(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車室内環境条件と車室外環境条件との少なくとも一方の環境条件および乗員の操作状態を表すパラメータに応じて、目標室内温度となるように室内温度を自動制御する空調システムと、
車両停止時に、目標室内温度と実際の室内温度との偏差を含む所定の条件が成立した場合にエンジンを自動停止させるエンジン制御手段と、
前記空調システムの自動制御中に、前記パラメータに含まれない他のパラメータとなる空調風の吹出量が減少する方向に乗員の操作が行われたときに、前記偏差が小さくなる方向に変更してエンジンが自動停止されやすい方向に変更する自動停止条件変更手段と、
を備えていることを特徴とする車両用空調制御装置。
【背景技術】
【0002】
車両用空調制御装置にあっては、目標室内温度となるように実際の室内温度を自動制御するオートエアンコンが主流となっている。空調の自動制御は、車室内の環境条件、車室外の環境条件、乗員による空調操作状態(特に目標室内温度の設定)を表すパラメータに応じて行われて、例えば空調吹出温度、空調風の吹き出し口、空調風の吹出量等が自動設定されることになる。
【0003】
一方、最近の車両では、燃費向上のために、車両停止時にエンジンを自動停止させるいわゆるアイドルストップを行うものが多くなっている。このアイドルストップは、あらかじめ設定された開始条件が成立しているを条件に実行され、この開始条件としては、例えば、車速が零であること(車両停止であること)、ブレーキ操作されていること、アクセル操作されていないこと、変速機がD位置にある等の全ての条件を満足するものとして設定されることが一般的である。
【0004】
アイドルストップ状態から、エンジンを自動再始動するために、あらかじめ自動再始動条件が設定されるが、これは、開始条件とされたいずれか1つの条件が成立しなかったときとされるのが一般的である(例えば運転者によるブレーキ操作が解除されたとき)。
【0005】
エンジン自動停止が好ましくない状況のときは、アイドルストップを禁止するようにすることも行われており、このアイドルストップ禁止条件としては、運転者が認識しない種々の要因がある。このアイドルストップ禁止条件としては、例えば、バッテリ充電量が少ないとき、バッテリ消費電力が多いとき、エンジン冷却水温度や油温が低いとき、変速機の油温や油圧が低いとき、設定温度と実際の温度との差が大きいことに伴って空調装置による空調レベルが高いとき等、種々設定される。そして、このアイドルストップ禁止条件は、その1つが成立したときに、アイドルストップが禁止されることになる。そして、アイドルストップ中に、アイドルストップ禁止条件が成立すると、エンジンが自動再始動されることも行われている。なお、アイドルストップ開始条件を、アイドルストップ禁止条件の一部の項目として設定することもでき、この場合は、アイドルストップ開始条件を構成する各種要因の1つでも成立しない場合(例えばブレーキ操作されてない場合)に、アイドルストップ禁止条件が成立したとみることができる。
【0006】
空調の自動制御中に、目標室内温度と実際の室内温度との偏差が大きすぎるとき、例えば冷房時にあっては目標室内温度よりも実際の室内温度がある温度以上高温であるとき、また暖房時には目標室内温度よりも実際の室内温度がある温度以上低温であるときには、空調を優先すべく、アイドルストップが禁止されることになる。
【0007】
乗員によっては、アイドルストップを行う頻度を増大させて燃費向上を図ることを強く望む者もおり、この場合空調からの要請とどのように折り合いを付けるかが問題となる。特許文献1には、アイドルストップの重視度合と空調の重視度合とを、乗員によるマニュアル操作によって選択できるようにしたものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載のものでは、アイドルストップと空調とのいずれを重視するかを乗員がマニュアル選択できるだけであり、アイドルストップを重視する選択を行った場合には、空調が大きく犠牲にならざるを得ないものとなる。
【0010】
ところで、乗員の中には、空調の作動状態がアイドルストップに関与しているという認識の下に、アイドルストップが行われやすくなるように、例えば空調風の吹出量をマニュアル操作によって低減させて、空調制御を緩和する方向に操作する場合がある。しかしながら、この場合は、実際の室内温度が目標室内温度に近づくまでの時間をいたずらに長くなるだけであって、空調制御の点でもまたアイドルストップを行いやすくするという点でも好ましくないものである。
【0011】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、空調のニーズとアイドルストップのニーズとを共に高い次元で満足できるようにした車両用空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、請求項1に記載のような解決手法を採択してある。すなわち、
車室内環境条件と車室外環境条件との少なくとも一方の環境条件および乗員の操作状態を表すパラメータに応じて、目標室内温度となるように室内温度を自動制御する空調システムと、
車両停止時に、目標室内温度と実際の室内温度との偏差を含む所定の条件が成立した場合にエンジンを自動停止させるエンジン制御手段と、
前記空調システムの自動制御中
に、前記パラメータに含まれない他のパラメータ
となる空調風の吹出量が減少する方向に乗員の操作が行われたときに、前記偏差が小さくなる方向に変更してエンジンが自動停止され
やすい方向に変更する自動停止条件変更手段と、
を備えているようにしてある。
【0013】
上記解決手法によれば、乗員に
よって行われることの多い空調風の吹出量が減少する方向の操作に基づいて、目標室内温度に向けた空調制御を継続しつつ、乗員の意思を反映させてエンジンを自動停止させやすくすることができ、空調のニーズとアイドルストップのニーズとを共に高い次元で満足させることができる。
【0014】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりであ
る。
【0015】
冷房時において、実際の室内温度が目標室内温度よりも高い温度に設定された第1所定温度以下となったときに、前記偏差が小さいとしてエンジンの自動停止が許可され、
前記自動停止条件変更手段が、前記第1所定温度を高くすることによりエンジンが自動停止されやすい方向に変更する、
ようにしてある(請求項
2対応)。この場合、冷房時に、エンジン自動停止開始のしきい値となる第1所定温度を高くするという簡単な手法によって、アイドルストップさせやすくすることができる。
【0016】
暖房時において、実際の室内温度が目標室内温度よりも低い温度に設定された第2所定温度以上となったときに、前記偏差が小さいとしてエンジンの自動停止が許可され、
前記自動停止条件変更手段が、前記第2所定温度を低くすることによりエンジンが自動停止されやすい方向に変更する、
ようにしてある(請求項
3対応)。この場合、暖房時に、エンジン自動停止開始のしきい値となる第2所定温度を低くするという簡単な手法によって、アイドルストップさせやすくすることができる。
【0017】
前記偏差の変更が、乗員による空調風の吹出量の変更量に対して不連続に行われる、ようにしてある(請求項
4対応)。この場合、アイドルストップさせたいという乗員の意思を強く反映させる上で好ましいものとなる。
【0018】
前記偏差の変更が、乗員による空調風の吹出量の変更量に比例して行われる、ようにしてある(請求項
5対応)。この場合、アイドルストップさせたいという乗員の意思の強さの度合を反映させる上で好ましいものとなる。
【0019】
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、空調のニーズとアイドルストップのニーズとを共に高い次元で満足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、空調システムKにおける通路構成例を示すものである。空調システムKは、既知のものなので簡単に説明すると、流入口1を有する上流側通路部2と、上流側通路部2の下流側に接続されたエアミックス室3および加温室4を有する。流入口1には、切換ダンパ5配設されて、内気導入と外気導入とが切換えられる。上流側通路部2には、切換ダンパ5の下流側へ順次、エアフィルタ6、吸引用のブロア7、冷媒が循環されるエバポレータ8が配設されている。
【0023】
前記加温室4には、エンジン冷却水が循環される第1ヒータコア9と電気式の第2ヒータコア10とが配設されている。なお、電気式の第2ヒータコア10は、実施形態ではエンジンが直噴式とされてエンジン冷却水温度が上昇されにくい形式のために採択されているが、第2ヒータコア10を有しないものであってもよい。
【0024】
上流側通路部2とエアミックス室3と加温室4との接続部位には、エアミックスダンパ11が配設されている。このエアミックスダンパ11の位置変更により、エバポレータ8を通過した冷却エアが加温室4を経由する割合が変更されて、エアミックス室3へ導入されるエアの温度および湿度が調整される。
【0025】
エアミックス室3には、3つの通路12〜14が接続されている。通路12は、その末端部が複数に分岐されて、デフロスタ用の吹出口12aおよびサイド・デミスタ用の吹出口12bとされている。通路13は、その末端部が複数に分岐されて、センタ・ベント用の吹出口13aおよびサイド・ベント用の吹出口13bとされている。通路14は、その末端部が複数に分岐されて、フロント・ヒート用の吹出口14aおよびリア・ヒート用の吹出口14bとされている。そして、各通路12〜14とエアミックス室3との接続部位には、モード切換用のモードダンパ15、16あるいは17が配設されている。
【0026】
図2は、乗員により操作される空調用パネル部KPの一例を示すものであり、インストルメントパネルにセットされている。実施形態では、運転席と助手席とで左右独立して温度制御するものに対応しており、乗員により操作されるスイッチとして、次のように設定されている。
【0027】
まず、スイッチ21は、オートエアコンをONするメインスイッチであり、プッシュ式とされている。スイッチ22は、運転席の温度設定スイッチであり、ダイアル式とされている。スイッチ23は、オートエアコンのOFFスイッチであり、プッシュ式とされている。スイッチ24は、風量調整用スイッチであり、ダイアル式とされている。スイッチ25は、助手席用の温度を個別に選択する際に操作されるもので、プッシュ式とされている。スイッチ26は、助手席用の温度調整用であり、ダイアル式とされている。
【0028】
スイッチ31は、エアコンをOFFするスイッチである。スイッチ32は、フロントデフロスタ作動用のスイッチである。スイッチ33は、リアデフロスタ作動用スイッチである。スイッチ34,35は、空調風の吹出口選択用スイッチである。スイッチ36は、外気導入選択用のスイッチである。スイッチ37は、内気循環選択用のスイッチである。各スイッチ31〜37は、それぞれプッシュ式とされている。
【0029】
図3は、空調システムKの制御系統例が示される。この
図3中、UKは、マイクロコンピュータを利用して構成された空調システム用のコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラUKには、前述した各種スイッチからの信号が入力される他、外気温センサS1で検出された外気温度、内気温センサS2で検出された室内温度、日射センサS3で検出された車室内への日射状態、温度センサS4で検出されたエバポレータ8の温度に関する信号が入力される。また、コントローラUKは、前述した各ダンパ等の機器類5、7、11、15〜17の他、エンジンと冷媒圧縮用コンプレッサとの動力伝達経路に介在されたコンプレッサクラッチ18を制御するようになっている。コントローラUKと、上記センサ、スイッチ、機器類とは、低速通信系でもって接続されている。
【0030】
コントローラUKは、基本的に、各種センサS1〜S4で検出される車内外の環境条件と乗員によるスイッチ操作状態に応じて、目標室内温度を設定すると共に、実際の室内温度が目標室内温度にするのに最適な空調風吹出量、空調エア温度、空調風の吹出口の選択等を自動制御する。なお、このような空調の自動制御そのものは従来と代わりがないので、これ以上詳細な説明は省略する。
【0031】
低速通信系となるコントローラUKは、インストルメントパネルに設けたメータを介して、高速通信系(CAN)に対して接続されている。この高速通信系には、エンジン自動停止と自動再始動を含むエンジン制御を行うPCM、自動変速機の変速制御等を行うTCM、エンジン自動停止時の自動ブレーキ制御を含むブレーキ制御を行うDSC、ドアの開閉状態の検出を含む車体回りの制御を行うBCM、キーの車内置き忘れの検出を含むスマートキーレスに関する制御を行うキーレスコントロールモジュール(SKEで表示)、パワーステアリング制御を行うEHPASが含まれる。コントローラUKには、PCMからアイドリングストップ状態に関する情報が入力される一方、コントローラUKからPCMに対して、後述するように、空調制御状態に応じてアイドリングストップの許可信号または禁止信号を出力するようになっている。また、DSCには車速センサ10が接続されており、車速センサ10で検出された車速信号は、CANを経由してコントローラUKおよびPCMに入力される。
【0032】
図4は、アイドリングストップに関する制御を行うPCMに関する詳細な制御系統例を示すものである。この
図4において、PCMには、各種センサあるいはスイッチS11〜S19からの信号が入力される。センサS11は、アクセル開度を検出するアクセルセンサである。センサS12は、スロットル開度を検出するスロットルセンサである。センサS13は、クランクシャフトの回転角度位置を検出する角度センサである。センサS14は、吸気温度を検出する吸気温センサである。センサS14は、冷却水温を検出する水温センサである。センサS16は、負圧式倍力装置を有するブレーキ装置における負圧を検出する負圧センサである。スイッチS17は、ブレーキペダルが踏み込み操作されていることを検出するブレーキスイッチであり(ストップライトスイッチと兼用)。センサS18は、自動変速機のレンジ位置を検出するレンジ位置センサである。S19は、バッテリの充電量、電圧、消費電流等を総合的に検出するバッテリセンサである。
【0033】
PCMは、エンジンの自動停止(アイドルストップ)と自動再始動の制御に関連して、次のような各種機器類41〜47を制御するようになっている。すなわち、41は、スロットルバルブを駆動するアクチュエータであり、エンジン自動停止時に全閉とされる。42は、電動式の可変バルブタイミング装置における駆動モータであり、エンジン自動停止時に、自動再始動に備えて吸気弁の開閉タイミングを遅らせる。43は、燃料噴射弁であり、エンジン自動停止の際に燃料噴射がカットされる。44はイグニッションコイルであり、エンジン自動停止時には通電が停止されて点火が禁止される。45はスタータモータであり、エンジン自動再始動時に駆動される。46は、オルタネータであり、エンジン自動停止時に、オルタネータの負荷を上げることによりエンジン回転数を下げる。47は、DC/DCコンバータであり、エンジン自動再始動時のためにクランキングを行う際に、バッテリの電力低下を補うように制御される。
【0034】
車両停止時にエンジンを自動停止するアイドルストップが行われるが、これは、後述するアイドルストップ禁止条件の1つでも成立していないことを条件に実行される。
【0035】
自動停止禁止条件(アイドルストップ禁止条件)
(1)車速が0でないとき。
(2)乗員によるブレーキ操作が行われていないとき。
(3)アクセルペダルが踏み込み操作されているとき。
(4)バッテリに関連して、電圧が所定電圧以下の低電圧のとき、充電量があらかじめ設定された所定充電量以下のとき、消費電流があらかじめ設定された所定電流以上のとき、あるいはバッテリ制御システムが異常のとき(異常信号発生のとき)。
(5)ハンドル舵角がニュートラル位置から所定の小舵角範囲内にないとき。
(6)変速機に関連して、変速機がDレンジ位置にないとき、油温が所定温度範囲内にないとき、油圧が所定圧力範囲内にないとき、変速機異常信号が発生されているとき、クラッチ(ロックアップクラッチを含む)に異常があるとき。
(7)エンジンに関連して、冷却水温度が所定温度範囲にないとき、吸気温度が高すぎるとき、大気圧が低いとき。
(8)負圧式倍力装置を含むブレーキ装置でのブレーキ負圧が不足するとき、あるいはエンジンシステムの異常信号が発生されたとき。
(9)車体回りに関連して、イグニッションキーが車外に持ち出されているとき(スマートキーレスエントリーシステムの場合)、シートベルトが取外されているとき、いずれかのドアが開いているとき、あるいはボンネットが開いているとき。
(10)路面の傾斜角度が大きいとき。
(11)空調用コントローラUKから自動停止禁止信号が出力されているとき。この点については、後に詳述する。
【0036】
上述の自動停止禁止条件はあくまで一例を示すものであり、その他の禁止条件を付加してもよい。例えば、エンジン自動停止を運転者の意思によってキャンセル(禁止)するISスイッチS5がONされているとき、エンジン回転数があらかじめ設定された回転数(安定したときのアイドル回転数よりもかなり高い回転数)以上の高回転であるととき、等の条件をさらに追加してもよい。逆に、上記禁止条件の一部を削除した設定とすることもできる。
【0037】
エンジンを自動停止しているアイドルストップ状態からエンジンを自動再始動する自動再始動開始条件としては、上記自動停止禁止条件のいずれか1つが解除されたときとして設定することができるが、特に、少なくとも乗員によるブレーキ操作が解除されたときを自動再始動の条件として設定するのが好ましい。
【0038】
次に、空調システムKに関連した自動停止禁止条件について説明する。まず、空調の自動制御は、内気温センサS2で検出される実際の室内温度が、乗員により選択された温度調整ダイアル22,26に基づいて設定される目標室内温度に近づくように制御される。この空調自動制御に際しては、空調風の温度、吹出口の選択、空調風吹出量等が自動制御されることになる。
【0039】
空調用のコントローラUKは、次の場合に、空調を優先すべく、車両停止時におけるエンジンの自動停止を禁止する禁止信号を出力する。なお、空調用コントローラUKは、自動停止禁止信号を出力しないときは、自動停止許可信号を出力する。
【0040】
空調システム側からの自動停止禁止条件
(1)空調システムKにおける各種センサ等の異常が発生したとき。
(2)外気温度が、極めて高いとき(例えば40度C以上)、または極めて低いとき(例えば−10度C以下)。
(3)デフロスタを使用しているとき(視界確保を優先)。
(4)乗員により選択された室内温度が、高温側の上限値であるとき(暖房要求が極めて強いとき)。
(5)乗員により選択された室内温度が、低温側の下限値でありかつエアコン作動されているとき(冷房要求が極めて強いとき)。
(6)目標室内温度と実際の室内温度との偏差が所定値よりも大きいとき。
【0041】
空調用コントローラUKは、上記自動停止禁止条件のうち、上記(6)における目標室内温度と実際の室内温度との偏差に関する条件については、乗員による空調操作に応じてエンジン自動停止されやすい方向(アイドルストップされやすい方向)へ適宜変更するようにしてあり、この点について、
図5、
図6を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、
図5は、冷房時において、実線が空調制御を完全に自動制御した場合を示し、一点鎖線が乗員の操作によって空調風の吹出量が減少されたときの場合を示す(吹出量以外は自動制御)。吹出量が減少された一点鎖線の場合は、実線の場合に比して、実際の室内温度の低下が緩やかとなる。
【0043】
図5において、TrTARGETは、目標室内温度である。また、Tis1は第1しきい値であり、Tis2は第2しきい値である。ただし、Tis2>Tis1>0とされている。目標室内温度TrTARGETに対して、第1しきい値Tis1分だけ高い第1所定温度が「TrTARGET+Tis1」として設定され、第2しきい値Tis2分だけ高い第2所定温度が「TrTARGET+Tis2」として設定される。
【0044】
第1所定温度TrTARGET+Tis1は、空調を完全に自動制御しているときに、エンジン自動停止を禁止するか許可するかのしきい値温度となる。すなわち、コントローラUKは、実際の室内温度が、第1所定温度TrTARGET+Tis1以下になるとエンジン自動停止の許可信号を出力し、第1所定温度TrTARGET+Tis1よりも高い温度のときはエンジン自動停止禁止信号を出力する。
図5実線において、実際の室内温度が第1所定温度TrTARGET+Tis1となった時点がT1時点となる。
【0045】
一方、第2所定温度TrTARGET+Tis2は、空調を完全に自動制御している状態から、乗員の操作によって空調風の吹出量を減少させる操作が行われたときに、エンジン自動停止を禁止するか許可するかのしきい値温度となる。すなわち、コントローラUKは、実際の室内温度が第2所定温度TrTARGET+Tis2以下になるとエンジン自動停止の許可信号を出力し、第2所定温度TrTARGET+Tis2よりも高い温度のときはエンジン自動停止禁止信号を出力する。この場合、
図5一点鎖線で示すように、実際の室内温度が第2所定温度TrTARGET+Tis2にまで低下した時点がT2となる。
【0046】
図5一点鎖線のような温度変化の場合、実際の室内温度が第1所定温度TrTARGET+Tis1にまで低下する時点は、T2’時点となり、相当に遅い時期となる。エンジン自動停止を許可するしきい値温度を第2所定温度TrTARGET+Tis2にまで高くすることにより、エンジン自動停止が許可されるまでの時間が短縮されることになる(T2’時点からT2時点へ自動停止許可されるタイミングが早められる)。
【0047】
次に、
図6は、暖房時において、実線が空調制御を完全に自動制御した場合を示し、一点鎖線が乗員の操作によって空調風の吹出量が減少されたときの場合を示す。吹出量が減少された一点鎖線の場合は、実線の場合に比して、実際の室内温度の上昇が緩やかとなる。
【0048】
図6において、TrTARGETは、目標室内温度である。また、Tis1は第1しきい値であり、Tis2は第2しきい値である。ただし、Tis2>Tis1>0とされている。目標室内温度TrTARGETに対して、第1しきい値Tis1分だけ低い第1所定温度が「TrTARGET−Tis1」として設定され、第2しきい値Tis2分だけ低い第2所定温度が「TrTARGET−Tis2」として設定される。
【0049】
第1所定温度TrTARGET−Tis1は、空調を完全に自動制御しているときに、エンジン自動停止を禁止するか許可するかのしきい値温度となる。すなわち、コントローラUKは、実際の室内温度が、第1所定温度TrTARGET−Tis1以上になるとエンジン自動停止の許可信号を出力し、第1所定温度TrTARGET−Tis1よりも低い温度のときはエンジン自動停止禁止信号を出力する。空調を完全に自動制御しているときの実際の室内温度変化状態を示す
図6実線において、実際の室内温度が第1所定温度TrTARGET−Tis1となった時点がT1時点となる。
【0050】
一方、第2所定温度TrTARGET−Tis2は、空調を完全に自動制御している状態から、乗員の操作によって空調風の吹出量を減少させる操作が行われたときに、エンジン自動停止を禁止するか許可するかのしきい値温度となる。すなわち、コントローラUKは、実際の室内温度が第2所定温度TrTARGET−Tis2以上になるとエンジン自動停止の許可信号を出力し、第2所定温度TrTARGET−Tis2よりも低い温度のときはエンジン自動停止禁止信号を出力する。この場合、
図6一点鎖線で示すように、実際の室内温度が第2所定温度TrTARGET−Tis2にまで上昇した時点がT2となる。
【0051】
図6一点鎖線のような温度変化の場合、実際の室内温度が第1所定温度TrTARGET−Tis1にまで上昇する時点は、T2’時点となり、相当に遅い時期となる。エンジン自動停止を許可するしきい値温度を第2所定温度TrTARGET−Tis2にまで低くすることにより、エンジン自動停止が許可されるまでの時間が短縮されることになる(T2’時点からT2時点へ自動停止許可されるタイミングが早められる)。
【0052】
第1しきい値Tis1を一定とした場合、第2しきい値Tis2が大きいほど、エンジン自動停止が許可されるタイミングが早められることになる。
図7,、
図8は、乗員の操作に応じた空調風吹出量の減少量に応じた「Tis2−Tis1」の絶対値を変化させる例を示す。すなわち、
図7,
図8において、横軸に付されたvautoは空調を完全に自動制御したときの空調風吹出量であり、vmanuは乗員の操作に応じた空調風吹出量を示し、その差分となるvauto−vmanuは、空調風吹出量の減少量となる。
【0053】
図7の例は、空調風吹出量の減少量が大きいほど、「Tis2−Tis1」の絶対値が線形的に大きくなるように変化させた場合を示す(Tis2が大きくなる変化)。
図7に示すような設定例は、自動停止許可信号が出力されるまでのタイミングを、乗員操作に基づく空調風吹出量の減少量に応じて変更して、空調ニーズと自動停止のニーズとの割合を乗員の意思に応じて適切に変更する上で好ましいものとなる。
【0054】
図8の例は、空調風吹出量の減少量とは無関係に、「Tis2−Tis1」の絶対値が常に一定値となるようにした場合を示す(Tis2が一定で、不連続な設定例)。
図8に示すような設定例は、乗員による自動停止のニーズを十分に反映させる上で好ましいものとなる。
【0055】
尚、
図7,
図8に示す設定例に限らず、空調風吹出量の減少量に応じて、「Tis2−Tis1」の絶対値(つまりTis2の大きさ)を、段階的に変更するようにしてもよく、あるいは非線形的に連続変化させる等、適宜選択できる。
【0056】
図9は、前述したコントローラUKによる制御内容のうち、自動停止許可信号出力と自動停止禁止信号の出力に関する部分の制御例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートについて説明するが、以下の説明でQはステップを示す。
【0057】
まず、Q1において、各種センサ、スイッチ等からの信号が読み込まれる(データ入力)。次いで、Q2において、現在アイドルストップ中であるか否かが判別される。このQ2の判別でNOのときは、Q3〜Q7において、空調システムKに関して、目標室内温度と実際の室内温度との偏差に関する条件以外の自動停止禁止条件が成立しているか否かが判別される。すなわち、Q3では、センサ等の故障が生じていないか否かが判別される。このQ3の判別でNOのときは、Q4において、外気温が、極端に高い高温あるいは極端に低い低温であるか否かが判別される。このQ4の判別でNOのときは、Q5において、デフロスタを使用中であるか否かが判別される。このQ5の判別でNOのときは、Q6において、乗員による設定温度が高温上限値であるか否かが判別される。このQ6の判別でNOのときは、Q7において、乗員による設定温度が低温下限値でかつエアコンがONされているときであるか否かが判別される。
【0058】
前記Q7の判別でNOのときは、Q8において、乗員が手動操作によって空調風吹出量が変更されたか否かが判別される。このQ8の判別でNOのときは、Q10において、実際の室内温度Trから目標室内温度TrTARGETを差し引いた値が、−Tis1〜+Tis1の間にあるか否かが判別される。このQ10の判別でYESのときは、Q11において、アイドルストップ許可信号が出力される。また、Q10の判別でNOのときは、Q13において、アイドルストップ禁止信号が出力される。Q10からQ11あるいはQ13を経る処理は、空調制御が完全に自動制御されている場合に相当し、
図5,
図6において実線で示す温度変化に伴う制御となる。
【0059】
前記Q8の判別でYESのときは、Q9において、乗員の操作による変更後の空調風吹出量が、自動制御時の空調風吹出量よりも少ないか否かが判別される。このQ9の判別でNOのときは、Q10に移行される。
【0060】
前記Q9の判別でYESのときは、Q12において、実際の室内温度Trから目標室内温度TrTARGETを差し引いた値が、−Tis2〜+Tis2の間にあるか否かが判別される。このQ12の判別でYESのときは、Q11において、アイドルストップ許可信号が出力される。また、Q12の判別でNOのときは、Q13において、アイドルストップ禁止信号が出力される。Q12からQ11あるいはQ13を経る処理は、
図5,
図6において、一点鎖線で示す温度変化に伴う制御となる。
【0061】
前記Q2の判別でYESのときは、Q14において、エンジン自動再始動を行うか否かの判定が行われることになる。
【0062】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。実際の室内温度と目標室内温度との偏差に関する条件を、エンジン自動停止されやすい方向へ変更するには、偏差が小さくなる方向への制御内容に変更することによって行うことができ、例えば、目標室内温度や実際の室内温度そのものを擬似的に変更すること等によって行うこともできる。エンジンが自動停止されやすくする乗員操作のパラメータとしては、空調風吹出量以外に、例えば冷房時において内気循環から外気導入へ切換えられたときや、空調風の吹出口を変更する操作を行ったとき(
図2の吹出モード選択スイッチ34,35が操作されたとき)等、適宜選択できる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。