(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.第1実施形態
〔基本構成〕
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10の構成を表す縦断面図を示し、
図2に、
図1のII-II線断面図を示す。
図1および
図2に示すように、内燃機関としてのエンジンEの吸気
バルブ(不図示)の開閉時期を設定する弁開閉時期制御装置10と、エンジンEとを制御するエンジン制御ユニット(ECU)40を備えた内燃機関制御システムが構成されている。
【0022】
〔弁開閉時期制御装置〕
図1に示すように、弁開閉時期制御装置10は、エンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転部材としての外部ロータ11と、エンジンEの燃焼室の吸気バルブを開閉するカムシャフト3に連結ボルト13により連結される従動側回転部材としての内部ロータ12とを備えている。内部ロータ12は、カムシャフト3の回転中心である軸芯Xと同軸芯に配置され、この内部ロータ12と外部ロータ11とは軸芯Xを中心にして相対回転自在に構成されている。
【0023】
外部ロータ11と内部ロータ12とは軸芯Xと同軸芯上に配置され、外部ロータ11はフロントプレート14とリヤプレート15とに挟み込まれる状態で締結ボルト16により締結されている。リヤプレート15の外周にはタイミングスプロケット15Sが形成されている。内部ロータ12は、その中心部位がリヤプレート15の中央部に形成された開口を貫通する状態で配置され、内部ロータ12のリヤプレート15側の端部に吸気側のカムシャフト3が連結されている。
【0024】
図2に示すように、外部ロータ11には、軸芯Xの方向(径方向内側)に向けて突出する複数の突出部11Tが一体的に形成されている。内部ロータ12は、複数の突出部11Tの突出端に密接する外周を有する円柱状の本体部分12Hと、本体部分12Hから軸芯Xの径方向外側に向けて放射状に突出して外部ロータ11の内周面に密接するよう形成された複数のベーン部12Tを備えている。回転方向で隣接する2つの突出部11Tと本体部分12Hにより流体圧室Cが形成されている。この流体圧室Cにベーン部12Tが嵌り込んで流体圧室Cを仕切ることにより、流体圧室Cは進角室Caと遅角室Cbとに分割されている。外部ロータ11と内部ロータ12とは、流体圧室C内でベーン部12Tが周方向に回転移動可能な範囲だけ相対回転が可能となる。外部ロータ11と内部ロータ12との間の回転位相のずれを相対回転位相と称する。
【0025】
弁開閉時期制御装置10は、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ11が駆動回転方向Sに向けて回転する。また、外部ロータ11に対して内部ロータ12が駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。この弁開閉時期制御装置10では、相対回転位相が進角方向Saに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を高め、相対回転位相が遅角方向Sbに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を低減するようにクランクシャフト1とカムシャフト3との関係が設定されている。
【0026】
ベーン部12Tで仕切られた流体圧室Cのうち、作動流体としての作動油が供給されることで相対回転位相を進角方向Saに変位させる空間が進角室Caであり、これとは逆に、作動油が供給されることで相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる空間が遅角室Cbである。ベーン部12Tが進角方向Saの移動端(軸芯Xを中心にした揺動端)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン部12Tが遅角側の移動端(軸芯Xを中心にした揺動端)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。
【0027】
図1,
図2に示すように、内部ロータ12には進角室Caに連通する進角制御油路21と、遅角室Cbに連通する遅角制御油路22と、後述する中間ロック機構Lに作動油を供給するロック解除油路23とが形成されている。この弁開閉時期制御装置10では、エンジンEのオイルパン1Aに貯留される潤滑油を作動油として用いており、この作動油が進角室Caまたは遅角室Cbに供給される。
【0028】
図1に示すように、内部ロータ12とフロントプレート14とに亘って、相対回転位相が最遅角にある状態から相対回転位相を中間ロック位相Pに達するまで付勢力を作用させるトーションスプリング18が備えられている。なお、トーションスプリング18の付勢力が作用する範囲は、中間ロック位相Pを超えるものでも良く、中間ロック位相Pに達しないものであっても良い。
【0029】
この弁開閉時期制御装置10は、エンジンEのクランクシャフト1に設けた出力スプロケット7と、外部ロータ11のタイミングスプロケット15Sとに亘ってタイミングチェーン8を巻回することで、外部ロータ11はクランクシャフト1と同期回転する。図面には示していないが、排気側のカムシャフト3の前端にも弁開閉時期制御装置10と同様の構成の装置が備えられており、この装置に対してもタイミングチェーン8から回転力が伝達される。
【0030】
〔弁開閉時期制御装置:中間ロック機構〕
この弁開閉時期制御装置10は、中間ロック機構Lを備えている。中間ロック機構Lは、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相を
図2に示す中間ロック位相Pに拘束(ロック)し、またロック状態を解除する機能を有する。
図3に、中間ロック機構Lのロック状態を表す部分拡大断面図を示す。
図4に、中間ロック機構Lのロック解除状態を表す部分拡大断面図を示す。中間ロック位相Pは、相対回転位相が進角方向Saの作動端となる最進角位相と遅角方向Sbの作動端となる最遅角位相との間の所定位相に設定され、低温状態のエンジンEの始動を良好に行うことができる相対回転位相である。
【0031】
図2〜
図4に示すように、中間ロック機構Lは、第1ロック部材31と第2ロック部材32と、第1ロック孔33と第2ロック孔34と、スプリング35とから構成される。スプリング35は付勢部材の一例である。
図5に、第1ロック部材31と第2ロック部材32とスプリング35の分解斜視図を示す。
図3〜
図5に示すように、第1ロック部材31は有底の円筒形状を有している。第1ロック部材31の内側の空間である第1凹孔31aは円柱状である。第1ロック部材31の外周面には、第1開口面31hの側から第1縦溝31bが軸芯方向に沿って形成されている。また、第1縦溝31bと交差するように、軸芯と垂直な方向に3本の第1横溝31cが全周に亘って形成されている。第1縦溝31bの深さと第1横溝31cの深さは同じである。
【0032】
第1縦溝31bの第1開口面31h側の端には切欠31dが形成され、これにより第1縦溝31bと第1凹孔31aとが連通している。なお、
図3に示すように、第1ロック部材31において、突出時に第1ロック孔33と嵌合する範囲には、第1縦溝31bも第1横溝31cも形成されていない。このような構造を採ることにより、第1ロック部材31が作動油の油圧により引退する時でも、作動油が第1縦溝31bや第1横溝31cに流入しにくい構造となっている。なお、第1縦溝31bと第1凹孔31aとを連通させるのは切欠31dに限られない。第1縦溝31bまたは第1横溝31cと連通するように開口された貫通孔であってもよい。
【0033】
図3〜
図5に示すように、第2ロック部材32は有底の円筒形状を有している。第2ロック部材32の内側の空間である第2凹孔32aは円柱状であり、第2ロック部材32の内周面に第1ロック部材31の外周面が同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌り込むように構成されている。
図4に示すように、軸芯方向については、第1ロック部材31が第2ロック部材32に嵌り込んで第1開口面31hが第2底面32eと当接した嵌合状態にあるときに、第1ロック部材31の端部が第2ロック部材32の第2開口面32hから少し突出するように構成されている。この状態での第1ロック部材31と第2ロック部材32の軸芯に沿った方向の長さの合計は、内部ロータ12の軸芯X方向の長さと同じか若干短くなる。なお、第1ロック部材31と第2ロック部材32とが同軸芯で嵌合されるとは、第1ロック部材31と第2ロック部材32とが嵌合状態にあるときに、第1ロック部材31の軸芯と第2ロック部材32の軸芯とが一致する場合だけでなく、互いの軸芯が若干ずれている場合も含む概念である。
【0034】
第2ロック部材32の外周側面には、第2開口面32hの側から第2縦溝32bが軸芯方向に沿って形成されている。また、第2縦溝32bと交差するように、軸芯と垂直な方向に3本の第2横溝32cが全周に亘って形成されている。第2縦溝32bの深さと第2横溝32cの深さは同じである。第2縦溝32bの第2開口面32hと反対側の端部には、貫通孔32dが形成され、これにより第2縦溝32bと第2凹孔32aとが連通している。貫通孔32dの内径は、第1ロック部材31の隣接する2つの第1横溝31c,31cの最短距離よりも長い。なお、
図3に示すように、第2ロック部材32において、突出時に第2ロック孔34と嵌合する範囲には、第2縦溝32bも第2横溝32cも形成されていない。これにより、第2ロック部材32が作動油の油圧により引退する時でも、作動油が第2縦溝32bや第2横溝32cに流入しにくい構造となっている。
【0035】
第1ロック孔33は、リヤプレート15の内部ロータ12と対向する側から軸芯Xに平行な軸芯を持つように形成された有底の孔で、第1ロック部材31が突出したときに嵌合する。
図3に示すように、軸芯に沿って見た第1ロック孔33の形状は、リヤプレート15の径方向における第1ロック孔33の長さが第1ロック部材31と同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌合可能な大きさで、周方向の長さは第1ロック部材31の直径よりも遅角方向Sbの側に少し拡張された長円形を有している。また、長円形ではなく、第1ロック孔33の内径を第1ロック部材31の直径よりもやや大きくした円形に形成してもよい。
【0036】
第2ロック孔34は、フロントプレート14の内部ロータ12と対向する側から軸芯Xに平行な軸芯を持つように形成された有底の孔で、第2ロック部材32が突出したときに嵌合する。
図3に示すように、軸芯に沿って見た第2ロック孔34の形状は、フロントプレート14の径方向における第2ロック孔34の長さが第2ロック部材32と同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌合可能な大きさで、周方向の長さは第2ロック部材32の直径よりも進角方向Saの側に少し拡張された長円形を有している。また、長円形ではなく、第2ロック孔34の内径を第2ロック部材32の直径よりもやや大きくした円形に形成してもよい。なお、第1ロック孔33と第2ロック孔34の溝深さは同じである。
【0037】
図3,
図4に示すように、内部ロータ12の複数のベーン部12Tの1つには、軸芯Xに平行な軸芯を持つ二段の段付き貫通孔12aが形成されている。段付き貫通孔12aの一段目の孔である大径孔12bは、内部ロータ12のフロントプレート14と対向する側から開孔され、第2ロック部材32が同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌り込む容積を有している。大径孔12bの内周面には開孔が形成されており、その開孔から大径孔12bと弁開閉時期制御装置10の外部とを連通する背圧通路12eが形成されている。背圧通路12eにより大径孔12bと弁開閉時期制御装置10の外部が連通するのは、相対回転位相が中間ロック位相Pの時である。該開孔は断面が円形であり、その直径(内径)は、第2ロック部材32の隣接する2つの第2横溝32c,32cの最短距離よりも長い。
【0038】
段付き貫通孔12aの二段目の孔である小径孔12cは、大径孔12bの底面12dから大径孔12bと同軸芯で内部ロータ12を貫通するように形成されている。底面12dはストッパの一例である。小径孔12cの内周面は、第1ロック部材31の外周面と同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌り込む大きさを有している。段付き貫通孔12aは内部ロータ12のフロントプレート14と対向する側から加工することによって一工程で形成することができるので、加工工数を低減することができ、弁開閉時期制御装置10のコストを低減することができる。
【0039】
図3〜
図5に示すように、第1ロック部材31は、第1開口面31hが第2ロック部材32の第2開口面32hに対向する向きで、スプリング35を第1凹孔31aに挿入した状態で第2ロック部材32に嵌め込まれ、この嵌合状態で段付き貫通孔12aに挿入される。スプリング35の両端部は、第1ロック部材31の第1底面31eと第2ロック部材32の第2底面32eとに当接して、第1ロック部材31と第2ロック部材32の両方に対し内部ロータ12から突出させる方向に付勢力を付与している。すなわち、第1ロック部材31と第2ロック部材32とは、1本のスプリング35を共用している。これにより、弁開閉時期制御装置10の加工工数を低減して構成を簡素にすることができると共に、部品点数の削減によるコストダウンを実現できる。
【0040】
〔弁開閉時期制御装置:油路構成〕
図1,
図3,
図4に示すように、本実施形態においては、作動油を第1ロック孔33と第2ロック孔34に給排するロック解除油路23がカムシャフト3から内部ロータ12にかけて形成されている。従って、ロック解除油路23の油路長は第1ロック孔33までの油路長が短く、第2ロック孔34までの油路長が長くなっている。その結果、ロック解除油路23から第1ロック孔33および第2ロック孔34へ作動油の供給が行われる際、第1ロック孔33へは作動油が早く供給され、第2ロック孔34へはそれより遅れて供給される。
【0041】
〔弁開閉時期制御装置の流体制御機構〕
図1に示すように、エンジンEには、エンジンEの駆動力でオイルパン1Aの潤滑油を吸引して作動油として送り出す油圧ポンプ20を備えている。本実施形態に係る内燃機関制御システムでは、油圧ポンプ20から吐出された作動油を弁開閉時期制御装置10の進角室Caと遅角室Cbとの一方を選択して供給する電磁操作型の位相制御弁24と、油圧ポンプ20から吐出された作動油をロック解除油路23に供給する電磁操作型の解除制御弁25とを備えている。特に、油圧ポンプ20と、位相制御弁24と、解除制御弁25と、作動油が給排される油路とを併せて弁開閉時期制御装置10の流体制御機構が構成されている。
【0042】
位相制御弁24は、ECU40からの制御信号によりスプール位置が変化して、進角ポジションと遅角ポジションと中立ポジションとに切換操作可能な電磁弁として構成されている。つまり、進角ポジションでは、油圧ポンプ20から吐出される作動油が進角制御油路21を流通して進角室Caに供給されると共に、遅角室Cbの作動油が遅角制御油路22から排出される。遅角ポジションでは、油圧ポンプ20から吐出される作動油が遅角制御油路22を流通して遅角室Cbに供給されると共に、進角室Caの作動油が進角制御油路21から排出される。中立ポジションでは、進角室Caと遅角室Cbのいずれにも作動油の給排はない。なお、位相制御弁24へ100%デューティで通電がなされたときには位相制御弁24は進角ポジションとなり、通電が切断されたときは遅角ポジションとなる。
【0043】
解除制御弁25は、ECU40からの制御信号によりアンロックポジションとロックポジションとに切換操作可能な電磁弁として構成されている。つまり、アンロックポジションでは、油圧ポンプ20から吐出される作動油がロック解除油路23を流通して第1ロック孔33および第2ロック孔34に供給される。ロックポジションでは、ロック解除油路23を流通して第1ロック孔33および第2ロック孔34から作動油が排出されることにより、第1ロック部材31および第2ロック部材32が第1ロック孔33および第2ロック孔34にそれぞれ嵌合可能になる。なお、解除制御弁25への通電がなされたときは、解除制御弁25はロックポジションとなり、通電が切断されたときはアンロックポジションとなる。
図4に、解除制御弁25がアンロックポジションになって、弁開閉時期制御装置10のロックが解除された状態を表す部分拡大断面図を示す。
【0044】
〔弁開閉時期制御装置の動作〕
次に、弁開閉時期制御装置10のロック解除動作について説明する。エンジンEが低温で停止している状態では、相対回転位相は中間ロック機構Lにより中間ロック位相Pにロックされている。この状態では、進角室Caと遅角室Cbから作動油が排出されている。また、解除制御弁25はアンロックポジションになっているが、第1ロック孔33および第2ロック孔34から作動油は排出されている。このとき、
図3に示すように、第1ロック部材31は、大径孔12bから突出して、第1ロック孔33と嵌合しつつ第1ロック孔33の内周面の進角方向Saの端部に当接している。第2ロック部材32は、小径孔12cから突出して、第2ロック孔34と嵌合しつつ第2ロック孔34の内面の遅角方向Sbの端部に当接している。
【0045】
この状態で、不図示のイグニッションスイッチがON操作された場合には、ECU40がスタータモータMを回転駆動させてエンジンEを始動させるよう制御して、アイドリング運転が開始される。このとき、イグニッションスイッチのON操作と同時に解除制御弁25に通電がなされ、解除制御弁25はロックポジションに切り替わり、中間ロック機構Lによる中間ロック位相Pの状態が維持される。このように、中間ロック機構Lにより相対回転位相を最進角位相と最遅角位相の間の中間ロック位相Pに拘束することができるので、安定したアイドリング運転の状態を維持することができる。
【0046】
アイドリング運転が終了すると、内燃機関制御システムの制御は、通常運転制御に移行する。アイドリング運転の終了は、エンジンE内部を流通する冷却水の温度を検出する水温センサ(不図示)の検出結果に基づき、ECU40が判断する。通常運転制御に移行すると、ECU40は、解除制御弁25への通電を切断し、ロックポジションからアンロックポジションに切り換える制御を行う。この操作により、ロック解除油路23に作動油が供給される。
【0047】
ロック解除油路23を流通する作動油は油路長の短い第1ロック孔33に先に供給され、スプリング35の付勢力に抗して第1ロック部材31を第1ロック孔33から引退させる油圧が第1ロック部材31の第1受圧面31fに作用する。第1ロック孔33への供給からやや遅れて、油路長の長い第2ロック孔34にも作動油が供給され、スプリング35の付勢力に抗して第2ロック部材32を第2ロック孔34から引退させる油圧が第2ロック部材32の第2受圧面32fに作用する。第1ロック部材31の方が第2ロック部材32より早く引退を始めるが、第1受圧面31fの面積より第2受圧面32fの面積の方が大きいので、第2ロック部材32により大きな力が作用する。この結果、第1ロック部材31と第2ロック部材32とは、ほぼ同時に第1ロック孔33と第2ロック孔34からそれぞれ引退を完了し、ロック解除状態になる。
【0048】
図4に示すように、ロック解除状態においては、第1ロック部材31は第2ロック部材32の第2凹孔32aに嵌り込んで第1開口面31hが第2底面32eに当接した嵌合状態にあり、第2ロック部材32の第2開口面32hは内部ロータ12の底面12dに当接している。このように、ロック解除状態で第1ロック部材31と第2ロック部材32とが嵌合する構成としたので、第1ロック部材31と第2ロック部材32の軸方向長さを、内部ロータ12の軸芯X方向の厚さと同程度に長くすることができる。その結果、出退動作時に第1ロック部材31と第2ロック部材32が傾くのを抑制し、スムーズな出退動作を実現することができる。
【0049】
第1ロック部材31と第2ロック部材32が引退する過程において、第1ロック部材31の第1凹孔31aにある空気や大径孔12bにある空気は、切欠31d、第1縦溝31b、第1横溝31c、貫通孔32d、第2縦溝32b、第2横溝32c、背圧通路12eを通って弁開閉時期制御装置10の外部に開放される。従って、空気によって第1ロック部材31と第2ロック部材32の引退動作が妨げられることはない。このようにして、外部ロータ11と内部ロータ12の間のロック状態は全て解除される。この後、通常運転制御である限り、このロック状態解除が維持される。
【0050】
図2に示すように、中間ロック機構Lにおいて、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを同軸芯になるよう配置することにより、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを備えたベーン部12Tを軸芯Xに沿って見たときのベーン部12Tの周方向長さを短くすることができる。これにより、外部ロータ11と内部ロータ12との間の相対回転位相の変化範囲を大きくすることができる。また、段付き貫通孔12aを一工程で加工するので、加工工数を低減することができ、コストを低減することができる。さらに、スプリング35を第1ロック部材31と第2ロック部材32とで共用するので、部品点数を削減してコストダウンが実現できる。
【0051】
本実施形態においては、
図4に示すロック解除状態において、第1ロック部材31は第2ロック部材32の第2底面32eに当接して引退が規制され、第2ロック部材32は内部ロータ12の底面12dに当接して引退が規制されている。このように、第2ロック部材32の引退を内部ロータ12の底面12dで規制することにより、作動油の油圧が作用している限り第2ロック部材32が内部ロータ12から突出することはない。また、油圧によって第1ロック部材31の第1受圧面31fに作用する力は第2受圧面32fに作用する力より小さいので、第1ロック部材31が引退して第1開口面31hが第2底面32eに当接して第2ロック部材32に力を作用させても、第2ロック部材32が内部ロータ12から突出することはない。
【0052】
本実施形態においては、ロック解除油路23をカムシャフト3から内部ロータ12にかけて形成するリヤフィードタイプで構成した。しかし、ロック解除油路23はリヤフィードタイプだけに限られず、フロントプレート14から内部ロータ12にかけてロック解除油路23を形成するフロントフィードタイプであってもよい。この場合、第1ロック孔33をフロントプレート14に形成して第1ロック部材31がフロントプレート14の側に出退し、第2ロック孔34をリヤプレート15に形成して第2ロック部材32がリヤプレート15の側に出退する構成にする。このような構成にすることにより、フロントフィードタイプであっても、第1ロック部材31と第2ロック部材32とをほぼ同時に第1ロック孔33と第2ロック孔34からそれぞれ引退させることができる。
【0053】
2.第2実施形態
図6に、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10の中間ロック機構Lのロック状態を表す部分拡大断面図を示す。
図7に、弁開閉時期制御装置10の中間ロック機構Lのロック解除状態を表す部分拡大断面図を示す。本実施形態においては、中間ロック機構Lの構造が第1実施形態とは異なっており、その他の構造は同じである。よって、本実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ構成の箇所には同じ符号を付し、同様の構成に関する説明は省略する。
【0054】
図6,
図7に示すように、本実施形態においては、第1ロック部材31と第2ロック部材32とは同じ形状を有しているので、第2ロック部材32の説明は省略する。また第1ロック孔33と第2ロック孔34も同じ形状を有している。
【0055】
第1ロック部材31は、有底の円筒形状を有している。第1ロック部材31の内側の空間である第1凹孔31aは円柱状である。第1ロック部材31の外周面は、第1実施形態と異なり溝は形成されていない。また、第1ロック部材31の軸芯方向の長さは内部ロータ12の軸芯Xの方向の長さの半分よりも少し短い。
【0056】
第1ロック孔33は、リヤプレート15の内部ロータ12と対向する側から軸芯Xに平行な軸芯を持つように形成された有底の孔で、第1ロック部材31が突出したときに嵌合する。
図6に示すように、軸芯に沿って見た第1ロック孔33の形状は、リヤプレート15の径方向における第1ロック孔33の長さが第1ロック部材31と同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌合可能な大きさで、周方向の長さは第1ロック部材31の直径よりも遅角方向Sbの側に少し拡張された長円形を有している。また、長円形ではなく、第1ロック孔33の内径を第1ロック部材31の直径よりもやや大きくした円形に形成してもよい。
【0057】
第2ロック孔34は、フロントプレート14の内部ロータ12と対向する側から軸芯Xに平行な軸芯を持つように形成された有底の孔で、第2ロック部材32が突出したときに嵌合する。
図6に示すように、軸芯に沿って見た第2ロック孔34の形状は、フロントプレート14の径方向における第2ロック孔34の長さが第2ロック部材32と同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌合可能な大きさで、周方向の長さは第2ロック部材32の直径よりも進角方向Saの側に少し拡張された長円形を有している。また、長円形ではなく、第2ロック孔34の内径を第2ロック部材32の直径よりもやや大きくした円形に形成してもよい。なお、第1ロック孔33と第2ロック孔34の溝深さは同じである。
【0058】
図6,
図7に示すように、内部ロータ12の複数のベーン部12Tの1つには、軸芯Xに平行な軸芯を持つ段付き貫通孔12aが形成されている。段付き貫通孔12aは、2つの大径孔12f,12f、および1つの小径孔12gを備える。一方の大径孔12fは、内部ロータ12のリヤプレート15と対向する側から形成され第1ロック部材31が同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌り込む容積を有する。他方の大径孔12fは、内部ロータ12のフロントプレート14と対向する側から形成され第2ロック部材32が同軸芯で且つ打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌り込む容積を有しており、一方の大径孔12fと同軸芯である。小径孔12gは、2つの大径孔12f,12f間を連通するようにそれぞれの底面12h,12hから形成された同軸芯の貫通孔である。底面12hはストッパの一例である。小径孔12gの内周面には、大径孔12f,12fと弁開閉時期制御装置10の外部とを連通する背圧通路12eが形成されている。背圧通路12eにより大径孔12f,12fと弁開閉時期制御装置10の外部が連通するのは、相対回転位相が中間ロック位相Pの時である。
【0059】
図6,
図7に示すように、第1ロック部材31と第2ロック部材32は、第1受圧面31f、第2受圧面32fが内部ロータ12の外側を向くようにして大径孔12f,12fに挿入されて配置される。このとき、第1ロック部材31の第1凹孔31a、小径孔12g、第2ロック部材32の第2凹孔32aに亘ってスプリング35が予め挿入されており、スプリング35の両端部は第1ロック部材31の第1底面31eと第2ロック部材32の第2底面32eとに当接している。これにより、スプリング35は、第1ロック部材31と第2ロック部材32の両方に対し内部ロータ12から突出させる方向に付勢力を付与している。すなわち、第1実施形態と同様、第1ロック部材31と第2ロック部材32とは、1本のスプリング35を共用している。
【0060】
弁開閉時期制御装置10において中間ロック機構Lが
図6に示すロック状態にあるときに、ECU40が解除制御弁25への通電を切断しロックポジションからアンロックポジションに切り換える制御を行うと、ロック解除油路23に作動油が供給される。ロック解除油路23を流通する作動油は油路長の短い第1ロック孔33に先に供給され、スプリング35の付勢力に抗して第1ロック部材31を第1ロック孔33から引退させる油圧が第1ロック部材31の第1受圧面31fに作用する。第1ロック孔33への供給からやや遅れて、油路長の長い第2ロック孔34にも作動油が供給され、スプリング35の付勢力に抗して第2ロック部材32を第2ロック孔34から引退させる油圧が第2ロック部材32の第2受圧面32fに作用する。第1ロック部材31が第1ロック孔33から引退し、やや遅れて第2ロック部材32が第2ロック孔34からそれぞれ引退し、
図7に示すロック解除状態になる。ロック解除状態においては、第1ロック部材31の第1開口面31hと第2ロック部材32の第2開口面32hは、内部ロータ12の底面12h,12hにそれぞれ当接して引退が規制されている。
【0061】
第1ロック部材31と第2ロック部材32の引退時において、段付き貫通孔12aや第1凹孔31a,32aにある空気は、背圧通路12eを通って弁開閉時期制御装置10の外部に開放される。従って、空気によって第1ロック部材31と第2ロック部材32の引退動作が妨げられることはない。
【0062】
中間ロック機構Lが上述したような構成を備えることにより、第1実施形態と同様、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを備えたベーン部12Tを軸芯Xに沿って見たときのベーン部12Tの周方向長さを短くすることができる。これにより、外部ロータ11と内部ロータ12との間の相対回転位相の変化範囲を大きくすることができる。また、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを同形状として共通化することにより、部品の種類を低減することができ、コストを低減することができる。さらに、スプリング35を第1ロック部材31と第2ロック部材32とで共用するので、部品点数を削減してコストダウンが実現できる。
【0063】
本実施形態においては、
図7に示すロック解除状態において、第1ロック部材31の第1開口面31hと第2ロック部材32の第2開口面32hは、いずれも内部ロータ12の底面12h,12hに当接して引退が規制されている。このような構成とすることにより、スプリング35が第1ロック部材31と第2ロック部材32とに付勢力を付与していても、作動油の油圧が第1受圧面31fと第2受圧面32fとに作用している限り、第1ロック部材31と第2ロック部材32が内部ロータ12から突出することはない。
【0064】
本実施形態においては、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを同形状にしたが、これだけに限られるものではない。第1ロック部材31の径より第2ロック部材32を大きくして第1受圧面31fの面積より第2受圧面32fの面積を大きくすることにより、第1実施形態と同様、第1ロック部材31と第2ロック部材32とをほぼ同時に第1ロック孔33と第2ロック孔34からそれぞれ引退させることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを同軸芯になるよう配置したが、これに限られるものではない。スプリング35が共用できる範囲で、第1ロック部材31と第2ロック部材32の軸芯をずらして配置してもよい。また、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを軸芯Xに沿って見たときに少なくとも一部が重なるように配置されていれば、第1ロック部材31と第2ロック部材32とでそれぞれ別個のスプリング35,35を使用してもよい。これらのとき、軸芯をずらす方向は内部ロータ12の周方向ではなく径方向にするのが望ましい。径方向にずらすことにより、第1ロック部材31と第2ロック部材32とを備えたベーン部12Tを軸芯Xに沿って見たときのベーン部12Tの周方向長さを短く維持することができる。
【0066】
本発明は、内燃機関のクランクシャフトと同期して回転する駆動側回転部材に対する従動側回転部材の相対回転位相を制御する弁開閉時期制御装置に用いることが可能である。