特許第6040618号(P6040618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040618
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20161128BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60C5/14 Z
   B60C5/14 A
   C08L21/00
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-169229(P2012-169229)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28541(P2014-28541A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原 祐一
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−040117(JP,A)
【文献】 特開2006−198848(JP,A)
【文献】 特開2007−296916(JP,A)
【文献】 特開2006−315339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物からなる平行四辺形の形状をしたシート部材を有する空気入りタイヤであって、前記平行四辺形状のシート部材が周方向辺の対及び傾斜辺の対を有し、前記周方向辺と傾斜辺とがなす角が5°〜25°であり、前記周方向辺がいずれもタイヤビード部でタイヤ周方向に延在し、前記傾斜辺がタイヤ周方向に傾斜して延在してオーバーラップスプライスを形成すると共に、該オーバーラップスプライスが、トレッド部において、タイヤ周方向にほぼ1周するように螺旋状に延在することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記平行四辺形状のシート部材により、空気透過防止層を構成したことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記平行四辺形状のシート部材を最内面に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記平行四辺形状のシート部材を展開した平面視において、前記周方向辺同士が対面する領域が存在しないか、或いは前記周方向辺同士が対面する領域の周方向長さが、タイヤ周長の20%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂及びエラストマーを含み、前記熱可塑性樹脂が連続相、前記エラストマーが分散相であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂及びエラストマーを含み、前記熱可塑性樹脂及びエラストマーの合計を100重量%としたとき、前記エラストマーが50〜85重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記シート部材の傾斜辺のオーバーラップスプライスが、熱融着により固定されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記シート部材の傾斜辺のオーバーラップスプライスが、接着性組成物により固定されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記接着性組成物が、下記式(1)で表わされる化合物、又は下記式(1)で表わされる化合物とホルムアルデヒドの縮合物を含むことを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【化1】
(式中、R1,R2,R3,R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数1〜8個のアルキル基である。)
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリアミド系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記平行四辺形状のシート部材に隣接してゴム組成物からなるタイヤ部材を有し、前記熱可塑性樹脂組成物の25℃における20%伸長時引張応力が、前記ゴム組成物の25℃における20%伸長時引張応力の3〜100倍であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記平行四辺形状のシート部材が、タイヤ成型前に二軸延伸処理されたシートからなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記平行四辺形状のシート部材の周方向辺のビード部側にリムクッション介在されてなることを特徴とする請求項12に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライス故障を抑制するようにした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブレスの空気入りタイヤには、そのタイヤ内面に空気透過防止層(インナーライナー)が一体にライニングされ、その材料として非透過性に優れたブチル系ゴムが使用されている。しかし、ブチル系ゴムは比重が大きく重いため、空気入りタイヤの軽量化の障害になっていた。この対策として、特許文献1は、ブチル系ゴムの代わりに比重が小さい熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーに使用することを提案し、タイヤの一層の軽量化を可能にしている。
【0003】
一般に空気入りタイヤを製造するとき、矩形に成形されたシート部材をタイヤ成形ドラムに巻回し、シート部材の端部を重ね合わせて接合(オーバーラップスプライス)することによりグリーンタイヤを成形する。得られたグリーンタイヤを膨径、加硫することにより、空気入りタイヤになるが、上述したオーバーラップスプライス部は、タイヤ加硫時の膨径や走行時の応力により、目開きを起こしタイヤ故障の原因になることがある。
【0004】
例えば図5(a)は、矩形をしたシート部材21をタイヤトレッド部に巻回した形態を模式的に示す説明図であり、シート部材21の両端部同士がタイヤ周方向に重ね合わされオーバーラップスプライス13を形成している。ここで空気入りタイヤのトレッド部が接地するときを考える。図5(b)は、図5(a)に示したシート部材21を展開した平面図である。図5(b)に示すように、シート部材21のある一部分に接地面14が存在し、押し潰されることによりシート部材21の端部には矢印で示す引張り応力が発生する。この引張り応力により、オーバーラップスプライス13が目開したり、剥離、破断する故障を起こしやすくなる。
【0005】
この対策として、図6(a)(b)に示すように、シート部材22のタイヤ周方向の端部を斜めにカットしてオーバーラップスプライスすることにより、オーバーラップスプライス13に係る引張り応力を緩和することが行われることがある。しかしスプライス故障が必ずしも十分に改良されていなかった。
【0006】
特にインナーライナーを熱可塑性樹脂フィルムで構成するときは、ブチル系ゴムからなるシート部材と比べ、熱可塑性樹脂フィルムは弾性率が高いため、スプライス故障を起こしやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−258506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スプライス故障を抑制するようにした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂組成物からなる平行四辺形の形状をしたシート部材を有する空気入りタイヤであって、前記平行四辺形状のシート部材が周方向辺の対及び傾斜辺の対を有し、前記周方向辺と傾斜辺とがなす角が5°〜25°であり、前記周方向辺がいずれもタイヤビード部でタイヤ周方向に延在し、前記傾斜辺がタイヤ周方向に傾斜して延在してオーバーラップスプライスを形成すると共に、該オーバーラップスプライスが、トレッド部において、タイヤ周方向にほぼ1周するように螺旋状に延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂組成物からなる平行四辺形状のシート部材のタイヤ幅方向両側の周方向辺がいずれもタイヤビード部でタイヤ周方向に延在し、かつ傾斜辺がタイヤ周方向に対し5°〜25°の角度で傾斜して延在してオーバーラップスプライスを形成すると共に、該オーバーラップスプライスが、トレッド部において、タイヤ周方向にほぼ1周するように螺旋状に延在するようにしたので、オーバーラップスプライスの一部が接地面により押さえ込まれ、タイヤ接地に起因する応力を分散させるためスプライス故障を大幅に抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記平行四辺形状のシート部材を展開した平面視において、前記周方向辺同士が対面する領域が存在しないか、存在するときは前記周方向辺同士が対面する領域の周方向長さが、タイヤ周長の20%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。タイヤ接地面はタイヤの内圧、荷重、車両の速度などによって変化するが、内圧が低く高荷重であるほどスプライス故障は起きやすく、この範囲に調整することでスプライス故障を大幅に抑制することができるのである。この抑制効果は少なくともスプライス表面の一部が外部に露出している場合に効果が大きく、前記平行四辺形状のシート部材を空気入りタイヤ最内面に配置した際に大きな効果を得られる。
【0012】
前記シート部材を構成する熱可塑性樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂及びエラストマーを含み、前記熱可塑性樹脂が連続相、前記エラストマーが分散相である熱可塑性エラストマーであることが好ましく、バリア性、耐久性、耐熱性を良好にバランスすることができる。また前記熱可塑性樹脂及びエラストマーの合計を100重量%としたとき、前記エラストマーが50〜85重量%であることが好ましく、特に耐久性を向上させることができる。
【0013】
前記シート部材の傾斜辺のオーバーラップスプライスは、熱融着により固定されたものであることが好ましく、簡便に固定することができる。或いは接着性組成物により固定されたものであることが好ましい。また接着性組成物からなる接着層として前記シート部材とその隣接部材の間に挿入するか、隣接部材自体に接着性を持たせることができる。この接着性組成物は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基、ハロゲン基、イミノ基などの官能基をもったポリマーを使用するか、フェノール系化合物、ビスマレイミド系化合物等の反応性化合物を配合するとよい。特に、下記式(1)で表わされる化合物、又は下記式(1)で表わされる化合物とホルムアルデヒドの縮合物を含むことが好ましく、スプライス部に良好な接着性を付与することができる。
【0014】
【化1】
(式中、R1,R2,R3,R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数1〜8個のアルキル基である。)
【0015】
前記熱可塑性樹脂組成物としては、ポリアミド系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、良好なバリア性能と耐熱性を付与することができる。
【0016】
本発明において、前記平行四辺形状のシート部材に隣接してゴム組成物からなるタイヤ部材を有し、前記熱可塑性樹脂組成物の25℃における20%伸長時引張応力が、前記ゴム組成物の25℃における20%伸長時引張応力の3〜100倍であることが好ましく、異種部材間での剥がれを大幅に抑制することができる。
【0017】
前記平行四辺形状のシート部材をタイヤ成型前に二軸延伸処理することで高バリア、高強度かつ均質な物性にすることができ、好適に用いることができる。
【0018】
上述した平行四辺形状のシート部材により、インナーライナーを構成した空気入りタイヤが好ましく、インナーライナーを軽量化すると共に、故障を大幅に抑制することができる。また平行四辺形状のシート部材の周方向辺のビード部側にリムクッションを介在させることが好ましく、グリーンタイヤ成形時の作業性を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示すタイヤ子午線方向の半断面である。
図2】本発明の空気入りタイヤを構成するシート部材の模式的な展開図を例示する説明図である。
図3】(a)(b)は本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例のトレッド部におけるシート部材を模式的に示す説明図であり、(a)はシート部材を巻回した形態を示す斜視図、(b)はトレッド部に相当するシート部材を展開して示す平面図である。
図4】(a)(b)は本発明の空気入りタイヤの他の実施形態の一例のトレッド部におけるシート部材を模式的に示す説明図であり、それぞれ図3(a)(b)に相当する。
図5】(a)(b)は従来の空気入りタイヤのトレッド部におけるシート部材を模式的に示す説明図であり、それぞれ図3(a)(b)に相当する。
図6】(a)(b)は従来の他の空気入りタイヤのトレッド部におけるシート部材を模式的に示す説明図であり、それぞれ図3(a)(b)に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明により製造する空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線方向の半断面である。
【0021】
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。ビード部3に埋設された左右一対のビードコア5間にカーカス層4が装架され、その両端部がそれぞれビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1においては、カーカス層4の外側に、上下一対のベルト層6がタイヤ1周にわたって配置されている。空気入りタイヤの最内側には、インナーライナー7が内貼りされている。
【0022】
本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂組成物からなる平行四辺形の形状をしたシート部材を有し、このシート部材で、インナーライナー7、カーカス層4から選ばれる少なくとも1つのタイヤ部材を構成することができる。なかでもシート部材でインナーライナー7を構成することが好ましい。以下、インナーライナー7にシート部材を適用する実施形態を例にして本発明の空気入りタイヤを説明する。
【0023】
図2は、シート部材の模式的な展開図を例示する説明図であり、本発明の空気入りタイヤからシート部材10を取り出して展開した様子を模式的に示した平面図である。
【0024】
図2において、平行四辺形状のシート部材10は、周方向Rに延長する平行な辺である周方向辺11a,11bの対と、周方向対し斜めに延長する平行な辺である傾斜辺12a,12bの対とで構成される。このうち周方向辺11a,11bはいずれも空気入りタイヤのビード部でタイヤ周方向に延在する。また傾斜辺12a,12bは、タイヤ周方向Rに傾斜して延在し、その周方向端部でオーバーラップスプライスを形成する。ここで周方向辺11a,11bの長さが、タイヤ周方向の周長とオーバーラップスプライスする長さとの合計になる。また周方向辺11a,11b間の距離が、一方のビードトウから他方のビードトウまでのタイヤ周縁長になる。
【0025】
図2の破線で示した領域は、周方向辺11a,11bが互いに対面する領域であり、この領域の長さLが、傾斜辺12a,12bが重なり合う長さに相当する。なおシート部材10を構成する平行四辺形の形状により、この周方向辺11a,11bが互いに対面する領域が存在しても存在しなくてもよいが、存在するときはその領域の長さLは、タイヤ周長の好ましくは20%以下、さらには10%以下にするとよい。領域の長さLが周長の20%を超え、オーバーラップの幅を広くすると、タイヤのユニフォミティが低下する虞がある。また、オーバーラップ幅は15mm以下、より好ましくは10mm以下にすると良い。
【0026】
一方、領域の長さLが周長の20%を超え、さらに周方向辺11aと傾斜辺12aとがなす角θ及び周方向辺11bと傾斜辺12bとがなす角θが25°を超える場合はオーバーラップスプライスが接地面から離れやすくなり、スプライス故障を発生させる虞がある。オーバーラップスプライスの一部をタイヤ接地面内に存在させると共にタイヤ製造を容易にするためには周方向辺11aと傾斜辺12aとがなす角θ及び周方向辺11bと傾斜辺12bとがなす角θを5°〜25°、好ましくは10°〜25°の範囲内にする。
【0027】
図3は本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例のトレッド部におけるシート部材を模式的に示す説明図であり、(a)はシート部材を巻回した形態を示す斜視図、(b)は(a)に記載したトレッド部のシート部材を展開して示した平面図である。
【0028】
図3(a)において、巻回したシート部材10の周方向端部に、シート部材10の傾斜辺12a,12bが重なり合うことにより、オーバーラップスプライス13が形成されている。このオーバーラップスプライス13は、トレッド部において、タイヤ周方向にほぼ1周するように螺旋状に延在する。
【0029】
図3(b)において、タイヤトレッド部に存在する接地面14を模式的に示している。本発明の空気入りタイヤは、この接地面14の領域内に、オーバーラップスプライス13が存在するように構成する。これは上述の通り、オーバーラップスプライス13が、タイヤトレッド部で周方向にほぼ1周にわたり延在するためである。図3(b)のように、接地面14により、オーバーラップスプライス13の一部が押圧されているため、オーバーラップスプライス13にかかる応力を低減することができる。またオーバーラップスプライス13の近辺にかかる応力の方向は、例えば太矢印で示すように、異なる方向に分散するためオーバーラップスプライスが目開きする方向の応力を低減することができる。
【0030】
図2および図3の例は、1枚のシート部材10が、タイヤを1周巻回する形態を例示したものであったが、シート部材10は複数であってもよい。図4は、2枚のシート部材10が、それぞれタイヤを巻回する形態を例示する説明図である。
【0031】
図4(a)において、シート部材10a,10bが、それぞれタイヤを巻回しており、すべてのオーバーラップスプライスが、タイヤトレッド部において、周方向にほぼ1周するように延長している。これにより、シート部材10a,10bのそれぞれのオーバーラップスプライス13の一部が接地面内に存在するようになる。またシート部材10a,10bのそれぞれの周方向辺は、ビード部の近傍でタイヤ周方向に延在するように延長する。
【0032】
図4(a)に示した配置形態を構成するシート部材10a,10bの形状を、図4(b)に模式的に示す。図4(b)において、シート部材10a,10bの周方向辺の長さは、タイヤ周方向の周長の1/2とオーバーラップスプライスする長さとの合計になる。また周方向辺間の距離が、一方のビードトウから他方のビードトウまでのタイヤ周縁長になる。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、上述した平行四辺形状のシート部材により、インナーライナーを構成するのが好ましく、インナーライナーを軽量化すると共に、スプライス故障を大幅に抑制して耐久性を向上することができる。
【0034】
また平行四辺形状のシート部材の周方向辺のビード部側にリムクッションを介在させることが好ましく、グリーンタイヤ成形時の作業性を改良することができる。
【0035】
本発明において、シート部材を構成する熱可塑性樹脂組成物としては熱可塑性樹脂及びエラストマーを含む組成物が好ましい。熱可塑性樹脂組成物をこのように組成することにより、シート部材の空気透過防止性と剛性を調整することができる。
【0036】
また熱可塑性樹脂及びエラストマーの合計を100重量%としたとき、エラストマーが50〜85重量%であることが好ましく、さらに好ましくは熱可塑性樹脂組成物のモルフォロジーを熱可塑性樹脂が連続相、熱可塑性エラストマーが分散相になるように調整することで高バリア性と高耐久性を付与することができる。
【0037】
本発明において、シート部材の傾斜辺のオーバーラップスプライスは、熱融着により固定することができる。これにより簡便に固定することができる。或いは接着性組成物により固定されたものであることが好ましく、接着層として前記シート部材とその隣接部材の間に挿入するか、隣接部材自体に接着性を持たせることができる。この接着性組成物は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基、ハロゲン基、イミノ基などの官能基をもったポリマーを使用するか、フェノール系化合物、ビスマレイミド系化合物等の反応性化合物を配合するとよい。特に、下記式(1)で表わされる化合物、又は下記式(1)で表わされる化合物とホルムアルデヒドの縮合物を含むことが好ましく、オーバーラップスプライス部に良好な接着性を付与することができる。
【0038】
【化2】
(式中、R1,R2,R3,R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
【0039】
式(1)で表される化合物の1つの好ましい例は、R1,R2,R3,R4およびR5のうち少なくとも1つが炭素原子数1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例の1つはクレゾールである。
【0040】
式(1)で表される化合物のもう1つの好ましい例は、R1,R2,R3,R4およびR5のうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例のもう1つはレゾルシンである。
【0041】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体等が挙げられる。また、これらの縮合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、変性されていてもよい。たとえば、エポキシ化合物で変性された変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体も本発明に使用することができる。これらの縮合物は、市販されており、本発明に市販品を使用することができる。
【0042】
熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えばナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。なかでもポリアミド系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂組成物を構成するエラストマーとしては、例えばジエン系ゴム及びその水添物〔例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えばBr−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えばメチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えばポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えばスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックポリマー(SBS)およびその水添物(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレントリブロックポリマー(SIS)およびその水添物(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロックポリマー(SIBS)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ボリアミド系エラストマー、ポリアミドとポリエーテルの共重合体(TPAE)、ポリエステルとポリエーテルの共重合体(TPEE)、ポリウレタンエラストマー(TPU)〕等を好ましく使用することができる。
【0044】
熱可塑性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂が連続相(マトリックス)を形成し、エラストマーが分散相(ドメイン)となる形態をとることにより、シート部材に十分な柔軟性と剛性を併せもつことができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
【0045】
上述した熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。相溶化剤を配合することにより、熱可塑性樹脂組成物とエラストマーの界面張力が低下し、分散相を形成しているゴム粒子径が微細になることから、両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に、熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すれば良いが、通常使用されるものには、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、エポキシ変性エチレンメタクリレート共重合体、エポキシ変性スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシ樹脂等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定はないが、好ましくはポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーの合計)100重量部に対して、0.5〜20重量部が良い。また、この相溶化剤により、分散相のゴム粒子径は10μm以下、更には5μm以下、特に0.1〜2μmとすることが好ましい。
【0046】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物は、一般にポリマー組成物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をシート部材としての必要特性を損なわない限り任意に配合することができる。
【0047】
本発明において、平行四辺形状のシート部材に隣接してゴム組成物からなるタイヤ部材を有し、熱可塑性樹脂組成物の25℃における20%伸長時引張応力が、ゴム組成物の25℃における20%伸長時引張応力の3〜100倍であることが好ましく、異種部材間での剥がれを大幅に抑制することができる。ここで熱可塑性樹脂組成物及びゴム組成物の25℃における20%伸長時引張応力は、JIS K−7161及びJIS K−6251に基づいて測定するものとする。
【0048】
前記平行四辺形状のシート部材をタイヤ成型前に二軸延伸処理することで高バリア、高強度かつ均質な物性にすることができ、好適に用いることができる。
【0049】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
タイヤサイズ195/65R15、タイヤ構造を図1に示す構成とし、インナーライナーを構成するシート部材(展開形状)を、実施例1及び2が図3、実施例3が図4、比較例1が図5、比較例2が図6として空気入りタイヤを製造した。なお各シート部材を熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を32重量%、臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムを68重量%含むように組成した。また熱可塑性樹脂組成物のモルフォロジーは、ポリアミド樹脂の連続相に、臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムからなる分散相(平均粒子径が0.3μm)が微細に分散していた。
【0051】
またシート部材のタイヤ周方向端部のオーバーラップスプライスの接着方法は、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムを主に含んだゴム組成物に、接着成分であるレゾルシンおよびヘキサメチレンメチラミンを配合した接着性ゴム組成物を予め該シート部材と積層、加硫して接着固定した。
【0052】
得られた空気入りタイヤを、以下の方法(過酷試験)により、スプライスの耐久性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0053】
タイヤ試験方法
195/65R15の試験タイヤをリムサイズ15×6JJのホイールに組み付けて室内ドラム試験機に装着し、空気圧160kPa、荷重6.1kN、速度80km/hの条件にて1万kmの走行を行った。耐久試験後、各試験タイヤの内面(インナーライナー)の状態を目視により確認した。
【0054】
ここで評価基準は、スプライスが開いているものを不可、開いていないものを可とした。
【0055】
【表1】
【符号の説明】
【0056】
1 トレッド部、
3 ビード部
7 インナーライナー
10 シート部材
10a,10b シート部材
11a、11b 周方向辺
12a,12b 傾斜辺
13 オーバーラップスプライス
14 接地面
R タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6