(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源から出射された測定光を眼底上で走査するために前記測定光を偏向させる光スキャナ、被検眼と光スキャナとの間に配置される対物レンズ系、を有し、該対物レンズ系により該光スキャナと被検眼の瞳孔中心部とを光学的に共役位置に配置し、瞳孔中心部を介して測定光を被検眼眼底に導きその反射光を得るための測定光学系と、
光源から出射された参照光を測定光と干渉させるための参照光学系と、を有し、
被検物眼底で反射された前記測定光学系からの測定光と前記参照光学系からの参照光との測定光と参照光との干渉により生じた干渉信号光を光検出器により受光する干渉光学系と、
前記測定光学系又は前記参照光学系光路中に配置され、測定光と参照光との光路長差を調整するために駆動部により光軸方向に移動される光路長可変用光学部材と、を備え、
前記光検出器から出力される信号に基づいて眼底断層像を得る眼底撮影装置に装着可能な眼底撮影装置用のアタッチメントであって、
凸レンズと、前記対物レンズ系と前記凸レンズとの間に配置される凹レンズと、を有し、眼底撮影装置に装着可能されることで、前記測定光学系の光路中に配置され、光路長可変用光学部材の駆動による光路長可変範囲に対して測定光路の光路長を延長させ、眼軸長の短い眼の眼底を撮影することを特徴とする眼底撮影装置用アタッチメント。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図5は本実施形態に係る眼底撮影装置の構成について説明する図である。なお、本実施形態においては、被検者眼(眼E)の軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。眼底の表面方向をXY方向として考えても良い。
【0011】
<概要>
本発明の実施形態に係る眼底撮影装置の概要について説明する。本実施形態に関わる眼底撮影装置(光コヒーレンストモグラフィーデバイス)1は、干渉光学系200、光路長可変用光学部材(例えば、参照ミラー31)を有し、眼底断層像を得る。
【0012】
干渉光学系(OCT光学系)200は、光スキャナ(走査部)23、測定光学系200a、参照光学系200b、を有する。干渉光学系200は、被検物眼底で反射された測定光学系200aからの測定光と参照光学系200bからの参照光との干渉により生じた干渉信号光を光検出器83により受光する。
【0013】
光スキャナ23は、光源から出射された測定光を眼底上で走査するために測定光を偏向させる。測定光学系200aは、被検眼と光スキャナ23との間に配置される第1の対物レンズ系(例えば、対物レンズ10)を有する。測定光学系200aは、対物レンズ系により光スキャナ23と被検眼の瞳孔中心部とを光学的に共役位置に配置し瞳孔中心部を介して測定光を被検眼眼底に導きその反射光を得るために設けられている。参照光学系200bは、光源から出射された参照光を装置内で進行させ測定光と干渉させるために設けられている。
【0014】
眼底撮影装置は、さらに、光路長可変用光学部材の駆動による光路長可変範囲に対して測定光路の光路長を延長させる光路長延長ユニット500を有する。光路長延長ユニット500は、測定光学系200aの光路中に配置される。光路長延長ユニット500は、光路長可変用光学部材の可動範囲を超えた測定光の光路長の調整を可能とする。光路長延長ユニット500は、光路長可変用光学部材とは異なる別部材として設けられる。
【0015】
光路長延長ユニット500は、例えば、測定光学系200aの光路中に挿脱可能に配置される。例えば、光路長延長ユニット500は、眼底撮影装置の検査窓160近傍に装着可能なアタッチメント(アダプター)であってもよい。このようなアタッチメントは、例えば、撮影対象の被検眼として、人眼よりも短い眼軸長である動物眼を撮影するために設計されている。光路長延長ユニット500は、装置本体100の内部に配置されてもよい。
【0016】
光路長延長ユニット500は、凹レンズ511と凸レンズ512を有し、凹レンズ511と凸レンズ512は、互いに光軸が略一致するように配置されている。例えば、凹レンズ511は、凸レンズ512と第1対物レンズ系との間に配置され、第1対物レンズ系による光スキャナ23との共役点と凹レンズの焦点位置とを略一致させる。
【0017】
光路長延長ユニット500は、測定光束の光路長を可変させるために光路長延長ユニットに設けられた光学部材を駆動させる駆動部を有する構成であってもよい。例えば、光路長延長ユニット500は、測定光束の光路長を可変させるために凹レンズ511と凸レンズ512の少なくとも一方を駆動させる駆動部を有する構成であってもよい。
【0018】
光路長延長ユニット500は、例えば、被検眼の眼前に配置される第2の対物レンズ系と、第1の対物レンズ系と第2の対物レンズ系との間に配置され、測定光路の光路長を遅延させるための光学部材と、備える。光遅延させるための光学部材としては、上記凹レンズの他、ガラス板、複数のミラーの組み合わせ等によって測定光を遅延させる構成が考えられる。
【0019】
なお、以下の説明では、対物レンズ10が第1の対物レンズ系を形成するが、第1の対物レンズ系は、少なくとも1枚のレンズからなる構成であればよく、複数のレンズからなる対物レンズ系であってもよい。
【0020】
本実施形態では、人眼とは異なる眼軸長を持つ動物眼(例えば、ラット、ウサギ等)を撮影する際に、光路長延長ユニット500を用いる。OCT光学系200は、例えば、SD−OCT光学系、SS−OCT光学系がベースとなる。この場合、OCT光学系200は、測定光と参照光との干渉状態として、被検眼眼底から反射された測定光と参照光とが合成された光のスペクトル情報を検出器83により検出する。制御部70は、検出器83によって検出されたスペクトル情報(スペクトル信号)をフーリエ解析することにより被検眼眼底の断層画像を撮像する。また、メモリ72には、動物眼撮影モードと人眼撮影モードが記憶されており、モード切り換えに応じて、光路長延長ユニット500の挿脱が行われる。
【0021】
また、本実施形態では、凹レンズ511と凸レンズ512との間の測定光路において、測定光の主光線が光軸に対して、略平行光束となるように配置されている。これによって、アタッチメントと被検眼前眼部との間の適正作動距離を略一定に保持した状態で、測定光路を延長させることができる。
【0022】
このように、光路長延長ユニット500を配置することによって、測定光の光路長を延長することができるため、撮影対象の眼軸長が短い眼軸長の被検眼であっても、測定光学系200aと参照光学系200bと光路長の長さを略一致させることが可能となる。
【0023】
なお、アダプター501内の光学部材を移動可能な構成を設けてもよい。例えば、アダプター501は、測定光の光路長を延長させるとともに、さらに、測定光束の光路長を可変させるために、凹レンズ511又は凸レンズ512の少なくとも一方を駆動させる駆動手段を備える構成が挙げられる。これにより、第2光路長延長ユニット500の配置によって測定光路の光路長を調整した後、さらに、光路長の調整を行うことができる。
【0024】
なお、上記説明においては、参照ミラー31を移動させることによって撮影位置に応じた光路長調整を行う構成を例示したが、これに限定されない。本実施形態の装置は、測定光又は参照光の光路中に配置された光学部材を、測定光と参照光の光路長差を調整するために移動させる駆動部を備える構成であればよい。例えば、測定光の光路長と参照光の光路長との光路長差を変更するための構成としては、測定光の光路長を変化させて参照光との光路長差を調整するような構成としてもよい。例えば、
図1の光学系において、参照ミラー31を固定とし、コリメータレンズ21とファイバー端部39bとを一体的に移動させることにより参照光の光路長に対して測定光の光路長を変化させるような構成が考えられる。
【0025】
<実施例>
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施例に係る眼科撮影装置の光学系及び制御系を示す図である。また、本実施例においては、被検眼の奥行き方向をZ方向(光軸L1方向)、奥行き方向に垂直な平面上の水平方向成分をX方向、鉛直方向成分をY方向として説明する。
【0026】
本装置は、光コヒーレンストモグラフィーデバイス(OCTデバイス)1である。
図1において、OCTデバイス1は、干渉光学系(OCT光学系)200と、固視標投影ユニット300と、制御部(CPU)70と、を備える。
【0027】
OCT光学系200は、測定光源から発せられた光束を測定光と参照光に分割し、測定光束を被検眼眼底に導き,参照光を参照光学系に導いた後、眼底で反射した測定光と参照光とが合成された光のスペクトル(干渉状態)を検出器(受光素子)により検出する。
【0028】
OCT光学系200は、測定光学系200aと参照光学系200bを含む。また、干渉光学系200は、参照光と測定光による干渉光を周波数(波長)毎に分光し、分光された干渉光を受光手段(本実施形態においては、1次元受光素子)に受光させる分光光学系800を有する。また、ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200の測定光として用いられる波長成分の光を反射し、固視標投影ユニット300に用いられる波長成分の光を透過する特性を有する。
【0029】
まず、ダイクロイックミラー40の反射側に設けられたOCT光学系200の構成について説明する。OCT光源27はOCT光学系200の測定光及び参照光として用いられる低コヒーレントな光を発する光源であり、例えば、SLD光源等が用いられる。OCT光源27には、例えば、中心波長840nmで50nmの帯域を持つ光源が用いられる。ファイバーカップラー26は光分割部材と光結合部材としての役割を兼用する。OCT光源27から発せられた光は、導光路としての光ファイバ38aを介して、ファイバーカップラー26によって参照光と測定光とに分割される。測定光は光ファイバ38bを介して被検眼Eへと向かい、参照光は光ファイバ38c(ポラライザ(偏光素子)33)を介して参照ミラー31へと向かう。
【0030】
測定光を被検眼Eへ向けて出射する光路には、測定光を出射する光ファイバ38bの端部39b、コリメータレンズ21、フォーカス用光学部材(フォーカシングレンズ)24、走査部(光スキャナ)23と、リレーレンズ22が配置されている。走査部23は、2つのガルバノミラーによって構成され、走査駆動機構51の駆動により、測定光源から発せられた測定光を眼底上で二次元的(XY方向)に走査させるために用いられる。なお、走査部23は、例えば、AOM(音響光学素子)やレゾナントスキャナ等によって構成されていてもよい。
【0031】
ダイクロイックミラー40及び対物レンズ10は、OCT光学系200からのOCT測定光を被検眼眼底へと導光する導光光学系としての役割を有する。
【0032】
フォーカシングレンズ24は、駆動機構24aの駆動によって、光軸方向に移動可能となっており、被検者眼底に対する視度を補正するために用いられる。
【0033】
光ファイバ38bの端部39bから出射した測定光は、コリメータレンズ21によってコリメートされた後、フォーカシングレンズ24を介して、走査部23に達し、2つのガルバノミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部23で反射された測定光は、リレーレンズ22を介して、ダイクロイックミラー40で反射された後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
【0034】
そして、眼底で反射した測定光は、対物レンズ10を介して、ダイクロイックミラー40で反射し、OCT光学系200に向かい、リレーレンズ22、走査部23の2つのガルバノミラー、フォーカシングレンズ24及びコリメータレンズ21を介して、光ファイバ38bの端部39bに入射する。端部39bに入射した測定光は、光ファイバ38b、ファイバーカップラー26、光ファイバ38dを介して、光ファイバ38dの端部84aに達する。
【0035】
参照光学系200bは、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系200bは、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系200bは、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー31)によって形成され、カップラー26からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー26に戻し、受光素子83に導く。他の例としては、参照光学系200bは、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー26からの光を戻さず透過させることにより検出器83へと導く。
【0036】
例えば、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、光ファイバ38c、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。光ファイバ38cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動機構34により回転移動される。すなわち、光ファイバ38c及び駆動機構34は、偏光方向を調整するためのポラライザ33として用いられる。なお、ポラライザとしては、上記構成に限定されず、測定光の光路又は参照光の光路に配置されるポラライザを駆動させることにより、測定光と参照光の偏光状態を略一致させるものであればよい。例えば、1/2波長板や1/4波長板を用いることやファイバーに圧力を加えて変形させることで偏光状態を変えるもの等が適用できる。
【0037】
なお、ポラライザ33(偏光コントローラ)は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する構成であればよい。例えば、ポラライザは、測定光の光路に配置された構成であってもよい。
【0038】
また、参照ミラー駆動機構50は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。
【0039】
光ファイバー38cの端部39cから出射した参照光は、コリメータレンズ29で平行光束とされ、参照ミラー31で反射された後、コリメータレンズ29により集光されて光ファイバ38cの端部39cに入射する。端部39cに入射した参照光は、光ファイバ38c、光ファイバ38c(ポラライザ33)を介して、ファイバーカップラー26に達する。
【0040】
そして、光源27から発せられた光によって前述のように生成される参照光と被検眼眼底に照射された測定光による眼底反射光は、ファイバーカップラー26にて合成され干渉光とされた後、光ファイバ38dを通じて端部84aから出射される。周波数毎の干渉信号を得るために干渉光を周波数成分に分光する分光光学系800(スペクトロメータ部)は、コリメータレンズ80、グレーティングミラー(回折格子)81、集光レンズ82、受光素子83を有する。受光素子83は、赤外域に感度を有する一次元素子(ラインセンサ)を用いている。
【0041】
ここで、端部84aから出射された干渉光は、コリメータレンズ80にて平行光とされた後、グレーティングミラー81にて周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ82を介して、受光素子83の受光面に集光する。これにより、受光素子83上で干渉縞のスペクトル情報(スペクトル信号)が記録される。そして、受光素子83からの出力信号に基づいて、フーリエ変換を用いて解析することで、眼の断層像(眼底断層像)を撮像する。すなわち、そのスペクトル情報が制御部70へと入力され、フーリエ変換を用いて解析することで、被検眼の深さ方向における情報が計測可能となる。ここで、制御部70は、走査部23により測定光を眼底上で所定の横断方向に走査することにより断層像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底のXZ面もしくはYZ面における断層像(眼底断層像)を取得できる(なお、本実施形態においては、このように測定光を眼底に対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された眼底断層像は、制御部70に接続されたメモリ72に記憶される。さらに、走査部23の駆動を制御して、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、受光素子83からの出力信号に基づき被検者眼眼底のXY方向に関する二次元動画像や被検眼眼底の三次元画像を取得できる。
【0042】
なお、フォーカシングレンズ24は、駆動機構24aの駆動によって光軸方向に移動され、その移動可能範囲が設定されている。フォーカシングレンズ24は、例えば、屈折力が−12Dに対応する位置(−12Dの屈折力でフォーカスが合う位置)から第屈折力が+12Dに対応する位置までの範囲を移動可能である。
【0043】
次に、固視標投影ユニット300について説明する。固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
【0044】
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
【0045】
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナを用いて走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0046】
また、制御部70には、表示モニタ75、メモリ72、コントロール部74、参照ミラー駆動機構50、フォーカシングレンズ駆動機構24a、光ファイバ38cの駆動機構34、等が接続されている。
【0047】
<光路長延長ユニット>
図2は、光路長延長ユニット500としてのアダプター501(アタッチメント)の着脱について説明する図である。
図2(a)は、検査窓160にアダプタを装着していない状態の図である。
図2(b)はアダプター501が検査窓160に装着された状態の図である。アダプター501は、被検眼として動物眼(例えば、ラット、ウサギ等)を撮影する際に検査窓160に装着される。アダプター501は、被検眼に対する測定光の光路長を伸ばすレンズ系を持つ。これにより、測定光の光路長を伸ばすことができるため、測定光学系200aと参照光学系200bと光路長の長さを合わせることが可能となる。すなわち、短い眼軸長の被検眼であっても、参照光学系200bの参照ミラー31の駆動によって、測定光路と参照光路との光路長差を調整することができるようになる。
【0048】
検査窓160には、溝162が設けられ、アダプター501の図示無き凸部と溝162が嵌め合い、アダプター501の回転が規制される。検者は、左右に設けられたチャック部520をつまみ、チャック部520の先端に設けられた凸部522が検査窓160の凹部165に嵌まるようにアダプター501を装着する(
図3参照)。なお、アダプター501を装着させるための機構としては、ネジを用いた機構、磁石を用いた機構など種々の変容が考えられる。なお、本実施形態において、
図3のような機構としたのは、アダプター501の着脱をスムーズに行えるようにするためである。
【0049】
図4はアダプター501の内部構成について説明する光学側面図である。
図4(a)は、
アダプタ装着前の図である。
図4(a)では、被検眼として人眼Ehを撮影対象としている。
図4(b)は、アダプタ装着後の図である。
図4(a)では、被検眼として、動物眼Eaを撮影対象としている。
図4(b)に示されるように、アダプター501は、測定光の光路長を延長するためのレンズ系510を有する。レンズ系510は、アダプター501と被検眼前眼部との間の適正作動距離WDに対応する焦点距離を持つレンズ系となっており、凹レンズ511と凸レンズ512との間で、測定光の主光線と光軸L1が平行となるように構成されている。レンズ系510は、凹レンズ511、凸レンズ512を備える。
【0050】
図4(b)に示されるように、光源27より出射された測定光は、対物レンズ10を介して、アダプター501内のレンズ光学系510に向かう。測定光は、凹レンズ511によって平行光束とされ、凸レンズ512に入射される。凸レンズに入射した平行光束は、凸レンズによって、被検眼眼底に集光される。このとき、凹レンズ511と凸レンズ512との間を通過する測定光は平行光束となっているため、凹レンズ511と凸レンズ512との間の距離Dの光路長分が延長される。すなわち、測定光の光路長を延長させることによって、参照光の光路長と測定光の光路長が一致するため、干渉光が取得できるようになる。
【0051】
なお、アダプター501は、撮影を行う動物に合わせて構成される。例えば、ウサギ専用のアダプタやラット専用のアダプタがそれぞれを設けられ、撮影時に動物にあった専用のアダプタを取り付け、撮影を行う。例えば、これらのアダプタは、各動物の平均的な眼軸長に基づいて、アダプタ内のレンズ系の配置位置が設定される。眼軸長の短い動物の撮影を行う場合には、凸レンズと凹レンズの間の距離が長くなるように凸レンズと凹レンズが配置される。また、眼軸長の長い動物の撮影を行う場合には、凸レンズと凹レンズの間の距離が短くなるように凸レンズと凹レンズが配置される。
【0052】
以上のように、測定光の光路長を延長させるアダプター501を設けることによって、撮影を行う被検眼が眼軸長の短い動物眼である場合でも、WDへの影響が少ない状態で、光路長調整を行うことができる。これによって、撮影対象が動物眼であっても、容易に撮影を行うことができる。
【0053】
<制御動作>
以上のような構成を備える装置において、その制御動作について説明する。被検眼として、動物眼を撮影する場合、検者は、アダプター501を検査窓160に装着する。検者は、動物を装置に固定した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、図示無きジョイスティックを用いて、アライメント操作を行う。
【0054】
次いで、最適化を行うことによって、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようにする。なお、本実施例において、最適化の制御は、光路長調整、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)、の制御である。例えば、制御部70は、参照ミラー31を移動させることによって、光路長を調整する。また、制御部70は、フォーカシングレンズ24を移動させることによって、フォーカス状態を調整する。
【0055】
そして、制御部70は、走査部23の駆動を制御し、眼底上で測定光を走査させ、走査中に受光素子83から出力される出力信号から走査領域に対応する受光信号を取得して眼底像を形成する。
【0056】
ここで、本実施例に係る眼底断層像(以下、断層像と記載する)及び眼底正面像(以下、正面像と記載する)の取得手法の一例を示す。制御部70は、受光素子83によって検出されたスペクトルデータを処理し、画像処理により断層像及び正面像を形成させる。断層像と正面像は、同時に取得されてもよいし、交互に取得されてもよいし、順次取得されてもよい。すなわち、スペクトルデータは、断層像及び正面像の少なくともいずれかの取得に用いられる。なお、取得された断層像及び眼底像は、動画像又は静止画像としてモニタ75に表示される。ここで、検者により、図示無き撮影スイッチが押されると、眼底断層像及び眼底正面像が撮影され、メモリ75に記憶される。
【0057】
<変容例>
なお、本実施例において、アダプター501内に設置されたレンズ系510が装置光軸方向に移動可能な構成としてもよい。例えば、凸レンズ512が移動可能な構成としてもよい。この場合、凸レンズ512を移動させるによって、凸レンズ512と凹レンズ511間における測定光が平行光束として通過する距離Dが変更される。これによって、被検眼と凸レンズ512とのWDがほぼ維持された状態で、平行光束の距離Dが変更されるため、光路長が変更される。例えば、
図5は、凸レンズ512の駆動時の光路長変化について説明する図である。
図5(a)は、凸レンズ512駆動前における測定光の光路を示している。
図5(b)は、凸レンズ512を被検眼E方向に移動させた場合の測定光の光路を示している。凸レンズ512が被検眼方向に移動されることによって、WDがほぼ維持された状態で、平行光束の距離Dが延長されるため、測定光の光路長が延長される。
図5(c)は、凸レンズ512を対物レンズ10方向に移動させた場合の測定光の光路を示している。凸レンズ512が被検眼方向に移動されることによって、WDがほぼ維持された状態で、平行光束の距離Dが短くなるため、測定光の光路長が短くなる。このため、光路長調整は、OCTデバイス1に設けられた参照ミラー31の移動によって調整を行うだけでなく、凸レンズ512の駆動によっても行うことができる。また、このように、アダプター内のレンズ系510を移動させることによって、各動物専用に複数のアダプターを設けなくても、レンズ系を移動させることよって、光路長の調整が可能である。このため、1つのアダプターで種々の動物眼Ea1、Ea2、Ea3を撮影することができる。
【0058】
なお、凹レンズ511が移動可能な構成としてもよい。この場合、凸レンズへの測定光束の入射位置が変化するため、凸レンズ透過時における測定光束の屈折する角度が入射位置によって変化する。これによって、撮影画角が変化する。すなわち、凹レンズ511を移動させることによって、撮影画角を変更することが可能となる。このとき、対物レンズ10と凸レンズ512との間で、凹レンズ511が移動することになるため、光路長の長さは、ほとんど変化しない。
【0059】
なお、凹レンズを移動させる場合には、光路長の長さは、ほとんど変化しないが、凸レンズの移動時と同様にして光路長調整のために用いてもよい。しかしながら、アダプタ内のレンズ系510の移動によって、光路長調整を行う場合には、凹レンズ511の移動に対して、凸レンズ512を移動させた場合の方がより光路長を大きく変更することが可能であるため、より好ましい。
【0060】
なお、アダプター501内のレンズ系510を駆動させる場合、レンズ系510の位置を検知する構成を設けてもよい。例えば凸レンズ512や凹レンズ511の位置を検知した場合、各レンズの位置に基づいて、各レンズの移動量を算出する。そして、各レンズの移動量に基づいて、視度や撮影範囲を算出し、モニタ75に表示する。これによって、撮影条件や動物眼の状態を観察することができる。なお、レンズ位置の検知を行う構成としては、例えば、レンズ系510を駆動させるための図示無き駆動機構に設けられるエンコーダ等によって、行われることが挙げられる。
【0061】
なお、本実施例において、所定の屈折力を備えた視度補正レンズ(例えば、凸レンズ512や凹レンズ511)を用いるようにしてもよい。動物眼は、人眼とは、屈折特性が異なる。このため、従来のフォーカス調整範囲(人眼を対象とした場合のフォーカス調整範囲)では、適切にフォーカス調整を行えない場合がある。このとき、所定の屈折力を備えた凸レンズ512や凹レンズ511を用いることよって、フォーカスの調整範囲を変更することが可能となる。例えば、撮影を行う動物眼が遠視眼である場合には、屈折力が+(プラス)のD(ディオプター)の調整範囲でフォーカス調整を行う。この場合、例えば、+5Dの屈折力を持つようにアダプター501内のレンズ系510を構成し、―12D〜+12Dの調整範囲を−7D〜+17Dの調整範囲に変更する。これによって、遠視の動物眼であっても、フォーカス調整が可能となる。
【0062】
なお、本実施例において、光路長を変更させるためのレンズ系510として、凸レンズ512と凹レンズ511を用いる構成としたがこれに限定されない。レンズ系510を構成するレンズは、様々なレンズの組み合わせが考えられる。例えば、複数の凸レンズによって構成されるアダプターや複数のガラス板によって構成されるアダプターが挙げられる。これらの場合、WDが短くなるため、検者が動物眼の位置を調整する等の作業が行いづらくなる場合がある。
【0063】
例えば、複数のガラス板を配置する場合には、光路長を延長させるために、多くのガラス板を有するため、アダプターが大きくなり、アダプターと被検眼とのWDが小さくなる。また、ガラス板を用いる場合、設置したガラス板の厚みの半分程度しか光路長を延長することができないため、ガラス板の数が多くなってしまう。このため、WDが短くなりすぎ、ガラス板では、所望の光路長延長を行えない場合やコストがかかってしまうことがある。
【0064】
また、複数の凸レンズを用いる場合、凹レンズと凸レンズの組み合わせと比較して、測定光が集光しやすくなるため、適切に撮影を行うためには、被検眼をよりアダプターと近づけることが必要となる。このため、WDが小さくなる。
【0065】
なお、本実施例において、アダプターの着脱を検知する構成を設けてもよい。アダプターの着脱を検知することによって、アダプターが適切に装着状態を確認することが可能となり、適切な装着状態で撮影を行うことができる。例えば、アダプターの着脱の検知方法としては、アダプター内に光反射部材を設ける。また、OCTデバイスにアダプター検知用の光源と受光素子を設ける。そして、アダプター検知用光源から出射された光がアダプター内の光反射部材によって反射され、反射光を受光素子によって、検知することによって、アダプターの着脱を検知する(詳しくは、特開2011−147609号公報参照)。
【0066】
なお、本実施例において、OCTデバイス1の測定光路に挿脱可能な光学部材(例えば、ガラス板)を設け、光学部材の挿脱によって、光路長の長さを調整するようにしてもよい。また、アダプター内に挿脱可能な光学部材を設け、光路長の長さを調整できるような構成としてもよい。もちろん、アダプター内の光学部材を入れ換え可能な構成としてもよい。
【0067】
また、人眼撮影モードと動物眼撮影モードを有し、モード切換え信号に基づいて、測定光路の長さを調整するための光学部材が挿脱されるような構成としてもよい。
【0068】
<参考例>
なお、上記実施形態においては、光路長延長ユニット500を用いて通常より短い眼に対応したが、他の手法も有りうる。例えば、参照ミラー31等の光路長可変用光学部材の駆動範囲が、通常の人眼に加えて、動物眼などの通常より短い眼に対応するように広く設定された構成であってもよい。
【0069】
この場合、通常の人眼(例えば、17mm〜32mmの範囲)に対応する第1撮影モードと、通常より短い眼(例えば3mm〜17mmの範囲)に対応する第2撮影モードとを切り換えるモード切換ユニットが設けられる。
【0070】
制御部70は、眼底断層像が得られるように光路長可変用光学部材を移動させるときの探索範囲(光路長可変用光学部材の移動範囲)を、各撮影モードに応じて変更するようにしてもよい。例えば、第1撮影モードでは、通常の人眼に対応する範囲で光路長可変用光学部材が駆動され、眼底断層像が取得される位置が探索される。一方、第2撮影モードでは、通常より短い眼に対応する範囲で光路長可変用光学部材が駆動され、眼底断層像が取得される位置が探索される。
【0071】
なお、眼底断層像が得られる位置を探索する場合、制御部70は、例えば、光路長可変用光学部材を所定のステップで移動させ、眼底断層像が取得される位置を探索する。そして、制御部70は、受光素子73からの信号に基づいて眼底断層像が取得されたか否かを判定し、その判定結果に基づいて眼底断層像が取得される位置に光路長可変用光学部材を移動させる(詳しくは、特願2011−080430号公報参照)。