(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体フィルムの両面にそれぞれ第1の金属蒸着電極ならびに第2の金属蒸着電極を形成した両面金属化フィルムを誘電体層とともに巻回または積層した金属化フィルムコンデンサであり、
前記第1の金属蒸着電極ならびに第2の金属蒸着電極はともに、前記両面金属化フィルムの幅方向略中央部において前記両面金属化フィルムの長手方向に伸びるように設けられたセンターマージンにて複数の分割電極にて構成された分割電極部と1つの電極で構成された大電極部に分離され、
これら前記第1の金属蒸着電極のセンターマージンと前記第2の金属蒸着電極のセンターマージンとは少なくとも一部が重なり合っており、
前記第1の金属蒸着電極のセンターマージンの幅は前記第2の金属蒸着電極のセンターマージンの幅よりも大きく、
前記第2の金属蒸着電極のセンターマージンは前記第1の金属蒸着電極のセンターマージンの範囲から外側へはみ出すことなく重なり合っていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサは、一般に金属箔を電極に用いるものと、誘電体フィルム上に設けた蒸着金属を電極に用いるものとに大別される。中でも、蒸着金属を電極(以下、蒸着電極)とする金属化フィルムコンデンサは、金属箔を用いるものに比べて電極の占める体積が小さく小型軽量化が図れることと、蒸着電極特有の自己回復性能(絶縁欠陥部で短絡が生じた場合に、短絡のエネルギーで欠陥部周辺の蒸着電極が蒸発・飛散して絶縁化し、コンデンサの機能が回復する性能)により絶縁破壊に対する信頼性が高いことから、従来から広く用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の、この従来の金属化フィルムコンデンサの構成について
図5を用いて説明する。ここで
図5(a)は特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサの断面図、
図5(b)は一方の金属化フィルムの上面図、
図5(c)は他方の金属化フィルムの上面図である。
【0004】
図5(a)に示すように、特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルム101の片面に一方の端の絶縁マージン102を除き金属を蒸着することで蒸着電極103を形成した2枚の金属化フィルム104を、互いに絶縁マージン102が逆方向となるように重ね合わせ、巻回あるいは積層することで構成される。また、絶縁マージン102と反対側にはメタリコン電極105が金属溶射により設けられており、蒸着電極103はこのメタリコン電極105と接続されている。
【0005】
さらに、特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサを構成する2枚の金属化フィルム104は、金属化フィルム104の絶縁マージン102側に複数の独立した分割電極106にて構成された分割電極部107と、絶縁マージン102から遠い側(メタリコン電極105側)に1つの大電極108で構成された大電極部109とを有する。なお、このように特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサは2枚の金属化フィルム104にて構成されるものであるが、これら2枚の金属化フィルム104は
図5(b)(c)に示すように、メタリコン電極105との接続方向が異なるだけで、構成自体は同じである。
【0006】
ここで、
図5(b)(c)に示すように、各分割電極106と大電極部109とは金属化フィルム104の幅方向略中央に設けられたマージン(以下、センターマージン110と呼ぶ)にて区分され、さらにこのセンターマージン110に設けられたヒューズ111にて電気的に並列接続されている。このヒューズ111は、絶縁欠陥部が破壊した際に分割電極106に流れ込む電流により切断されることで、絶縁欠陥部を電気的に分離しショートや発火等を未然に防ぐ、いわば自己保安機能を形成するものである。
【0007】
このように特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサは、絶縁マージン102に近い位置に分割電極部107を設け、これを大電極部109と接続した構成となっている。そして、金属化フィルムコンデンサにおいては一般的にメタリコン電極105に近いほど蒸着電極103中を流れる電流は大きいため、メタリコン電極105側の略半面全体をヒューズを設けない大電極部109とし、金属化フィルム104の幅方向の略中央部にヒューズ111を設けた特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサにおいては、ヒューズ111における発熱が比較的少ないものとなっており、金属化フィルムコンデンサの温度上昇を抑制できるものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに、特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサは、ヒューズ111における発熱を少なくして温度上昇を抑制できるが、特許文献1に記載の金属化フィルムコンデンサを初めとする従来の金属化フィルムコンデンサは以下のような課題があった。この課題について
図6を用いて説明する。
図6(a)は従来の金属化フィルムコンデンサのヒューズ111未切断時の蒸着電極103の状態を示す模式図および等価回路図、
図6(b)はヒューズ111切断時の蒸着電極103の状態を示す模式図および等価回路図である。
【0010】
まず、金属化フィルムコンデンサの実使用時において、ヒューズ111が切断されていない場合、
図6(a)に示すように2枚の金属化フィルム104の対向する蒸着電極面(Wの範囲)が有効電極面となり1つのコンデンサ(C)を形成し、金属化フィルムコンデンサが機能する。この状態は、絶縁欠陥部等が発生することなく、金属化フィルムコンデンサが問題なく動作している状態である。
【0011】
一方、金属化フィルムコンデンサの実使用時において、互いに対向する蒸着電極103の夫々のヒューズ111が切断された場合、本来であれば絶縁欠陥部を有する分割電極106を電気的に完全に分離することが求められるが、実際にはヒューズが切断された後も対向しあう蒸着電極面(W1、W2、W3の範囲)が有効電極面となり、これらの間でコンデンサが形成され、完全に分割電極106を電気的に分離できない場合がある。具体的には
図6(b)で示すように、対向しあう蒸着電極面の間で3つの直列接続のコンデンサ(C1、C2、C3)が形成されることになる。このようにして形成されたコンデンサのうち、特に分割電極106どうしが重なり合って形成される中央部のコンデンサ(C2)はP極とN極の蒸着電極103どうしの対向面積が小さく、すなわち容量が極端に小さいので、電圧の大半がこの中央部のコンデンサに印加されるため、場合によってはこの中央部において絶縁破壊が発生する可能性がある。
【0012】
なお、この例においては上記中央部のコンデンサは分割電極106どうしが重なり合って形成されるものであるが、
図6(c)に示すように、蒸着電極103の設計によっては大電極部109どうしが重なり合って形成されることもある。この場合は、P極とN極の蒸着電極103どうしの対向面積(W4の範囲)の小さい1つのコンデンサ(C4)が形成され、対向部が残ってしまい、結果として分割電極どうしを完全に分断することができていない。
【0013】
このように、従来の金属化フィルムコンデンサの構成では、ヒューズ111切断後もその電流経路においてコンデンサが形成されてしまうことに起因して絶縁破壊が生じ、ひいては金属化フィルムコンデンサの信頼性を低下させてしまうことがあった。
【0014】
そこで、本発明はヒューズ切断後にコンデンサが形成されてしまうことを防止し、絶縁破壊の発生の可能性を抑制することで金属化フィルムコンデンサの信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの片面に第1の金属蒸着電極を形成した第1の金属化フィルムと、誘電体フィルムの片面に第2の金属蒸着電極を形成した第2の金属化フィルムを一対とし、これら第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとを重ね合わせて巻回または積層した金属化フィルムコンデンサであって、前記第1の金属蒸着電極ならびに前記第2の金属蒸着電極はともに、前記誘電体フィルムの幅方向略中央部において前記誘電体フィルムの長手方向に伸びるように設けられたセンターマージンにて複数の分割電極にて構成された分割電極部と1つの電極で構成された大電極部に分離され、これら前記第1の金属蒸着電極のセンターマージンと前記第2の金属蒸着電極のセンターマージンとは少なくとも一部が重なり合った
ており、前記第1の金属蒸着電極のセンターマージンの幅は前記第2の金属蒸着電極のセンターマージンの幅よりも大きく、前記第2の金属蒸着電極のセンターマージンは前記第1の金属蒸着電極のセンターマージンの範囲から外側へはみ出すことなく重なり合っていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
この構成により、ヒューズ切断時に上記のようなP極からN極へ向かう電流経路において対向する蒸着電極面の間で直列接続のコンデンサが形成されることはなくなり、ヒューズ切断部分における電流経路を完全に切断することができる。
【0017】
この結果、絶縁破壊が生じる可能性を抑制することができ、金属化フィルムコンデンサの信頼性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
以下、
図1、
図2を用いて、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサの構成について説明する。
【0020】
図1は本実施の形態の金属化フィルムコンデンサの構成を示した図であり、(a)は断面図、(b)は第1の金属化フィルム1の上面図、(c)は第2の金属化フィルム2の上面図である。また、
図2は本実施の形態の金属化フィルムコンデンサにおいて第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2を重ね合わせた状態を示す上面図である。
【0021】
図1において、第1の金属化フィルム1はP極に電気的に接続され、第2の金属化フィルム2はN極に電気的に接続される金属化フィルムである。そして、これら第1の金属化フィルム1および第2の金属化フィルム2を一対として重ね合わせ、これを複数ターン巻回したものを素子として金属化フィルムコンデンサを形成している。ここで、第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2は外部電極取り出しのため、幅方向に1mmずらしている。
【0022】
図1に示すように、第1の金属化フィルム1は誘電体となるポリプロピレンフィルム3の片面上に金属蒸着電極4が形成されており、端部には第2の金属化フィルム2と絶縁するために幅5mmの絶縁マージン5を設けた状態となっている。なお、本実施例では各金属化フィルムの誘電体として厚み3.0μmのポリプロピレンフィルム3を用いたが、これ以外にも適当な厚みのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド、ポリスチレンなどを用いてもよい。
【0023】
メタリコン電極6は、ポリプロピレンフィルム3の一方の端部に亜鉛やその他の金属材料又は合金を溶射することで形成されている。このメタリコン電極6は、例えば金属製のバスバーやリード線を、半田付けや溶接することで外部と電気的に接続される。
【0024】
金属蒸着電極4は、第1の金属化フィルム1の長手方向(巻回方向)および幅方向に設けられたマージンによって、複数の電極部に区分されている。具体的には、
図1(b)に示すように、ポリプロピレンフィルム3の幅方向略中央部においてポリプロピレンフィルム3の長手方向に一直線に伸びるように設けられたマージンであるセンターマージン7と、センターマージン7よりもその幅が小さく、センターマージン7から絶縁マージン5方向に伸びてこれらセンターマージン7と絶縁マージン5を接続する幅方向マージン8にて複数の電極部に区分されている。
【0025】
センターマージン7のメタリコン電極6側には幅方向のマージンは設けておらず、したがってセンターマージン7のメタリコン電極6側は1つの電極で構成された大電極部9が配置されている。
【0026】
一方、センターマージン7の絶縁マージン5側には、複数の幅方向マージン8がポリプロピレンフィルム3の長手方向において一定間隔で複数設けられており、すなわち
図1(b)に示すように、センターマージン7の絶縁マージン5側はポリプロピレンフィルム3の長手方向に連続的に設けられた分割電極10にて構成された分割電極部11となっている。分割電極10は
図1(b)に示すように、矩形の形状を成し、その短辺がポリプロピレンフィルム3の長手方向と平行となっている。なお、本実施の形態においては、この分割電極10をセンターマージン7から絶縁マージン5に向かって1段だけ設けた構成としたが、この構成以外にも分割電極部11においてポリプロピレンフィルム3の長手方向にさらにマージンを設け、より小さい分割電極に区分することで、センターマージン7から絶縁マージン5に向かって分割電極を2段以上設けた格子状の分割電極部としてもよい。
【0027】
そして、これら大電極部9と夫々の分割電極10は、分割電極10の短辺中央部から大電極部9の方向に延びたヒューズ12にて接続されており、複数の分割電極10は大電極部9に電気的に並列接続されている。このヒューズ12は絶縁欠陥部が破壊した際に分割電極10に流れ込む電流により切断されることで、絶縁欠陥部を電気的に分離する自己保安機能を形成するものである。また、ヒューズ12はポリプロピレンフィルム3の長手方向に一定間隔で設けられている。なお、上述のごとく、分割電極部11をさらに小さい分割電極にて構成した場合、ヒューズ12切断時の容量減少をさらに小さくすることができる。
【0028】
第2の金属化フィルム2は、
図1(a)、
図1(c)に示すようにセンターマージン13およびヒューズ14を除いては、第1の金属化フィルム1と同様の構成を成しており、
図1(a)、
図1(c)では第1の金属化フィルム1と同じ構成要素に対しては同じ番号を付してその説明を省略する。ただし、第2の金属化フィルム2と第1の金属化フィルム1とではメタリコン電極6に接続される方向が異なり、第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2がそれぞれ接続されるメタリコン電極6は互いに対向して配置されている。
【0029】
第2の金属化フィルム2のセンターマージン13は、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7と同様にポリプロピレンフィルム3の幅方向略中央部においてポリプロピレンフィルム3の長手方向に一直線に伸びるように設けられている。センターマージン13の幅は、センターマージン7と異なり、センターマージン7よりも小さいものとなっている。このセンターマージン13は、センターマージン7と同様に絶縁欠陥部を電気的に分離する自己保安機能を形成するものである。
【0030】
また、第2の金属化フィルム2のヒューズ14は第1の金属化フィルム1のヒューズ12に比べてその幅が小さい。この第1の金属化フィルム1のヒューズ12の幅と第2の金属化フィルム2のヒューズ14の幅の比は、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7の幅と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13の幅の比と等しく、すなわち第1の金属化フィルム1のヒューズ12の幅と第2の金属化フィルム2のヒューズ14の幅の比をa:bとしたとき、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7の幅と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13の幅の比もa:bとなるように設計されている。幅方向マージン8や絶縁マージン5に関しては、第1の金属化フィルム1、第2の金属化フィルム2はどちらも同じ幅としている。また、分割電極10の面積に関しては、センターマージン7の幅とセンターマージン13の幅が異なるため若干の違いはあるものの、第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2における分割電極10の面積はほとんど同じものとなっている。なお、第2の金属化フィルム2においてヒューズ14が設けられる間隔は、第1の金属化フィルム1においてヒューズ12が設けられる間隔と等しいものである。
【0031】
次に、
図2を用いて、これら第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2を重ね合わせた状態について説明する。
図2は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2を重ね合わせた状態を示す上面図であり、第2の金属化フィルム2は第1の金属化フィルム1と区別するため点線にて図示している。
【0032】
図2に示すように、第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2を重ね合わせ巻回する際、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13は互いに重なり合うように調整している。さらに、センターマージン7は上述したようにセンターマージン13よりもその幅が大きく、センターマージン13はセンターマージン7の範囲から外側にはみ出すことはなく、センターマージン7の範囲内に収まるように重なり合っている。
【0033】
また、第1の金属化フィルム1のヒューズ12と第2の金属化フィルム2のヒューズ14は
図2に示すように、その位置がずれるように第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2は巻回されている。ここで、第1の金属化フィルム1におけるヒューズ12どうしの間隔と第2の金属化フィルム2におけるヒューズ14どうしの間隔は等しく設計しているため、作製される金属化フィルムコンデンサのどの箇所においても
図2に示すようにヒューズ14はヒューズ12の間に位置することになり、対向しあう第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2のヒューズ12、ヒューズ14が重なり合うことはない。
【0034】
次に、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサの効果について
図3を用いて説明する。
図3は本実施の形態の金属化フィルムコンデンサにおいて、比較的近接したヒューズ12とヒューズ14がともに切断した際の金属蒸着電極4の状態を示す模式図および等価回路図である。
【0035】
上述したように、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13が重なり合った構成となっている。
【0036】
このため、
図3で示すように第1の金属化フィルム1ならびに第2の金属化フィルム2の分割電極10どうし、あるいは大電極部9どうしが重なり合うことはなく、対向する2組の蒸着電極面(W5、W6の範囲)どうしは完全に電気的な接続が切断されるため、P極からN極に向かう電流経路において従来の金属化フィルムコンデンサのようにコンデンサが形成されることはなく、P極からN極への電流経路を完全に切断できる。したがって、従来の金属化フィルムコンデンサのように金属化フィルムの一部に電圧の大半が印加されるような箇所は発生しない。この結果、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサは絶縁破壊が発生する可能性が従来の金属化フィルムコンデンサと比べて低く、信頼性の高いものとなっている。
【0037】
なお、このように本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13が重なり合った構成であるが、この本実施の形態の金属化フィルムコンデンサを作製する際に特に注意を払うことなく巻回作業を行った場合、上記の独特の構成により、第1の金属化フィルム1のヒューズ12と第2の金属化フィルム2のヒューズ14どうしが重なり合ってしまう可能性が他の構成の金属化フィルムコンデンサに比べ必然的に高いものとなる。一方で、一般的に金属化フィルムコンデンサのヒューズ部分は電流密度が高い状態で電流が流れるため、金属化フィルムコンデンサにおいて最も発熱量の大きい箇所の一つであることが知られている。したがって、第1の金属化フィルム1のヒューズ12と第2の金属化フィルム2のヒューズ14どうしが重なり合った場合、この箇所が局所的に発熱量の大きい部分となってしまう可能性があり、引いては金属化フィルムコンデンサの特性劣化の要因となってしまうことがある。
【0038】
そこで、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサは、第1の金属化フィルム1のヒューズ12が第2の金属化フィルム2のヒューズ14の間に常に位置するように構成されている。このため、対向し合う第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2においてヒューズ12とヒューズ14の位置が重なり合うことはなく、局所的に発熱量の大きい箇所が発生することが抑制され、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサは特性劣化の可能性が抑制されたものとなっている。
【0039】
また、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7の幅は第2の金属化フィルム2のセンターマージン13の幅よりも大きく、センターマージン13がセンターマージン7の範囲からはみ出すことなくこれらセンターマージン13とセンターマージン7は重なり合った構成としている。
【0040】
このような構成によると完成品としての金属化フィルムコンデンサの容量バラつきを抑制することができる。
【0041】
本実施の形態の金属化フィルムコンデンサにおいて、上述のごとくヒューズ12とヒューズ14切断時にP極からN極に向かう電流経路においてコンデンサを形成しないようにし、その電流経路を切断するためには、少なくともセンターマージン7とセンターマージン13の一部が重なり合うようにすればよいが、センターマージン7とセンターマージン13を所定の寸法の重なり幅を維持し続けながら、製造装置にて第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2を巻回し続けることは難しく、現実的には不可能である。この結果、センターマージン7とセンターマージン13の重なり幅がずれ、金属蒸着電極4どうしの対向する面積にバラつきが生じ、金属化フィルムコンデンサの完成品どうしに容量バラつきが生じることになる。
【0042】
しかしながら、本実施の形態のようにセンターマージン13がセンターマージン7の範囲からはみ出すことなくセンターマージン13とセンターマージン7を重なり合った構成とすれば、ある程度センターマージン7とセンターマージン13を重ね合わせる位置関係がずれたとしても、対向する面積にバラつきが生じることはほとんどない。したがって、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは、上述のごとく特性劣化の可能性を抑制できるとともに、量産時の完成品どうしの容量バラつきを抑制することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは、ヒューズ12とヒューズ14の幅の比をセンターマージン7とセンターマージン13の幅の比と等しくなるように設計している。
【0044】
仮に、ヒューズ12とヒューズ14の幅の比をセンターマージン7とセンターマージン13の幅の比と極端に異なるように設計した場合、各ヒューズに流れる電流密度の観点から、ヒューズ12とヒューズ14の溶断特性が大きく異なるものとなってしまい、その動作性にばらつきが生じる可能性がある。
【0045】
そこで、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは上述のような設計とすることでこのヒューズ12とヒューズ14の動作性のばらつきが発生することを抑制している。
【0046】
特に、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13の幅を敢えて異ならせた構成である本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは、ヒューズ12とヒューズ14の幅を上述のような設計とすることは重要である。
【0047】
(実施の形態2)
以下、
図4を用いて、実施の形態2の金属化フィルムコンデンサの構成について説明する。
図4(a)は本実施の形態の金属化フィルムコンデンサの断面図、
図4(b)は第1の蒸着電極21と第2の蒸着電極22の位置関係を示す上面図である。
図4(b)において第2の蒸着電極22の位置は点線で示している。
【0048】
なお、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサにおいては、蒸着電極の構成が実施の形態1の金属化フィルムコンデンサと異なるものであり、これ以外の構成および材料は実施の形態1の金属化フィルムコンデンサと同様のものとなっている。したがって、実施の形態1の金属化フィルムコンデンサと同じ構成要素に関しては同じ番号を付し、その説明を省略する。
【0049】
本実施の形態の金属化フィルムコンデンサでは、
図4(a)に示すように誘電体となるポリプロピレンフィルム3の両面に夫々第1の蒸着電極21と第2の蒸着電極22を形成した両面金属化フィルム23を誘電体層24とともに巻回することで構成されている。この誘電体層24は両面金属化フィルム23を巻回した際に第1の蒸着電極21と第2の蒸着電極22の絶縁を確保するためのものであり、本実施の形態では誘電体層24として上記誘電体と同様にポリプロピレンフィルムを用いている。
【0050】
あるいは、誘電体層24としてポリカーボネイト、ポリフェニレンオキサイド、またはポリアリレートを有機溶剤に溶かした誘電体塗料などを用いてもよい。この場合は、第1の蒸着電極21と第2の蒸着電極22を形成した両面金属化フィルム23の片面あるいは両面に誘電体塗料を塗布することで誘電体層24を形成する。
【0051】
図4(b)に示すように、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサの第1の蒸着電極21ならびに第2の蒸着電極22は実施の形態1で示した金属化フィルムコンデンサの第1の金属化フィルム1ならびに第2の金属化フィルム2と同様の電極パターンを成している。
【0052】
すなわち、第1の蒸着電極21と第2の蒸着電極22はともに、中央に設けられたセンターマージン25、センターマージン26にて大電極部9と分割電極部11に分離され、これらセンターマージン25とセンターマージン26は重なり合った構成となっている。さらに、センターマージン25はセンターマージン26よりも幅が大きく、センターマージン26はセンターマージン25の範囲から外側にはみ出すことなく重なり合った状態となっている。
【0053】
このように、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサはいわば実施の形態1の金属化フィルムコンデンサの構成を両面金属化フィルム23に適用したものであるが、この本実施の形態の金属化フィルムコンデンサはより高い精度にてセンターマージン25とセンターマージン26を上述の位置関係に配置することができる。
【0054】
これはすなわち、両面金属化フィルム23がポリプロピレンフィルム3の両面に蒸着金属であるアルミニウムを蒸着させることで形成されることによる。
【0055】
実施の形態1の金属化フィルムコンデンサにおいて、第1の金属化フィルム1のセンターマージン7と第2の金属化フィルム2のセンターマージン13は両者とも0.2mm程度の幅であり、これらを重ね合わせるためにはその作製工程において第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2を正確に配置し、ずれることなく巻回する必要がある。
【0056】
一方で、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサは、ポリプロピレンフィルム3の両面にマージンオイルを塗布することでセンターマージン25、センターマージン26を形成するものであり、センターマージン25、センターマージン26どうしの位置関係の調整が非常に容易なものとなっている。
【0057】
したがって、本実施の形態の金属化フィルムコンデンサは非常に精度よくセンターマージン26をセンターマージン25の内側に配置させたものとなっており、本発明の効果を十分に発揮することが可能である。
【0058】
以上説明したように本発明の金属化フィルムコンデンサは絶縁破壊が発生する可能性が低く、信頼性の高いものとなっている。
【0059】
なお、実施の形態1ならびに実施の形態2ではともに巻回型の金属化フィルムコンデンサを例示したが、これに限らず積層型の金属化フィルムコンデンサにも本発明を適用することは可能である。
【0060】
また、この発明は上記の実施の形態1ならびに実施の形態2の金属化フィルムコンデンサの構成に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。