(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の2つの実施形態における画像切り替え装置について、以下、図面を参照しながら詳述する。
【0016】
(実施形態1)
図1(a)および(b)を参照して、本実施形態の画像切り替え装置20は、複数の画像をそれぞれライン状に分解して得られる複数の組の画像データを一定ピッチで表示してなる画像表示物13と、画像表示物13の表示領域13a(
図1(b)中、点線にて囲まれる領域)に対向して配置され、かつ、画像表示物13に表示された複数の組の画像データのうち、少なくとも1つの組の画像データを光学的に合成するレンチキュラーレンズ15と、画像表示物13に表示された複数の組の画像データのうち、選択された1つの組の画像データがレンチキュラーレンズ15により光学的に合成可能となる位置に、画像表示物13をレンチキュラーレンズ15に対して移動させる電歪アクチュエータ17とを有する。
【0017】
画像表示物13は、表示領域13aに複数の組の画像データを表示したものである。
図1(b)では、2つの画像として、楕円形の画像と矩形の画像とを用いた例を示しており、画像表示物13の表示領域13aには、楕円形の画像をライン状に分解して得られる1つの組の画像データと、矩形の画像をライン状に分解して得られる1つの組の画像データとが、一定ピッチP
2で順に繰り返し表示されている。各画像データのピッチP
2は相互に等しく、かつ、レンチキュラーレンズ15のピッチP
1と等しい。各画像データのライン幅Lwは、ピッチP
2(=ピッチP
1)を、切り替えて表示すべき画像データの組の数(換言すれば、切り替えて表示すべき画像の数)で除した値に等しく、図示する例では、ライン幅LwはピッチP
2の1/2に等しい。しかし、図示する例に限定されず、切り替えて表示すべき画像の数は適宜選択可能であり、例えば2〜10とし得る。画像表示物13は、上記のような画像データを表示し得る限り、任意の適切な材料から成り得る。例えば、紙、プラスチックシートなどを使用してよい。画像データへの分解は、特に限定されないが、例えば市販のソフトウェアを使用してよい。
【0018】
かかる画像表示物13は、例えばケース19などの内部に移動可能に収納され得る。ケース19自体は固定部材として理解され得る。ケース19の表示面側に、画像表示物13の表示領域13aに対応する窓部19aが設けられている。ケース19には、窓部19aを覆ってレンチキュラーレンズ15が設けられ、これにより、レンチキュラーレンズ15が、画像表示物13の表示領域13aに対向および近接して配置される。
【0019】
画像表示物13に表示された複数の組の画像データは、ケース19の窓部19aを通じて、レンチキュラーレンズ15を通じて視認され得る。レンチキュラーレンズ15は、これら画像データのうち、少なくとも1つの組の画像データを光学的に合成するように、複数の凸レンズがライン状にピッチP
1で配置された透明シート状部材から成り、凸面が表示側に位置するように配置される。かかるレンチキュラーレンズ15は、一般的にはプラスチックから作製されており、市販のものを使用してよい。
【0020】
画像表示物13をレンチキュラーレンズ15に対して移動させる電歪アクチュエータ17がケース19内に収納され得る。電歪アクチュエータ17には、リニア動作(換言すれば、直線的に変位すること)が可能なものを使用し、電歪アクチュエータ17の変位方向Xにおいて、その一端がケース19に固定され、他端が画像表示物13に接続される。
図1に示す例では、電歪アクチュエータ17を画像表示物13の側方に設けたが、これに限定されるものではない。例えば、電歪アクチュエータ17を、画像表示物13の裏面とケース19との間の空間に挿入し、電歪アクチュエータ17の変位方向Xにおいて、その一端がケース19に固定され、他端が画像表示物13に接続されるようにしてもよい。この例によれば、より面積効率の高い画像切り替え装置を得ることができる。なお、固定および接続方法は、特に限定されず、例えば任意の適切な接着剤、テープ等を用いてよい。
【0021】
電歪アクチュエータ17は、
図2(a)に示すような電歪材料層の積層体10を含むものであってよい。より詳細には、この積層体10は、電歪材料層が、電歪材料層を間に挟む第1および第2の電極と共に積層された積層体10であり得る。電歪アクチュエータ17は、積層体10の異なる2つの端面(図示する態様では対向する2つの端面)に、第1の電極と接続された外部電極11aと、第2の電極と接続された外部電極11bとを備え、これら外部電極11a、11bは、電源Vに接続される。
【0022】
第1および第2の電極は、これらの間に電歪材料層を挟み、かつ、第1および第2の電極が互いに直接接触しないように配置されていればよい。例えば、
図2(b)に示すように、隣り合う電歪材料層1および1’の間に、第1の電極3aおよび3a’が合計2層で存在し、また、第2の電極3bおよび3b’が合計2層で存在してよい。この場合、第1の電極3a、3a’は積層体10の1つの端面にて外部電極11aに接続され、第2の電極3b、3b’は積層体10の別の端面にて外部電極11bに接続される。また例えば、
図2(c)に示すように、隣り合う電歪材料層1aおよび1bの間に、第1の電極3aが1層で存在し、また、第2の電極3bが1層で存在してよい。これら配置例については、本実施形態に利用可能な電歪アクチュエータ17の製造方法に関連してより詳細に後述する。この場合、第1の電極3aは積層体10の1つの端面にて外部電極11aに接続され、第2の電極3bは積層体10の別の端面にて外部電極11bに接続される。
【0023】
電歪材料層1、1’、1a、1bは、高分子電歪材料から形成される。高分子電歪材料は、永久双極子を有する高分子材料であれば、特に限定されない。高分子電歪材料の例としては、PVDF(ポリビニリデンフルオロイド)、PVDF系の共重合体、例えば、P(VDF−TrFE)、P(VDF−VF)などのコポリマーや、P(VDF−TrFE−CFE)、P(VDF−TrFE−CTFE)、P(VDF−TrFE−CDFE)、P(VDF−TrFE−HFA)、P(VDF−TrFE−HFP)、P(VDF−TrFE−VC)などのターポリマーが挙げられる(Pはポリを、VDFはビニリデンフルオライドを、TrFEはトリフルオロエチレンを、CFEはクロロフルオロエチレンを、CTFEはクロロトリフルオロエチレンを、CDFEはクロロジフルオロエチレンを、HFAはヘキサフルオロアセトンを、HFPはヘキサフルオロプロピレンを、VCはビニルクロライドを、VFはビニルフルオライドを意味する)。なかでも、P(VDF−TrFE−CFE)が、大きな歪みが得られる点で特に好ましい。電歪材料層1、1’、1a、1bの厚さは適宜設定してよいが、例えば数μm〜100μm程度とし得る。電歪材料層1、1’、1a、1bは、各配置例につき、使用する高分子電歪材料および厚さが、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0024】
第1の電極3a、3a’および第2の電極3b、3b’は、電極として機能し得る限り、任意の適切な導電性材料から形成してよい。かかる導電性材料としては、有機導電性材料が、クラックが導入され難いので好ましい。有機導電性材料の例としては、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PPy(ポリピロール)、PANI(ポリアニリン)などが挙げられ、これらは、適宜、有機スルホン酸系化合物、例えばポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸などのドーパントがドープされ得る。なかでも、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)が好ましい。しかしながら本発明はこれに限定されず、他の導電性材料、例えばNi(ニッケル)、Pt(白金)、Pt−Pd(白金−パラジウム合金)、Al(アルミニウム)、Au(金)、Au−Pd(金パラジウム合金)などの金属材料を使用することも可能である。第1の電極3a、3a’および第2の電極3b、3b’の厚さは、使用する導電性材料などに応じて適宜設定してよいが、例えば20nm〜10μm程度とし得る。第1の電極3a、3a’および第2の電極3b、3b’は、各配置例につき、使用する導電性材料および厚さが、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0025】
次に、かかる電歪アクチュエータ17の製造例について説明する。以下の例では、積層体10が、電歪材料層を、第1および第2の電極と共に筒状に巻回および扁平化することによって構成される場合について説明する。
【0026】
まず、電歪材料層を第1および第2の電極と共に、第1の電極と第2の電極との間に電歪材料層が挟まれるようにして、略円筒状(円筒状または実質的に円筒状、以下も同様)に巻回して積層することによって、略円筒状の積層体7(
図6(a)参照)を形成する。
【0027】
より詳細には、まず、電歪材料層の表面に第1および第2の電極の少なくとも一方を形成した2枚のシートを作製し、第1および第2の電極が直接接触してショートすることのないように、これら2枚のシートを重ね合わせる。
【0028】
より具体的には、
図2(b)に示す配置例の場合には、次のようにして2枚のシートを重ね合わせる。まず、
図3を参照して、電歪材料層1の両面に第1の電極3aおよび第2の電極3bをそれぞれ形成したシートと、電歪材料層1’の両面に第1の電極3a’および第2の電極3b’をそれぞれ形成したシートとを準備する。なお、これらシートは、同時に作製されたもの(例えば1枚のシートから分断されたもの)であってもよい。そして、これら2枚のシートを、第1の電極3a、3a’同士または第2の電極3b、3b’同士を対向させて(
図2(b)は後者の場合を例示的に示す)重ね合わせる。この場合、1つの電歪材料層に対して、第1および第2の電極が両面から十分に密着するので、空気層によるロスを防ぐことができる。
【0029】
また、
図2(c)に示す配置例の場合には、次のようにして2枚のシートを重ね合わせる。まず、
図5を参照して、電歪材料層1aの片面に第1の電極3aを形成したシートと、電歪材料層1bの片面に第2の電極3bを形成したシートとを準備する。なお、これらシートは、同時に作製されたもの(例えば1枚のシートから分断されたもの)であってもよい。そして、これら2枚のシートを、第1の電極3aと第2の電極3bとが電歪材料層1a、1bを介して交互に配置されるように重ね合わせる。この場合、1つの電歪材料層に対して、第1および第2の電極のいずれかのみを形成すればよいので、より少ない工程数で作製可能である。
【0030】
電歪材料層上への電極の形成は、使用する材料に応じて異なり得る。例えば、電極材料として、上述したような有機導電性材料を使用する場合には、電歪材料層上にマスクを配置し、その上から有機導電性材料含有液(例えばインクまたは塗料などとして市販で入手可能である)を噴霧し、適宜、乾燥および/または加熱した後、マスクを除去することによって、一様な電極パターンを形成することができる。なお、有機導電性材料含有液の粘度等によっては、インクジェット、はけ塗り、スクリーン印刷なども適用可能である。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、例えば、電極材料として、上述したような金属材料を用いる場合には、蒸着、スパッタなどを適用可能である。
【0031】
次に、上記のようにして重ね合わせた2枚のシートを、例えば
図4に示すように、略円筒状の巻芯5の周囲に巻回して積層し、これにより、略円筒状の積層体を形成する。巻芯5は、巻回の際に保持可能な限り、中空および中実のいずれであってもよい。そして、積層体を形成した後に、積層体から巻芯5を抜き出して、
図6(a)に示すような略円筒状の積層体7を得る。積層体の寸法および積層数は、所望される電歪アクチュエータ17の最大変位などによって様々であり得る。
【0032】
そして、この略円筒状の積層体7に外力および熱の少なくとも一方を作用させることによって、
図6(a)に示す矢印方向に扁平化させる。外力は、手作業で加えても、機械的に加えても、真空吸引(例えば、積層体7をパックまたは袋に入れ、その内部を真空にして、外部からの空気圧により潰す方法)などにより加えてもよい。熱は、電歪材料層に作用して成形することが可能であり、例えば、100℃前後の熱を加え得る。
【0033】
これにより、電歪材料層が第1および第2の電極と共に積層された積層体10が得られる。本製造例のように、積層体10が、電歪材料層を、第1および第2の電極と共に筒状に巻回および扁平化することによって構成される場合には、扁平化する際の屈曲部にあたる積層体10の端面(
図6(b)中、積層体10の上下左右に位置する端面のうち、上下の端面)では、積層構造は積層体10の高さ方向に確保されないが、
図2(a)に示すように、X方向に変位するのに、実質的に差し支えない。
【0034】
次に、以上のようにして得られた積層体10に、
図6(b)に示すように外部電極11a、11bを第1の電極3a、3a’および第2の電極3b、3b’にそれぞれ接続して形成する。外部電極11a、11bの材料は、特に限定されず、任意の適切な電極材料を使用してよい。例えば、導電性ペーストを用いて、これを積層体10の所定の端面(第1および第2の電極の縁部がそれぞれ位置している端面)に塗布し、熱処理に付すことにより、外部電極11a、11bを第1の電極3a、3a’および第2の電極3b、3b’にそれぞれ接続して形成することができる。外部電極11a、11bは、
図2(a)に示すように、電歪アクチュエータ17の使用に際して電源Vに接続される。
【0035】
あるいは、また、外部電極11a、11bに代えて、引き出し線を用いて、第1の電極3a、3a’および第2の電極3b、3b’を積層体10の外部に引き出し、電源Vに接続してもよい。
【0036】
以上のようにして、電歪アクチュエータ17が製造される。しかし、本実施形態に利用可能な電歪アクチュエータ17の製造方法は、かかる製造例に限定されない。例えば、
図2(b)または(c)に示す配置例に従って、電歪材料層ならびに第1および第2の電極を順次積層していくことにより、積層体10を作製してよい。また例えば、電歪材料層の表面に第1および第2の電極の少なくとも一方を形成した2枚のシートの端部を、これらの長手方向が互いに直交するように重ね合わせ、第1および第2の電極が直接接触してショートすることのないように、これらシートを交互に順次積層して折り返すことにより、積層体10を作製してもよい。
【0037】
本実施形態に用いる電歪アクチュエータ17は、小型で軽量、かつ低消費電力である。また、本実施形態に用いる電歪アクチュエータ17は、電歪材料層に高分子材料を用い、第1および第2の電極材料に有機導電性材料を用いて構成すれば、耐衝撃性が高く、壊れにくいという利点が得られる。
【0038】
次に、画像切り替え装置20の使用方法(動作)の例について説明するが、本発明の画像切り替え装置は、かかる使用方法に限定されるものではない。
【0039】
画像切り替え装置20において、電歪アクチュエータ17に対して、電源Vより第1および第2の電極間に電圧を印加すると、それらの間に位置する電歪材料層は、電界印加による電歪効果によって歪み、これにより、積層体10が変形して変位を生じる。電界方向に対する電歪材料層の歪み方向は、31方向(電界方向に対して垂直な方向、換言すれば、電歪材料層の面内方向)と33方向(電界方向に対して平行な方向、換言すれば、電歪材料層の厚さ方向)とがあり得るが、本発明においては31方向、換言すれば、電歪材料層の面内方向に歪むことが好ましい。なお、電歪材料層の31方向での歪みは、電歪材料層を延伸などにより所定の方向に予め異方性を持たせておくことにより選択可能である。
【0040】
この結果、電歪アクチュエータ17は、印加電圧に応じてX方向に変位し、これにより、画像表示物13をレンチキュラーレンズ15に対して移動させることができる。一般に、電歪材料層の歪みの大きさは、印加される電界に応じて2次関数的に変化し、印加電界を適切に選択することによって、最大歪みの範囲内であれば任意の大きさの歪みひいては変位を実現することができる。
【0041】
従って、電歪アクチュエータ17に対して、所望の大きさの変位が得られるように印加電圧を制御することにより、複数の組の画像データのうち、選択された1つの組の画像データがレンチキュラーレンズ15により光学的に合成可能となる位置に、画像表示物13をレンチキュラーレンズ15に対して移動させることができる。そして、電歪アクチュエータ17に対する印加電圧を適宜選択することにより、複数の画像を切り替えて表示することが可能となる。更に、印加電圧の制御は、任意に行い得るので、複数の画像を所望の順序およびタイミングで切り替えて表示することが可能となる。
【0042】
より具体的には、複数の組の画像データに対して実現すべき移動量は、各画像データのピッチP
2(=レンチキュラーレンズ15のピッチP
1)を、切り替えて表示すべき画像データの組の数(換言すれば、切り替えて表示すべき画像の数)で除した値を1単位としてずれたものとなる。よって、電歪アクチュエータ17に対する印加電圧を、各組の画像データについて予めステップ状に設定しておくことができ、表示させたい画像に応じて、予め設定した印加電圧を選択して電歪アクチュエータ17に印加すると、その画像データがレンチキュラーレンズ15で合成されて、視認可能となる。
【0043】
本実施形態によれば、薄いシートを積層した電歪アクチュエータを用いているので、従来よりも薄い画像切り替え装置を実現することができる。また、電歪アクチュエータを用いているので、画像表示物をレンチキュラーレンズに対して任意の位置に動かすことができ、これによって、レンチキュラーレンズを通して視認可能となる画像を、任意の順序で、かつ、任意のタイミングで与えることが可能となる。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態は、実施形態1を改変したものである。以下、改変点を中心に説明し、特に説明のない限り、実施形態1と同様の説明が当て嵌まる。
【0045】
図7(a)および(b)を参照して、本実施形態の画像切り替え装置21では、固定部材として理解されるケース19は、画像表示物13の非表示領域に対向した対向領域を有することを要する。より具体的には、本実施形態において、画像表示物13の非表示領域は、画像表示物13の裏面であり、これに対向したケース19の対向領域は、画像表示物13の裏面に対向したケース19の内側面部分である。そして、画像表示物13の非表示領域およびケース19の対向領域のそれぞれに、一対を成す凹凸部16a、16bが、相互に摺動可能に設けられる。これら凹凸部16a、16bは同じピッチP
3を有し、ピッチP
3は、レンチキュラーレンズ15のピッチP
1(=各画像データのピッチP
2のピッチP
2)を、切り替えて表示すべき画像データの組の数(換言すれば、切り替えて表示すべき画像の数)で除した値に等しく、図示する例(画像の数=2)では、ピッチP
1の1/2に等しい。
【0046】
凹凸部16a、16bは、相互に摺動可能で、かつ、ある程度噛合し得る限り、特に限定されないが、例えばレンチキュラーレンズであってよい。
【0047】
このような画像切り替え装置21を用いて、電歪アクチュエータ17に電圧印加すると、電歪アクチュエータ17は、印加電圧に応じてX方向に変位して、画像表示物13を移動させるが、その移動停止位置は、凹凸部16a、16bが相互に摺動し、最も安定的に噛合する位置となる。
【0048】
従って、電歪アクチュエータ17のみによっては、画像表示物13が所望の位置に正確に移動されない場合、例えば、電歪アクチュエータの位置決めが厳密でなかったり、経時変化および/または温度変化により変位量がずれた場合であっても、凹凸部16a、16bにより、画像表示物物13をステップ的に移動させることができ、選択された1つの組の画像データをレンチキュラーレンズに対して位置調整して配置することができる。
【0049】
本実施形態によれば、電歪アクチュエータ17に対して極めて精密な制御を行わなくても、複数の画像を再現性よく切り替えることが可能となる。
【0050】
以上、本発明の2つの実施形態における画像切り替え装置およびその使用方法について詳述したが、本発明は種々の改変が可能であろう。例えば、上記の実施形態では、画像表示物を電歪アクチュエータによって移動させるものとしたが、画像表示物はレンチキュラーレンズに対して相対的に移動すればよく、レンチキュラーレンズを電歪アクチュエータによって移動させるものとしてもよい。また例えば、電歪アクチュエータに代えて、リニア動作が可能で、かつ電気制御が可能なアクチュエータも利用可能である。かかるアクチュエータの例としては、形状記憶合金、誘電体ポリマー、導電性ポリマーなどを用いたアクチュエータが挙げられる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
PET(ポリエチレンテレフタレート)から成るキャリアフィルム上に、フッ化ビニリデン系樹脂材料としてP(VDF−TrFE−CFE)を厚さ10μmでキャスティングし、キャリアフィルムから剥離することにより、電歪材料層としてフッ化ビニリデン系樹脂材料のシートを準備した。そして、この電歪材料層の両面に、市販のPEDOT−PSS溶液をマスクを介して噴霧し、乾燥させて厚み0.2μmの電極を形成し、これにより、電歪材料層の両面に電極を形成したシートを2枚作製した(
図3(a)参照)。次に、かかる2枚のシートを重ね合わせ(
図3(b)参照)、これを円筒状の巻芯の周囲に巻回し(
図4参照)、巻芯を取り除いて、略円筒状の積層体(
図6(a)参照)を作製した。得られた略円筒状の積層体を60〜80℃に加温して、約98MPaの圧力で押し潰し、熱圧着することによって、略円筒状の積層体を扁平化し、電歪材料層が50層積層された長さL=約100mm、幅W=10mm、高さH=約0.5mmの寸法の積層体を作製した。この積層体の電極の縁部が位置している両端面に、外部電極形成用のAgペースト(Ag粉末をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を分散させたもの)を塗布して、60〜70℃の温度で熱硬化させて、外部電極を形成した(
図6(b)参照)。これにより、電歪アクチュエータを作製した。
【0052】
次に、この電歪アクチュエータを用いて、上述の実施形態1に係る画像切り替え装置を作製した。
まず、所望の画像寸法に応じた窓部を備えるケースを準備し、その窓部を30Lpi(即ち、1インチあたり30本のラインを有するもの。レンズのピッチは0.846mm)のレンチキュラーレンズで覆うようにしてケースに貼り付けた。
また、表示させたい2つの画像から、0.846mmピッチおよび0.423mmライン幅で、それぞれの画像がライン状に分割された2組の画像データを得、これらを紙面に交互に印刷した画像表示物を準備した。
得られた画像表示物の所定の位置に、上記で作製した電歪アクチュエータの一端を接続して、これら画像表示物と電歪アクチュエータとをケース内に入れ、電歪アクチュエータの他端をケースの内側面に固定した(
図1(a))。
以上により、画像切り替え装置を作製した。
【0053】
本実施例で作製した画像切り替え装置を用いて動作テストを行った。即ち、電歪アクチュエータの外部電極に、直流電源(図示せず)を用いて、所定の電圧信号を付加したところ、2つの画像を切り替えて表示すること(視認できること)が確認された。
【0054】
(実施例2)
次に、実施例1で作製したものと同様の電歪アクチュエータを用いて、上述の実施形態2に係る画像切り替え装置を作製した。
まず、実施例1と同様に、所望の画像寸法に応じた窓部を備えるケースを準備し、その窓部を30Lpi(即ち、1インチあたり30本のラインを有するもの。レンズピッチ0.846mm)のレンチキュラーレンズで覆うようにしてケースに貼り付けた。
また、実施例1と同様に、表示させたい2つの画像から、0.846mmピッチおよび0.423mmライン幅で、それぞれの画像がライン状に分割された2組の画像データを得、これらを紙面に交互に印刷した画像表示物を準備した。
本実施例では、2つの画像を切り替えるため、上記レンチキュラーレンズのピッチの1/2のピッチを有する2つのレンチキュラーレンズを新たに準備した。なお、切り替える画像がn個の場合、上記レンチキュラーレンズのピッチの1/nのピッチを有するレンチキュラーレンズを準備すればよい。
そして、新たに準備したこれら2つのレンチキュラーレンズ(本実施例において、60Lpi、レンズピッチ0.423mm)を、画像表示物の裏面と、ケースの内側面にそれぞれ貼り付けた。
その後、得られた画像表示物の所定の位置に、実施例1で作製したものと同様の電歪アクチュエータの一端を接続して、これら画像表示物と電歪アクチュエータとをケース内に入れ、電歪アクチュエータの他端をケースの内側面に固定した(
図7(a))。このとき、画像表示物の裏面と、ケースの内側面にそれぞれ貼り付けたレンチキュラーレンズは、これらの凹凸が相互に接するように配置し、画像切り替えのための移動位置を調整するガイドとした。
以上により、画像切り替え装置を作製した。
【0055】
本実施例で作製した画像切り替え装置を用いて動作テストを行った。即ち、電歪アクチュエータの外部電極に、直流電源(図示せず)を用いて、所定の電圧信号を付加したところ、2つの画像を切り替えて表示すること(視認できること)が確認された。