(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040679
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】電源装置及びそれを備えた電流測定機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20161128BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
H02M7/06 Z
H02M7/06 A
G01R19/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-214651(P2012-214651)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-72914(P2014-72914A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】水谷 肇
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−196729(JP,A)
【文献】
特開2005−140506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相3線式の2本の電圧線に取り付けられる2つのカレントトランスと、
前記2つのカレントトランスの間に接続される整流及び平滑回路と、を備え、
前記2本の電圧線、前記2本の電圧線と前記2つのカレントトランスとの間に形成される2つの結合容量、前記2つのカレントトランス、並びに前記整流及び平滑回路により形成されるループを流れる電流の電荷を前記整流及び平滑回路を構成する平滑コンデンサに蓄積し、前記電荷を電源電力として、前記2つのカレントトランスに流れる電流を測定する負荷である電流測定回路に供給する電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電源装置において、
前記カレントトランスの内周面に金属電極が配置されている電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載された電源装置において、
前記整流及び平滑回路の出力側に、スイッチと、該スイッチのオン/オフを制御する制御信号を生成するタイマー又は電圧測定回路が接続されている電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された電源装置と、前記電流測定回路とを備えた電流測定機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相3線式の電圧線から電源電力を生成する電源装置、及びそれを備えた電流測定機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々が生活する上で必要な地球資源の枯渇が懸念されており、資源の消費により発生する二酸化炭素の影響による地球温暖化などの環境問題への対応が急がれている。また、原子力発電所の稼動停止に伴う電力不足や、原子力発電の比率を徐々に減らし、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの比率を徐々に増やすことに伴う電気料金の上昇などへの対応も急がれている。そのため、一般家庭においても、低消費電力の機器に交換するなどの省エネルギー指向が進み、電気料金の低減への関心も高まっている。
【0003】
このような状況から、消費電力量の監視・表示を行うようなシステムとして、分電盤内に配置されている単相3線式の電圧線にカレントトランスを取り付け、その検知信号を電流測定機能及び無線通信機能を有する分電盤計測器に入力し、電流測定値を無線LANの親機及びルータを介してインターネット上の管理サーバへ送信するシステムが提供されている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、このシステムにおける分電盤計測器は、電池を電源としているので、電池が無くなれば交換する手間がかかる。電源アダプタにより給電することも考えられるが、電源アダプタ及び電源コンセントが必要となる。また、カレントトランスからの誘起電圧を利用して電流測定回路の電源電力を得ることも知られているが(非特許文献2)、測定対象に電流が流れない場合は誘起電圧が得られない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】[平成24年9月27日検索]、インターネット<http://flets.com/eco/miruene/service.html>
【非特許文献2】[平成24年9月27日検索]、インターネット<http://www.toyodenki.co.jp/html/it_turtle.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、単相3線式の電圧線に取り付けられたカレントトランスに流れる電流を測定する電流測定回路を備えた電流測定機器の電源電力を、電池、電源アダプタ、及びカレントトランスからの誘起電圧を用いずに生成可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電源装置は、単相3線式の2本の電圧線に取り付けられる2つのカレントトランスと、前記2つのカレントトランスの間に接続される整流及び平滑回路と、を備え、
前記2本の電圧線、前記2本の電圧線と前記2つのカレントトランスとの間に形成される2つの結合容量、前記2つのカレントトランス、並びに前記整流及び平滑回路により形成されるループを流れる電流の電荷を前記整流及び平滑回路を構成する平滑コンデンサに蓄積し、前記電荷を電源電力として、前記2つのカレントトランスに流れる電流を測定する負荷である電流測定回路に供給する電源装置である。
本発明に係る電流測定機器は、本発明に係る電源装置と、
前記電流測定回路とを備えた電流測定機器である。
【0008】
[作用]
本発明によれば、単相3線式の2本の電圧線、各電圧線に取り付けられるカレントトランス、各電圧線とそれぞれに取り付けられるカレントトランスとの間に形成される結合容量、並びに整流及び平滑回路により形成されるループを流れる電流
の電荷を前記整流及び平滑回路を構成する平滑コンデンサに蓄積し、その
電荷を電源電力と
して負荷である電流測定回路に供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単相3線式の電圧線に取り付けられたカレントトランスに流れる電流を測定する電流測定回路を備えた電流測定機器の電源電力を、電池、電源アダプタ、及びカレントトランスからの誘起電圧を用いずに生成可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電流測定機器の電源装置の回路構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電流測定機器の電源装置において、所定の極性の電圧が電圧線に入力されている時の動作を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電流測定機器の電源装置において、
図2と逆極性の電圧が電圧線に入力されている時の動作を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る電流測定機器の電源装置の回路構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る電流測定機器の電源装置の回路構成を説明するための図である。
【0012】
図において、中性線1、第1の電圧線2、及び第2の電圧線3は、分電盤(図示せず)の内部に配置されている主開閉器と分岐開閉器との間の単相3線式の配電線である。即ち中性線1はアースされており、第1の電圧線2と第2の電圧線3には逆極性の100VのAC電圧が供給されている。
【0013】
第1の電圧線2の外周には第1のカレントトランス4が取り付けられており、その巻線L1の両端には第1の電流測定回路6が接続されている。また、第2の電圧線3の外周には第2のカレントトランス5が取り付けられており、その巻線L2の両端には第2の電流測定回路7が接続されている。
【0014】
第1の電圧線2と第1のカレントトランス4との間には結合容量C1が形成され、第2の電圧線3と第2のカレントトランス5との間には結合容量C2が形成される。各カレントトランスの内周面に金属電極を配置することで、積極的に結合容量を増やすことが好適である。また、各カレントトランスの内径を小さくしたり、長さを長くしたりすることで、結合容量を増やすこともできる。
【0015】
第1,第2のカレントトランス4,5は、貫通型変流器(強磁性体のコア材に電線を巻いた中空のコイル)と呼ばれる電流センサであり、貫通している導体である第1,第2の電圧線2,3を流れる電流に比例する電流が巻線L1,L2に流れることで、第1,第2の電圧線2,3に流れる電流を検出することができる。
【0016】
第1,第2の電流測定回路6,7は、例えば電流/電圧変換回路と、A/D変換回路などを備えており、第1,第2のカレントトランス4,5で検出された電流に比例する電圧をデジタル化する。
【0017】
第1のカレントトランス4の巻線L1と、第2のカレントトランス5の巻線L2との間には、ラインL3,L4を介して整流及び平滑回路8が接続されており、整流及び平滑回路8の出力側には負荷9が接続されている。
【0018】
負荷9は、第1,第2の電流測定回路6,7の測定値を無線LANにより無線親機へ伝送する無線通信回路や、この電流測定機器の全体を制御する制御装置などである。また、便宜上、負荷9とは別に図示したが、第1,第2の電流測定回路6,7も負荷9を構成する。
【0019】
整流及び平滑回路8は、4つのダイオードD1〜D4からなるダイオードブリッジで構成された両波(全波)整流回路と、その出力側に接続された電解コンデンサC3で構成された平滑回路とからなり、電解コンデンサC3に蓄積された電荷を電源とした電力が負荷9に供給される。
【0020】
次に、整流及び平滑回路8の出力が負荷9に供給されるときの動作を説明する。
図2は第1の電圧線2にプラス、第2の電圧線3にマイナスの電圧が印加されているときの動作を示し、
図3は第2の電圧線3にプラス、第1の電圧線2にマイナスの電圧が印加されているときの動作を示す。また、これらの図において、一点鎖線は電流の通路を示す。
【0021】
図2における一点鎖線で示すように、第1の電圧線2にプラス、第2の電圧線3にマイナスの電圧が印加されているときは、「第1の電圧線2→結合容量C1→巻線L1→ラインL3→ダイオードD1→電解コンデンサC3→負荷9→ダイオードD4→ラインL4→巻線L2→結合容量C2→第2の電圧線3」からなるループに電流が流れる。
【0022】
また、
図3における一点鎖線で示すように、第2の電圧線3にプラス、第1の電圧線2にマイナスの電圧が印加されているときは、「第2の電圧線3→結合容量C2→巻線L2→ラインL4→ダイオードD2→電解コンデンサC3→負荷9→ダイオードD3→ラインL3→巻線L1→結合容量C1→第1の電圧線2」からなるループに電流が流れる。
【0023】
[第2の実施形態]
図4は本発明の第2の実施形態に係る電流測定機器の電源装置の回路構成を説明するための図である。ここでは、第1の実施形態と異なる部分のみを図示した。
【0024】
本実施形態は第1の実施形態における整流及び平滑回路8と負荷9との間にスイッチ10、及びスイッチ10のオン/オフ(開/閉)を制御する制御信号を生成する手段としてのタイマー又は電圧測定回路11を設け、整流及び平滑回路8の電解コンデンサC3に所定量の電荷が蓄積された時点でスイッチ10をオフ(開)からオン(閉)に切り換え、負荷9を駆動するように構成したものである。
【0025】
ここで、所定量の電荷が蓄積されたことは、スイッチ10がオフの状態が所定時間継続していることがタイマーにより計測されたこと、又は電圧測定回路による電解コンデンサC3の両端の電圧の測定値が所定値に達したことに基づいて、検出することができる。なお、このタイマー又は電圧測定回路11は負荷9を構成する。
【0026】
[実施例]
次に実施例について説明する。分電盤内の主開閉器(電力会社によって、アンペアブレーカ、サービスブレーカなどと呼ばれている)と、分岐開閉器との間の単相3線式の2本の電圧線にカレントトランスを取り付け、2つのカレントトランスの巻線間のAC電圧を測定したところ、約1.73Vであった。また、2つのカレントトランスの巻線間にダイオードブリッジと3.3μFの電解コンデンサで整流し、15分間放置したところ、9V以上のDC電圧が得られた。また、この電解コンデンサと並列に1MΩの抵抗を接続したところ、112mVのDC電圧が得られた。
【0027】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る電流測定機器の電源装置によれば、単相3線式の第1,第2の電圧線2,3、結合容量C1,C2、第1,第2のカレントトランス4,5、並びに整流及び平滑回路8により形成されるループに流れる電流を整流及び平滑回路8により整流及び平滑し、その出力電力を電流測定機器の電源電力とするので、電池、電源アダプタ、及び第1,第2のカレントトランス4,5からの誘起電圧を用いることなく、電源電力を生成することができる。
【符号の説明】
【0028】
2…第1の電圧線、3…第2の電圧線、4…第1のカレントトランス、5…第2のカレントトランス、6…第1の電流測定回路、7…第2の電流測定回路、8…整流及び平滑回路、9…負荷、10…スイッチ、11…タイマー又は電圧測定回路。