(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040658
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】内燃機関の冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 3/02 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
F01P3/02 S
F01P3/02 T
F01P3/02 F
F01P3/02 M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-202338(P2012-202338)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-55579(P2014-55579A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小倉 良介
(72)【発明者】
【氏名】市原 敬義
【審査官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−272401(JP,A)
【文献】
特開昭63−314308(JP,A)
【文献】
特開平1−147111(JP,A)
【文献】
特開2008−286022(JP,A)
【文献】
特開2002−115600(JP,A)
【文献】
特開平06−173678(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/143866(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00816651(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00−11/20
F02F 1/00− 1/42
7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック及びシリンダヘッドを備えるエンジン本体を、その内部の冷却媒体通路を流れる冷却媒体によって冷却する内燃機関の冷却装置であって、
前記冷却媒体通路は、前記シリンダヘッドの排気ポートよりも吸気ポートに近い部位の前記シリンダヘッドの側壁に形成されて冷却媒体が流入する流入口と、
前記吸気ポート近傍の前記流入口から、前記シリンダヘッド内において前記排気ポートに向けて延設される第1通路と、
前記第1通路の前記流入口と反対側の前記排気ポート側の端部から、前記シリンダブロックの前記排気ポートに対応する側に向けて、前記シリンダヘッドと前記シリンダブロックとにわたって延設される第2通路と、
前記第2通路を流れる冷却媒体を前記エンジン本体の外部に流出させる流出口と、を備えることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
前記第2通路におけるシリンダヘッド側の通路とシリンダブロック側の通路とは、上下方向に直線状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロック及びシリンダヘッドを備えるエンジン本体を、その内部の冷却媒体通路を流れる冷却媒体によって冷却する内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン本体を、その内部に設けられた冷却水通路に冷却水を流して冷却する技術としては、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。この内燃機関の冷却装置は、エンジンフロント側からシリンダブロックの冷却水通路に入った冷却水が、エンジンリア側に流れながら、途中の開口からシリンダヘッドの冷却水通路の排気ポート側に入る。その後、冷却水は、シリンダヘッド内の冷却水通路の吸気ポート側に向けて流れてエンジン外部に流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−177440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように従来の内燃機関の冷却装置では、シリンダブロックを冷却した冷却水がシリンダヘッドの排気ポート側を流れた後、シリンダヘッドの吸気ポート側に向けて流れている。このため、シリンダヘッドの吸気ポート側を流れる冷却水は、温度の高い排気ポート側で温められたものとなり、よって吸気ポート側をより冷やして吸気温度をより低下させることが困難となっている。
【0005】
そこで、本発明は、シリンダヘッドの吸気ポート側をより冷やして吸気温度をより低下させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジン本体内の冷却媒体通路が、シリンダヘッドの排気ポートよりも吸気ポートに近い部位
のシリンダヘッドの側壁に形成される流入口と、
吸気ポート近傍の流入口から、排気ポートに向けて延設される第1通路と、この第1通路の排気ポート側の端部から、シリンダブロックの排気ポートに対応する側に向けて、シリンダヘッドとシリンダブロックとにわたって延設される第2通路と、この第2通路を流れる冷却媒体をエンジン本体の外部に流出させる流出口と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジン本体内に流入する冷却水は、シリンダヘッドの排気ポートよりも吸気ポートに近い部位
のシリンダヘッドの側壁に位置する流入口からとなるので、吸気ポート側が効率よく冷却されて、吸気温度をより低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動車用エンジンにおける冷却水通路の概略を示すエンジン本体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の内燃機関の冷却装置に関する実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1に分解斜視図として示すように、例えば自動車用のエンジンにおけるエンジン本体1は、シリンダブロック3と、該シリンダブロック3のシリンダヘッド取付面3aにガスケット5を介して取り付けられるシリンダヘッド7と、を備えている。そして、これらシリンダブロック3及びシリンダヘッド7内には、エンジンを冷却するために、冷却媒体である冷却水9を流通させる冷却媒体通路となる冷却水通路11を形成している。なお、
図1に示す内燃機関としてのエンジンは直列4気筒エンジンである。
【0011】
冷却水通路11には、ウォータポンプ13から冷却水9を供給する。ウォータポンプ13は、図示しないラジエータで冷却された冷却水9を吸入口13aから吸入する。ウォータポンプ13は、例えばシリンダブロック3の側壁に一体化するようにして取り付け、吐出口13bから吐出する冷却水9を、シリンダヘッド7の側壁に形成してある流入口11aに供給する。
【0012】
シリンダヘッド7の流入口11aは、シリンダヘッド7における4つある吸気ポート7aのうち、シリンダ列方向の一方の端部近傍に位置している。すなわち、冷却水通路11における冷却水9の流入口11aは、シリンダヘッド7の排気ポート7bよりも吸気ポート7aに近い部位となる、吸気ポート7aの近傍に位置している。
【0013】
シリンダヘッド7内には、流入口11aから、上記した4つある吸気ポート7aのうちシリンダ列方向の他方の端部に向けて延設される吸気ポート側通路11bを形成してある。そして、この吸気ポート側通路11bに対し、4つの吸気ポート7aそれぞれの近傍位置から対応する4つの排気ポート7b側に向けてそれぞれ延設される第1通路としてのポート間連絡通路11cをシリンダヘッド7内に形成している。
【0014】
上記4つのポート間連絡通路11cは、吸気ポート側通路11bとほぼ平行にシリンダヘッド7内に形成してある排気ポート側通路11dに連通している。排気ポート側通路11dは、シリンダ列方向に沿って設けられている4つの排気ポート7bのうちの一方の端部付近から他方の端部付近に向けて延設されている。この排気ポート側通路11dは、
図1中で右側の他方の端部付近で、シリンダヘッド7の外部に冷却水9が流出するヘッド流出口11eに連通している。
【0015】
また、シリンダヘッド7内には、上記4つのポート間連絡通路11cと排気ポート側通路11dとの接続部11fから、シリンダブロック3に向けて延設される4つのヘッドブロック間ヘッド側通路11gを設けている。この4つのヘッドブロック間ヘッド側通路11gのシリンダヘッド7側の
図1中で上端は、上記した接続部11fに連通しており、シリンダブロック3側の
図1中で下端は、シリンダブロック3(ガスケット5)との取付面に開口している。
【0016】
上記4つのヘッドブロック間ヘッド側通路11gのシリンダブロック3側の下端は、シリンダブロック3側の冷却水通路11に連通している。詳細には、4つのヘッドブロック間ヘッド側通路11gは、ガスケット5の貫通孔5aを通して、シリンダブロック3のシリンダヘッド取付面3aに上端が開口している4つのヘッドブロック間ブロック側通路11hにそれぞれ連通している。
【0017】
この4つのヘッドブロック間ブロック側通路11hは、シリンダブロック3内において、上記4つのヘッドブロック間ヘッド側通路11gから
図1中で上下方向に連続して直線状に形成されている。上記ヘッドブロック間ヘッド側通路11gとヘッドブロック間ブロック側通路11hとで第2通路を構成している。第2通路は、ポート間連絡通路11cの流入口11aと反対側の排気ポート7b近傍側の端部から、排気ポート7bに対応する側のシリンダブロック3に向けて、シリンダヘッド7とシリンダブロック3とにわたり
図1中で上下方向に直線状に形成されている。
【0018】
上記4つのヘッドブロック間ブロック側通路11hは、シリンダブロック3内でシリンダ列方向に沿って、連通路11iにより互いに連通している。また、4つのシリンダ3bの周囲にはシリンダ周囲通路11kが形成され、このシリンダ周囲通路11kの排気ポート7bに対応する側に、4つのヘッドブロック間ブロック側通路11h及び連通路11iが連通している。
【0019】
そして、シリンダブロック3におけるシリンダ周囲通路11kの吸気ポート7aに対応する側に、冷却水9をシリンダブロック3の外部に流出させる流出口11mを設けている。流出口11mは、ヘッドブロック間ヘッド側通路11gとヘッドブロック間ブロック側通路11hとを有する第2通路を流れる冷却水9を、シリンダ周囲通路11kを経てエンジン本体1を構成するシリンダブロック3の外部に流出させる流出口を構成している。
【0020】
上記した流出口11mは、シリンダブロック3のシリンダ列方向のほぼ中央に1つ設けているが、中央に限らずシリンダ列方向の他の位置にあってもよく、またシリンダ列方向に複数設けてもよい。
【0021】
次に作用を説明する。ウォータポンプ13の吐出口13bから吐出された冷却水9は、シリンダヘッド7の流入口11aからシリンダヘッド7内の冷却水通路11に流入する。リンダヘッド7内の冷却水通路11では、流入口11aからシリンダ列方向の一方の端部近傍に位置するポート間連絡通路11cに流入するとともに、吸気ポート側通路11bに流入する。
【0022】
吸気ポート側通路11bに流入した冷却水9は、シリンダ列方向に沿って流れ、その途中で2つのポート間連絡通路11cに分岐して流れ、さらにシリンダ列方向の他方の端部近傍に位置するポート間連絡通路11cにも流れる。そして、これら4つのポート間連絡通路11cを流れる冷却水9は、排気ポート7b側の排気ポート側通路11dに流れ込む。
【0023】
この際本実施形態では、ラジエータで冷却されたウォータポンプ13からの冷却水9が、エンジン本体1におけるシリンダヘッド7の吸気ポート7a近傍に流入して吸気ポート7a近傍を冷却する。このため、吸気ポート7a側が効率よく冷却され、吸気温度がより低下して吸気充填効率を高めることができ、エンジン出力向上に寄与することができる。
【0024】
冷却水9は排気ポート側通路11dを流れることで、排気ポート7b近傍を冷却し、その後、一部は、ヘッド流出口11eからシリンダヘッド7の外部に流出して図示しないラエジータに向けて流れる。排気ポート7b近傍を冷却した冷却水の他の一部は、4つのヘッドブロック間ヘッド側通路11gをシリンダブロック3に向けて流れる。
【0025】
シリンダブロック3内では、冷却水9は、4つのヘッドブロック間ブロック側通路11hをシリンダヘッド7から離れる方向(
図1中で下方)に向けて流れる。この際、本実施形態では、シリンダブロック3内において、冷却水は排気ポート7bに対応する側に最初に流れ込む。シリンダブロック3の排気ポート7bに対応する側は、吸気ポート7aからシリンダ3b内に流入する吸気(混合気)の進行方向に対応している。したがって、この吸気(混合気)が流入してくる側のシリンダブロック3周辺を最初に冷却することで、吸気(混合気)温度をより低下させてノッキングの発生を抑えることができる。
【0026】
4つのヘッドブロック間ブロック側通路11hを流れる冷却水9は、シリンダ周囲通路11kを経て吸気ポート7a側に対応する位置にある流出口11mからシリンダブロック3の外部に流出し、図示しないラエジータに向けて流れる。ラエジータに流入した冷却水は、外気と熱交換して温度低下してからウォータポンプ13に戻り、ウォータポンプ13からエンジン本体1(シリンダヘッド7)に再度供給されて循環する。
【0027】
以上のように、本実施形態では、ウォータポンプ13から出た冷却水9を、シリンダヘッド7の吸気ポート7a近傍に最初に供給する。このため、吸気ポート7a側が効率よく冷却されて、吸気温度がより低下して吸気充填効率を高めることができ、エンジン出力向上に寄与することができる。また、シリンダブロック3内においては、吸気(混合気)が流入してくる側のシリンダブロック3周辺を最初に冷却することで、吸気(混合気)温度をより低下させてノッキングの発生を抑えることができる。
【0028】
また、本実施形態では、シリンダヘッド7からシリンダブロック3に向けて冷却水9が流れる冷却水通路11は、ヘッドブロック間ヘッド側通路11g及びヘッドブロック間ブロック側通路11hとして、これらを直線状に形成している。これにより、冷却水通路11の形状を簡素化し、エンジン本体1の製造コストを低減することができる。
【0029】
なお、上記した実施形態では、シリンダヘッド7に流入口11aを1箇所設けているが、4つのポート間連絡通路11cのうちシリンダ列方向の両端に対応する位置に2箇所に設けてもよく、また、4つのポート間連絡通路11cに対応して4箇所に設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジン本体
3 シリンダブロック
7 シリンダヘッド
7a 吸気ポート
7b 排気ポート
9 冷却水(冷却媒体)
11 冷却水通路(冷却媒体通路)
11a 流入口
11c ポート間連絡通路(第1通路)
11g ヘッドブロック間ヘッド側通路(第2通路)
11h ヘッドブロック間ブロック側通路(第2通路)
11m 流出口