
ここでは、トップエミッション型の有機EL表示パネルを製造することを想定し、無色透明のUV硬化性エポキシ樹脂で、粘度400mPa・s程度のものを用いる。
【0111】
第2封止剤の塗布量は、1滴あたり滴下量が例えば0.2〜2.0μLの範囲であり、長さあたりの塗布量は、例えば28〜280mm
3/インチである。
【0112】
塗布された第2封止剤220は流動性を有するが、第1封止剤210の枠で囲まれているので、この枠内に保持される。
【0113】
なお、ここでは、CF基板12に対して封止剤を塗布する例について説明したが、EL基板11に封止剤を塗布しても良い。
【0114】
<硬化開始>
封止剤210,220に対してUV光を照射して硬化反応を開始させる。
【0115】
この封止剤210,220に対するUV照射は、
図5(b)に示すように封止剤210,220をCF基板12上に塗布し終わってから行ってもよいし、封止剤210,封止剤220を滴下しながら行ってもよい、
通常、封止剤210,220にUV光を照射すると、封止剤210,220において硬化反応が開始される。ただし、硬化反応が開始されてから、硬化が進行するまでには遅延時間がある。
【0116】
ここでは、EL基板11とCF基板12を、封止剤210,220の粘度カーブ(時間と粘度の関係を示す曲線)が急上昇する前に貼り合わせ、EL基板11にCF基板12を貼り合わせた後に、封止剤210,220の硬化が大きく進行し始める。
【0117】
<基板重ね合せ>
上記のように第1封止剤210及び第2封止剤220の塗布及び硬化反応を開始した後、
図5(c)に示すように、EL基板11とCF基板12との、位置合わせを行い、重ね合わせる。
【0118】
ここで、UV照射開始から貼合までの時間を、第1封止剤210と第2封止剤220のうちいずれかが、可使時間(封止剤の粘度がUV光照射を行う前の粘度の2倍になるまでの時間)の30%以上に設定する。且つ、UV照射開始から貼合までの時間を、第1封止剤及び第2封止剤の可使時間の60%以下に設定する(すなわち、第1封止剤及び第2封止剤の可使時間の中で、短い方の60%以下に設定する。)。
【0119】
この基板重ね合せは、真空チャンバー(例えば、10Pa以下)の中で行う。
【0120】
このときEL基板11とCF基板12との間隙を所定距離に規定するために、基板間にスペーサを介在させておくことが好ましい。また、EL基板11、CF基板12の双方にアラインメントマークを予め形成しておくことで、2つの基板の位置合わせを正確に行うこともできる。位置合わせを終えてから真空引きを行ってもよい。
【0121】
次に、第1封止剤210及び第2封止剤220を押し潰すように、EL基板11とCF基板12とを、メカプレスなどで押圧する。
【0122】
第2封止剤220はEL基板11とCF基板12との間を広がって、隙間がなくなるように充填される。
【0123】
この際、比較的粘度の大きい第1封止剤210が第2封止剤220の周りに枠状に存在するので、第2封止剤220が外に流出するのが防止される。
【0124】
この押圧に伴って、EL基板11とCF基板12との間隙には、第1封止剤210及び第2封止剤220が充填され、且つ、第1封止剤210によって囲まれた中に第2封止剤220が閉じ込められる。
【0125】
続いて、真空容器内に窒素を導入して、真空から大気圧に戻すと、EL基板11とCF基板12は、均等な力(大気圧と真空との差圧)で押圧される。それに伴って、第2封止剤220は、第1封止剤210の内側の領域全体に拡がり、さらに、第1封止剤210と第2封止剤220は、両者の界面で互いに押し合うので、第1封止剤210と第2封止剤220が界面付近で互いに入り組んだ形態になる。
【0126】
ここで、第2封止剤220の粘度は、第1封止剤210の粘度よりも低いので、第2封止剤220が第1封止剤210に侵入して樹枝状部が形成される。
【0127】
EL基板11とCF基板12と間隙を所定の距離(例えば20μm)に規定した状態で放置して、第1封止剤210及び第2封止剤220の硬化反応を進行させる。
【0128】
第1封止剤210、第2封止剤220が硬化すると、
図5(d)のように、第1封止部21,第2封止部22が形成され、貼り合わせが完了する。
【0129】
第1封止部21と第2封止部22との界面24近傍において上記の入り組んだ形態が残り、第1封止部21には樹枝状部23が形成される。
【0131】
(表示パネル10による効果)
本実施の形態では、第1封止部21と、第1封止部21の内側に形成された第2封止部220とを有する表示パネル10において、第2封止部の一部が分岐しながら延伸して、第1封止部の内部に侵入した樹枝状部を有している。樹枝状部を有することで、第1封止部21と第2封止部22との接合強度を向上させ、第1封止部と第2封止部との間に樹枝状部がない封止樹脂層と比較して、封止樹脂層の強度を向上させることができる。また、樹枝状部によって、第1封止部21と第2封止部22の間にかかった応力を分散させることができる。
【0132】
これにより、例えば表示パネルに応力が働いた場合にも、第1封止剤と第2封止剤との間に剥がれが生じにくく、封止樹脂層の封止性の劣化を抑制することができる。よって、表示パネルの寿命の劣化を抑制することができる。
【0133】
表示パネルに応力が生じるケースの一例として、以下のケースが考えられる。
【0134】
ここで、第1封止剤と第2封止剤の界面に剥がれが生じると、第1封止剤と第2封止剤の間に空隙が発生する場合がある。
【0135】
第1封止部と第2封止部との界面において空隙が生じると、その空隙内は貼り合わせ時の環境と同じ減圧状態となっているのに対して、パネル外部は大気圧であるため、減圧状態の空隙部分に応力が発生する。
【0136】
なお、一例として、第1封止剤と第2封止剤の間に空隙が発生した場合に、第1封止剤と第2封止剤の間に応力がかかるケースについて説明したが、応力が発生するケースはこの例に限られず、表示パネルが撓むことによって発生する場合もある。
【0137】
第1封止剤210と第2封止剤220の材料が違う場合は、第1封止部21と第2封止部22の間に比較的応力がかかりやすい。例えば、樹脂の線膨張係数や熱膨張量が、硬化収縮度の違いなどにより、パネル完成後に第1封止部21と第2封止部22との間の界面に応力がかかりやすい状態になる。
【0138】
また、基板にたわみが生じた場合にも、同様にパネルが完成した後は、第1封止剤と第2封止剤の間に気泡が残っている場合、気泡は真空状態になっており、常にパネルの外部から大気圧がかかった状態になっているため、パネルには常に応力がかかり続けた状態になりやすい。
【0139】
また、第1封止剤と第2封止剤の弾性率が異なる場合は、圧力がかかった場合の変形量が異なるため、この応力により第1封止剤と第2封止剤間の剥がれが生じる可能性がある。
【0140】
これに対して、上記態様の表示装置においては、第2封止部の一部が分岐しながら延伸して、第1封止部の内部に侵入した樹枝状部を有し、第1封止部の中に、第2封止部の材料による樹枝状部が侵入して形成されている。すなわち、第1封止部と第2封止部とは、界面付近で相互に入り組んでいるので、アンカー効果によって第1封止部と第2封止部との接合強度は高められる。従って、封止樹脂層の封止性低下を抑制することができる。
【0141】
より詳細には、第1封止部と第2封止部との間で結合強度が高められることにより、例えば硬化時における両者間の収縮度の違いによって基板側に加わる応力による基板ひずみを抑制することが出来る。従って、第1封止部と第2封止部との間に空隙が発生しにくくすることができる。
【0142】
また、第1封止部と第2封止部の接合面積が大きくなるので、表示パネルにかかる応力をより効果的に分散させることが出来る。
【0143】
なお、樹枝状部が第1封止部21の外周にまで到達している場合には、第1封止部と樹枝状部の界面を介して、第2封止剤220が第1封止剤210よりも封止性が劣る材料を使用している場合には第2封止部22を介して、外部の水分、気体等が、発光素子が形成された領域へ入りこむ恐れがある。
【0144】
本実施の形態において、樹枝状部の先端(最外周端部)は、第1封止部の外周よりも内側に位置している。そのため、そのため、外部(第1封止部の外周側領域)から、発光領域へ水分や酸素を侵入しにくくすることができる。
【0145】
図6は、実際に形成された樹枝状部23を示す写真、及び樹枝状部23の形状を表すイラストである。当図において、第1封止部21の内部に、第2封止部22の一部が入り込んで樹枝状部23が形成されている。すなわち、第1封止部21と第2封止部22とは、両者の界面付近で互いに入り組んだ形態となっている。
【0146】
図6において、樹枝状部23の根元側は図面の下方にある。また、
図6における上方が表示パネル10の外周側である。
【0147】
当図に示されるように、樹枝状部23は全体的に表示パネル10の外側に向かって延伸し、また、樹枝状部23の途中で枝分かれした枝部も外側方向に向かって伸びている。
【0148】
なお、樹枝状部23の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば表示パネルの大型化が進んだ場合にも密着性向上効果を得る上で、樹枝状部23が第1封止部21に第1封止部の厚みの10%以上侵入していることが好ましい。
【0149】
さらに、樹枝状部23は第1封止部21の幅の半分以上まで侵入していることが好ましい。例えば、第1封止部21の幅が1mmの場合、樹枝状部23は当該幅方向に0.5mm以上伸びていることが好ましい。
【0150】
一方、樹枝状部23の先端は第1封止部21の外周までは到達しないことが望ましい。これは先端が第1封止部21の外周まで到達すると、第1封止部21が樹枝状部23で突き破られて第1封止部21が決壊し、本来の第1封止部21による封止性が損なわれるためである。
【0151】
図6においては、樹枝状部23が第1封止部21の内部に侵入しているが、第1封止部21の外周まで到達していない。従って、第1封止部21は決壊せず、第1封止部21による封止性能が保たれることがわかる。
【0152】
なお、本実施の形態では、第2封止部22に第1封止部よりも弾性率が大きく、シール性に優れた物質を使用した。第2封止部22に第1封止部21と同じ材料を使用する場合と比べると、封止層の封止性を向上することができる。
【0153】
(上記製造方法による効果)
UV光を封止剤に照射して硬化を開始させる工程を、貼り合わせ工程の前に行っているので、基板上に塗布された封止剤にUV光を直接照射することができる。
【0154】
また上記のように、UV光(UV光以外にも封止剤を硬化させるエネルギーを付与するものであればよい)を照射する工程から貼合工程までの時間を、第1封止剤210と第2封止剤220のいずれかの可使時間の17%より大きく設定し、且つ、第1封止剤210及び第2封止剤220の可使時間の60%以下に設定している。
【0155】
これによって、貼合工程後において、第1封止部21と第2封止部22の間に空隙ができるのが抑えられると共に、第2封止部の一部が分岐しながら延伸して第1封止部に侵入し、その先端が第1封止部の外周よりも内側に位置する樹枝状部を形成することができる。
【0156】
また、第1封止剤210と第2封止剤220のいずれかの可使時間の30%以上に設定することで、第1封止部21が2重の枠状部材で形成されている場合に、内周側の枠上部材の外周よりも、樹枝上部の先端が内側に位置することにより、封止樹枝層の封止性を良好に保つことが出来る。
【0157】
第1封止部21が決壊することなく樹枝状部23が形成する条件については、下記実験によって裏付けられる。
【0158】
[実験1]
第1封止剤(シール剤)210,第2封止剤(充填剤)220の可使時間、UV照射から貼り合せまでの時間を変えながら、2枚の透明な基板を貼り合わせて試験用のパネルを作製した。
【0159】
すなわち、第1封止剤210と第2封止剤220として、可使時間が共に30分であるUV硬化性のエポキシ樹脂を用いて、UV光を照射してから素子基板と対向基板を貼り合せるまでの時間を、5分(可使時間の17%)、9分(可使時間の30%)、18分(可使時間の60%)、21分(可使時間の70%)に変えて行った。
【0160】
ここで、「可使時間」とは、樹脂を硬化させるための硬化エネルギーを樹脂に与えてから、樹脂の粘度が硬化エネルギーを付与する前の粘度の2倍に到達するまでの時間とする。上記「硬化エネルギー」は、ここではUV光である。使用する樹脂が熱硬化型の場合は熱となる。
【0161】
なお、この実験において、用いた基板の厚みは0.5mmである。基板の厚みが0.5〜0.7mmであってもよい。
【0162】
第1封止剤(シール剤)は、断面積15000um
2となるように塗布し、第2封止剤(充填剤)の塗布量は56mm
3/インチとした。
【0163】
第1封止剤210は2重の枠状に塗布し、内枠部と外枠部との間隔は2mm程度とした。
【0164】
UV照射は、光源としてメタルハライドランプを用い、基板温度を50℃以下に保ちながら行った。
【0165】
作製された各パネルにおいて、上記
図4(b)〜(d)に示したように、内周側の内枠部21aと、外周側の外枠部21b枠が形成された。各パネルについて、第1封止部21と第2封止部22の界面付近の形状を観察した。
【0166】
図7,8は、各パネルにおいて、第1封止部21と第2封止部22との界面付近を観察したときの写真であって、
図7(a),(b)は可使時間の17%で貼り合わせたもの、
図7(c),(d)は可使時間の30%で貼り合わせたもの、
図8(a),(b)は可使時間の60%で貼り合わせたもの、
図8(c),(d)は可使時間の70%で貼り合わせたものである。
【0167】
図7(a),(b)に示す結果では、第2封止部22の材料が内枠部21aの外にはみ出し、さらに外枠部21bの外側へはみ出しかかっていて、第1封止部21が決壊しかかっている。したがって、1封止剤と第2封止剤のうちいずれかの、可使時間の17%を経過した後に、基板を貼り合わせる必要があることがわかる。
【0168】
これは、第1封止剤210の硬化反応があまり進んでおらず、第1封止剤210の粘度が低い状態で貼り合せたためと考察される。
【0169】
なお、貼り合わせまでの間隔がさらに短い場合には、単に第1封止部の樹脂材料と第2封止部の樹脂材料が混ざり合った(相溶)状態になるのみで、樹枝形状が観察できなかった。
【0170】
図7(c),(d)、
図8(a),(b)に示す結果では、第1封止部21は決壊することなく、第1封止部21の内部に第2封止部22の一部が入り込んで樹枝状部23が形成されている。従って評価結果は良好である。
【0171】
図8(c),(d)に示す結果では、内枠部21aに樹枝状部23が形成されていない。これは、貼り合わせ時までに第1封止剤210の硬化反応が進んでしまったためと考えられる。
【0172】
なお、第1封止剤210と第2封止剤220の可使時間が共に30分である場合を示したが、第1封止剤と第2封止剤の可使時間が、例えば、共に10分、共に20分の場合も、同様の結果が得られた。すなわち、(第1封止剤の可使時間、第2封止剤の可使時間)=(10分、10分)、(20分、20分)、(30分、30分)の場合、UV照射後に第1封止剤と第2封止剤の可使時間の30〜60%の間に基板を貼り合せると、決壊せずに樹枝状部が形成されることがわかった。
【0173】
以上の検討結果から、第1封止剤と第2封止剤の可使時間が同等である場合、第1封止部21が決壊せずに樹枝状部23が形成される条件は、UV照射後に、第1封止剤及び第2封止剤の可使時間の30〜60%の間に基板を貼り合せることであると考察される。
【0174】
次に、第1封止剤と第2封止剤の可使時間が異なる場合について検討する。
【0175】
一般的に、第1封止剤(DAM)の役割は第2封止剤を塞ぎ止めることである。特に第2封止剤は第1封止剤よりも液体に近い(粘度が低い)材料が選択される場合には、第1封止剤により第2封止剤を塞ぎとめる必要がある。また、第2封止剤は画素領域全体に十分に行き渡る必要がある。そのため、第1封止剤の可使時間が第2封止剤の可使時間以下となるように設定することが好ましい。
【0176】
その点を踏まえて、第1封止剤よりも第2封止剤の可使時間が短い場合について、可使時間に対する貼り合わせ時間と、樹枝状部の形成との関係について検討した。
【0177】
具体的に、可使時間が10分の第1封止剤と可使時間が30分の第2封止剤を用いて、UV照射から貼り合わせまでの時間を5分、8分、10分、12分の各時間に設定して、樹枝状部が形成されているか否かを観察した。
【0178】
図9、
図10は、その結果であって、
図9(a)は、5分(第1封止剤の可使時間の50%、第2封止剤の可使時間の17%)経過後に貼り合わせた場合、
図9(b),(c)は、8分(第1封止剤の可使時間の80%、第2封止剤の可使時間の27%)経過後に貼り合わせた場合、
図10(a),(b)は、10分(第1封止剤の可使時間の100%、第2封止剤の可使時間の33%)経過後に貼り合わせた場合、
図10(c),(d)は、12分(第1封止剤の可使時間の120%、第2封止剤の可使時間の40%)経過後に貼り合わせた場合を示す。
【0179】
尚、周辺雰囲気の露点が異なる場合、例えば、大気とN
2雰囲気下では、大気中の水や酸素により粘度の上昇速度が異なることがある。そのため、粘度測定とパネル貼り合わせ時の周辺雰囲気を同一として検討することが好ましい。
【0180】
図9(a)では樹枝状部が形成されているが、
図9(b),(c)、
図10(a)〜(d)では、樹枝状部が形成されていない。
【0181】
すなわち、第1封止剤の可使時間の50%経過後に貼り合わせたものは樹枝状部が形成され、第1封止剤の可使時間の80%以上経過後に貼り合わせたものは樹枝状部が形成されていない。
【0182】
以上の結果から、第1封止剤及び第2封止剤の中、可使時間のより短い第1封止剤の可使時間の60%以下までに貼り合わせれば樹枝状部が形成され、第1封止剤の可使時間の80%以上経過後に貼り合わせると樹枝状部が形成されないと考察される。
【0183】
すなわち、第1封止剤及び第2封止剤の中、可使時間のより短い方の封止剤の硬化があまり進行していないときに貼り合わせを行えば樹枝状部が形成されると考察される。従って、第2封止剤の方が第1封止剤よりも可使時間が短い場合には、第2封止剤の可使時間の60%以下で貼り合わせれば樹枝状部が形成されると考えられる。
【0184】
遅延硬化樹脂を封止剤に使用する場合、一般的に、第2封止剤が第1封止剤を突き破って外周側に流れ出てしまうことによる封止性の劣化を防止するために、可使時間近辺で基板の貼り合せを行うことが好ましいと考えられている。しかし、可使時間付近に基板の貼りあわせを行い、第1封止剤と第2封止剤を接触させると上述のように第1封止剤の内部に樹枝状部は形成されない。そこで、本実施形態においては、UV光を樹脂材料に照射後、第1封止剤と第2封止剤のうち可使時間が短いほうの樹脂材料の可使時間に対して60%が経過する前に2枚の基板の貼り合わせを行っている。
【0185】
次に、第1封止剤と第2封止剤の可使時間が異なる場合に、第1封止部に決壊が生じる条件について考察すると、第1封止剤と第2封止剤のうちいずれか一方の硬化がある程度進行していれば決壊は生じないと考えられる。
【0186】
また、上記のように、第1封止剤と第2封止剤の可使時間が同じ場合には、第1封止剤及び第2封止剤の可使時間の30%以上経過後に貼り合わせを行えば決壊が生じないので、第1封止剤と第2封止剤のうち、いずれか一方が可使時間の30%以上経過した後に貼り合せを行えば決壊は生じないと考察される。
【0187】
すなわち、第1封止剤と第2封止剤のうち、可使時間が短い方の封止剤を基準とし、その可使時間の30%以上経過してから貼り合わせれば決壊が生じないと考察される。
【0188】
具体的には、第1封止剤の方が第2封止剤よりも可使時間が短い場合、例えば、第1封止剤と第2封止剤の可使時間の組み合わせが、(第1封止剤の可使時間、第2封止剤の可使時間)=(10分,30分)、(10分,20分)、(20分、30分)等のケースでは、第1封止剤の可使時間の30%以上で貼り合わせれば決壊が生じないと考察され、一方、第1封止剤よりも第2封止剤の可使時間が短い場合も同様であって、第1封止剤と第2封止剤の可使時間の組み合わせが、(30分,10分)、(20分,10分)、(30分,20分)等のケースでは、第2封止剤の可使時間の30%以上で貼り合わせれば決壊が生じないと考察される。
【0189】
以上の考察は、下記の実験2によっても裏付けられる。
【0190】
[実験2]
可使時間が10分,20分,30分の第1封止剤と、可使時間が10分,20分,30分の第2封止剤とを組み合わせて8水準の組み合わせについて、封止剤にUV光を照射してから貼り合わせるまでの時間を5分に固定して貼り合わせを行い、貼り合わせ後の第1封止剤と第2封止剤の界面付近の状態を観察した。
【0191】
その他の実験条件は、上記実験1と同様である。
【0192】
図11〜14に、観察された第1封止部と第2封止部の状態を示している。
【0194】
水準1〜3は、第1封止剤の可使時間と第2封止剤の可使時間が同等の組み合わせ、水準4〜6は、第1封止剤の可使時間が第2封止剤の可使時間より短い組み合わせ、水準7〜8は、第2封止剤の可使時間が第1封止剤の可使時間より短い組み合わせである。
【0195】
なお、( )内の%は、可使時間に対する貼り合わせまでの時間の割合を示す。
【0196】
水準1:第1封止剤の可使時間10分(50%)、第2封止剤の可使時間10分(50%)。
【0197】
図11(a)に示されるように、樹枝状部が形成され、第1封止部21に決壊は見られない。
【0198】
水準2:第1封止剤の可使時間20分(25%),第2封止剤220の可使時間20分(25%)。
【0199】
図11(b)に示されるように、樹枝状部23が形成されるが、第2封止部22の材料が内枠部21aを貫通して、内枠部21aに決壊が発生している。
【0200】
水準3:第1封止剤の可使時間30分(17%),第2封止剤の可使時間30分(17%)
図12(a)に示すように、樹枝状部23が形成されるが、第2封止剤が、内枠部21a、さらに、外枠部21bを貫通して決壊しかけている。
【0201】
水準4:第1封止剤の可使時間10分(50%),第2封止剤の可使時間20分(25%)。
【0202】
図12(b)に示すように、樹枝状部23が形成され、内枠部21aに決壊は見られない。
【0203】
水準5:第1封止剤の可使時間10分(50%),第2封止剤の可使時間30分(17%)。
【0204】
図9(a)に示されるように、樹枝状部23が形成され、内枠部21aに決壊は見られない。
【0205】
水準6:第1封止剤の可使時間20分(25%),第2封止剤の可使時間30分(17%)。
【0206】
図13(a)に示されるように、樹枝状部23が形成されているが、第2封止剤が内枠部21aを貫通して内枠部21aが決壊し、外枠部21bに樹枝状部23が侵入している。
【0207】
水準7:第1封止剤の可使時間20分(25%),第2封止剤の可使時間10分(50%)。
【0208】
図13(b)に示されるように樹枝状部23が形成され、内枠部21aに決壊は見られない。
【0209】
水準8:第1封止剤の可使時間30分(17%),第2封止剤の可使時間10分(50%)。
【0210】
図14に示されるように樹枝状部23が形成され、内枠部21aに決壊は見られない。
【0211】
なお、水準9として、第1封止剤の可使時間30分(17%),第2封止剤の可使時間20分(25%)の組み合わせも考えられる。
【0212】
この組み合わせは、上記水準2と比べて第1封止剤の可使時間がより長くなっている組み合わせであり、上記水準2において決壊が発生しているので、内枠部21aに決壊が発生すると考えられる。
【0213】
表1は、第1封止剤の可使時間と第2封止剤の可使時間の組み合わせと、貼り合わせ後における第1封止部と第2封止部の状態を観察した結果をまとめた表である。
【0215】
水準1〜水準9の検証及び考察から、UV照射から貼り合わせまでの時間が、可使時間が短い方の封止剤の可使時間の25%以下のもの(水準2,3,6,9)は、内枠部21aに決壊が発生している。また、可使時間が短い方の封止剤の可使時間の50%のもの(水準1,4,5,7,8)は、内枠部21aに決壊が生じること無く樹枝状部が形成されていることが分かる。
【0216】
以上の実験1,実験2の結果及び考察から、樹枝状部を形成可能な条件及び決壊が生じない条件は、第1封止剤及び第2封止剤の可使時間の中、短い方によって支配されることがわかる。
【0217】
すなわち、第1封止剤及び第2封止剤の中、短い方の可使時間に対して30%〜60%経過後に貼り合わせれば、樹枝状部が形成され且つ第1封止部に決壊が生じにくいことがわかる。
【0218】
表2に、上記各水準において、封止剤を用いた場合に、第1封止部が決壊することなく樹枝状部が形成されるような時間(UV照射後から貼り合わせまでの時間)範囲を示す。
【0220】
この時間範囲は、第1封止剤及び第2封止剤の中、可使時間が短い方の封止剤の可使時間の30〜60%に相当する。
【0221】
<変形例など>
上記製法においては、第1封止剤及び第2封止剤にUV照射をすることによって硬化を開示したが、第1封止剤及び第2封止剤に熱硬化型の樹脂を用いて、熱を加えることにより硬化を開始するようにしてもよい。
【0222】
また、上記の実施の形態では、第1封止剤と第2封止剤のそれぞれの材料が異なる例について示したが、第1封止剤と第2封止剤は主成分が同じ材料であってもよい。
【0223】
また、第1封止剤と第2封止剤は、主成分が同じであり、主成分以外の材料が異なっていてもよい。含有する第1封止剤と第2封止剤量は、いずれも主成分が同じ樹脂材料であり、遅延硬化剤の量が異なるものであってもよい。また、第1封止剤と第2封止剤は、主成分が同じ樹脂材料であり、含有する無機材料の種類、及び量が異なっていてもよい。
【0224】
また、表示パネル10は、トップエミッション型に限られず、ボトムエミッション型であっても同様に実施可能である。駆動制御部100についても、
図1に示した形態は一例であってこれに限られない。
【0225】
上記実施の形態では、有機EL表示装置に適用した例を示したが、本発明は、有機EL表示装置に限られることはなく、無機EL表示装置など、発光素子が封止樹脂層で封止された表示装置に適用可能である。