【実施例】
【0014】
以下に、自動車用樹脂部品にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の自動車用樹脂部品1は、
図1〜
図3に示すごとく、本体部2と本体部2から曲折して形成されたフランジ部3とを有している。本体部2とフランジ部3とが山状に折れ曲がった側である意匠表面101には、金属メッキ層4が形成されている。フランジ部3において意匠表面101とは反対側の裏面102には、自動車の衝突時に頭部等からの衝撃が加わった時に生じる亀裂の起点となるための起点切込溝31が形成されている。起点切込溝31は、
図4に示すごとく、本体部2とフランジ部3との延設方向Lにおける複数箇所において、延設方向Lに直交して形成されている。
【0015】
以下に、本例の自動車用樹脂部品1につき、
図1〜
図8を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例の自動車用樹脂部品1は、車室内への空調エアの吹出口51に設けられるベゼル1である。ベゼル1は、延設方向Lに延びる本体部2及びフランジ部3が1つに繋がって枠形状に形成されている。また、本例のベゼル1は、車室内の前方に配設されたインストルメントパネル5において、助手席の窓側における空調エアの吹出口51に設けられるものである。このベゼル1が設けられたインストルメントパネル5の周辺には、剛性が高い部位が存在せず、このベゼル1には、自動車の衝突時に助手席に着座する乗員の頭部が衝突して亀裂・割れが生じるおそれがある。そして、自動車の衝突時にインストルメントパネル5に衝突する乗員の頭部を模型により擬似的に再現し、この模型が衝突する際に、ベゼル1に割れが発生しないかの衝撃試験を行って、ベゼル1に要求される性能を評価している。
【0016】
図1、
図2に示すごとく、枠形状のベゼル1の内周側に形成された開口部10には、空調エアの吹出方向を決定する開閉角度を変更可能な複数枚のフィン15が配置される。枠形状のベゼル1において、フランジ部3は、枠形状の本体部2に対する内周側の全周に形成されている。フランジ部3は、開口部10の縁部の全周において、本体部2の意匠表面101側から裏面102側に向けて起立するように設けられている。
【0017】
図5、
図6に示すごとく、本例の金属メッキ層4は、枠形状のベゼル1における意匠表面101及び裏面102の全体に形成されている。金属メッキ層4は、クロム、ニッケル、パラジウム、コバルト等の金属をメッキ処理して形成することができる。また、金属メッキ層4は、メッキ処理を行う前のベゼル基材を、溶融されたメッキ用金属が貯蔵される槽内に浸漬させ、ベゼル基材の意匠表面101及び裏面102の全体にメッキ用金属を付着させた後に引き上げ、所定時間乾燥させて形成することができる。
なお、メッキ用金属をベゼル基材の意匠表面101に噴射することによって、意匠表面101にのみ金属メッキ層4を形成することもできる。
【0018】
図2に示すごとく、ベゼル1は、略四角の枠形状に形成されており、本例の複数箇所の起点切込溝31は、枠形状のベゼル1における上枠部11のフランジ部3の裏面102、及び車幅方向中央側の側枠部12のフランジ部3の裏面102に形成されている。起点切込溝31は、上枠部11の延設方向Lに並ぶ4箇所及び車幅方向中央側の側枠部12の延設方向Lに並ぶ3箇所に形成されている。枠形状のベゼル1における車幅方向中央側の側枠部12の幅は、他の上枠部11、側枠部13及び下枠部14の幅よりも大きくなっている。
【0019】
図4〜
図7に示すごとく、複数箇所の起点切込溝31は、フランジ部3における裏面102として、フランジ部3における外周側の表面に、フランジ部3の起立方向に沿って形成されている。各起点切込溝31は、略V形状の断面の溝を裏面102から切り込むことによって形成されている。各起点切込溝31は、フランジ部3の厚みに対して20〜40%の深さで形成されている。また、フランジ部3の厚みは本体部2の厚みよりも薄くなっている。
【0020】
図2、
図5、
図6に示すごとく、本例の枠形状のベゼル1において、本体部2とフランジ部3との境界部分の一部には、複数箇所の起点切込溝31の形成箇所の全体に亘って延設方向Lに連続し、起点切込溝31に生じた亀裂の伸展を妨げるための長尺切込溝32が形成されている。
本例の長尺切込溝32は、複数箇所に起点切込溝31が形成された上枠部11及び車幅方向中央側の側枠部12において、本体部2とフランジ部3との境界部分に連続して形成されている。長尺切込溝32は、フランジ部3の高さが高くなるように、本体部2の基端部分の樹脂素材を削り取るようにして形成されている。この削り取られた樹脂素材を、
図5、
図6において二点鎖線Xによって示す。そして、フランジ部3の基端部と本体部2の基端部との境界部分において、フランジ部3の厚みに対して本体部2の厚みが急激に変化していることにより、起点切込溝31に生じた亀裂が本体部2へ伸展することを防止することができる。長尺切込溝32の形成により、衝撃試験においてインパクタが衝突する部位(乗員の頭部が接触する部位)である、上枠部11及び車幅方向中央側の側枠部12の本体部2に、亀裂又は割れが生じることを防止することができる。
【0021】
また、
図2、
図3に示すごとく、本体部2の裏面102には、ベゼル1をインストルメントパネル5に設けられた、空調エアの吹出口51の周辺に取り付けるための取付部21,22が複数設けられている。取付部21,22は、吹出口51に対するベゼル1の位置を決めるための位置決め用突起21、吹出口51の周辺に係止するための係止部22として形成されている。
【0022】
本例のベゼル1においては、本体部2とフランジ部3との意匠表面101及び裏面102の全体に金属メッキ層4が形成されている。これにより、ベゼル1の外観意匠性及び剛性を高めることができる。
そして、剛性が高くなり亀裂・割れが生じやすくなったことへの対策として、フランジ部3の裏面102に、枠形状のベゼル1における上枠部11及び側枠部12に位置するフランジ部3の裏面102の複数箇所に起点切込溝31を形成している。また、本体部2とフランジ部3との境界部分の裏面102においては、起点切込溝31を形成した箇所に対応して長尺切込溝32を形成している。
【0023】
起点切込溝31が形成されたフランジ部3の部分は、他のフランジ部3の部分に比べて厚みが薄く、剛性が低くなっている。これにより、自動車の衝突時等において、乗員の頭部等によってベゼル1に衝突荷重が加わるときには、複数箇所の起点切込溝31に意図的に応力の集中箇所を形成することができる。そのため、ベゼル1に生じる応力集中を分散させることができ、ベゼル1がたわみやすくして、亀裂・割れが生じにくくすることができる。
【0024】
また、ベゼル1に亀裂・割れが生じにくくする一方、所定値以上の荷重が加わる場合には、少なくともいずれかの起点切込溝31において、亀裂を意図的に生じさせることができる。このとき、複数箇所の起点切込溝31に応力の集中箇所が分散されていることにより、フランジ部3の裏面102における起点切込溝31に生じた亀裂が、本体部2の意匠表面101まで到達しにくくすることができる。
また、起点切込溝31に生じた亀裂の伸展を長尺切込溝32によって食い止め、この亀裂が本体部2へ伸展することを防止することもできる。そのため、フランジ部3に亀裂が生じたときでも、本体部2の意匠表面101を亀裂のない良好な状態に保つようにすることができる。
それ故、本例のベゼル1によれば、剛性を高めるとともに、亀裂の発生及び発生した亀裂の伸展を効果的に抑制することができる。
【0025】
自動車用樹脂部品としてのベゼル1におけるフランジ部3は、本体部2から曲折して形成される以外にも、
図8に示すごとく、本体部2から突起して形成されていてもよい。この場合、本体部2の外周側部分23がフランジ部3よりも外周側に突出した形状となる。この場合においても、フランジ部3の裏面102における適宜箇所に起点切込溝31を形成し、本体部2とフランジ部3との境界部分の適宜箇所に長尺切込溝32を形成することにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
また、自動車用樹脂部品をドアサイドモール等とした場合には、本体部2及びフランジ部3は長尺状に延びて形成されることになる。