(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極体は、前記正極及び前記負極と、前記セパレータとが積層され、かつ、捲回されることにより成り、前記正極及び前記負極と前記セパレータとが平面で積層されている平面部と、曲面で積層されている曲面部とが形成されており、
前記スペーサは、前記曲面部と前記容器との間に配置され、前記電極体が充放電により前記スペーサが位置している空間に膨張した場合に、膨張した前記電極体を受けることで前記電極体の膨張に伴って変形する
請求項1から9のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなスペーサでは、電極体の捲回軸方向のすべての領域において、電極体の曲面に沿った形状であるため、二次電池などの蓄電素子が充放電を繰り返すことによって起こる膨張を許容することができないという問題が生じる恐れがある。このように電極体が膨張することにより電極体が容器から圧迫されるため、電極体を構成するセパレータの目つぶれが起こり、電池の内部抵抗が上昇するなどして、電池性能が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、容器と電極体との間にスペーサを備える蓄電素子において、電極体が容器の内部で振動することを防ぎ、かつ、電極体が膨張することによる蓄電素子の性能低下が起こらないようなスペーサを備える蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る蓄電素子は、正極及び負極と、セパレータとが積層される電極体と、前記電極体を収容する容器と、前記電極体と前記容器との間に配置されるスペーサとを備え、前記スペーサは、前記容器に収容された状態において前記電極体により押圧された場合に、前記容器と共に形成する空間を小さくするように変形する。
【0007】
これによれば、スペーサが電極体から押圧された場合に、スペーサが押圧されたことによりその一部が移動するための空間が、容器とスペーサとの間に形成されている。このため、電極体が例えば充放電を繰り返すことにより膨張してスペーサを押圧した場合に、スペーサの一部は、スペーサと容器との間に形成されている空間に向けて移動できる。このように、電極体が膨張したとしてもスペーサの一部が移動できる空間が形成されているため、スペーサは、電極体の膨張を吸収することができる。よって、電極体が過度に圧迫されることにより、蓄電素子の性能が低下することを防ぐことができる。
【0008】
また、前記スペーサは、前記容器の内面と対向する第一面が、前記電極体側に向けて凹んでいてもよい。
【0009】
これによれば、スペーサは、容器の内面と対向する第一面が、電極体側に凸であるため、電極体とは反対側において容器の内面と共に空間を形成することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る蓄電素子は、正極及び負極と、セパレータとが積層される電極体と、前記電極体を収容する容器と、前記電極体と前記容器との間に配置されるスペーサとを備え、前記スペーサは、前記容器の内面と対向する第一面が、前記電極体側に向けて凹んでいてもよい。
【0011】
これによれば、スペーサは、容器の内面と対向する第一面が、電極体側に凸であるため、電極体とは反対側において容器の内面と共に空間を形成することができる。つまり、スペーサが電極体から押圧された場合に、スペーサが押圧されたことによりその一部が移動するための空間が、容器とスペーサとの間に形成されている。このため、電極体が例えば充放電を繰り返すことにより膨張してスペーサを押圧した場合に、スペーサの一部は、スペーサと容器との間に形成されている空間に移動できる。このように、電極体が膨張したとしてもスペーサの一部が移動できる空間が形成されているため、スペーサは、電極体の膨張を吸収することができる。よって、電極体が過度に圧迫されることにより、蓄電素子の性能が低下することを防ぐことができる。
【0012】
また、前記スペーサは、押圧方向に交差する方向において、中央部の厚みの方が両端部の厚みよりも薄くてもよい。
【0013】
これによれば、スペーサは、押圧方向に交差する方向において、中央部の厚みが両端部の厚みよりも薄いため、中央部がたわみやすい構造となっている。このため、短手方向の中央部は、電極体が膨張した場合に、電極体とは反対側に形成される空間に移動しやすい。
【0014】
また、前記スペーサは、前記容器の内面と対向する第一面と、前記電極体と対向する第二面とが対称であってもよい。
【0015】
これによれば、スペーサは、容器の内面と対向する第一面と、第一面の反対側の第二面とが対称であるため、第一面と第二面とが反対になっても、電極体及び容器との関係は変わらない。このため、蓄電素子を組み立てる工程において、スペーサの電極体との並び方向の向きを気にしなくても良いため、組立効率を向上させることができる。
【0016】
また、前記スペーサは、長尺形状であり、短手方向における一端側の第三面と、他端側の第四面とが対称であってもよい。
【0017】
これによれば、スペーサは、短手方向における一端側の第三面と、他端側の第四面とが対称であるため、電極体の短手方向の両端に対して、例えば接触する位置関係が同様の関係となる。このため、電極体とスペーサとの間の応力を均一にすることができ、電極体の性能が極端に悪化する部位が生じることを防ぐことができる。
【0018】
また、前記スペーサは、前記容器の内面と対向する第一面と、前記電極体と対向する第二面とが曲面により接続されてもよい。
【0019】
これによれば、スペーサは、短手方向の両端が曲面により形成されている。このため、スペーサを容易に製造することができる。また、容器、電極体、及びスペーサを組み立てる際に、電極体を傷つけることを防ぐことができる。
【0020】
また、前記スペーサは、前記容器に収容された状態において前記電極体により押圧された場合に、前記容器と共に形成する空間を小さくするように弾性変形してもよい。
【0021】
これによれば、スペーサは電極体に押圧されることにより弾性変形するため、電極体からの押圧が解消されれば元の形状に戻る。つまり、スペーサは、電極体から押圧を受けている場合には、電極体に対して押圧している。したがって、電極体が充放電を繰り返すことにより膨張及び収縮を繰り返す場合に、スペーサは、電極体の膨張及び収縮に対して追従できる。このため、スペーサは、電極体が膨張と吸収を繰り返す場合であっても、電極体が容器の内部で振動することを防ぐことができる。
【0022】
また、前記電極体は、前記正極及び前記負極と、前記セパレータとが積層され、かつ、捲回されることにより成り、前記正極及び前記負極と前記セパレータとが平面で積層されている平面部と、曲面で積層されている曲面部とが形成されており、前記スペーサは、前記曲面部と前記容器との間に配置され、前記電極体が膨張した場合に、前記電極体の膨張に伴って変形してもよい。
【0023】
これによれば、電極体は捲回型の電極体であり、スペーサは電極体の曲面部にと容器との間に配置される。つまり、スペーサは、電極体の曲面部と対向している。捲回型の電極体では、曲面部も、正極及び負極とセパレータとが積層されているため、平面部と同様に膨張しやすい。スペーサは、曲面部とは反対側に空間を有しているため、電極体の曲面部が膨張しても移動部が空間に移動することができる。これにより、スペーサは、電極体の膨張を吸収することができる。
【0024】
また、前記スペーサは、絶縁体であってもよい。
【0025】
これによれば、スペーサは絶縁体であるため、スペーサが配置されている容器と電極体との間における絶縁を確保することができる。
【0026】
また、さらに、前記電極体の側面を覆う絶縁材を備え、前記スペーサは、前記絶縁材と前記電極体との間に配置されてもよい。
【0027】
これによれば、蓄電素子は、電極体の側面を覆う絶縁材をさらに備えており、スペーサは、電極体と共に絶縁材に覆われる。つまり、スペーサは、絶縁材と電極体との間に挟まれた状態で、電極体に固定される。そして、スペーサが絶縁材と電極体との間で固定された状態で容器に挿入されることで、蓄電素子が構成される。このように、スペーサが絶縁材で電極体に固定されて容器に挿入されるため、容器内でのスペーサの位置ずれを低減しつつ、スペーサを円滑に容器に挿入することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る蓄電素子によれば、電極体が容器の内部で振動することを防ぎ、かつ、電極体が膨張することによる蓄電素子の性能低下が防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子の製造方法について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0031】
まず、蓄電素子10の構成について、説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の容器100を除いた分解斜視図である。つまり、
図2は、蓄電素子10の容器100内方に配置されている構成要素を示す図である。
【0033】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池である。
【0034】
これらの図に示すように、蓄電素子10は、容器100と、容器100の上方に設けられるふた板110と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、容器100内方には、電極体120と、正極集電体130と、負極集電体140と、側面スペーサ150、160と、底面スペーサ170と、絶縁材180とが配置されている。
【0035】
なお、蓄電素子10の容器100の内部には電解液などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。また、蓄電素子10は、非水電解質電池には限定されず、非水電解質電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0036】
容器100は、金属からなる矩形筒状で底を備える容器本体であり、金属製のふた板110で当該容器本体の開口が閉塞されている。つまり、容器100は、電極体120等を内部に収容後、ふた板110と溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、本実施の形態では、容器100の開口とは反対側の面を容器100の底面と定義する。
【0037】
電極体120は、詳細な図示は省略するが、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウム箔からなる長尺帯状の正極基材の表面に正極活物質層が形成されたものである。負極は、銅箔からなる長尺帯状の負極基材の表面に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。そして、電極体120は、負極と正極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように巻き回されて形成されている。
【0038】
さらに詳しくは、上記正極と上記負極は、上記セパレータを介し、長尺帯状の幅方向に互いにずらして、当該幅方向に沿う回転軸を中心に長円形状に捲回されている。そして、上記正極及び上記負極は、それぞれのずらす方向の端縁部を活物質の非形成部とすることにより、捲回軸の一端部には、活物質が形成されていない正極基材であるアルミニウム箔が露出し、捲回軸の他端部には、活物質が形成されていない負極基材である銅箔が露出している。また、電極体120の捲回軸方向の両端部には正極集電体130及び負極集電体140が上記捲回軸方向と垂直方向に延びて配置されている。
【0039】
また、電極体120は、正極及び負極とセパレータとが平面で積層されている平面部と、曲面で積層されている曲面部とが形成されている。そして、電極体120は、容器100の底面に対して曲面部が対向するように、容器100に収容される。
【0040】
ここで、正極活物質としては、LiMPO4、LiMSiO4、LiMBO3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0041】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−ケイ素、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4Ti5O12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0042】
なお、同図では、電極体120の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。
【0043】
正極端子200は、電極体120の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、電極体120の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体120に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体120に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体120の上方に配置されたふた板110に取り付けられている。
【0044】
正極集電体130は、電極体120の正極と容器100の側壁との間に配置され、正極端子200と電極体120の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体130は、電極体120の正極と同様、アルミニウムで形成されている。
【0045】
負極集電体140は、電極体120の負極と容器100の側壁との間に配置され、負極端子300と電極体120の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体140は、電極体120の負極と同様、銅で形成されている。
【0046】
側面スペーサ150、160は、正極集電体130及び負極集電体140と容器100の側壁との間に配置され、正極集電体130及び負極集電体140に沿って延びる長尺状の絶縁性を有する部材である。例えば、側面スペーサ150、160は、ポリプロピレン(PP)などの樹脂である。つまり、側面スペーサ150、160は、正極集電体130及び負極集電体140と容器100とを絶縁する。また、側面スペーサ150、160は、正極集電体130及び負極集電体140と容器100との間のスペースを埋めることにより、正極集電体130及び負極集電体140を介して電極体120が容器100に対して振動しないように支持する。
【0047】
底面スペーサ170は、電極体120と容器100の底面との間に配置され、電極体120の捲回軸方向に沿って延びる長尺状の絶縁性を有する部材である。例えば、底面スペーサ170は、ポリプロピレン(PP)などの樹脂である。より具体的には、底面スペーサ170は、容器100の底面と電極体120の曲面部との間に配置される。つまり、底面スペーサ170は、電極体120と容器100とを絶縁する。また、底面スペーサ170は、電極体120と容器100との間のスペースを埋めることにより、電極体120が容器100に対して振動しないように支持する。底面スペーサ170の詳細な構成の説明については、後述する。
【0048】
絶縁材180は、電極体120と容器100とを絶縁する絶縁材である。具体的には、絶縁材180は、絶縁性を有するシート状の部材であり、底面スペーサ170と電極体120とを覆うように配置される。つまり、絶縁材180は、袋を展開したような形状となっており、底面スペーサ170の下方から、底面スペーサ170と、側面スペーサ150及び160と、正極集電体130及び負極集電体140と、電極体120の側面とを包み込む。これにより、底面スペーサ170と側面スペーサ150及び160とは、絶縁材180と電極体120との間に配置される。
【0049】
このように、絶縁材180は、底面スペーサ170と側面スペーサ150及び160と電極体120とを包み込むように、大きさが調整されて成形されている。なお、絶縁材180は、電極体120の全てを包み込まなくてもよく、電極体120の一部のみを覆うように成形されていることにしてもよい。また、絶縁材180は、袋状に形成できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0050】
図3は、本発明の実施の形態に係る底面スペーサ170と電極体120とが絶縁材180で覆われた状態で容器100に挿入されるのを示す図である。
【0051】
同図に示すように、絶縁材180は、底面スペーサ170と、側面スペーサ150及び160と、正極集電体130及び負極集電体140と、電極体120とを、底面スペーサ170の下方から包み込むように覆う。そして、絶縁材180で覆われた集合体は、容器100に挿入される。
【0052】
次に、底面スペーサ170の詳細な構成及び機能について、
図4〜7を用いて説明する。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の内部における電極体120と底面スペーサ170との位置関係を示す図である。
図5は、
図4に示す蓄電素子10のV−V断面図である。なお、
図4は、正極集電体130、負極集電体140、側面スペーサ150、160、及び絶縁材180は省略して示している。
図6は、(a)が本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の電極体120が膨張する前における、
図5のB1の部分の部分拡大図であり、(b)が本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の電極体120が膨張した後における、
図5のB1の部分の部分拡大図である。具体的には、
図6は、
図5の蓄電素子10の断面図のうちの底部における部分拡大図であり、電極体120が膨張することにより底面スペーサ170を押圧したときに底面スペーサ170がどのように変形するかを説明するための図である。
図7は、本発明の実施の形態に係る底面スペーサ170の断面図である。なお、
図6及び
図7の断面は、
図5の断面と同様の平面における断面である。
【0054】
図4及び
図5に示すように、蓄電素子10の容器100の内部では、容器100の底面と電極体120との間に底面スペーサ170が配置されており、底面スペーサ170が電極体120を支持している。また、電極体120及び底面スペーサ170と容器100との間には、電極体120と容器100とを絶縁するための絶縁材180が設けられている。
図6(a)に示すように、底面スペーサ170は、例えば製造直後のような電極体120が膨張することによる押圧を受けていない場合に、容器100の内面と対向する第一面A1が、電極体120側に向けて凹んでいる。つまり、底面スペーサ170と容器100との間には、半円筒形の空間S1が形成されている。底面スペーサ170は、電極体120から上記押圧を受けていない場合において、電極体120の膨張による押圧を受ける方向である押圧方向に交差する方向であって、底面スペーサ170の短手方向において、中央部の厚みΔt1の方が両端部の厚みΔt2よりも薄い。
【0055】
また、
図6(a)及び
図7に示すように、底面スペーサ170は、容器100の内面と対向する第一面A1と、電極体120と対向する第二面A2とが対称である。つまり、底面スペーサ170は、対称軸L2を軸として線対称である。なお、底面スペーサ170の第一面A1は、対称軸L2を境界として上側(電極体120側)の面であり、第二面A2は、対称軸L2を境界として下側(容器100側)の面である。対称軸L2は、水平方向(短手方向)に伸びる仮想的な線である。
【0056】
また、底面スペーサ170は、短手方向における一端側の第三面A3と、他端側の第四面A4とが対称である。つまり、底面スペーサ170は、対称軸L1を軸として線対称である。なお、底面スペーサ170の第三面A3は、対称軸L1を境界として
図7の左側の面であり、第四面A4は、対称軸L1を境界として
図7の右側の面である。対称軸L1は、鉛直方向に延びる仮想的な線である。
【0057】
つまり、底面スペーサ170の長手方向の端面を除く外表面は、第一面A1及び第二面A2、または、第三面A3及び第四面A4により形成される。なお、底面スペーサ170は、第一面A1と第二面A2とが上記のように線対称でなくてもよく、点対称であってもよい。また、底面スペーサ170は、容器100の内面と対向する第一面A1と、電極体120と対向する第二面A2とが曲面により接続される。つまり、第一面A1と第二面A2との境界は、緩やかな面である。
【0058】
以下に、
図6に基づいて電極体120が膨張した時に起こる底面スペーサ170の変形について説明する。
【0059】
底面スペーサ170は、電極体120が膨張することにより、
図6(a)の黒矢印に示すような押圧を電極体120から受けた場合、短手方向の中央部が白抜き矢印の方向に移動する。つまり、底面スペーサ170は、容器100に収容された状態において電極体120により押圧された場合に、
図6(b)に示すように、容器100と共に形成する空間S1を小さくするように弾性変形する。つまり、底面スペーサ170は、電極体120が膨張した場合に、電極体120の膨張に伴って変形する。
図6(a)に示す空間S1は、底面スペーサ170が上記のように弾性変形することにより、
図6(b)に示す空間S2のように小さく変形する。
【0060】
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170が電極体120から押圧された場合に、底面スペーサ170が押圧されたことによりその一部(短手方向の中央部)が移動するための空間S1が、容器100と底面スペーサ170との間に形成されている。このため、電極体120が例えば充放電を繰り返すことにより膨張して底面スペーサ170を押圧した場合に、底面スペーサ170の一部(短手方向の中央部)は、底面スペーサ170と容器100との間に形成されている空間S1に向けて移動できる。このように、電極体120が膨張したとしても底面スペーサ170の一部(短手方向の中央部)が移動できる空間S1が形成されているため、底面スペーサ170は、電極体120の膨張を吸収することができる。よって、電極体120が過度に圧迫されることにより、蓄電素子10の性能が低下することを防ぐことができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、容器100の内面と対向する第一面A1が、電極体120側に凸であるため、電極体120とは反対側において容器100の内面と共に空間S1を形成することができる。
【0062】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、押圧方向に交差する方向である底面スペーサ170の短手方向において、中央部の厚みΔt1が両端部の厚みΔt2よりも薄いため、中央部がたわみやすい構造となっている。このため、短手方向の中央部は、電極体120が膨張した場合に、電極体120とは反対側に形成されている空間S1に移動しやすい。
【0063】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、容器100の内面と対向する第一面A1と、第一面A1の反対側の第二面A2とが対称であるため、第一面A1第二面A2とが反対になっても、電極体120及び容器100との関係は変わらない。このため、蓄電素子10を組み立てる工程において、底面スペーサ170の電極体120との並び方向の向きを気にしなくても良いため、組立効率を向上させることができる。
【0064】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、短手方向における一端側の第三面A3と、他端側の第四面A4とが対称であるため、電極体120の短手方向の両端に対して、例えば接触する位置関係が同様の関係となる。このため、電極体120と底面スペーサ170との間の応力を均一にすることができ、電極体120の性能が極端に悪化する部位が生じることを防ぐことができる。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、短手方向の両端が曲面により形成されている。このため、底面スペーサ170を容易に製造することができる。また、容器100、電極体120、及び底面スペーサ170を組み立てる際に、電極体120を傷つけることを防ぐことができる。
【0066】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、電極体120に押圧されることにより弾性変形するため、電極体120からの押圧が解消されれば元の形状に戻る。つまり、底面スペーサ170は、電極体120から押圧を受けている場合には、電極体120に対して押圧している。したがって、電極体120が充放電を繰り返すことにより膨張及び収縮を繰り返す場合に、底面スペーサ170は、電極体120の膨張及び収縮に対して追従できる。このため、底面スペーサ170は、電極体120が膨張と吸収を繰り返す場合であっても、電極体120が容器100の内部で振動することを防ぐことができる。
【0067】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、底面スペーサ170は、絶縁体であるため、底面スペーサ170が配置されている容器100と電極体120との間における絶縁を確保することができる。
【0068】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、蓄電素子10は、電極体120の側面を覆う絶縁材180をさらに備えており、底面スペーサ170は、電極体120と共に絶縁材180に覆われる。つまり、底面スペーサ170は、絶縁材180と電極体120との間に挟まれた状態で、電極体120に固定される。そして、底面スペーサ170が絶縁材180と電極体120との間で固定された状態で容器100に挿入されることで、蓄電素子10が構成される。このように、底面スペーサ170が絶縁材180で電極体120に固定されて容器100に挿入されるため、容器100内での底面スペーサ170の位置ずれを低減しつつ、底面スペーサ170を円滑に容器100に挿入することができる。
【0069】
なお、上記実施の形態に係る蓄電素子10では、底面スペーサ170は、容器100の内面と対向する第一面A1と、電極体120と対向する第二面A2とが対称であるが、
図8に示す底面スペーサ270のように、第一面A11と第二面A12とが対称でなくてもよい。
図8は、本発明の他の実施の形態に係る底面スペーサ270の断面図である。
【0070】
また、上記実施の形態に係る蓄電素子10では、容器100の底面の形状は平面であり、かつ、底面スペーサ170の第一面A1が電極体120側に向けて凹んでいる形状であることから、容器100と底面スペーサ170との間に空間S1を形成しているがこれに限らない。例えば、
図9に示すように、底面の形状が外側に向かって凸の曲面である容器100aに平板から成る底面スペーサ370を配置することにより、容器100と底面スペーサ370との間に空間S11を形成してもよい。
図9は、本発明の他の実施の形態に係る蓄電素子の底部における断面の部分拡大図である。上記のような容器100a及び底面スペーサ370を採用しても、本実施の形態の蓄電素子10と同様に、底面スペーサ370の一部(短手方向の中央部)が移動できる空間S11が形成されているため、電極体120の膨張を吸収することができるという効果はある。
【0071】
また、上記実施の形態に係る蓄電素子10では、電極体120と底面スペーサ170とは共に絶縁材180により覆われているが、これに限らずに、例えば
図10に示すように、電極体120と底面スペーサ170とのうちで電極体120のみが絶縁材180により覆われて、絶縁材180に覆われた電極体120の外側(容器100内部の底面側)に底面スペーサ170が配置されるような形態としてもよい。つまり、底面スペーサ170は、絶縁材180と容器100との間に配置される。なお、
図10は、本発明の他の実施の形態に係る蓄電素子の底部における断面の部分拡大図である。
【0072】
また、上記実施の形態に係る蓄電素子10では、底面スペーサ170は、電極体120が膨張することによる押圧を受けて、空間S1に向けて弾性変形しているが、弾性変形しなくてもよい。つまり、底面スペーサ170は、電極体120が膨張することによる押圧を受けて、塑性変形するような材質から成るものであっても、電極体120の膨張が起こるまでは電極体120を支持し、電極体120の膨張が起こってからは電極体120の膨張を吸収することができるという点では効果がある。
【0073】
また、上記実施の形態1に係る蓄電素子10では、容器100の底面と電極体120との間に底面スペーサ170が配置されているが、スペーサが配置される箇所は、容器100の底面と電極体120との間に限らずに容器100の側面と電極体120との間であってもよい。
【0074】
また、上記実施の形態に係る蓄電素子10では、電極体120の構造は捲回型であるが、捲回型に限らずに積層型であってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
【0076】
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。